(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005738
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/663 20180101AFI20250109BHJP
F21S 41/151 20180101ALI20250109BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20250109BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20250109BHJP
F21W 102/17 20180101ALN20250109BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20250109BHJP
【FI】
F21S41/663
F21S41/151
F21Y115:10
F21Y115:30
F21W102:17
F21W102:13
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106051
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石川 亮
(72)【発明者】
【氏名】関根 佑介
(57)【要約】
【課題】互いに異なる照射範囲に向けて出射される光の重ね合わせによって、良好な配光パターンを形成することを可能とした車両用灯具を提供する。
【解決手段】第1のランプユニット10と第2のランプユニット20との間に配置された第3のランプユニット30とを備え、第3のランプユニット30は、互いに異なる照射範囲に向けて光L3,L4を出射する第3のランプセル31及び第4のランプセル32を含み、第1のランプユニット10の点灯時に、第3のランプセル31が出射する光L3の照射範囲を複数の第1のランプセル11が出射する光L1の照射範囲に重ね合わせることによって、第1の配光パターンの一部を形成し、第2のランプユニット20の点灯時に、第4のランプセル32が出射する光L4の照射範囲を複数の第2のランプセル21が出射する光L2の照射範囲に重ね合わせることによって、第2の配光パターンの一部を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる照射範囲に向けて光を出射する複数の第1のランプセルを含み、前記複数の第1のランプセルが出射する光の照射範囲を重ね合わせることによって、第1の配光パターンを形成する第1のランプユニットと、
互いに異なる照射範囲に向けて光を出射する複数の第2のランプセルを含み、前記複数の第2のランプセルが出射する光の照射範囲を重ね合わせることによって、第2の配光パターンを形成する第2のランプユニットと、
前記第1のランプユニットと前記第2のランプユニットとの間に配置された第3のランプユニットとを備え、
前記第3のランプユニットは、互いに異なる照射範囲に向けて光を出射する第3のランプセル及び第4のランプセルを含み、
前記第1のランプユニットの点灯時に、前記第3のランプセルが出射する光の照射範囲を前記複数の第1のランプセルが出射する光の照射範囲に重ね合わせることによって、前記第1の配光パターンの一部を形成し、
前記第2のランプユニットの点灯時に、前記第4のランプセルが出射する光の照射範囲を前記複数の第2のランプセルが出射する光の照射範囲に重ね合わせることによって、前記第2の配光パターンの一部を形成することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記複数の第1のランプセルが出射する光の照射範囲よりも車幅方向の外側に、前記第3のランプセルが出射する光の照射範囲が位置し、
前記複数の第2のランプセルが出射する光の照射範囲よりも車幅方向の外側に、前記第4のランプセルが出射する光の照射範囲が位置することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記複数の第1のランプセルは、車幅方向に並んで配置され、
前記複数の第2のランプセルは、車幅方向に並んで配置され、
前記第3のランプセル及び前記第4のランプセルは、車幅方向に並んで配置されると共に、前記第3のランプセルが前記第1のランプセル側に位置し、前記第4のランプセルが前記第2のランプセル側に位置することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第1の配光パターンは、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンであり、
