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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025057799
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/028 20060101AFI20250402BHJP
   A61B 3/00 20060101ALI20250402BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
A61B3/028
A61B3/00
A61B3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023167550
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 尚樹
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA04
4C316AA09
4C316AA13
4C316AA20
4C316AA24
4C316AB11
4C316AB16
4C316FA01
4C316FA06
4C316FA07
4C316FC02
(57)【要約】
【課題】被検者の顔をより安定して支持することができ、被検眼の情報の取得を、より適切に、かつ、より効率的に取得することができる眼科装置を提供する。
【解決手段】眼科装置100は、被検眼の情報を取得するための測定光学系21を有する左右一対の測定ヘッド16と、一対の測定ヘッド16を個別に吊り下げて支持するヘッド支持部13と、ヘッド支持部13から吊り下げられて被検者の顎を支持する顎支持部18とを備える。顎支持部18は、ヘッド支持部13から下方向に延びる顎支持棒181と、顎支持棒181から被検者の方向に延びて被検者の顎に突き当てる顎当て部182と、顎支持部18の上下方向の位置を調整する上下位置調整機構183とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の情報を取得するための測定光学系を有する測定ヘッドと、
前記測定ヘッドを吊り下げて支持するヘッド支持部と、
前記ヘッド支持部から吊り下げられて被検者の顎を支持する顎支持部と、を備える
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記測定ヘッドは、左右の前記被検眼に対応して左右に一対設けられ、各測定ヘッドが前記ヘッド支持部から個別に吊り下げられており、
一対の前記測定ヘッドの間に、前記顎支持部が吊り下げられている
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記顎支持部は、上下方向の位置を調整可能な上下位置調整機構を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記顎支持部は、前記被検者に向かう方向及び前記被検者から遠ざかる方向である前後方向の位置を調整する前後位置調整機構を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記顎支持部は、前記ヘッド支持部から下方向に延びる顎支持棒と、前記顎支持棒から前記被検者の方向に延びて前記被検者の顎に突き当てる顎当て部と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記顎支持部は、前記ヘッド支持部から下方向に延びる顎支持棒と、前記顎支持棒から前記被検者の方向に延びて前記被検者の顎を載せる顎受け部と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記測定光学系、
前記被検眼の前記測定光学系の光軸上の前眼部像を取得する画像取得部、及び
前記被検眼に視標を提示する視標提示部を有する前記測定ヘッドと、
前記測定ヘッドを鉛直方向及び水平方向に移動させ、鉛直方向に平行な軸及び水平方向に平行な軸を回旋軸として回転させる駆動機構と、を備え、
前記測定ヘッドは、前記駆動機構を介して前記ヘッド支持部に吊り下げられた構成である
ことを特徴する請求項1~6の何れか一項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記被検眼の前方に選択的に配置される複数の検査用レンズを含む前記測定光学系を有する前記測定ヘッドと、
前記被検眼に対して視標を提示する視標提示部と、を備える
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の情報を取得するための測定光学系及び被検眼に視標を提示する視標提示部を有する測定ヘッドを備え、この測定ヘッドが、支持部によって被検眼の前方に吊り下げられた眼科装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。また、検査用レンズを有するレフラクターヘッドが支持部によって吊り下げられて被検眼の前方に配置され、この被検眼に対して、視標を提示して被検眼の情報を取得する眼科装置も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1~3に記載の眼科装置は、被検者が額を当てる額当て部を有し、被検眼の情報の取得中に、被検者の顔が不測に動かないように支持している。さらに、特許文献2に記載の眼科装置は、被検者の頬を支持する2つの頬当て体を有する頬当て部を備え、被検者の顔を、この頬当て部と額当て部とで支持することで、顔の支持安定性をより高めている。このように被検者の顔が支持されることで、被検眼の情報の取得が適切に、かつ、迅速に行われるため、被検者の顔をより安定して支持することができる技術の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-216817号公報
【特許文献2】特開2022-064300号公報
