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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025057899
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20250402BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
E02F9/00 D
E02F9/16 H
E02F9/16 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023167732
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 慧
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA00
2D015EA02
(57)【要約】
【課題】エンジン始動時において操作者に安心感を与えることができる建設機械を提供する。
【解決手段】油圧ショベル1は、油圧ポンプ106及びパイロット油ポンプ107と、複数の油圧アクチュエータと、運転室に設けられ、パイロット油ポンプ107からのパイロット圧油を用いて複数の油圧アクチュエータを操作するための複数の操作レバー14,25と、操作レバー14,25の操作を無効にするロック位置と操作レバー14,25の操作を有効にするロック解除位置との間で回動可能なシャットオフレバー20と、エンジン始動スイッチ32と、エンジン制御部102jと、を備える油圧ショベル1において、エンジン109の始動を準備するためのエンジン始動準備スイッチ30を有し、エンジン始動準備スイッチ30は、シャットオフレバー20に配置されている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源としてのエンジンと、
前記エンジンによって駆動される油圧ポンプ及びパイロット油ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動源とする複数の油圧アクチュエータと、
運転室に設けられ、前記パイロット油ポンプからのパイロット圧油を用いて前記複数の油圧アクチュエータを操作するための複数の操作レバーと、
前記運転室に設けられ、前記操作レバーの操作を無効にするロック位置と前記操作レバーの操作を有効にするロック解除位置との間で回動可能なシャットオフレバーと、
セルモータを駆動するためのセルモータ駆動スイッチと、
前記セルモータ駆動スイッチにより、前記セルモータを駆動して前記エンジンを始動させるエンジン制御部と、
を備える建設機械において、
前記セルモータ駆動スイッチによる前記エンジンの始動を準備するためのエンジン始動準備スイッチを有し、
前記エンジン始動準備スイッチは、前記シャットオフレバーに配置されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記エンジン始動準備スイッチは、
その操作方向が前記シャットオフレバーが前記ロック位置から前記ロック解除位置へ向かって回動するのを阻害する方向となる特定部位に配置されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1記載の建設機械において、
前記セルモータ駆動スイッチは、
前記運転室内の左・右方向における前記シャットオフレバーと反対側に設けられる
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械において、
前記エンジン始動準備スイッチは、
前記シャットオフレバーのうち、前記ロック位置へ向かって回動させる操作を行うための操作部又はその近傍に設けられる
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1記載の建設機械において、
前記シャットオフレバーは、
回動中心を含む長さ方向の中間部に位置する、回動中心部と、
前記ロック解除位置にある状態で前記回動中心部から前方に延びるレバー本体部と、
前記ロック解除位置にある状態で前記回動中心部から後方に延びる操作部と、
を有し、
前記操作部は、
他の部位よりも膨らんだ形状を備え、操作者の一方の片手により把持される被把持部を含み、
前記エンジン始動準備スイッチは、
前記被把持部のうち、前記片手の手のひらが当接する部位に設けられている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1記載の建設機械において、
前記シャットオフレバーは、
回動中心を含む長さ方向の中間部に位置する、回動中心部と、
前記ロック解除位置にある状態で前記回動中心部から前方に延びるレバー本体部と、
前記ロック解除位置にある状態で前記回動中心部から後方に延びる操作部と、
を有し、
前記操作部は、
他の部位よりも膨らんだ形状を備え、操作者の一方の片手により把持される被把持部を含み、
前記エンジン始動準備スイッチは、
前記被把持部の側面のうち、前記片手の指で操作可能な部位に設けられている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項1記載の建設機械において、
前記シャットオフレバーは、
回動中心を含む長さ方向の中間部に位置する、回動中心部と、
前記ロック解除位置にある状態で前記回動中心部から前方に延びるレバー本体部と、
前記ロック解除位置にある状態で前記回動中心部から後方に延びる操作部と、
を有し、
前記ロック位置から、前記ロック解除位置への回動とは反対方向へ回動可能に構成されており、
前記エンジン始動準備スイッチは、
前記シャットオフレバーから離れた部位であって、当該シャットオフレバーが前記ロック位置から前記反対方向へ回動するときの回転軌道内に位置する前記離れた部位に設けられている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項8】
請求項1記載の建設機械において、
前記エンジン制御部は、
前記エンジンを始動させた状態において前記セルモータ駆動スイッチが操作された場合、前記エンジンを停止させることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャットオフレバーを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エンジンスイッチの操作に基づいてセルモータによって始動する動力源としてのエンジンと、エンジンによって駆動される油圧ポンプ及びパイロット油ポンプと、油圧ポンプを駆動源とする複数の油圧アクチュエータと、複数の油圧アクチュエータの作動を指令する複数の操作体と、油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を制御する制御弁と、制御弁の操作部にパイロット油ポンプからの圧油を操作体を介して供給するパイロット油路と、予め設定されたオートアイドリングストップ条件が成立したときにエンジンを自動停止させるオートアイドリングストップ制御を行うことができるエンジン制御手段と、運転室に設けられ、操作体の操作を無効にするロック位置(引き上げ位置)と操作体の操作を有効にするロック解除位置(押し下げ位置)との間で回動可能なシャットオフレバー(ゲートロックレバー)と、エンジンスタートスイッチと、を備えた作業機械の制御装置を開示している。
