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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005731
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ブッシング及び鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/176 20210101AFI20250109BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20250109BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20250109BHJP
   H01M 50/553 20210101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M50/176 101
H01M50/15 101
H01M50/103
H01M50/553
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106040
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】322013937
【氏名又は名称】エナジーウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴之
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA17
5H011CC02
5H011EE02
5H011FF02
5H011HH02
5H011KK00
5H011KK01
5H043AA07
5H043BA12
5H043CA04
5H043DA09
5H043DA12
5H043HA11D
5H043KA02D
5H043LA02D
5H043LA11D
(57)【要約】
【課題】ブッシングの取付領域が小さい鉛蓄電池においても、蓋部に対するブッシングの周方向の回転を抑制して漏液を抑制することを可能とする。
【解決手段】鉛蓄電池1の蓋部3に固定される円筒状のブッシング6は、座部62と、座部62から延在して鉛蓄電池1の蓋部3から突出される端子接続部63と、座部62から端子接続部63とは反対側に延在して蓋部3に固定される固定部64と、固定部64の外周面から突出して蓋部3に対するブッシング6の周方向D2の回転を抑制する複数の回り止め部65と、を備える。複数の回り止め部65のそれぞれは、ブッシング6の周方向D2における一方側に位置する回り止め面65cを有し、複数の回り止め部65の回り止め面65cの総面積は、10mm超である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池の蓋部に固定される固定部と、
前記固定部の外周面から突出する回り止め部と、を備え、
前記回り止め部は、前記固定部の周方向における一方側に位置する回り止め面を有し、
前記回り止め面の総面積は、10mm超である、
ブッシング。
【請求項2】
座部と、
複数の前記回り止め部と、を備え、
前記固定部は、前記座部から延在しており、
前記複数の回り止め部の外接円の直径は、前記座部の外径以下である、
請求項1に記載のブッシング。
【請求項3】
電槽と、
蓋部と、
前記蓋部に固定された請求項1又は2に記載のブッシングと、を備える、
鉛蓄電池。
【請求項4】
前記蓋部から突出する極柱を更に備え、
前記極柱の上端の高さ位置は、前記蓋部の天面の高さ位置より低い、
請求項3に記載の鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブッシング及び鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車等に搭載される鉛蓄電池が記載されている。この鉛蓄電池は、極板群及び電解液等を収容する電槽と、電槽の開口部を封止する蓋部と、電極端子と、を備えている。電極端子は、蓋部を貫通するように蓋部と一体成形されたブッシングと、ブッシングに挿入されてブッシングに溶接された極柱と、を有している。ブッシングには、蓋部に対する周方向の回転を抑制する突起(回り止め部)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-118805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブッシングには、ハーネス端子などの接続端子が組み付けられる際に周方向に回転する力が加わる。蓋部に対してブッシングが周方向に回転すると、蓋部とブッシングとの間に隙間が生じて、蓋部とブッシングとの間から電解液が染み上がる可能性がある。ブッシングに回り止め部を設けることで、蓋部に対するブッシングの周方向の回転を抑制することができるが、蓋部は樹脂製であるため、蓋部に対するブッシングの周方向の回転を完全に阻止することはできない。
