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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005735
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】動力装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/16 20060101AFI20250109BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20250109BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20250109BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20250109BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60K17/16 E
B60K17/12
H02K7/116
F16H1/06
F16H48/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106045
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 昌弘
【テーマコード(参考)】
3D042
3J009
3J027
5H607
【Fターム(参考)】
3D042AA06
3D042AB01
3D042CA03
3D042CB02
3D042CB03
3J009EA11
3J009EA16
3J009EA35
3J009FA04
3J027FA36
3J027FB01
3J027GA02
3J027GB10
3J027GC22
3J027HB07
3J027HB11
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB05
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD04
5H607EE34
5H607EE36
(57)【要約】
【課題】電動機からの動力を左右の駆動軸に出力する動力装置において、電動機および差動装置の大型化を抑制し、動力装置の車両への搭載性を向上させる。
【解決手段】動力装置10Aは、車両1Aに搭載された動力源としてのモータ20(電動機)と、モータ20の外側でモータ20と同軸上に配置される差動装置30と、差動装置30と左右の駆動軸4R、4Lとの間に配置された一対の減速機構40とを備え、モータ20は、中心部に軸方向Xに沿って延びる貫通孔22aが形成された中空状のロータ22を含み、差動装置30は、ロータ22に接続されて動力が入力されるデフリングギヤ31(入力部材)と、一対の減速機構40のうちの一方(減速機構40R)に接続された第1出力軸36と、ロータ22の貫通孔22aを通って延び、一対の減速機構40のうちの他方(減速機構40L)に接続された第2出力軸37とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された動力源としての電動機と、
前記電動機の外側で前記電動機と同軸上に配置される差動装置と、
前記差動装置と左右の駆動軸との間に配置された一対の減速機構と
を備え、
前記電動機は、中心部に前記左右の駆動軸の軸方向に沿って延びる貫通孔が形成された中空状のロータを含み、
前記差動装置は、前記ロータに接続されて動力が入力される入力部材と、前記一対の減速機構のうちの一方に接続された第1出力軸と、前記ロータの前記貫通孔を通って延び、前記一対の減速機構のうちの他方に接続された第2出力軸とを含む
動力装置。
【請求項2】
前記電動機に電力を供給する電力供給装置をさらに備え、
前記電動機および前記差動装置は、前記左右の駆動軸の径方向において前記左右の駆動軸からオフセットして配置され、
前記電力供給装置は、前記電動機および前記差動装置と前記一対の減速機構と前記左右の駆動軸との間に形成される空間に配置される請求項1に記載の動力装置。
【請求項3】
前記差動装置の前記入力部材は、前記車両のパーキングギヤを構成する請求項1に記載の動力装置。
【請求項4】
