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  • 特開-診断装置、診断方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025057967
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】診断装置、診断方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/346 20210101AFI20250402BHJP
【FI】
A61B5/346
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023167832
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 興造
(72)【発明者】
【氏名】濱上 知樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦士
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚汰
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127GG13
4C127GG16
(57)【要約】
【課題】誘導の種類が特定されていない心電図画像からでも心筋梗塞の発生部位を推定可能にする。
【解決手段】被検者が心筋梗塞を有するかどうかを診断するための診断装置は、被検者の複数の心電図画像に基づく第1のデータを誘導推定モデルに入力することによって、複数の心電図画像のそれぞれの誘導の種類を推定する誘導推定部と、複数の心電図画像のうち特定の種類の誘導であると推定された1つ以上の心電図画像に基づく第2のデータを梗塞推定モデルに入力することによって、特定の部位において心筋梗塞が発生しているかどうかを推定する梗塞推定部と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者が心筋梗塞を有するかどうかを診断するための診断装置であって、
前記被検者の複数の心電図画像に基づく第1のデータを誘導推定モデルに入力することによって、前記複数の心電図画像のそれぞれの誘導の種類を推定する誘導推定手段と、
前記複数の心電図画像のうち特定の種類の誘導であると推定された1つ以上の心電図画像に基づく第2のデータを梗塞推定モデルに入力することによって、特定の部位において心筋梗塞が発生しているかどうかを推定する梗塞推定手段と、を備える診断装置。
【請求項2】
前記梗塞推定手段は、前記特定の種類が2種類以上である場合に、前記特定の種類の誘導であると推定された2つ以上の心電図画像を重ねることによって前記第2のデータを生成する、請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記梗塞推定手段は、複数の部位のそれぞれにおいて心筋梗塞が発生しているかどうかを推定し、
前記梗塞推定手段は、前記複数の部位のそれぞれについて個別のモデルを使用する、請求項1に記載の診断装置。
【請求項4】
前記複数の心電図画像のうち前記誘導推定手段による推定の根拠となる部分を示す画像を生成する生成手段を更に備える、請求項1に記載の診断装置。
【請求項5】
前記1つ以上の心電図画像のうち前記梗塞推定手段による推定の根拠となる部分を示す画像を生成する生成手段を更に備える、請求項1に記載の診断装置。
【請求項6】
前記誘導推定モデルは、畳み込みニューラルネットワークを含む、請求項1に記載の診断装置。
【請求項7】
前記梗塞推定モデルは、畳み込みニューラルネットワークを含む、請求項1に記載の診断装置。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の診断装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
被検者が心筋梗塞を有するかどうかを診断するための診断方法であって、
誘導推定手段が、前記被検者の複数の心電図画像に基づく第1のデータを誘導推定モデルに入力することによって、前記複数の心電図画像のそれぞれの誘導の種類を推定する誘導推定工程と、
梗塞推定手段が、前記複数の心電図画像のうち特定の種類の誘導であると推定された1つ以上の心電図画像に基づく第2のデータを梗塞推定モデルに入力することによって、特定の部位において心筋梗塞が発生しているかどうかを推定する梗塞推定工程と、を有する診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置、診断方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、AI技術の実用化が急速に進み、心電図波形を時系列データまたは画像として取扱い、機械学習や深層学習のモデルを用いて自動解析する手法が提案されている。特許文献1には、心電図における複数種の波形情報と誘導間の関係を効率的に深層学習させることを可能とする心電図解析用データの生成手法が提案されている。特許文献2には、波形画像領域及びリズム画像領域を有する2次元画像を表すデータを心電図解析用データとして生成する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-130772号公報
