(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005763
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】定着装置および加熱装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20250109BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20250109BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20250109BHJP
B65H 5/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B41J2/01 125
G03G15/20 525
G03G15/20 515
B65H5/02 Z
B65H5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106101
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】玉木 政行
(72)【発明者】
【氏名】田中 正信
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直紀
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸輔
【テーマコード(参考)】
2C056
2H033
3F049
3F101
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA21
2C056EC14
2C056EC29
2C056HA45
2C056HA46
2C056HA60
2C056JB18
2H033AA14
2H033AA23
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA31
2H033BA49
2H033BA50
2H033BA51
2H033BA54
2H033BA55
2H033BA56
2H033BA57
2H033BB12
2H033BB30
2H033BB38
2H033BE00
2H033CA07
2H033CA26
3F049AA03
3F049BB04
3F049DA02
3F049LA01
3F049LB03
3F101AB01
3F101AB08
3F101LA01
3F101LB03
(57)【要約】
【課題】 上下ベルトで一方がスリップなどにより、上下ベルトで速度差が発生したとすると、定着ニップ部で記録材にストレスがかかり、紙シワやインク擦れなどの不良が発生するという課題があった。
【解決手段】 ベルト内面を清掃し、耐久後のスリップを防止する。ベルトの外部/内部の対向位置に清掃部材(ウェブ)を配置し、清掃性能を安定化させ、耐久後のスリップを防止する。また、ベルトを駆動させる搬送ローラをウェブを使って清掃し、耐久後のスリップを防止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に画像を定着させる、画像形成装置において、
定着部材の外面を清掃する外面清掃ユニットを有し、定着部材の内面を清掃する内面清掃ユニットを有し、外面清掃ユニットと内面清掃ユニットは定着部材を介して対向していることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
上ベルトと、前記上ベルトを張架する少なくとも2本のローラと、で構成される上ベルトユニットと、下ベルトと、前記下ベルトを張架する少なくとも2本のローラと、で構成される下ベルトユニットと、で構成される定着装置において、
少なくとも前記上ベルトユニット、前記下ベルトユニットのどちらか一方の外部内部に清掃ユニットが配置されることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
定着部材を張架する部材は、3本以上あり、張架部材は、定着ニップ出口側から、第一張架部材、第二張架部材と数えて、上記清掃ユニットは、第二張架部材と定着ニップ入り口の間に配置してあることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記清掃ユニットは、汚れ回収部材としてウェブ部材で構成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記定着部材の内面を清掃する清掃ユニットはスクレーパまたはブレード形状であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
上ベルトと、前記上ベルトを張架する少なくとも2本のローラと、で構成される上ベルトユニットと、下ベルトと、前記上ベルトを張架する少なくとも2本のローラと、で構成される下ベルトユニットと、で構成される定着装置において、
