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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005795
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106171
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上山 竜之介
(72)【発明者】
【氏名】竹井 啓起
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087DB03
3B087DB10
(57)【要約】
【課題】コネクタを支持可能な部材を支持部材に固定された一対の側部構成部と各側部構成部にリベット締結される中央構成部とにより構成する場合に、作業者によるリベット締結作業を容易化できる。
【解決手段】左右の支持部材23にそれぞれ固定された左右一対の側部構成部47、63と、左右の側部構成部にリベットにより固定され且つコネクタが固定される中央構成部75と、中央構成部がリベットにより側部構成部に固定されていないときに、左右の側部構成部に中央構成部を仮支持することが可能な仮支持部51、67、90a、91aと、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の支持部材にそれぞれ固定された左右一対の側部構成部と、
左右の前記側部構成部にリベットにより固定され且つコネクタが固定される中央構成部と、
前記中央構成部が前記リベットにより前記側部構成部に固定されていないときに、左右の前記側部構成部に前記中央構成部を仮支持することが可能な仮支持部と、
を備える車両用シート。
【請求項2】
前記仮支持部が、
左右の前記側部構成部にそれぞれ設けられた左右一対の第1支持部と、
前記中央構成部に設けられた、左右の前記第1支持部の上面にそれぞれ上方から載せられる左右一対の第1被支持部と、
前記左右一対の第1支持部の上端面である左右一対の第2支持部と、
前記左右一対の第2支持部にそれぞれ上方から載せられる左右一対の第2被支持部と、
を備える請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記支持部材、前記側部構成部、及び前記中央構成部を備えるクッションフレームを治具により支持したときに、前記仮支持部によって前記側部構成部に前記中央構成部が仮支持される請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートの一例として、左右のスライドレールのアッパレールに固定された左右一対のライザーと、左右のライザーにリフター機構を介して支持されたシートクッションと、を備えるものがある。さらにこの車両用シートが、左右のライザーの間に設けられたシート幅方向に延びるコネクタ支持部材を備えることがある。例えばコネクタ支持部材は、左右のライザーの一方に固定された一つの第1構成部と、左右のライザーの他方と第1構成部とに固定され且つコネクタを支持する第2構成部と、によって構成可能である。さらに第1構成部と第2構成部とを、リベットガンを利用してリベット締結することが可能である。
【0003】
しかしコネクタ支持部材を第1構成部と第2構成部の2部材によって構成する場合は、コネクタ支持部材の形状に起因して、リベットガンを用いて第1構成部と第2構成部をリベット締結するのが難しい場合がある。
【0004】
そのためコネクタ支持部材を、左右一対の側部構成部と一つの中央構成部とからなる3部材により構成し、この問題を解決することが考えられる。この場合は、左右のライザーに左右の側部構成部がそれぞれ固定される。さらに例えば、左側の側部構成部に中央構成部の左側部がリベット締結され、右側の側部構成部に中央構成部の右側部がリベット締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-57916号公報
【特許文献2】特開2019-202738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
