(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005740
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】地面状態推定システム、地面状態推定方法、地面状態推定装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20250109BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20250109BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20250109BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G09B29/10 A
G09B29/00 A
G08G1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106060
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】中谷 武彦
【テーマコード(参考)】
2C032
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
2C032HB22
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC03
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF07
5H181FF10
5H181FF22
5H181FF27
5H181MC16
5H301AA01
5H301BB15
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301GG08
(57)【要約】
【課題】地面の状態に関する情報が効率的に得られるようにする。
【解決手段】手押し車の車輪にかかる荷重を検出する荷重センサと、前記手押し車の位置を測定する測位部と、前記測位部が測定した前記手押し車の位置と前記荷重センサの荷重を検出した時間とを対応付け、前記荷重センサが検出した荷重の時間経過に応じた変化パターンに基づいて、前記変化パターンが得られた位置における地面の状態を推定する地面状態推定部とを備える地面状態推定システムである。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手押し車の車輪にかかる荷重を検出する荷重センサと、
前記手押し車の位置を測定する測位部と、
前記測位部が測定した前記手押し車の位置と前記荷重センサの荷重を検出した時間とを対応付け、前記荷重センサが検出した荷重の時間経過に応じた変化パターンに基づいて、前記変化パターンが得られた位置における地面の状態を推定する地面状態推定部と
を備える地面状態推定システム。
【請求項2】
前記荷重センサは、前輪と後輪とを有する手押し車の前記前輪と前記後輪とのそれぞれにかかる荷重を個別に検出するように設けられ、
前記地面状態推定部は、同じ時間経過における前記前輪にかかる荷重と前記後輪に係る荷重との時間経過に応じた変化パターンに基づいて、前記変化パターンが得られた地図上の位置における地面の状態を推定する
請求項1に記載の地面状態推定システム。
【請求項3】
前記地面状態推定部により推定された地面の状態を示した地面状態地図を端末装置にて表示させる地図提供部をさらに備える
請求項1または2に記載の地面状態推定システム。
【請求項4】
地面状態推定システムにおける地面状態推定方法であって、
手押し車の位置を測定する測位部が測定した前記手押し車の位置と、前記手押し車の車輪にかかる荷重を検出する荷重センサの荷重を検出した時間とを対応付け、前記荷重センサが検出した荷重の時間経過に応じた変化パターンに基づいて、前記変化パターンが得られた位置における地面の状態を推定する地面状態推定ステップ
を備える地面状態推定方法。
【請求項5】
手押し車の位置を測定する測位部が測定した前記手押し車の位置と、前記手押し車の車輪にかかる荷重を検出する荷重センサの荷重を検出した時間とを対応付け、前記荷重センサが検出した荷重の時間経過に応じた変化パターンに基づいて、前記変化パターンが得られた位置における地面の状態を推定する地面状態推定部
を備える地面状態推定装置。
【請求項6】
地面状態推定装置としてのコンピュータを、