前記一対の減速機構は、互いに噛み合いするか、または、互いに接続された複数の外歯ギヤで構成される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の動力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、電動機からの動力を左右の駆動軸に出力する動力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され、電動機からの動力を左右の駆動軸に出力する動力装置に関する技術が知られている。例えば、特許文献1には、電動機の中空ロータシャフト内に差動ギヤアセンブリ(差動装置)を組み込んだパワートレインアセンブリが記載されている。このパワートレインアセンブリでは、遊星アセンブリ、差動ギアアセンブリおよび遊星アセンブリがロータシャフト内で同軸に配置し、軸方向における幅の短縮化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6966035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構造では、動力装置の軸方向における幅は短くできるものの、電動機のロータ内に差動装置や減速機構としての遊星歯車機構が挿入されるため、電動機の外径が大きくなってしまう。また、例えば上記特許文献1の図1に示されるように、一般的に使用される電気自動車の動力装置では、電動機のロータから複数の減速ギヤを介して差動装置が接続されており、減速ギヤにより増幅されたトルク分だけ差動装置に入力されるトルクが大きくなる。そのため、耐久性を確保するために差動装置が大型化しやすく、結果として動力装置の大型化を招く可能性がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電動機からの動力を左右の駆動軸に出力する動力装置において、電動機および差動装置の大型化を抑制し、動力装置の車両への搭載性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の動力装置は、車両に搭載された動力源としての電動機と、前記電動機の外側で前記電動機と同軸上に配置される差動装置と、前記差動装置と左右の駆動軸との間に配置された一対の減速機構とを備え、前記電動機は、中心部に前記左右の駆動軸の軸方向に沿って延びる貫通孔が形成された中空状のロータを含み、前記差動装置は、前記ロータに接続されて動力が入力される入力部材と、前記一対の減速機構のうちの一方に接続された第1出力軸と、前記ロータの前記貫通孔を通って延び、前記一対の減速機構のうちの他方に接続された第2出力軸とを含む。
【0007】
この構成により、差動装置を電動機の外側で同軸上に配置し、差動装置の構成要素のうち第2出力軸のみをロータ内に通すため、差動装置をロータの内側に収容する場合に比べて、電動機の小径化を図ることができる。また、電動機のロータに差動装置の入力部材を接続し、差動装置から左右の駆動軸までの間に一対の減速機構を設けることで、差動装置には電動機からのトルクが入力されるようにして、減速後の増幅されたトルクが入力されないようにすることができる。その結果、差動装置の大型化を抑制することができる。したがって、本発明によれば、電動機からの動力を左右の駆動軸に出力する動力装置において、電動機および差動装置の大型化を抑制し、動力装置の車両への搭載性を向上させることが可能となる。
【0008】
また、上記動力装置は、前記電動機に電量を供給する電力供給装置をさらに備え、前記電動機および前記差動装置は、前記左右の駆動軸の径方向において前記左右の駆動軸からオフセットして配置され、前記電力供給装置は、前記電動機および前記差動装置と前記一対の減速機構と前記左右の駆動軸との間に形成される空間に配置されることが好ましい。この構成により、電力供給装置の配置スペースを確保して動力装置の車両への搭載性を向上させつつ、電力供給装置を電動機に近接して配置することができる。
【0009】
また、前記差動装置の前記入力部材は、前記車両のパーキングギヤを構成することが好ましい。この構成により、動力装置が搭載される車両の部品点数の削減を図ることができる。
【0010】
また、前記一対の減速機構は、互いに噛み合いするか、または、互いに接続された複数の外歯ギヤで構成されることが好ましい。この構成により、減速機構として遊星歯車機構を用いる場合に比べて減速比を大きく設定しやすくなる。また、複数の外歯ギヤを組み替えることで、電動機および差動装置の配置位置の変更に容易に対応することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動機からの動力を左右の駆動軸に出力する動力装置において、電動機および差動装置の大型化を抑制し、動力装置の車両への搭載性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の動力装置を備えた車両の要部を示す概略構成図である。
