(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005750
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 13/00 20130101AFI20250109BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01G13/00 391Z
H01G13/00 351Z
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106081
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高木 勇也
(72)【発明者】
【氏名】瀬政 康平
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AZ00
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC38
5E082EE04
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082KK01
5E082LL03
5E082PP06
(57)【要約】
【課題】接着成分により接着した積層体チップのブロッキングを解消することができる電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の電子部品の製造方法は、TA℃で粘着性が発現する第1の弾性シート20を準備する準備工程と、第2の弾性シート40を準備する準備工程と、TB℃で接着性が発現する成分(A)を含むセラミック層が厚み方向に積層された積層体チップ13を準備する準備工程と、第1の弾性シート20と第2の弾性シート40とを用いて、面方向に隣接した複数の積層体チップ13を、上記面方向と垂直方向に上下から挟む挟持工程と、積層体チップ13をTA≦T≦TBとなる温度T℃に保ちながら、第1の弾性シート20又は第2の弾性シート40の少なくとも一方を介して積層体チップ13を押圧することで、隣接した複数の積層体チップ13を互いに離間させる離間工程と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TA℃で粘着性が発現する第1の弾性シートを準備する準備工程と、
第2の弾性シートを準備する準備工程と、
TB℃で接着性が発現する成分(A)を含むセラミック層が厚み方向に積層された積層体チップを準備する準備工程と、
前記第1の弾性シートと前記第2の弾性シートとを用いて、面方向に隣接した複数の前記積層体チップを、前記面方向と垂直方向に上下から挟む挟持工程と、
前記積層体チップをTA≦T≦TBとなる温度T℃に保ちながら、前記第1の弾性シート又は前記第2の弾性シートの少なくとも一方を介して前記積層体チップを押圧することで、隣接した複数の前記積層体チップを互いに離間させる離間工程と、を含む電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記押圧がローラにより行われる請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記第2の弾性シートにヒータを当接し、前記ヒータにより前記積層体チップをT℃に保ちながら前記離間工程を行う、請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記第1の弾性シート上に保持されたマザーブロックを、前記第1の弾性シートとは反対側から押切刃で切断することにより、隣接した複数の前記積層体チップに個片化される請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記離間工程において、前記第1の弾性シートを押圧する請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
TAとTBとの差が20℃以上、70℃以下である請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
TAが40℃以上、120℃以下である請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、一般に、下記(a)~(e)の工程を経て製造される。
(a)セラミック粉末及び有機バインダを含むスラリーを薄く延ばしてセラミックグリーンシートを形成する工程。
(b)このセラミックグリーンシートの表面に電極を印刷した後、複数のセラミックグリーンシートを積層一体化してセラミックグリーンシートの積層体を形成する工程。
(c)このセラミックグリーンシートの積層体を縦横に切断して複数の積層体チップを形成する工程。
(d)この積層体チップを焼成してチップを得る焼成工程。
(e)このチップの端面に外部電極を形成して積層セラミックコンデンサを得る工程。