手押し車の位置を測定する測位部が測定した前記手押し車の位置と、前記手押し車の車輪にかかる荷重を検出する荷重センサの荷重を検出した時間とを対応付け、前記荷重センサが検出した荷重の時間経過に応じた変化パターンに基づいて、前記変化パターンが得られた位置における地面の状態を推定する地面状態推定部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面状態推定システム、地面状態推定方法、地面状態推定装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ベビーカーや車いすなどの小型移動・運搬装置を目的地にまで誘導支援するにあたり、赤外線センサやカメラ等により検出された近傍の電柱、ガードレール、手すり、壁、歩行者等の障害物を回避して誘導できるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザがベビーカー等の手押し車を運搬させながら移動するにあたり、例えば事前に段差等の地面の状態が把握できていれば、予め迂回路を選択できるなどして好ましい。この場合、段差等の地面の状態に関する情報の取得が効率的に行われるようにすることが求められる。
【0005】
そこで本発明は、上記した課題を考慮して、地面の状態に関する情報が効率的に得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する本発明の一態様は、手押し車の車輪にかかる荷重を検出する荷重センサと、前記手押し車の位置を測定する測位部と、前記測位部が測定した前記手押し車の位置と前記荷重センサの荷重を検出した時間とを対応付け、前記荷重センサが検出した荷重の時間経過に応じた変化パターンに基づいて、前記変化パターンが得られた位置における地面の状態を推定する地面状態推定部とを備える地面状態推定システムである。
【0007】
本発明の一態様は、地面状態推定システムにおける地面状態推定方法であって、手押し車の位置を測定する測位部が測定した前記手押し車の位置と、前記手押し車の車輪にかかる荷重を検出する荷重センサの荷重を検出した時間とを対応付け、前記荷重センサが検出した荷重の時間経過に応じた変化パターンに基づいて、前記変化パターンが得られた位置における地面の状態を推定する地面状態推定ステップを備える地面状態推定方法である。
【0008】
本発明の一態様は、手押し車の位置を測定する測位部が測定した前記手押し車の位置と、前記手押し車の車輪にかかる荷重を検出する荷重センサの荷重を検出した時間とを対応付け、前記荷重センサが検出した荷重の時間経過に応じた変化パターンに基づいて、前記変化パターンが得られた位置における地面の状態を推定する地面状態推定部を備える地面状態推定装置である。
【0009】
本発明の一態様は、地面状態推定装置としてのコンピュータを、手押し車の位置を測定する測位部が測定した前記手押し車の位置と、前記手押し車の車輪にかかる荷重を検出する荷重センサの荷重を検出した時間とを対応付け、前記荷重センサが検出した荷重の時間経過に応じた変化パターンに基づいて、前記変化パターンが得られた位置における地面の状態を推定する地面状態推定部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地面の状態に関する情報が効率的に得られるようになるとの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態における地面状態推定システムの全体的な構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態におけるベビーカーの機能構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態における荷重履歴情報の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態における地面状態推定装置の機能構成例を示す図である。
【
図5】本実施形態におけるベビーカーと地面状態推定部とが荷重履歴情報の処理に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態における地面状態推定装置が地面状態の推定に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態における荷重の変化パターンの例を示す図である。
【
図8】本実施形態における荷重の変化パターンの例を示す図である。
【
図9】本実施形態における荷重の変化パターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態の地面状態推定システムの全体的な構成例を示している。本実施形態において、「地面」はユーザが押して運搬しているときのベビーカー100の下に存在する土壌等による地面のほか、床、道路、通路等の構造物等も含む。
【0013】
本実施形態の地面状態推定システムは、ベビーカー100と地面状態推定装置200を備える。
【0014】
ベビーカー100は、ユーザUが押して運搬する手押し車の1種である。同図のベビーカー100は、車輪として2つの前輪と2つの後輪との4輪を有する場合を例に挙げている。
この場合において、ベビーカー100は、4輪のそれぞれに対応して4つの荷重センサ101(101-FL、101-FR、101-RL、101-RR)を備える。荷重センサ101-FLは、左前輪に係る荷重を検出する。荷重センサ101-FRは、右前輪に係る荷重を検出する。荷重センサ101-RLは、左後輪に係る荷重を検出する。荷重センサ101-RRは、右後輪に係る荷重を検出する。