【0005】
そこで、特許文献1に記載されたブッシングでは、回り止め部を、ブッシングの鍔部(座部)の外周面から突出する突起とすることで、つまり、ブッシングの中心軸線から回り止め部の先端までの長さを長くすることで、ブッシンが周方向に回転するのを更に抑制するものとしている。しかしながら、特許文献1に記載されたブッシングは、鍔部の外周面から突起を突出させることで大型化されているため、ブッシングの取付領域が小さい鉛蓄電池には採用できない。
【0006】
このため、本技術分野では、ブッシングの中心軸線から回り止め部の先端までの長さを長くすることとは別の観点から、蓋部に対するブッシングの周方向の回転を抑制して漏液を抑制することができるブッシング及び鉛蓄電池が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 本発明に係るブッシングは、鉛蓄電池の蓋部に固定される固定部と、固定部の外周面から突出する回り止め部と、を備え、回り止め部は、固定部の周方向における一方側に位置する回り止め面を有し、回り止め部の回り止め面の総面積は、10mm超である。
【0008】
このブッシングでは、蓋部に固定される固定部の外周面から突出する回り止め部を備えるため、固定部が蓋部に固定された際に、蓋部に対してブッシングが周方向に回転するのを抑制することができる。ここで、本発明者が鋭意検討を行った結果、次のような知見を得た。すなわち、ブッシングに周方向に回転する力が加わると、回り止め部が蓋部に押圧される。そして、回り止め部の蓋部に押圧される面の面積が所定値以上となると、蓋部と回り止め部との間の摩擦力等により、蓋部に対するブッシングの周方向の回転を抑制することができることが分かった。そして、回り止め部のうち、固定部の周方向における一方側に位置する回り止め面が、蓋部に押圧される面となることから、このブッシングでは、回り止め部の回り止め面の総面積が10mm超であるものとした。これにより、ブッシングの取付領域が小さい鉛蓄電池においても、蓋部に対するブッシングの周方向の回転を抑制して漏液を抑制することができる。
【0009】
[2] [1]に記載のブッシングにおいて、座部と、複数の回り止め部と、を備え、固定部は、座部から延在しており、複数の回り止め部の外接円の直径は、座部の外径以下であってもよい。このブッシングでは、複数の回り止め部の外接円の直径が座部の外径以下であるため、ブッシングの中心軸線から回り止め部の先端までの長さが短い。しかしながら、回り止め部の回り止め面の総面積が10mm超であるため、蓋部に対するブッシングの周方向の回転を抑制して漏液を抑制することができる。
【0010】
[3] 本発明に係る鉛蓄電池は、電槽と、蓋部と、蓋部に固定された[1]又は[2]に記載のブッシングと、を備える。この鉛蓄電池では、上述したブッシングを備えるため、蓋部に対するブッシングの周方向の回転を抑制して漏液を抑制することができる。
【0011】
[4] [3]に記載の鉛蓄電池において、蓋部から突出する極柱を更に備え、極柱の上端の高さ位置は、蓋部の天面の高さ位置より低くてもよい。この鉛蓄電池では、極柱の上端の高さ位置が蓋部の天面の高さ位置よりも低いため、電解液とブッシングとの距離が近くなる傾向にある。このため、電解液の染み上がりに対する対策がより重要となる。このような状況下において、回り止め部の回り止め面の総面積が10mm超であるため、蓋部に対するブッシングの周方向の回転を抑制して漏液を抑制することが、より効果的である。これは、ブッシングの取り付け領域が小さい鉛蓄電池においても、同様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブッシングの周方向の回転を抑制して漏液を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る鉛蓄電池を示す断面図である。
図2】実施形態に係るブッシングを示す平面図である。
図3】実施形態に係るブッシングを示す正面図である。
図4】実施形態に係るブッシングを示す部分断面図である。
図5図3に示すV-V線における断面図である。
図6図5に示すVI部分を拡大した断面図である。
図7図5に示すVII部分を拡大した断面図である。
図8】評価方法を説明するための斜視図である。
図9】評価方法を説明するための斜視図である。