少なくとも前記上ベルトユニット、前記下ベルトユニットのどちらか一方の内部に、清掃ユニットが配置され、前記ベルトを搬送する部材を清掃することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
前記清掃ユニットは、前記ベルトの駆動部材に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記清掃ユニットは、汚れ回収部材としてウェブ部材で構成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の定着装置。
【請求項9】
前記上ベルトを駆動する上駆動ローラに従動回転される上回収ローラと、前記下ベルトを駆動する下駆動ローラに従動回転される下回収ローラと、の少なくとも一方を持ち、前記上回収ローラもしくは下回収ローラ又はその両方に、それぞれウェブ部材を介してそれぞれ接触するウェブローラを持つ構成において、
少なくとも一方又は両方の前記回収ローラと、少なくとも一方又は両方の前記ウェブローラは、周速度が前記一方又は両方のウェブローラの方が遅いことを特徴とする請求項6~8の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記上ベルトを張架する上張架ローラと、前記下ベルトを張架する上張架ローラと、の少なくとも一方を持ち、前記一方又は両方の張架ローラにそれぞれウェブ部材を介してそれぞれ接触するウェブローラ、を持つ構成において、
少なくとも一方又は両方の前記張架ローラと、少なくとも一方又は両方の前記ウェブローラは、周速度が前記少なくとも一方又は両方のウェブローラの方が遅いことを特徴とする請求項6~8の何れか1項に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材上に画像を定着させる定着装置およびそれを搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置で記録された直後のインクは、十分乾いていない状態で触れられると、画像が乱れたり、手にインクが付着したりすることがある。記録速度が速いインクジェット記録装置では、1枚目の記録材のインクが乾く前に2枚目の記録材が重なって1枚目の記録材の裏面が汚れてしまうこともある。このため、インクジェット記録装置の中でも特に高速記録の機種ではインクを乾燥させて記録材に定着させる手段が必要となる。
【0003】
高速記録のインクジェット記録装置では、インクを乾燥、定着させるための手段として、記録直後の記録材が急激に高温となるように加熱する熱定着方式が用いられている。特許文献1で公開されている画像形成装置は、インクが印字された記録材をベルト対で挟み、熱圧をかけることによりインクを記録材に定着させる方式となっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱されたベルト対で記録材を挟むことでインクを記録材に定着する方式の定着装置において、ベルトを加熱する方法としてハロゲンヒーター等の放射光でベルトを非接触に加熱する方式がある。
【0006】
高速で且つ長寿命な定着装置を提供するためには、上下ベルトを長期間安定的に駆動させる必要がある。もし、上下ベルトで一方がスリップなどにより、上下ベルトで速度差が発生したとすると、定着ニップ部で記録材にストレスがかかり、紙シワやインク擦れなどの不良が発生するという課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みて検討・提案されたものであり、本発明の目的は、ベルトをヒーターで加熱する構成において、長期間使用してもベルトを安定的に駆動させることができる定着装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る定着装置は、ベルト(21、31)と、ベルト表面を清掃する表面清掃ユニット(80)と、ベルト内面を清掃する内面清掃ユニット(60)を有する記録材のインクを乾燥・定着させる定着装置(100)において、ベルト表面清掃ユニット(80)とベルト内面清掃ユニット(60)がベルト(21、31)を介して対向して配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、ベルト(21、31)と、ベルト(21、31)を張架する少なくとも2本のローラ(22、24、32、34)と、前記ベルト(21、31)は、少なくとも1本の前記ローラ(22~24、32~34)で駆動させる駆動ローラを担う記録材のインクを乾燥・定着させる定着装置において、前記駆動ローラに清掃ユニット(60、70)が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベルト内面を清掃することにより駆動ローラの汚れを抑えられ、ベルトを長期間安定的に駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】下側のベルトユニットに清掃ユニットを配置した例を説明する図である。
