特開 2025-57986 ガス充填装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025057986

(43)【公開日】2025-04-09

(54)【発明の名称】ガス充填装置

(51)【国際特許分類】

   F17C 13/02 20060101AFI20250402BHJP

   F17C 5/06 20060101ALI20250402BHJP

【ＦＩ】

F17C13/02 301Z

F17C5/06

【審査請求】未請求

【請求項の数】3

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023167867

(22)【出願日】2023-09-28

(71)【出願人】

【識別番号】000110099

【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110002457

【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】坂本 公貴

【テーマコード（参考）】

3E172

【Ｆターム（参考）】

3E172AA02

3E172AA05

3E172AB01

3E172BA01

3E172BD03

3E172BD05

3E172EA12

3E172EA14

3E172EA22

3E172EA23

3E172EA24

3E172EA35

3E172EA48

3E172JA08

3E172KA22

3E172KA23

(57)【要約】

【課題】作業者の意図しない充填が行われることを抑制できるガス充填装置を提供する。
【解決手段】水素ガス充填装置１は、複数のガス供給管路５Ａ，５Ｂと、流量計１４Ａ，１４Ｂ、遮断弁１３Ａ，１３Ｂおよびノズル７Ａ，７Ｂと、制御装置２２Ａ，２２Ｂと、受信器２７Ａ，２７Ｂと、を備えている。受信器２７Ａ，２７Ｂは、タンク５２に関する情報を取得する。第１制御装置２２Ａは、受信器２７Ａ，２７Ｂにより取得した情報により、複数のガス供給管路５Ａ，５Ｂを用いた同一の車両５１への充填であるか、または、単一のガス供給管路５Ａ（５Ｂ）を用いた充填であるか、を判定する。制御装置２２Ａ，２２Ｂは、この判定の結果に応じて、水素ガスの充填を制御する。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

ガス供給源に接続された複数のガス供給管路と、
前記複数のガス供給管路にそれぞれ設けられた流量計、遮断弁および充填ノズルと、
前記遮断弁の開閉動作を制御することにより、ガスの充填を制御する制御手段と、
充填対象に関する情報を取得する情報取得部と、
を備えたガス充填装置において、
前記情報取得部により取得した情報により、前記複数のガス供給管路を用いた同一の充填対象への充填であるか、または、単一のガス供給管路を用いた充填であるか、を判定する判定手段を備え、
前記制御手段は、前記判定手段による判定結果に応じて、ガスの充填を制御する
ことを特徴とするガス充填装置。

【請求項2】

前記情報取得部は、それぞれの前記充填ノズルに設けられており、
前記情報取得部は、充填対象に前記充填ノズルが接続されたことにより、前記充填対象から情報を取得し、
前記判定手段は、それぞれの前記充填ノズルに設けられた前記情報取得部からの情報に基づいて、前記複数のガス供給管路を用いた同一の充填対象への充填であるか、または、単一のガス供給管路を用いた充填であるか、を判定する
ことを特徴とする請求項１に記載のガス充填装置。

【請求項3】

前記情報取得部により取得される情報は、充填対象のタンクに関する情報であり、
前記判定手段は、取得したタンク情報が一致した場合に、前記複数のガス供給管路を用いた同一の充填対象への充填である、と判定する
ことを特徴とする請求項２に記載のガス充填装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、例えば車両（自動車）のタンク（燃料タンク、被充填タンク）に水素ガス等のガス（燃料ガス）を充填（供給）するガス充填装置（燃料ガス充填装置、燃料ガス供給装置）に関する。

【背景技術】

【0002】

例えば、特許文献１には、蓄圧器に接続されたガス供給管路を備え、このガス供給管路を通じて蓄圧器内の燃料ガスを車両の燃料タンクに充填する燃料ガス充填装置が記載されている。特許文献１の燃料ガス充填装置は、ガス供給管路の途中に流量計および遮断弁が設けられており、ガス供給管路の下流端に車両（燃料タンク）に接続される充填ノズルが設けられている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０２２－１７８３１３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

燃料ガス充填装置として、複数の充填管路（充填系統）を備えた構成とすることが考えられる。即ち、燃料ガス充填装置として、複数のガス供給管路を備えると共に、それぞれのガス供給管路に流量計、遮断弁および充填ノズルを設けた構成とすることが考えられる。このような構成によれば、複数のガス供給管路のうちの単一のガス供給管路を用いて車両の燃料タンクに燃料ガスを充填するだけでなく、複数のガス供給管路を用いて同一車両の燃料タンク（例えば、複数の充填口を有する燃料タンク）に燃料ガスを充填することも可能となる。そして、いずれの充填を行うか、即ち、「単一のガス供給管路を用いた充填を行う」か「複数のガス供給管路を用いた充填を行う」かは、例えば、充填を行う作業者にその選択の操作をさせるようにすることが考えられる。しかし、この場合、作業者が誤った操作をしてしまうと、作業者の意図しない充填が行われる可能性がある。

【0005】

本発明の目的の一つは、作業者の意図しない充填が行われることを抑制できるガス充填装置を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明は、好ましくは、ガス供給源に接続された複数のガス供給管路と、前記複数のガス供給管路にそれぞれ設けられた流量計、遮断弁および充填ノズルと、前記遮断弁の開閉動作を制御することにより、ガスの充填を制御する制御手段と、充填対象に関する情報を取得する情報取得部と、を備えたガス充填装置において、前記情報取得部により取得した情報により、前記複数のガス供給管路を用いた同一の充填対象への充填であるか、または、単一のガス供給管路を用いた充填であるか、を判定する判定手段を備え、前記制御手段は、前記判定手段による判定結果に応じて、ガスの充填を制御する。

【発明の効果】

【0007】

本発明によれば、作業者の意図しない充填が行われることを抑制できる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】実施形態によるガス充填装置を模式的に示す全体構成図である。

【図2】ディスペンサを示す斜視図である。

【図3】２つの充填口を有する燃料タンクが搭載された車両、および、この車両の燃料タンクにガスを充填しているディスペンサ、を示す平面図である。

【図4】図１中の第１制御装置（または第２制御装置）による処理を示す流れ図である。

【図5】図４の「Ａ」および「Ｂ」に続く処理を示す流れ図である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

以下、実施形態によるガス充填装置として、車両（自動車）のタンク（燃料タンク、被充填タンク）に燃料ガス（水素ガス）を充填（供給）する車両用のガス充填装置（水素ガス充填装置）を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、図４および図５に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「Ｓ」という表記を用いる（例えば、ステップ１＝「Ｓ１」とする）。

【0010】

図１において、水素ガス充填装置１は、例えば燃料電池自動車（ＦＣＶ：Fuel Cell Vehicle）等の車両５１の燃料タンク５２（以下、タンク５２という）に圧縮状態の水素ガス（ガス）を充填（供給）するガス充填装置（ガス供給装置）である。水素ガス充填装置１は、例えば、水素ガス供給ステーション（水素ステーション）と呼ばれる設備（燃料供給所）に設置されている。水素ガス充填装置１は、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵するガス貯蔵部（貯蔵タンク）としてのガス蓄圧器２と、ガス蓄圧器２の水素ガスを車両５１のタンク５２に充填する充填機構としての水素ディスペンサ３（以下、ディスペンサ３という）と、ガス蓄圧器２からディスペンサ３の筐体４内にわたって延びるガス供給管路５Ａ，５Ｂとを含んで構成されている。

【0011】

実施形態では、水素ガス充填装置１は、２つのガス供給管路５Ａ，５Ｂ、即ち、一方のガス供給系統（Ａ系統）を構成する第１ガス供給管路５Ａと、他方のガス供給系統（Ｂ系統）を構成する第２ガス供給管路５Ｂと、を備えている。ガス蓄圧器２は、第１ガス供給管路５Ａと第２ガス供給管路５Ｂとの両方に接続されている。これにより、ガス蓄圧器２は、ディスペンサ３のＡ系統（第１ガス供給管路５Ａ）およびＢ系統（第２ガス供給管路５Ｂ）に水素ガスを供給できる構成となっている。この場合、図１に示すように、第１ガス供給管路５Ａと第２ガス供給管路５Ｂは、ディスペンサ３内で分岐している。

【0012】

なお、第１ガス供給管路５Ａと第２ガス供給管路５Ｂとの分岐は、ディスペンサ３内でなくてもよい。即ち、第１ガス供給管路５Ａと第２ガス供給管路５Ｂとの分岐は、ディスペンサ３よりもガス蓄圧器２側（上流側）でもよい。また、図示は省略するが、第１ガス供給管路に接続されるガス蓄圧器と第２ガス供給管路に接続されるガス蓄圧器とを、それぞれ別々に備える構成としてもよい。即ち、ガス供給管路を途中で分岐させずに、第１ガス蓄圧器を第１ガス供給管路に接続し、第１ガス蓄圧器とは別の第２ガス蓄圧器を第１ガス供給管路とは別の第２ガス供給管路に接続する構成としてもよい。

