(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005798
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】走行システム
(51)【国際特許分類】
B62D 53/00 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B62D53/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106174
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】山中 之史
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】吉井 嘉一郎
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 悠平
(72)【発明者】
【氏名】陣内 克俊
(72)【発明者】
【氏名】仁木 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山岸 亮太
(57)【要約】
【課題】構成が複雑化したり、走行管理等が行い難くなる等の不利の無い状態で作業効率を向上することが可能な走行システムが要望されていた。
【解決手段】複数の作業装置を備えた走行システムにおいて、第1作業装置W1と、第1作業装置W1と分離された第2作業装置W2と、第1作業装置W1と第2作業装置W2とを接続するとともに、第1作業装置W1の動作に基づいて第2作業装置W2を作動させる接続体Tと、が備えられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業装置を備えた走行システムであって、
第1作業装置と、前記第1作業装置と分離された第2作業装置と、前記第1作業装置と前記第2作業装置とを接続する接続体と、が備えられている走行システム。
【請求項2】
前記第2作業装置は、当該第2作業装置の走行の操作を行う操作レバーを含み、
前記接続体は、前記操作レバーと前記第1作業装置を接続する請求項1に記載の走行システム。
【請求項3】
前記第1作業装置は、車両本体と、前記車両本体を走行させる走行装置を備え、
前記接続体は、前記第2作業装置の前記操作レバーと前記車両本体を接続する請求項2に記載の走行システム。
【請求項4】
前記第1作業装置及び前記第2作業装置の夫々に、
前記走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動源と、が備えられ、
前記第1作業装置及び前記第2作業装置のうちの少なくとも前記第2作業装置に、前記操作レバーが備えられ、
前記接続体は、先行して走行する前記第1作業装置の走行動作に基づいて前記操作レバーを操作する請求項3に記載の走行システム。
【請求項5】
前記第1作業装置の走行に伴う前記接続体の引き操作により、前記操作レバーが前後方向に揺動すると、前記第2作業装置が前記操作レバーの揺動方向に応じた方向に直進走行するように複数の前記走行装置が作動する請求項4に記載の走行システム。
【請求項6】
前記走行装置の向きを変更可能な操舵機構を備え、
前記第1作業装置の走行に伴う前記接続体の引き操作により、前記操作レバーが左側又は右側に揺動すると車体が前記操作レバーの揺動方向に応じた方向に旋回走行するように、前記走行装置及び前記操舵機構が作動する請求項4又は5に記載の走行システム。
【請求項7】
前記接続体が、前記第1作業装置における前記走行装置及び前記操舵機構の作動状態を前記第2作業装置に伝えるように構成され、
前記第2作業装置は、前記接続体を介して伝えられる前記第1作業装置の作動状態に基づいて、前記走行装置及び前記操舵機構の作動状態を修正する請求項6に記載の走行システム。
【請求項8】
前記第2作業装置に、油圧駆動式の走行装置が備えられ、
前記第1作業装置に、作動油を排出供給可能な油圧供給源が備えられ、
前記接続体は、前記第1作業装置の動作に基づいて前記作動油を供給することにより前記第2作業装置を作動させる請求項1に記載の走行システム。
【請求項9】
前記第2作業装置に、荷物を積載可能な荷物載置部と、前記荷物載置部を水平姿勢に維持しながら荷物を載置した状態で移動走行可能に支持する支持機構と、が備えられている請求項8に記載の走行システム。
【請求項10】
前記第2作業装置は、前記第1作業装置に備えられた前記油圧供給源を装着並びに取り外し可能に構成され、
前記接続体は、前記第2作業装置から前記油圧供給源が取り外されているときに、前記第2作業装置と前記油圧供給源を接続している請求項8に記載の走行システム。
【請求項11】
