(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025057981
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】エチレン系共重合体組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20250101AFI20250402BHJP
C08L 47/00 20060101ALI20250402BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20250402BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20250402BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20250402BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20250402BHJP
C08F 210/16 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L47/00
C08L53/00
C08K5/14
B32B27/12
B32B5/24
C08F210/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023167862
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 太一
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 啓介
(72)【発明者】
【氏名】野口 真
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AH02A
4F100AK03A
4F100AK04A
4F100AK09A
4F100AK29A
4F100AL05A
4F100AL06A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02A
4F100CA30A
4F100DG01B
4F100DG11B
4F100EJ05A
4F100EJ68B
4F100GB51
4F100JA06A
4F100JK03
4F100JK06
4F100YY00A
4J002BK001
4J002BL001
4J002BL012
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4J002EK056
4J002EK067
4J002EN066
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4J002FD150
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4J100AA02P
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4J100CA05
4J100DA04
4J100DA09
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4J100DA51
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA28
4J100GA01
4J100GC25
4J100GC26
4J100GC35
4J100JA28
4J100JA44
4J100JA57
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】繊維材料を含む層との粘着性を向上させることで生産性を向上させ得ると共に、繊維材料を含む層との接着性に優れ、かつ得られる積層体の機械物性を維持し得るエチレン系共重合体組成物を提供すること。
【解決手段】特定の要件を満たす、エチレン[A]と、炭素数4~20のα-オレフィン[B]と、非共役ポリエン[C]とを含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)と、変性ポリブタジエン(N)とを含み、前記共重合体(L)100質量部当たり、老化防止剤を、10質量部を超えて20質量部以下含む、エチレン系共重合体組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(4)の要件を満たす、エチレン[A]と、炭素数4~20のα-オレフィン[B]と、非共役ポリエン[C]とを含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)と、変性ポリブタジエン(N)とを含み、
前記共重合体(L)100質量部当たり、老化防止剤を、10質量部を超えて20質量部以下含む、エチレン系共重合体組成物。
(1)エチレン[A]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[B]に由来する構造単位とのモル比〔[A]/[B]〕が、40/60~90/10であり、
(2)非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の含有量が、前記[A]、[B]および[C]に由来する構造単位の合計を100モル%として、0.1~6.0モル%であり、
(3)100℃におけるムーニー粘度ML(1+4)100℃が、5~100であり、
(4)下記式(i)で表されるB値が1.20以上である。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・(i)
[ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[A]、炭素数4~20のα-オレフィン[B]、および非共役ポリエン[C]のモル分率を示し、[EX]はエチレン[A]-炭素数4~20のα-オレフィン[B]のダイアッド連鎖分率を示す。]
【請求項2】
前記炭素数4~20のα-オレフィン[B]が、1-ブテンである、請求項1に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項3】
前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)100質量部当たり、変性ポリブタジエン(N)を0.5~50質量部含む、請求項1に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項4】
トランスポリオクテニレン(M)をさらに含む、請求項1に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項5】
前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)100質量部当たり、トランスポリオクテニレン(M)を0.5~50質量部含む、請求項4に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項6】
架橋剤として有機過酸化物をさらに含む、請求項1に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と、繊維材料を含む層[II]とが接している、積層体。