【0013】

ガス蓄圧器２は、高圧に圧縮された燃料ガス（水素ガス）を貯蔵するガス供給源（水素ガス供給源）である。ガス蓄圧器２は、ガス供給管路５Ａ，５Ｂの上流側に接続されている。ガス供給管路５Ａ，５Ｂは、ガス蓄圧器２からディスペンサ３に向けて延びると共に、ディスペンサ３の筐体４内に配設されている。また、ガス供給管路５Ａ，５Ｂの下流側は、筐体４外に配設されたホース６Ａ，６Ｂにより構成されている。そして、ホース６Ａ，６Ｂの下流端には、ノズル７Ａ，７Ｂが設けられている。ガス供給管路５Ａ，５Ｂは、ノズル７Ａ，７Ｂを介して車両５１のタンク５２に接続される。

【0014】

ガス供給管路５Ａ，５Ｂは、ガス（水素ガス）を燃料として走行する車両５１（より具体的には、車両５１に搭載されたタンク５２）にガス（水素ガス）を充填（供給）するための経路（ガス充填経路、ガス供給経路）である。図１の仮想線（二点鎖線）は、Ａ系統を構成する第１ガス供給管路５Ａが、Ａ系統の第１ノズル７Ａを介して車両５１のタンク５２に接続された状態を示している。これに対して、図３は、Ａ系統を構成する第１ガス供給管路５ＡとＢ系統を構成する第２ガス供給管路５Ｂとの両方が、Ａ系統の第１ノズル７ＡとＢ系統の第２ノズル７Ｂとを介して車両５１のタンク５２に接続された状態を示している。図３に示すように、実施形態では、Ａ系統とＢ系統との両方を通じて２つの充填口５２Ａ，５２Ｂを有するタンク５２に水素ガスを充填することも可能となっている。

【0015】

ディスペンサ３は、筐体４を備えている。また、ディスペンサ３は、第１ノズル掛け８Ａ、第１流量調整弁１２Ａ、第１遮断弁１３Ａ、第１流量計１４Ａ、第１熱交換器１６Ａ、第１圧力センサ２０Ａ、第１温度センサ２１Ａ、および、第１制御装置２２Ａを備えている。また、ディスペンサ３は、第２ノズル掛け８Ｂ、第２流量調整弁１２Ｂ、第２遮断弁１３Ｂ、第２流量計１４Ｂ、第２熱交換器１６Ｂ、第２圧力センサ２０Ｂ、第２温度センサ２１Ｂ、および、第２制御装置２２Ｂを備えている。

【0016】

筐体４は、ディスペンサ３の外形をなす箱体を構成している。図２および図３に示すように、筐体４は、例えば、正面４Ａと背面４Ｂと一対の側面４Ｃ，４Ｄと上面４Ｅとを有する略直方体状に形成されている。一対の側面４Ｃ，４Ｄのうち一方の側面４Ｃは、第１ノズル掛け８Ａおよび第２ノズル掛け８Ｂが設けられた側面４Ｃ、即ち、ノズル掛け側面４Ｃとなっている。また、正面４Ａには、充填量等の報知すべき情報を表示する第１表示器２３Ａ、および、操作スイッチとなる第１操作ボタン２４Ａ（例えば、第１充填開始ボタン２４Ａ１、第１充填停止ボタン２４Ａ２）が設けられている。背面４Ｂにも、図１に示すように、充填量等の報知すべき情報を表示する第２表示器２３Ｂ、および、操作スイッチとなる第２操作ボタン２４Ｂ（例えば、第２充填開始ボタン２４Ｂ１、第２充填停止ボタン２４Ｂ２）が設けられている。

【0017】

筐体４のノズル掛け側面４Ｃには、第１ノズル掛け８Ａおよび第２ノズル掛け８Ｂが設けられている。ノズル掛け８Ａ，８Ｂは、ノズル７Ａ，７Ｂを保持する保持部に相当する。ノズル７Ａ，７Ｂは、水素ガスの非充填時（即ち、充填作業の待機時間）にノズル掛け８Ａ，８Ｂに掛止めされる。即ち、ノズル掛け８Ａ，８Ｂは、車両５１のタンク５２に水素ガスを充填するとき以外、ノズル７Ａ，７Ｂを保持している。車両５１のタンク５２に水素ガスを充填するときは、充填作業の作業者（水素ステーションの作業者、セルフの作業者等）により、ノズル７Ａ，７Ｂがノズル掛け８Ａ，８Ｂから取り外される。

【0018】

図１に示すように、筐体４内には、第１ガス供給管路５Ａ、第１入口弁１１Ａ、第１流量調整弁１２Ａ、第１遮断弁１３Ａ、第１流量計１４Ａ、第１熱交換器１６Ａ、第１脱圧管路１８Ａ、第１脱圧弁１９Ａ、第１圧力センサ２０Ａ、第１温度センサ２１Ａ、第２ガス供給管路５Ｂ、第２入口弁１１Ｂ、第２流量調整弁１２Ｂ、第２遮断弁１３Ｂ、第２流量計１４Ｂ、第２熱交換器１６Ｂ、第２脱圧管路１８Ｂ、第２脱圧弁１９Ｂ、第２圧力センサ２０Ｂ、第２温度センサ２１Ｂ、第１制御装置２２Ａ、第２制御装置２２Ｂ等が収容されている。

【0019】

ガス供給管路５Ａ，５Ｂは、筐体４内に配設されており、加圧状態の水素ガスをガス蓄圧器２から充填対象となる車両５１（より具体的には、タンク５２）に向けて供給する。ガス供給管路５Ａ，５Ｂは、ガス蓄圧器２側が上流側となり、車両５１（より具体的には、タンク５２）側が下流側となっている。第１ガス供給管路５Ａの下流側は、筐体４の外側で筐体４の外部に延びる第１ホース６Ａにより構成されている。第２ガス供給管路５Ｂの下流側は、筐体４の外側で筐体４の外部に延びる第２ホース６Ｂにより構成されている。

【0020】

ホース６Ａ，６Ｂは、可撓性を有する水素ガス充填用ホースであり、例えば、耐圧ホースが用いられている。充填ホースであるホース６Ａ，６Ｂは、ガス供給管路５Ａ，５Ｂの下流側を構成している。この場合、図示は省略するが、ホース６Ａ，６Ｂの途中、または、ホース６Ａ，６Ｂの上流側の端部には、緊急離脱カップリングが設けられている。緊急離脱カップリングは、緊急時に分離する安全装置である。緊急離脱カップリングは、例えば、水素ガスの充填中または充填終了後に車両５１が誤発進したときに、ホース６Ａ，６Ｂが強い力で引っ張られることにより分離する。緊急離脱カップリングは、分離したときにホース６Ａ，６Ｂから水素ガスが放出されることを阻止する弁体（遮断弁）が内部に設けられている。

【0021】

一方、ホース６Ａ，６Ｂの先端には、タンク５２の充填口５２Ａ（５２Ｂ）に連結されるノズル７Ａ，７Ｂが設けられている。充填ノズルであるノズル７Ａ，７Ｂは、ホース６Ａ，６Ｂの先端側に気密状態で接続されており、所謂充填カップリングを構成している。第１ノズル７Ａは、第１ホース６Ａ（第１ガス供給管路５Ａ）と接続されている。第２ノズル７Ｂは、第２ホース６Ｂ（第２ガス供給管路５Ｂ）と接続されている。ノズル７Ａ，７Ｂには、開閉弁（図示せず）が内蔵されている。開閉弁は、水素ガスの流通を許可する「開位置」と水素ガスの流通を遮断する「閉位置」とに切換えられる。なお、ノズル７Ａ，７Ｂには、開閉弁に代えて、または、開閉弁と共に、逆止弁を設けてもよい。逆止弁は、ノズル７Ａ，７Ｂからタンク５２への水素ガスの流通を許容し、タンク５２からノズル７Ａ，７Ｂへの水素ガスの流通を阻止する。