前記第2の配光パターンは、前記ロービーム用配光パターンよりも上方に位置するハイビーム用配光パターンであることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第2のランプユニット及び前記第3のランプユニットは、前記複数の第2のランプセル及び前記第4のランプセルの点灯を切り替えながら、前記第2の配光パターンを可変に制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用前照灯(ヘッドランプ)などの車両用灯具は、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成する光を車両前方に向けて照射する。若しくは、走行用ビーム(ハイビーム)として、ロービーム用配光パターンよりも上方にハイビーム用配光パターンを形成する光を車両前方に向けて照射する。
【0003】
車両用前照灯は、車両の前端側の両コーナー部に搭載された灯体の内側に、上述したロービームを照射するロービーム用ランプと、ハイビームを照射するハイビーム用ランプとを並べて配置した構造を有している(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【0004】
また、下記特許文献1には、互いに異なる照射範囲に向けて光を出射する4つの光学ユニットを備え、各光学ユニットが出射する光の照射範囲を重ね合わせることによって、ロービーム用配光パターンを形成する車両用前照灯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来の車両用前照灯では、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとの繋がり感がなく、視認性に欠けることがある。
【0007】
また、各光学ユニットが出射する光の照射範囲を重ね合わせる際に、互いに重なり合うカットオフラインの位置合わせを精度良く行う必要がある。また、このようなカットオフラインのバラツキを解消するためには、部品の加工精度や組み立て精度を高める必要があり、製造コストが嵩むことになる。
【0008】
さらに、複数の光学ユニットを用いるため、部品点数の増加によりコストが嵩むだけでなく、灯体の大型化を招くことになる。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、部品点数の増加を抑制しながら、互いに異なる照射範囲に向けて出射される光の重ね合わせによって、良好な配光パターンを形成することを可能とした車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 互いに異なる照射範囲に向けて光を出射する複数の第1のランプセルを含み、前記複数の第1のランプセルが出射する光の照射範囲を重ね合わせることによって、第1の配光パターンを形成する第1のランプユニットと、
互いに異なる照射範囲に向けて光を出射する複数の第2のランプセルを含み、前記複数の第2のランプセルが出射する光の照射範囲を重ね合わせることによって、第2の配光パターンを形成する第2のランプユニットと、
前記第1のランプユニットと前記第2のランプユニットとの間に配置された第3のランプユニットとを備え、
前記第3のランプユニットは、互いに異なる照射範囲に向けて光を出射する第3のランプセル及び第4のランプセルを含み、
前記第1のランプユニットの点灯時に、前記第3のランプセルが出射する光の照射範囲を前記複数の第1のランプセルが出射する光の照射範囲に重ね合わせることによって、前記第1の配光パターンの一部を形成し、
前記第2のランプユニットの点灯時に、前記第4のランプセルが出射する光の照射範囲を前記複数の第2のランプセルが出射する光の照射範囲に重ね合わせることによって、前記第2の配光パターンの一部を形成することを特徴とする車両用灯具。
〔2〕 前記複数の第1のランプセルが出射する光の照射範囲よりも車幅方向の外側に、前記第3のランプセルが出射する光の照射範囲が位置し、
前記複数の第2のランプセルが出射する光の照射範囲よりも車幅方向の外側に、前記第4のランプセルが出射する光の照射範囲が位置することを特徴とする前記〔1〕に記載の車両用灯具。
〔3〕 前記複数の第1のランプセルは、車幅方向に並んで配置され、
前記複数の第2のランプセルは、車幅方向に並んで配置され、
前記第3のランプセル及び前記第4のランプセルは、車幅方向に並んで配置されると共に、前記第3のランプセルが前記第1のランプセル側に位置し、前記第4のランプセルが前記第2のランプセル側に位置することを特徴とする前記〔1〕に記載の車両用灯具。
〔4〕 前記第1の配光パターンは、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンであり、
前記第2の配光パターンは、前記ロービーム用配光パターンよりも上方に位置するハイビーム用配光パターンであることを特徴とする前記〔1〕に記載の車両用灯具。