【特許文献2】特開2022-054202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存の手法では、入力データとして使用される心電図画像の各波形が誘導の種類が特定されている。しかし、心筋梗塞の診断に使用される心電図画像のすべてに誘導の種類が特定されているとは限らない。本発明の一部の側面は、誘導の種類が特定されていない心電図画像からでも心筋梗塞の発生部位を推定可能にするための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一部の実施形態によれば、被検者が心筋梗塞を有するかどうかを診断するための診断装置であって、前記被検者の複数の心電図画像に基づく第1のデータを誘導推定モデルに入力することによって、前記複数の心電図画像のそれぞれの誘導の種類を推定する誘導推定手段と、前記複数の心電図画像のうち特定の種類の誘導であると推定された1つ以上の心電図画像に基づく第2のデータを梗塞推定モデルに入力することによって、特定の部位において心筋梗塞が発生しているかどうかを推定する梗塞推定手段と、を備える診断装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一部の実施形態によれば、誘導の種類が特定されていない心電図画像からでも心筋梗塞の発生部位を推定可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一部の実施形態に係る診断装置のハードウェア構成例を説明するブロック図。
図2】一部の実施形態に係る診断装置の動作例を説明するフロー図。
図3】一部の実施形態に係る診断装置の動作例を説明する模式図。
図4】一部の実施形態に係る誘導推定モデル例を説明する模式図。
図5】一部の実施形態に係る梗塞推定モデル例を説明する模式図。
図6】一部の実施形態に係る推定根拠を説明する画像を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1を参照して、一部の実施形態に係る診断装置100の構成について説明する。後述するように、診断装置100は、被検者の心電図画像に基づいて、被検者が心筋梗塞を有するかどうかを診断する機能を有してもよい。さらに、診断装置100は、被検者が心臓のどの部位に心筋梗塞を有するかを診断する機能を有してもよい。心電図画像とは、心電計によって計測された波形を表す画像のことであってもよい。
【0010】
診断装置100は、図1に示す構成要素を備えてもよい。プロセッサ101は、診断装置100の全体的な動作を制御する装置である。プロセッサ101は、例えばCPU(中央処理装置)として機能する。メモリ102は、診断装置100の動作に必要なプログラム及び一時データを記憶する装置である。メモリ102は、例えばRAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリメモリ)によって構成される。診断装置100の動作は、例えばメモリ102に格納されたプログラムをプロセッサ101が実行することによって行われてもよい。これにかえて、診断装置100の動作の一部又は全部は、ASIC(特定用途向け集積回路)やFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)のような専用回路によって実行されてもよい。さらに、プロセッサ101は、GPU(グラフィカルプロセッシングユニット)を含んでもよい。
【0011】
入力装置103は、診断装置100のユーザ(例えば、医師。以下、診断装置100のユーザを単にユーザと表す)からの入力を取得するための装置である。入力装置103は、例えばキーボードやマウスによって構成される。出力装置104は、ユーザへの出力を行うための装置である。出力装置104は、例えばディスプレイやスピーカによって構成される。
【0012】
通信装置105は、診断装置100が他の装置と通信するための装置である。他の装置は、ネットワーク(例えば、インターネットやローカルエリアネットワーク)に接続されたコンピュータであってもよい。例えば、通信装置105は、他の装置(例えば、心電計や画像サーバ)から解析対象の心電図画像を取得するために使用されてもよい。
【0013】