前記第2作業装置が複数備えられ、
前記第1作業装置は、複数の前記第2作業装置の夫々に対して前記作動油の供給を行う請求項8から10のいずれか一項に記載の走行システム。
【請求項12】
前記第1作業装置が、前記第2作業装置の移動走行に伴って追従して移動可能である請求項8から10のいずれか一項に記載の走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば傾斜地や凹凸のある不整地等を移動するのに適した走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、車両本体に対して伸縮操作可能な支持機構を介して4つの走行車輪が支持され、走行車輪の高さを変更させることにより、傾斜地等であっても車両本体の姿勢を維持しながら走行可能な作業車が、作業車単体で走行する構成となっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、作業車に支持機構や走行車輪を駆動するための駆動用構成を備えて作業車が単独で走行するものであるから、作業車の構成が複雑になるとともに、大重量化するものとなる。そして、例えば、作業効率を向上するために複数の作業車を用いるような場合であれば、作業車単体を夫々各別に走行管理しながら走行させなければならず、走行管理が煩わしいものとなり、作業効率が向上できないおそれがあった。又、構成が複雑で大型の作業車を複数用意しなければならず、荷物を積載するような場合であれば、一台毎の積載重量が抑制されてしまい、全体として作業効率が向上できないおそれがあった。
【0005】
そこで、構成が複雑化したり走行管理等が行い難くなる等の不利の無い状態で作業効率を向上することが可能な走行システムが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴構成は、複数の作業装置を備えた走行システムであって、第1作業装置と、前記第1作業装置と分離された第2作業装置と、前記第1作業装置と前記第2作業装置とを接続する接続体と、が備えられている点にある。
【0007】
本発明によれば、第1作業装置と第2作業装置とが接続体によって接続される。このように複数の作業装置を接続して連なって走行することで作業能率の向上を図ることが可能である。そして、接続体によって接続することで、第1作業装置の動作に基づいて第2作業装置を作動させることが可能である。
【0008】
その結果、例えば、第2作業装置の走行状態を第1作業装置側で管理するようにすることでシステム全体としての走行管理の煩わしさを解消することが可能となる。又、第2作業装置においては、第1作業装置の動作に基づいて行われる作動を司るための装置や部材を省くことが可能であり、構成の簡素化が可能となる。
【0009】
その結果、構成が複雑化したり走行管理等が行い難くなる等の不利の無い状態で作業効率を向上することが可能な走行システムを提供できるに至った。
【0010】
本発明においては、前記第2作業装置は、当該第2作業装置の走行の操作を行う操作レバーを含み、前記接続体は、前記操作レバーと前記第1作業装置を接続すると好適である。
【0011】
本構成によれば、例えば、第1作業装置側から第2作業装置の操作レバーを操作することで第2作業装置の走行状態を管理することが可能となる。又、接続体としては、操作レバーを操作するという簡単な構成で対応できる。
【0012】
本発明においては、前記第1作業装置は、車両本体と、前記車両本体を走行させる走行装置を備え、前記接続体は、前記第2作業装置の前記操作レバーと前記車両本体を接続すると好適である。
【0013】
第1作業装置は、自車が走行することにより接続体を介して操作レバーを操作することができるので、接続体としては、操作レバーを引き操作するだけの簡素な構成で対応できる。
【0014】
本発明においては、前記第1作業装置及び前記第2作業装置の夫々に、前記走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動源と、が備えられ、前記第1作業装置及び前記第2作業装置のうちの少なくとも前記第2作業装置に、前記操作レバーが備えられ、前記接続体は、先行して走行する前記第1作業装置の走行動作に基づいて前記操作レバーを操作すると好適である。
【0015】
本構成によれば、第1作業装置及び第2作業装置の夫々が、駆動源が走行装置を駆動することによって自走することができ、先行して走行する第1作業装置が接続体を介して操作レバーを操作することで、第1作業装置に追従しながら第2作業装置を走行させる等の走行管理が容易に行える。
【0016】
本発明においては、前記第1作業装置の走行に伴う前記接続体の引き操作により、前記操作レバーが前後方向に揺動すると、前記第2作業装置が前記操作レバーの揺動方向に応じた方向に直進走行するように、複数の前記走行装置の作動を制御すると好適である。
