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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005758
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】せん断土槽
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20250109BHJP
   E02D 33/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01M7/02 Z
E02D33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106095
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】501232528
【氏名又は名称】株式会社複合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井澤 淳
(72)【発明者】
【氏名】土井 達也
(72)【発明者】
【氏名】飯島 正敏
(57)【要約】
【課題】前面から模擬地盤の変形や地中構造物の変形を観察することが可能になるせん断土槽を提供する。
【解決手段】複数のせん断枠が積層された枠内に模擬地盤Mを形成して振動台実験を行う際に使用されるせん断土槽1である。
そして、底部21及び側壁部22,22Aを有する外殻部2と、側壁部22Aに形成された長方形の開口部に配置される透明板3と、透明板に対して平面視略コ字形の開放側を向けて配置される複数のせん断枠4と、側壁部に対して、加振方向Kのせん断枠の移動が許容されるように支持させる滑動支持部6と、底部の上に積層されたせん断枠の内周側を覆う膜部5とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のせん断枠が積層された枠内に模擬地盤を形成して振動台実験を行う際に使用されるせん断土槽であって、
底部及び側壁部を有する外殻部と、
前記側壁部の1つに形成された長方形の開口部に配置される透明板と、
前記透明板に対して平面視略コ字形の開放側を向けて配置される複数のせん断枠と、
前記側壁部に対して、前記透明板の幅方向の前記せん断枠の移動が許容されるように支持させる滑動支持部と、
前記底部の上に積層された前記せん断枠の内周側を覆う膜部とを備えたことを特徴とするせん断土槽。
【請求項2】
前記外殻部は、上面を覆う蓋部を有しており、
前記蓋部の下面と最上層となる前記せん断枠の上面との間に、前記幅方向の前記せん断枠の移動が許容されるように上側押さえ材が介在されることを特徴とする請求項1に記載のせん断土槽。
【請求項3】
前記せん断枠には、前記幅方向が長手方向となる長方形の孔部が複数、穿孔されており、
前記孔部には、前記せん断枠の厚さより大きな直径のボールベアリング又はローラが配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のせん断土槽。
【請求項4】
前記せん断枠は、前記孔部の位置が平面視の投影方向で重ならないように穿孔された2種類が用意されていて、2種類の前記せん断枠を交互に積層させることを特徴とする請求項3に記載のせん断土槽。
【請求項5】
前記せん断枠の厚さが、実物換算で10cm-20cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のせん断土槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のせん断枠が積層された枠内に模擬地盤を形成して振動台実験を行う際に使用されるせん断土槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下構造物や基礎構造物の振動台実験において、地盤の変形を再現するためにせん断土槽が使用される(特許文献1-3など参照)。一般的なせん断土槽では、ロ字形の鋼製のせん断枠を使用し、ボールベアリングを介して鉛直方向にせん断枠を積み重ねて模擬地盤の周縁を形成する。
【0003】
一般的なせん断土槽では、実物換算で0.5m-2m程度(模型縮尺1/50とした場合)の厚さとなるロ字形のせん断枠を積層させる。1m程度の薄い軟弱層や液状化層のせん断挙動を再現するには、その層内をさらに細かく分割する必要があるので、せん断枠の厚さは薄くできることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-296202号公報
【特許文献2】特開2018-31628号公報
【特許文献3】特開2022-12607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロ字形のせん断枠を使用する場合、模擬地盤の全周をせん断枠で囲むことになるので、前面から地盤の変形や地中構造物の変形を観察することはできない。振動台実験において、地盤のせん断変形を目視で観察することは、地盤の地震応答に関する現象解明や、杭基礎や地中構造物などの耐震設計の発展に貢献できることだと言える。
【0006】