【請求項8】
前記層[I]が、前記エチレン系共重合体組成物を架橋してなる層である、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記層[II]の繊維材料が、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス処理された繊維を含む、請求項7に記載の積層体。
【請求項10】
前記層[II]の繊維材料が、帆布である、請求項7に記載の積層体。
【請求項11】
請求項7に記載の積層体を有する、工業用ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系共重合体組成物、積層体、および工業用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)などのエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、一般に、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れており、自動車用工業部品、工業用ゴム製品、電気絶縁材、土木建築用材、ゴム引き布などに用いられている。
【0003】
従来のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、ニトリルゴム、クロロプレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンなどの極性ゴムに比べて、合成繊維との接着性が劣るという欠点がある。この欠点を解決する方法として、クロロスルホン化コポリマーの接着溶液を用いることで、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体と合成繊維との接着性が改良されたことが開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、今日、ノンハロゲン化などの環境問題が問われるなかにあっては、このようなハロゲン化による極性を利用した接着技術は、最適とは言い難い。また、従来の接着方法としては、合成繊維をレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス処理(RFL処理)した後、ゴムに埋め込み架橋して接着させる方法が知られている。さらに詳しくは、RFL処理に際し、イソシアネートやイソシアヌール酸誘導体を用いる方法が知られている。しかしながら、これらの方法をゴムとしてエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含むエチレン系共重合体組成物を用いる場合に応用しても、十分な接着性を得るのは困難である。
【0005】
また、耐圧縮永久歪み性を改良するために、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体に、トランスポリオクテニレンゴムを配合してなる亜鉛華が配合される硫黄加硫系のエチレンプロピレンゴム配合物とすることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭42-23632号公報
【特許文献2】特許第2528033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、繊維材料を含む層との粘着性を向上させることで生産性を向上させ得ると共に、繊維材料を含む層との接着性に優れ、かつ得られる積層体の機械物性を維持し得るエチレン系共重合体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、特定の要件を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)と、変性ポリブタジエン(N)とを含み、かつ、老化防止剤を特定の量含むエチレン系共重合体組成物によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、例えば以下の[1]~[11]に関する。
[1]
下記(1)~(4)の要件を満たす、エチレン[A]と、炭素数4~20のα-オレフィン[B]と、非共役ポリエン[C]とを含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)と、変性ポリブタジエン(N)とを含み、
前記共重合体(L)100質量部当たり、老化防止剤を、10質量部を超えて20質量部以下含む、エチレン系共重合体組成物。
(1)エチレン[A]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[B]に由来する構造単位とのモル比〔[A]/[B]〕が、40/60~90/10であり、
(2)非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の含有量が、前記[A]、[B]および[C]に由来する構造単位の合計を100モル%として、0.1~6.0モル%であり、
(3)100℃におけるムーニー粘度ML(1+4)100℃が、5~100であり、
(4)下記式(i)で表されるB値が1.20以上である。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・(i)
[ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[A]、炭素数4~20のα-オレフィン[B]、および非共役ポリエン[C]のモル分率を示し、[EX]はエチレン[A]-炭素数4~20のα-オレフィン[B]のダイアッド連鎖分率を示す。]
【0010】
[2]
前記炭素数4~20のα-オレフィン[B]が、1-ブテンである、[1]に記載のエチレン系共重合体組成物。
【0011】
[3]
前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)100質量部当たり、変性ポリブタジエン(N)を0.5~50質量部含む、[1]または[2]に記載のエチレン系共重合体組成物。
【0012】
[4]
トランスポリオクテニレン(M)をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
【0013】
[5]
前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)100質量部当たり、トランスポリオクテニレン(M)を0.5~50質量部含む、[4]に記載のエチレン系共重合体組成物。
【0014】
[6]
架橋剤として有機過酸化物をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
【0015】
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と、繊維材料を含む層[II]とが接している、積層体。
【0016】
[8]
前記層[I]が、前記エチレン系共重合体組成物を架橋してなる層である、[7]に記載の積層体。
【0017】
[9]
前記層[II]の繊維材料が、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス処理された繊維を含む、[7]または[8]に記載の積層体。
