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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005766
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20250109BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20250109BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/046
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106106
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 瑛久
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 伸明
(72)【発明者】
【氏名】武藤 功樹
【テーマコード(参考)】
2G001
2G051
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001FA01
2G001FA06
2G001FA29
2G001HA07
2G001HA14
2G001KA03
2G001LA11
2G051AA61
2G051AB02
2G051CA04
2G051EA12
2G051EB01
2G051EB10
2G051EC01
(57)【要約】
【課題】計算資源を増大化させることなく検査対象物の異常を高精度に検出可能な検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置は、検査対象物の異なる部分を撮像した複数の画像を取得する取得部と、機械学習により重みが設定された学習済みモデルを用いて部分毎に画像の特徴量を出力する特徴抽出部と、それぞれが部分毎に設定されたパラメータを有する複数の推論モデルを含み、特徴量を当該特徴量に対応する部分に対応する推論モデルに入力することにより、部分毎に異常が存在することの確からしさを示す指標値を出力する推論部と、それぞれが部分毎に設定された閾値を有する複数の判定モデルを含み、指標値を当該指標値に対応する部分に対応する判定モデルに入力することにより、部分毎に異常の有無を示す部分判定結果を出力する部分判定部と、複数の部分判定結果に基づいて検査対象物の異常の有無を判定する統合判定部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の異なる部分を撮像した複数の画像を取得する取得部と、
機械学習により重みが設定された学習済みモデルを用いて前記部分毎に前記画像の特徴量を出力する特徴抽出部と、
それぞれが前記部分毎に設定されたパラメータを有する複数の推論モデルを含み、前記特徴抽出部から出力された前記特徴量を当該特徴量に対応する前記部分に対応する前記推論モデルに入力することにより、前記部分毎に異常が存在することの確からしさを示す指標値を出力する推論部と、
それぞれが前記部分毎に設定された閾値を有する複数の判定モデルを含み、前記推論部から出力された前記指標値を当該指標値に対応する前記部分に対応する前記判定モデルに入力することにより、前記部分毎に異常の有無を示す部分判定結果を出力する部分判定部と、
前記部分判定部から出力された複数の前記部分判定結果に基づいて前記検査対象物の異常の有無を判定する統合判定部と、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記部分は、前記検査対象物の内部を分割する階層であり、
前記画像は、各前記階層における前記検査対象物の内部構造を示すX線画像である、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記学習済みモデルに所定のデータセットを入力して得られる出力に基づいて複数の前記部分のうちの1つである第1部分に対応する前記推論モデルの前記パラメータを算出し、当該算出されたパラメータを有する前記推論モデルに所定のデータセットを入力して得られる出力に基づいて前記第1部分に対応する前記判定モデルの前記閾値を算出する学習処理部、
を更に備える請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記学習処理部は、前記検査対象物以外の物体を撮像した画像を含むデータセットを用いて前記学習済みモデルの重みを算出する、
請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記推論部は、特徴毎に正規化された距離を用いて、前記特徴量の入力に対して前記指標値を出力する、