【0017】
本構成によれば、接続体を介して操作レバーを引き操作するという簡単な構成により、第2作業装置を直進走行させることができる。
【0018】
本発明においては、前記走行装置の向きを変更可能な操舵機構を備え、前記第1作業装置の走行に伴う前記接続体の引き操作により、前記操作レバーが左側又は右側に揺動すると車体が前記操作レバーの揺動方向に応じた方向に旋回走行するように、複数の前記走行装置及び前記操舵機構が作動すると好適である。
【0019】
本構成によれば、接続体を介して操作レバーを引き操作するという簡単な構成により、第2作業装置を旋回走行させることができる。
【0020】
本発明においては、前記接続体が、前記第1作業装置における複数の前記走行装置及び前記支持機構の作動状態を前記第2作業装置に伝えるように構成され、前記第2作業装置は、前記接続体を介して伝えられる前記第1作業装置の作動状態に基づいて、前記走行装置及び前記操舵機構の作動状態を修正すると好適である。
【0021】
本構成によれば、接続体を介して第1作業装置の作動状態、例えば、走行速度や旋回方向等の作動状態が第2作業装置に伝えられる。そして、第2作業装置側では、伝えられる作動状態に応じて自己の走行状態を修正することができる。その結果、例えば、障害物によって第1作業装置の走行動作が良好に伝わらない場合には、第2走行装置を停止させたり、減速させる等の対策をとることが可能となる。
【0022】
本発明においては、前記第2作業装置に、油圧駆動式の複数の走行装置が備えられ、前記第1作業装置に、作動油を排出供給可能な油圧供給源が備えられ、前記接続体は、前記第1作業装置の動作に基づいて前記作動油を供給することにより前記第2作業装置を作動させると好適である。
【0023】
本構成によれば、第1作業装置に備えられた油圧供給源により第2作業装置に対して作動油が供給される。第2作業装置は作動油により複数の走行装置が駆動される。
【0024】
第2作業装置は、油圧駆動式の走行装置を良好に駆動させることが可能であり、しかも、油圧ポンプや駆動装置等を備えなくてもよく、構成が簡素化できかつ軽量化することが可能である。
【0025】
本発明においては、前記第2作業装置に、荷物を積載可能な荷物載置部と、前記荷物載置部を水平姿勢に維持しながら荷物を載置した状態で移動走行可能に支持する支持機構と、備えられていると好適である。
【0026】
本構成によれば、第2作業装置が軽量化できることから、荷物載置部にて良好に荷物を積載して移動することができるとともに、積載可能な荷物の積載量を増やすことができ、作業能率が向上する。
【0027】
本発明においては、前記第2作業装置は、前記第1作業装置に備えられた前記油圧供給源を装着並びに取り外し可能に構成され、前記接続体は、前記第2作業装置から前記油圧供給源が取り外されているときに、前記第2作業装置と前記油圧供給源を接続していると好適である。
【0028】
本構成によれば、第2作業装置は油圧機構源を装着した状態で移動走行する状態と、油圧機構源を取り外して接続体により接続する状態とで、使い分け使用することができ、使用状況に応じて使い勝手が良いものにできる。
【0029】
本発明においては、前記第2作業装置が複数備えられ、前記第1作業装置は、複数の前記第2作業装置の夫々に対して前記作動油の供給を行うと好適である。
【0030】
本構成によれば、第1作業装置から複数の第2作業装置に対する作動油を供給することができるので、更なる作業能率の向上を図れる。
【0031】
本発明においては、前記第1作業装置が、前記第2作業装置の移動走行に伴って追従して移動可能であると好適である。
【0032】
本構成によれば、第1作業装置は、移動走行する第2作業装置に対して、追従して移動しながら作動油の供給を行えるので、作動油を供給するための接続体が短くなり簡素なものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図8】第2実施形態の走行システムの側面図である。
【
図12】別実施形態の走行システムの側面図である。
【
図13】別実施形態の走行システムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の走行システムの実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明においては、図中に示される矢印FWの方向を「前」、矢印BKの方向を「後」、矢印RHの方向を「右」、矢印LHの方向を「左」、矢印UPの方向を「上」、矢印DWの方向を「下」とする。
【0035】
〔第1実施形態〕
以下、第1実施形態を説明する。
【0036】