【0018】
[10]
前記層[II]の繊維材料が、帆布である、[7]~[9]のいずれかに記載の積層体。
【0019】
[11]
[7]~[10]のいずれかに記載の積層体を有する、工業用ベルト。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、繊維材料を含む層との粘着性を向上させることで生産性を向上させ得るエチレン系共重合体組成物を提供することができると共に、当該エチレン系共重合体組成物からなる層と繊維材料を含む層との接着性に優れ、かつ良好な機械物性が維持された積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
≪エチレン系共重合体組成物≫
本発明のエチレン系共重合体組成物(以下、本組成物ともいう。)は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)と、変性ポリブタジエン(N)とを含み、前記共重合体(L)100質量部当たり、老化防止剤を、10質量部を超えて20質量部以下含むことを特徴とする。
【0022】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)>
本組成物の構成成分の一つであるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)は、エチレン[A]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[B]に由来する構造単位と、非共役ポリエン[C]に由来する構造単位とを含み、下記(1)~(4)の要件を満たす。なお、このような特定のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を「エチレン系共重合体(L)」と略記する場合がある。
【0023】
前記炭素数4~20のα-オレフィン[B]および非共役ポリエン[C]としては、それぞれを、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
《要件(1)》
エチレン[A]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[B]に由来する構造単位とのモル比〔[A]/[B]〕が、40/60~90/10である。
モル比が上記範囲にあるエチレン系共重合体(L)は、低温でのゴム弾性と常温での引張強度とのバランスに優れる。
[A]/[B]の下限は、好ましくは50/50、より好ましくは60/40、さらに好ましくは65/35である。また、[A]/[B]の上限は、好ましくは85/15、より好ましくは80/20、さらに好ましくは75/25である。
【0025】
《要件(2)》
非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の含有割合が、前記エチレン[A]に由来する構造単位、前記炭素数4~20のα-オレフィン[B]に由来する構造単位、および前記非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の合計を100モル%として、0.1~6.0モル%である。
前記非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の含有割合の下限は、好ましくは0.5モル%である。前記非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の含有割合の上限は、好ましくは4.0モル%、より好ましくは3.5モル%、さらに好ましくは3.0モル%である。
非共役ポリエン[C]に由来する構造単位の含有割合が上記範囲にあると、エチレン系共重合体(L)は、充分な架橋性および柔軟性を有する。
【0026】
《要件(3)》
エチレン系共重合体(L)は、100℃におけるムーニー粘度ML(1+4)100℃が、5~150であり、好ましくは10~60であり、より好ましくは20~40の範囲にある。
100℃におけるムーニー粘度が上記範囲にあると、エチレン系共重合体(L)は、高硬度オイルレス配合でもロール加工性に優れ、また、良好な後処理品質(リボンハンドリング性)を示すと共に優れたゴム物性を有する。
【0027】
《要件(4)》
下記式(i)で表されるB値が1.20以上である。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・(i)
[ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[A]、炭素数4~20のα-オレフィン[B]、および非共役ポリエン[C]のモル分率を示し、[EX]はエチレン[A]-炭素数4~20のα-オレフィン[B]のダイアッド連鎖分率を示す。]
上記式(i)で表されるB値は、好ましくは1.20~1.80、特に好ましくは1.22~1.40の範囲にある。
B値が1.20以上であると、低温での圧縮永久ひずみが小さくなり、低温でのゴム弾性と常温での引張強度とのバランスに優れたエチレン系共重合体(L)が得られる。
【0028】
炭素数4~20のα-オレフィン[B]としては、例えば、側鎖の無い直鎖の構造を有する、炭素数4の1-ブテン、炭素数9の1-ノネンや炭素数10の1-デセン、炭素数19の1-ノナデセン、および炭素数20の1-エイコセン、ならびに、側鎖を有する4-メチル-1-ペンテン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンが挙げられる。これらのなかでも、炭素数4~10のα-オレフィンが好ましく、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンがより好ましく、1-ブテンが特に好ましい。
【0029】
非共役ポリエン[C]としては、例えば、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン、1,3,7-オクタトリエン、1,4,9-デカトリエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等のトリエンが挙げられる。これらのなかでも、1,4-ヘキサジエンなどの鎖状非共役ジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネンなどの環状非共役ジエンが好ましく、環状非共役ジエンがより好ましく、5-エチリデン-2-ノルボルネン、および5-ビニル-2-ノルボルネンがさらに好ましく、5-エチリデン-2-ノルボルネンが特に好ましい。
【0030】