【特許文献3】特開2023-048902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、被検者の顔をより安定して支持することができ、被検眼の情報の取得を、より適切に、かつ、より効率的に取得することができる眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の眼科装置は、被検眼の情報を取得するための測定光学系を有する測定ヘッドと、前記測定ヘッドを吊り下げて支持するヘッド支持部と、前記ヘッド支持部から吊り下げられて被検者の顎を支持する顎支持部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
このように構成された眼科装置は、被検者の顔をより安定して支持することができ、被検眼の情報の取得を、より適切に、かつ、より効率的に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る眼科装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】実施例1に係る眼科装置の主要部分の概略構成を示す図である。
図3】実施例1に係る眼科装置の額当て部及び顎支持部の側面図である。
図4】実施例1に係る眼科装置の額当て部及び顎支持部の斜視図である。
図5】実施例2に係る眼科装置の額当て部及び顎支持部の側面図である。
図6】実施例2に係る眼科装置の額当て部及び顎支持部の斜視図である。
図7】実施例3に係る眼科装置の額当て部及び顎支持部の側面図である。
図8】実施例3に係る眼科装置の額当て部及び顎支持部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例1)
本開示の実施例1に係る眼科装置100は、図1図4を参照して以下のように説明される。実施例1に係る眼科装置100は、被検者Pが左右の被検眼E(図3等参照)を開放した状態で、被検眼Eの情報(以下、「眼情報」という。)の取得を両眼同時に実行可能な両眼開放タイプの眼科装置である。なお、実施例1の眼科装置100は、片眼を遮蔽したり、固視標を消灯したりすることで、片眼ずつ眼情報を取得することも可能となっている。
【0010】
実施例1の眼科装置100は、任意の他覚検査及び自覚検査を行うことが可能な装置である。自覚検査では、眼科装置100は、被検者Pに所定の提示位置で視標等を提示し、この視標等に対する被検者Pの応答に基づいて眼情報として自覚検査結果を取得する。この自覚検査は、遠用検査、中用検査、近用検査、コントラスト検査、夜間検査、グレア検査、ピンホール検査、立体視検査等の自覚屈折測定や、視野検査等がある。他覚検査では、眼科装置100は、被検眼Eに光を照射し、その戻り光の検出結果に基づいて眼情報を測定する。この他覚検査は、眼情報として被検眼Eの特性を取得するための測定と、被検眼Eの画像を取得するための撮影とが含まれる。さらに、他覚検査は、他覚屈折測定(レフ測定)、角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、「OCT」という)を用いた断層像撮影(OCT撮影)、OCTを用いた計測等がある。
【0011】
[眼科装置の全体構成]
実施例1の眼科装置100は、本体部10と、検者用コントローラ27と、を主に備えるが、図示しない被検者用コントローラ等を備えていてもよい。本体部10は、図1に示されるように、基台11と、検眼用テーブル12と、ヘッド支持部13と、駆動機構15と、一対の測定ヘッド16(16L,16R)と、額当て部17と、顎支持部18と、制御部26とを備える。
【0012】
一対の測定ヘッド16は、ヘッド支持部13によって吊り下げられて支持されている。額当て部17と、顎支持部18は、一対の測定ヘッド16の間に、前後に並んでヘッド支持部13によって吊り下げられて支持されている。
【0013】
実施例1の眼科装置100は、検眼用テーブル12と正対する被検者が、一対の測定ヘッド16の間に吊り下げられた額当て部17に額を支持され、さらに一対の測定ヘッド16の間に吊り下げられた顎支持部18によって顎を支持された状態で、被検者の被検眼Eの情報を取得する。なお、本明細書では、図1に記すようにX軸、Y軸及びZ軸が設定され、被検者Pから見て、左右方向がX方向とされ、上下方向(鉛直方向)がY方向とされ、X方向及びY方向と直交し、被検者Pに近づく方向及び離れる方向(測定ヘッド16の奥行き方向であって前後方向)がZ方向とされる。Z方向において、被検者Pに向かう方向が前方向とされ、被検者Pから離れる方向が後方向とされる。
【0014】
基台11は、床面1に設置される。検眼用テーブル12は、検者用コントローラ27や図示しない被検者用コントローラを置いたり検眼に用いるものを置いたり被検者Pが手を置いて支えにしたりするための机であり、基台11により支持されている。検眼用テーブル12は、Y方向での位置(高さ位置)を調節可能に基台11に支持されていてもよい。
【0015】
ヘッド支持部13は、図1図2に示されるように、支柱131と、アーム部132と、取付ベース部133とを備える。支柱131は、検眼用テーブル12の後端部でY方向に延びるように基台11により支持されている。
【0016】
アーム部132は、支柱131の先端に設けられている。アーム部132は、検眼用テーブル12上で駆動機構15を介して両測定ヘッド16を吊り下げるもので、支柱131から手前側(Z方向へ)延びており、その延びた先に、取付ベース部133が設けられている。アーム部132は、支柱131に対してY方向に移動可能とされている。アーム部132は、支柱131に対してX方向及びZ方向に移動可能とされていてもよい。アーム部132の先端の取付ベース部133は、一対の駆動機構15が吊り下げられ、各駆動機構15は、それぞれ測定ヘッド16が吊り下げられている。すなわち、一対の測定ヘッド16は、一対の駆動機構15を介してヘッド支持部13に支持されている。
【0017】
測定ヘッド16は、被検者の左右の被検眼Eに個別に対応すべく一対設けられ、以下では個別に述べる際には左眼用測定ヘッド16L及び右眼用測定ヘッド16Rとする。左眼用測定ヘッド16Lは、被検者Pの左側の被検眼E(EL)の情報を取得し、右眼用測定ヘッド16Rは、被検者Pの右側の被検眼E(ER)の情報を取得する。左眼用測定ヘッド16Lと右眼用測定ヘッド16Rとは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。