本発明に係る走行システムは、第1作業装置W1と、第1作業装置W1と分離された第2作業装置W2と、第1作業装置W1と第2作業装置W2とを接続する接続体Tと、が備えられている。
【0037】
この走行システムは、
図1に示すように、第1作業装置W1としての第1作業車SV1及び第2作業装置W2としての第2作業車SV2を備えている。第1作業車SV1と第2作業車SV2は同じ構成である。以下、第1作業車SV1について説明し、第2作業車SV2についての説明は省略する。
【0038】
(第1作業車)
図2~
図4に示すように、第1作業車SV1には、車両全体を支持する平面視で略矩形状の車両本体1と、車両本体1を支持する走行装置としての複数の走行車輪2と、複数の走行車輪2の夫々に対応して設けられた複数の補助車輪3と、複数の走行車輪2を車両本体1に対して位置変更可能に支持する支持機構Aと、複数の走行車輪2を各別に駆動する複数の油圧モータ4と、が備えられている。
【0039】
走行車輪2は、車両本体1の左右両側における前後夫々に位置する。本実施形態では、作業車は、左前、右前、左後、及び右後の4つの走行車輪2を備える。又、左前、右前、左後、及び右後の4つの支持機構Aを備える。支持機構Aは、車体支持部としての屈折リンク機構5と、屈折リンク機構5の姿勢を個別に変更可能な姿勢変更用アクチュエータとしての複数の油圧シリンダ6,7と、を備えている。
【0040】
車両本体1は、平面視で略矩形状であり、車両本体1の上面に、荷物を積載可能な平坦状の荷物載置部8が備えられている。荷物載置部8は、平面視で略矩形状に形成され、車両本体1の右端から左端に亘って延びている。荷物載置部8は、その上に荷物が載置可能なように構成されている。荷物載置部8に載置される荷物としては、例えば、農機具や、肥料、薬剤等の農業資材、収穫物や収穫カゴ、及びこれらが載置されたパレット等である。
【0041】
車両本体1には、荷物載置部8の下側において、油圧シリンダ6,7及び油圧モータ4に向けて作動油を送り出す駆動源としての油圧供給源9、及び、油圧供給源9からの作動油の供給状態を調整して油圧シリンダ6,7及び油圧モータ4の作動を制御する制御装置C、電源供給用のバッテリー11等が備えられている。
【0042】
油圧供給源9は、エンジン9a、エンジン9aによって駆動される油圧ポンプ9b、作動油タンク9c、エンジン9aの燃料を貯留する燃料タンク9d等を備えている。油圧供給源9は、アンダーフレーム10にて支持されている。燃料タンク9eは車両本体1の前側の高い位置に備えられている。バッテリー11は、エンジン9aの動力によって駆動される発電機により充電される。
【0043】
制御装置Cには、油圧供給源9からの作動油の供給状態を調整する油圧制御機構12、油圧制御機構12の作動を制御するECU(Electronic Control Unit)13等が備えられている。ECU13は、マイクロコンピュータを備えており、制御プログラムに従って種々の制御を実行可能である。油圧制御機構12には、各油圧機器(油圧シリンダ等)に対応して複数の制御弁が備えられている。
【0044】
上述したように、支持機構Aは、屈折リンク機構5と複数の油圧シリンダ6,7と、を備えている。
図1に示すように、4つの走行車輪2は、屈折リンク機構5を介して車両本体1に対して各別に昇降可能に支持されている。
【0045】
図5,
図6に示すように、屈折リンク機構5には、車両本体1に支持される基端部14と、上側端部が基端部14の下部に横軸芯X1周りで回動可能に支持された第一リンク15と、一端部が第一リンク15の下側端部に横軸芯X2周りで回動可能に支持され且つ他端部に走行車輪2が支持された第二リンク16と、が備えられている。
【0046】
走行車輪2を支持する支持ブラケット17が第二リンク16の揺動側端部に設けられたボス部18に縦軸芯Y周りで揺動可能に支持されている。第二リンク16の一端部側のブラケット19と、支持ブラケット17に設けられたアーム部17aとに亘って操舵機構としての旋回操作用の油圧シリンダ20(以下、旋回シリンダという)が備えられている。
【0047】
複数の屈折リンク機構5の夫々に対応して、屈折リンク機構5の姿勢を各別に変更可能な複数の油圧シリンダ6,7が備えられている。すなわち、車両本体1に対する第一リンク15の揺動姿勢を変更可能な第一油圧シリンダ6と、第一リンク15に対する第二リンク16の揺動姿勢を変更可能な第二油圧シリンダ7と、が備えられている。
【0048】
第二油圧シリンダ7の作動を停止した状態で第一油圧シリンダ6を伸縮操作すると、第一リンク15、第二リンク16及び走行車輪2の夫々が、相対的な姿勢を一定に維持したまま一体的に、基端部14に対する枢支連結箇所の横軸芯X1周りで揺動する。第一油圧シリンダ6の作動を停止した状態で第二油圧シリンダ7を伸縮操作すると、第一リンク15の姿勢が一定に維持されたまま、第二リンク16及び走行車輪2が、一体的に、第一リンク15と第二リンク16との連結箇所の横軸芯X2周りで揺動する。