〔5〕 前記第2のランプユニット及び前記第3のランプユニットは、前記複数の第2のランプセル及び前記第4のランプセルの点灯を切り替えながら、前記第2の配光パターンを可変に制御することを特徴とする前記〔1〕に記載の車両用灯具。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、部品点数の増加を抑制しながら、互いに異なる照射範囲に向けて出射される光の重ね合わせによって、良好な配光パターンを形成することを可能とした車両用灯具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用灯具を備えた車両を示す正面図である。
【
図2】第1~第3のランプユニットを構成する第1~第4のランプセルの配列を示す平面図である。
【
図3】
図1に示す車両用灯具が備える第1のランプユニットの構成を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す第1のランプユニットの構成を示す水平断面図である。
【
図5】
図1に示す車両用灯具が備える第2のランプユニットの構成を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す第2のランプユニットの構成を示す水平断面図である。
【
図7】
図1に示す車両用灯具が備える第3のランプユニットの構成を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示す第3のランプユニットの構成を示す水平断面図である。
【
図9】第1のランプユニットを構成する複数の第1のランプセルにより仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す光度分布図である。
【
図10】第3のランプユニットを構成する第3のランプセルにより仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す光度分布図である。
【
図11】
図9に示す配光パターンと、
図10に示す配光パターンとの重ね合わせによって仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す光度分布図である。
【
図12】
図9に示す配光パターンを車両前方の路面に投影した写真である。
【
図13】
図11に示す配光パターンを車両前方の路面に投影した写真である。
【
図14】
図9に示す配光パターンと、
図11に示す配光パターンとを車両前方の路面に投影したときの
図10に示す配光パターンの有無による照射範囲の違いを示す模式図である。
【
図15】第2のランプユニットを構成する複数の第2のランプセルにより仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す光度分布図である。
【
図16】第3のランプユニットを構成する第4のランプセルにより仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す光度分布図である。
【
図17】
図12に示す配光パターンと、
図13に示す配光パターンとの重ね合わせによって仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す光度分布図である。
【
図18】
図15に示す配光パターンを車両前方の路面に投影した写真である。
【
図19】
図17に示す配光パターンを車両前方の路面に投影した写真である。
【
図20】
図15に示す配光パターンと、
図17に示す配光パターンとを車両前方の路面に投影したときの
図16に示す配光パターンの有無による照射範囲の違いを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0014】
先ず、本発明の一実施形態として、例えば
図1~
図8に示す車両用灯具1の構成について説明する。
【0015】
なお、
図1は、車両用灯具1を備えた車両Bを示す正面図である。
図2は、第1~第3のランプユニット10,20,30を構成する第1~第4のランプセル11,21,31,32の配列を示す平面図である。
図3は、車両用灯具1が備える第1のランプユニット10の構成を示す斜視図である。
図4は、第1のランプユニット10の構成を示す水平断面図である。
図5は、車両用灯具1が備える第2のランプユニット20の構成を示す斜視図である。
図6は、第2のランプユニット20の構成を示す水平断面図である。
図7は、車両用灯具1が備える第3のランプユニット30の構成を示す斜視図である。
図8は、第3のランプユニット30の構成を示す水平断面図である。
【0016】
また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を車両用灯具1(車両B)の前後方向(長さ方向)、Y軸方向を車両用灯具1(車両B)の左右方向(幅方向)、Z軸方向を車両用灯具1(車両B)の上下方向(高さ方向)として、それぞれ示すものとする。
【0017】
本実施形態の車両用灯具1は、
図1に示すように、車両Bの前端側の両コーナー部に搭載される車両用前照灯(ヘッドランプ)に本発明を適用したものである。
【0018】