【0022】

ノズル７Ａ，７Ｂの先端側は、接続カプラ７Ａ１，７Ｂ１となっており、タンク５２の接続口（レセプタクル）となる充填口５２Ａ（５２Ｂ）に着脱可能に接続される。即ち、ノズル７Ａ，７Ｂの接続カプラ７Ａ１，７Ｂ１は、ノズル７Ａ，７Ｂ内の管路（図示せず）を通じて車両５１のタンク５２に水素ガスを供給するときに、タンク５２の充填口５２Ａ（５２Ｂ）に気密状態で着脱可能に接続される。また、ノズル７Ａ，７Ｂは、タンク５２の充填口５２Ａ（５２Ｂ）に対して係脱可能にロックされるロック機構（図示せず）を備えている。これにより、ノズル７Ａ，７Ｂは、水素ガスの充填時に充填口５２Ａ（５２Ｂ）から不用意に外れることを抑制できる。

【0023】

ガス蓄圧器２内の高圧な水素ガスは、ノズル７Ａ，７Ｂがタンク５２の充填口５２Ａ（５２Ｂ）に対してロック機構によりロックされた状態で、ガス供給管路５Ａ，５Ｂを通じて車両５１のタンク５２に充填される。即ち、水素ガス充填装置１は、ノズル７Ａ，７Ｂを備えており、このノズル７Ａ，７Ｂを用いて車両５１のタンク５２へ水素ガスを充填する。後述するように、ノズル７Ａ，７Ｂには、車両５１（タンク５２）に設けられた送信器５３を介して車両５１の情報（より具体的には、タンク５２の情報）を受信する無線通信用の受信器２７Ａ，２７Ｂが設けられている。

【0024】

図１に示すように、ガス供給管路５Ａ，５Ｂの途中には、例えば、入口弁１１Ａ，１１Ｂ、流量調整弁１２Ａ，１２Ｂ、遮断弁１３Ａ，１３Ｂが設けられている。入口弁１１Ａ，１１Ｂは、流量調整弁１２Ａ，１２Ｂの上流側に位置している。入口弁１１Ａ，１１Ｂは、手動操作により開閉される。なお、入口弁１１Ａ，１１Ｂは、必要に応じて取り付けられるものであり、不要であればこれを省略してもよい。

【0025】

流量調整弁１２Ａ，１２Ｂは、入口弁１１Ａ，１１Ｂの下流側に位置している。流量調整弁１２Ａ，１２Ｂは、制御装置２２Ａ，２２Ｂにより弁開度が調整されることにより、ガス供給管路５Ａ，５Ｂを流れる水素ガスの流量を調整可能に制御する。即ち、流量調整弁１２Ａ，１２Ｂは、車両５１のタンク５２への水素ガスの流通を制御する。流量調整弁１２Ａ，１２Ｂは、例えば電磁式の弁装置であり、制御装置２２Ａ，２２Ｂからの制御信号Ｃｆ１，Ｃｆ２に基づいて開弁制御される。この場合、流量調整弁１２Ａ，１２Ｂは、制御装置２２Ａ，２２Ｂの制御プログラムに基づく指令により任意の弁開度に制御され、ガス供給管路５Ａ，５Ｂ内を流れる水素ガスの流量、水素ガス圧を可変に制御する。即ち、流量調整弁１２Ａ，１２Ｂは、制御装置２２Ａ，２２Ｂからの制御信号Ｃｆ１，Ｃｆ２によって弁開度が制御されることにより、必要な開度に調整される。

【0026】

遮断弁１３Ａ，１３Ｂは、流量調整弁１２Ａ，１２Ｂよりも下流側に位置している。遮断弁１３Ａ，１３Ｂは、制御装置２２Ａ，２２Ｂによって開弁、閉弁されることにより、ガス供給管路５Ａ，５Ｂ内の水素ガスの流通を許容または遮断する。即ち、遮断弁１３Ａ，１３Ｂは、ガス供給管路５Ａ，５Ｂの途中部位（例えば、熱交換器１６Ａ，１６Ｂと温度センサ２１Ａ，２１Ｂとの間）に設けられた電磁式または空圧作動式の弁装置である。遮断弁１３Ａ，１３Ｂは、制御装置２２Ａ，２２Ｂからの制御信号Ｃｓ１，Ｃｓ２に基づいて開閉されることにより、ガス供給管路５Ａ，５Ｂ内で水素ガスの流通を許容または遮断する。

【0027】

流量計１４Ａ，１４Ｂは、流量調整弁１２Ａ，１２Ｂよりも上流側に位置している。流量計１４Ａ，１４Ｂは、例えば、被測流体の質量流量を計測するコリオリ式の流量計である。流量計１４Ａ，１４Ｂは、入口弁１１Ａ，１１Ｂと流量調整弁１２Ａ，１２Ｂとの間でガス供給管路５Ａ，５Ｂ内を流れる水素ガスの流量（質量流量）を計測し、計測結果（検出信号Ｆ１，Ｆ２）を制御装置２２Ａ，２２Ｂへと出力する。制御装置２２Ａ，２２Ｂは、車両５１のタンク５２への水素ガスの充填量を演算し、水素ガス燃料の払出し量を表示器２３Ａ，２３Ｂ等に表示する。これにより、例えば顧客等に表示内容を報知する。

【0028】

冷却器１５は、ガス供給管路５Ａ，５Ｂ内を流れる水素ガスを冷却するための冷却装置である。冷却器１５は、タンク５２に充填される水素ガスの温度上昇を抑えるため、ガス供給管路５Ａ，５Ｂの途中位置で水素ガスを冷却する。即ち、冷却器１５は、ガス供給管路５Ａ，５Ｂを介して車両５１（タンク５２）に供給される水素ガスを冷却する。冷却器１５は、ガス供給管路５Ａ，５Ｂの途中部位（流量調整弁１２Ａ，１２Ｂと遮断弁１３Ａ，１３Ｂとの間）に設けられた熱交換器１６Ａ，１６Ｂと、熱交換器１６Ａ，１６Ｂに冷媒管路を介して接続され、例えばコンプレッサ、ポンプ等の駆動機構（図示せず）を備えたチラーユニット（図示せず）と、を含んで構成されている。

【0029】

チラーユニットは、冷媒管路を介して熱交換器１６Ａ，１６Ｂとの間に冷媒を循環させる。熱交換器１６Ａ，１６Ｂは、ガス供給管路５Ａ，５Ｂ内を流れる水素ガスと冷媒との間で熱交換を行う。これにより、冷却器１５は、ホース６Ａ，６Ｂに向けて供給される水素ガスの温度を規定温度（例えば、－３３～－４０℃）まで低下させる。

【0030】

ガス供給管路５Ａ，５Ｂの遮断弁１３Ａ，１３Ｂよりも下流側には、例えばホース６Ａ，６Ｂ側からガス圧力を脱圧するための脱圧管路１８Ａ，１８Ｂが分岐して設けられている。脱圧管路１８Ａ，１８Ｂの途中には、例えば電磁式または空圧作動式の弁装置である脱圧弁１９Ａ，１９Ｂが設けられている。脱圧弁１９Ａ，１９Ｂは、ホース６Ａ，６Ｂ（ノズル７Ａ，７Ｂ）を用いた水素ガスの充填作業が完了し、遮断弁１３Ａ，１３Ｂが閉弁されたときに、制御装置２２Ａ，２２Ｂからの制御信号Ｃｄ１，Ｃｄ２に基づいて開閉される。

【0031】

即ち、ノズル７Ａ，７Ｂの接続カプラ７Ａ１，７Ｂ１をタンク５２の充填口５２Ａ（５２Ｂ）から取り外す場合には、ホース６Ａ，６Ｂ内の圧力を大気圧レベルまで減圧する必要がある。このため、ガス充填作業の完了時には、脱圧弁１９Ａ，１９Ｂを一時的に開弁して脱圧管路１８Ａ，１８Ｂの先端側を大気に開放させる。これにより、ホース６Ａ，６Ｂ側の水素ガスは、外部に放出されてホース６Ａ，６Ｂ内の圧力が大気圧レベルまで減圧される。この結果、ノズル７Ａ，７Ｂの接続カプラ７Ａ１，７Ｂ１は、タンク５２の充填口５２Ａ（５２Ｂ）から取り外し可能となる。

【0032】

圧力センサ２０Ａ，２０Ｂは、遮断弁１３Ａ，１３Ｂよりも下流側（即ち、ノズル７Ａ，７Ｂ側）のガス供給管路５Ａ，５Ｂに設けられている。圧力センサ２０Ａ，２０Ｂは、ガス蓄圧器２から供給される水素ガスの圧力（管路途中の圧力）を検知する。圧力センサ２０Ａ，２０Ｂは、ノズル７Ａ，７Ｂの近傍でガス供給管路５Ａ，５Ｂ内の圧力を測定し、測定した圧力に応じた検出信号Ｐ１，Ｐ２を制御装置２２Ａ，２２Ｂへと出力する。