【
図5】上下のベルトユニットに清掃ユニットを配置した例を説明する図である。
【
図6】ベルト加熱方法を説明する定着装置の断面図である。
【
図7】本実施例3の清掃ユニットを説明する定着装置の断面図である。
【
図8】本実施例4の清掃ユニットを説明する定着装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態について図面に基づいて説明をする。なお、以下では、本発明をインクジェット方式のフルカラーの画像形成装置に適用する例を説明するが、本発明は、これに限らず、各種方式の画像形成装置、単色の画像形成装置などにも適用できる。
【実施例0013】
図1は定着装置の全体構成図である。インクジェット記録装置は、インクジェット方式で印字された記録材上のインクを乾燥させ定着させる。
【0014】
<定着装置>
定着装置100は上ベルトユニット20と下ベルトユニット30から構成され、上下のベルトが圧接されることでニップNが形成される。
【0015】
上ベルト21は上駆動ローラ22、上張架ローラ23、上ステアリングローラ24の少なくとも3本のローラにより張架されている。同じく下ベルト31は下駆動ローラ32、下張架ローラ33、下ステアリングローラ34の少なくとも3本のローラにより張架されている。
【0016】
3本のローラは上下ユニットで共通であり、張架ローラとステアリングローラは外径50mm、肉厚10mmの金属ローラである。材質として鉄やアルミなどを用いることができる。本実施例ではアルミの金属ローラを用いる。
【0017】
上下の駆動ローラ22、32は金属のローラの外側にゴム層が設けられており、ベルト内面との摩擦係数が他のローラより高くなっている。本実施例では、外径40mmのアルミローラの外周に厚さ5mmのゴム層が設けられている。ゴムの種類としてはウレタンゴムやシリコーンゴムなどを用いることができる。本実施例ではウレタンゴムを用いている。
【0018】
不図示のモーターにより駆動ローラにトルクが与えられると上ベルト21と下ベルト22が回転する。未定着画像が載った記録材Sは矢印の方向に搬送される。上ベルトと下ベルトの両方でロングニップし加熱することで、記録材Sに塗布されたインクが用紙へ浸透し高い印刷品位を実現する。
【0019】
<加熱源>
ヒーター40は上ユニット内に配置された熱源であり、ニップと反対側は反射板41に覆われている。ヒーター40は上ベルト21のニップ部を直接加熱することにより、記録材Sの画像面に素早く熱を与えることができる。ヒーターの種類としては、ハロゲンヒーターやカーボンヒーターなどを用いることができる。本実施例ではハロゲンヒーターを採用している。ヒーター40はベルトを直接加熱するため、熱応答性が良く、紙種の切り替え時などに出力を切り替えることで待ち時間なく定着動作を続けることができる。
【0020】
下ベルトユニット30は少なくとも3本のローラによって張架されている。ヒーター42は下ステアリングローラ34内に配置されたハロゲンヒーターである。ヒーター42に温められた下ステアリングローラ34により、下ベルト31が加熱される。下ベルトユニット30も上ベルトユニット20と同様にハロゲンヒーターにより下ベルト31を直接加熱することも可能であるが、下ベルトユニットは記録材Sの画像面を加熱するわけではないため、上ベルトユニットのような熱応答は必要ないため、加熱源としてステアリングローラ内のハロゲンヒーターを採用している。
【0021】
上ベルトと下ベルトはニップNを形成し、インクおよび記録材Sを加熱する。記録材Sに塗布されたインクが記録材Sへ浸透し、画像が記録材Sに定着される。
【0022】
<温度制御>
次に温度制御について述べる。
【0023】
温度センサ50は上ベルト(21)の温度をモニターするセンサであり、ニップを出た後のベルト温度をモニターしている。温度センサ50が検知した温度が目標温度になるように温調制御が行われる。
【0024】
目標温度はインクが記録媒体に定着し、擦過性を満足できるように決めればよく、インクの材料により最適な温度が異なる。本実施例では目標温度を85℃とした。
【0025】
下ベルト31も上ベルト21同様に温調制御を行う。温度センサ51はニップを出た後のベルト温度をモニターしており、上ベルト同様、目標温度85℃で温調制御を行う。
【0026】
<清掃ユニット>
次に清掃ユニットについて述べる。
【0027】
図1の実施例1の清掃ユニット60と清掃ユニット80を説明する。上ベルトユニット20内部に定着ベルト内面を清掃する清掃ユニット60を、上ベルトユニット20外部に定着ベルト21表面を清掃する清掃ユニット80を配置している。
【0028】
清掃ユニット60、80は、上ベルト21表面内面に付着した汚れを除去する清掃機構である。