【0049】
複数の屈折リンク機構5夫々の中間屈折部に回転可能に補助車輪3が支持されている。補助車輪3は走行車輪2よりも小径の車輪にて構成されている。第一リンク15と第二リンク16とを枢支連結する支軸が車体横幅方向外方側に突出するように延長形成され、支軸の延長突出箇所に補助車輪3が回動可能に支持されている。
【0050】
旋回シリンダ20の操作により、屈折リンク機構5に対して走行車輪2を縦軸芯Y周りで回動することにより旋回操作させることができる。
【0051】
上述した複数の第一油圧シリンダ6、複数の第二油圧シリンダ7、及び、旋回シリンダに対応する制御弁により作動油の給排が行われることで、車両本体に対する各走行車輪の位置を変更することができる。又、油圧モータ4に対応する制御弁により作動油の流量調整が行われることで、油圧モータ4の回転速度すなわち走行車輪2の回転速度を変更することができる。
【0052】
図7に示すように、4つの第二油圧シリンダ7の夫々について、ヘッド側圧力センサS1及びキャップ側圧力センサS2を備える。ヘッド側圧力センサS1は、第二油圧シリンダ7のヘッド側室の油室の内部圧力を検出する。キャップ側圧力センサS2は、第二油圧シリンダ7のキャップ側室の油室の内部圧力を検出する。
【0053】
4つの第一油圧シリンダ6及び4つの第二油圧シリンダ7の夫々について、伸縮操作量を検出可能な複数のストロークセンサS3を備える。各油圧シリンダ6,7の伸縮操作量は、操作対象である第一リンク15及び第二リンク16の揺動位置に対応する検出値である。
【0054】
車両本体1には車体の傾斜状態を検出する傾斜センサS4が備えられている。傾斜センサS4は、周知の構成である慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)(IMU)を用いて構成されている。IMUは、三軸加速度センサとジャイロセンサとを有し、車両本体1の姿勢変化状態、具体的には、前後方向並びに左右方向の傾きを検知することができる。
【0055】
走行車輪2の近傍には、油圧モータ4により駆動される走行車輪2の回転速度を検出する回転センサS5が備えられている。回転センサS5にて検出された走行車輪2の回転速度に基づいて、走行車輪2の回転速度が目標の値となるように、油圧モータ4への作動油の供給が制御される。油圧モータ4に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサS6が備えられている。圧力センサS6にて検出された作動油の圧力に基づいて、走行車輪2の駆動トルクが目標の値となるように、油圧モータ4への作動油の供給(圧力)が制御される。4つの旋回シリンダ20の夫々について、伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS7を備える。
【0056】
車両本体1における荷物載置部8の後方に運転操作部21が備えられている。運転操作部21は車両の外方からオペレータが手動操作可能である。車両の運転操作は、運転操作部21によるオペレータの操作によって行うことができる。又、車両の運転操作は、運転操作部21の操作以外に、無線操作式のリモコン装置RCによる遠隔操作によっても行うことが可能である。
【0057】
運転操作部21は、支持フレーム22によって支持されている。支持フレーム22は、左右両側に位置しており、車両本体1の後端部から後方に向けて片持ち状に延設されている。左右の支持フレーム22に亘る略矩形箱状の収納ケース23が備えられている。
【0058】
支持フレーム22の後端部には、オペレータが車体外方側から手動で握り操作可能なハンドル部24が固定状態で備えられている。ハンドル部24は、丸パイプ材を正面視でループ状に曲げて形成されている。オペレータは、片側の手でハンドル部24を握り操作しながら車両を支えるとともに、他方の手で後述するスイッチ類を操作することができる。
【0059】
収納ケース23の後端部には後下がり傾斜姿勢の操作パネル25が備えられている。操作パネル25は、複数の操作スイッチを備え、車両が走行するときの各種のモードを切り換える機能等を有する。
【0060】
収納ケース23の前後中間部の上側には、車両の移動を指令する操作レバー29が備えられている。操作レバー29は、上下方向に延びる棒状の部材にて構成されている。操作レバー29は、所謂、ジョイスティック型の操作具であり、直立状態で位置する中立位置から前後方向並びに左右方向の夫々に揺動操作可能に支持されている。操作レバー29は、図示しないバネにより中立位置に戻るように復帰付勢されている。従って、操作者が手を離すと、操作レバー29は中立位置に戻り、車両の移動は停止する。