【0003】
特許文献1では、エキスパンド性を有する基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも片面に形成される粘着剤層とから構成される粘着テープをセラミックグリーンシートの積層体に貼着し、該粘着テープを介して上記セラミックグリーンシートの積層体を台座上に固定する工程と、台座上に固定された上記セラミックグリーンシートの積層体をギロチン刃で切断して複数の生チップを形成する工程と、上記粘着テープの基材フィルムをエキスパンドして、互いに隣接する生チップ同士の間隔を広げる工程とを含むことを特徴とするセラミックチップ部品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記(c)の工程では、一般に、粘着テープを用いてセラミックグリーンシートの積層体をシート固定用の台座上に仮固定し、該積層体をギロチン刃により切断した後、積層体チップを粘着テープから取り外している。ギロチン刃による切断は、通常、加熱雰囲気下で行われるため、その際、温められた積層体チップ同士が有機バインダ等の接着成分により接着してしまうという問題がある。
【0006】
積層体チップ同士が接着成分により接着してしまうブロッキングの問題は、積層セラミックコンデンサの製造時の歩留まりを下げる大きな要因である。近年、より小型の積層セラミックコンデンサが求められており、ブロッキングは更に大きな問題となっている。このように、積層セラミックコンデンサ等の電子部品を製造する上で、より確実にブロッキングを解消する方法が望まれている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、接着成分により接着した積層体チップのブロッキングを解消することができる電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子部品の製造方法は、TA℃で粘着性が発現する第1の弾性シートを準備する準備工程と、第2の弾性シートを準備する準備工程と、TB℃で接着性が発現する成分(A)を含むセラミック層が厚み方向に積層された積層体チップと、を準備する準備工程と、上記第1の弾性シートと上記第2の弾性シートとを用いて、面方向に隣接した複数の上記積層体チップを、上記面方向と垂直方向に上下から挟む挟持工程と、上記積層体チップをTA≦T≦TBとなる温度T℃に保ちながら、上記第1の弾性シート又は上記第2の弾性シートの少なくとも一方を介して上記積層体チップを押圧することで、隣接した複数の上記積層体チップを互いに離間させる離間工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着成分により接着した積層体チップのブロッキングを解消することができる電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、マザーブロックの一例を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、第1の弾性シート上に保持されたマザーブロックが切断される状態を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、第1の弾性シートと第2の弾性シートとを用いて積層体チップを挟んだ状態を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、第1の弾性シートと第2の弾性シートとを用いて挟んだ積層体チップをブレイクステージに移動させる様子を示す模式断面図である
【
図5】
図5は、離間工程の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電子部品の製造方法について説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。以下では、本発明の電子部品の製造方法を本発明の製造方法と記載することがある。
【0012】
本発明の電子部品の製造方法の一実施形態として、積層セラミックコンデンサを例にとって説明する。なお、本発明は、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品にも適用することができる。このような積層セラミック電子部品としては、インダクタ、圧電素子、サーミスタ等が挙げられる。
【0013】
本発明の電子部品の製造方法は、第1の弾性シートと第2の弾性シートとを用いて積層体チップを挟み、所定の温度T℃に保ちながら、第1の弾性シート又は第2の弾性シートの少なくとも一方を介して積層体チップを押圧することにより、隣接した複数の積層体チップを互いに離間させることを特徴とする。ここで、第1の弾性シートはTA℃で粘着性が発現し、積層体チップを構成するセラミック層はTB℃で接着性が発現する成分(A)を含み、TA≦T≦TBである。
【0014】