側部構成部と中央構成部をリベット締結する際は、側部構成部に設けられたリベット孔と、中央構成部に設けられたリベット孔とが同心をなすように、作業者が一方の手で中央構成部を支持する。さらに作業者は、他方の手で把持したリベットガンを利用して、各リベット孔にリベットを挿入する。リベットガンを用いたリベット締結作業を行う際は、リベットガンにリベットを装填する必要がある。しかし他方の手のみを利用して、リベットガンにリベットを装填するのは容易ではない。即ち、コネクタ支持部材を3部材により構成する場合は、作業者が側部構成部と中央構成部とをリベットガンを用いてリベット締結するのが容易ではないという課題が発生する。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、コネクタを支持可能な部材を支持部材に固定された一対の側部構成部と各側部構成部にリベット締結される中央構成部とにより構成する場合に、作業者によるリベット締結作業を容易化できる車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、左右の支持部材にそれぞれ固定された左右一対の側部構成部と、左右の前記側部構成部にリベットにより固定され且つコネクタが固定される中央構成部と、前記中央構成部が前記リベットにより前記側部構成部に固定されていないときに、左右の前記側部構成部に前記中央構成部を仮支持することが可能な仮支持部と、を備える。
【0009】
請求項1に記載の車両用シートは、左右の支持部材にそれぞれ固定された左右一対の側部構成部と、左右の側部構成部にリベットにより固定され且つコネクタが固定される中央構成部と、を備える。さらに請求項1に記載の車両用シートは、中央構成部がリベットにより側部構成部に固定されていないときに、左右の側部構成部に中央構成部を仮支持することが可能な仮支持部を備える。そのため作業者は、手で中央構成部を支持する必要がない。そのため作業者は、例えば両手を用いて、リベットガンへのリベット装填作業を実行できる。従って、請求項1に記載の車両用シートは、作業者によるリベット締結作業を容易化できる。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記仮支持部が、左右の前記側部構成部にそれぞれ設けられた左右一対の第1支持部と、前記中央構成部に設けられた、左右の前記第1支持部の上面にそれぞれ上方から載せられる左右一対の第1被支持部と、前記左右一対の第1支持部の上端面である左右一対の第2支持部と、前記左右一対の第2支持部にそれぞれ上方から載せられる左右一対の第2被支持部と、を備える。
【0011】
請求項2に記載の車両用シートは、仮支持部を簡単な構成により実現できる。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記支持部材、前記側部構成部、及び前記中央構成部を備えるクッションフレームを治具により支持したときに、前記仮支持部によって前記側部構成部に前記中央構成部が仮支持される。
【0013】
請求項3に記載の車両用シートは、支持部材、側部構成部、及び中央構成部を備えるクッションフレームを治具により支持した状態において実行される作業者によるリベット締結作業を容易化できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートは、コネクタを支持可能な部材を支持部材に固定された一対の側部構成部と各側部構成部にリベット締結される中央構成部とにより構成する場合に、作業者によるリベット締結作業を容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートのシートクッションのクッションパッド及び表皮材を省略して示す斜視図である。
図2】シートクッションの一部の部材を分離して示す斜視図である。
図3】ライザー及びコネクタ支持部材の前方から見たときの斜視図である。
図4】ライザー及びコネクタ支持部材の後方から見たときの分解斜視図である。
図5】コネクタ支持部材の下方から見たときの分解斜視図である。
図6】組み立て段階にあるシートクッションを治具を用いて支持した状態を示す正面図である。
図7】ライザー、第1側部ブラケット、第2側部ブラケット、並びに第1側部ブラケット及び第2側部ブラケットによって仮支持されたコネクタブラケットの正面図である。
図8図7の8-8矢線に沿う断面図である。
図9図7の9-9矢線に沿う断面図である。
図10】ライザー、第1側部ブラケット、第2側部ブラケット、並びに第1側部ブラケット及び第2側部ブラケットに対して位置合わせがされたコネクタブラケットの正面図である。