請求項1に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品等の検査対象物の異常(欠陥や不良等)を検出する技術として、検査対象物の内部や表面を撮像した画像を解析することにより検査対象物を破壊することなくその異常を検出可能な非破壊検査が利用されている。このような非破壊検査における画像解析処理に機械学習(深層学習)により生成された学習済みモデルが利用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-24201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような非破壊検査において、1つの検査対象物について複数の部分を撮像した複数の画像(例えば、検査対象物の内部構造を複数の階層に分割して撮像した複数の断面画像等)を取得し、これらの画像のそれぞれについて画像解析処理を行う場合がある。このような場合、部分(例えば階層等)毎に異なる画像解析処理を行う必要があるが、部分毎に異なる学習済みモデルを使用すると、多大な計算資源(メモリ容量や処理能力等)が必要となる。
【0005】
そこで、本発明の実施形態が解決しようとする課題の一つは、計算資源を増大化させることなく検査対象物の異常を高精度に検出可能な検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の検査装置は、検査対象物の異なる部分を撮像した複数の画像を取得する取得部と、機械学習により重みが設定された学習済みモデルを用いて部分毎に画像の特徴量を出力する特徴抽出部と、それぞれが部分毎に設定されたパラメータを有する複数の推論モデルを含み、特徴抽出部から出力された特徴量を当該特徴量に対応する部分に対応する推論モデルに入力することにより、部分毎に異常が存在することの確からしさを示す指標値を出力する推論部と、それぞれが部分毎に設定された閾値を有する複数の判定モデルを含み、推論部から出力された指標値を当該指標値に対応する部分に対応する判定モデルに入力することにより、部分毎に異常の有無を示す部分判定結果を出力する部分判定部と、部分判定部から出力された複数の部分判定結果に基づいて検査対象物の異常の有無を判定する統合判定部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、1つの学習済みモデルと、部分毎に設定されたパラメータを有する複数の推論モデルと、部分毎に設定された閾値を有する複数の判定モデルと、を用いて検査対象物の異常が検出される。そして、複数の推論モデルの各パラメータ及び複数の判定モデルの各閾値をそれぞれ対応する部分に適合するように設定(最適化)することにより、大きな計算資源を必要とする学習済みモデルを複数用いることなく、複数の画像を部分毎に異なる状況に合わせて適切に解析することが可能となる。これにより、計算資源を増大化させることなく高精度な非破壊検査を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の検査装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態の検査対象物及び画像の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態の階層と画像との関係の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態の検査装置の機能構成の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態の検査装置による検査処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態の学習処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用、結果及び効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によって実現可能であると共に、基本的な構成に基づく種々の効果や派生的な効果のうち少なくとも1つを得ることが可能である。
【0010】
図1は、実施形態の検査装置1の構成の一例を示す図である。本実施形態の検査装置1は、所定の検査対象物Oの異常を、検査対象物Oを破壊することなく検出する非破壊検査が可能な装置である。検査対象物Oは、特に限定されるべきものではないが、例えば半導体デバイス、車載部品、その他各種の工業製品等であり得る。
【0011】
本実施形態の検査装置1は、撮像装置11及び情報処理装置12を含む。
【0012】
撮像装置11は、検査対象物Oの所定の部分を撮像した画像(画像データ)を取得する装置である。撮像装置11は、例えば、X線等を利用して検査対象物Oの内部構造を示す断面画像を取得可能なCT(Computed Tomography)装置等であり得る。なお、撮像装置11は、CT装置に限定されるものではなく、例えば検査対象物Oの表面の状態を示す外観画像を取得可能な可視光線カメラ、赤外線カメラ、超音波カメラ等であってもよい。