図10】評価方法を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の鉛蓄電池及びブッシングの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、実施形態に係る鉛蓄電池を示す断面図である。図1に示すように、鉛蓄電池1は、略立方体状に形成された液式鉛蓄電池である。鉛蓄電池1は、上面が開口している電槽2と、電槽2の開口を閉じる蓋部3と、正極端子4Aと、負極端子(不図示)と、を備える。なお、鉛蓄電池1の高さ方向を、高さ方向Hという。
【0016】
電槽2は、上面が開口している樹脂製容器である。電槽2の素材は、例えば、ポリプロピレン(PP)である。電槽2には、複数の電極板21、複数の電極板21のそれぞれの正極を連結する正極ストラップ22A、複数の電極板21のそれぞれの負極を連結する負極ストラップ22B、及び電解液23等が収容されている。
【0017】
蓋部3は、電槽2に接合されて電槽2の開口を閉じる樹脂製の蓋部である。蓋部3の素材は、例えば、ポリプロピレン(PP)である。
【0018】
正極端子4Aは、複数の電極板21の正極と外部装置とを電気的に接続する金属製の電極端子である。正極端子4Aは、正極ストラップ22Aによって複数の電極板21の正極と電気的に接続されている。負極端子は、複数の電極板21の負極と外部装置とを電気的に接続する金属製の電極端子である。負極端子は、負極ストラップ22Bによって複数の電極板21の負極と電気的に接続されている。なお、正極端子4Aと負極端子とは、基本的に同じ構成であるため、特に分けて説明する場合を除き、「電極端子4」と纏めて説明する。
【0019】
電極端子4は、極柱5と、ブッシング6と、を有する、正極端子4Aの極柱5は、正極ストラップ22Aと接続されている。正極端子4Aの極柱5は、正極ストラップ22Aに立設されており、先細りとなる棒状に形成されている。負極端子の極柱(不図示)は、負極ストラップ22Bと接続されている。負極端子の極柱は、負極ストラップ22Bに立設されており、先細りとなる棒状に形成されている。極柱5の素材は、例えば、鉛合金である。
【0020】
極柱5の上端5aの高さ位置は、蓋部3の天面3aの高さ位置よりも低くなっている。極柱5の上端5aの高さ位置は、高さ方向Hにおける電極端子4の最も高い位置である。蓋部3の天面3aは、高さ方向Hにおける蓋部3の最も高い位置にある面であり、蓋部3の天面3aの高さ位置は、高さ方向Hにおける蓋部3の最も高い位置である。
【0021】
図2は、実施形態に係るブッシングを示す平面図である。図3は、実施形態に係るブッシングを示す正面図である。図4は、実施形態に係るブッシングを示す部分断面図である。図5は、図3に示すV-V線における断面図である。図1図4に示すように、ブッシング6は、蓋部3に固定されている。また、ブッシング6には、極柱5が挿入されて、極柱5が固定されている。ブッシング6は、円筒状に形成されており、その内周面に、極柱5が挿入される挿入穴61が形成されている。ブッシング6の中心軸線Aに沿う方向を軸線方向D1、ブッシング6の中心軸線A周りの方向(周方向)を周方向D2という。また、軸線方向D1のうち、一方側の方向を第一軸線方向D11といい、他方側の方向を第二軸線方向D12という。第一軸線方向D11は、例えば、鉛蓄電池1の上方に向かう方向であり、第二軸線方向D12は、例えば、鉛蓄電池1の下方に向かう方向である。また、周方向D2のうち、一方側の方向を第一周方向D21といい、他方側の方向を第二周方向D22という。第一周方向D21は、例えば、鉛蓄電池1の平面視における右回り方向であり、第二周方向D22は、鉛蓄電池1の平面視における左回り方向である。挿入穴61は、軸線方向D1に沿って延在している。ブッシング6の素材は、例えば、鉛合金である。蓋部3に対するブッシング6の固定は、例えば、ブッシング6を配置した金型に樹脂を射出して成形するインサート成形により行うことができる。ブッシング6に対する極柱5の固定は、例えば、溶接により行うことができる。
【0022】
ブッシング6は、座部62と、固定部64と、複数の回り止め部65と、を備える。
【0023】
座部62は、円環状に形成されて、軸線方向D1におけるブッシング6の中央部に位置する部位である。座部62は、ブッシング6の最大径を成する。つまり、ブッシング6は、座部62において最大径となる。座部62の外周面の一部又は全部は、蓋部3に覆われており、座部62は、その外周面の一部又は全部が蓋部3に埋設されるように蓋部3に固定されている。軸線方向D1における座部62の両面のうち、鉛蓄電池1の上方に向けられる面(第一軸線方向D11側の面)を上座面62aといい、鉛蓄電池1の下方に向けられる面(第二軸線方向D12側の面)を下座面62bという。
【0024】
端子接続部63は、蓋部3から突出されて、ハーネス端子などの接続端子(不図示)が組み付けられる部位である。端子接続部63は、円筒状に形成されており、座部62の上座面62aから第一軸線方向D11に延在している。端子接続部63は、先端に向かうに従い細くなっている。
【0025】