まず、第1の弾性シートを準備する準備工程について説明する。
【0015】
第1の弾性シートは、温めると粘着性が発現し、冷えると粘着性を失う感温性粘着剤の層を有している。第1の弾性シートの粘着性が発現する温度(TA℃)は特に限定されないが、本発明の製造方法では30℃以上であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上、120℃以下である。TA℃は、例えば65℃未満であることが好ましい。第1の弾性シートは、TA℃以上で粘着性を示し、第1の弾性シートが積層体チップを保持することができる。なお、「粘着性が発現する温度(TA℃)」は、粘着性が急激な変化を示す温度を意味し、粘着性が発現する温度(TA℃)未満でも、第1の弾性シートがわずかに粘着性を有していてもよい。
【0016】
感温性粘着剤が粘着性を発現する温度とは、第1の弾性シートに積層体チップを貼り付けることが可能な最低温度である。
【0017】
感温性粘着剤としては、例えば、側鎖結晶性ポリマーなどが挙げられる。
【0018】
第1の弾性シートの構造は特に限定されないが、基材の上に感温性粘着剤の層が設けられていることが好ましい。基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0019】
基材の厚みは特に限定されないが、10μm以上、200μm以下が好ましい。
感温性粘着剤層の厚みは特に限定されないが、5μm以上、40μm以下が好ましい。
第1の弾性シートは、離間させる積層体チップより大きいサイズであれば、平面形状は特に限定されない。
【0020】
次に、第2の弾性シートを準備する準備工程について説明する。
第2の弾性シートは、粘着力を有していてもよいし、粘着力を有していなくてもよい。
第2の弾性シートの厚みは特に限定されないが、30μm以上、10000μm以下が好ましい。
第2の弾性シートは、離間させる積層体チップより大きいサイズであれば、平面形状は特に限定されない。
第2の弾性シートは、硬度が20°以上、70°以下であるものが好ましい。ここでいう硬度とは、JIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで測定される硬度を意味する。
第2の弾性シートを形成する素材は特に限定されない。
【0021】
次に、積層体チップを準備する準備工程について説明する。
積層体チップは、TB℃で接着性が発現する成分(A)を含むセラミック層が厚み方向に積層されたものである。積層体チップは、複数の積層体チップが一体化された集合体であるマザーブロックを切断して個片化することにより作製される。
【0022】
以下では、
図1を参照してマザーブロックの構造について説明する。
図1は、マザーブロックの一例を示す模式断面図である。
図1に示すように、マザーブロック10は、積層された複数のセラミック層11で構成されており、内部に層状の内部電極12が埋設されている。セラミック層11は、チタン酸バリウム等のセラミックス粉体及びTB℃で接着性が発現する成分(A)を含む誘電体シートを積層させて形成することができ、一部の誘電体シート上には内部電極12となる金属ペーストが所定形状に印刷されている。内部電極12間は一定のマージンが開けられており、その距離は最も短くて10μmである。
【0023】
TB℃で接着性が発現する成分(A)としては、例えば、有機バインダが挙げられる。有機バインダは、セラミックス粉体の分散性等を調整するために用いられる。有機バインダとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0024】
有機バインダ等は、温めると接着性を発現する。成分(A)が接着性を発現する温度(TB℃)は、50℃以上であることが好ましい。より好ましくは、60℃以上、120℃以下である。本発明の製造方法において、上記成分(A)が接着性を発現する温度TB℃は、上記第1の弾性シートが粘着性を発現する温度TA℃より大きい。好ましくは、TAとTBとの差が20℃以上である。TAとTBとの差は、例えば70℃以下である。
【0025】
成分(A)が接着性を発現する温度とは、積層体チップ同士が成分(A)により接着する最低温度である。
【0026】
誘電体シートは、ボールミル等を用いてチタン酸バリウム等のセラミックス粉体と有機バインダ等の成分(A)、可塑剤及び有機溶剤を混合してスラリーを得、得られたスラリーを樹脂フィルムの表層上に塗工し、乾燥させたものである。
【0027】
スラリーの塗工方法は特に限定されないが、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ゲートロールコート法、ダイコート法等を使用することができる。
【0028】
誘電体シートの厚みは、例えば0.5μm以上、3.0μm以下とすることができ、種々の厚みの誘電体シートを用いることができる。
【0029】