【0013】
情報処理装置12は、撮像装置11により取得された画像に基づいて検査対象物Oの異常を検出するための処理を実行する装置である。情報処理装置12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)21、メモリ22、通信I/F(Interface)23、ユーザI/F24等を備える汎用コンピュータであり得る。CPU21は、メモリ22に記憶されたプログラムに従って検査対象物Oの異常を検出するための各種処理を実行する。メモリ22には、当該プログラムの他、当該処理の実行に必要な各種データを記憶する。通信I/F23は、撮像装置11等の外部機器と所定のネットワークを介して通信を確立するデバイスである。ユーザI/F24は、ユーザとの間で情報の入出力を可能にするデバイスであり、例えばディスプレイ、スピーカ、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル機構、マイク等であり得る。
【0014】
図2は、実施形態の検査対象物O及び画像I1~Inの一例を示す図である。図2において、検査対象物Oの上面図が例示されている。ここで例示する検査対象物Oは、プロセッサ等の電子回路部品の電極として機能する、複数のバンプBを有するBGA(Ball Grid Array)である。ここで例示するBGAは、基板Sの表面に複数のバンプBが所定の間隔で配列されて構成されている。各バンプBは、導電性の材料からなり、基板Sの表面から突出するように形成された、側面視で略楕円球状又は略球状の部材である。
【0015】
本実施形態の撮像装置11は、X線等を利用してバンプBの内部構造を示す複数の画像I1~Inを取得する。これらの画像I1~Inは、バンプBを高さ方向(基板Sの表面に対して垂直な方向)に分割する複数の階層(本例では第1階層~第n階層)のそれぞれに対応する断面画像である。本実施形態の情報処理装置12は、このような複数の画像I1~Inのそれぞれに対して所定の画像解析処理を行い、その結果に基づいて全てのバンプB又は選択された1以上のバンプBの異常を検出する。なお、複数の画像I1~Inは、X線画像に限定されるものではなく、例えば、欠陥を複数の角度から撮影した画像であってもよい。複数の角度から撮影することによって、一定の角度では見えない欠点を検知できるという効果がある。
【0016】
図3は、実施形態の階層と画像との関係の一例を示す図である。図3において、略楕円球状のバンプBの内部にボイド55が存在する状態が例示されている。例えば、このようなボイド55がある程度高い割合で混入しているバンプBを異常があるものと判定できる。なお、ボイド55は検査対象物Oを異常たらしめる異常要因の一例であって、異常要因はボイド55に限定されるものではない。
【0017】
ここで例示するバンプBは、略楕円球状であるため、その幅(基板Sと平行な断面の直径)は、階層毎に異なっている。具体的には、ここで例示するバンプBの幅は、中央の階層である第(n/2)階層で最も大きく、端部の階層、すなわち第1階層又は第n階層に近付くほど小さくなっている。
【0018】
図3において、あるボイド55が存在する位置に対応する第a階層の画像Iaと、他のボイド55が存在する位置に対応する第b階層の画像Ibと、が例示されている。ここでは、第a階層は、第b階層より第(n/2)階層に近い。このような場合、第a階層におけるバンプBの幅D1は、第b階層におけるバンプBの幅D2より大きくなる。すなわち、第a階層の画像Iaにおける撮像領域RIの幅Dに対するバンプBの幅D1の割合D1/Dは、第b階層の画像Ibにおける撮像領域RIの幅Dに対するバンプBの幅D2の割合D2/Dより大きくなる。
【0019】
上記のように、検査対象物Oの形状的特徴等に応じて、撮像領域RIと、検査対象物O(バンプB)の映像と、異常要因(ボイド55等)の映像と、の関係が階層毎に異なることとなる。そのため、バンプBの異常を高精度に検出するためには、階層毎に画像I1~Inに対する画像解析処理におけるパラメータや閾値等を調整することが必要となる。
【0020】
図4は、実施形態の検査装置1の機能構成の一例を示す図である。本実施形態の検査装置1は、取得部101、特徴抽出部102、推論部103、部分判定部104、統合判定部105、出力部106及び学習処理部107を備える。これらの機能部は、例えば図1に例示するようなハードウェアとソフトウェアとの協働により実現され得る。また、これらの機能部のうちの少なくとも1つが専用のハードウェア(回路等)により実現されてもよい。
【0021】