【0003】
特許文献1において、操作者がエンジンスタートスイッチを操作するとセルモータが始動され、エンジンの駆動軸が回転してエンジンが始動する。一方、操作者がシャットオフレバーをロック位置へ操作すると、パイロット油ポンプからの圧油が遮断されて制御弁の操作部に導入されなくなる。その結果、操作体による制御弁の操作が無効化され、作業機械が動作不能にロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-237161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、近年の自動車においては、プッシュスタートスイッチが導入されている。運転者が、シフトレバーをパーキングの位置に操作し、フットブレーキを踏み、プッシュスタートスイッチを操作することで、エンジンが始動される。すなわち、エンジン始動のためには、フットブレーキを踏むという操作が必須となる。そのため、運転者は、ブレーキを操作する行為を自身で行っていて、その行為とともに、エンジン始動操作を行っていることを自覚できるので、エンジンが始動した場合でも、自動車が走り出すことはないという安心感を得ることができる。
【0006】
一方、上記従来技術のような油圧ショベル等の建設機械では、自動車のフットブレーキに相当するブレーキが存在しない場合がある。上記従来技術では、仮にエンジンスタートスイッチが操作されてエンジンが始動した場合であっても、シャットオフレバーがロック位置に操作されてさえいれば、作業機械は動作することはないため、シャットオフレバーがロック位置にあることを条件にエンジンスタートを許可する技術が採用されている。しかしながら、シャットオフレバーの操作は予め行われているものであり、操作者がエンジンの始動操作時に同時に行うものではないので、自動車の場合のような安心感を得ることができなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジン始動時において操作者に安心感を与えることができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、動力源としてのエンジンと、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプ及びパイロット油ポンプと、前記油圧ポンプを駆動源とする複数の油圧アクチュエータと、運転室に設けられ、前記パイロット油ポンプからのパイロット圧油を用いて前記複数の油圧アクチュエータを操作するための複数の操作レバーと、前記運転室に設けられ、前記操作レバーの操作を無効にするロック位置と前記操作レバーの操作を有効にするロック解除位置との間で回動可能なシャットオフレバーと、セルモータを駆動するためのセルモータ駆動スイッチと、前記セルモータ駆動スイッチにより、前記セルモータを駆動して前記エンジンを始動させるエンジン制御部と、を備える建設機械において、前記セルモータ駆動スイッチによる前記エンジンの始動を準備するためのエンジン始動準備スイッチを有し、前記エンジン始動準備スイッチは、前記シャットオフレバーに配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エンジン始動時において操作者に安心感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による油圧ショベルを示す左側面図である。
図2】油圧ショベルのアクチュエータ駆動に係わる油圧回路図である。
図3】制御信号の流れ等を表す制御ブロック図である。
図4】エンジン制御部内に組み込まれている制御ロジックの内容を表す説明図である。
図5】キャブ内に備えられた運転席を表す斜視図である。
図6】右コンソール装置を上方から見た斜視図である。
図7】左コンソール装置を左斜め上側から見た斜視図である。
図8】シャットオフレバーのロック解除位置を表す左側面図である。
図9】シャットオフレバーのロック位置表す左側面図である。
図10】エンジン始動準備スイッチとその周辺部位の詳細を模式的に表す左側面図、図10(a)中のA矢視図、及びエンジン始動準備スイッチの動作説明図である。
図11】別の例のエンジン始動準備スイッチとその周辺部位の詳細を模式的に表す左側面図、図11(a)中のB矢視図、及びエンジン始動準備スイッチの動作説明図である。
図12】比較例によるエンジン始動準備スイッチとその周辺部位の詳細を模式的に表す左側面図、及び図12(a)中のC矢視図である。
図13】別の比較例によるエンジン始動準備スイッチとその周辺部位の詳細を模式的に表す左側面図、及び図13(a)中のD矢視図である。
図14】さらに別の比較例によるエンジン始動準備スイッチとその周辺部位の詳細を模式的に表す左側面図、及び図14(a)中のE矢視図である。
図15】エンジン始動準備スイッチを凹窪部の内側上壁部に設けた変形例における、エンジン始動準備スイッチとその周辺部位の詳細を模式的に表す左側面図、図15(a)中のF1矢視図、エンジン始動準備スイッチの動作説明図、及び、図15(c)中のF2矢視図、である。
図16】エンジン始動準備スイッチを操作部の頂部においてロック解除方向側に臨むように設けた変形例における、エンジン始動準備スイッチとその周辺部位の詳細を模式的に表す左側面図、及び図16(a)中のG矢視図である。
図17】エンジン始動準備スイッチを操作部の上部表面のロック解除方向側に臨むように設けた変形例における、エンジン始動準備スイッチとその周辺部位の詳細を模式的に表す左側面図、及び図17(a)中のH矢視図である。
図18】エンジン始動準備スイッチを凹窪部の内側下壁部に設けた変形例における、エンジン始動準備スイッチとその周辺部位の詳細を模式的に表す左側面図、及び図18(a)中のI矢視図である。
図19】シャットオフレバーから離れた部位にエンジン始動準備スイッチを設ける変形例における、シャットオフレバーのロック位置を表す左側面図、及び、ロック解除位置への回動とは反対方向に回動してエンジン始動準備スイッチを操作する状態を表す左側面図である。
図20】シャットオフレバーから離れた部位にエンジン始動準備スイッチを設ける別の変形例における、シャットオフレバーのロック位置を表す左側面図、及び、ロック解除位置への回動とは反対方向に回動してエンジン始動準備スイッチを操作する状態を表す左側面図である。