エチレン系共重合体(L)としては、例えば、エチレン・1-ブテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ペンテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-へプテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-オクテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ノネン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-デセン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ペンテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-へプテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ノネン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-デセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ペンテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-へプテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ノネン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-デセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体が挙げられる。エチレン系共重合体(L)は、必要に応じて1種類、または2種類以上が用いられる。
【0031】
エチレン系共重合体(L)は、それぞれ、少なくとも1種以上のバイオマス由来モノマー(エチレン[A]、炭素原子数4~20のα-オレフィン[B]、非共役ポリエン[C])を含んでいてもよい。重合体を構成する同じ種類のモノマーがバイオマス由来モノマーのみでもよいし、化石燃料由来モノマーのみであってもよいし、バイオマス由来モノマーと化石燃料由来モノマーの両方を含んでもよい。バイオマス由来モノマーとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるモノマーで、炭素として14C同位体を1×10-12程度の割合で含有し、ASTM D6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC)が100(pMC)程度である。バイオマス由来モノマーは、たとえば、従来知られている方法により得られる。前記エチレン系共重合体(L)がバイオマス由来モノマーを含むことは環境負荷低減の観点から好ましい。重合用触媒、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、原料オレフィンがバイオマス由来オレフィンを含むエチレン系重合体であっても、14C同位体を1×10-12程度の割合で含む以外の分子構造は化石燃料由来モノマーからなるエチレン系重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0032】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)の製造方法>
エチレン系共重合体(L)は、種々公知の製造方法、例えば、メタロセン触媒を用いた従来公知の製造方法によって得ることができる。メタロセン触媒および当該触媒を用いた製造方法としては、例えば、国際公開第2015/122415号、特に当該公報の段落[0249]~[0320]に記載の例を採用することができる。
【0033】
<変性ポリブタジエン(N)>
本組成物を構成する成分の一つである変性ポリブタジエン(N)は、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリブタジエンである。
【0034】
本組成物は、前記エチレン系共重合体(L)に加え、変性ポリブタジエン(N)を含むため、他材料、例えば工業用ベルトのような繊維材料を含む層との粘着性が良好で、かつ本組成物から得られる積層体は、本組成物を架橋してなる層と、繊維材料を含む層との接着強度に優れる。
【0035】
前記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、エンドシス-ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸(商標))が挙げられる。また、これらの誘導体としては、酸ハライド、アミド、イミド、酸無水物、エステルが挙げられる。これらのなかでも、不飽和ジカルボン酸、およびその酸無水物が好ましく、マレイン酸、および無水マレイン酸がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0036】
変性ポリブタジエン(N)は、クレイバレー社(Cray Vaiiey)から、無水マレイン酸変性ポリブタジエンが、Ricon130MA8、Ricon130MA13、Ricon130MA20、Ricon131MA5、Ricon131MA10、Ricon131MA17、Ricon131MA18、Ricon131MA20、Ricon184MA6などの商品名で製造販売されている。
【0037】
本組成物は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)100質量部当たり、変性ポリブタジエン(N)を好ましくは0.5~50質量部、より好ましくは0.5~30質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部、特に好ましくは0.5~7質量部の範囲で含む。
【0038】
本組成物中の変性ポリブタジエン(N)の配合量が上記範囲内であると、本組成物と他材料、例えば工業用ベルトのような繊維材料を含む層との粘着性が良好で、かつ本組成物から得られる積層体は、本組成物を架橋してなる層と、繊維材料を含む層との接着強度に優れる。
【0039】
<老化防止剤(安定剤)>
本組成物に、老化防止剤(安定剤)を配合することにより、本組成物から形成されるシールパッキンの寿命を長くすることができる。このような老化防止剤として、従来公知の老化防止剤、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などがある。
【0040】
アミン系老化防止剤としては、例えば、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤が挙げられる。
フェノール系老化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]が挙げられる。
イオウ系老化防止剤としては、例えば、ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートが挙げられる。
【0041】
本組成物は、老化防止剤をエチレン系共重合体(L)100質量部に対して、10質量部を超えて20質量部以下含有する。
本組成物中の老化防止剤の配合量が上記範囲内であると、本組成物と他材料、例えば工業用ベルトのような繊維材料を含む層との粘着性が良好で、かつ本組成物から得られる積層体は、本組成物を架橋してなる層と、繊維材料を含む層との接着強度に優れる。
前記老化防止剤の配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、好ましくは10質量部を超えて15質量部以下であり、より好ましくは11質量部以上13質量部以下である。