図11図10の11-11矢線に沿う断面図である。
図12図10の12-12矢線に沿う断面図である。
図13】リベットによる締結作業が完了したときのライザー、第1側部ブラケット、第2側部ブラケット、及びコネクタブラケットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る車両用シート20について添付図面を参照しながら説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRはシート前方側を示しており、矢印UPはシート上方側を示しており、矢印LHはシート幅方向(左右方向)の左側を示している。なお以下の説明における前後方向、上下方向及び左右方向に関する説明は、特に断りがない場合は、車両用シート20が車体フロア11に設置された状態を基準にしている。一方、後述するようにシートクッション39の治具97を用いた組み立て作業の実行時における前後方向、上下方向及び左右方向に関する説明は、図6図13に示された方向が基準となる。
【0017】
図1及び図2に示されるように、車両10の車体の一部である車体フロア11に車両用シート20が設けられている。車両用シート20は前席である。車両用シート20は、ロアレール21、アッパレール22、ライザー(支持部材)23、リフター機構25及びシート本体37を備える。
【0018】
車体フロア11の上面には、左右一対且つ前後方向に延びるロアレール21が固定されている。各ロアレール21には、左右一対のアッパレール22がそれぞれスライド可能に支持されている。さらに各アッパレール22には、アッパレール22のロアレール21に対するスライドを規制又は許容するスライドロック装置(図示省略)が設けられている。さらに左右のアッパレール22には、左右一対のライザー23がそれぞれ固定されている。
【0019】
左右のライザー23にはリフター機構25が設けられている。リフター機構25は、左右一対の前側リンク27、連結ピン28、後側リンク32、連結ピン33、前側シャフト29及び後側シャフト34を有する。左右の前側リンク27の下端部は、シート幅方向に延びる連結ピン28を介して、左右のライザー23の前端部にそれぞれ回転可能に接続されている。また、左右の後側リンク32の下端部は、シート幅方向に延びる連結ピン33を介して、左右のライザー23の後部にそれぞれ回転可能に接続されている。さらに、左右の前側リンク27に設けられた取付孔27aに、シート幅方向に延びる金属製の前側シャフト29の両端部がそれぞれ挿入され、両端部が前側リンク27に固定されている。さらに左右の後側リンク32の上端部を、シート幅方向に延びる金属製の後側シャフト34が、自身の軸線回りに回転可能に貫通している。
【0020】
リフター機構25の上部はシート本体37を支持している。シート本体37は、シートクッション39、シートバック(図示省略)、及びヘッドレスト(図示省略)を有する。
【0021】
シートクッション39は、骨格部材である金属製のクッションフレーム40と、クッションフレーム40を覆うクッションパッド(図示省略)と、袋状の表皮材(図示省略)と、を有する。クッションフレーム40は、左右一対のサイドフレーム41と、左右のサイドフレーム41の前端部同士を接続するフロントフレーム42と、を備える。さらに後側シャフト34の両端部が、左右のサイドフレーム41の後端部にそれぞれ固定されている。
【0022】
ライザー23、前側リンク27、後側リンク32及びサイドフレーム41によって四節リンク機構が構成され、この四節リンク機構が動作することにより、シートクッション39が左右のライザー23に対して昇降する。
【0023】
図2図7に示されたように左右のライザー23の前部には金属製のコネクタ支持部材45が設けられている。コネクタ支持部材45は、第1側部ブラケット(側部構成部)47、第2側部ブラケット(側部構成部)63及びコネクタブラケット(中央構成部)75を備える。第1側部ブラケット47、第2側部ブラケット63及びコネクタブラケット75はいずれも金属板をプレス成形することにより製造される。
【0024】