【0033】

温度センサ２１Ａ，２１Ｂは、遮断弁１３Ａ，１３Ｂと圧力センサ２０Ａ，２０Ｂとの間に位置してガス供給管路５Ａ，５Ｂの途中に設けられている。温度センサ２１Ａ，２１Ｂは、ガス供給管路５Ａ，５Ｂ内を流れる水素ガスの温度を検出し、その検出結果（検出信号Ｔ１，Ｔ２）を制御装置２２Ａ，２２Ｂへと出力する。なお、温度センサ２１Ａ，２１Ｂと圧力センサ２０Ａ，２０Ｂとの配置関係は、図１に示す配置に限るものではなく、例えば互いに逆となる配置にしてもよい。

【0034】

流量調整弁１２Ａ，１２Ｂ、遮断弁１３Ａ，１３Ｂおよび脱圧弁１９Ａ，１９Ｂは、ガス供給管路５Ａ，５Ｂ内の水素ガスの流れ（流量、圧力）を制御する制御機器を構成している。一方、流量計１４Ａ，１４Ｂ、圧力センサ２０Ａ，２０Ｂ、温度センサ２１Ａ，２１Ｂは、ガス供給管路５Ａ，５Ｂを流れる水素ガスの状態（流量、圧力、温度）を計測する計測機器を構成している。なお、ガス供給管路５Ａ，５Ｂの上流側から下流側に向けて設けられている流量計１４Ａ，１４Ｂ、流量調整弁１２Ａ，１２Ｂ、遮断弁１３Ａ，１３Ｂの配置（順番）は、図１中に示した順番に限らない。

【0035】

制御装置２２Ａ，２２Ｂは、流量調整弁１２Ａ，１２Ｂ、遮断弁１３Ａ，１３Ｂ、脱圧弁１９Ａ，１９Ｂ、表示器２３Ａ，２３Ｂ等を制御するコントローラ（コントロールユニット）を構成している。制御装置２２Ａ，２２Ｂは、流量調整弁１２Ａ，１２Ｂおよび遮断弁１３Ａ，１３Ｂの制御を行うことにより充填対象となるタンク５２への燃料供給を制御する。制御装置２２Ａ，２２Ｂは、制御回路であり、例えば、ＣＰＵ（演算装置）、メモリ２２Ａ１，２２Ｂ１（記憶装置）、タイマ等を有するマイクロコンピュータにより構成されている。メモリ２２Ａ１，２２Ｂ１には、例えば、後述の図４および図５に示す処理フローを実行するための処理プログラムが記憶（格納）されている。

【0036】

図１に示すように、第１制御装置２２Ａの入力側には、第１流量計１４Ａ、第１圧力センサ２０Ａ、第１温度センサ２１Ａ、第１操作ボタン２４Ａ、第１ノズル検出器２５Ａ、後述の受信器２７Ａ等が接続されている。また、第２制御装置２２Ｂの入力側には、第２流量計１４Ｂ、第２圧力センサ２０Ｂ、第２温度センサ２１Ｂ、第２操作ボタン２４Ｂ、第２ノズル検出器２５Ｂ、後述の受信器２７Ｂ等が接続されている。一方、第１制御装置２２Ａの出力側は、第１流量調整弁１２Ａ、第１遮断弁１３Ａ、第１脱圧弁１９Ａ、第１表示器２３Ａ等と接続されている。また、第２制御装置２２Ｂの出力側は、第２流量調整弁１２Ｂ、第２遮断弁１３Ｂ、第２脱圧弁１９Ｂ、第２表示器２３Ｂ等と接続されている。さらに、第１制御装置２２Ａと第２制御装置２２Ｂとの間は、互いに必要な信号（制御信号、指令信号、検出信号、情報信号等）を送信、受信できるように、通信線２６で接続されている。

【0037】

第１制御装置２２Ａは、主としてＡ系統による水素ガスの充填を制御する。第２制御装置２２Ｂは、主としてＢ系統による水素ガスの充填を制御する。また、第１制御装置２２Ａと第２制御装置２２Ｂとのうちの一方の制御装置となる第１制御装置２２Ａは、他方の制御装置である第２制御装置２２Ｂの上位の制御装置となっている。即ち、第１制御装置２２Ａは、Ａ系統とＢ系統との両方で同一の車両５１（タンク５２）に水素ガスの充填を行うときの両系統の統合的な制御を行うメインの制御装置となっている。

【0038】

なお、実施形態では、第１制御装置２２Ａを上位の制御装置（メインの制御装置）としたが、第２制御装置２２Ｂを上位の制御装置（メインの制御装置）としてもよい。また、第１制御装置２２Ａと第２制御装置２２Ｂとは別に、これら第１制御装置２２Ａおよび第２制御装置２２Ｂとを統合的に管理する別の制御装置、例えば、管理用の制御装置（上位の制御装置、メインの制御装置）を設ける構成としてもよい。この場合は、第１制御装置２２Ａおよび第２制御装置２２Ｂと管理用の制御装置とを通信線で接続する。また、図１では、Ａ系統用の第１制御装置２２ＡとＢ系統用の第２制御装置２２Ｂとの２つの制御装置２２Ａ，２２Ｂを有する構成とした場合を示しているが、Ａ系統とＢ系統とで共通の１つの制御装置を有する構成としてもよい。

【0039】

表示器２３Ａ，２３Ｂは、筐体４に設けられている。この場合、第１表示器２３Ａは、筐体４の正面４Ａ側に設けられており、第２表示器２３Ｂは、筐体４の背面４Ｂ側に設けられている。表示器２３Ａ，２３Ｂは、水素ガスの充填作業を行う作業者が視認し易い高さ位置に配置され、水素ガスの充填作業に必要な情報表示等を行う。表示器２３Ａ，２３Ｂは、例えば、モニタ、タッチパネル等の表示装置（ディスプレイ）である。表示器２３Ａ，２３Ｂは、制御装置２２Ａ，２２Ｂと接続されている。表示器２３Ａ，２３Ｂには、制御装置２２Ａ，２２Ｂからの信号（表示指令）に基づいて必要な情報が表示される。

【0040】

操作ボタン２４Ａ，２４Ｂは、筐体４に設けられている。この場合、第１操作ボタン２４Ａは、筐体４の正面４Ａに設けられており、第２操作ボタン２４Ｂは、筐体４の背面４Ｂに設けられている。操作ボタン２４Ａ，２４Ｂは、充填を行う作業者が手動操作可能なスイッチ（ボタンスイッチ）である。操作ボタン２４Ａ，２４Ｂは、例えば、充填開始ボタン２４Ａ１，２４Ｂ１と、充填停止ボタン２４Ａ２，２４Ｂ２と、を備えている。充填開始ボタン２４Ａ１，２４Ｂ１は、水素ガスの充填を開始するときに操作される。充填停止ボタン２４Ａ２，２４Ｂ２は、水素ガスの充填中に充填を停止するときに操作される。

【0041】

なお、操作ボタン２４Ａ，２４Ｂは、筐体４の正面４Ａと背面４Ｂとに設けたが、これに限らず、正面４Ａと背面４Ｂとの何れか一方に設けてもよい。操作ボタン２４Ａ，２４Ｂ（充填開始ボタン２４Ａ１，２４Ｂ１、充填停止ボタン２４Ａ２，２４Ｂ２）は、制御装置２２Ａ，２２Ｂと接続されており、ボタン操作に応じた信号を制御装置２２Ａ，２２Ｂに出力する。これにより、制御装置２２Ａ，２２Ｂは、これらの信号に応じて、遮断弁１３Ａ，１３Ｂを開弁または閉弁させる。

【0042】

図１に示すように、ノズル検出器２５Ａ，２５Ｂは、ノズル掛け８Ａ，８Ｂに設けられている。ノズル検出器２５Ａ，２５Ｂは、ノズル７Ａ，７Ｂが掛止めされたか否かを検出する。即ち、ノズル検出器２５Ａ，２５Ｂは、ノズル７Ａ，７Ｂの有無を検知するノズル検知手段である。ノズル検出器２５Ａ，２５Ｂは、スイッチ（ノズルスイッチ）、例えば２位置切換型のスイッチにより構成されており、制御装置２２Ａ，２２Ｂに接続されている。