記憶装置106は、診断装置100の動作に使用されるデータを記憶する装置である。記憶装置106は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)又はDVD(デジタル多目的ディスク)のような記憶媒体によって構成される。記憶装置106は、心筋梗塞の診断に使用される学習済みモデルを記憶してもよい。
【0014】
図2図6を参照して、被検者が心筋梗塞を有するかどうかを診断するための動作例について説明する。図2は動作の全体的な流れを説明し、図3図6は動作の詳細について説明する。図2に示される方法は、ユーザが診断の開始を診断装置100に指示することをよって開始されてもよい。
【0015】
図2の動作の開始時点で、診断装置100は、誘導推定モデル310及び梗塞推定モデル320(図3)を使用可能であってもよい。例えば、これらのモデルは、記憶装置106に記憶されていてもよいし、外部の装置から受信可能であってもよい。
【0016】
誘導推定モデル310とは、心電図画像の誘導の種類を推定するために使用されるモデルのことであってもよい。誘導推定モデル310は、機械学習によって生成されてもよい。図3に示されるように、誘導推定モデル310は、特徴検出器311と、分類器312とを含んでもよいし、他の構成を有してもよい。特徴検出器311は、誘導推定モデル310に入力された心電図画像から特徴を検出する。特徴検出器311は、ニューラルネットワークによって構成されてもよい。さらに、特徴検出器311は、畳み込みニューラルによって構成されてもよい。分類器312は、心電図画像から検出された特徴に基づいて、この心電図画像の誘導の種類を分類する。分類器312は、勾配ブーストを用いた決定木(例えば、XGboost)によって構成されてもよい。
【0017】
診断装置100は、どのようにして誘導推定モデル310を取得してもよい。例えば、診断装置100は、自ら機械学習を実行することによって、誘導推定モデル310を生成してもよい。これに代えて、診断装置100は、診断装置100とは異なる装置が機械学習を実行することによって生成した誘導推定モデル310を、この装置から取得してもよい。
【0018】
図4を参照して、特徴検出器311の生成方法について説明する。以下の例では、診断装置100が特徴検出器311を生成する場合について説明するが、上述のように他の装置が特徴検出器311を生成してもよい。
【0019】
診断装置100は、モデル400を学習させてもよい。モデル400は、図4に示されるように、入力層、複数の畳み込み層、複数のプーリング層、複数の全結合層、出力層を含む。モデル400の一部の層について、カッコ内に入力データのサイズを示す。例えば、入力層には、3×112×224のサイズを有する心電図画像403(テンソルデータ)が入力される。最初の次元(「3」)は、心電図画像403のチャンネル数(例えば、RGBで表される色空間)を示し、次の次元(「112」)は、心電図画像403の高さを表し、最後の次元(「224」)は、心電図画像403の幅を表してもよい。すなわち、モデル400に入力される心電図画像403は、112×224に配列された画素を有しており、各画素において3つチャンネルごとに画素値を有する。出力層から12個の要素を含むベクトルデータが出力される。12個の要素のそれぞれは、心電図画像403が12誘導心電図の特定の誘導である確率を表す。
【0020】
診断装置100は、正解ラベル(誘導の種類)が付された心電図画像を使用してモデル400を学習させる。例えば、診断装置100は、損失関数として交差エントロピー誤差を使用し、最適化手法としてAdamを使用してもよい。診断装置100は、学習終了後に、モデル400のうち前段の部分401を特徴検出器311として使用してもよい。部分401は、畳み込みニューラルネットワークを含む。
【0021】
梗塞推定モデル320とは、特定の部位において心筋梗塞が発生しているかどうかを推定するために使用されるモデルのことであってもよい。梗塞推定モデル320は、機械学習によって生成されてもよい。図3に示されるように、梗塞推定モデル320は、複数の部位診断器321a~321mと、総合判定器323とを含んでもよいし、他の構成を有してもよい。複数の部位診断器321a~321mを総称して部位診断器321と表す。部位診断器321についての説明は、複数の部位診断器321a~321mの何れに適用されてもよい。
【0022】
部位診断器321は、特定の種類の誘導である1つ以上の心電図画像に基づいて、心臓の特定の部位において心筋梗塞が発生しているかどうかを推定する。複数の部位診断器321a~321mによって心筋梗塞の発生が推定される部位は、互いに異なっていてもよい。例えば、部位診断器321aは、心臓の前壁における心筋梗塞の発生を推定してもよい。部位診断器321mは、心臓の下壁における心筋梗塞の発生を推定してもよい。このように、梗塞推定モデル320は、複数の部位のそれぞれについて個別のモデルを使用してもよい。部位診断器321は、ニューラルネットワークによって構成されてもよい。さらに、部位診断器321は、畳み込みニューラルによって構成されてもよい。総合判定器323は、複数の部位診断器321a~321mによる推定結果を統合し、診断結果として出力する。