図21】エンジン始動スイッチの機能をエンジン始動準備スイッチに移し1つのスイッチとして統合する変形例において、エンジン制御部内に組み込まれている制御ロジックの内容を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。なお、本実施形態では、油圧ショベルの走行方向を前後方向とし、油圧ショベルの走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0012】
<油圧ショベルの全体構成>
図1において、本実施形態の建設機械の一例である油圧ショベル1は、前後方向に自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備えている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。上部旋回体3の前側には、作業装置4が俯仰動可能に設けられている。油圧ショベル1は、下部走行体2によって作業現場を走行し、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行う。
【0013】
上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5を有している。旋回フレーム5の後側には、作業装置4との重量バランスをとるカウンタウエイト6が設けられている。旋回フレーム5には、動力源としてのエンジン109、油圧ポンプ106、パイロット油ポンプ107、熱交換器等の搭載機器(後述の図2等参照)が搭載されている。これらの搭載機器は、旋回フレーム5上に設けられた外装カバー7によって覆われている。上部旋回体3の前部左側には、運転室を画成するキャブ8が設けられている。
【0014】
キャブ8は、旋回フレーム5から上方に立上るボックス状に形成され、キャブ8の内部には運転室が画成されている。キャブ8の左側面には、オペレータ(操作者)がキャブ8内に乗り降りするための乗降口8Aと、乗降口8Aを開閉するドア8Bとが設けられている。また、キャブ8内の運転室には、後述の運転席10、左コンソール装置11、シャットオフ装置19、右コンソール装置24等が設けられている。
【0015】
作業装置4は、図1に示すように、垂直方向にそれぞれ回動するブーム101a、アーム101b及びバケット101cからなる多関節型の作業装置4と、上部旋回体3及び下部走行体2からなる車体とで構成され、作業装置4のブーム101aの基端は上部旋回体3の前部に支持されている。
【0016】
ブーム101aは、上部旋回体3の前部に俯仰動可能に支持されていて、ブームシリンダ103aにより駆動される。アーム101bは、ブーム101aに回動可能に支持されており、アームシリンダ103bにより駆動される。バケット101cは、アーム101bに回動可能に支持されており、バケットシリンダ103cにより駆動される。上部旋回体3は旋回モータ103dにより旋回駆動され、下部走行体2は左右の走行モータ103e,103fにより駆動される。油圧アクチュエータであるブームシリンダ103a、アームシリンダ103b、バケットシリンダ103c、旋回モータ103dの駆動は、上部旋回体3のキャブ8内に設置され油圧信号を出力する操作レバー14,25(後述の図2等参照)によって制御される。
【0017】
<油圧回路>
図2は、本実施の形態の油圧ショベルのアクチュエータ駆動に係わる油圧回路図である。
【0018】
図2に示す油圧回路において、上記油圧アクチュエータの油圧源(駆動源)としての油圧ポンプ106と、パイロット圧油の油圧源(駆動源)となるパイロット油ポンプ107と、作動油タンク108とを備えている。油圧ポンプ106とパイロット油ポンプ107とは同一の駆動軸で連結され、この駆動軸と直列に接続されたエンジン109によって駆動される。また、エンジン109と油圧ポンプ106との間の駆動軸には、プーリ123aが設けられ、プーリ123aはベルト123bを介しセルモータ123の回転軸と連結されている。
【0019】
油圧ポンプ106からの圧油をブームシリンダ103a~走行モータ103fへ供給する油路130には、リリーフ弁130Aと制御弁105a~105fとが設けられている。リリーフ弁130Aは、油路130内の圧油の圧力を制限する。制御弁105a~105fは、油路130の圧油の方向と流量とを制御する。制御弁105a~105fは、パイロット操作部へのパイロット二次側油路144a~144fからのパイロット圧油の供給により、スプール位置が切り換えられる。これにより、制御弁105a~105fは、油圧ポンプ106からの圧油を各油圧アクチュエータに供給して、ブーム101a、アーム101b、バケット101c等を駆動する。
【0020】
制御弁105a~105fのスプール位置は、操作レバー14,25等の操作によって切り換えられる。操作レバー14,25等の操作により、パイロット油ポンプ107からパイロット一次側油路140,141を介して供給されるパイロット一次圧油が、パイロット二次側油路144a~144fを通して制御弁105a~105fのパイロット操作部に供給される。
【0021】
操作レバー14,25に一端側を接続するパイロット一次側油路141には、シャットオフ用電磁切換弁120が設けられている。このシャットオフ用電磁切換弁120は、メインコントロールユニット102(以下適宜、MCU102という)からの指令により、パイロット一次側油路141の連通及び遮断を切り換える。
【0022】
パイロット一次側油路140は、他端側がパイロット油ポンプ107の吐出部に接続されている。パイロット一次側油路140の中間部には、油路内の圧油の圧力を制限するリリーフ弁140Aと、下流側への不純物の混入を防止するフィルタ114とが設けられている。パイロット一次側油路141にはチェック弁116が設けられている。
【0023】
<制御ブロック>
図3は、本実施形態に係わる制御信号の流れ等を表す制御ブロック図である。
図3において、MCU102は、入力部と演算部と出力部とを備えている。演算部は、ロックレバー制御部102aと、エンジン制御部102jとを備えている。
【0024】
ロックレバー制御部102aは、シャットオフレバー20の切替状況を入力し、その位置によって、シャットオフ用電磁切換弁120への開閉指令を出力する。シャットオフレバー20が、例えばロック解除位置(後述の図8参照)にある場合には、シャットオフ用電磁切換弁120を連通位置に切り換える。これにより、パイロット油ポンプ107からの圧油が操作レバー14,25に導かれ、操作レバー14,25による制御弁105a~105fの操作が有効となる。シャットオフレバー20が例えばロック位置(後述の図9参照)にある場合には、シャットオフ用電磁切換弁120は遮断位置に切り替えられたままとなり、パイロット油ポンプ107からの圧油は操作レバー14,25に導入されない。これにより、操作レバー14,25による制御弁105a~105fの操作が無効化される。
【0025】