【0043】

ノズル検出器２５Ａ，２５Ｂは、例えば、ノズル７Ａ，７Ｂをノズル掛け８Ａ，８Ｂに掛止めすると、ノズル７Ａ，７Ｂによって押動され、オフ（ＯＦＦ）からオン（ＯＮ）状態に切換わる。ノズル検出器２５Ａ，２５Ｂは、ノズル７Ａ，７Ｂがノズル掛け８Ａ，８Ｂから取り出される（または取り外される）と、オン（ＯＮ）からオフ（ＯＦＦ）状態に切換わる。ノズル検出器２５Ａ，２５Ｂは、ノズル７Ａ，７Ｂがノズル掛け８Ａ，８Ｂに掛止めされたか否かに対応する検出信号Ｎ１，Ｎ２（ＯＮ信号またはＯＦＦ信号）を、制御装置２２Ａ，２２Ｂに出力する。

【0044】

なお、オン（ＯＮ）とオフ（ＯＦＦ）との関係は、逆にしてもよい。即ち、ノズル７Ａ，７Ｂが取り出されたときにオフ（ＯＦＦ）からオン（ＯＮ）になるようにしてもよい。また、ノズル検出器２５Ａ，２５Ｂは、筐体４側のノズル掛け８Ａ，８Ｂに設けるものに限らず、ノズル７Ａ，７Ｂ側に設けてもよい。いずれの場合も、水素ガスの非充填時（即ち、充填作業の待機時間）は、ディスペンサ３のノズル掛け８Ａ，８Ｂにノズル７Ａ，７Ｂが保持される。即ち、車両５１のタンク５２に水素ガスを充填する充填作業が終了すると、ノズル７Ａ，７Ｂは、ノズル掛け８Ａ，８Ｂに戻され、収納状態に保持される。

【0045】

水素ガスを燃料として走行駆動される車両５１は、例えば図１および図３に示すような４輪自動車（乗用車）である。車両５１は、例えば燃料電池と電動モータとを含んで構成される駆動装置（図示せず）、図１中および図３中に破線で示すタンク５２等を備えている。タンク５２は、水素ガスが充填される耐圧構造をもった容器として構成され、例えば車両５１の後部側に搭載されている。なお、タンク５２は、車両５１の後部側に限らず、前部側または中央部側に設ける構成としてもよい。タンク５２には、ノズル７Ａ（またはノズル７Ｂ）の接続カプラ７Ａ１（または接続カプラ７Ｂ１）が着脱可能に取り付けられる充填口５２Ａ，５２Ｂ（レセプタクル）が設けられている。後述するように、車両５１（タンク５２）には、ノズル７Ａの受信器２７Ａ（またはノズル７Ｂの受信器２７Ｂ）に車両５１の情報（より具体的には、タンク５２の情報）を送信する無線通信用の送信器５３が設けられている。

【0046】

図１では、１つの充填口５２Ａを有する車両５１を例示している。そして、図１では、この１つの充填口５２Ａに第１ノズル７Ａが接続された状態を二点鎖線で示している。これに対して、図３では、２つの充填口５２Ａ，５２Ｂを有する車両５１を例示している。２つの充填口５２Ａ，５２Ｂを有する車両５１の場合は、２つの充填口５２Ａ，５２Ｂに第１ノズル７Ａと第２ノズル７Ｂとを接続して充填を行うことができる。即ち、図３の車両５１は、大容量のタンク５２を搭載しており、充填効率を高めるために、タンク５２は、２つの充填口５２Ａ，５２Ｂを有している。

【0047】

いずれの場合も、車両５１のタンク５２内には、ノズル７Ａおよび／またはノズル７Ｂが充填口５２Ａおよび／または充填口５２Ｂに気密に連結（接続）された状態で水素ガスの充填が行われる。このとき、ノズル７Ａおよび／またはノズル７Ｂは、ロック機構により充填口５２Ａおよび／または充填口５２Ｂに対して不用意に外れることがないようにロックされる。ディスペンサ３は、冷却された水素ガスを車両５１のタンク５２に差圧を利用して充填する。なお、充填口５２Ａ，５２Ｂには内部に逆止弁が設けられている。この逆止弁は、ノズル７Ａ，７Ｂから車両５１のタンク５２側への水素ガスの流通を許容し、タンク５２からノズル７Ａ，７Ｂ側への水素ガスの流通を阻止する。

【0048】

ところで、２系統のガス供給管路を備えたガス充填装置は、一方のガス供給管路を用いて車両の燃料タンクに燃料ガスを充填するだけでなく、両方のガス供給管路を用いて同一車両の燃料タンクに燃料ガスを充填することが可能になる。そして、いずれの充填を行うか、即ち、「一方のガス供給管路を用いた個別充填を行う」か「両方のガス供給管路を用いた同一充填を行う」かは、例えば、充填を行う作業者にその選択の操作をさせるようにすることが考えられる。より具体的には、充填を開始するときに、１系統の充填（個別充填）と２系統の充填（同一充填）とを切り換えるスイッチ（例えば、個別・同一切り換えボタン）を、作業者に操作させるようにすることが考えられる。しかし、この場合、作業者が誤った操作をしてしまうと、作業者の意図しない充填が行われる可能性がある。また、切り換えの操作が手間になることに加えて、誤った操作をした場合に、誤計量（充填量の誤表示、誤精算）をしてしまう可能性もある。

【0049】

そこで、実施形態では、充填対象のタンク情報を受信する受信器を備える構成としている。この上で、制御装置（制御手段）は、充填を開始するときに、受信器からのタンク情報に基づいて、両方の充填系統が同一の車両に接続されているか否かを判定する。そして、両方の充填系統が同一の車両に接続されていると判定した場合は、両方の充填系統による充填（同一充填）を行い、それぞれの系統の充填量を合算する。これに対して、両方の充填系統が同一の車両に接続されていないと判定した場合は、単一の充填系統による充填（個別充填）を行い、それぞれの系統毎の充填量とする（充填量は合算しない）。

【0050】

このため、実施形態によれば、作業者が同一充填であるか個別充填であるかを選択する必要がなくなり、同一充填と判定された場合は、自動的に充填量が合算される。また、充填を開始するときに、同一充填であるか個別充填であるかが制御装置（制御手段）により自動的に選択されるため、作業者による誤操作を防止できる。さらに、一方のノズルを車両の充填口に接続して充填を開始した後、他方のノズルを同一車両の別の充填口に接続して充填を開始したときに、個別充填（充填量の個別表示、個別精算）から同一充填（充填量の合算表示、合算精算）に自動で切り換えることが可能になる。この場合は、両方のノズルを充填口に接続してから同一充填を開始する場合と比較して、充填時間を短縮することができる。以下、これらの点について、詳しく説明する。

【0051】

図１ないし図３に示すように、水素ガス充填装置１は、複数のガス供給管路５Ａ，５Ｂと、流量計１４Ａ，１４Ｂ、遮断弁１３Ａ，１３Ｂおよびノズル７Ａ，７Ｂと、制御手段（制御部）および判定手段（判定部）に対応する制御装置２２Ａ，２２Ｂと、情報取得部としての受信器２７Ａ，２７Ｂと、を備えている。複数のガス供給管路５Ａ，５Ｂは、ガス供給源としてのガス蓄圧器２に接続されている。流量計１４Ａ，１４Ｂ、遮断弁１３Ａ，１３Ｂおよびノズル７Ａ，７Ｂは、複数のガス供給管路５Ａ，５Ｂにそれぞれ設けられている。この場合、複数のガス供給管路５Ａ，５Ｂは、２つのガス供給管路５Ａ，５Ｂ、即ち、一方のガス供給系統（Ａ系統）に対応する第１ガス供給管路５Ａ、および、他方のガス供給系統（Ｂ系統）に対応する第２ガス供給管路５Ｂである。そして、第１ガス供給管路５Ａには、第１流量計１４Ａ、第１遮断弁１３Ａおよび第１ノズル７Ａが設けられている。第２ガス供給管路５Ｂには、第２流量計１４Ｂ、第２遮断弁１３Ｂおよび第２ノズル７Ｂが設けられている。

【0052】

制御装置２２Ａ，２２Ｂは、ガス（燃料ガス、水素ガス）の充填を制御する制御部（制御手段）を有している。制御部は、遮断弁１３Ａ，１３Ｂの開閉動作を制御することにより、ガスの充填を制御する。即ち、制御装置２２Ａ，２２Ｂは、複数のガス供給管路５Ａ，５Ｂの一方または両方を通じて充填対象となる車両５１（タンク５２）に水素ガスの充填を行う。この場合、制御装置２２Ａ，２２Ｂは、充填を開始するときに遮断弁１３Ａ，１３Ｂを開弁し、充填を終了（停止）するときに遮断弁１３Ａ，１３Ｂを閉弁する。また、第１制御装置２２Ａは、例えば、第１流量計１４Ａ、第１圧力センサ２０Ａ、第１温度センサ２１Ａの測定結果を監視しつつ、第１流量調整弁１２Ａの開度等を予め設定された制御方式（定圧上昇制御方式、定流量制御方式等）で調整する。また、第２制御装置２２Ｂは、例えば、第２流量計１４Ｂ、第２圧力センサ２０Ｂ、第２温度センサ２１Ｂの測定結果を監視しつつ、第２流量調整弁１２Ｂの開度等を予め設定された制御方式（定圧上昇制御方式、定流量制御方式等）で調整する。