なお、車両Bの左右両側に配置される車両用前照灯(ヘッドランプ)は、左右対称な構造となる以外は、基本的に同じ構造を有している。したがって、本実施形態では、車両用灯具1として、車両右側の車両用前照灯(ヘッドランプ)を参照しながら、その具体的な構成を説明するものとする。
【0019】
本実施形態の車両用灯具1は、
図1及び
図2に示すように、車両Bの前方(+X軸方向)に向けて光を照射する第1のランプユニット10、第2のランプユニット20及び第3のランプユニット30を備え、これらが灯体2の内側に配置された構造を有している。
【0020】
灯体2は、前面が開口したハウジングと、このハウジングの開口を覆う透明なアウターレンズとにより構成される。なお、灯体2の形状については、車両Bのデザイン等に合わせて、適宜変更することが可能である。
【0021】
3つのランプユニット10,20,30のうち、第1のランプユニット10は、車両Bの幅方向(以下、「車幅方向」という。)の外側に位置して、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターン(第1の配光パターン)を形成する光L1を車両Bの前方に向けて照射するロービーム用ランプユニット(LO)を構成している。
【0022】
一方、第2のランプユニット20は、車幅方向の内側に位置して、ロービーム用配光パターンよりも上方にハイビーム用配光パターン(第2の配光パターン)を形成する光L2を車両Bの前方に向けて照射するハイビーム用ランプユニット(Hi)を構成している。
【0023】
一方、第3のランプユニット30は、第1のランプユニット10と第2のランプユニット20との間に位置して、ロービーム用配光パターンの一部を形成する光L3と、ハイビーム用配光パターンの一部を形成する光L4とを車両Bの前方に向けて照射する追加用ランプユニット(Add)を構成している。
【0024】
すなわち、本実施形態の車両用灯具1では、車幅方向の内側から外側に向かって、第2のランプユニット20と、第3のランプユニット30と、第1のランプユニット10とが順に並んで配置されている。
【0025】
第1のランプユニット10は、
図2、
図3及び
図4に示すように、車幅方向に並んで配置された複数(本実施形態では6つ)の第1のランプセル11を備えている。
【0026】
各第1のランプセル11は、第1の光源部3Aと、第1の光源部3Aの前方に配置された第1のレンズ部4Aとを備えている。
【0027】
第1の光源部3Aは、複数の光源5と、複数の光源5が正面側に実装された回路基板6と、回路基板6の背面側に接触した状態で、複数の光源5が発する熱を放熱させるヒートシンク7とを有している。
【0028】
第1のレンズ部4Aは、複数の光源5の前方に配置された第1のインナーレンズ8と、第1のインナーレンズ8の前方に配置された第2のインナーレンズ9とを有している。
【0029】
複数の光源5は、例えば白色光を発する発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等の発光素子からなる。複数の光源5は、回路基板6の正面側において車幅方向に並んで配置されている。複数の光源5は、前方の第1のインナーレンズ8に向けて光L1を放射状に出射する。
【0030】
第1のインナーレンズ8及び第2のインナーレンズ9は、例えばポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂やガラスなどの光透過性部材からなる。
【0031】
各第1のランプセル11を構成する第1のインナーレンズ8は、車幅方向において互いに隣り合うもの同士が連結された1つのレンズ結合体により構成されている。一方、各第1のランプセル11を構成する第2のインナーレンズ9は、車幅方向において連続した1つのレンズ体により構成されている。
【0032】
第1のインナーレンズ8は、その背面側に第1の入射部81と、その正面側に第1の出射面82と、第1の入射部81と第1の出射面82との間の下面側に反射面83とを有している。
【0033】
第1の入射部81は、光源5から出射された光L1を光軸寄りに集光しながら、第1のインナーレンズ8の内部へと入射するレンズ形状を有している。
【0034】
具体的に、この第1の入射部81は、光源5と対向する部分の中央に位置して、光源5から出射された光L1の一部が入射する第1の集光入射面81aと、第1の集光入射面81aの周囲を囲む位置から光源5側に突出した突出部の内周側に位置して、光源5から出射された光L1の一部が入射する第2の集光入射面81bと、突出部の外周側に位置して、第2の集光入射面81bから入射した光L1を反射する集光反射面81cとを有している。
【0035】
第1の入射部81では、光源5から出射された光L1のうち、第1の集光入射面81aから入射した光L1を光源5から出射された光L1の光軸寄りに集光させる。一方、第2の集光入射面81bから入射した光L1を集光反射面81cで反射させることによって光源5から出射された光L1の光軸寄りに集光させる。
【0036】