【0061】
図6に示すように、操作レバー29の基端部には、操作レバー29の中立位置からの前後揺動を検出可能な前後位置センサ30と、中立位置からの左右揺動を検出可能な左右位置センサ31と、が備えられている。これらの各センサ30,31の検出結果が後述するECU13に入力されている。前後位置センサ30と左右位置センサ31は、ポテンショメータを用いて構成され、操作レバー29の操作量に対応するポテンショメータのレベル判別により、中立位置から前側、後側、左側、又は、右側への揺動操作が行われたことを検出することが可能である。
【0062】
図2に示すように、操作レバー29の上下途中部に紐部材の一端部を連結可能な連結部としての連結部32が備えられている。連結部32は、リング状に形成されている。この連結部32には、オペレータが車体から離れた箇所から引き操作可能なように紐部材を連結することができる。尚、連結部32の構成はこれに限らず、例えば操作レバー29に設けた穴あるいはフックなどの連結部(いずれも図示せず)に紐部材の一端部を直接結び付けたり紐部材の一端部に設けた連結部を連結させる構成であってもよい。
【0063】
ECU13は、後述する機能部に対応するプログラムを記憶する不揮発性メモリ(図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。ECU13は、機能部として、姿勢制御部100及び走行制御部101を備えている。
【0064】
姿勢制御部100は、各種センサの検出情報に基づいて、車体の姿勢を所望の状態に制御する姿勢制御を実行する。姿勢制御の制御モードとしては、位置制御モードと圧力制御モードとがある。
【0065】
位置制御モードでは、車両本体1の荷物載置部8が水平姿勢になるように、傾斜センサS4の検出情報並びにストロークセンサS3の検出情報に基づいて、車両本体1の水平姿勢からの前後方向での傾斜角及び左右方向での傾斜角が水平姿勢に対応する値になるように、4個の第一油圧シリンダ6及び4個の第二油圧シリンダ7の作動を制御する。具体的には、4個の第一油圧シリンダ6及び4個の第二油圧シリンダ7に対応する制御弁を切り換え制御する。その結果、傾斜地を走行している場合であっても、車両本体は略水平姿勢を維持することができ、荷物載置部に収穫用コンテナや機材等を積載していても倒れることなく移動することができる。
【0066】
圧力制御モードでは、ヘッド側圧力センサS1の検出値とキャップ側圧力センサS2の検出値とに基づき、第二油圧シリンダ7の推力が算出される。そして、検出される推力が予め設定されて記憶されている目標値になるように、対応する制御弁を切り換えて4つの第二油圧シリンダ7の作動を制御する。このように制御することで、走行車輪2の接地反力が適正値に維持される。その結果、走行車輪2が地面の凹凸に追従しながら昇降して、複数の走行車輪2の夫々が空転したり、回転が妨げられたりすることなく、適切な接地状態を維持して車両本体1を支持しながら不整地を良好に走行することができる。
【0067】
走行制御部101は、運転操作部21の操作指令に基づいて、車両の走行状態を所望の走行状態に切り換える。リモコン装置RCは、運転操作部21における操作レバー29と同様な機能を有する操作具が備えられ、遠隔操作により車体の移動を指令することができる。
【0068】
走行制御部101は、運転操作部21に備えられた操作レバー29の操作状態、すなわち、前後位置センサ30と左右位置センサ31の検出結果に基づいて車両の走行状態を切り換える。具体的には、前後位置センサ30により操作レバー29が前側に操作されたことが検知されると、前方に向けて直進走行する。前後位置センサ30により操作レバー29が後側に操作されたことが検知されると、後方に向けて直進走行する。左右位置センサ31により操作レバー29が右方向に操作されたことが検知されると、右側に向けて旋回走行する。左右位置センサ31により操作レバー29が左方向に操作されたことが検知されると、左側に向けて旋回走行する。
【0069】
走行制御部101は、指令された走行モードにて旋回走行するように、複数の油圧モータ4及び複数の旋回シリンダ20の作動を制御する。
【0070】
(走行システム)
本走行システムでは、第2作業装置は、当該第2作業装置の走行の操作を行う操作レバーを含み、接続体は、操作レバーと第1作業装置を接続する構成となっている。又、前記第1作業装置は、車両本体と、前記車両本体を走行させる走行装置を備え、前記接続体は、前記第2作業装置の前記操作レバーと前記車両本体を接続する構成となっている。
【0071】