【0053】

受信器２７Ａ，２７Ｂは、車両５１（タンク５２）に関する情報を取得する。受信器２７Ａ，２７Ｂが取得した情報（情報に対応する信号Ｄ１，Ｄ２）は、制御装置２２Ａ，２２Ｂに入力される。受信器２７Ａ，２７Ｂは、それぞれのノズル７Ａ，７Ｂに設けられている。即ち、第１ノズル７Ａには、第１受信器２７Ａが設けられており、第２ノズル７Ｂには、第２受信器２７Ｂが設けられている。受信器２７Ａ，２７Ｂは、車両５１（タンク５２）にノズル７Ａ，７Ｂが接続されたことにより、車両５１（タンク５２）から情報を取得する。このために、車両５１（タンク５２）には、ノズル７Ａの受信器２７Ａおよび／またはノズル７Ｂの受信器２７Ｂに車両５１（タンク５２）に関する情報を送信する送信器５３が設けられている。送信器５３と受信器２７Ａ，２７Ｂは、例えば、ＩＲ通信（赤外線通信）等の無線通信により車両５１（タンク５２）に関する情報を送信、受信する。

【0054】

第１ノズル７Ａが車両５１（タンク５２）の充填口５２Ａ（または充填口５２Ｂ）に接続されると、第１受信器２７Ａは、車両５１の送信器５３を介して、車両５１（タンク５２）に関する情報を取得する。また、第２ノズル７Ｂが車両５１（タンク５２）の充填口５２Ｂ（または充填口５２Ａ）に接続されると、第２受信器２７Ｂは、車両５１の送信器５３を介して、車両５１（タンク５２）に関する情報を取得する。受信器２７Ａ，２７Ｂにより取得される情報は、車両５１のタンク５２に関する情報である。タンク５２に関する情報としては、例えば、タンク容量、タンク圧力、タンク温度、タンク識別情報の少なくともいずれかを用いることができる。また、情報としては、車両５１の情報、例えば、車種情報、車両型番情報、車両識別情報、自動車登録情報等を用いることもできる。

【0055】

このような情報を車両５１から送信できるように、車両５１のタンク５２には、圧力センサ５４が設けられている。圧力センサ５４は、タンク５２内の圧力（水素ガスの圧力）を測定し、測定した圧力に応じた検出信号を車両５１のコントロールユニットとなる車両制御装置５６へ出力する。また、車両５１のタンク５２には、温度センサ５５が設けられている。温度センサ５５は、タンク５２内の温度（水素ガスの温度）を測定し、測定した温度に応じた検出信号を車両５１の車両制御装置５６へ出力する。

【0056】

車両制御装置５６の入力側は、圧力センサ５４および温度センサ５５に接続されている。車両制御装置５６の出力側は、送信器５３に接続されている。車両制御装置５６は、例えば、ＣＰＵ（演算装置）、メモリ等を有するマイクロコンピュータにより構成されている。メモリには、例えば、タンク５２に関する情報として、タンク容量、タンク識別情報等が格納されている。また、メモリには、例えば、車両５１の情報として、車種情報、車両型番情報、車両識別情報、自動車登録情報等が格納されている。さらに、メモリには、圧力センサ５４が検出した圧力（タンク圧力）、温度センサ５５が検出した温度（タンク温度）が更新可能に格納される。

【0057】

車両制御装置５６は、タンク５２の充填口５２Ａ（５２Ｂ）にノズル７Ａ（７Ｂ）が充填されると、車両５１（タンク５２）の送信器５３および受信器２７Ａ（２７Ｂ）を介してディスペンサ３の制御装置２２Ａ，２２Ｂにタンク５２に関する情報を送信する。また、車両制御装置５６は、ディスペンサ３の制御装置２２Ａ，２２Ｂに車両５１に関する情報を送信することもできる。このように、制御装置２２Ａ，２２Ｂは、車両５１（タンク５２）の送信器５３およびノズル７Ａ（７Ｂ）の受信器２７Ａ（２７Ｂ）を介して、タンク５２に関する情報および／または車両５１に関する情報を取得することができる。なお、図示は省略するが、タンク５２の充填口５２Ａ，５２Ｂには、ノズル７Ａ，７Ｂが接続されたことを検出するノズル接続検出センサが設けられている。ノズル接続検出センサは、ノズル７Ａ，７Ｂが接続されると、その検出信号を車両制御装置５６に出力する。

【0058】

第１制御装置２２Ａと第２制御装置２２Ｂとのうちの少なくとも一方、例えば、第１制御装置２２Ａは、受信器２７Ａ，２７Ｂにより取得した情報により、複数のガス供給管路５Ａ，５Ｂを用いた同一の車両５１（タンク５２）への充填（同一充填）であるか、または、単一のガス供給管路５Ａ（５Ｂ）を用いた充填（個別充填）であるか、を判定する判定部（判定手段）を備えている。判定部は、後述する図４のＳ３およびＳ４の処理に対応する。そして、制御装置２２Ａ，２２Ｂは、判定部による判定結果に応じて、水素ガス（ガス）の充填を制御する。即ち、制御装置２２Ａ，２２Ｂの制御部は、図４のＳ３およびＳ４の処理の結果に応じて、Ｓ５ないしＳ７の処理、または、Ｓ８ないしＳ１２の処理を行う。

【0059】

なお、判定部は、第２制御装置２２Ｂが備えてもよい。また、例えば、第１制御装置２２Ａと第２制御装置２２Ｂとを一つの制御装置により構成する場合は、この一つの制御装置が判定部を備える構成とすることができる。また、第１制御装置２２Ａおよび第２制御装置２２Ｂとは別の制御装置、例えば、第１制御装置２２Ａおよび第２制御装置２２Ｂを統合的に管理する管理用の制御装置を有する構成の場合は、この管理用の制御装置が判定部を備える構成とすることができる。

【0060】

いずれの場合も、判定部は、それぞれのノズル７Ａ，７Ｂに設けられた受信器２７Ａ，２７Ｂからの情報に基づいて、複数のガス供給管路５Ａ，５Ｂを用いた同一の車両５１（タンク５２）への充填（同一充填）であるか、または、単一のガス供給管路５Ａ（５Ｂ）を用いた充填（個別充填）であるか、を判定する。また、判定部は、取得したタンク情報が一致した場合に、複数のガス供給管路５Ａ，５Ｂを用いた同一の車両５１（タンク５２）への充填（同一充填）である、と判定する。例えば、第１ノズル７Ａの第１受信器２７Ａが取得したタンク容量、タンク圧力、タンク温度および／またはタンク識別情報と、第２ノズル７Ｂの第２受信器２７Ｂが取得したタンク容量、タンク圧力、タンク温度および／またはタンク識別情報と、が一致した場合に、同一充填であると判定することができる。また、例えば、第１ノズル７Ａの第１受信器２７Ａが取得した車種、車両型番、車両識別番号および／または自動車登録番号と、第２ノズル７Ｂの第２受信器２７Ｂが取得した車種、車両型番、車両識別番号および／または自動車登録番号と、が一致した場合に、同一充填であると判定することができる。

【0061】

このように、実施形態では、ノズル７Ａ，７Ｂに通信手段（受信部）としての受信器２７Ａ，２７Ｂが設けられている。受信器２７Ａ，２７Ｂは、車両５１に設けられた送信器５３と通信を行う。この場合、ノズル７Ａ（７Ｂ）が車両５１の充填口５２Ａ（５２Ｂ）と接続したことにより、ノズル７Ａ（７Ｂ）側の受信器２７Ａ（２７Ｂ）と車両５１側の送信器５３との通信が行われる。通信情報には、タンク５２に関する情報が含まれる。そして、送信器５３にて受信したタンク５２に関する情報は、制御装置２２Ａ，２２Ｂに送られる。これにより、判定部は、同一の充填対象に対する充填か否かを判定する。