誘電体シートは、樹脂フィルムより剥離され、通常、5枚以上、2000枚以下積層され、マザーブロックが作製される。内部電極の厚みは、例えば、0.2μm以上、5μm以下とすることができる。なお、マザーブロックの最上面と最下面には、外層といわれる内部電極が印刷されていない誘電体シートが用いられる。
【0030】
本発明の製造方法において、積層体チップは、第1の弾性シート上に保持されたマザーブロックを、第1の弾性シートとは反対側から押切刃で切断することにより個片化されたものであることが好ましい。第1の弾性シート上に保持されたマザーブロックを切断することにより、個片化された積層体チップが第1の弾性シート上でセラミック層の厚み方向に直交する面方向に隣接した状態で得られ、そのまま挟持工程に進むことが可能だからである。
【0031】
以下では、
図2を参照して、第1の弾性シート上に保持されたマザーブロックを押切刃で切断する作業について説明する。
図2は、第1の弾性シート上に保持されたマザーブロックが切断される状態を示す模式断面図である。
図2に示すように、第1の弾性シート20をマザーブロック10の一方主面に貼付けた後、第1の弾性シート20側が下になるように、第1の弾性シート20及びマザーブロック10をカットステージ30上に載置する。カットステージ30は一定の温度に加熱されており、その温度は上記TB℃より高いことが好ましく、例えば70℃以上、120℃以下である。カットステージ30を加熱することで、セラミック層11に含まれる成分(A)が軟化し、マザーブロック10を切断しやすくなるとともに、第1の弾性シート20の粘着性が発現し、第1の弾性シート20にマザーブロック10が保持される。
【0032】
第1の弾性シート20とカットステージ30とを固定する方法は特に限定されないが、カットステージ30の厚み方向に吸引穴(不図示)を設け、カットステージ30の下面側から吸引穴を通じて第1の弾性シート20を吸引することで、第1の弾性シート20をカットステージ30上に保持することができる。
【0033】
次いで、押切刃CBを上下方向VDに動かし、マザーブロック10の第1の弾性シート20とは反対側からマザーブロック10へ侵入させる。上下方向VDは、上述した厚み方向に平行な方向である。マザーブロック10の端縁を切り落とし、露出した内部電極12やカット用ラインCLの位置を確認しながら、マザーブロック10を切断する。切断後は、押切刃CB又はカットステージ30の位置を、水平方向HDに積層体チップ1つ分ずらし、更にマザーブロック10を切断していく。水平方向HDは、上述した面方向に平行な方向である。以上を繰り返して、マザーブロック10の一方端から他方端まで切断していく。その後、カットステージ30を水平方向HDに90°回転させてマザーブロック10の方向を変え、同様に切断を行い、マザーブロック10を個片化して積層体チップを作製することができる。
【0034】
押切刃CBは、マザーブロックの切断に通常用いられるギロチン刃等を用いることができる。押切刃CBは、刃先の厚みが0.03mm以上、0.08mm以下であるものが好ましい。
【0035】
図2に示す手順で個片化された積層体チップは、第1の弾性シートで保持されているため、押切刃で切断したとしても、位置ずれもなく飛び散らないため、好ましい。
【0036】
次いで、第1の弾性シートと第2の弾性シートとを用いて、面方向に隣接した複数の積層体チップを、上記面方向と垂直方向に上下から挟む挟持工程を行う。
【0037】
第1の弾性シートと第2の弾性シートとを用いて積層体チップを挟む手順は特に限定されない。
図2に示す手順で個片化された複数の積層体チップは、セラミック層の厚み方向に直交する面方向に隣接した状態で第1の弾性シート上に載置されているため、
図2に示す手順で積層体チップを作製した後、第1の弾性シート上の積層体チップの他方主面に第2の弾性シートを貼り合わせることが好ましい。積層体チップは、セラミック層の厚み方向に直交する面方向に隣接した状態で第1の弾性シート上に載置されていることが好ましいが、積層体チップの切断面が第1の弾性シート及び第2の弾性シートに接していてもよい。
【0038】
図3は、第1の弾性シートと第2の弾性シートとを用いて積層体チップを挟んだ状態を示す模式断面図である。
図3に示すように、第2の弾性シート40を、第1の弾性シート20上の積層体チップ13の上面に貼り合わせることで、狭持工程を行うことができる。
第2の弾性シート40に積層体チップ13を載置して、積層体チップ13の上面に第1の弾性シート20を貼り合わせることにより、狭持工程を行うこともできる。
【0039】
次いで、上記積層体チップをTA≦T≦TBとなる温度T℃に保ちながら、上記第1の弾性シート又は上記第2の弾性シートの少なくとも一方を介して上記積層体チップを押圧することで、隣接した複数の上記積層体チップを互いに離間させる離間工程を行う。以下では、
図4及び
図5を参照して離間工程について説明する。
【0040】