そこで、本発明は、前面から模擬地盤の変形や地中構造物の変形を観察することが可能になるせん断土槽を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のせん断土槽は、複数のせん断枠が積層された枠内に模擬地盤を形成して振動台実験を行う際に使用されるせん断土槽であって、底部及び側壁部を有する外殻部と、前記側壁部の1つに形成された長方形の開口部に配置される透明板と、前記透明板に対して平面視略コ字形の開放側を向けて配置される複数のせん断枠と、前記側壁部に対して、前記透明板の幅方向の前記せん断枠の移動が許容されるように支持させる滑動支持部と、前記底部の上に積層された前記せん断枠の内周側を覆う膜部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、前記外殻部は、上面を覆う蓋部を有しており、前記蓋部の下面と最上層となる前記せん断枠の上面との間に、前記幅方向の前記せん断枠の移動が許容されるように上側押さえ材が介在される構成とすることができる。
【0009】
また、前記せん断枠には、前記幅方向が長手方向となる長方形の孔部が複数、穿孔されており、前記孔部には、前記せん断枠の厚さより大きな直径のボールベアリング又はローラが配置される構成とすることができる。さらに、前記せん断枠は、前記孔部の位置が平面視の投影方向で重ならないように穿孔された2種類が用意されていて、2種類の前記せん断枠を交互に積層させることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された本発明のせん断土槽では、外殻部の側壁部の1つに形成された長方形の開口部に透明板が配置され、その透明板に対して平面視略コ字形の開放側を向けたせん断枠が配置される。
【0011】
このため、透明板を通して、前面から模擬地盤の変形や地中構造物の変形を観察することができる。透明板に密着した面の模擬地盤のせん断変形が目視で観察できれば、地盤の地震応答に関する現象解明や、杭基礎や地中構造物などの耐震設計の発展に大きく寄与する研究を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態のせん断土槽の構成を平面視で示した説明図である。
図2】本実施の形態のせん断土槽の構成を正面視で示した説明図である。
図3】奇数段に配置されるせん断枠を例示した平面図である。
図4】偶数段に配置されるせん断枠を例示した平面図である。
図5】ボールベアリングが配置されるせん断枠の孔部周辺を拡大して示した説明図である。
図6図5のA-A矢視方向で見たせん断枠とボールベアリングとの配置関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2は、本実施の形態のせん断土槽1の構成を平面視と正面視で示した説明図である。
【0014】
本実施の形態のせん断土槽1は、地盤や地下構造物や基礎構造物の振動台実験において、地盤の変形を再現するために使用される。振動台実験においては、地盤のせん断変形を観察することや、1m程度の薄い軟弱層や液状化層のせん断変形を再現することで、地盤の地震応答に関する現象解明や、杭基礎や地中構造物などの耐震設計の発展に貢献できるようになる。
【0015】
本実施の形態のせん断土槽1は、図1,2に示すように、直方体状に形成される外殻部2と、外殻部2の側面に配置される透明板3と、外殻部2の内空に積層される複数のせん断枠4と、積層されたせん断枠4を側方から支持させる滑動支持部6と、底部21の上に積層されたせん断枠4の内周側を覆う膜部5と、外殻部2の上面を覆う蓋部23とを備えている。
【0016】
そして、振動台実験において挙動を再現させたい模擬地盤Mは、外殻部2の内空において積層された複数のせん断枠4の枠内に形成される。すなわち、振動台実験によってせん断土槽1ごと加振方向Kに加振されると、せん断枠4の内周側から模擬地盤Mに対して外力が作用することになる。
【0017】
外殻部2は、平面視長方形の底部21と、底部21の4辺に立設される側壁部22,22Aと、箱状に形成された側壁部22,22Aの上方を塞ぐ蓋部23とによって主に構成される。ここで、図示では底部21と側壁部22,22Aとが一体に描かれているが、図1,2は模式図であって、これに限定されるものではなく、板状の底部21の上面に対して、側壁部22,22Aの下端面を載せて箱状に組み立てるような構成であってもよい。
【0018】
外殻部2の4つの側面の中で、平面視コ字形になる3面を形成する側壁部22は、開口のない均一な壁面であってもよいし、特に限定されるものではない。これに対して、4つの側面のうちの1面となる側壁部22Aには、中央に長方形の開口部が形成される。
【0019】
この側壁部22Aの開口部は、外殻部2の内空に形成される直方体状の模擬地盤Mの1つの側面が、すべて露出される大きさに形成される。そして、その開口部には、透明板3が配置される。図2には、2点鎖線で透明板3と模擬地盤Mとの配置関係を示している。この透明板3に対峙する模擬地盤Mの側面を、ここでは正面と呼ぶことにする。
【0020】
図2に示すように、模擬地盤Mの正面となる長方形の領域は、観察窓となる透明板3の領域内に収まっている。透明板3には、アクリル板やガラス板などの透明な材料が使用される。このため、外殻部2の外側から、透明板3を通して模擬地盤Mの正面の状態を、いつでも目視で観察することが可能になる。
【0021】