【0062】

なお、これ以外の判定方法としては、例えば、車両５１の送信器５３から送信される情報として、車両情報（例えば、車種、車両型番、車両識別番号、自動車登録番号等）を用いることもできる。即ち、第１ノズル７Ａの第１受信器２７Ａが取得した車種、車両型番、車両識別番号または自動車登録番号と、第２ノズル７Ｂの第２受信器２７Ｂが取得した車種、車両型番、車両識別番号または自動車登録番号と、が一致した場合に、同一充填であると判定してもよい。さらに、情報取得部は、ノズル７Ａ，７Ｂの受信器２７Ａ，２７Ｂに限らず、例えば、水素ガス充填装置１（ディスペンサ３）に備えられた監視カメラ（図示せず）等のカメラ（画像取得装置、映像取得装置）を用いて画像解析、映像解析を行い、同一の充填対象に対する充填か否かを判定してもよい。この場合、例えば、解析結果としての車両情報（例えば、車種、車両型番、車両識別番号、自動車登録番号等）とデータベース（ＤＢ）の情報（例えば、車両情報とタンク情報（大容量であるか否か）とが対応付けられた情報）とに基づいて、同一の充填対象に対する充填か否かを判断してもよい。さらに、それぞれのノズルの受信器から車両に関する情報を取得することなく、一方のノズルの受信器にて取得した車両に関する情報に基づき予め車両情報と充填方式（個別充填か同一充填）とが対応づけられたデータが記憶された記憶部から当該取得した車両に関する情報に対応する充填方式（個別充填か同一充填）を読み出し判定してもよい。

【0063】

次に、図４および図５に示す流れ図（フローチャート）について説明する。図４および図５は、第１制御装置２２Ａで行われる制御処理を示す流れ図である。図４および図５の処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。また、第１制御装置２２Ａと第２制御装置２２Ｂは、通信線２６で接続されている。このため、第１制御装置２２Ａと第２制御装置２２Ｂは、互いに必要な信号（制御信号、指令信号、検出信号、情報信号等）を送信、受信できる。なお、図４および図５の制御処理は、第２制御装置２２Ｂで行ってもよいし、制御装置２２Ａ，２２Ｂとは別の管理用の制御装置で行ってもよい。

【0064】

図４および図５の制御処理は、例えば、制御装置２２Ａ，２２Ｂへの通電により開始される。第１制御装置２２Ａは、Ｓ１で、Ａ系統またはＢ系統の充填開始ボタン２４Ａ１，２４Ｂ１が操作されたか否かを判定する。即ち、第１制御装置２２Ａは、Ａ系統の第１充填開始ボタン２４Ａ１またはＢ系統の第２充填開始ボタン２４Ｂ１が操作されたか否かを判定する。Ｓ１で「ＮＯ」、即ち、第１充填開始ボタン２４Ａ１および第２充填開始ボタン２４Ｂ１が操作されていないと判定された場合は、スタートに戻り、Ｓ１以降の処理を繰り返す。

【0065】

これに対して、Ｓ１で「ＹＥＳ」、即ち、第１充填開始ボタン２４Ａ１または第２充填開始ボタン２４Ｂ１が操作されたと判定された場合は、Ｓ２に進む。なお、第１充填開始ボタン２４Ａ１と第２充填開始ボタン２４Ｂ１との両方が同時操作された場合も、「ＹＥＳ」と判定され、Ｓ２に進む。Ｓ２では、車両情報を取得する。即ち、第１制御装置２２Ａは、第１受信器２７Ａおよび第２受信器２７Ｂを通じて車両５１（タンク５２）から車両情報、より詳しくは、タンク情報（タンク容量、タンク圧力、タンク温度、タンク識別情報等）を取得する。

【0066】

Ｓ２に続くＳ３では、Ａ系統とＢ系統との両方から車両情報を取得したか否かを判定する。即ち、Ｓ３では、第１受信器２７Ａを通じて車両情報が取得され、かつ、第２受信器２７Ｂを通じて車両情報が取得されたか否かを判定する。Ｓ３で「ＹＥＳ」、即ち、第１受信器２７Ａと第２受信器２７Ｂとの両方から車両情報が取得されたと判定された場合は、Ｓ４に進む。Ｓ４では、両方のタンク情報が同じか否かを判定する。即ち、Ｓ４では、第１受信器２７Ａを通じて取得されたタンク情報と第２受信器２７Ｂを通じて取得されたタンク情報とが一致するか否かを判定する。

【0067】

Ｓ４で「ＹＥＳ」、即ち、両方のタンク情報が同じと判定された場合は、Ｓ８に進む。この場合は、同一の車両５１（タンク５２）に第１ノズル７Ａと第２ノズル７Ｂとの両方が接続されている場合に対応する。これに対して、Ｓ４で「ＮＯ」、即ち、両方のタンク情報が異なると判定された場合は、Ｓ５に進む。この場合は、第１ノズル７Ａと第２ノズル７Ｂとが、それぞれ異なる車両５１（タンク５２）に接続されている場合に対応する。

【0068】

一方、Ｓ３で「ＮＯ」、即ち、第１受信器２７Ａと第２受信器２７Ｂとの両方から車両情報が取得されていないと判定された場合は、Ｓ５に進む。なお、この場合は、「（Ａ）第１受信器２７Ａを通じて車両情報が取得されたが第２受信器２７Ｂを通じて車両情報が取得されなかった」、「（Ｂ）第１受信器２７Ａを通じて車両情報が取得されなかったが第２受信器２７Ｂを通じて車両情報が取得された」、または、「（Ｃ）第１受信器２７Ａからも第２受信器２７Ｂからも車両情報が取得されなかった」のいずれかに対応する。そこで、（Ｃ）の場合は、Ｓ２の前に戻る、または、充填を中止する。これに対して、（Ａ）または（Ｂ）の場合は、Ｓ５に進む。

【0069】

Ｓ５では、個別制御モードを行う。即ち、Ｓ５では、Ｓ１で操作された充填開始ボタン２４Ａ１（２４Ｂ１）の系統、かつ、Ｓ２で車両情報が取得された系統の流量調整弁１２Ａ（１２Ｂ）および遮断弁１３Ａ（１３Ｂ）を開弁する。また、この場合は、開弁した系統の流量計１４Ａ（１４Ｂ）を用いて充填量を算出し、算出した充填量を当該系統の表示器２３Ａ（２３Ｂ）に表示する。この場合、表示器２３Ａ（２３Ｂ）の充填量を０にリセットした後、車両５１（タンク５２）に充填した充填量を表示する。

【0070】

例えば、Ａ系統の第１充填開始ボタン２４Ａ１が操作され、かつ、第１受信器２７Ａを通じて車両情報が取得された場合であれば、Ａ系統の第１流量調整弁１２Ａおよび第１遮断弁１３Ａを開弁する。また、Ａ系統の第１流量計１４Ａを用いて充填量を算出し、算出した充填量をＡ系統の第１表示器２３Ａに表示する。一方、Ｂ系統の第２充填開始ボタン２４Ｂ１が操作され、かつ、第２受信器２７Ｂを通じて車両情報が取得された場合であれば、Ｂ系統の第２流量調整弁１２Ｂおよび第２遮断弁１３Ｂを開弁する。また、Ｂ系統の第２流量計１４Ｂを用いて充填量を算出し、算出した充填量をＢ系統の第２表示器２３Ｂに表示する。なお、Ｓ１で操作された充填開始ボタン２４Ａ１（２４Ｂ１）の系統とＳ２で車両情報が取得された系統とが異なっていた場合は、充填を中止する。また、Ｓ３で「ＮＯ」と判定されてＳ５に進み、Ａ系統とＢ系統とのうちの一方の系統で個別充填が開始された場合は、他方の系統が待機中の場合に対応する。この場合は、他方の系統での充填も行うことができるように、一方の系統の個別充填を行いつつ（即ち、Ｓ５以降の処理を行いつつ）、この処理とは別にＳ１以降の処理を開始し、Ｓ５以降の処理とＳ１以降の処理とを並列に行う。

【0071】

Ｓ５で流量調整弁１２Ａ（１２Ｂ）および遮断弁１３Ａ（１３Ｂ）を開弁したら、図４の「Ａ」および図５の「Ａ」を介して、図５のＳ６に進む。Ｓ６では、充填を終了する圧力として設定された目標圧力に達したか否かを判定する。圧力は、圧力センサ２０Ａ（２０Ｂ）により検出することができる。Ｓ６で「ＮＯ」、即ち、圧力センサ２０Ａ（２０Ｂ）により検出される圧力が目標圧力（充填終了圧力）に達していないと判定された場合は、Ｓ６の前に戻り、Ｓ６の処理を繰り返す。Ｓ６で「ＹＥＳ」、即ち、圧力センサ２０Ａ（２０Ｂ）により検出される圧力が目標圧力（充填終了圧力）に達したと判定された場合は、Ｓ７に進む。