エンジン制御部102jは、例えば、運転室に設けられたエンジンコントロールダイヤル125からの回転数指令と、エンジン始動スイッチ32(セルモータ駆動スイッチ)からのON/OFF信号と、エンジン始動準備スイッチ30からのON/OFF信号と、を入力する。それらに基づき、エンジン制御部102jは、エンジン制御指令をエンジンコントローラ113(以下適宜、ECUという)とセルモータ制御部124とに出力する。
【0026】
セルモータ制御部124は、MCU102からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動の際にセルモータ123を制御して始動回転させる。ECU113は、MCU102からのエンジン制御指令に基づいて、所定のエンジン回転数となるようエンジン109の燃料噴射量と回転数を制御する。
【0027】
<エンジン制御部によるエンジン始動制御内容>
本実施形態では、オペレータは、エンジン109の始動時には、エンジン始動準備スイッチ30と、エンジン始動スイッチ32との両方の操作が必要である。すなわち、エンジン始動スイッチ32は、セルモータ123を駆動するためのスイッチとして機能し、エンジン始動準備スイッチ30は、エンジン始動スイッチ32によりセルモータ123が駆動されるエンジン109の始動を準備するためのスイッチとして機能する。上記の処理を実現するためにエンジン制御部102j内に組み込まれている制御ロジックの内容を、図4に示す。
【0028】
図4に示すように、例えば、エンジン始動準備スイッチ30及びエンジン始動スイッチ32のいずれも操作されていない状態が、いわゆるKEY-OFF状態である。この状態からエンジン始動スイッチ32が比較的長い時間操作される(いわゆる長押し。以下同様)と、いわゆるKEY-ON状態へと遷移する。さらにこの状態で、エンジン始動スイッチ32とエンジン始動準備スイッチ30との両方が操作されることで、エンジン制御部102jからセルモータ制御部124へエンジン制御指令が出力されてエンジン109が始動される。
【0029】
また、上記KEY-OFF状態からエンジン始動スイッチ32が比較的短い時間操作される(いわゆる短押し。以下同様)と、電装品への通電が行われるいわゆるACC状態へと遷移する。このACC状態で、エンジン始動スイッチ32とエンジン始動準備スイッチ30との両方がさらに操作されることで、エンジン制御部102jからセルモータ制御部124へエンジン制御指令が出力されてエンジン109が始動される。なお、ACC状態で、エンジン始動スイッチ32のみが操作された場合は、上記KEY-ON状態へと遷移する。
【0030】
また、上記KEY-OFF状態から、エンジン始動スイッチ32とエンジン始動準備スイッチ30との両方が操作された場合も、エンジン制御部102jからセルモータ制御部124へエンジン制御指令が出力されてエンジン109が始動される。
【0031】
なお、上記KEY-ON状態又はエンジン始動状態においてエンジン始動スイッチ32が操作されると、エンジン制御部102jからECU113へのエンジン制御指令に基づき、エンジン109が駆動停止される。
【0032】
<運転席>
油圧ショベル1のキャブ8内に設けられている運転席10を図5に示す。図5に示すように、運転席10は、フロア部材9上に取付けられた運転席台座10Aと、運転席台座10A上に取付けられ、オペレータが座る座席10Bとにより構成されている。運転席台座10Aは、オペレータの体格に応じて座席10Bの上下方向および前後方向の位置調整を行う機能を有している。キャブ8の乗降口8A側、即ち、運転席10の左側に左コンソール装置11が設けられている。反対側の運転席10の右側には右コンソール装置24が設けられている。
【0033】
<右コンソール装置>
右コンソール装置24は、右操作レバー25、右コンソールカバー26等を含み、右コンソールフレームの後端側には右アームレスト27が取付けられている。右コンソール装置24は、図6に示すように、複数のスイッチが設けられたスイッチボックス67を有している。また、右コンソール装置24上の右操作レバー25の後側位置には、図示しないワイパの回動速度を切り替えるワイパ切替ダイヤル80と、当該油圧ショベル1の起動時のセキュリティ確保のための暗証番号の入力等に活用されるテンキースイッチ81と、前述のエンジン始動スイッチ32とが配置されている。
【0034】
スイッチボックス67は、最後方のエリアを形成する作業モードエリア67Aと、その直前のエリアを形成するアクセサリエリア67Bと、その直前のエリアを形成する詳細設定エリア67Cとに区画されている。
【0035】
作業モードエリア67Aには、エンジン109の回転数を操作するための前述のエンジンコントロールダイヤル125、操作レバー25,14の非操作時にエンジン109の回転数を保持するためのオートアイドルダイヤル126、等が配置されている。アクセサリエリア67Bには、運転室内に設けられたラジオを操作する複数のラジオスイッチ138,139、等が配置されている。詳細設定エリア67Cには、油圧系統の圧油の圧力等を含む各種状態量の詳細設定を行うロータリスイッチ92、等が配置されている。
【0036】
<左コンソール装置>
左コンソール装置11は、図5及び図7に示すように、左コンソールフレーム12、左操作レバー14、左コンソールカバー15、シャットオフ装置19を有する。
【0037】
左コンソールフレーム12は、運転席台座10Aの左側に取付けられている。左コンソールフレーム12は、運転席10の運転席台座10Aに取付けられる台座取付部12Aと、台座取付部12Aから前方に延びたメインフレーム部12Bとを有している。メインフレーム部12Bの後端側には左アームレスト13が取付けられ、運転席10に座ったオペレータは、左アームレスト13に左肘を乗せるようになっている。また、メインフレーム部12Bの前端側には、左操作レバー14とシャットオフ装置19とが設けられている。
【0038】
左操作レバー14は、左コンソールフレーム12を構成するメインフレーム部12Bの前端上側に設けられている。左操作レバー14は、後述の右操作レバー25と共に、上部旋回体3の旋回動作および作業装置4の動作を制御するためにオペレータによって操作される。左操作レバー14は、減圧弁型のパイロット弁(図示せず)と、このパイロット弁から上側に延び、オペレータによって前後方向および左右方向に傾転されるレバー部14Aと、を含む。
【0039】
左コンソールカバー15は、左コンソールフレーム12に取付けられ、左コンソール装置11の外殻を形成している。左コンソールカバー15は、左コンソールフレーム12、左操作レバー14のパイロット弁(図示せず)、シャットオフ装置19等を覆っている。左コンソールカバー15は、弾性を有する樹脂材料を用いて形成され、上カバー16、側方カバー17、シャットオフカバー18を含む。
【0040】