【0018】
図1図2に示されるように、各測定ヘッド16は、偏向部材であるミラー19(個別に述べる際には左眼用ミラー19L及び右眼用ミラー19Rとする。)が設けられ、測定光学系21(個別に述べる際には左眼用測定光学系21L及び右眼用測定光学系21Rとする)が収容されている。各測定ヘッド16は、ミラー19を通じて測定光学系21により対応する被検眼Eの情報を取得する。
【0019】
各測定光学系21は、様々な光学素子を用いて構成された光学系(例えば、Zアライメント系、XYアライメント系、ケラト測定系、視標投影系(視標提示部)、画像取得部を有する前眼部観察系、レフ測定投射系、及びレフ測定受光系等)を有している。測定光学系21は、例えば、特開2019-216817号公報に記載の測定光学系を用いることができるが、この構成に限定されない。
【0020】
各測定光学系21は、それぞれ提示する視標を切り替えながら視力検査を行う視力検査装置、矯正レンズを切換え配置しつつ被検眼Eの適切な矯正屈折力を取得するフォロプタ、屈折力を測定するレフラクトメータや波面センサ、眼底の画像を撮影する眼底カメラ、網膜の断層画像を撮影する断層撮影装置、角膜内皮画像を撮影するスペキュラマイクロスコープ、角膜形状を測定するケラトメータ、眼圧を測定するトノメータ等が、単独又は複数組み合わされて構成されている。
【0021】
駆動機構15は、左眼用測定ヘッド16Lに対応する左眼用駆動機構15Lと、右眼用測定ヘッド16Rに対応する右眼用駆動機構15Rと、を有している。左眼用駆動機構15Lは、図2に示されるように、左眼用鉛直駆動部22L、左眼用水平駆動部23L、左眼用X方向回旋駆動部(左眼用水平方向回旋駆動部)24L及び左眼用Y方向回旋駆動部(左眼用鉛直方向回旋駆動部)25Lを有している。右眼用駆動機構15Rは、図2に示されるように、右眼用鉛直駆動部22R、右眼用水平駆動部23R、右眼用X方向回旋駆動部(右眼用水平方向回旋駆動部)24R及び右眼用Y方向回旋駆動部(右眼用鉛直方向回旋駆動部)25Rを有している。
【0022】
左眼用測定ヘッド16Lに対応する各駆動部22L~25Lの構成と、右眼用測定ヘッド16Rに対応する各駆動部22R~25Rの構成とは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。以下では、個別に述べる時を除くときは単に、鉛直駆動部22、水平駆動部23、X方向回旋駆動部24及びY方向回旋駆動部25ということがある。左右に対称に設けられる他の構成部品についても同様である。
【0023】
駆動機構15は、上方側から鉛直駆動部22、水平駆動部23、X方向回旋駆動部24、Y方向回旋駆動部25の順に配置された構成である。
【0024】
鉛直駆動部22は、アーム部132の先端の取付ベース部133に固定され、制御部26からの制御信号に基づいて、アーム部132に対して水平駆動部23、X方向回旋駆動部24及びY方向回旋駆動部25をY方向(鉛直方向)に移動させる。水平駆動部23は、鉛直駆動部22に固定され、制御部26からの制御信号に基づいて、鉛直駆動部22に対してX方向回旋駆動部24及びY方向回旋駆動部25を、X方向及びZ方向(水平方向)に移動させる。
【0025】
鉛直駆動部22及び水平駆動部23は、例えばパルスモータのような駆動力を発生するアクチュエータと、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオン等のような駆動力を伝達する伝達機構とが設けられて構成される。水平駆動部23は、例えばX方向とZ方向とで個別にアクチュエータ及び伝達機構の組み合わせを設けることで、容易に構成できるとともに水平方向の移動の制御を容易なものにできる。
【0026】
X方向回旋駆動部24は、水平駆動部23に連結されている。X方向回旋駆動部24は、制御部26からの制御信号に基づいて、水平駆動部23に対して対応する測定ヘッド16及びY方向回旋駆動部25を、対応する被検眼Eの眼球回旋点を通り鉛直方向(Y方向)に延びる左右一対の鉛直眼球回旋軸を中心(回旋軸)として、X方向(水平方向)に回旋させる。
【0027】
Y方向回旋駆動部25は、X方向回旋駆動部24に連結されている。このY方向回旋駆動部25に測定ヘッド16が吊り下げられている。Y方向回旋駆動部25は、制御部26からの制御信号に基づいて、X方向回旋駆動部24に対して対応する測定ヘッド16を、対応する被検眼Eの眼球回旋点を通り水平方向(X方向)に延びる左右一対の水平眼球回旋軸を中心(回旋軸)として、Y方向(鉛直方向、上下方向)に回旋させる。
【0028】
X方向回旋駆動部24及びY方向回旋駆動部25は、例えば、アクチュエータからの駆動力を受けた伝達機構が円弧状の案内溝に沿って移動する構成とすることができる。各案内溝の中心位置を、一対の水平眼球回旋軸及び一対の鉛直眼球回旋軸と各々一致させることで、X方向回旋駆動部24及びY方向回旋駆動部25は、被検眼Eの一対の水平眼球回旋軸及び一対の鉛直眼球回旋軸を中心に測定ヘッド16を回旋させることができる。
【0029】
なお、X方向回旋駆動部24は、自らに設けた回旋軸線回りに回旋可能にY方向回旋駆動部25及び測定ヘッド16を支持するとともに、水平駆動部23と協働して、測定ヘッド16を支持する位置を変更しつつ回旋させる構成とすることもできる。また、Y方向回旋駆動部25は、自らに設けた回旋軸線回りに回旋可能に測定ヘッド16を支持するとともに鉛直駆動部22と協働して、測定ヘッド16を支持する位置を変更しつつ回旋させる構成とすることもできる。
【0030】
以上の構成により、駆動機構15は、各測定ヘッド16を個別に又は連動させて、X方向、Y方向及びZ方向に移動させられるとともに、被検眼Eの鉛直眼球回旋軸、及び水平眼球回旋軸を中心にX方向及びY方向に回旋させられる。実施例1の眼科装置100では、制御部26は、駆動機構15の各駆動部22~25を駆動制御することで、各測定ヘッド16を移動及び回旋させる。さらに、検者である検者が各駆動部22~25を手動で駆動させて、各測定ヘッド16を移動及び回旋させることもできる。
【0031】