図5及び図7に示されたように左側のブラケットである第1側部ブラケット47は、基部48と、被固定部59と、を備える。基部48は、上下方向に対して略直交する平板状の平板部49と、平板部49の前縁部に接続された平板部49に対して傾斜する傾斜支持部51と、を有する。平板部49の右端部には突部53が設けられており、突部53の上面には下向きの凹みである位置決め溝54が設けられている。位置決め溝54の平面形状は略U字形である。より詳細には、位置決め溝54の左右寸法は前方(開口端部)に向かって広がっている。さらに平板部49には第1リベット孔56及び第2リベット孔57が前後に並べて設けられている。第1リベット孔56及び第2リベット孔57は同一形状の円形である。被固定部59は平板部49に対して略直交する。図4に示されたように、第1側部ブラケット47の被固定部59が左側のライザー23の側面に固定される。
【0025】
図5及び図7に示されたように右側のブラケットである第2側部ブラケット63は、基部64と、被固定部70と、を備える。基部64は、上下方向に対して略直交する平板状の平板部65と、平板部65の前縁部に接続された平板部65に対して傾斜する傾斜支持部(仮支持部)(第1支持部)67と、を有する。平板部65には円形のリベット孔69が設けられている。被固定部70は基部64に対して略直交する。図3に示されたように、第2側部ブラケット63の被固定部70が右側のライザー23の側面に固定される。
【0026】
図5に示されたように中央のブラケットであるコネクタブラケット75は、左右方向に長い略長方形の板状部材である。コネクタブラケット75の後部には、共に上下方向に対して略直交し且つ互いに同一平面上に位置する平板状の第1平板状部77と第2平板状部86が形成されている。第1平板状部77には、プレス成形時に形成された抜き打ち孔78及び係止突起79が設けられている。係止突起79は抜き打ち孔78の左側縁部に接続された断面略L字形の部位である。係止突起79は、抜き打ち孔78の左側縁部に接続された第1平板状部77と平行な接続部80と、接続部80の右側端部から上方に延びる係止部81と、を備える。
【0027】
さらに第1平板状部77には第1リベット孔83と第2リベット孔84が前後に並べて設けられている。図7から明らかなように、第1リベット孔83及び第2リベット孔84は共に円形である。コネクタブラケット75の第1リベット孔83は第1側部ブラケット47の第1リベット孔56と実質的に同径である。一方、コネクタブラケット75の第2リベット孔84は第1側部ブラケット47の第2リベット孔57及びコネクタブラケット75の第1リベット孔83より大径である。第2平板状部86には左右方向に延びる長孔であるリベット孔87が形成されている。
【0028】
図5に仮想線で示されたように第2平板状部86の下面にはコネクタ43が固定されている。コネクタ43にはケーブル44の一端が接続されている。なお、ケーブル44には図示を省略されたバッテリの電力が供給される。
【0029】
コネクタブラケット75の前部は、後部に対して傾斜する前部傾斜部89によって構成されている。さらに前部傾斜部89の周縁部にはフランジ部89aが設けられている。前部傾斜部89、フランジ部89a及び第1平板状部77の左側縁部には第1切欠部90が形成され、前部傾斜部89、フランジ部89a及び第2平板状部86の右側縁部には、第1切欠部90と左右対称形状をなす第2切欠部91が形成されている。第1切欠部90のフランジ部89aに形成された部位の端面は平面視において左右方向と略平行な第1被支持部(仮支持部)(第2被支持部)90aによって構成されている。第2切欠部91のフランジ部89aに形成された部位の端面は平面視において左右方向と略平行な第2被支持部(仮支持部)(第2被支持部)91aによって構成されている。さらに前部傾斜部89の左右両端部には、第1平板状部77及び第2平板状部86に対して傾斜する第1傾斜被支持部(仮支持部)(第1被支持部)93と第2傾斜被支持部(仮支持部)(第1被支持部)94が設けられている。
【0030】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0031】
一人の作業者(図示省略)がリベットガン98(図7参照)及び複数のリベットを用いてシートクッション39を組み立てる要領について説明する。より詳細には、図6に示されたように作業面96に設置された左右一対の治具97によってシートクッション39を支持した状態で、リベットガン98を用いてコネクタブラケット75を第1側部ブラケット47及び第2側部ブラケット63に固定する要領について説明する。以下の組み立て要領の説明における前後方向、上下方向及び左右方向に関する説明は、図6図13に記載されたFR、LH及びUPによって規定された方向を基準とする。即ち、このとき前側シャフト29が後側シャフト34より上方に位置する。さらに治具97によって左右のアッパレール22のロアレール21に対するスライドが規制されている。