【0029】
上ベルト21は各ローラと接触して回転するため、上ベルト21内面と各ローラの接触部から、ベルトの削れ粉や、ローラの削れ粉、異物などが発生する可能性がある。
【0030】
またローラはゴム層が設けられているため、ゴム層のゴム中に可塑剤、加硫剤、離型剤、低分子量成分等が含まれており、長時間使用することでこれらの成分がブリードしてローラ表面に付着し、上ベルト21内面との摩擦係数に影響を与える。その結果、上ベルト21がスリップを起こすことがある。
【0031】
このようなスリップを防止するために、清掃ユニット60が設けられている。
【0032】
清掃ユニット80は上ベルトに付着したインク成分、紙粉などを除去し、紙への再付着を防止するために設けられている。
【0033】
清掃ユニット60、80は、クリーニングウェブ61、81を有している。
【0034】
上ベルト内面に付着しているブリード成分はクリーニングウェブ61によって除去される。不織布等でできたクリーニングウェブ61はウェブローラ63を介して上ベルトに当接する。クリーニングウェブ61は、アラミド繊維等を編んだ不織布等であり、上ベルト21と各ローラとの摩擦係数を下げるために、潤滑剤を含浸している。ウェブに含浸しているオイルは、耐熱性などの観点からシリコーンオイルが好適に使用される。中でも使用条件に応じて種々の粘度のものが使用されるが、粘度が高すぎるものは塗布時の流動性が劣る。そのため、通常30000cSt以下のものが使用される。かかるオイルの具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0035】
クリーニングウェブの厚みは50[μm]であり、清掃したい対象物に応じて、厚み、密度を選択している。
【0036】
クリーニングウェブ80は上ベルト表面に付着したインク成分、紙粉などの異物を効率よく清掃するために、潤滑剤を含浸してもよいが、潤滑剤起因による画像上にオイル筋が発生することを避けるために、潤滑剤を含浸しなくても良い。
【0037】
クリーニングウェブ61は潤滑剤を含浸しているので、潤滑剤が加熱されることにより、潤滑剤の成分が粒径:数nm~数百nm程度の微粒子状のダスト(UFP:Ultra Fine Particles)となって装置本体内を浮遊し得る。
【0038】
UFPは、装置内に浮遊すると、各部品に付着し、それが起因となり記録材を汚し、成果物の品位を低下させたり、各部材間の摩擦係数を変化させることがある。
【0039】
そのため、クリーニングウェブ61は、上ベルトの内面温度が低くなる張架ローラ23を通過ぎた場所に配置している。上ベルト内面温度は、接触しているローラ22、23を通るたびに熱が奪われ、温度が低くなる。そのため、上記の位置にクリーニングウェブを配置することによりUFPの発生を最小限にしている。現在の配置であっても、クリーニングウェブの清掃能力は問題がない。
【0040】
また、清掃ユニット60、80は、ウェブローラ63、83が定着ベルトに当接・離間可能となるような当接離間機構を備える。
【0041】
クリーニングウェブ61、81は消耗品である。一度ブリード成分などの不純物が回収されたクリーニングウェブ61、81は、ウェブ巻き取りローラ65、85に巻き取られることで、上ベルトは常にウェブの新しい面が接触される。
【0042】
ウェブ送り出しローラ64、84から送り出すクリーニングウェブ61、81が不足すると、新たなクリーニングウェブ61、81と交換しなければならない。
【0043】
上記実施例は上ベルト側に清掃装置を配置したが、下ベルトも内面表面ともに汚れるので下ベルト側に清掃装置を配置しても良い。また、上ベルト下ベルト両側に清掃装置を配置しても良い。
実施例1と共通の部分は説明を省略する。実施例1との違いは、上ベルト内面(21)の清掃ユニット60がクリーニングウェブでなくて、スクレーパ66になっている点である。スクレーパ66はクリーニングウェブより低コストで実施できるためである。スクレーパ66はスクレーパを支える剛性の高い金属部分と、クリーニング性能を向上させるために、弾性部材から構成されている。
清掃ユニット60は上ベルト内面の異物を除去するためのスクレーパ66と異物を回収する異物回収部67を有している。異物回収部67を定期的に清掃することにより装置内部が汚れないようにしている。
本実施例においても、清掃ユニット60が上ベルト内面を効率よく清掃できるように、スクレーパ66が上ベルト表面の清掃ユニット80のウェブローラ83と対向配置しており、スクレーパ66が上ベルト内面に所定の圧で接触できるようになっている。具体的には、ウェブローラ83と上ベルトの接触点にスクレーパ66の角が配置されるように設計されている。また、清掃能力を上げるために、スクレーパ66は上ベルトの回転方向に対してカウンターになるように配置している。具体的には、ベルト面(水平面)に対して、45度の角度をもって配置されている。