これにより、第1のランプセル11では、光源5から出射された光L1を第1の入射部81から平行化又は集光しながら、第1のインナーレンズ8の内部へと入射する。また、第1の入射部81から第1のインナーレンズ8の内部に入射した光L1は、第1のインナーレンズ8の正面側に向けて導光される。
【0037】
反射面83は、第1の入射部81と第1の出射面82との間の下面側の一部を切り欠くカット面により構成されている。また、反射面83の前端部は、第1のインナーレンズ8の内部に入射した光L1のカットオフラインを規定している。
【0038】
第1のランプセル11では、この反射面83に入射した光L1を第1のインナーレンズ8の正面側に向けて反射する。
【0039】
第1の出射面82は、その円柱軸が鉛直方向に延在した半円柱状のレンズ面(シリンドリカル面)により構成されている。
【0040】
第1のランプセル11では、第1の出射面82に入射した光L1を水平方向(幅方向)において集光しながら、第1のインナーレンズ8の外部へと出射する。
【0041】
第2のインナーレンズ9は、その背面側に第2の入射面91と、その正面側に第2の出射面92とを有している。
【0042】
第2の入射面91は、水平方向に延在した平面により構成されている。第2の出射面92は、その円柱軸が水平方向に延在した半円柱状のレンズ面(シリンドリカル面)により構成されている。
【0043】
第1のランプセル11では、第1のインナーレンズ8から出射された光L1を第2の入射面91から第2のインナーレンズ9の内部に入射した後、第2の出射面92に入射した光L1を鉛直方向(高さ方向)において集光しながら、第2のインナーレンズ9の外部へと出射する。
【0044】
第1のランプユニット10では、複数の第1のランプセル11が互いに異なる照射範囲に向けて光L1を出射する。また、これら複数の第1のランプセル11が出射する光L1の照射範囲を重ね合わせることによって、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成する。
【0045】
本実施形態では、複数の第1のランプセル11が出射する光L1の照射範囲を、中心付近に光L1を集光させたスポット(S)と、広範囲に光L1を拡散させたワイド(W)と、その中間となるミッド(M)とに区別して配光を制御している。
【0046】
各第1のランプセル11による配光制御は、例えば上記第1の入射部81における光L1の集光度合いを調整することにより行うことが可能である。
【0047】
具体的に、本実施形態では、6つの第1のランプセル11のうち、車幅方向の内側から順に、1(S)、2(M)、3(W)、4(W)、5(W)、6(W)となるように、照射範囲の配光制御を行っている。
【0048】
第2のランプユニット20は、
図2、
図5及び
図6に示すように、車幅方向に並んで配置された複数(本実施形態では4つ)の第2のランプセル21を備えている。
【0049】
各第2のランプセル21は、第2の光源部3Bと、第2の光源部3Bの前方に配置された第2のレンズ部4Bとを備えている。
【0050】
第2の光源部3Bは、上記第1の光源部3Aと同様に、複数の光源5と、複数の光源5が正面側に実装された回路基板6と、回路基板6の背面側に接触した状態で、複数の光源5が発する熱を放熱させるヒートシンク7とを有している。
【0051】
第2のレンズ部4Bは、上記第1のレンズ部4Aと同様に、複数の光源5の前方に配置された第1のインナーレンズ8と、第1のインナーレンズ8の前方に配置された第2のインナーレンズ9とを有している。
【0052】
一方、第2のレンズ部4Bを構成する第1のインナーレンズ8は、上記反射面83が省略された構成となっている。
【0053】
第2のランプユニット20では、複数の第2のランプセル21が互いに異なる照射範囲に向けて光L2を出射する。また、これら複数の第2のランプセル21が出射する光L2の照射範囲を重ね合わせることによって、ロービーム用配光パターンよりも上方にハイビーム用配光パターンを形成する。
【0054】
本実施形態では、4つの第2のランプセル21のうち、車幅方向の内側から順に、1(S)、2(S)、3(S)、4(S)となるように、照射範囲の配光制御を行っている。
【0055】
第3のランプユニット30は、
図2、
図7及び
図8に示すように、車幅方向に並んで配置された第3のランプセル31及び第4のランプセル32を備えている。
【0056】
このうち、第3のランプセル31は、車幅方向の第1のランプセル11側に位置している。一方、第4のランプセル32は、車幅方向の第2のランプセル21側に位置している。
【0057】
本実施形態では、車幅方向の内側から順に、第3のランプセル31が1(W)、第4のランプセル32が2(W)となるように、照射範囲の配光制御を行っている。
【0058】
第3のランプセル31は、第3の光源部3Cと、第3の光源部3Cの前方に配置された第3のレンズ部4Cとを備えている。
【0059】