【0032】
まず図7に示されたように、作業者が手で把持したコネクタブラケット75の左右両端部を、前方から第1側部ブラケット47及び第2側部ブラケット63に接近させる。
【0033】
続いて図7図9に示されたように、作業者が手で把持しているコネクタブラケット75の上部を上方から第1側部ブラケット47及び第2側部ブラケット63に被せる。より詳細には、図8に示されたようにコネクタブラケット75の第1平板状部77を第1側部ブラケット47の平板部49から前方に離した状態で第1傾斜被支持部93の下面を傾斜支持部(仮支持部)(第1支持部)51の上面に載せ、且つ、第1切欠部90の第1被支持部90aを傾斜支持部51の上端面である支持端面(仮支持部)(第2支持部)51aに接触させる。さらに図示は省略されているが、このとき係止突起79(係止部81)の後端部が平板部49(位置決め溝54)より前方に位置する。さらに図9に示されたようにコネクタブラケット75の第2平板状部86を第2側部ブラケット63の平板部65から前方に離した状態で第2傾斜被支持部94の下面を傾斜支持部67の上面に載せ、且つ、第2切欠部91の第2被支持部91aを傾斜支持部67の上端面である支持端面(仮支持部)(第2支持部)67aに接触させる。
【0034】
このようにしてコネクタブラケット75の上部を上方から第1側部ブラケット47及び第2側部ブラケット63に被せると、図7図9に示されたように第1側部ブラケット47及び第2側部ブラケット63によってコネクタブラケット75が仮支持される。そのため作業者がコネクタブラケット75から両手を離しても、第1側部ブラケット47及び第2側部ブラケット63によるコネクタブラケット75の支持状態が維持される。
【0035】
続いて作業者は、一方の手でリベットガン98を把持し、他方の手で一つのリベットをリベットガンに装填する。即ち、作業者は、両手をコネクタブラケット75から離した状態で、両手を用いてリベットのリベットガンへの装填作業を実行できる。
【0036】
続いて作業者は、図10に示されたように、手でコネクタブラケット75を把持しながらコネクタブラケット75を図7図9の位置から第1側部ブラケット47及び第2側部ブラケット63に対して上方に相対移動させる。さらに作業者は、図10に示されたように係止突起79の係止部81を位置決め溝54に挿入しながら、図11に示されたように、第1平板状部77を平板部49の前面に接触させながら第1傾斜被支持部93の下面を傾斜支持部51の上面から上方に離す。さらに作業者は、図12に示されたように、第2平板状部86を平板部65の前面に接触させながら第2傾斜被支持部94の下面を傾斜支持部67の上面から上方に離す。
【0037】
さらに作業者は一方の手でコネクタブラケット75を微小量だけ移動させて、図10に示されたように、第1側部ブラケット47の第1リベット孔56とコネクタブラケット75の第1リベット孔83を実質的に同心をなすようにし、且つ、第1側部ブラケット47の第2リベット孔57をコネクタブラケット75の第2リベット孔84の直後に位置させる。なお、第1側部ブラケット47及びコネクタブラケット75は、係止部81の下面が底部54aに接触したときに、第1側部ブラケット47の第1リベット孔56とコネクタブラケット75の第1リベット孔83が実質的に同心をなすように設計されている。但し、第1側部ブラケット47及びコネクタブラケット75の少なくとも一つに製造誤差が生じた場合は、係止部81の下面と底部54aとの間に微小隙間が形成されたときに、第1側部ブラケット47の第1リベット孔56とコネクタブラケット75の第1リベット孔83が実質的に同心をなす。さらに第1リベット孔56と第1リベット孔83は基準孔として機能する。即ち、第1リベット孔56と第1リベット孔83が実質的に同心をなすと、図10に示されたように第1側部ブラケット47の第2リベット孔57とコネクタブラケット75の第2リベット孔84が実質的に同心をなす。より詳細には、コネクタブラケット75の第2リベット孔84より小径の第1側部ブラケット47の第2リベット孔57が第2リベット孔84より内周側に位置する。さらに図10に示されたように、コネクタブラケット75のリベット孔87と第2側部ブラケット63のリベット孔69が前後方向に対向する。