ベビーカー100は、ネットワーク経由で通信を行う通信部104を備える。ベビーカー100の通信部104は、4つの荷重センサ101(101-FL、101-FR、101-RL、101-RR)のそれぞれが検出した荷重の履歴を示す荷重履歴情報を、ネットワーク経由で地面状態推定装置200を送信する。
【0015】
ベビーカー100の所定位置には、測位部102が備えられる。測位部102は、ベビーカー100の位置を測定する。測位部102は、GNSS(Global Navigation Satellite System)、LiDAR(Light Detection And Ranging)、Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などに対応して位置を測定するように構成されてよい。また、測位部102は、例えばBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の電磁波を利用して位置を測定するように構成されてよい。
測位部102により測定された位置は、同じ時刻(時間)に検出された荷重に対応付けられるようにして荷重履歴情報に含められる。
【0016】
地面状態推定装置200は、ベビーカー100から送信された荷重履歴情報に基づいて、当該荷重履歴情報に含まれる位置情報が示す位置ごとの地面の状態(地面状態)を推定する。地面状態推定装置200は、推定した地面状態を地図上に反映させる。
【0017】
同図においては、1つのベビーカー100が示されているが、地面状態推定装置200と通信可能に接続されるベビーカー100は、複数が各地に存在してよい。地面状態推定装置200は、複数のベビーカー100のそれぞれから送信される荷重履歴情報に基づいて、各位置の地面状態を推定し、推定した地面状態を地図上に反映させてよい。
【0018】
また、地面状態推定装置200は、推定した地面状態が反映された地図を、地面状態地図として、ベビーカー100のユーザUのユーザ端末300に送信する。ユーザ端末300は、受信した地面状態地図を表示する。表示された地面状態地図には、地面状態推定装置200が推定した地面状態が示されている。ユーザUは、地面状態地図にて示される地面状態を確認することで、例えば子供を乗せたベビーカー100を移動させるのにあたり、大きな段差や悪路などは避けるようにして移動経路を計画することができる。
ユーザ端末300は、例えばスマートフォンやタブレット端末等であってよい。
【0019】
図2は、本実施形態のベビーカー100の機能構成例を示している。同図に示される機能は、ベビーカー100において備えられるCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することにより実現される。同図において、
図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0020】
同図のベビーカー100は、荷重センサ101(101-FL、101-FR、101-RL、101-RR)、測位部102、記憶部103、通信部104、及び制御部105を備える。
【0021】
記憶部103は、ベビーカー100に対応する各種の情報を記憶する。記憶部103は、荷重履歴情報記憶部131を備える。
荷重履歴情報記憶部131は、荷重履歴情報を記憶する。荷重履歴情報は、ベビーカー100ごとに荷重センサ101により検出された荷重の履歴を示す情報である。
【0022】
図3(A)は、1つのベビーカー100に対応する荷重履歴情報の一例を示している。同図に示されるように、荷重履歴情報は、時刻(tm1、tm2、tm3・・・)ごとに、ベビーカー100にて検出された荷重情報(P1、P2、P3・・・)と当該ベビーカー100の位置を示す位置情報(ps1、ps2、ps3・・・)とを対応付けた構造を有する。
【0023】
また、
図3(B)は、1つの時刻に対応する荷重情報Pnは、対応のベビーカー100の荷重センサ101-FL、101-FR、101-RL、101-RRごとに検出された荷重(Pn-FL、Pn-FR、Pn-RL、Pn-RR)を含む。
【0024】
説明を
図2に戻す。制御部105は、ベビーカー100における各種の制御を実行する。制御部105は、荷重センサ101が検出した荷重と測位部102により測定された位置とを時刻に対応付け、荷重履歴情報として荷重履歴情報記憶部131に記憶させる。
また、制御部105は、荷重履歴情報記憶部131が記憶する荷重履歴情報を、通信部104から所定のタイミングで地面状態推定装置200に送信させる。
【0025】
図4を参照して、地面状態推定装置200の機能構成例を示している。同図の地面状態推定装置200は、通信部201、制御部202、及び記憶部203を備える。
通信部201は、ネットワーク経由で通信を行う。
【0026】
制御部202は、地面状態推定装置200における各種制御を実行する。制御部202は、荷重履歴情報取得部221と地面状態推定部222とを備える。
【0027】
荷重履歴情報取得部221は、ベビーカー100から送信され、通信部201にて受信された荷重履歴情報を取得する。荷重履歴情報取得部221は、取得した荷重履歴情報を、荷重履歴情報記憶部231に記憶させる。