上カバー16は、左コンソールフレーム12等を上側から覆っている。上カバー16は、前カバー部16Aと、後カバー部16Bとにより構成されている。前カバー部16Aは、左コンソールフレーム12(メインフレーム部12B)の前側に配置され、左操作レバー14のパイロット弁等を上側から覆う。後カバー部16Bは、前カバー部16Aの後端から下方に立下がると共に後側に延びる。上カバー16は、メインフレーム部12Bにボルト等(図示せず)を用いて取付けられている。上カバー16を構成する前カバー部16Aの上面16Cは、後カバー部16Bの上面よりも高い位置に配置されており、左コンソール装置11の上面を形成している。
【0041】
側方カバー17は、上カバー16の下側に位置して左コンソールフレーム12等を前後方向、および左右方向から覆う。側方カバー17は、左コンソールフレーム12の前側に配置された前側カバー部17Aと、前側カバー部17Aから後側に延びた内側カバー部17Bと、外側カバー部17Cとを含む。前側カバー部17Aは、左コンソールフレーム12、左操作レバー14のパイロット弁等を前側から覆っている。内側カバー部17Bは、左コンソールフレーム12、左操作レバー14のパイロット弁等を右側方(運転席10側)から覆う。外側カバー部17Cは、左コンソールフレーム12の前側部位を左側方から覆う。
【0042】
シャットオフカバー18は、側方カバー17(外側カバー部17C)の左側面に取付けられている。シャットオフカバー18は、後述するシャットオフレバー20の回動中心部20A、ばね部材22等を左側方から覆っている。なお、後述の図8及び図9、は、シャットオフカバー18を取外した状態を示している。
【0043】
<シャットオフ装置>
次に、本実施形態によるシャットオフ装置19について図8及び図9を用いて説明する。
【0044】
シャットオフ装置19は、左コンソール装置11及び右コンソール装置24のうち、運転席10の乗降口側となる左コンソール装置11に設けられている。
シャットオフ装置19は、シャットオフ装置19は、シャットオフレバー20、ばね部材22、シャットオフスイッチ23、前述のエンジン始動準備スイッチ30、等を含む。シャットオフレバー20は、前述したように、図8に示すロック解除位置と図9に示すロック位置との間で回動変位する。シャットオフ装置19は、シャットオフレバー20がロック解除位置にあるときにはオペレータのキャブ8への乗降を禁止し、ロック位置にあるときにはオペレータが乗降を許可する機能を果たす。
【0045】
<シャットオフレバー>
シャットオフレバー20は、左コンソールフレーム12を構成するメインフレーム部12Bの前側部位に、前後方向ないし上下方向に回動可能に取付けられている。シャットオフレバー20は、図8に示すロック解除位置にある状態で前後方向に延びる板体によって形成されている。シャットオフレバー20は、長さ方向の中間部に位置する広幅な回動中心部20Aと、ロック解除位置にある状態で回動中心部20Aから前方に延びる狭幅なレバー本体部20Bと、ロック解除位置にある状態で回動中心部20Aから後方に延びる操作部20Cとを有している。
【0046】
回動中心部20Aは、左コンソールフレーム12のメインフレーム部12Bに、回動支点としての支持軸21を介して取付けられている。シャットオフレバー20は、オペレータが操作部20Cを操作することにより、支持軸21を回動支点として回動変位する。シャットオフレバー20は、図8に示す、レバー本体部20Bが左コンソール装置11から前方に突出したロック解除位置と、図9に示す、レバー本体部20Bが下向き延びたロック位置との間で回動変位する。
【0047】
レバー本体部20Bは、シャットオフレバー20がロック解除位置(図8の位置)にあるときには、オペレータの移動を妨げることで、オペレータのキャブ8への乗降を禁止する。ロック解除位置では、前述したように、左操作レバー14および右操作レバー25の操作が有効となり、それら左・右の操作レバー14,25の操作に応じて上部旋回体3の旋回動作、作業装置4の動作が制御される。一方、レバー本体部20Bは、シャットオフレバー20がロック位置(図9の位置)にあるときには、オペレータの移動を妨げることなく、キャブ8に対するオペレータの乗降を許可する。ロック位置では、前述したように、左・右の操作レバー14,25の操作が無効となり、左・右の操作レバー14,25の操作に関わらず上部旋回体3の旋回動作、作業装置4の動作が禁止される。
【0048】
回動中心部20Aには、支持軸21から離間した部位に可動ピン20Dが設けられている。可動ピン20Dは、回動中心部20Aの左側面に溶接等の手段を用いて突設され、シャットオフレバー20と一体となって支持軸21廻りを回動する。可動ピン20Dは、後述するばね部材22の一端22Aが取付けられる一端側取付部を構成している。
【0049】
操作部20Cは、回動中心部20Aを挟んでレバー本体部20Bとは反対側に配置されている。操作部20Cは、シャットオフレバー20をロック位置からロック解除位置、またはロック解除位置からロック位置に回動変位させるために、オペレータによって操作される。シャットオフレバー20がロック解除位置にある状態での操作部20Cの後端には、操作部20Cの他の部位よりも膨らんだ形状を備えた被把持部20Fが設けられている。被把持部20Fは、オペレータの一方の片手、すなわち左手によって把持される部位である。被把持部20Fの左側面には運転席10側に窪ませた凹窪部20Eが設けられ、オペレータは凹窪部20Eに左手を掛けることにより操作部20Cを確実に操作できる。
【0050】
<ばね部材>
ばね部材22は、例えば引張コイルばねを用いて形成されている。ばね部材22の一端22Aは、回動中心部20Aに突設された可動ピン20Dに取付けられ、ばね部材22の他端22Bは、メインフレーム部12Bに突設された固定ピン12Cに取付けられている。回動中心部20Aに突設された可動ピン20Dには、ばね部材22の引張力(ばね力)が常に作用する。シャットオフレバー20は、ばね部材22の引張力によって常にロック解除位置(図8の位置)またはロック位置(図9の位置)に付勢される。そして、ばね部材22は、操作部20Cが左コンソール装置11の上カバー16の上面16C以下となる位置(切替位置)を境界として、シャットオフレバー20をロック解除位置とロック位置とのどちらに向けて付勢するかを切替える。
【0051】
本実施形態では、可動ピン20Dの中心が、固定ピン12Cの中心と支持軸21の中心とを結ぶ直線L-L上に配置されたとき、操作部20Cの最上部の高さ位置が上カバー16の上面16Cの高さ位置と一致する。シャットオフレバー20がロック位置とロック解除位置との間にある場合において、上記のように操作部20Cの最上部の高さ位置が上カバー16の上面16Cの高さ位置と一致する位置、即ち、操作部20Cが上面16C以下にある位置、がシャットオフレバー20の切替位置として設定されている。
【0052】