取得部101は、検査対象物O(例えばバンプB)の複数の部分(例えば階層)のそれぞれを撮像した複数の画像I1~Inを取得する。ここでは、複数の画像I1~Inが検査対象物Oの内部構造を階層毎に示す複数の断面画像である場合を例として説明するが、複数の画像はこれに限定されるものではない。例えば、検査対象物の表面を複数の角度から撮像した外観画像等を当該複数の画像としてもよい。
【0022】
特徴抽出部102は、機械学習(深層学習)により重みWが設定された学習済みモデルを用いて部分(階層)毎に画像I1~Inの特徴量F1~Fnを出力する。学習済みモデルの具体的構造は限定されないが、例えば、ニューラルネットワークを用いた構造であり得る。なお、特徴量F1~Fnはそれぞれ一つ以上の値を取ることができる。例えば、特徴量F1~Fnはスカラー値であってもよいし、ベクトルであってもよい。
【0023】
特徴量F1~Fnをどのような性質を有する値にするかは、検査対象物Oの種類や特性等に応じて適宜決定されるべきものである。バンプBを検査対象物Oとする場合、特徴量F1~Fnは、例えば、画像I1~In内においてボイド55の映像の面積が占める割合が大きいほど大きくなる値等であり得る。
【0024】
推論部103は、部分(階層)毎に設けられた複数の推論モデル(第1~第n推論モデル)を含み、特徴抽出部102から出力された複数の特徴量F1~Fnをそれぞれ対応する推論モデルに入力することにより、部分(階層)毎に異常が存在することの確からしさを示す指標値としての異常度S1~Snを出力する。複数の推論モデル(第1~第n推論モデル)のそれぞれは、部分(階層)毎に設定された固有のパラメータα1~αnを有する。
【0025】
指標値の一例としての異常度S1~Snは、例えば、異常がある可能性が高いほど大きくなる値等であり、特徴量F1~Fnと固有のパラメータα1~αnで設定された分布との距離が大きいほど大きくなる値等であり得る。複数の推論モデルのそれぞれは、階層毎に異なる固有のパラメータα1~αnを有する。これらのパラメータα1~αnは、例えば、階層毎に異なる検査対象物Oの状態(例えば階層毎にバンプBの幅が異なること等)に適合するように設定される。推論モデルの具体的構成は、検査対象物Oの種類や特性等に応じて適宜決定される。なお、固有のパラメータα1~αnは値が一致することがあってもよい。また、固有のパラメータα1~αnはそれぞれスカラー値やベクトルのように1つ以上の値をとることができる。
【0026】
異常度S1~Snの算出方法に正規化した距離を測る方法を用いることで、異常度S1~Snはある特定の確率密度分布に従った値を取り得る。このため、分布の特性から得られる閾値によって判定が可能となるため、閾値の設定を自動化することができ、設定工数の削減効果が得られる。例えば、正規化した距離として、異常度S1~Snの算出方法にマハラノビス距離を用いることで、異常度S1~Snはカイ二乗分布に従う。このため、カイ二乗分布の累積確率と異常の発生確率が一致する確率変数の値で閾値を設定することで、目的の異常判定精度を満たし得る閾値を計算のみにより導出することができるため、閾値の設定を自動化することができる。また、正規化した距離の代わりとして、コサイン類似度を用いることもできる。
【0027】
部分判定部104は、部分(階層)毎に設けられた複数の判定モデル(第1~第n判定モデル)を含み、推論部103から出力された複数の異常度S1~Snをそれぞれ対応する判定モデルに入力することにより、部分(階層)毎に異常の有無を示す部分判定結果R1~Rnを出力する。複数の判定モデル(第1~第n判定モデル)のそれぞれは、部分(階層)毎に設定された固有の閾値β1~βnを有する。
【0028】
各判定モデルは、例えば、入力された異常度S1~Snがそれぞれ対応する閾値β1~βnより大きい場合に異常があると判定するロジックモデル等であり得る。複数の判定モデルのそれぞれは、階層毎に異なる固有の閾値β1~βnを有する。これらの閾値β1~βnは、例えば、推論モデルのパラメータα1~αnと同様に、階層毎に異なる検査対象物Oの状態に適合するように設定される。なお、閾値β1~βnは、階層毎に異なる検査対象物Oの状態と適合度合いによって、共通の値が設定されることも可能である。この場合、共通の値を設定できる階層については一括で閾値β1~βnを設定できるため、閾値β1~βnの設定工程を低減できるという効果がある。
【0029】
統合判定部105は、部分判定部104から出力された複数の部分判定結果R1~Rnに基づいて検査対象物Oの異常の有無を判定し、その結果を示す統合判定結果RTを出力する。なお、何を検査対象物Oとするかは使用状況等に応じて適宜設定され得るものであり、例えば、複数のバンプBのそれぞれを検査対象物Oとしてもよいし、複数のバンプBを含むBGAを検査対象物Oとしてもよい。
【0030】
出力部106は、統合判定部105から出力された統合判定結果RTを所定の形式で出力する。
【0031】