具体的には、第1作業車SV1(第1作業装置)及び第2作業車SV2(第2作業装置)の夫々に、車両本体1の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行装置としての走行車輪2と、複数の走行車輪2を車両本体1に対して各別に位置変更可能に支持する複数の支持機構Aと、走行車輪2及び支持機構Aを駆動する駆動源としての油圧供給源9と、が備えられ、第1作業車SV1及び第2作業車SV2の夫々に、車両本体1の外方側から手動にて操作可能な操作レバー29と、操作レバー29の操作情報に基づいて複数の走行車輪2及び支持機構Aの作動を制御する制御装置Cと、が備えられている。
【0072】
そして、
図1に示すように、走行システムは、第1作業車SV1が先行して走行し、第2作業車SV2が第1作業車SV1に追従して走行するように縦列状態で移動走行する。そして、先行して走行する第1作業車SV1と、後続の第2作業車SV2における操作レバー29とが、接続体Tを介して接続され、接続体Tは、第1作業車SV1の走行動作に基づいて操作レバー29を操作するように構成されている。
【0073】
第1作業車SV1に対して、操作レバー29の連結部32に第1紐部材HU1の一端を連結する。第1紐部材HU1の他端を車両本体1の前方に離れた箇所からオペレータが引き操作すると、操作レバー29が前側に揺動操作される。又、車両本体1の右横側方に離れた箇所から第1紐部材HU1を引き操作すると、操作レバー29が右側に揺動操作される。車両本体1の左横側方に離れた箇所から第1紐部材HU1を引き操作すると、操作レバー29が左側に揺動操作される。尚、操作レバー29は後側に揺動操作することもできる。
【0074】
第2作業車SV2の操作レバー29にも同様に、操作レバー29の連結部32に第2紐部材HU2の一端を連結する。この第2紐部材HU2の他端は第1作業車SV1の車両本体1の後端部に連結する。この第1作業車SV1と第2作業車SV2の操作レバー29とを接続する第2紐部材HU2が接続体Tに相当する。
【0075】
この走行システムでは、オペレータが第1紐部材HU1を引き操作することにより、操作レバー29が前側に揺動操作されると、第1作業車SV1は前方に直進走行する。操作レバー29が右側に揺動操作されると、第1作業車SV1は右方向に旋回走行する。操作レバー29が左側に揺動操作されると、第1作業車SV1は左方向に旋回走行する。
【0076】
第1作業車SV1の移動走行に伴い、第2紐部材HU2が引き操作されると、第2作業車SV2が第2紐部材HU2の引き操作される方向に向けて追従して移動走行する。つまり、オペレータは、1つの紐部材HU1を引き操作することにより、2台の作業車SV1,SV2を指令する方向に向けて移動させることができる。このとき、各作業車SV1,SV2は、上記したような姿勢制御を実行するので、不整地であっても荷物載置部8を水平姿勢に維持しながら走行することができる。
【0077】
後続の第2作業車SV2は、1台に限らず、2台以上縦列状態で接続させるものでもよい。
【0078】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態を説明する。
【0079】
第2実施形態に係る走行システムは、第2作業装置W2に、油圧駆動式の走行装置2が備えられ、第1作業装置W1に、作動油を排出供給可能な油圧供給源9が備えられている。
【0080】
具体的には、第2作業装置W2に、車両本体1の左右両側における前後夫々に位置する油圧駆動式の複数の走行装置としての走行車輪2と、複数の走行車輪2を車両本体1に対して各別に位置変更可能に支持する油圧駆動式の複数の支持機構Aと、が備えられている。
【0081】
一方、第1作業装置W1には油圧供給源9だけを備えている。
図11に示すように、油圧供給源9は、作動油を排出供給可能な油圧ポンプ9bと、油圧ポンプ9bを駆動する駆動装置としてのエンジン9aと、作動油タンク9c、エンジン9aの燃料を貯留する燃料タンク9dと、を備えている。そして、接続体Tは、第1作業装置W1の動作に基づいて作動油を供給することにより第2作業装置W2を作動させる構成となっている。
【0082】
又、第2作業装置W2に、荷物を積載可能な荷物載置部8と、複数の走行車輪2及び支持機構Aの作動を制御する制御装置Cと、が備えられ、制御装置Cは、荷物載置部8を水平姿勢に維持しながら荷物を載置した状態で移動走行可能なように、複数の走行車輪2及び支持機構Aの作動を制御するように構成されている。
【0083】
図9、
図10に示すように、第2作業装置W2は、油圧供給源9以外の他の装置を備える作業車SV3として構成されている。
【0084】
図示はしないが、第1作業装置W1を構成する油圧供給源9は、支持フレームにより各装置が支持されている。油圧供給源9を有する第1作業装置W1は、定置式に構成されている。