直方体状の模擬地盤Mの正面は、透明板3に対峙して密着することになるが、残りの3側面は、せん断枠4の内周面に対峙することになる。せん断枠4は、図1に示すように、平面視略コ字形に形成され、せん断枠4の内周の3辺と透明板3とによって、平面視長方形の模擬地盤Mの外周が囲まれることになる。
【0022】
平面視略コ字形のせん断枠4は、開放側を透明板3に向けて配置される。せん断枠4は、鋼板やアルミ板などの金属板を加工して製作される。せん断枠4は、長方形の本体部4aと、その両端において本体部4aと直交する長方形のアーム部4bとによって、平面視コ字形に形成される。例えば1枚の鋼板から、本体部4aと両端のアーム部4bとが形成されるように平面視コ字形を切り出すことによって製作することができる。
【0023】
せん断枠4には、図1に示すように、透明板3の幅方向が長手方向となる長方形の孔部41が複数、穿孔されている。ここで、透明板3の幅方向と、振動台実験の加振方向K(図1,2の左右方向)とは、同一方向となる。要するに、模擬地盤Mは、透明板3に沿って加振方向Kに振動することになる。
【0024】
この加振方向Kの振動を妨げないように、積層されたせん断枠4の周囲には、複数の滑動支持部6が配置される。要するに滑動支持部6は、透明板3が配置された側壁部22Aとそれに対向する側壁部22に対して、透明板3の幅方向(加振方向K)の移動が許容されるようにせん断枠4を支持する。
【0025】
図1の平面図においては、滑動支持部6は、せん断枠4の四隅と、透明板3と対向する本体部4aの中央付近とに配置されている。滑動支持部6は、例えば円柱状又は円筒状の鉛直コロ61によって構成される。
【0026】
例えば、透明板3の両側の側壁部22Aと、側壁部22Aに対向する側壁部22のせん断枠4と対峙する面に、直方体状の切り欠きを設け、その切り欠きの中に複数の鉛直コロ61を収容する。
【0027】
鉛直コロ61は、側壁部22A,22と同じ高さ、少なくとも積層されたせん断枠4の高さよりも長く形成される。このため、せん断枠4の加振方向Kに直交する方向への移動は、滑動支持部6によって制限されることになる。
【0028】
これに対して、加振方向Kのせん断枠4の移動については、せん断枠4に接触する鉛直コロ61が回転するなどして、滑らかに行われる。せん断枠4は、別途、ストッパなどを設けなければ、加振方向Kに直交する側壁部22に突き当たるまで移動させることができる。
【0029】
通常の模擬地盤Mの周囲には、地下水が存在するので、せん断枠4のアーム部4bと加振方向Kに直交する側壁部22との間には、水が注入される。図2には、地下水を模した水面Wを図示している。模擬地盤Mには、1m程度の薄い液状化層M1や軟弱層を模擬させることもできる。図2では、せん断枠4が250段程度、積層されている状態を示している。
【0030】
模擬地盤Mの透明板3と対峙する正面以外の側面は、膜部5で覆われる。すなわち、積層されたせん断枠4の内周側は、膜部5で覆われる。膜部5には、ゴムシートなどのメンブレンシートが使用できる。
【0031】
せん断枠4と模擬地盤Mとの間に膜部5を介在させることによって、模擬地盤Mを構成する砂や土などの粒子が、せん断枠4側に侵入するのを防ぐことができる。膜部5は、例えばせん断枠4の内周の3側面にそれぞれ配置することができる。
【0032】
膜部5には、止水性を求めていないので、せん断枠4の外周側に注入された水の模擬地盤Mに向けた移動は、自由に行われる。例えば、模擬地盤Mの下面側で水の移動が自由にできるようになっている。また、膜部5,5間の隙間や、透明板3と膜部5との隙間からも、水の移動は自由にできる。
【0033】
図2に示すように、せん断枠4は、底部21の上に積み上げられて、内周側に模擬地盤Mが収容された状態で加振方向Kに移動する。この加振方向Kへの移動がスムーズに行われるように、蓋部23の下面と最上層となるせん断枠4の上面との間には、加振方向Kのせん断枠4の移動が許容されるように上側押さえ材が介在される。
【0034】
上側押さえ材は、例えば円柱状又は円筒状の水平コロ24によって構成される。蓋部23と最上層のせん断枠4との間に水平コロ24が介在されることによって、せん断枠4は、浮き上がることなく安定して加振方向Kに移動することができるようになる。
【0035】
水平コロ24は、せん断枠4のアーム部4bと同程度の長さで、せん断枠4に接触する水平コロ24が回転するなどして、加振方向Kの移動が滑らかに行われる。そして、積層される上下のせん断枠4,4間にも、これらの間の移動がスムーズに行われるように、ボールベアリング42が介在される。
【0036】
図3及び図4は、せん断枠4の例示であり、図3は奇数段に配置されるせん断枠4Aの平面図であり、図4は偶数段に配置されるせん断枠4Bの平面図である。2種類のせん断枠4A,4Bは、孔部41の位置以外は同じ構成となるので、共通する部分は、せん断枠4の符号を使って説明する。
【0037】
せん断枠4A,4Bには、加振方向Kが長手方向となる長方形の孔部41が複数、穿孔され、その孔部41にボールベアリング42が収容される。図3及び図4に記入した寸法は、一例である。
【0038】
例えば、750mm程度の幅のせん断枠4A,4Bにおいて、25mmから50mm程度の間隔をあけて複数の孔部41が穿孔される。このせん断枠4A,4Bの枠内に形成される模擬地盤Mの平面視の大きさは、短辺側200mmで長辺側500mmの長方形である。