学習処理部107は、学習済みモデルの重みを設定するための学習処理、複数の推論モデルのそれぞれのパラメータα1~αnを設定するための学習処理、及び複数の判定モデルのそれぞれの閾値β1~βnを設定するための学習処理を実行する。学習処理部107は、重みWが設定された学習済みモデルに所定のデータセットを入力して得られる出力に基づいて複数の部分(階層)のうちの1つである第1部分に対応する推論モデルのパラメータを算出し、当該算出されたパラメータを有する推論モデルに所定のデータセットを入力して得られる出力に基づいて第1部分に対応する判定モデルの閾値を算出する。例えば、学習処理部107は、重みWが設定された学習済みモデルに所定のデータセットを入力して得られる出力に基づいて第1階層に対応する第1推論モデルのパラメータα1を算出する。そして、学習処理部107は、当該パラメータα1を有する第1推論モデルに所定のデータセットを入力して得られる出力に基づいて第1階層に対応する第1判定モデルの閾値β1を算出する。
【0032】
上記構成によれば、1つの学習済みモデル(重みW)を用いて複数の画像I1~Inに対して階層毎に異なる状況に適合するように画像解析処理を実行できる。これにより、メモリ等の計算資源を削減できる。
【0033】
図5は、実施形態の検査装置1による検査処理の一例を示すフローチャートである。取得部101が検査対象物O(例えばバンプB)の各階層の画像I1~Inを取得すると、階層を示す変数dが1に設定される(S101)。
【0034】
特徴抽出部102は、第d階層の画像Id(初期段階では第1階層の画像I1)を、事前の機械学習により重みWが設定された学習済みモデルに入力し、画像Idの特徴を示す特徴量Fd(初期段階では特徴量F1)を取得する(S102)。
【0035】
その後、推論部103は、特徴抽出部102により取得された特徴量Fdを第d推論モデル(初期段階では第1階層に対応するパラメータα1を有する第1推論モデル)に入力し、第d階層の異常度Sd(初期段階では第1階層の異常度S1)を取得する(S103)。
【0036】
その後、部分判定部104は、推論部103により取得された異常度Sdを第d判定モデル(初期段階では第1階層に対応する閾値β1を有する第1判定モデル)に入力し、第d階層における異常の有無を示す部分判定結果Rd(初期段階では第1階層の部分判定結果R1)を取得する(S104)。
【0037】
その後、d=nか否か、すなわち変数dが最大階層数nに達したか否かが判定され(S105)、d=nでない場合(S105:No)、現在の変数dに1を加算した後(S106)、ステップS102以降の処理が再度実行される。すなわち、第1階層の部分判定結果R1が取得された後、第2階層の部分判定結果R2を取得するためにステップS102~S104の処理が実行され、その後、第n階層の部分判定結果Rnの取得が完了するまでステップS102~S104の処理が繰り返される。
【0038】
d=nである場合(S105:Yes)、すなわち全階層1~n分の部分判定結果R1~Rnが取得された後、統合判定部105は、これらの部分判定結果R1~Rnに基づいて検査対象物Oの異常の有無を判定する(S107)。当該判定の具体的手法は、検査対象物Oの種類や特性等に応じて適宜決定されるべきものであるが、例えば、複数の部分判定結果R1~Rnのうち1つでも異常がある場合には、検査対象物Oに異常があると判定してもよい。そして、出力部106は、統合判定部105による判定結果を示す統合判定結果RTを所定の形式で出力する(S108)。
【0039】
以下に、学習済みモデルの重みW、複数の推論モデルの各パラメータα1~αn及び複数の判定モデルの各閾値β1~βnを設定するための学習処理ついて説明する。
【0040】
図6は、実施形態の学習処理の一例を示すフローチャートである。先ず、学習処理部107は、学習済みモデルの重みWとして、ドメイン外のデータセットを用いて算出された重みを使用するか否かを判定する(S201)。ドメイン外のデータセットとは、実際の検査対象物O以外の物体を撮像した画像を含むデータセットである。このようなドメイン外のデータセットを用いることにより、重みを算出するための機械学習を検査対象物O(バンプB)毎に行う必要がなくなるため、学習処理に要する工数を低減できる。
【0041】
ドメイン外のデータセットを用いて算出された重みを使用しない場合(S201:No)、学習処理部107は、ドメイン外のデータセットとは異なる所定のデータセット(例えば、実際の検査対象物Oの画像のみからなるデータセット)を用いて重みを算出し(S202)、その後、階層を示す変数dを1に設定する(S203)。また、ドメイン外のデータセット用いて算出された重みを使用する場合(S201:Yes)、ステップS202を行うことなく、変数dを1に設定する(S203)。
【0042】