また、左眼用X方向回旋駆動部24L及び右眼用X方向回旋駆動部24Rは、左眼用測定ヘッド16Lと右眼用測定ヘッド16RとをX方向(左右方向)に回旋させることで、被検眼Eを開散(開散運動)させたり、輻輳(輻輳運動)させたりできる。また、左眼用Y方向回旋駆動部25L及び右眼用Y方向回旋駆動部25Rは、左眼用測定ヘッド16Lと右眼用測定ヘッド16RとをY方向(上下方向)に回旋させることで、被検眼Eの視線を下方向に向けさせたり、元の位置に戻させたりできる。これにより、眼科装置100では、被検者は、開散運動及び輻輳運動のテストを行うことや、両眼視の状態で遠点距離での遠用検査から近点距離での近用検査まで様々な検査距離での検査を行って両被検眼Eの眼情報を測定できる。
【0032】
額当て部17は、被検者Pの額Hを当てる部材であり、被検者Pの顔の向きや位置が動かないように顔を支持するための部材である。額当て部17は、取付ベース部133から一対の測定ヘッド16の間に吊り下げられている。額当て部17は、図1図2に示されるように、額支持棒171と、額当て部本体172とを備える。額支持棒171は、取付ベース部133から下方前方に延びるように取り付けられた棒状部材である。この額支持棒171の下端であって一対の測定ヘッド16の上部側に、額当て部本体172が取り付けられている。額当て部本体172は、被検者Pの額Hにフィットするように、曲面を有する横長の楕円形に形成されている。額当て部17の上下の位置調整は、アーム部132を支柱131に対してY方向に移動することで行われる。
【0033】
顎支持部18は、被検者Pの顎Cを当てる部材であり、被検者Pの顔の向きや位置が動かないように顔を支持するための部材である。実施例1の眼科装置100は、額当て部17に加え、顎支持部18によって被検者Pの顔を支持することで、被検者Pの顔の安定性をより高めることができる。
【0034】
顎支持部18は、顎支持棒181と、顎当て部182と、上下位置調整機構183とを主に備える。顎支持部18の各部の詳細は、図2図4を参照して、以下のように説明される。顎支持棒181は、額支持棒171よりも後方に配置され、取付ベース部133から下方向に垂直に延びるように取り付けられた棒状部材である。この顎支持棒181は、下端側の外周に、ねじ部181aが設けられ、ねじ部181aの上方に、上下方向に延びる回り止め溝181bが設けられている。このねじ部181a及び回り止め溝181bも、上下位置調整機構183の一部として機能する。この顎支持棒181の下端であって一対の測定ヘッド16よりも下側に、上下位置調整機構183が取り付けられ、この上下位置調整機構183の他端であって被検者P側に、顎当て部182が取り付けられている。
【0035】
顎当て部182は、被検者Pの顎Cの前面に突き当てる部材である。顎当て部182は、顎Cの前面にフィットするように、後方に向かって凹んだ曲面を有する横長の板状部材で形成されている。
【0036】
上下位置調整機構183は、顎当て部182の上下方向の位置、つまり高さを調整する部材である。顎支持部18全体の位置調整は、アーム部132を支柱131に対してY方向に移動することで行うことができる。しかし、被検者Pの額Hと顎Cとの距離は、個人差がある。そこで、実施例1の顎支持部18は、上下位置調整機構183により、取付ベース部133に対して顎当て部182の上下位置(高さ)を調整可能としている。
【0037】
上下位置調整機構183は、立方体形の本体部183aと、取付金具183bと、高さ調整ねじ183cとを主に備える。取付金具183bは、両側が直角に折り曲げられたコの字金具(C型金具)からなり、中央に設けられた挿通孔183dに、顎支持棒181の下側の部分が挿通されている。挿通孔183dには、顎支持棒181の回り止め溝181bに係合する突起部183eが設けられている。回り止め溝181bと突起部183eとの係合により、取付金具183bは、上下動可能であるが顎支持棒181回りに回転不能に顎支持棒181に取り付けられる。取付金具183bのコの字に突出する両腕の下端に、ねじ部材186により本体部183aの一端が連結固定されている。高さ調整ねじ183cは、SLねじ回転ローレット等からなる。高さ調整ねじ183cは、取付金具183bの内面に、取付金具183bに対して回転可能であるが分離しないように取り付けられている。より具体的には、高さ調整ねじ183cは、取付金具183bが浮き上がらないように、上面に図示しない嵌め込みスリーブが切ってある。なお、高さ調整ねじ183cは、嵌め込みスリーブに代えてEリング等が設けられていてもよい。高さ調整ねじ183cは、顎支持棒181のねじ部181aの外周に、上下に回転移動可能に螺着される。本体部183aの他端(被検者P側)に、軸支部185を介して回転可能に顎当て部182が連結されている。
【0038】
上記構成の上下位置調整機構183を備える顎支持部18では、検者は、高さ調整ねじ183cを回転させて、ねじ部181aに沿って上下動させる。この操作により、この高さ調整ねじ183cとともに取付金具183b、本体部183a及び顎当て部182が上下動され、顎当て部182の上下方向の位置調整がされる。
【0039】
なお、上下位置調整機構183は、上記構成に限定されない。例えば、変形例として、顎支持棒181にねじ部181aや回り止め溝181bを設けず、上下位置調整機構183にねじ部181aに螺着する高さ調整ねじ183c等を設けずに構成する。実施例1の構成に代えて、ねじ部材186を、例えば、つまみねじ等からなるねじ部材で構成し、本体部183aは、このねじ部材によって、顎支持棒181の下端に回転可能に連結される構成としてもよい。この構成では、検者は、ねじ部材を弛めた状態で、被検者Pの顎Cの位置に応じて本体部183aを、ねじ部材を回転軸(図4に一点鎖線で示される回転軸184)として、適宜の回転角度で回転させて、顎当て部182の高さを調整できる。
【0040】
この回転軸184は、X方向(左右方向)に延びる軸である。本体部183aは、このX方向に延びる回転軸184を中心に、顎支持棒181に対して、X軸周りに回転する。この回転により、本体部183a(上下位置調整機構183)は、他端に連結された顎当て部182とともに上下に回転移動し、顎当て部182の上下方向の位置が変更される。顎当て部182が適切な位置(高さ)になったら、検者は、ねじ部材を締めて、本体部183aの位置を固定することで、その回転が規制される。これにより、眼情報の取得中に顎当て部182が不測に上下に移動するのを抑制できる。