【0028】
地面状態推定部222は、荷重履歴情報記憶部231に記憶される荷重履歴情報を利用して、ベビーカー100が移動した位置ごとの地面状態を推定する。地面状態推定部222は、推定した地面状態を反映させた地面状態地図を生成し、生成した地面状態地図を地面状態地図記憶部232に記憶させる。
【0029】
記憶部203は、地面状態推定装置200に対応する各種の情報を記憶する。記憶部203は、荷重履歴情報記憶部231と地面状態地図記憶部232とを備える。
荷重履歴情報記憶部231は、荷重履歴情報取得部221が取得した荷重履歴情報を記憶する。
地面状態地図記憶部232は、地面状態地図の情報を記憶する。
【0030】
図5のフローチャートを参照して、本実施形態のベビーカー100と地面状態推定装置200とが荷重履歴情報の処理に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
まず、ベビーカー100が実行する処理手順例について説明する。
【0031】
ステップS100:ベビーカー100において制御部105は、ベビーカー100の移動が開始されるのを待機している。制御部105は、例えば荷重センサ101が出力する荷重の変化に基づいて移動が開始されたか否かを判定してもよいし、ベビーカー100に設けられた加速度センサにより移動が開始された否かを判定してもよい。また、ステップS100として、例えばユーザUによる荷重履歴情報の取得の開始を指示する操作(開始指示操作)が行われることを待機してもよい。このような開始指示操作は、ベビーカー100に設けられた所定のスイッチやボタン等の操作子に対する操作であってもよいし、Bluetooth等の近距離無線通信によりベビーカー100と接続されたユーザ端末300に対する操作であってもよい。
【0032】
ステップS102:ステップS100によりベビーカー100の移動が開始したことが判定されると、制御部105は、時間計測を開始する。時間計測が開始されて以降、制御部105は、計測された時間(時刻)を取得可能となる。
【0033】
ステップS104:また、制御部105は、現在位置の測定を開始する。
【0034】
ステップS106:制御部105は、荷重センサ101のそれぞれが検出した荷重を取得する。
ステップS108:制御部105は、ステップS106により取得した荷重と、取得した荷重が対応する時刻と現在位置とを対応付けた荷重履歴情報を荷重履歴情報記憶部131に記憶させる。
【0035】
ステップS110:ステップS108の処理の後、制御部105は、ベビーカー100が移動している状態から停止状態に遷移したか否かを判定する。ベビーカー100が停止状態に遷移していないと判定された場合には、ステップS106に処理が戻される。
【0036】
ステップS112:ステップS110にてベビーカー100が停止状態に遷移したと判定された場合、制御部112は、これまでのステップS106、S108の処理により荷重履歴情報記憶部131に記憶された荷重履歴情報を、通信部104から地面状態推定装置200に送信させる。ステップS112の処理の後は、ステップS100に処理が戻される。
なお、制御部105は、ステップS110の処理として、ステップS102により時間計測を開始したタイミングから一定時間が経過したか否かを判定してもよい。あるいは、制御部105は、ステップS110の処理として、ステップS102により時間計測を開始したタイミングにてベビーカー100が移動した距離の計測も開始するようにされ、計測される距離が所定値に到達したか否かを判定してもよい。この場合、制御部105は、ステップS110にて一定時間が経過したことが判定される、あるいは距離が所定値に到達したことが判定されると、ステップS112にて荷重履歴情報記憶部131に記憶された荷重履歴情報を、通信部104から地面状態推定装置200に送信させる。
【0037】
次に地面状態推定装置200が実行する処理手順例について説明する。
ステップS200:地面状態推定装置200において荷重履歴情報取得部221は、ステップS112によりベビーカー100から送信された荷重履歴情報を取得する。
ステップS202:荷重履歴情報取得部221は、ステップS200により取得した荷重履歴情報を荷重履歴情報記憶部231に記憶させる。
【0038】
図6のフローチャートを参照して、地面状態推定装置200が地面状態の推定に関連して実行する処理手順例について説明する。同図の処理は、予め定められた所定のタイミングで実行されてよい。具体的に、例えば
図5のステップS200、S202の処理を完了する都度、実行されてよい。また、説明を簡単にするため、ここでは、1つのベビーカー100の1回の移動開始から停止までの期間に対応して得られた荷重履歴情報に基づいて地面状態を推定する場合を例に挙げる。
【0039】
ステップS300:地面状態推定装置200において地面状態推定部222は、荷重履歴情報記憶部231が記憶する荷重履歴情報のうち、1つのベビーカー100の1回の移動開始から停止までの期間に対応して得られた荷重履歴情報を利用して、時間経過における荷重の変化パターンを検出する。