【0038】
次いで作業者は他方の手で把持したリベットガン98を利用してリベット99Aを第1リベット孔83と第1リベット孔56に打ち込む(図13参照)。これにより、作業者がコネクタブラケット75から手を離しても、リベット99Aによって第1側部ブラケット47、第2側部ブラケット63及びコネクタブラケット75の相対位置が図13に示された位置に仮保持される。
【0039】
そのため仮に作業者がコネクタブラケット75から手を離しても、コネクタブラケット75がリベット99Aを中心に図10の反時計方向に回転するおそれは小さい。また、仮にコネクタブラケット75がリベット99Aを中心に図10の反時計方向に回転した場合も、微小角度だけ回転したときに、係止部81の下面が位置決め溝54の底部54aに接触することにより、コネクタブラケット75のそれ以上の回転が規制される。
【0040】
続いて作業者は、一方の手でリベットガン98を把持し、他方の手で一つのリベットをリベットガンに装填する。
【0041】
次いで作業者は、いずれかの手で把持したリベットガン98を利用してリベット99Bをコネクタブラケット75のリベット孔87及び第2側部ブラケット63のリベット孔69に打ち込む(図13参照)。これにより、作業者がコネクタブラケット75から手を離しても、リベット99Bによって第2側部ブラケット63のリベット孔69周辺部とコネクタブラケット75のリベット孔87周辺部が図13の状態に保持される。
【0042】
続いて作業者は、一方の手でリベットガン98を把持し、他方の手で一つのリベットをリベットガンに装填する。
【0043】
続いて作業者は、いずれかの手で把持したリベットガン98を利用してリベット99Cをコネクタブラケット75の第2リベット孔84と第1側部ブラケット47の第2リベット孔57に打ち込む。これによりリベット99A、99B、99Cを用いたコネクタブラケット75の第1側部ブラケット47及び第2側部ブラケット63への締結作業が完了する。以下、この状態における治具97によって支持された一体物をクッション中間体100と称する。
【0044】
この後に作業者は、クッション中間体100に設けられたリフター機構25に駆動力を付与するための電動モータ(図示省略)のケーブル(ハーネス)の端部に設けられたコネクタをコネクタ43に接続する。この作業は、クッション中間体100が治具97に支持された状態、又は、治具97から分離されたクッション中間体100のロアレール21が作業面96に設置された状態で実行される。
【0045】
この後に作業者がクッション中間体100にクッションパッドを被せ、さらにクッション中間体100及びクッションパッドの表面に表皮材を被せる。これによりシートクッション39が完成する。
【0046】
さらにシートクッション39の後端部にシートバックの下端部を接続し、シートバックの上端部にヘッドレストを設けることにより、車両用シート20が完成する。
【0047】
以上説明したように本実施形態の車両用シート20は、コネクタブラケット75がリベット99A、99B、99Cにより第1側部ブラケット47及び第2側部ブラケット63に固定されていないときに、第1側部ブラケット47及び第2側部ブラケット63にコネクタブラケット75を仮支持することが可能な仮支持部である傾斜支持部51(支持端面51a)、傾斜支持部67(支持端面67a)、第1被支持部90a、第2被支持部91a、第1傾斜被支持部93及び第2傾斜被支持部94を備える。そのため第1側部ブラケット47及び第2側部ブラケット63にコネクタブラケット75が仮支持されているとき、作業者は手でコネクタブラケット75を支持する必要がない。そのため作業者は両手を用いてリベットガン98へのリベット装填作業を実行できる。
【0048】
さらにリベット99Aによって第1側部ブラケット47とコネクタブラケット75の相対位置が図10の状態に仮保持された状態で、係止部81の下面が位置決め溝54の底部54aと微小隙間を形成しながら対向するか又は係止部81の下面が底部54aに接触した場合は、作業者が手をコネクタブラケット75から離しても、コネクタブラケット75のリベット孔87と第2側部ブラケット63のリベット孔69が前後方向に対向し、且つ、第1側部ブラケット47の第2リベット孔57とコネクタブラケット75の第2リベット孔84が実質的に同心をなす。そのため作業者は、コネクタブラケット75から手を離した状態で、手で把持したリベットガン98を利用して、第2側部ブラケット63のリベット孔69とコネクタブラケット75のリベット孔87にリベット99Bを打ち込める。そのため作業者は、コネクタブラケット75のリベット孔87及び第2側部ブラケット63のリベット孔69へのリベット99Bの打ち込み作業を容易に実行できる。