シャットオフレバー20が上記切替位置にあるときにおいて、ばね部材22の引張力は最大値となる。そして、シャットオフレバー20が切替位置からロック解除位置(図8の位置)へと回動角度θ2だけ変位したときには、ばね部材22の引張力は、上記最大値よりも小さくなる。また、シャットオフレバー20が切替位置からロック位置(図9の位置)へと回動角度θ3だけ変位したときには、ばね部材22の引張力は、さらに小さな値となる。即ち、ばね部材22がシャットオフレバー20をロック解除位置に保持するときの引張力は、ばね部材22がシャットオフレバー20をロック位置に保持するときの引張力よりも大きく設定されている。
【0053】
<シャットオフスイッチ>
シャットオフスイッチ23は、シャットオフレバー20の回動中心部20Aの近傍に位置し、左コンソールフレーム12のメインフレーム部12Bに取付けられている。シャットオフスイッチ23は、シャットオフレバー20がロック位置に回動変位したときに回動中心部20Aによって押圧される、検出部23Aを有している。検出部23Aは、シャットオフレバー20がロック位置に回動したとき、回動中心部20Aにより押圧されることで、上記ロック位置を検出する。これにより、前述のように左操作レバー14および右操作レバー25の操作が無効となる。一方、検出部23Aは、シャットオフレバー20がロック解除位置に回動したときには、回動中心部20Aから離間されることにより上記ロック解除位置を検出する。これにより、左・右の操作レバー14,25の操作が有効とされる。
【0054】
<エンジン始動準備スイッチ>
本実施形態の特徴は、エンジン始動準備スイッチ30がシャットオフレバー20に設けられることにあり、特に、エンジン始動準備スイッチ30がシャットオフレバー20の特定部位に設けられることにある。特定部位とは、エンジン始動準備スイッチ30が操作されるときの操作方向が、シャットオフレバー20がロック位置からロック解除位置へ向かって回動するのを阻害する方向となるような部位である。
具体的には、図10(a)及び図10(b)に示すように、エンジン始動準備スイッチ30は、シャットオフレバー20の操作部20Cの被把持部20Fのうち、オペレータがロック位置へ向かって回動させる操作を行うときに左手が触れる側の部位、言い換えればロック位置にある状態において、運転席に着座するオペレータから見て被把持部20Fの正面側の部位に設けられている。
特にこの例では、エンジン始動準備スイッチ30は、シャットオフレバー20を操作する際にオペレータが把持する被把持部20Fのうちオペレータの左手の手のひらが当接する部位に設けられている。
【0055】
エンジン始動準備スイッチ30は、図10(c)のように手操作で押し込むことでONとなるとともに手を離すとOFFになる(押している間だけONの状態となる)、いわゆるモーメンタリスイッチである。これにより、オペレータは、左手でエンジン始動準備スイッチ30を押した状態を継続させ、その状態でさらに右手でエンジン始動スイッチ32を押した場合にだけ、エンジン109を始動させることができる。
上記の部位にエンジン始動準備スイッチ30が設けられることで、図10(c)中に黒破線上の矢印で示すように、仮にスイッチ操作時にシャットオフレバー20が回動したとしても、ロック解除位置へ向かう方向とは逆方向、すなわちロック解除位置からロック位置へ向かって回動する方向(以下適宜、単に「ロック方向」という)への回動となる。そのため、シャットオフレバー20のロック解除方向への操作は阻害されている(ロック解除方向への回動は誘起されない)。
【0056】
別例として、エンジン始動準備スイッチ30は、図11(a)及び図11(b)に示すように、操作部20Cの被把持部20Fの左側面の、オペレータがロック位置へ向かって回動させる操作を行うときに左手の指で操作可能な部位(特定部位)に設けられていてもよい。
この部位にエンジン始動準備スイッチ30が設けられることで、図11(c)に示すように、スイッチ操作時の押し込み方向が回動中心部20Aの軸心に沿った方向となるため、シャットオフレバー20が回動することはない。そのため、上記同様、少なくともロック解除方向への操作は阻害されている(ロック解除方向への回動は誘起されない)。
【0057】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の油圧ショベル1においては、運転室内に回動可能なシャットオフレバー20が設けられている。
シャットオフレバー20がロック解除位置に回動されている場合は、油圧アクチュエータ(ブームシリンダ103a、アームシリンダ103b、バケットシリンダ103c等)を操作するための操作レバー14,25等の操作が有効である。その結果、オペレータが操作レバー14,25等を操作することで、油圧ショベル1を意図通りに動作させることができる。
シャットオフレバー20がロック位置に回動されている場合は、操作レバー14,25等の操作が無効化され、操作レバー14,25等を操作しても、油圧ショベル1が動作することはない。
【0058】
また、本実施形態の油圧ショベル1は、エンジン始動準備スイッチ30及びエンジン始動スイッチ32を備える。オペレータがエンジン始動準備スイッチ30及びエンジン始動スイッチ32の両方を操作することで、エンジン制御部102jを介しセルモータ123が駆動され、エンジン109が始動する。
このとき、これら2つのスイッチのうちエンジン始動準備スイッチ30が、シャットオフレバー20に設けられている。オペレータがエンジン109の始動のためにエンジン始動スイッチ32を操作する際には、エンジン始動準備スイッチ30を必ず操作する必要がある。その結果、自動車におけるフットブレーキと同様、エンジン109の始動時において、オペレータに安心感を与えることができる。
【0059】
またこのとき特に、エンジン始動準備スイッチ30は、油圧ショベル1のうちの特定部位、すなわち、操作方向がシャットオフレバー20がロック位置からロック解除位置へ向かって回動するのを阻害する方向となる部位、に設けられている。そのため、オペレータがエンジン109の始動のためにエンジン始動準備スイッチ30を操作する際、シャットオフレバー20はロック解除位置へは操作されていない(=ロック位置に操作されている)ことが保証されることとなる。その結果、エンジン109の始動時において、オペレータに安心感を確実に与えることができる。
【0060】
また、本実施形態では特に、セルモータを駆動するためのエンジン始動スイッチ32が設けられ、エンジン始動準備スイッチ30は、エンジン始動スイッチ32によりセルモータ123が駆動されるエンジン109の始動を準備するためのスイッチである。そして、エンジン始動準備スイッチ30がシャットオフレバー20と同じ側(運転室内の左側)の上記特定部位に設けられる一方、エンジン始動スイッチ32はシャットオフレバー20と反対側(運転室内の右側)に設けられている。
この結果、オペレータは、エンジン始動時には、シャットオフレバー20と同じ側のエンジン始動準備スイッチ30と、シャットオフレバー20とは反対側のエンジン始動スイッチ32と、の両方を操作する必要がある。