【0040】
ステップS302:地面状態推定部222は、ステップS300により検出された荷重の変化パターンに基づいて、対応のベビーカー100の移動軌跡に応じた位置の地面状態を推定する。
【0041】
図7~
図9を参照して、ステップS302による荷重の変化パターンに基づく地面状態の推定の具体例について説明する。
図7は、荷重の変化パターンの一例を示している。同図において横軸が時間であり、縦軸が荷重である。同図において、線L1は、左前輪の荷重Pn-FLの時間経過に応じた変化を示す。線L2は、右前輪の荷重Pn-FRの時間経過に応じた変化を示す。線L3は、荷重Pn-RLの時間経過に応じた変化を示す。線L4は、荷重Pn-RRの時間経過に応じた変化を示す。
【0042】
図7の荷重の変化パターンは、時刻t1以前では4つの車輪のそれぞれに係る荷重がほぼ値p1で一定となっている。4つの車輪のそれぞれに係る荷重が値p1で一定となる状態は、4つの車輪のそれぞれが接地した状態でベビーカー100が移動している状態に相当する。
【0043】
次に、時刻t1から時刻t2までの期間においては、左右の後輪に係る荷重が値p1から値p2に増加し、左右の前輪に係る荷重が値p1からゼロに減少している。
次に、時刻t2から時刻t3までの期間においては、左右の前輪に係る荷重がゼロから値p2に増加し、左右の後輪に係る荷重が値p2からゼロに減少している。
次に時刻t3以降においては、時刻t1以前と同様に4つの車輪のそれぞれに係る荷重がほぼ値p1で一定となる。
【0044】
このような荷重の変化パターンは、地面において例えば前輪を持ち上げて乗り上げることができる程度の高低差の段差をベビーカー100で移動するような場合に得られる。つまり、ユーザUは、ベビーカー100を、時刻t1から時刻t2において前輪を地面から一旦浮かせた状態で前方に移動させ、時刻t2から時刻t3において段差の高い方に前輪を下ろすとともに後輪を地面から浮かせながら前方に移動させ、時刻t3に至って段差を超えた場所で前輪と後輪とを接地させたものである。
そこで、この場合の地面状態推定部222は、
図7の荷重の変化パターンが得られた場合には、地面状態として、例えば時刻t2を境界として、時刻t1に対応する側の位置が低く時刻t3に対応する側の位置が高い状態の段差が存在していると推定してよい。
【0045】
次に、
図8の荷重の変化パターンは、時刻t11以前では4つの車輪のそれぞれに係る荷重がほぼ値p1で一定となっており、時刻t11を経過すると或る時間にわたって、4つの車輪のそれぞれに係る荷重がゼロとなっている。
このような荷重の変化パターンは、例えば階段などのようにベビーカー100を押して移動させることができない場所であることで、ユーザUがベビーカー100を持ち上げて移動している状況が対応する。
そこで、地面状態推定部222は、
図8の荷重の変化パターンが得られた場合には、地面状態として、時刻t11以降から4つの車輪のそれぞれに係る荷重がゼロとなっている時間に対応する位置範囲にて階段が存在していると推定してよい。
【0046】
次に、
図9の荷重の変化パターンは、4つの車輪の荷重のそれぞれが値p1近辺で比較的大きめに上下するようにして短い時間間隔で変化している。このような荷重の変化パターンは、例えば砂利などのような不陸の大きな地面をベビーカー100が移動したことにより生じる。そこで、地面状態推定部222は、
図9の荷重の変化パターンが得られている時間に対応する位置は、地面状態として、不陸が大きく乗り心地が良好でない状態であると推定してよい。
【0047】
なお、
図7~
図9に示した荷重の変化パターンはあくまでも一例であり、地面状態推定部222は、
図7~
図9に示した以外の多様な荷重の変化パターンに基づいて各種の地面状態を推定してよい。例えば地面状態推定部222は、多様な荷重の変化パターンに基づいて、段差、階段、不陸の大きい場所等のほか、ぬかるみ、砂地、凹凸が形成された道等の状態も推定するようにされてよい。
【0048】
説明を
図6に戻す。
ステップS304:地面状態推定部222は、ステップS302による地面についての推定結果を、地面状態地図記憶部232が記憶する地面状態地図に反映させる。
【0049】
地面状態推定装置200の制御部202は、ユーザ端末300からのアクセスに応じて、上記のように地面状態の推定結果が反映された地面状態地図を、アクセス元のユーザ端末300に送信する。ユーザ端末300は、送信された地面状態地図を表示させる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態においては、地面状態推定装置200がベビーカー100から送信された荷重履歴情報を利用して地面状態を推定するようにされている。この場合、例えば人員を用いて現場を調査するようなことをしなくとも、例えば乳児や幼児の保護者であるユーザUのそれぞれが市中にてベビーカー100を使用することにより、各地の地面状態を推定し、推定した地面状態が示される地面状態地図を作成することができる。つまり、本実施形態においては、ベビーカー100の移動に関連する地面状態の推定を効率的に行うことが可能となる。