【0049】
さらに第1側部ブラケット47の第2リベット孔57がコネクタブラケット75の第2リベット孔84より内周側に位置する状態で第2リベット孔57と第2リベット孔84が実質的に同心をなす。そのため作業者は、第1側部ブラケット47の第2リベット孔57及びコネクタブラケット75の第2リベット孔84の周縁部を目視できる。そのため作業者は、コネクタブラケット75から手を離した状態で、手で把持したリベットガン98を利用して、第1側部ブラケット47の第2リベット孔57とコネクタブラケット75の第2リベット孔84へのリベット99Cの打ち込み作業を極めて容易に実行できる。
【0050】
このように本実施形態の車両用シート20は、作業者によるリベットガン98を用いた第1側部ブラケット47、第2側部ブラケット63及びコネクタブラケット75のリベット締結作業を容易化できる。
【0051】
さらに仮支持部が、傾斜支持部51(支持端面51a)、傾斜支持部67(支持端面67a)、第1被支持部90a、第2被支持部91a、第1傾斜被支持部93及び第2傾斜被支持部94を備える簡単な構成により実現されている。そのため仮支持部を備えることによりシートクッション39の製造コストが大幅に高くなるおそれが小さい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0053】
例えば、左側のライザー23に第2側部ブラケット63を固定し、右側のライザー23に第1側部ブラケット47を固定してもよい。
【0054】
第1側部ブラケット47及び第2側部ブラケット63がライザー23とは異なるシート構成部材(支持部材)に固定されてもよい。
【0055】
リベット99Aを第1リベット孔83と第1リベット孔56に打ち込んだ後に、リベット99Cをコネクタブラケット75の第2リベット孔84と第1側部ブラケット47の第2リベット孔57に打ち込み、その後にリベット99Bをコネクタブラケット75のリベット孔87及び第2側部ブラケット63のリベット孔69に打ち込んでもよい。
【0056】
第1側部ブラケット47とコネクタブラケット75を固定するためのリベット孔が、基準孔である第1リベット孔56及び第1リベット孔83のみであり、1個のリベットを第1リベット孔56及び第1リベット孔83に挿入することにより、第1側部ブラケット47とコネクタブラケット75を固定してもよい。この場合、第2側部ブラケット63とコネクタブラケット75のそれぞれに2個以上のリベット孔を設け、2個以上のリベットを用いて第2側部ブラケット63とコネクタブラケット75を固定してもよい。
【0057】
第1側部ブラケット47、第2側部ブラケット63及びコネクタブラケット75を、2個又は4個以上のリベットを用いて固定してもよい。例えば、第1側部ブラケット47とコネクタブラケット75を1個のリベットを用いて固定し、第2側部ブラケット63とコネクタブラケット75を1個のリベットを用いて固定してもよい。また、第1側部ブラケット47とコネクタブラケット75を2個以上のリベットを用いて固定し、第2側部ブラケット63とコネクタブラケット75を2個以上のリベットを用いて固定してもよい。
【符号の説明】
【0058】
20 車両用シート
23 ライザー(支持部材)
43 コネクタ
47 第1側部ブラケット(側部構成部)
51 傾斜支持部(仮支持部)(第1支持部)
51a 支持端面(仮支持部)(第2支持部)
63 第2側部ブラケット(側部構成部)
67 傾斜支持部(仮支持部)(第1支持部)
67a 支持端面(仮支持部)(第2支持部)
75 コネクタブラケット(中央構成部)
90a 第1被支持部(仮支持部)(第2被支持部)
91a 第2被支持部(仮支持部)(第2被支持部)
93 第1傾斜被支持部(仮支持部)(第1被支持部)
94 第2傾斜被支持部(仮支持部)(第1被支持部)
97 治具
99A 99B 99C リベット
図1
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