【0039】
2種類のせん断枠4A,4Bは、鉛直方向に交互に重ねて使用されるもので、せん断枠4A,4Bのそれぞれの孔部41の位置は、平面視の投影方向で重ならないように設定されている。図5は、ボールベアリング42が配置されるせん断枠4Bの孔部41周辺を拡大して示した説明図である。
【0040】
この図に示すように、せん断枠4Bに穿孔された孔部41の下には、下に重ねられるせん断枠4Aの孔部41が穿孔されていない上面が位置するので、孔部41に収容されたボールベアリング42が落下することはない。ボールベアリング42は、上下のせん断枠4Aの下面と上面との間で転動することができる。
【0041】
長方形の孔部41の短辺は、ボールベアリング42の直径と同程度に設定され、長辺の長さは、収容するボールベアリング42の数に応じて任意に設定することができる。図5では、加振方向Kに10個のボールベアリング42が孔部41に並んでいる状態を示している。
【0042】
図6は、図5のA-A矢視方向で見たせん断枠4A,4Bとボールベアリング42との配置関係を示した説明図である。ここで、せん断枠4A,4Bの厚さは、任意に設定することができる。
【0043】
例えば、1.5mm程度の鋼板によってせん断枠4(4A,4B)を製作する場合、模型縮尺を1/50として、ボールベアリング42に直径2mmの鋼球を使用すれば、実物換算で10cm程度の層厚を再現できる。
【0044】
実物換算で10cm-20cm程度の層厚で模擬地盤Mの周囲を挙動させることができるのであれば、1m程度の薄い液状化層M1であっても5分割から10分割できることになり、そのせん断挙動を高い精度で再現させることができるようになる。
【0045】
次に、本実施の形態のせん断土槽1の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態のせん断土槽1では、外殻部2の側壁部22Aに形成された長方形の開口部に透明板3が配置され、その透明板3に対して平面視略コ字形の開放側を向けたせん断枠4が配置される。
【0046】
このため、透明板3を通して、正面(前面)から模擬地盤Mの変形や地中構造物等の変形を観察することができる。透明板3に密着した正面の模擬地盤Mのせん断変形が目視で観察できれば、地盤の地震応答に関する現象解明や、杭基礎や地中構造物などの耐震設計の発展に大きく寄与する研究を行うことができるようになる。
【0047】
特に、1.5mmから2.0mm程度の厚さのせん断枠4を使用することで、これまで実験的に再現できていなかった実物換算で1m程度の薄い軟弱層や液状化層M1での局所的な地盤変位の急増を、再現することができるようになる。
【0048】
また、ボールベアリング42が配置される孔部41の位置が平面視の投影方向で重ならないように穿孔された2種類のせん断枠4A,4Bを交互に積層させるのであれば、最小限の部品の種類数でせん断土槽1を構成することができる。
【0049】
また、最上層のせん断枠4を、上側押さえ材となる水平コロ24によって加振方向Kへの移動を制限することなく押さえるのであれば、積層されたせん断枠4を安定して外殻部2の内部で振動させることができる。
【0050】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0051】
例えば前記実施の形態では、1.5mmの厚さのせん断枠4と直径2mmのボールベアリング42とを組み合わせて実物換算で10cm程度の層厚を再現する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、実物換算で20cm程度の層厚となる厚さが4mm程度(模型縮尺1/50とした場合。せん断枠の厚さは3.5mm程度)にすることもできる。なお、せん断枠の厚さとして適用できる上限値はないので、3.5mmより厚くなったとしても、本発明のせん断土槽に使用することができる。
【0052】
また、前記実施の形態では、直方体状に形成される外殻部2であって地下水を模した水を注入できる構造について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、地下水がない場合に限定した用途のせん断土槽であれば、透明板3が配置された側壁部22Aとそれに対向する側壁部22との平行する側壁部だけにして、それらに直交する妻側の側壁部22を省略した構成にすることもできる。
【0053】
さらに、前記実施の形態では、せん断枠4,4A,4Bの孔部41に複数のボールベアリング42を収容する構成について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、せん断枠の孔部に、ボールベアリング42に代えて円柱状のローラを配置することもできる。この場合は、例えばケージに複数のローラが組み込まれたフラットローラを使用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 :せん断土槽
2 :外殻部
21 :底部
22 :側壁部
22A :側壁部
23 :蓋部
24 :水平コロ(上側押さえ材)
3 :透明板
4,4A,4B:せん断枠
41 :孔部
42 :ボールベアリング
5 :膜部
6 :滑動支持部
K :加振方向(幅方向)
M :模擬地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6