本実施形態によれば、運転室内の左・右方向両側にそれぞれ位置する2つのスイッチ30,32を併せて操作しなければエンジン109が始動しないので、さらにオペレータの安心感を高めることができる。
【0061】
また、本実施形態では特に、シャットオフレバー20に操作部20Cが設けられている。
操作部20Cは、オペレータがシャットオフレバー20をロック位置へ回動させる操作を行う時に使用される。エンジン始動準備スイッチ30は、当該操作部20Cに設けられる。
これにより、オペレータは、操作部20Cを用いてシャットオフレバー20をロック位置へ回動させる操作に連動又は随伴する形で、エンジン始動準備スイッチ30を円滑に操作することができる(図10(c)又は図11(c)参照)。
この結果、エンジン始動準備スイッチ30の操作時にシャットオフレバー20がロック位置にあることを保証する、具体的構成を実現することができる。
【0062】
また、本実施形態では特に、シャットオフレバー20は、操作部20C、回動中心部20A、レバー本体部20Bを備える。オペレータは、操作部20Cの被把持部20Fを一方の片手(上記の例では左手)で把持して、シャットオフレバー20全体を回動中心部20Aを中心にして回動させることで、シャットオフレバー20をロック解除位置からロック位置へと切り替えることができる。
その際、図10(a)~(c)に示した構成例では、エンジン始動準備スイッチ30は、上記のように被把持部20Fがオペレータの片手(左手)で把持されるときの、手のひらにより当接される部位に設けられている。これにより、オペレータが被把持部20Fを把持してロック位置への切り替えを行うときに、無理なく自然にエンジン始動準備スイッチ30を操作することができる。
また、図11(a)~(c)に示した構成例では、エンジン始動準備スイッチ30は、上記のように被把持部20Fがオペレータの片手(左手)で把持されるとき、被把持部20Fの側面においてその片手の指で操作可能な部位に設けられている。これにより、オペレータが被把持部20Fを把持してロック位置への切り替えを行うときに、無理なく自然にエンジン始動準備スイッチ30を操作することができる。
【0063】
一方、比較例として、例えば図12(a)、図12(b)、又は、図13(a)、図13(b)に示すように、操作部20Cのうち、オペレータがロック解除位置へ向かって回動させる操作を行うときに左手が触れる側の部位(言い換えれば上記ロック方向側の部位)にエンジン始動準備スイッチ30を設けた場合を考える。この場合、仮にスイッチ操作時にシャットオフレバー20が回動した場合、図12(a)及び図13(a)中に破線矢印で示すようなロック解除方向への回動となってしまう(シャットオフレバー20のロック解除方向への回動が誘起され、阻害されない)。
さらに別の比較例である図14(a)、図14(b)に示すように、操作部20Cの頂部に押し込み方式のエンジン始動準備スイッチ30を設けた場合も、上記同様、シャットオフレバー20のロック解除方向への回動が誘起され、阻害されない可能性がある。
【0064】
これに対し、図10(a)~(c)又は図11(a)~(c)に示す構成の本実施形態によれば、上記比較例とは異なり、シャットオフレバー20のロック解除方向への操作は阻害される。この結果、エンジン始動準備スイッチ30の操作時にシャットオフレバー20がロック位置にあることが、確実に保証される。
【0065】
また、本実施形態では特に、図3を用いて前述したように、エンジン109が既に始動した状態でエンジン始動スイッチ32が操作された場合には、エンジン制御部102jによってエンジンが停止される。
本実施形態によれば、エンジン始動操作の重畳に基づく制御の錯綜による、油圧ショベル1の予期せぬ動作を防止することができる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0067】
(1)被把持部以外の部位にエンジン始動準備スイッチを設ける場合
例えば、図15(a)及び図15(b)は、エンジン始動準備スイッチ30を、深めに形成した凹窪部20Eの内側上壁部(特定部位)に設けた場合の例である。
この場合、エンジン始動準備スイッチ30は、図15(c)及び図15(d)に黒矢印で示すように略斜め上方に持ち上げるように操作されることでON状態となる。
【0068】
また例えば、図16(a)及び図16(b)は、エンジン始動準備スイッチ30を、操作部20Cの頂部において略水平方向に沿ってロック解除方向側に臨むような部位(特定部位)に設けた場合である。
この場合、エンジン始動準備スイッチ30は、図16(a)に左方向への白抜き矢印で示すように略水平方向に沿ってロック方向側に操作されることでON状態となる。
【0069】
また例えば、図17(a)及び図17(b)は、エンジン始動準備スイッチ30を、操作部20Cの上部表面のロック解除方向側に臨むような部位(特定部位)に設けた場合である。
この場合、エンジン始動準備スイッチ30は、図16(a)に左方向への白抜き矢印で示すように略水平方向に沿ってロック方向側に操作されることでON状態となる。
【0070】
また例えば、図18(a)及び図18(b)は、エンジン始動準備スイッチ30を、深めに形成した凹窪部20Eの内側下壁部(特定部位)に設けた場合の例である。
この場合、エンジン始動準備スイッチ30は、図18(b)に白抜き矢印で示すように略斜め下方に操作されることでON状態となる。
【0071】
上記の図15図18に示す各部位(特定部位)にエンジン始動準備スイッチ30が設けられることで、図15(c)、図16(a)、図17(a)、図18(a)中に黒破線矢印で示すように、仮にエンジン始動準備スイッチ30の操作時にシャットオフレバー20が回動したとしても、ロック解除位置へ向かう方向とは逆方向であるロック方向への回動となる。そのため、それらの変形例においても、シャットオフレバー20のロック解除方向への操作は阻害されている(ロック解除方向への回動は誘起されない)。
その結果、上記実施形態と同様、シャットオフレバー20はロック解除位置へは操作されていないことが保証されることとなり、オペレータに安心感を与えることができる。
【0072】
(2)シャットオフレバー20から離れた部位にエンジン始動準備スイッチを設ける場合
例えば、図19(a)に示す例では、シャットオフレバー20は、前述の図9に示したロック位置から、図8に示すロック解除位置への回動とは反対方向に回動可能に構成されている。そして、エンジン始動準備スイッチ30は、ロック位置にあるシャットオフレバー20の操作部20Cから前方側に離れた部位に設けられている。詳細には、エンジン始動準備スイッチ30は、シャットオフレバー20が図19(a)に示すロック位置から図19(b)に示す上記反対方向へ回動するときの回転軌道R内にある上記前方側に離れた部位(特定部位)に設けられている。
【0073】