【0041】
さらに異なる変形例として、ねじ部材186に代えて、回転量及び回転方向によって、本体部183aの回転を制御するようなねじ部材を用いることもできる。より具体的には、ねじ部材が時計回りに回転されると、その回転量に応じて本体部183a及び顎当て部182が上方向に回転移動し、ねじ部材が反時計回りに回転されると、その回転量に応じて本体部183a及び顎当て部182が下方向に回転移動する構成とすることができる。
【0042】
また、顎当て部182は、軸支部185を回転軸として、上下位置調整機構183に対してX軸周り(上下方向)に回転(揺動)可能である。このことから、高さ調整ねじ183cでの高さ調整が完了した後でも、被検者Pが顔を動かす等して、軸支部185を介して顎当て部182を回転させることで、顎当て部182の上下の位置の微調整や顎Cへ当てる向きの微調整が行える。また、被検者Pが見え方を回答したときに、口の動きによって顎Cが上下に動いても、軸支部185の作用によって、顎Cの動きに追従して顎当て部182が上下に揺動し、顎Cへの接触が維持される。このため、顎当て部182は、顎Cの安定した支持を維持できる。
【0043】
また、上述のように顎支持部18及び額当て部17は、測定ヘッド16とは別個に、取付ベース部133に吊り下げられている。この構成により、測定ヘッド16が上下方向等に移動した場合でも、額当て部17及び顎支持部18の上下方向の位置に影響することはない。さらに顎支持部18は、測定ヘッド16とは別個に、上下位置調整機構183により顎Cの位置に応じて上下方向の位置調整が自在に可能となる。
【0044】
検者用コントローラ27は、検者による入力操作(例えば、被検者ID、検査項目、パラメータ、指示等の入力)を受け付け、制御部26に制御信号を出力する情報処理装置である。検者用コントローラ27は、例えば、制御部(CPU)、モニタ、入力部、マイク、スピーカ等を備えたタブレット端末やスマートフォン等から構成される。なお、検者用コントローラ27は、ノート型パーソナルコンピュータやデスクトップ型パーソナルコンピュータ等であってもよいし、眼科装置100に設けられた専用のコントローラであってもよい。検者用コントローラ27は、近距離無線又はインターネット等の通信手段を介して制御部26と通信する。
【0045】
眼科装置100が備えていてもよい被検者用コントローラは、被検眼Eの情報の取得の際に、被検者Pが応答するために用いられる機器である。被検者用コントローラは、例えばキーボード、マウス、ジョイスティック、タッチパッド、タッチパネル等を備える。被検者用コントローラは、制御部26と有線又は無線の通信路を介して接続され、被検者用コントローラに対して入力された応答操作に応じた制御信号を制御部26に出力する。
【0046】
制御部26は、本体部10の基台11に設けられ、眼科装置100の各部を統括的に制御する。制御部26は、測定光学系21と、駆動機構15と、検者用コントローラ27と、被検者用コントローラ等に接続され、これらを統括的に制御する。
【0047】
制御部26は、CPU等のプロセッサから構成される。制御部26は、制御部26に接続された記憶部又は内蔵されたROM等のメモリに記憶したプログラムを、例えばRAM上に展開することにより、検者用コントローラ27や被検者用コントローラに対する操作に応じて、眼科装置100の動作を統括的に制御する。
【0048】
制御部26は、検者用コントローラ27から入力された検査項目、パラメータ、指示等に応じて眼情報を取得する。検査項目は、上記で列挙したような他覚検査、自覚検査が挙げられる。パラメータは、例えば、視力値や矯正度数の初期値、提示する視標、検査距離等、検査に必要な情報である。
【0049】
上述のような構成の実施例1の眼科装置100を用いて、眼情報を取得する際の検者及び被検者Pの動作は、以下のように説明される。眼科装置100は、電源がオンとなって起動され、制御部26は検者用コントローラ27及び被検者用コントローラと通信可能となっているものとする。
【0050】
検査に際して、被検者Pは椅子等に座って眼科装置100と対峙する。次に、被検者Pは、額当て部17の額当て部本体172に額を当てる。次に、検者は、上下位置調整機構183の高さ調整ねじ183cを回転させ、顎支持棒181のねじ部181aに沿って上下動させることで上下位置調整機構183に連結する顎当て部182を上下動させる。この操作により、被検者Pの顎Cに顎当て部182が当たるように、顎当て部182が位置決めされる。
【0051】
以上の操作により、顎当て部182が被検者Pの顎Cに適切に当たり、顎Cが支持される。したがって、被検者Pは、額当て部17及び顎支持部18によって、適切に顔が固定される。被検者Pの顔の固定が完了すると、検者は、検者用コントローラ27を操作して、本体部10に眼情報の取得のための動作を実行させる。実施例1の眼科装置100は、まずアライメントを実行する。このとき、駆動機構15によって被検眼Eの位置に応じて測定ヘッド16が上下左右方向に移動し、回転するが、顎支持部18が共に上下動や回転をすることがなく、顎Cの安定した支持が持続される。
【0052】
そして、アライメントが終了すると、検者の指示により、又は自動で眼科装置100において、上述のような被検眼Eの他覚検査や自覚検査が実行される。これらの検査の実行中も、顎支持部18によって不測に顔が動くのが適切に抑制される。このため、被検者Pが、他覚検査を行っている場合は勿論、自覚検査を行っている場合に、見え方に対する応答を口頭で行ったとしても、不測に顔が動くことがなく、検査のやり直し等が抑制できる。したがって、各検査が、より適切に、かつ、より効率的に実行される。
【0053】
(実施例2)
本開示の実施例2に係る眼科装置100は、図5図6を参照して以下のように説明される。実施例2に係る眼科装置100は、顎支持部18に変えて図5図6に示される顎支持部18Aを備えること以外は、図1等に示される実施例1の眼科装置100と同様の基本構成を備える。このため、実施例1と同様の構成については、実施例1と同様の符号が付され、詳細な説明は省略され、以下では、主に実施例2の顎支持部18Aの構成等が説明される。