【0023】
診断装置100は、どのようにして梗塞推定モデル320を取得してもよい。例えば、診断装置100は、自ら機械学習を実行することによって、梗塞推定モデル320を生成してもよい。これに代えて、診断装置100は、診断装置100とは異なる装置が機械学習を実行することによって生成した梗塞推定モデル320を、この装置から取得してもよい。
【0024】
図5を参照して、部位診断器321の生成方法について説明する。以下の例では、診断装置100が部位診断器321を生成する場合について説明するが、上述のように他の装置が部位診断器321を生成してもよい。
【0025】
診断装置100は、モデル500を学習させてもよい。モデル500は、図5に示されるように、入力層、複数の畳み込み層、複数のプーリング層、複数の全結合層、出力層を含む。モデル500の一部の層について、カッコ内に入力データのサイズを示す。例えば、入力層には、3×112×224のサイズを有する合成心電図画像502(テンソルデータ)が入力される。合成心電図画像502のデータ構造については心電図画像403と同じであってもよいため、重複する説明を省略する。
【0026】
診断装置100は、特定の部位における心筋梗塞の発生に使用される2種類以上の(図5の例では3種類)の誘導の心電図画像501a~501cを重ねることによって合成心電図画像502を生成してもよい。心電図画像501a~501cのそれぞれは、合成心電図画像502と同じデータ構造を有してもよく、複数の心電図画像501a~501cを要素ごとに加算又は平均することによって、合成心電図画像502が生成されてもよい。このようにして生成された合成心電図画像502をモデル500の入力とすることによって、複数の心電図画像501a~501cにおいて同じ時刻に測定された波形の値を空間的に近づけることが可能となる。その結果、モデル500の学習精度が向上する。出力層から2個の要素を含むベクトルデータが出力される。2個の要素のそれぞれは、特定の部位において心筋梗塞が発生しているかいないかを表す。
【0027】
診断装置100は、正解ラベル(心筋梗塞の有無)が付された合成心電図画像を使用してモデル500を学習させる。例えば、診断装置100は、損失関数として交差エントロピー誤差を使用し、最適化手法としてAdamを使用してもよい。診断装置100は、学習終了後に、モデル500を部位診断器321として使用してもよい。モデル500は、畳み込みニューラルネットワークを含む。診断装置100は、複数の部位診断器321a~321mのそれぞれについて、別個にモデル500を学習させてもよい。
【0028】
S201で、診断装置100は、心筋梗塞の診断対象の被検者の心電図画像セット300(図3)を取得する。ある被検者の心電図画像セット300とは、この被検者について同じ時間に測定された心電図波形を表す複数の心電図画像301a~301nによって構成される集合のことであってもよい。複数の心電図画像301a~301nを総称して心電図画像301と表す。心電図画像301についての説明は、複数の心電図画像301a~301nの何れに適用されてもよい。
【0029】
心筋梗塞の診断対象の被検者が複数存在する場合に、診断装置100は、被検者ごとに、S201~S204の工程を実行してもよい。心電図画像セット300は、どのように特定されてもよい。例えば、ユーザは、心電図画像セット300を明示的に指定してもよい。例えば、ユーザは、心電図画像セット300が記憶されているフォルダのパスを診断装置100の入力装置103に入力してもよい。これに代えて、ユーザは、心電図画像セット300を特定するための情報を用いて心電図画像セット300を指定してもよい。例えば、ユーザは、心電図検査が行われた検査のIDを診断装置100の入力装置103に入力してもよい。
【0030】
心電図画像301は、どのように生成された画像であってもよい。例えば、心電図画像301は、心電計から出力された画像であってもよい。これに代えて、心電図画像301は、心電図波形が記録された紙をカメラやスキャナで画像化したものであってもよい。これに代えて、心電図画像301は、心電計のディスプレイに表示された心電図波形をカメラで画像化したものであってもよい。
【0031】
心電図画像301が示す波形は、どのような手法で生成された波形であってもよい。例えば、心電図画像301が示す波形は、標準12誘導心電図の何れかの波形であってもよいし、導出18誘導心電図の何れかの波形であってもよい。1つの心電図画像セット300は、特定の手法の心電図のすべての誘導についての波形の画像を含んでいてもよいし、特定の手法の心電図の一部の誘導についての波形の画像を含まなくてもよい。さらに、心電図画像301は、どの誘導によって得られた波形を表すかが不明であってもよい。
【0032】