第4のランプセル31は、第4の光源部3Dと、第4の光源部3Dの前方に配置された第4のレンズ部4Dとを備えている。
【0060】
第3の光源部3C及び第4の光源部3Dは、上記第1の光源部3Aと同様に、複数の光源5と、複数の光源5が正面側に実装された回路基板6と、回路基板6の背面側に接触した状態で、複数の光源5が発する熱を放熱させるヒートシンク7とを有している。
【0061】
第3のレンズ部4C及び第4のレンズ部4Dは、上記第1のレンズ部4Aと同様に、複数の光源5の前方に配置された第1のインナーレンズ8と、第1のインナーレンズ8の前方に配置された第2のインナーレンズ9とを有している。
【0062】
一方、第4のレンズ部4Dを構成する第1のインナーレンズ8は、上記反射面83が省略された構成となっている。
【0063】
また、第3のレンズ部4C及び第4のレンズ部4Dを構成する第1のインナーレンズ8は、上記第1の入射部81のうち、車幅方向の外側の一部(第2の集光入射面81b及び集光反射面81c)が切り欠かれている。これにより、車幅方向の外側から第1の入射部81に入射する光L3,L4を遮断している。
【0064】
また、第3のレンズ部4C及び第4のレンズ部4Dを構成する第2のインナーレンズ9は、上記第2の出射面92が車幅方向の内側に向かって傾斜している。これにより、第2の出射面92に入射した光L3,L4を車幅方向の外側に向けて出射している。
【0065】
第3のランプユニット30では、第3のランプセル31及び第4のランプセル32が互いに異なる照射範囲に向けて光L3,L4を出射する。
【0066】
具体的に、第1のランプユニット10の点灯時には、第3のランプセル31が出射する光L3の照射範囲を複数の第1のランプセル11が出射する光L1の照射範囲に重ね合わせることによって、ロービーム用配光パターンの一部を形成する。
【0067】
このとき、複数の第1のランプセル11が出射する光L1の照射範囲よりも車幅方向の外側に、第3のランプセル31が出射する光L3の照射範囲が位置する。
【0068】
これにより、本実施形態の車両用灯具1では、部品点数の増加を抑制しながら、互いに異なる照射範囲に向けて出射される光L1,L3の重ね合わせによって、照射範囲を車幅方向の外側に拡大した良好なロービーム用配光パターンを形成することが可能である。
【0069】
一方、第2のランプユニット20の点灯時には、第4のランプセル32が出射する光L4の照射範囲を複数の第2のランプセル21が出射する光L2の照射範囲に重ね合わせることによって、ハイビーム用配光パターンの一部を形成する。
【0070】
このとき、複数の第2のランプセル21が出射する光L2の照射範囲よりも車幅方向の外側に、第4のランプセル32が出射する光L4の照射範囲が位置する。また、上述した複数の第1のランプセル11及び第3のランプセル31の点灯を維持することによって、ロービーム用配光パターンと重ね合わせる。
【0071】
これにより、本実施形態の車両用灯具1では、部品点数の増加を抑制しながら、互いに異なる照射範囲に向けて出射される光L2,L4の重ね合わせによって、照射範囲を車幅方向の外側に拡大し、なお且つ、ロービーム用配光パターンとの繋がりを改善した良好なハイビーム用配光パターンを形成することが可能である。
【0072】
次に、上記車両用灯具1により形成されるロービーム用配光パターンについて、
図9~
図14を参照しながら具体的に説明する。
【0073】
なお、
図9は、第1のランプユニット10を構成する複数の第1のランプセル11により仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す光度分布図である。
図10は、第3のランプユニット30を構成する第3のランプセル31により仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す光度分布図である。
図11は、
図9に示す配光パターンと、
図10に示す配光パターンとの重ね合わせによって仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す光度分布図である。
図12は、
図9に示す配光パターンを車両前方の路面に投影した写真である。
図13は、
図11に示す配光パターンを車両前方の路面に投影した写真である。
図14は、
図9に示す配光パターンと、
図11に示す配光パターンとを車両前方の路面に投影したときの
図10に示す配光パターンの有無による照射範囲の違いを示す模式図である。
【0074】
上記第1のランプユニット10では、複数の第1のランプセル11が互いに異なる照射範囲に向けて光L1を出射し、これら複数の第1のランプセル11が出射する光L1の照射範囲を重ね合わせることによって、
図9に示すようなロービーム用配光パターン(LO)を形成する。
【0075】
一方、上記第3のランプユニット30を構成する第3のランプセル31が出射する光L3の照射範囲は、
図10に示すような追加ロービーム用配光パターン(ADDLO)を形成する。
【0076】