本組成物中の老化防止剤の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面のブルームがなく、さらに加硫阻害の発生を抑制することができる。
【0042】
<トランスポリオクテニレン(M)>
本組成物は、トランスポリオクテニレン(M)を含むことが好ましい。本組成物がトランスポリオクテニレン(M)を含むことで、本組成物と、他材料、例えば工業用ベルトのような繊維材料を含む層との粘着性が良好で、かつ本組成物から得られる積層体は、本組成物を架橋してなる層と、繊維材料を含む層との接着強度に優れる。
トランスポリオクテニレン(M)は、トランス構造を有するオクテニレンの重合体であって、主としてトランス二重結合を持つシクロオクテンのメタテーシスポリマー(金属原子を重合触媒とするトランス二重結合シクロオクテンのメタテーシス重合法により得られたポリマー)である。
トランスポリオクテニレン(M)は、エボニック社(Evonik Industries)からVESTENAMERの商品名で製造、販売されている。
【0043】
本組成物が前記トランスポリオクテニレン(M)を含む場合は、好ましくはトランスポリオクテニレン(M)を0.5~50質量部、より好ましくは1~30質量部、さらに好ましくは2~10質量部、特に好ましくは3~7質量部の範囲で含む。
本組成物中のトランスポリオクテニレン(M)の配合量が上記範囲内であると、本組成物と他材料、例えば工業用ベルトのような繊維材料を含む層との粘着性が良好で、かつ本組成物から得られる積層体は、本組成物を架橋してなる層と、繊維材料を含む層との接着強度に優れる。
【0044】
<その他の成分>
本組成物は、上述した成分に加え、所望の目的に応じて、その他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。その他の成分としては、例えば、架橋剤、架橋助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、フィラー、軟化剤、加工助剤、活性剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤などから選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。
それぞれの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
〈架橋剤〉
架橋剤としては、有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄系化合物、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノンまたはその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋剤等の、ゴムを架橋する際に一般に使用される架橋剤が挙げられる。これらのなかでも、有機過酸化物、硫黄系化合物が好ましい。
【0046】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシドが挙げられる。
【0047】
架橋剤として有機過酸化物を用いる場合、本組成物中の有機過酸化物の配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.2~15質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。
有機過酸化物の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体表面へのブルームなく、本組成物が優れた架橋特性を示す。
【0048】
架橋剤として、有機過酸化物を用いる場合、架橋助剤を併用することが好ましい。
架橋助剤とは、エチレン系共重合体組成物を加熱により架橋する際に、架橋剤とともに配合することで架橋反応触媒として作用する化合物である。
架橋助剤としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0049】
架橋助剤を用いる場合、本組成物中の架橋助剤の配合量は、有機過酸化物1モルに対して、好ましくは0.5~10モル、より好ましくは0.5~7モル、さらに好ましくは1~6モルである。
【0050】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、その例としては、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレンが挙げられる。なお、硫黄は化合物ではないが、本明細書において便宜的に硫黄系化合物に分類する。
【0051】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、本組成物中の硫黄系化合物の配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~7.0質量部、さらに好ましくは0.3~5.0質量部である。
硫黄系化合物の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面へのブルームがなく、本組成物が優れた架橋特性を示す。
【0052】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、加硫促進剤を併用することが好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール(例えば、サンセラーM(商品名;三新化学工業社製))、2-(4-モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、ノクセラーMDB-P(商品名;大内新興化学工業社製))、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルフォリノチオ)ベンゾチアゾールおよびジベンゾチアジルジスルフィド(例えば、サンセラーDM(商品名;三新化学工業社製))などのチアゾール系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンおよびジオルソトリルグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤;アセトアルデヒド・アニリン縮合物およびブチルアルデヒド・アニリン縮合物などのアルデヒドアミン系加硫促進剤;2-メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド(例えば、サンセラーTS(商品名;三新化学工業社製))、テトラメチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTT(商品名;三新化学工業社製))、テトラエチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTET(商品名;三新化学工業社製))、テトラブチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTBT(商品名;三新化学工業社製))およびジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(例えば、サンセラーTRA(商品名;三新化学工業社製))などのチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、サンセラーPZ、サンセラーBZおよびサンセラーEZ(商品名;三新化学工業社製))およびジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオ酸塩系加硫促進剤;エチレンチオ尿素(例えば、サンセラーBUR(商品名;三新化学工業社製)、サンセラー22-C(商品名;三新化学工業社製))、N,N'-ジエチルチオ尿素およびN,N'-ジブチルチオ尿素などのチオウレア系加硫促進剤;ジブチルキサトゲン酸亜鉛などのザンテート系加硫促進剤が挙げられる。