固定部64は、蓋部3に固定される部位である。固定部64は、円筒状に形成されており、座部62から端子接続部63とは反対の方向、つまり、座部62の下座面62bから第二軸線方向D12に延在している。固定部64の外周面の一部又は全部は、蓋部3に覆われており、固定部64は、その外周面の一部又は全部が蓋部3に埋設されるように蓋部3に固定されている。本実施形態では、固定部64の外周面の前部が蓋部3に覆われている。
【0026】
固定部64の外周面には、1又は複数の環状リブ66が形成されている。環状リブ66は、電解液23の漏液を抑制するために、蓋部3とブッシング6との間の電解液23の染み上がり経路を長くするためのものである。環状リブ66の外径d1は、座部62の外径d2よりも小さくなっている。1又は複数の環状リブ66は、座部62から離間して配置されている。固定部64の外周面に複数の環状リブ66が形成されている場合、複数の環状リブ66は、互いに離間して配置されている。1又は複数の環状リブ66は、例えば、製造容易性等の観点から、切り欠かれておらず、固定部64の周方向D2における全域において同じ断面形状を成している。図1図4に示すブッシング6では、3つの環状リブ66が、軸線方向D1に等間隔に配置されている。
【0027】
ブッシング6を小型化する観点から、座部62の直下の固定部64の外径d3は、例えば、18.0mm以下、17.0mm以下、16.0mm以下、又は15.0mm以下である。座部62の直下に環状リブ66が形成されていなければ、この外径d3は、座部62の直下の固定部64の外径となる。座部62の直下に環状リブ66が形成されていれば、この外径d3は、座部62の直下の環状リブ66の外径となる。
【0028】
複数の回り止め部65は、固定部64の外周面から突出して、蓋部3に対するブッシング6の周方向D2の回転を抑制する部位である。複数の回り止め部65は、固定部64の外周面から突出することで、ブッシング6の周方向D2において蓋部3に引っ掛かる。これにより、複数の回り止め部65は、蓋部3に対するブッシング6の周方向D2の回転を抑制する。
【0029】
複数の回り止め部65の数、位置、形状、大きさなどは、特に限定されるものではない。
【0030】
例えば、回り止め部65は、環状リブ66が形成されていない箇所に設けられていてもよく、環状リブ66上に設けられていてもよく、環状リブ66が形成されていない箇所から環状リブ66上にかけて設けられていてもよい。また、回り止め部65は、座部62に接続(隣接)されていてもよく、座部62から離間されていてもよい。また、回り止め部65は、周方向D2に1つ又は複数設けられていてもよく、軸線方向D1に1つ又は複数設けられていてもよい。
【0031】
ブッシング6を小型化する観点から、複数の回り止め部65の外接円Cの直径d4は、座部62の外径d2以下であってもよい。複数の回り止め部65の外接円Cとは、ブッシング6の平面視(図2及び図5参照)における複数の回り止め部65の外接円である。また、複数の回り止め部65の外接円Cの直径d4は、25.0mm以下、24.0mm以下、23.0mm以下、22.0mm以下、又は21.0mm以下であってもよい。ブッシング6を小型化しつつ、回り止め部65の回り止め面65c(図6及び図7参照)の総面積を確保しやすくする観点から、複数の回り止め部65の外接円Cの直径d4は、20.5mm以上であってもよい。
【0032】
図1図4に示すブッシング6では、複数の回り止め部65として、4つの回り止め部65a及び4つの回り止め部65bのみが設けられている。4つの回り止め部65aは、軸線方向D1と直交する断面において略矩形状に形成されている。4つの回り止め部65bは、軸線方向D1と直交する断面において略三角形状に形成されている。4つの回り止め部65aと4つの回り止め部65bとは、周方向D2に交互に配置されている。4つの回り止め部65a及び4つの回り止め部65bは、座部62の下座面62bに接続されている。そして、4つの回り止め部65a及び4つの回り止め部65bは、座部62の下座面62bから、座部62直下の環状リブ66が形成されていない箇所を通り、当該箇所に隣接する環状リブ66上まで、第二軸線方向D12に延びている。
【0033】
ここで、本発明者らが鋭意検討を行った結果、次のような知見を得た。すなわち、ブッシング6に周方向D2に回転する力が加わると、複数の回り止め部65が蓋部3に押圧される。そして、複数の回り止め部65の蓋部3に押圧される面の面積が所定値以上となると、蓋部3と複数の回り止め部65との間の摩擦力等により、蓋部3に対するブッシング6の周方向D2の回転を抑制することができることが分かった。
【0034】