本実施形態の車両用灯具1では、
図9に示すロービーム用配光パターン(LO)と、
図10に示す追加ロービーム用配光パターン(ADDLO)との重ね合わせによって、
図11に示すようなロービーム用配光パターン(LO+ADDLO)を形成する。
【0077】
これにより、本実施形態の車両用灯具1では、
図12に示すロービーム用配光パターン(LO)を車両前方の路面に投影したときよりも、
図13に示すロービーム用配光パターン(LO+ADDLO)を車両前方の路面に投影したときの方が、
図13中の囲み部分に示すように、車幅方向の外側に照射範囲を拡大することが可能である。
【0078】
また、
図14に示すように、
図10に示す追加ロービーム用配光パターン(ADDLO)を追加することによって、車両手前側の照射範囲を車幅方向に拡大することが可能である。
【0079】
次に、上記車両用灯具1により形成されるハイビーム用配光パターンについて、
図15~
図20を参照しながら具体的に説明する。
【0080】
なお、
図15は、第2のランプユニット20を構成する複数の第2のランプセル21により仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す光度分布図である。
図16は、第3のランプユニット30を構成する第4のランプセル32により仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す光度分布図である。
図17は、
図12に示す配光パターンと、
図13に示す配光パターンとの重ね合わせによって仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す光度分布図である。
図18は、
図15に示す配光パターンを車両前方の路面に投影した写真である。
図19は、
図17に示す配光パターンを車両前方の路面に投影した写真である。
図20は、
図15に示す配光パターンと、
図17に示す配光パターンとを車両前方の路面に投影したときの
図16に示す配光パターンの有無による照射範囲の違いを示す模式図である。
【0081】
上記第2のランプユニット20では、複数の第2のランプセル21が互いに異なる照射範囲に向けて光L2を出射し、これら複数の第2のランプセル21が出射する光L2の照射範囲を重ね合わせることによって、
図15に示すようなハイビーム用配光パターン(Hi)を形成する。
【0082】
一方、上記第3のランプユニット30を構成する第4のランプセル32が出射する光L4の照射範囲は、
図16に示すような追加ハイビーム用配光パターン(ADDHi)を形成する。
【0083】
本実施形態の車両用灯具1では、
図15に示すハイビーム用配光パターン(Hi)と、
図16に示す追加ハイビーム用配光パターン(ADDHi)との重ね合わせによって、
図17に示すようなハイビーム用配光パターン(Hi+ADDHi)を形成する。
【0084】
これにより、本実施形態の車両用灯具1では、
図18に示すハイビーム用配光パターン(LO+Hi)を車両前方の路面に投影したときよりも、
図19に示すハイビーム用配光パターン(LO+Hi+ADDHi)を車両前方の路面に投影したときの方が、
図19中の囲み部分に示すように、遠方且つ車幅方向の外側に照射範囲を拡大することが可能である。
【0085】
また、
図20に示すように、
図16に示す追加ハイビーム用配光パターン(ADDHi)を追加することによって、遠方の照射範囲を拡大しつつ、車両手前側の照射範囲を車幅方向に拡大することが可能である。
【0086】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0087】
例えば、上記第2のランプユニット20については、車両前方の路面に向けて投影される光L2の配光パターンを可変に制御する配光可変ヘッドランプ(ADB)としてもよい。
【0088】
第2のランプユニット20をADBとした場合、複数の第2のランプセル21及び第4のランプセル32の点灯を切り替えながら、配光パターンを可変に制御することが可能である。
【0089】
また、上記車両用灯具1では、上述した第1のランプユニット10、第2のランプユニット20及び第3のランプユニット30が灯体2の幅方向に並んで配置された構成となっているが、灯体2の高さ方向に並んで配置された構成としてもよい。この場合も、第3のランプユニット30は、第1のランプユニット10と第2のランプユニット20との間に配置することが好ましい。
【符号の説明】
【0090】
1…車両用灯具 2…灯体 3A…第1の光源部 3B…第2の光源部 3C…第3の光源部 4A…第1のレンズ部 4B…第2のレンズ部 4C…第3のレンズ部 5…光源 6…回路基板 7…ヒートシンク 8…第1のインナーレンズ 9…第2のインナーレンズ 10…第1のランプユニット 11…第1のランプセル … 20…第2のランプユニット 21…第2のランプセル 30…第3のランプユニット 31…第3のランプセル 32…第4のランプセル