【0053】
加硫促進剤を用いる場合、本組成物中の加硫促進剤の配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.2~15質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。
加硫促進剤の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面へのブルームなく、本組成物が優れた架橋特性を示す。
【0054】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合には、エチレン系共重合体は、加硫促進助剤を含有することが好ましい。
【0055】
加硫促進助剤としては、例えば、酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛)が挙げられる。
加硫促進助剤を用いる場合、本組成物中の加硫促進助剤の配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、例えば、1~20質量部である。
【0056】
〈フィラー〉
フィラーは、ゴム組成物に配合される公知のゴム補強剤であり、通常、カーボンブラック、無機補強剤と呼称されている無機物である。
【0057】
フィラーとしては、具体的には、旭#55G、旭#60UG、旭#70(以上、旭カーボン(株)製)、シースト(V、SO、116、3、6、9、SP、TA等)のカーボンブラック(東海カーボン(株)製)、および、これらカーボンブラックをシランカップリング剤等で表面処理したもの、ならびに、シリカ、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、およびクレーが挙げられる。
【0058】
これらフィラーは、単独でも、二種以上の混合物であってもよい。
前記フィラーとしては、好ましくは、カーボンブラック、シリカ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等が用いられる。
【0059】
本組成物がフィラーを含む場合は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対し、好ましくは10~300質量部、より好ましくは20~200質量部、さらに好ましくは30~100質量部、特に好ましくは30~70質量部の範囲で配合すればよい。
フィラーの配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面へのブルームなく、本組成物が優れた架橋特性を示す。
【0060】
〈軟化剤〉
軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)が挙げられ、これらのなかでは、石油系軟化剤が好ましく、プロセスオイルが特に好ましい。
【0061】
本組成物が軟化剤を含有する場合には、軟化剤の配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、好ましくは2~100質量部、より好ましくは3~50質量部、さらに好ましくは4~20質量部、特に好ましくは5~15質量部である。
【0062】
〈加工助剤〉
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0063】
本組成物が加工助剤を含有する場合は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、好ましくは0.1~20、より好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.4~5質量部、特に好ましくは0.5~3質量部である。
加工助剤の配合量が上記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れるので好適である。
【0064】
〈活性剤〉
活性剤としては、例えば、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルトリメリテート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調製物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0065】
本組成物が活性剤を含有する場合には、活性剤の配合量は、エチレン系共重合体(L)100質量部に対して、好ましくは0.2~10質量部、より好ましくは0.3~5質量部である。
【0066】
<エチレン系共重合体組成物の調製>
本組成物は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックス等のインターナルミキサー(密閉式混合機)、ロールなどの従来知られる混錬機を用い、エチレン系共重合体(L)と、変性ポリブタジエン(N)と、老化防止剤と、さらに必要に応じてトランスポリオクテニレン(M)と、その他の成分とを混練することにより得られる。
【0067】
≪積層体≫
本発明の積層体は、エチレン系共重合体組成物からなる層[I]と、繊維材料を含む層[II]とが接している積層体である。以下、本発明の積層体が備える各構成について説明する。
【0068】
《エチレン系共重合体組成物からなる層[I]》
層[I]は、上記エチレン系共重合体組成物からなる層であり、上記エチレン系共重合体組成物を架橋してなる層であることが、本発明の好ましい一実施形態である。
【0069】
《繊維材料を含む層[II]》
本発明の積層体を構成する繊維材料を含む層[II]は、層の少なくとも一部に繊維材料を含む。
【0070】
〈繊維材料〉
層[II]を形成する繊維材料としては、種々公知の繊維材料、例えば、綿、木材セルロース繊維等の天然繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、レーヨン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、フッ素系ポリマー等の合成樹脂からなる繊維の有機質繊維材料、ガラス繊維、PAN系カーボン繊維、ピッチ系カーボン繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、ホウ酸アルミ繊維、チタン酸カリウム・ウィスカなどの無機質繊維材料が例示される。
【0071】
これら繊維材料は、長繊維(フィラメント)であってもよく、短繊維(ステープル)であってもよい。また、繊維材料は、コード糸、紡績糸、織布、編み物、帆布、不織布などであってもよい。