複数の回り止め部65のそれぞれは、周方向D2における一方側に位置する回り止め面65cを有する。回り止め面65cは、ブッシング6に周方向D2における一方側に回転する力が加わった際に、蓋部3に押圧される面であって、ブッシング6の回転方向における前側に位置する面である。ここで、ブッシング6は、周方向D2の何れの方向にも回転力が加わる可能性があるため、回り止め面65cは、複数の回り止め部65のそれぞれの第一周方向D21側の面であってもよく、複数の回り止め部65のそれぞれの第二周方向D22側の面であってもよい。なお、図面では、一例として、複数の回り止め部65のそれぞれの第一周方向D21側の面が回り止め面65cであるものとして示している。
【0035】
図6は、図5に示すVI部分を拡大した断面図である。図7は、図5に示すVII部分を拡大した断面図である。図6及び図7では、回り止め面65cを太線で示している。図5図7に示すように、回り止め面65cは、周方向D2に対して直交する面であってもよく、周方向D2に対して傾斜する面であってもよい。また、回り止め面65cは、平面状の面であってもよく、曲面状の面で合ってもよく、屈曲する面であってもよい。
【0036】
複数の回り止め部65の回り止め面65cの総面積は、10mm超となっている。複数の回り止め部65の回り止め面65cの総面積は、複数の回り止め部65のそれぞれの回り止め面65cの面積の合計値である。10mm超とは、10mmよりも大きいことを意味する。複数の回り止め部65の回り止め面65cの総面積は、40mm以上、60mm以上、又は70mm以上であってもよい。なお、複数の回り止め部65のそれぞれの第一周方向D21側の面が回り止め面65cである場合、複数の回り止め部65のそれぞれの第二周方向D22側の面が回り止め面65cである場合、の双方の場合において、複数の回り止め部65の回り止め面65cの総面積が上述した範囲であることが好ましいが、何れか一方の場合のみ、複数の回り止め部65の回り止め面65cの総面積が上述した範囲であってもよい。
【0037】
このように、本実施形態に係るブッシング6では、蓋部3に固定される固定部64の外周面から突出する複数の回り止め部65を備えるため、固定部64が蓋部3に固定された際に、蓋部3に対してブッシング6が周方向D2に回転するのを抑制することができる。そして、複数の回り止め部65の回り止め面65cの総面積が10mm超、40mm以上、60mm以上、又は70mm以上であるため、ブッシング6の取付領域が小さい鉛蓄電池1においても、蓋部3に対するブッシング6の周方向D2の回転を抑制して漏液を抑制することができる。
【0038】
また、このブッシング6では、座部62の直下の固定部64の外径が18.0mm以下、17.0mm以下、16.0mm以下、又は15.0mm以下であるため、当該ブッシング6が適用される鉛蓄電池1は小型のものとされる可能性が高い。しかしながら、複数の回り止め部65の回り止め面65cの総面積が10mm超、40mm以上、60mm以上、又は70mm以上であるため、蓋部3に対するブッシング6の周方向D2の回転を抑制して漏液を抑制することができる。
【0039】
また、このブッシング6では、複数の回り止め部65の外接円Cの直径d4が座部62の外径d1以下、25.0mm以下、24.0mm以下、23.0mm以下、22.0mm以下、又は21.0mm以下であるため、ブッシング6の中心軸線Aから回り止め部65の先端までの長さが短い。しかしながら、複数の回り止め部65の回り止め面65cの総面積が10mm超、40mm以上、60mm以上、又は70mm以上であるため、蓋部3に対するブッシング6の周方向D2の回転を抑制して漏液を抑制することができる。
【0040】
本実施形態に係る鉛蓄電池1では、上述したブッシング6を備えるため、蓋部3に対するブッシング6の周方向D2の回転を抑制して漏液を抑制することができる。
【0041】
また、この鉛蓄電池1では、極柱5の上端5aの高さ位置が蓋部3の天面3aの高さ位置よりも低いため、電解液とブッシング6との距離が近くなる傾向にある。このため、電解液の染み上がりに対する対策がより重要となる。このような状況下において、複数の回り止め部65の回り止め面65cの総面積が10mm超であるため、蓋部3に対するブッシング6の周方向D2の回転を抑制して漏液を抑制することが、より効果的である。これは、ブッシング6の取り付け領域が小さい鉛蓄電池1においても、同様である。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例0043】
以下、本発明の実施例を説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
8つの回り止め部と3つの環状リブが設けられたブッシングを作製した。このブッシングでは、8つの回り止め部の回り止め面の総面積が85mmであり、座部の外径が25.0mmであり、座部の直下の固定部の外径が14.0mmであり、8つの回り止め部の外接円の直径が20.6mmであった。
【0045】
(実施例2)