図2】他の例の動力装置を備えた車両の要部を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。図1は、実施形態の動力装置を備えた車両の要部を示す概略構成図である。なお、図1では、図中の上下方向が鉛直方向を示し、左右方向が車両1Aの車幅方向を示す。車両1Aは、動力源としてのモータ20(電動機)からの動力を左右の駆動軸4R、4Lを介して駆動輪としての左右の前輪2R、2Lへと伝達して走行する電動車両である。駆動軸4R、4Lは、同軸上に配置されている。車両1Aには、上記モータ20と、差動装置30と、一対の減速機構40と、電力供給装置50とを備えた動力装置10Aが搭載されている。
【0014】
モータ20は、駆動軸4R、4Lの径方向Yにおいて駆動軸4R、4Lからオフセットされた位置に配置される。モータ20は、図示しない永久磁石を含む回転子としてのロータ22を備えている。ロータ22は、駆動軸4R、4Lの軸方向Xと平行な軸周りに回転自在とされている。ロータ22は、その中心部に軸方向Xに沿って延びる貫通孔22aが形成された中空状の部材として構成されている。また、ロータ22の外周部には、固定子としての図示しないステータが設けられる。モータ20は、ステータに取り付けられた図示しない複数のコイルに電力供給装置50から交流電力が供給され、複数のコイルで発生する磁界により、永久磁石を含むロータ22を回転させる。
【0015】
差動装置30は、デフリングギヤ31(入力部材)と、デフケース32と、一対のピニオンギヤ33と、第1サイドギヤ34と、第2サイドギヤ35とを含むベベルギヤ(傘歯車)式の差動装置である。差動装置30は、モータ20と同軸上に配置され、径方向Yにおいてモータ20と共に駆動軸4R、4Lからオフセットされて配置されている。
【0016】
デフリングギヤ31は、モータ20のロータ22に接続され、ロータ22と共に回転する。デフケース32は、デフリングギヤ31に接続され、その内部に一対のピニオンギヤ33、第1サイドギヤ34および第2サイドギヤ35を収容する。一対のピニオンギヤ33は、デフケース32により支持されたベベルギヤであり、デフケース32と共にロータ22周りに回転する。第1サイドギヤ34および第2サイドギヤ35は、デフケース32内に収容されて一対のピニオンギヤ33と噛み合い、ロータ22の軸周りに回転自在に支持される。
【0017】
また、第1サイドギヤ34からは、ロータ22と同軸上に第1出力軸36が延出されている。第1出力軸36は、軸方向Xに沿って延びてデフケース32を貫通し、一対の減速機構40の一方(後述する減速機構40R)を介して前輪2Rに接続されている。一方、第2サイドギヤ35からは、ロータ22と同軸上に第2出力軸37が延出されている。第2出力軸37は、軸方向Xに沿って延び、中空状に形成されたロータ22の貫通孔22aを通って当該ロータ22よりも前輪2L側まで延在する。第2出力軸37は、一対の減速機構40の他方(後述する減速機構40L)を介して前輪2Lに接続されている。
【0018】
これにより、車両1Aの直進時において、差動装置30は、一対のピニオンギヤ33と第1サイドギヤ34および第2サイドギヤ35とが相対回転することなくロータ22の軸周りに回転し、前輪2R、2Lにモータ20の動力を伝達する。一方、差動装置30は、車両1Aの旋回時において、一対のピニオンギヤ33と第1サイドギヤ34および第2サイドギヤ35とが相対回転することで、前輪2R、2Lの回転数差を吸収しつつ、ロータ22の軸周りに回転して前輪2R、2Lにモータ20の動力を伝達する。
【0019】
また、本実施形態において、差動装置30のデフリングギヤ31は、車両1AのシフトレンジがPレンジ(パーキングレンジ)に設定されたときに、駆動軸4R、4Lの回転をロックするためのパーキングロック装置の一部を構成する。具体的には、デフリングギヤ31は、図示しない複数の外歯が形成されており、運転者によりPレンジが選択されると、図示しないパーキングスプラグに形成された爪部と当該外歯とが係合することで回転不能に固定される。
【0020】
一対の減速機構40は、前輪2Rに接続された減速機構40Rと、前輪2Lに接続された減速機構40Lとを含む。減速機構40Rは、軸方向Xにおいて、モータ20および差動装置30よりも駆動軸4R側(前輪2R側)に配置される。また、減速機構40Lは、軸方向Xにおいて、モータ20および差動装置30よりも駆動軸4L側(前輪2L側)に配置される。したがって、モータ20および差動装置30と、一対の減速機構40と、駆動軸4R、4Lの間には、空間V(破線で示した範囲参照)が形成される。
【0021】