【0054】
実施例2の顎支持部18Aは、図5~6に示されるように、顎支持棒181と、顎受け部182Aと、上下位置調整機構183Aとを主に備える。顎支持棒181は、取付ベース部133から下方向に垂直に延びるように取り付けられている。この顎支持棒181の下端に上下位置調整機構183Aの一端が取り付けられ、この上下位置調整機構183Aの他端であって被検者P側に、顎受け部182Aが取り付けられている。
【0055】
実施例1の顎支持部18は、顎Cの前面に突き当てる顎当て部182を備えているが、実施例2の顎支持部18Aは、顎Cを載せる顎受け部182Aを備えている。この顎受け部182Aは、顎Cの下面(輪郭)にフィットするように、下方向に向かって凹んだ曲面を有する横長の板状部材で形成されている。
【0056】
上下位置調整機構183Aは、実施例1と同様に、顎支持棒181のねじ部181aの外周に、取付金具183bとともに高さ調整ねじ183cが螺着されている。取付金具183bの両腕の下端に、本体部183aの一端がねじ部材186を介して連結され、本体部183aの他端に、軸支部185を介して回転可能に顎受け部182Aが連結されている。
【0057】
高さ調整ねじ183cは、回転によって顎支持棒181に対して、上下動する。この移動により、本体部183a(上下位置調整機構183A)は、他端に連結された顎受け部182Aとともに上下に移動し、顎受け部182Aの上下方向の位置が変更され、顎受け部182Aが顎Cの位置に応じた位置(高さ)に配置される。
【0058】
実施例2でも、顎支持部18Aは、実施例1に変形例として挙げたような、回転軸184を中心に回転することによって顎受け部182Aの上下方向の位置を調整する機構を備えていてもよい。
【0059】
また、顎受け部182Aは、軸支部185を回転軸として、上下位置調整機構183Aに対して回転(揺動)可能である。よって、実施例2においても、高さ調整ねじ183cでの高さ調整が完了した後でも、被検者Pが顔を動かす等して、軸支部185を介して顎当て部182を回転させることで、顎受け部182Aの上下の位置の微調整や顎Cへ当てる向きの微調整を行える。なお、上下位置調整機構183Aは、顎受け部182Aの下方向の回転角度を適宜の角度(例えば、顎受け部182Aの表面が水平になる角度)に規制するストッパを設けることができる。このストッパにより、顎受け部182Aは、顎Cの荷重による過剰な回転が抑制される。
【0060】
また、顎受け部182Aは、圧縮バネ等の付勢部材により、上方向へ付勢された構成とすることもできる。この構成により、被検者Pが顎受け部182Aに顎Cを載せると、付勢部材の付勢力に抗して、顎受け部182Aが下方向へ移動する。このとき、付勢部材の付勢力が作用することで、顎受け部182Aは、顎Cに接触しつつ、下方向へ移動し、顎Cの位置に応じて位置決めされる。このため、顎受け部182Aは、顎Cを適切に支持できる。また、被検者Pが見え方を回答したときに、口が動くことによって顎Cが上下に動いても、軸支部185及び付勢部材の作用によって、顎Cの動きに追従して顎受け部182Aが上下に回転移動する。このことにより、顎受け部182Aは、顎Cの安定した支持を維持できる。
【0061】
また、顎受け部182Aは、付勢部材に変えて、又は付勢部材とともに、サスペンション、ダンパ等の緩衝部材が設けられていてもよい。このような緩衝部材によっても、口の動きによる顎Cの上下動が吸収され、顎受け部182Aは、顎Cの安定した支持を維持できる。なお、上述のような付勢部材及び緩衝部材は、実施例1の顎当て部182及び後述の実施例3の顎当て部182Bに設けることもでき、実施例2の顎受け部182Aと同様の作用効果が得られる。
【0062】
上記構成の実施例2の眼科装置100と対峙した被検者Pは、額当て部17の額当て部本体172に額を当てる。次に、検者は、上下位置調整機構183の高さ調整ねじ183cを回転させ、顎支持棒181のねじ部181aに沿って上下動させる。これにより、顎受け部182Aとともに上下位置調整機構183Aが上下動する。この操作により、被検者Pの顎Cが顎受け部182Aに載るように、顎受け部182Aが位置決めされる。これにより、顎受け部182Aによって、被検者Pの顎Cが支持される。したがって、実施例2の眼科装置100においても、被検者Pの顔が額当て部17及び顎支持部18Aによって安定して固定され、他覚検査や自覚検査がより適切に、かつ、より効率的に行われる。
【0063】
(実施例3)
本開示の実施例3に係る眼科装置100は、図7図8を参照して以下のように説明される。実施例3に係る眼科装置100は、顎支持部18に変えて図7図8に示される顎支持部18Bを備えること以外は、図1等に示される実施例1の眼科装置100と同様の基本構成を備える。このため、実施例1と同様の構成については、実施例1と同様の符号が付され、詳細な説明は省略され、以下では、主に実施例3の顎支持部18Bの構成等が説明される。
【0064】
実施例3の顎支持部18Bは、顎支持棒181と、顎当て部182Bと、上下位置調整機構183Bと、前後位置調整機構187とを主に備える。顎支持棒181は、取付ベース部133から下方向に垂直に延びるように取り付けられている。この顎支持棒181の外周に上下位置調整機構183が取り付けられ、この上下位置調整機構183の下端であって一対の測定ヘッド16よりも下側に、被検者Pの方向(前方向)に突出するように前後位置調整機構187が取り付けられている。この前後位置調整機構187の一端(前端)に、顎当て部182Bが取り付けられている。
【0065】
実施例3の顎当て部182Bは、顎Cの前面にフィットするように、後方向に向かって凹んだ曲面を有する横長の板状部材で形成されている。
【0066】
上下位置調整機構183Bは、顎支持棒181の外周に上下動可能に配置された筒状部188を有する。この筒状部188は、左右の両側面に、Y方向に延在する溝部188aが設けられている。各溝部188aには、それぞれ上下一対のねじ部材186が挿通されている。各ねじ部材186は、顎支持棒181の外周に設けられたねじ穴(図示せず)に螺着されている。ねじ部材186を締めることで、筒状部188は、顎支持棒181に対して上下動不能に固定される。ねじ部材186を緩めることで、筒状部188は、顎支持棒181に対して上下動可能となり、この結果、顎支持部18B全体の上下方向の長さが伸縮する。このため、筒状部188の移動により、筒状部188に連結された前後位置調整機構187及び顎当て部182B(図7において一点鎖線で囲われた部分)も上下に移動されるため、顎当て部182Bの高さが任意に調整される。