また図20(a)に示す例では、エンジン始動準備スイッチ30は、ロック位置にあるシャットオフレバー20のレバー本体部20Bから後方側に離れた部位に設けられている。詳細には、エンジン始動準備スイッチ30は、シャットオフレバー20が図20(a)に示すロック位置から図20(b)に示す上記反対方向へ回動するときの回転軌道R内にある、上記後方側に離れた部位(特定部位)に設けられている。
【0074】
上記2つの構成において、オペレータがエンジン109を始動しようとする際には、操作部20Cを操作し、シャットオフレバー20をロック解除位置とは反対方向に回動させる必要がある。この回動操作により、オペレータは、シャットオフレバー20の操作部20C又はレバー本体部20Bを回転軌道R内に位置するエンジン始動準備スイッチ30に当接させ、エンジン始動準備スイッチ30を操作することができる。
したがって、これら2つの変形例においても、シャットオフレバー20のロック解除方向への操作は阻害されている(ロック解除方向への回動は誘起されない)。その結果、上記実施形態と同様、エンジン始動準備スイッチ30の操作時にシャットオフレバー20がロック解除位置へは操作されていないことが保証されることとなり、オペレータに安心感を与えることができる。
【0075】
(3)エンジン始動スイッチ32の機能をエンジン始動準備スイッチ30に移し、1つのスイッチとして統合する場合
すなわち、本変形例では、前述の図5に示した右コンソール装置24におけるエンジン始動スイッチ32が省略される。そして、シャットオフレバー20の操作部20C又はその近傍(操作部20Cから離れた位置を含む)の上記特定部位に、エンジン始動準備スイッチ30の機能とエンジン始動スイッチ32の機能とを併せ持つように統合された、1つのエンジン始動準備スイッチ31が設けられる(図示省略)。
【0076】
<エンジン制御部によるエンジン始動制御内容>
本変形例では、オペレータは、エンジン109の始動時には、エンジン始動準備スイッチ31の操作が必要である。本変形例においてエンジン制御部102j内に組み込まれている制御ロジックの内容を、上記図4に対応する図21に示す。
【0077】
図21に示すように、例えば、エンジン始動準備スイッチ31の操作されていない状態が、いわゆるKEY-OFF状態である。この状態からエンジン始動準備スイッチ31が比較的長い時間操作される(いわゆる長押し。以下同様)と、いわゆるKEY-ON状態へと遷移する。さらにこの状態で、エンジン始動準備スイッチ31が比較的長い時間操作されることで、エンジン制御部102jからセルモータ制御部124へエンジン制御指令が出力されてエンジン109が始動される。
【0078】
また、上記KEY-OFF状態からエンジン始動準備スイッチ31が比較的短い時間操作される(いわゆる短押し。以下同様)と、電装品への通電が行われるいわゆるACC状態へと遷移する。このACC状態で、エンジン始動準備スイッチ31がさらに操作されると、上記KEY-ON状態へと遷移する。
【0079】
なお、上記KEY-ON状態においてエンジン始動準備スイッチ31が比較的短い時間さらに操作され、あるいはエンジン始動状態においてエンジン始動準備スイッチ31がさらに操作されると、エンジン制御部102jからECU113へのエンジン制御指令に基づき、エンジン109が駆動停止される。
【0080】
本変形例においては、エンジン始動準備スイッチ31を、前述のエンジン始動準備スイッチ30と同様いわゆるモーメンタリスイッチとして構成することができる。これにより、オペレータは、左手でエンジン始動準備スイッチ31を比較的長い時間押した場合にだけ、エンジン109を始動させることができる。
前述したエンジン始動準備スイッチ30と同様の位置(特定部位)にエンジン始動準備スイッチ31が設けられることで、前述と同様、エンジン始動準備スイッチ31の操作時にはシャットオフレバー20が回動しないか、回動したとしても、ロック解除位置へ向かう方向とは逆方向であるロック方向への回動となる。そのため、シャットオフレバー20のロック解除方向への操作は阻害される(ロック解除方向への回動は誘起されない)。すなわち、本変形例においても、前述と同様、オペレータがエンジン109の始動のためにエンジン始動準備スイッチ31を操作する際、シャットオフレバー20はロック解除位置へは操作されていない(=ロック位置に操作されている)ことが保証されることとなる。その結果、自動車におけるフットブレーキと同様、エンジン109の始動時において、オペレータに安心感を与えることができる。
【0081】
(4)その他
なお、実施形態では、建設機械として油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧クレーン、ホイールローダ等、エンジンにより駆動される油圧ポンプからの圧油で駆動されるアクチュエータを備えた、他の建設機械にも広く適用することができる。
【0082】
<形状、数値、構造等について>
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
例えば、以上の説明における「同じ」とは、厳密な意味ではない。すなわち、「同じ」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に等しい」という意味である。
また、図3等に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0083】
<解決しようとする課題や発明の効果について>
また、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上記した内容に限定されるものではない。すなわち、本発明によって、上述されていない課題を解決したり、上述されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【符号の説明】
【0084】
1 油圧ショベル(建設機械)
14 左操作レバー
20 シャットオフレバー
20A 回動中心部
20B レバー本体部
20C 操作部
20F 被把持部
25 右操作レバー
30 エンジン始動準備スイッチ
31 エンジン始動準備スイッチ
32 エンジン始動スイッチ(セルモータ駆動スイッチ)
101a ブーム
101b アーム
101c バケット
102j エンジン制御部
103a ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
103b アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
103c バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
103d 旋回モータ(油圧アクチュエータ)
103e 走行モータ(油圧アクチュエータ)
103f 走行モータ(油圧アクチュエータ)
106 油圧ポンプ
107 パイロット油ポンプ
109 エンジン
123 セルモータ
R 回転軌道
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21