【0085】
油圧ポンプ9bから排出される作動油は供給管40を介して第2作業装置W2に供給される。すなわち、この実施形態では、作動油を供給する供給管40が接続体Tに対応している。
【0086】
第2作業装置W2(作業車SV3)は、油圧供給源9から供給される作動油により、複数の走行車輪2及び複数の支持機構Aを作動させて、荷物載置部8を水平姿勢に維持しながら荷物を載置した状態で移動走行することができる。
【0087】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0088】
(1)第1実施形態では、接続体Tとしての第2紐部材HU2により操作レバー29を引き操作する構成としたが、接続体Tが、第1作業装置W1における複数の走行車輪2及び支持機構Aの作動状態を第2作業装置W2に伝えるように構成され、第2作業装置W2の制御装置Cが、接続体Tを介して伝えられる第1作業装置W1の作動状態に基づいて、走行車輪2及び旋回シリンダ20(操舵機構)の作動状態を修正する構成としてもよい。
【0089】
すなわち、接続体Tとして第1作業車SV1の作動状態を示す情報等を伝達可能な構成とする。そして、第2作業車SV2の制御装置Cが、接続体Tにより操作レバー29を引き操作することによって管理される第1作業車SV1の実際の作動状態と、第2作業車SV2の実際の作動状態とを対比して、走行車輪2及び旋回シリンダ20(操舵機構)の作動状態を修正することで、例えば、走行停止あるいは減速したり、旋回して障害物を避ける等の安全対策を取ることが可能となる。
【0090】
この場合、接続体Tとして、操作レバー29を引き操作する第2紐部材HU2とは別に、第1作業装置W1における複数の走行車輪2及び支持機構Aの作動状態を第2作業装置W2に伝える伝送線を備え、第2紐部材HU2及び伝送線の複数本により接続体Tが構成されるものでよい。又、第1作業装置W1における複数の走行車輪2及び支持機構Aの作動状態を第2作業装置W2に伝える伝送線が操作レバー29を引き操作する部材と兼用する構成としてもよい。さらに、第2紐部材HU2によって操作レバー29を引き操作する構成としながら、第1作業装置W1における複数の走行車輪2及び支持機構Aの作動状態を無線により第2作業装置W2に伝える無線装置を備える構成としてもよい。
【0091】
(2)第1実施形態では、オペレータが第1紐部材HU1を引き操作することで、第1作業車SV1の移動方向を指令するようにしたが、紐部材に代えて、無線操作式のリモコン装置RCによる遠隔操作によって第1作業装W1の運転操作を行ってもよく、オペレータが第1作業装置W1の操作レバー29を手で操作してもよい。
【0092】
(3)第2実施形態では、第1作業装置W1を定置式に構成したが、第2作業装置W2(SV3)の移動走行に伴って追従して移動可能に構成してもよい。つまり、
図12に示すように、第1作業装置W1を移動台車50に支持して移動可能に支持する構成でもよい。
【0093】
(4)第2実施形態では、1台の第1作業装置W1に対して1台の第2作業装置W2を備えたが、
図13に示すように、第2作業装置W2を複数備える構成としてもよい。このとき、第1作業装置W1から複数の第2作業装置W2に同時に作動油を供給してもよく、1台毎に切り換えて作動油を供給する構成でもよい。
【0094】
さらに、第2作業装置W2は、第1作業装置W1に備えられた油圧供給源9を装着並びに取り外し可能に構成され、接続体Tは、第2作業装置W2から油圧供給源9が取り外されているときに、第2作業装置W2と油圧供給源9を接続する構成としてもよい。
【0095】
(5)連結部32をフック状あるいは鉤型に形成する等、他の形状にて構成してもよい。
【0096】
(6)支持機構Aが、1つのリンク、又は3つ以上のリンクを備える機構であってもよく、支持機構Aの姿勢を変更する装置として、電動のアクチュエータを備えるものでもよい。
【0097】
(7)接続体Tとしては、紐部材に限らず、棒状の部材、ワイヤ、等で構成してもよい。
【0098】
(8)油圧モータ4に代えて、電動モータあるいはエンジン等により駆動される構成としてもよい。
【0099】
(9)操舵機構として、油圧シリンダに代えて、油圧モータあるいは電動モータ等により駆動される構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、例えば傾斜地や凹凸のある不整地等を移動するのに適した走行システムに適用できる。
【符号の説明】
【0101】
1 車両本体
2 走行装置
8 荷物載置部
9a 駆動装置
9b 油圧ポンプ
20 旋回シリンダ(操舵機構)
29 操作レバー
A 支持機構
C 制御装置
T 接続体
W1 第1作業装置
W2 第2作業装置