【0067】
前後位置調整機構187は、Z方向に延在する直線的な部材で形成され、内蔵するバネ部材等の付勢部材(図示せず)によって前方に付勢されるとともに、顎支持棒181に対してZ方向に伸縮自在に構成されている。この前後位置調整機構187の前端に顎当て部182Bが連結されている。この構成により、顎当て部182Bは、顎支持棒181に対してZ方向に自在に位置(前後方向の位置)が調整される。
【0068】
上記構成の実施例3の眼科装置100と対峙した被検者Pは、額当て部17の額当て部本体172に額を当てる。次に、検者は、ねじ部材186を緩める方向に回転させ、筒状部188を上下動させて、顎当て部182Bの高さを調整する。次に、被検者Pが顎当て部182Bを後方へ押すようにして、顎当て部182Bに顎を当てる。これにより、付勢手段が縮むことで、顎当て部182Bが後方へ移動し、被検者Pが楽な位置で顎当て部182Bに顎を当てることができる。したがって、実施例2の眼科装置100においても、被検者Pの顔が額当て部17及び顎支持部18Bによって安定して固定され、他覚検査や自覚検査がより適切に、かつ、より効率的に行われる。
【0069】
以上説明したように、実施例1に係る眼科装置100は、被検眼Eの情報を取得するための測定光学系21を有する測定ヘッド16と、測定ヘッド16を吊り下げて支持するヘッド支持部13と、ヘッド支持部13から吊り下げられて被検者Pの顎Cを支持する顎支持部18,18A,18Bと、を備える。
【0070】
この構成により、被検者Pの顔が、顎支持部18,18A,18Bによって安定して固定され、不測に顔が移動するのが抑制される。したがって、上記各実施例の眼科装置100は、被検者Pの顔をより安定して支持することができ、被検眼Eの情報の取得を、より適切に、かつ、より効率的に取得することができる。また、測定ヘッド16及び顎支持部18が吊り下げられた構造であることから、被検者Pの身体の前方(より具体的には、検眼用テーブル12の上)には本体部10が配置されず、空間が形成される。このため、被検者Pは本体部10に邪魔されることなく楽な姿勢で検査を受けることができ、さらには、検眼用テーブル12に手を置いて身体を支えながら、より安定的に、かつ、より効率的に検査を受けることができる。
【0071】
また、上記各実施例の眼科装置100において、測定ヘッド16は、左右の被検眼Eに対応して左右に一対設けられ、各測定ヘッド16がヘッド支持部13から個別に吊り下げられており、一対の測定ヘッド16の間に、顎支持部18,18A,18Bが吊り下げられている。この構成により、眼科装置100は、一対の測定ヘッド16を用いて、両眼同時に、又は片眼ずつ被検眼Eの情報を取得できるとともに、測定ヘッド16が上下方向等に移動した場合にも顎支持部18,18A,18Bの上下方向の位置に影響されず、顎Cの安定した支持が維持される。
【0072】
上記各実施例の顎支持部18,18A,18Bは、上下方向の位置を調整可能な上下位置調整機構183,183A,183Bを備える。この構成により、眼科装置100は、被検者Pの顎Cの上下方向の位置に応じて、顎支持部18,18A,18Bの上下方向の位置(高さ)を適切に調整できる。
【0073】
また、実施例1及び実施例2の上下位置調整機構183,183Aは、顎支持棒181の下端外周に設けたねじ部181aと、ねじ部181aの外周に上下動可能に螺着される高さ調整ねじ183cとを備える構成である。実施例1及び実施例2の上下位置調整機構183,183Aは、左右方向(X方向)に平行な軸(回転軸184、軸支部185)を回転軸として、上下方向に回転することで顎支持部18,18Aの上下方向の位置を調整する構成であってもよい。また、実施例1及び実施例2の上下位置調整機構183,183Aは、所定方向への回転によって顎支持部18,18Aの上下方向の位置を調整するねじ部材を備えていてもよい。したがって、実施例1、実施例2の顎支持部18,18Aは、簡易な構成の上下位置調整機構183,183Aによって、適切に上下方向の位置を調整できる。
【0074】
また、実施例3の上下位置調整機構183Bは、上下方向(X方向)に移動(伸縮)することで顎支持部18Bの上下方向の位置を調整する構成である。したがって、実施例3の顎支持部18Bは、簡易な構成の上下位置調整機構183Bによって、適切に上下方向の位置を調整できる。
【0075】
上記実施例3の顎支持部18,18A,18Bは、被検者Pに向かう方向及び前記被検者から遠ざかる方向である前後方向の位置を調整する前後位置調整機構187を備える。この構成により、眼科装置100は、被検者Pの顎Cの前後方向の位置に応じて、顎支持部18,18A,18Bの前後方向の位置を適切に調整できる。
【0076】
上記実施例1及び実施例3の顎支持部18,18Bは、ヘッド支持部13から下方向に延びる顎支持棒181と、顎支持棒181から被検者Pの方向に延びて被検者Pの顎Cに突き当てる顎当て部182,182Bと、を備える。この構成により、顎支持部18,18Bは、顎Cの前面を支持することができる。
【0077】
上記実施例2の顎支持部18Aは、ヘッド支持部13から下方向に延びる顎支持棒181と、顎支持棒181から被検者Pの方向に延びて被検者Pの顎Cを載せる顎受け部182Aと、を備える。この構成により、顎支持部18Aは、顎Cを下側で支持できるとともに、被検者Pは顎受け部182Aに顎Cを載せることで顎Cの重みを軽減でき、より楽に検査を受けることができる。
【0078】