その後、学習処理部107は、上記のように算出された重みWが設定された学習済みモデルにパラメータ設定用のデータセットを入力して得られた出力に基づいて第d推論モデルのパラメータαd(初期段階では第1推論モデルのパラメータα1)を算出する(S204)。
【0043】
その後、学習処理部107は、上記のように算出されたパラメータαdを有する第d推論モデルに閾値設定用のデータセットを入力して得られた出力に基づいて第d判定モデルの閾値βd(初期段階では第1判定モデルの閾値β1)を算出する(S205)。
【0044】
その後、d=nか否か、すなわち変数dが最大階層数nに達したか否かが判定され(S206)、d=nでない場合(S206:No)、現在の変数dに1を加算した後(S207)、ステップS204以降の処理が再度実行される。すなわち、第1階層に対応するパラメータα1及び閾値β1の設定が完了した後、第2階層に対応するパラメータα2及び閾値β2を設定するためのステップS204,S205の処理が実行され、その後、第n階層のパラメータαn及び閾値βnの設定が完了するまでステップS204,S205の処理が繰り返される。
【0045】
d=nである場合(S206:Yes)、すなわち全階層1~n分のパラメータα1~αn及び閾値β1~βnの設定が完了すると、本ルーチンは終了する。このような学習処理により、複数の階層のそれぞれに対応するパラメータα1~αn及び閾値β1~βnを簡便且つ適切に設定できる。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、1つの学習済みモデルを利用して複数の画像I1~Inのそれぞれの特徴量F1~Fnが抽出される。そして、各特徴量F1~Fnをそれぞれ対応する推論モデルに入力することにより階層毎に異常度S1~Snが取得され、各異常度S1~Snをそれぞれ対応する判定モデルに入力することにより階層毎に部分判定結果R1~Rnが取得され、複数の部分判定結果R1~Rnに基づいて検査対象物Oの異常の有無が判定される。そして、複数の推論モデルの各パラメータα1~αn及び複数の判定モデルの各閾値β1~βnは、それぞれ対応する階層に適合するように設定(最適化)される。すなわち、1つの学習済みモデルを用いて複数の画像I1~Inに対して階層毎に異なる状況に適合するように画像解析処理を実行できる。これにより、計算資源を増大化させることなく高精度な非破壊検査を実施することが可能となる。
【0047】
また、上記実施形態において、検査対象物Oの部分は、検査対象物Oの内部を分割する階層であり、画像は、各階層における検査対象物Oの内部構造を示すX線画像である。この構成によれば、検査対象物Oの内部構造を複数の階層に分割して撮像した複数のX線画像を用いて行われる非破壊検査を小さい計算資源で高精度に実施できる。
【0048】
また、上記実施形態において、検査装置1は、学習済みモデルに所定のデータセットを入力して得られる出力に基づいて複数の部分のうちの1つである第1部分に対応する推論モデルのパラメータを算出し、当該算出されたパラメータを有する推論モデルに所定のデータセットを入力して得られる出力に基づいて第1部分に対応する判定モデルの閾値を算出する学習処理部107、を備える。この構成によれば、複数の推論モデルの各パラメータ及び複数の判定モデルの各閾値をそれぞれ対応する部分に適合するように簡便且つ適切に設定(最適化)できる。
【0049】
また、上記実施形態において、学習処理部107は、検査対象物O以外の物体を撮像した画像を含むデータセットを用いて学習済みモデルの重みを算出する。この構成によれば、重みを算出するための機械学習を検査対象物毎に行う必要がなくなるため、学習処理に要する工数を低減できる。
【0050】
また、上記構成において、推論部103は、特徴毎に正規化された距離を用いて、特徴量の入力に対して指標値を出力する。このように、指標値の算出方法に正規化した距離を測る方法を用いることで、指標値はある特定の確率密度分布に従った値を取り得る。これにより、分布の特性から得られる閾値によって判定が可能となるため、閾値の設定を自動化することができ、設定工数の削減効果が得られる。
【0051】
上述したような機能を検査装置1に実行させるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…検査装置、11…撮像装置、12…情報処理装置、55…ボイド、101…取得部、102…特徴抽出部、103…推論部、104…部分判定部、105…統合判定部、106…出力部、107…学習処理部、B…バンプ、F1~Fn…特徴量、I1~In,Ia,Ib…画像、O…検査対象物、R1~Rn…部分判定結果、RI…撮像領域、RT…統合判定結果、S…基板、S1~Sn…異常度、W…重み、α1~αn…パラメータ、β1~βn…閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6