各減速機構40R、40Lは、互いに噛み合いするか、または、互いに接続された複数の外歯ギヤで構成されている。具体的には、減速機構40R、40Lは、第1減速ギヤ41と、第2減速ギヤ42と、第3減速ギヤ43と、第4減速ギヤ44とを含む。第1減速ギヤ41は、ロータ22と同軸上に配置された外歯ギヤであり、差動装置30に接続されている。具体的には、減速機構40Rの第1減速ギヤ41は、差動装置30の第1サイドギヤ34から延びる第1出力軸36に接続されている。一方、減速機構40Lの第1減速ギヤ41は、差動装置30の第2サイドギヤ35から延びる第2出力軸37に接続されている。第2減速ギヤ42は、第1減速ギヤ41に噛み合う外歯ギヤであり、第1減速ギヤ41の下方に配置される。第3減速ギヤ43は、第2減速ギヤ42と同軸上に配置され、第2減速ギヤ42に接続されている。第4減速ギヤ44は、第3減速ギヤ43の下方に配置されて第3減速ギヤと噛み合う外歯ギヤであり、駆動軸4R、4Lと同軸上に配置されている。減速機構40Rの第4減速ギヤ44は、駆動軸4Rに接続され、減速機構40Lの第4減速ギヤ44は、駆動軸4Lに接続されている。これにより、一対の減速機構40は、モータ20からの回転を所定の減速比で減速しつつ、トルクを増幅して各駆動軸4R、4Lへと出力する。
【0022】
電力供給装置50は、インバータ52と、オイルタンク54とを含む。インバータ52は、車両に搭載されたバッテリといった図示しない電力源からの直流電力を交流電力に変換し、モータ20の図示しない複数のコイルに供給する電力変換装置である。インバータ52は、油冷式のインバータであり、オイルタンク54に貯留されたオイルによって冷却される。なお、オイルタンク54は、電力供給装置50とは別の箇所に配置されてもよい。また、インバータ52は、水冷式や空冷式であってもよく、インバータ52が水冷式である場合、オイルタンク54は冷却水を貯留するタンクであればよく、インバータ52が空冷式である場合、オイルタンク54は省略されてもよい。さらに、電力供給装置50は、昇圧回路としてのコンバータといったモータ20へと電力を供給するための他の装置や、電力源としてのバッテリを含んでもよい。電力供給装置50は、モータ20および差動装置30と、一対の減速機構40と、駆動軸4R、4Lの間に形成された上記空間Vに配置される。電力供給装置50は、モータ20と十分に近接し、車両1Aに要求される最低地上高を満たすように配置されればよい。
【0023】
以上説明したように、実施形態の動力装置10Aは、車両1Aに搭載された動力源としてのモータ20(電動機)と、モータ20の外側でモータ20と同軸上に配置される差動装置30と、差動装置30と左右の駆動軸4R、4Lとの間に配置された一対の減速機構40とを備え、モータ20は、中心部に軸方向Xに沿って延びる貫通孔22aが形成された中空状のロータ22を含み、差動装置30は、ロータ22に接続されて動力が入力されるデフリングギヤ31(入力部材)と、一対の減速機構40のうちの一方(減速機構40R)に接続された第1出力軸36と、ロータ22の貫通孔22aを通って延び、一対の減速機構40のうちの他方(減速機構40L)に接続された第2出力軸37とを含む。
【0024】
この構成により、差動装置30をモータ20の外側で同軸上に配置し、差動装置30の構成要素のうち第2出力軸37のみをロータ22内に通すため、差動装置30をロータ22の内側に収容する場合に比べて、モータ20(ロータ22)の小径化を図ることができる。また、モータ20のロータ22に差動装置30のデフリングギヤ31を接続し、差動装置30から左右の駆動軸4R、4Lまでの間に一対の減速機構40を設けることで、差動装置30にはモータ20からのトルクが入力されるようにして、減速後の増幅されたトルクが入力されないようにすることができる。その結果、差動装置30の大型化を抑制することができる。したがって、モータ20からの動力を左右の駆動軸4R、4Lに出力する動力装置10Aにおいて、モータ20および差動装置30の大型化を抑制し、動力装置10Aの車両への搭載性を向上させることが可能となる。
【0025】
また、上述のようにロータ22を小径化することができるということは、言い換えると、差動装置30をロータ22の内側に収容する場合とロータ22の外径を同じにした場合に、ロータ22の外径(体積)をより大きくすることができるということである。したがって、ロータ22の外径を適宜調整することで、モータ20に要求される出力の大きさと、モータ20の小型化による動力装置10Aの車両1Aへの搭載性の向上との両立を図ることが可能となる。
【0026】
また、動力装置10Aでは、モータ20や差動装置30を駆動軸4R、4Lと同軸上に配置する必要がない。そのため、仮にモータ20や差動装置30を比較的に大径に形成したとしても、車両1Aに要求される最低地上高を確保しやすい。したがって、動力装置10Aの車両1Aの搭載性をより向上させることができる。