8つの回り止め部と3つの環状リブが設けられたブッシングを作製した。このブッシングでは、8つの回り止め部の回り止め面の総面積が65mmであり、座部の外径が25.0mmであり、座部の直下の固定部の外径が17.3mmであり、8つの回り止め部の外接円の直径が25.0mmであった。
【0046】
(実施例3)
8つの回り止め部と3つの環状リブが設けられたブッシングを作製した。このブッシングでは、8つの回り止め部の回り止め面の総面積が62mmであり、座部の外径が25.0mmであり、座部の直下の固定部の外径が18.5mmであり、8つの回り止め部の外接円の直径が23.0mmであった。
【0047】
(実施例4)
6つの回り止め部と1つの環状リブが設けられたブッシングを作製した。このブッシングでは、6つの回り止め部の回り止め面の総面積が34mmであり、座部の外径が28.3mmであり、座部の直下の固定部の外径が21.5mmであり、6つの回り止め部の外接円の直径が23.0mmであった。
【0048】
(実施例5)
4つの回り止め部と4つの環状リブが設けられたブッシングを作製した。このブッシングでは、4つの回り止め部の回り止め面の総面積が29mmであり、座部の外径が23.8mmであり、座部の直下の固定部の外径が14.0mmであり、4つの回り止め部の外接円の直径が23.8mmであった。
【0049】
(実施例6)
4つの回り止め部と4つの環状リブが設けられたブッシングを作製した。このブッシングでは、4つの回り止め部の回り止め面の総面積が13mmであり、座部の外径が25.0mmであり、座部の直下の固定部の外径が18.5mmであり、4つの回り止め部の外接円の直径が21.5mmであった。
【0050】
(実施例7)
4つの回り止め部と3つの環状リブが設けられたブッシングを作製した。このブッシングでは、4つの回り止め部の回り止め面の総面積が13mmであり、座部の外径が25.0mmであり、座部の直下の固定部の外径が18.5mmであり、4つの回り止め部の外接円の直径が21.5mmであった。
【0051】
(比較例1)
4つの回り止め部と3つの環状リブが設けられたブッシングを作製した。このブッシングでは、4つの回り止め部の回り止め面の総面積が10mmであり、座部の外径が23.0mmであり、座部の直下の固定部の外径が17.5mmであり、4つの回り止め部の外接円の直径が20.0mmであった。
【0052】
(評価)
実施例1~7及び比較例1のブッシングが用いられた鉛蓄電池において、ブッシングの強度について評価した。図8及び図9は、評価方法を説明するための斜視図である。図10は、評価方法を説明するための平面図である。評価では、まず、図8に示すように、ブッシングの座部の上座面から当該上座面に続く蓋部まで基準線を引いた。次に、図9に示すように、ブッシングを第一周方向D21に回転させて、ブッシングの座部の上座面に引いた基準線と蓋部に引いた基準線とのズレ量を計測した。ズレ量は、図10に示すように、上座面に引かれた基準線の蓋部側の先端と、蓋部に引かれた基準線の上座面側の先端との、平面視における直線距離とした。そして、ズレ量が0.10mm以下となった場合を評価A、ズレ量が0.10mm超0.16mm以下となった場合を評価B、ズレ量が0.16mm超となった場合を評価Cとした。評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、回り止め面の総面積が10mmの比較例1は、評価がCであったが、回り止め面の総面積が10mm超となる実施例1~7は、評価がA又はBであった。この結果から、回り止め面の総面積が10mm超となることで、蓋部に対するブッシングの周方向の回転を抑制して漏液を抑制することができるものと推察される。
【0055】
また、回り止め面の総面積が34mm以下の実施例4~7は、評価がBであったが、回り止め面の総面積が34mm超の実施例1~3は、評価がAであった。この結果から、回り止め面の総面積が少なくとも40mm以上となることで、蓋部に対するブッシングの周方向の回転を更に抑制して漏液を更に抑制することができるものと推察される。
【符号の説明】
【0056】
1…鉛蓄電池、2…電槽、3…蓋部、4…電極端子、4A…正極端子、5…極柱、6…ブッシング、21…電極板、22A…正極ストラップ、22B…負極ストラップ、23…電解液、61…挿入穴、62…座部、62a…上座面、62b…下座面、63…端子接続部、64…固定部、65…回り止め部、65a…回り止め部、65b…回り止め部、65c…回り止め面、66…環状リブ、A…中心軸線、C…外接円、D1…軸線方向、D11…第一軸線方向、D12…第二軸線方向、D2…周方向、D21…第一周方向、D22…第二周方向、d1…外径、d2…外径、d3…外径、d4…直径。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10