図4は、第1の弾性シートと第2の弾性シートとを用いて挟んだ積層体チップをブレイクステージに移動させる様子を示す模式断面図である。
図5は、離間工程の一例を示す模式断面図である。
図4に示すように、離間工程の前に第1の弾性シート20、第2の弾性シート40及び積層体チップ13をカットステージ30からブレイクステージ50に移動させることが好ましい。その際、上下方向VDに180°回転させて第2の弾性シート40を下側にしてから、第1の弾性シート20、第2の弾性シート40及び積層体チップ13をブレイクステージ50に載置することができる。上下方向VDに回転させずに第1の弾性シート20を下側にして、第1の弾性シート20、第2の弾性シート40及び積層体チップ13をブレイクステージ50に載置してもよい。
【0041】
図5に示すように、ローラ60を回転させつつ第1の弾性シート20の面方向(水平方向HD)に移動させて、第1の弾性シート20を介して積層体チップ13を押圧することにより、離間工程を行うことができる。ローラ60の大きさは特に限定されないが、直径が2mm以上、100mm以下であることが好ましい。ローラ60による押圧は、例えば0.1MPa以上、1.0MPa以下とすることができる。ローラ60の移動速度は、例えば、10mm/s以上、200mm/s以下とすることができる。
【0042】
ローラは往復動作をしても良い。また、一方向から押圧した後、第1の弾性シート、積層体チップ及び第2の弾性シートを水平方向に90°回転させ、他方向から押圧してもよい。
押圧はローラ以外の手段で行うこともできるが、ローラにより行うことが好ましい。
【0043】
図5では、第1の弾性シートを介して積層体チップを押圧しているが、第2の弾性シートを介して積層体チップを押圧してもよい。その場合、第1の弾性シート、第2の弾性シート及び積層体チップをカットステージからブレイクステージに移動させる際に、第1の弾性シートがブレイクステージに直接載置されるようにすればよい。
【0044】
上記第1の弾性シート又は上記第2の弾性シートを介して積層体チップを押圧することで、積層体チップが下側に押され、隣接する積層体チップ間に隙間が生じ、成分(A)で接着した積層体チップが離間する。このとき積層体チップは、TA≦T≦TBとなる温度T℃に保たれている。この温度T℃は、第1の弾性シートが粘着性を発現する温度(TA℃)以上であるため、積層体チップが第1の弾性シートに保持されるが、成分(A)が接着性を発現する温度(TB℃)以下であるため、積層体チップ同士が接着しない。上記離間工程において、上記第1の弾性シートを介して積層体チップを押圧することが好ましい。
【0045】
離間工程において積層体チップを温度T℃に保つ方法は特に限定されない。例えば、第2の弾性シートにヒータを当接し(不図示)、ヒータの加熱により積層体チップをT℃に保つことができる。また、ブレイクステージ自体が加熱するものであってもよいし、ブレイクステージをヒータ等で加熱してもよいし、ローラ内にヒータを埋設して加熱してもよいし、積層体チップの厚み方向の上方にヒータを設置して積層体チップを加熱してもよい。
【0046】
上記離間工程で積層体チップを離間させた後は、積層体チップを第2の弾性シートから分離し、第1の弾性シートを冷却する等して、積層体チップを第1の弾性シートから分離する。その後、積層体チップを焼成して端面に外部電極ペースト等の機能性ペーストを塗布し、外部電極のような機能性膜を形成し、更に焼成して積層セラミックコンデンサ等を得る。あるいは、積層体チップの端面に外部電極ペーストを塗布し、積層体チップと同時に焼成してもよい。
【0047】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0048】
<1>
TA℃で粘着性が発現する第1の弾性シートを準備する準備工程と、
第2の弾性シートを準備する準備工程と、
TB℃以上で接着性が発現する成分(A)を含むセラミック層が厚み方向に積層された積層体チップを準備する準備工程と、
上記第1の弾性シートと上記第2の弾性シートとを用いて、面方向に隣接した複数の上記積層体チップを、上記面方向と垂直方向に上下から挟む挟持工程と、
上記積層体チップをTA≦T≦TBとなる温度T℃に保ちながら、上記第1の弾性シート又は上記第2の弾性シートの少なくとも一方を介して上記積層体チップを押圧することで、隣接した複数の上記積層体チップを互いに離間させる離間工程と、を含む電子部品の製造方法。
【0049】
<2>
上記押圧がローラにより行われる<1>に記載の電子部品の製造方法。
【0050】
<3>
上記第2の弾性シートにヒータを当接し、上記ヒータにより上記積層体チップをT℃に保ちながら上記離間工程を行う、<1>又は<2>に記載の電子部品の製造方法。
【0051】
<4>
上記第1の弾性シート上に保持されたマザーブロックを、上記第1の弾性シートとは反対側から押切刃で切断することにより、隣接した複数の前記積層体チップに個片化される<1>~<3>のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【0052】