【0027】
また、差動装置30がモータ20の外側に配置されるため、差動装置30をロータ22の内側に収容する場合に比べて、差動装置30の構造や大きさがロータ22の大きさに制約されないようにすることができる。さらに、差動装置30を潤滑するための潤滑油の供給経路や機構をより設けやすくなる。
【0028】
また、動力装置10Aは、モータ20に電力を供給する電力供給装置50をさらに備え、モータ20および差動装置30は、左右の駆動軸4R、4Lの径方向Yにおいて左右の駆動軸4R、4Lからオフセットして配置され、電力供給装置50は、モータ20および差動装置30と一対の減速機構40と左右の駆動軸4R、4Lとの間に形成される空間Vに配置される。この構成により、電力供給装置50の配置スペースを確保して動力装置10Aの車両1Aへの搭載性を向上させつつ、電力供給装置50をモータ20に近接して配置することができる。
【0029】
また、差動装置30のデフリングギヤ31は、車両1Aのパーキングギヤを構成する。この構成により、動力装置10Aが搭載される車両1Aの部品点数の削減を図ることができる。
【0030】
また、一対の減速機構40は、互いに噛み合いするか、または、互いに接続された複数の外歯ギヤ(第1減速ギヤ41、第2減速ギヤ42、第3減速ギヤ43および第4減速ギヤ44)で構成される。動力装置10Aでは、差動装置30のみならず、一対の減速機構40もモータ20の外側に配置されるため、一対の減速機構40もロータ22の大きさに制約されない。それにより、複数の外歯ギヤ(第1減速ギヤ41、第2減速ギヤ42、第3減速ギヤ43、第4減速ギヤ44)を用いた減速機構を採用することができる。この構成により、一対の減速機構40として遊星歯車機構を用いる場合に比べて減速比を大きく設定しやすくなる。
【0031】
図2は、他の例の動力装置10Bが適用された車両1Bの要部を示す概略構成図である。動力装置10Bにおいて、モータ20および差動装置30は、車両1Bの下部で駆動軸4R、4Lに近接した位置に配置されている。モータ20および差動装置30は、車両1Bに要求される最低地上高を満たすように配置されればよく、ここでは駆動軸4R、4Lよりもやや上方にオフセットされて配置されている。一方、電力供給装置50は、モータ20および差動装置30の上方の空間において、モータ20に近接して設けられる。上述したように、動力装置10Bでは、モータ20を駆動軸4R、4Lと同軸上に配置する必要がなく、かつ、モータ20の大径化を抑制することができる。そのため、モータ20および差動装置30を車両1Bの下部に配置した場合でも、車両1Bに要求される最低地上高を容易に確保することが可能である。
【0032】
また、動力装置10Bでは、モータ20および差動装置30の配置位置にあわせて一対の減速機構40の各外歯ギヤが組み替えられている。具体的には、第2減速ギヤ42が第1減速ギヤ41の上方に配置され、第4減速ギヤ44が第3減速ギヤ43の下方に配置されることで、全体として上下に折り返す構成となっている。このように、複数の外歯ギヤ(第1減速ギヤ41、第2減速ギヤ42、第3減速ギヤ43および第4減速ギヤ44)の例えば配置位置を組み替えることで、モータ20および差動装置30や電力供給装置50の配置位置の変更に容易に対応することができる。
【0033】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、差動装置30は、上記入力部材、第1出力軸および第2出力軸を含むものであれば、実施形態で示したベベルギヤ式の差動装置に限らない。差動装置30は、例えば遊星歯車機構式の差動装置であってもよいし、LSD(Limited Slip Differential Gear)であってもよい。実施形態の動力装置10A、10Bでは、上述したように、差動装置30の大きさや構造がロータ22の大きさに制約されないため、種々の構成を採用しやすくなる。また、差動装置30は、入力部材が車両1A、1Bのパーキングギヤを構成するものでなくてもよい。
【0034】
また、一対の減速機構40は、遊星歯車機構を用いた減速機構であってもよい。また、電力供給装置50は、図1および図2に示した位置に限らず、車両1A、1Bのいずれかの箇所に搭載されればよい。
【符号の説明】
【0035】
1A、1B 車両
2R、2L 前輪
4R、4L 駆動軸
10A、10B 動力装置
20 モータ(電動機)
22 ロータ
22a 貫通孔
30 差動装置
31 デフリングギヤ(入力部材)
36 第1出力軸
37 第2出力軸
40 一対の減速機構
50 電力供給装置
V 空間
X 軸方向
Y 径方向
図1
図2