【0051】
そのうえで、地面状態推定装置200は、各地にて移動する複数のベビーカー100から送信される荷重履歴情報を利用して、広範囲の地面状態を効率よく推定していくことができる。
【0052】
なお、地面状態推定装置200の地面状態推定部222は、同じ位置に対応し、異なる時刻に得られた1以上のベビーカー100により得られた荷重履歴情報が示す荷重の変化パターンを利用して、当該位置における1つの地面状態の推定結果を得るようにされてよい。この場合には、例えば外れ値などのノイズを除去することも可能となるため、高い精度の推定結果を得ることが可能となる。
【0053】
なお、地面状態推定部222は、学習済みモデルを用いて地面状態を推定してよい。このような学習済みモデルは、例えば多様な荷重の変化パターンと地面状態との関係を学習器に学習させることによって構築されてよい。
【0054】
なお、上記実施形態においては、ベビーカー100左右一対の前輪と後輪とによる4輪を有し、4輪のそれぞれに対応して荷重センサ101を設けるようにされていた。これに対して、例えば2つの前輪のうちの左右のいずれか一方と、2つの後輪のうちの左右のいずれか一方との2つの車輪に荷重センサ101を設けるようにしてもよい。
また、ベビーカー100に設けられる車輪の数は、例えば1つの前輪と左右一対の2つの後輪とによる3輪であるなど、4輪以外であってよく、荷重センサ101は、車輪の数とベビーカー100に取り付けられた位置の関係等に応じて、適宜、所定の車輪に設けられてよい。
【0055】
なお、本実施形態における地面状態推定システムの構成は、上記した例に限定されない。例えば、ベビーカー100が地面状態推定部222を備えることにより測位部102が測定した位置ごとの地面状態を推定し、推定結果を地面状態推定装置200に送信してよい。この場合、地面状態推定装置200は、受信した地面状態の推定結果を、地面状態地図記憶部232が記憶する地面状態地図に反映させてよい。
また、例えば、ベビーカー100の現在位置は、ユーザUが所持するユーザ端末300が測定してよい。この場合、例えばベビーカー100とユーザ端末300とをBluetooth等の近距離無線通信により接続してよい。そのうえで、ベビーカー100が荷重センサ101により検出された荷重をユーザ端末300に送信し、ユーザ端末300が自己の測定した位置情報と受信した荷重とを時刻に対応付けて荷重履歴情報を記憶し、所定のタイミングで荷重履歴情報を地面状態推定装置200に送信してよい。
あるいは、上記とは逆に、ユーザ端末300が自己の測定した位置情報をベビーカー100に送信し、ベビーカー100が、荷重センサ101により検出された荷重とユーザ端末300から受信した位置情報とを時刻に対応付けて荷重履歴情報を記憶し、所定のタイミングで荷重履歴情報を地面状態推定装置200に送信してよい。
また、上記の各構成において、ベビーカー100またはユーザ端末300が、地面状態の推定結果を反映させた地面状態地図を作成し、記憶するようにされてよい。記憶された地面状態地図は、例えばベビーカー100に設けた表示部あるいはユーザ端末300の表示部にて表示されるようにしてよい。この場合、地面状態推定装置200としての機能をベビーカー100またはユーザ端末300が備えることになるので、ネットワーク上の地面状態推定装置200は省略されてよい。
【0056】
なお、本実施形態が対応する手押し車は、ベビーカー100に限定されない。本実施形態が対応する手押し車は、例えば車輪を有するスーツケース、買い物用カート、高齢者用手押し車、車いす等であってもよい。
【0057】
なお、上述のベビーカー100、地面状態推定装置200、およびユーザ端末300等としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述のベビーカー100、地面状態推定装置200、およびユーザ端末300等としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク、SSD等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0058】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施形態に地面状態推定システムは、このSDGsの17の目標のうち、例えば「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0059】
100 ベビーカー、101(101-FL、101-FR、101-RL、101-RR) 荷重センサ、102 測位部、103 記憶部、104 通信部、105 制御部、112 制御部、131 荷重履歴情報記憶部、200 地面状態推定装置、201 通信部、202 制御部、203 記憶部、221 荷重履歴情報取得部、222 地面状態推定部、231 荷重履歴情報記憶部、232 地面状態地図記憶部、300 ユーザ端末