<5>
上記離間工程において、上記第1の弾性シートを押圧する<1>~<4>のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【0053】
<6>
TAとTBとの差が20℃以上、70℃以下である<1>~<5>のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【0054】
<7>
TAが40℃以上、120℃以下である<1>~<6>のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【実施例0055】
以下、本発明の電子部品の製造方法をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
チタン酸バリウムの粉体、65℃で接着性が発現する有機バインダ(成分(A))、可塑剤及び有機溶剤を混合してスラリーを得、スラリーを樹脂フィルム上に塗工し、乾燥して誘電体シートを得た。得られた誘電体シートを100枚積層して、マザーブロックを得た。45℃で粘着力が発現する第1の弾性シート(ニッタ株式会社製シート、厚み115μm)をマザーブロックの一方主面に貼り合わせ、第1の弾性シート側が下になるようにマザーブロック及び第1の弾性シートをカットステージ上に載置した。カットステージを90℃に加熱し、厚み0.03mmの押切刃でマザーブロックを切断し、0.6mm×0.3mmの大きさ(0603サイズ)の積層体チップを得た。
次に、積層体チップに個片化されたマザーブロックの他方主面に、硬度20°、厚み2000μmの第2の弾性シートを貼り合わせた。マザーブロックを第1の弾性シートと第2の弾性シートとで挟んだ状態で上下を返し、マザーブロックをカットステージからブレイクステージに移動させた。このとき、第2の弾性シート側が下になるように、第1の弾性シート、マザーブロック及び第2の弾性シートをブレイクステージに載置した。
ブレイクステージを表1に記載の温度に加熱しながら、直径6mmのローラを圧力0.5MPa、速度100mm/sで第1の弾性シートの上から押圧して、積層体チップを離間させた。
【0057】
実施例2
有機バインダを50℃で接着性が発現するものに変更し、第1の弾性シートを30℃で粘着力が発現するものに変更した以外は実施例1と同様にマザーブロックを作製、個片化し、ローラを押し当てて積層体チップを離間させた。
【0058】
実施例1及び2でローラを押し当てた積層体チップについて、以下の手順で評価を行った。
(保持効果)
積層体チップの全数に対して、第1の弾性シートから外れた積層体チップの個数の割合を算出した。第1の弾性シートから外れた積層体チップの個数は、第1の弾性シートを上方に持ち上げた際、第2の弾性シート上に残留している積層体チップの個数を目視で数えた。第2の弾性シート上に残留している積層体チップは、第1の弾性シートから外れた積層体チップである。評価は以下の基準で行った。結果を表1及び表2に示す。
〇(良)・・・第1の弾性シートから外れた積層体チップが0.1%以下
△(可)・・・第1の弾性シートから外れた積層体チップが0.1%より多く、10%以下
×(不可)・・・第1の弾性シートから外れた積層体チップが10%より多い
【0059】
(ほぐし効果)
積層体チップの全数に対して、積層体チップ同士が接着した個数の割合を算出した。積層体チップ同士が接着した個数は、第1の弾性シート及び第2の弾性シートから全ての積層体チップを外してナイロンメッシュのふるいにかけ、ふるいに残った積層体チップの個数を数えた。ふるいに残った積層体チップは、全て積層体チップ同士が接着していた。評価は以下の基準で行った。結果を表1及び表2に示す。
〇(良)・・・積層体チップ同士が接着した割合が0.1%以下
△(可)・・・積層体チップ同士が接着した割合が0.1%より多く、10%以下
×(不可)・・・積層体チップ同士が接着した割合が10%より多い
【0060】
【0061】
【0062】
表1に示すように、45℃で粘着力が発現する第1の弾性シート、及び、65℃で接着性が発現する有機バインダを用いた実施例1では、積層体チップの温度45℃以上、65℃以下で積層体チップ同士の接着が発生せず、ほとんどの積層体チップが第1の弾性シートから外れなかった。特に、積層体チップの温度50℃以上、60℃以下では、積層体チップ同士の接着が発生せず、第1の弾性シートから積層体チップが外れなかった。
表2に示すように、30℃で粘着力が発現する第1の弾性シート、及び、50℃で接着性が発現する有機バインダを用いた実施例2では、積層体チップの温度30℃以上、50℃以下で積層体チップ同士の接着が発生せず、ほとんどの積層体チップが第1の弾性シートから外れなかった。特に、積層体チップの温度45℃では、積層体チップ同士の接着が発生せず、更に第1の弾性シートから積層体チップが外れなかった。