【0072】
上記ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10のような脂肪族ポリアミド;ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(6T)、或いはこれらの単位を含む共重合ポリアミドのような半芳香族ポリアミド;ポリベンズアミド、ポリpフェニレンテレフタラミド、ポリmフェニレンイソフタラミドのような全芳香族ポリアミドが挙げられる。
【0073】
また、これら繊維材料は繊維材料同士、あるいは本組成物からなる層[I]との接着性等を改良するために、RFL処理などの公知の方法で表面処理していてもよい。
【0074】
〈RFL処理〉
RFL処理は、繊維材料のレゾルシン・ホルマリン・ラテックスを含有する処理液(RFL液)を用いて繊維材料を接着処理するものであるが、このRFL液は、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物とゴムラテックスとを混合したものである。ゴムラテックスとしては、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体(VP)、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、クロロプレン(CR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、水素添加NBR(H-NBR)、クロロスルホン化エチレン(CSM)、天然ゴムなどを用いることができ、これらは一種を単独で用いる他に、二種以上をブレンドして用いることもできる。
【0075】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体を製造するには、種々公知の積層体の製造方法を採用し得る。例えば、予め公知の方法で成形した未架橋のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と繊維材料を含む層[II]とを貼り合わせた後、層[I]を架橋する方法、予め架橋した層[I]と層[II]とを貼り合わせる方法、あるいは、層[II]上に層[I]を押出被覆した後、層[I]を架橋する方法が挙げられる。
【0076】
未架橋のエチレン系共重合体組成物を成形する方法としては、例えば、押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機などの成形機を用い、所望の形状に成形する方法が挙げられる。
【0077】
上記の成形と同時または成形した後に、エチレン系共重合体組成物を架橋することで本組成物からなる層[I]を形成し、繊維材料を含む層[II]と積層(貼り合わせ)してもよいし、未架橋のエチレン系共重合体組成物を上記方法で所望の形状に成形した後に、繊維材料を含む層[II]と積層(貼り合わせ)し、次いで層[I]を架橋してもよい。
【0078】
本組成物からなる層[I]を架橋する方法としては、架橋剤を使用して加熱する方法、または光、γ線、電子線照射による方法のどちらを採用してもよい。
また、架橋する際には、金型を用いてもよいし、また金型を用いないで架橋を実施してもよい。金型を用いない場合は、成形、架橋の工程は、通常連続的に実施される。架橋槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチームなどの加熱槽を用いることができる。
【0079】
《積層体の用途》
本発明の積層体は、自動車用ホース、送水用ホース、ガス用ホース;伝動ベルト、搬送用ベルトなどの工業用ベルト;エスカレーター手すりに好適に用いられる。
【0080】
上記自動車用ホースとしては、例えば、ブレーキホース、ラジエターホース、ヒーターホース、エアークリーナーホースが挙げられる。
上記伝動ベルトとしては、例えば、Vベルト、平ベルト、歯付きベルトが挙げられる。
上記搬送用ベルトとしては、例えば、軽搬送用ベルト、円筒形ベルト、ラフトップベルト、フランジ付き搬送用ベルト、U型ガイド付き搬送用ベルト、Vガイド付き搬送用ベルトが挙げられる。
【実施例0081】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0082】
下記実施例および比較例において用いた各共重合体の物性は、以下に従い測定した。
〈各構造単位のモル量〉
エチレン[A]に由来する構造単位、α-オレフィン[B]に由来する構造単位および非共役ポリエン[C]に由来する構造単位のモル量は、1H-NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。測定条件の詳細は、国際公開第2015/122415号に記載されている。
【0083】
〈ムーニー粘度〉
ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)は、ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて測定した。
【0084】
〈B値〉
o-ジクロロベンゼン-d4/ベンゼン-d6(4/1[v/v])を測定溶媒とし、測定温度120℃にて、13C-NMRスペクトル(100MHz、日本電子製ECX400P)を測定し、下記式(i)に基づき算出した。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・・(i)
[ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[A]、炭素数4~20のα-オレフィン[B]、および非共役ポリエン[C]に由来する構造単位のモル分率を示し、[EX]はエチレン[A]-炭素数4~20のα-オレフィン[B]のダイアッド連鎖分率を示す。]
【0085】
本発明の実施例で用いたエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)を以下に示す。
【0086】
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(L)]
国際公開第2015/122415号の[合成例C1]の記載に準じて、下記の物性を有するエチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)共重合体を得た。以下、これを「エチレン系共重合体(L-1)」と記載する。
エチレン系共重合体(L-1)の組成および物性は、以下のとおりである。
エチレンに由来する構造単位:67.7モル%
1-ブテンに由来する構造単位:30.0モル%
ENBに由来する構造単位:2.3モル%
エチレンに由来する構造単位/1-ブテンに由来する構造単位[モル比]:69/31
ムーニー粘度ML(1+4)100℃:30
B値:1.3
【0087】
本発明の比較例で用いたエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を以下に示す。
【0088】
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(l)]
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(l)として、下記のエチレン・プロピレン・ENB共重合体(エチレン系共重合体(l-1))を用いた。