上記各実施例の眼科装置100は、測定光学系21、被検眼Eの測定光学系21の光軸上の前眼部像を取得する画像取得部、及び被検眼Eに視標を提示する視標提示部を有する測定ヘッド16と、測定ヘッド16を鉛直方向及び水平方向に移動させ、鉛直方向に平行な軸及び水平方向に平行な軸を回旋軸として回転させる駆動機構15と、を備える。測定ヘッド16は、駆動機構15を介してヘッド支持部13に吊り下げられた構成である。この構成により、駆動機構15によって、測定ヘッド16が自在に移動され、被検眼Eの情報の取得をより詳細に、かつ、より適切に行える。また、このような眼科装置100に吊り下げられた顎支持部18,18A,18Bは、測定ヘッド16の移動によって影響されることなく、顎Cの安定した支持を維持できる。
【0079】
以上、本開示の眼科装置を実施例及び変形例に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例及び変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0080】
上記実施例1、2の眼科装置100の顎支持部18,18Aは、軸支部185を回転軸として顎当て部182又は顎受け部182Aが回転可能に構成されているが、これに限定されず、軸支部185及び回転軸184の2つの回転軸により各部が回転可能に構成されていてもよいし、3つ以上の回転軸によって各部が回転可能に構成されていてもよい。
【0081】
上記各実施例の眼科装置100は、顎支持部18の上下方向又は前後方向の位置調整を、高さ調整ねじ183cの回転、筒状部188の上下動又は付勢部材の伸縮によって手動又は半自動で行っているが、この構成に限定されない。上下位置調整機構183及び前後位置調整機構187は、電動アクチュエータ等の電動式の機構を備え、自動で顎支持部18の上下方向又は前後方向の位置調整を行う構成とすることもできる。
【0082】
また、上下位置調整機構183及び前後位置調整機構187は、蛇腹機構、パンタグラフ構造、フレキシブルアーム等を備え、これらによって顎支持部18の上下方向又は前後方向の位置調整を行う構成とすることもできる。
【0083】
また、上記各実施例の顎支持部18,18A,18Cは、各々取付ベース部133に対して着脱自在な構成とし、ユーザの要請等に応じて、何れかを選択して取付ベース部133に取り付けたり、付け替えたりすることもできる。この構成により、ユーザの好みや使用目的に応じた眼科装置100が提供される。
【0084】
また、上記各実施例の眼科装置100は、測定光学系21を有する測定ヘッド16と、測定ヘッド16を鉛直方向及び水平方向に移動させ、鉛直方向に平行な軸及び水平方向に平行な軸を回旋軸として回転させる駆動機構15と、を備え、測定ヘッド16は、駆動機構15を介してヘッド支持部13に吊り下げられた構成であり、このような眼科装置100に、顎支持部18,18A,18Bが設けられている。
【0085】
これに対して、変形例として、眼科装置100は、被検眼の前方に選択的に配置される複数の検査用レンズを含む測定光学系を有する測定ヘッドと、被検眼に対して視標を提示する視標提示部と、を備える構成とすることもできる。より具体的には、眼科装置は、特開2023-048902号公報に記載の眼科装置に示されるようなフォロプターヘッドと視標提示部とを備えた眼科装置とすることができる。このような眼科装置に、実施例1~実施例3のような顎支持部18,18A,18Bを設けることもできる。
【0086】
また、上記各実施例及び変形例の眼科装置100は、一対の測定ヘッド16を備えているが、これに限定されず、測定ヘッド16を1つのみ備え、片眼ずつ眼情報を取得する構成とすることもできる。
【0087】
なお、以上の実施例1~実施例3及び変形例の説明に関し、さらに以下を開示する。
(1)被検眼の情報を取得するための測定光学系を有する測定ヘッドと、
前記測定ヘッドを吊り下げて支持するヘッド支持部と、
前記ヘッド支持部から吊り下げられて被検者の顎を支持する顎支持部と、を備える
ことを特徴とする眼科装置。
(2)前記測定ヘッドは、左右の前記被検眼に対応して左右に一対設けられ、各測定ヘッドが前記ヘッド支持部から個別に吊り下げられており、
一対の前記測定ヘッドの間に、前記顎支持部が吊り下げられている
ことを特徴とする前記(1)に記載の眼科装置。
(3)前記顎支持部は、上下方向の位置を調整可能な上下位置調整機構を備える
ことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の眼科装置。
(4)前記顎支持部は、前記被検者に向かう方向及び前記被検者から遠ざかる方向である前後方向の位置を調整する前後位置調整機構を備える
ことを特徴とする前記(1)~(3)の何れかに記載の眼科装置。
(5)前記顎支持部は、前記ヘッド支持部から下方向に延びる顎支持棒と、前記支持棒から前記被検者の方向に延びて前記被検者の顎に突き当てる顎当て部と、を備える
ことを特徴とする前記(1)~(4)の何れかに記載の眼科装置。
(6)前記顎支持部は、前記ヘッド支持部から下方向に延びる顎支持棒と、前記支持棒から前記被検者の方向に延びて前記被検者の顎を載せる顎受け部と、を備える
ことを特徴とする前記(1)~(5)の何れかに記載の眼科装置。
(7)前記測定光学系、
前記被検眼の前記測定光学系の光軸上の前眼部像を取得する画像取得部、及び
前記被検眼に視標を提示する視標提示部を有する前記測定ヘッドと、
前記測定ヘッドを鉛直方向及び水平方向に移動させ、鉛直方向に平行な軸及び水平方向に平行な軸を回旋軸として回転させる駆動機構と、を備え、
前記測定ヘッドは、前記駆動機構を介して前記ヘッド支持部に吊り下げられた構成である
ことを特徴する前記(1)~(6)の何れかに記載の眼科装置。
(8)前記被検眼の前方に選択的に配置される複数の検査用レンズを含む前記測定光学系を有する前記測定ヘッドと、
前記被検眼に対して視標を提示する視標提示部と、を備える
ことを特徴とする前記(1)~(6)の何れかに記載の眼科装置。
【符号の説明】
【0088】
13 :ヘッド支持部 15 :駆動機構
16 :測定ヘッド 18 :顎支持部
18A :顎支持部 18B :顎支持部
18C :顎支持部 21 :測定光学系
100 :眼科装置 181 :顎支持棒
182 :顎当て部 182A :顎受け部
182B :顎当て部 183 :上下位置調整機構
183B :上下位置調整機構 187 :位置調整機構
C :顎 E :被検眼
P :被検者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8