診断装置100は、複数の心電図波形を含む1つの画像が指定された場合に、この1つの画像を分割することによって、それぞれが1つの心電図波形を含む複数の心電図画像を生成してもよい。
【0033】
S202で、診断装置100は、複数の心電図画像301a~301nに基づくデータを誘導推定モデル310に入力することによって、複数の心電図画像301a~301nのそれぞれの誘導の種類を推定する。例えば、診断装置100は、心電図画像301aを誘導推定モデル310に入力することによって、心電図画像301aの誘導の種類がII誘導であることを推定してもよい。
【0034】
S203で、診断装置100は、複数の心電図画像301a~301nのうち特定の種類の誘導であると推定された1つ以上の心電図画像に基づくデータを梗塞推定モデル320に入力することによって、特定の部位において心筋梗塞が発生しているかどうかを推定する。このステップにおいて、診断装置100は、複数の部位のそれぞれにおいて心筋梗塞が発生しているかどうかを推定してもよい。図5を参照して上述したように、診断装置100は、特定の種類が2種類以上である場合に、特定の種類の誘導であると推定された2つ以上の心電図画像を重ねることによって入力データを生成してもよい。
【0035】
例えば、部位診断器321aは、入力データとして、II誘導であると推定された心電図画像301aと、I誘導であると推定された心電図画像301bとを使用することによって、心臓の前壁における心筋梗塞の発生を推定してもよい。部位診断器321mは、入力データとして、II誘導であると推定された心電図画像301aと、I誘導であると推定された心電図画像301bと、aVR誘導であると推定された心電図画像301nとを使用することによって、心臓の下壁における心筋梗塞の発生を推定してもよい。このように、入力データとして使用される誘導の種類は、推定対象の部位ごとに異なってもよい。部位診断器321a~321mのそれぞれが何れの種類の誘導を使用するかは事前に設定され、記憶装置106に記憶されていてもよい。これに代えて、図2の動作の開始時にユーザによって指定されてもよい。
【0036】
心電図画像セット300によっては、特定の誘導の心電図画像が含まれない場合がある。例えば、心電図画像セット300がIII誘導の心電図画像を含まないとする。この場合に、診断装置100は、III誘導の心電図画像を使用する部位についての心筋梗塞の発生を推定しなくてもよい。さらに、診断装置100は、特定の心電図画像(この例では、III誘導の心電図画像)を含まなかったため、特定の部位について心筋梗塞の発生を推定できなかったことをユーザに通知してもよい。
【0037】
S204で、診断装置100は、S203の推定結果をユーザに向けて表示する。例えば、診断装置100は、心臓の特定の部位(例えば、前壁、下壁など)で心筋梗塞が発生していると推定したならば、この特定の部位で心筋梗塞が発生していることをユーザに向けて表示してもよい。これに代えて、診断装置100は、心臓の何れの部位においても心筋梗塞が発生していないと推定したならば、被検者の心臓が正常であることをユーザに向けて表示してもよい。診断装置100は、S203の推定結果を、出力装置104に表示してもよいし、他のようにして出力してもよい。例えば、診断装置100は、S203の推定結果を、後から参照可能なように記憶装置106に記憶してもよいし、他の装置へ送信してもよい。
【0038】
S205で、診断装置100は、診断対象の複数の心電図画像のうちS203の推定の根拠となる部分を示す画像600(図6)を生成し、画像600をユーザに向けて表示してもよい。例えば、診断装置100は、心電図画像セット300のそれぞれの心電図画像301について、クラス活性化マッピング(CAM)手法(例えば、Grad-cam)を使用してS202の推定におけるヒートマップを生成し、このヒートマップを心電図画像301に重ねてもよい。これによって、ユーザは、心電図画像のどの部分に基づいて推定が行われたかを認識できる。
【0039】
診断装置100は、梗塞の推定に使用された1つ以上の心電図画像のうちS204の推定の根拠となる部分を示す画像601(図6)を生成し、画像601をユーザに向けて表示してもよい。例えば、診断装置100は、クラス活性化マッピング(CAM)手法(例えば、Grad-cam)を使用してS203の推定におけるヒートマップを生成し、このヒートマップを、特定の部位の推定に使用された1つ以上の心電図画像の何れかに重ねてもよい。これによって、ユーザは、心電図画像のどの部分に基づいて推定が行われたかを認識できる。
【0040】
上述の方法によれば、誘導の種類が特定されていない心電図画像からでも心筋梗塞の発生部位を推定可能になる。
【符号の説明】
【0041】
100 診断装置、310 誘導推定モデル、320 梗塞推定モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6