エチレン系共重合体(l-1)
商品名 三井EPT 4045M:ムーニー粘度ML(1+4)100℃=45、エチレン含量=45質量%、ジエン(ENB)含量=7.6質量%
【0089】
〔実施例1〕
エチレン系共重合体(L-1)を30秒素練りし、素練りしたエチレン系共重合体(L-1)100質量部に、架橋助剤として酸化亜鉛(ZnO#1)を5質量部、滑剤としてステアリン酸を1質量部、老化防止剤としてイルガノックス1010(ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、BASF製)を4質量部、老化防止剤としてサンダントMB(2-メルカプトベンゾイミダゾール、三新化学工業(株)製)を8質量部、カーボンブラックとして旭#70(旭カーボン(株)製)を50質量部、および軟化剤としてダイアナプロセスオイルPW-38(出光興産(株)製)を10質量部とを容量1.7リットルのバンバリーミキサー((株)神戸製鋼所製)で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で排出し配合物1を得た。この混練は、充填率70%で行った。
【0090】
次に、この配合物172質量部を、8インチロ-ル(前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、架橋剤として三井DCP-40C(40%マスターバッチ、ジクミルパーオキサイド、化薬アクゾ(株)製)を6.8質量部、および、変性ポリブタジエン(N)としてRicon131MA18(無水マレイン酸変性ポリブタジエン、クレイバレー社(Cray Vaiiey)製を5質量部加えて10分間混練して配合物2を得た後、夫々、試験片に応じて、シート状に分出し、厚さ1mm、2mm、および、3mmの未架橋シートを調製した。
【0091】
得られた厚さ1mmの未架橋シートを用い、後述する方法で粘着性(gf)を測定した。結果を表1に示す。
また、得られた厚さ2mmの未架橋シートを、100トンプレス成形機を用いて170℃で15分間加圧し、架橋シートを作製した。得られた架橋シートの物性を後述する方法で測定した。結果を表1に示す。
【0092】
《エチレン系共重合体組成物(未架橋物)の物性》
〈粘着性の測定〉
プローブタック試験機を用い、下記条件にてタック性(Peak Value(gf))を評価した。
直径5mmφステンレスプローブ
進入速度:120mm/min
加圧力:100g
加圧時間:20秒
引離し速度:120mm/min
ブローブおよび試験片(未架橋シート)を載せる温度:50℃
【0093】
《架橋したエチレン系共重合体組成物の物性》
〈デュロメータA硬度〉
架橋シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、JIS K 6253に従い、平滑な表面をもっている厚さ2mmの架橋シート6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚さ約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0094】
〈引張破断点応力、引張破断点伸び〉
架橋シートの引張破断点応力、引張破断点伸びを以下の方法で測定した。
架橋シートを打抜いてJIS K 6251(1993年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いてJIS K6251第3項に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/minの条件で引張り試験を行い、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0095】
〈引裂き強度〉
JIS K6252に準拠し、厚さ2mmの架橋シートから、切込みなしアングル形ダンベル試験片を作成し、この試験片を引張速度:500mm/minで引っ張り、最大応力値(引裂き強度)を測定した(測定温度25℃)。
【0096】
《剥離強度》
架橋したエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と繊維材料を含む層[II]との剥離強度(接着強度)は、以下の方法で行った。
【0097】
上記で調製した厚さ3mmの未架橋シートを、RFL処理をしたナイロン繊維の織布[綾羽工業(株)製]の上に置いて、200トンプレス成形機を用いて170℃で15分間加圧して未架橋シートを架橋し、層[I]と層[II]が接している積層体を得た。当該積層体から幅25mmの試験片を打ち抜き、50mm/minの引張速度でT剥離試験を行い、剥離強度(接着強度)(N/cm)を求めた。剥離試験は3回行い、その平均値を剥離強度とした。
【0098】
〔実施例2〕
旭#70の配合量を40質量部に変更し、さらに、シリカ(商品名 ULTRASIL VN2、エボニック社製)を10質量部、およびトランスポリオクテニレン(M)としてVESTENAMER 8012(エボニック社製)を5質量部配合した以外は、実施例1に記載の方法と同様に、未架橋のエチレン系共重合体組成物、架橋したエチレン系共重合体組成物および積層体を得て、上記記載の方法で物性を評価した。結果を表1に示す。
【0099】
〔比較例1〕
実施例1で用いたエチレン系共重合体(L-1)に替えて、エチレン系共重合体(l-1)を用い、老化防止剤(イルガノックス1010およびサンダントMB)の配合量を表1記載の配合量に変更した以外は、実施例1に記載の方法と同様に、未架橋のエチレン系共重合体組成物を得た。
次いで、DCP-40CおよびRicon131MA18の代わりに、硫黄および表1記載の加硫促進剤を用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様に、架橋したエチレン系共重合体組成物および積層体を得て、上記記載の方法で物性を評価した。結果を表1に示す。
【0100】
〔比較例2〕
老化防止剤(イルガノックス1010およびサンダントMB)の配合量を表1記載の配合量に変更した以外は、実施例1に記載の方法と同様に、未架橋のエチレン系共重合体組成物を得た。
次いで、Ricon131MA18を用いない以外は、実施例1に記載の方法と同様に、架橋したエチレン系共重合体組成物および積層体を得て、上記記載の方法で物性を評価した。結果を表1に示す。
【0101】
【0102】
上記表1に記載の各加硫促進剤としては、以下のものを使用した。
加硫促進剤TRA:サンセラーTRA(三新化学工業社製)
加硫促進剤BZ:サンセラーBZ(三新化学工業社製)
加硫促進剤22:サンセラー22-C(三新化学工業社製)
加硫促進剤TT:サンセラーTT(三新化学工業社製)
加硫促進剤M:サンセラーM(三新化学工業社製)
【0103】
表1の結果から明らかなように、実施例1および実施例2では、エチレン系共重合体組成物の繊維材料を含む層との粘着性が比較例1および比較例2の組成物よりも優れるという結果を示した。また、実施例1および実施例2より得られた、架橋したエチレン系共重合体組成物は、機械物性に優れていた。さらに、実施例1および実施例2より得られた積層体では、比較例1および比較例2より得られた積層体と比較して剥離強度の値が非常に大きく、繊維材料を含む層との接着性に優れていた。