【0072】

なお、Ｓ６の処理を繰り返しているときに、充填停止ボタン２４Ａ２（２４Ｂ２）が操作された場合も、Ｓ７に進む。Ｓ７では、Ｓ５で開弁した流量調整弁１２Ａ（１２Ｂ）および遮断弁１３Ａ（１３Ｂ）を閉弁し、充填を終了する。また、充填を終了した系統の脱圧弁１９Ａ（１９Ｂ）を開弁し、ノズル７Ａ（７Ｂ）の圧力を大気圧レベルに減圧する。Ｓ７で流量調整弁１２Ａ（１２Ｂ）および遮断弁１３Ａ（１３Ｂ）を閉弁したら、図５のリターンを介して図４のスタートに戻り、Ｓ１以降の処理を繰り返す。

【0073】

一方、Ｓ８では、一方の系統が充填中であるか否かを判定する。即ち、Ｓ８よりも前の処理では、両方のタンク情報が同じ、即ち、同一の車両５１（タンク５２）に第１ノズル７Ａと第２ノズル７Ｂとの両方が接続されていると判定されているため、Ｓ８では、Ａ系統またはＢ系統で既に充填が開始されているか否かを判定する。この判定は、例えば、第１流量計１４Ａで検出される流量と第２流量計１４Ｂで検出される流量とから判定することができる。即ち、流量が０を超えている流量計１４Ａ（１４Ｂ）があれば、当該流量計１４Ａ（１４Ｂ）の系統が充填中であると判定できる。なお、充填中であるか否かは、流量計１４Ａ（１４Ｂ）で検出される流量に限らず、圧力センサ２０Ａ，２０Ｂで検出される圧力を用いてもよい。

【0074】

Ｓ８で「ＮＯ」、即ち、Ａ系統もＢ系統も充填中でないと判定された場合は、Ｓ９に進む。この場合は、これから同一の車両５１（タンク５２）にＡ系統とＢ系統との両方を通じて水素ガスの充填を開始する場合に対応する。そこで、Ｓ９では、Ａ系統とＢ系統との両方の系統の流量調整弁１２Ａ，１２Ｂおよび遮断弁１３Ａ，１３Ｂを開弁する。また、この場合は、両方の系統の流量計１４Ａ，１４Ｂを用いてＡ系統の充填量とＢ系統の充填量を算出すると共に、算出したＡ系統の充填量とＢ系統の充填量を合算し、その合算した値（合算値）を両方の表示器２３Ａ，２３Ｂに表示する。また、この場合、第１制御装置２２Ａと第２制御装置２２Ｂは、Ａ系統とＢ系統との両方を通じた充填を適切に行うことができるように、例えば、第１制御装置２２Ａを上位（親側）とし第２制御装置２２Ｂを下位（子側）とした協調制御を行うことが望ましい。Ｓ９で両方の系統の流量調整弁１２Ａ，１２Ｂおよび遮断弁１３Ａ，１３Ｂを開弁したら、図４の「Ｂ」および図５の「Ｂ」を介して、図５のＳ１１に進む。

【0075】

これに対して、Ｓ８で「ＹＥＳ」、即ち、一方の系統が充填中であると判定された場合は、Ｓ１０に進む。この場合は、一方の系統（例えば、Ａ系統）による充填が既に開始されている車両５１（タンク５２）に対して他方の系統（例えば、Ｂ系統）による充填も開始することにより、Ａ系統とＢ系統との両方を通じて同一の車両５１（タンク５２）に水素ガスを充填する場合に対応する。このため、Ｓ１０では、他方の系統の流量調整弁１２Ｂ（または１２Ａ）および遮断弁１３Ｂ（または１３Ａ）を開弁する。また、この場合は、一方の系統の流量計１４Ａ（または１４Ｂ）を用いて算出されている充填量に他方の系統の流量計１４Ｂ（または１４Ａ）を用いて算出される充填量を合算し、その合算した値（合算値）を両方の表示器２３Ａ，２３Ｂに表示する。また、この場合、第１制御装置２２Ａと第２制御装置２２Ｂは、Ａ系統とＢ系統との両方を通じた充填を適切に行うことができるように、例えば、第１制御装置２２Ａを上位（親側）とし第２制御装置２２Ｂを下位（子側）とした協調制御を行うことが望ましい。Ｓ１０で他方の系統の流量調整弁１２Ｂ（または１２Ａ）および遮断弁１３Ｂ（または１３Ａ）を開弁したら、図４の「Ｂ」および図５の「Ｂ」を介して、図５のＳ１１に進む。Ｓ１１では、充填を終了する圧力として設定された目標圧力に達したか否かを判定する。圧力は、圧力センサ２０Ａ，２０Ｂにより検出することができる。

【0076】

Ｓ１１で「ＮＯ」、即ち、圧力センサ２０Ａ，２０Ｂにより検出される圧力が目標圧力（充填終了圧力）に達していないと判定された場合は、Ｓ１１の前に戻り、Ｓ１１の処理を繰り返す。Ｓ１１で「ＹＥＳ」、即ち、圧力センサ２０Ａ，２０Ｂにより検出される圧力が目標圧力（充填終了圧力）に達したと判定された場合は、Ｓ１２に進む。なお、Ｓ１２の処理を繰り返しているときに、充填停止ボタン２４Ａ２，２４Ｂ２が操作された場合も、Ｓ１２に進む。Ｓ１２では、Ａ系統とＢ系統との両方の流量調整弁１２Ａ，１２Ｂおよび遮断弁１３Ａ，１３Ｂを閉弁し、充填を終了する。また、両方の系統の脱圧弁１９Ａ，１９Ｂを開弁し、ノズル７Ａ，７Ｂの圧力を大気圧レベルに減圧する。Ｓ１２でＡ系統とＢ系統との両方の流量調整弁１２Ａ，１２Ｂおよび遮断弁１３Ａ，１３Ｂを閉弁したら、図５のリターンを介して図４のスタートに戻り、Ｓ１以降の処理を繰り返す。

【0077】

実施形態による水素ガス充填装置１は、上述の如き構成を有するもので、次に、水素ガス充填装置１による水素ガスの充填作業について説明する。

【0078】

まず、１つの充填口５２Ａを有する車両５１が、ディスペンサ３（筐体４）の正面４Ａ側に停車した場合について説明する。この場合、充填作業を行う作業者は、例えば、Ａ系統の第１ノズル７Ａを第１ノズル掛け８Ａから取り外す。そして、図１中に二点鎖線で示すように、第１ノズル７Ａをタンク５２の充填口５２Ａに接続し、当該接続部位をロックする。この状態で、充填作業の作業者が、筐体４の正面４Ａ側の充填開始ボタン２４Ａ１をＯＮ操作すると、第１制御装置２２Ａは、図４のＳ２、Ｓ３およびＳ５の処理に基づいて、Ａ系統の個別充填と判定し、第１流量調整弁１２Ａと第１遮断弁１３Ａに開弁信号を出力する。即ち、第１制御装置２２Ａは、第１流量調整弁１２Ａおよび遮断弁１３Ａを開弁させる。

【0079】

これにより、ガス蓄圧器２内の水素ガスは、Ａ系統、即ち、第１ガス供給管路５Ａ、第１ホース６Ａおよびノズル７Ａを通じて車両５１のタンク５２に充填される。第１制御装置２２Ａは、例えば第１流量計１４Ａ、第１圧力センサ２０Ａ、第１温度センサ２１Ａの測定結果を監視しつつ、第１流量調整弁１２Ａの開度等を予め設定された制御方式（定圧上昇制御方式、定流量制御方式等）で調整する。これにより、第１ガス供給管路５Ａ内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。

【0080】

このとき、第１制御装置２２Ａは、第１流量計１４Ａからの流量パルスを積算して水素ガスの充填量（流量）を演算する。第１制御装置２２Ａは、算出した充填量を、第１表示器２３Ａに表示する。また、第１制御装置２２Ａは、水素ガスの充填量が予め設定された目標充填量に達したか否かを判定する。これと共に、第１制御装置２２Ａは、第１圧力センサ２０Ａにより検出した水素ガスの圧力が予め設定された目標充填圧力（目標充填圧）に達したか否かを判定する。目標とする充填量（圧力）に達すると、第１制御装置２２Ａからの信号により第１流量調整弁１２Ａおよび第１遮断弁１３Ａが閉弁され、タンク５２への水素ガスの充填が終了される。なお、作業者が充填停止ボタン２４Ａ２，２４Ｂ２を操作した場合にも、充填が終了される。

【0081】

充填が終了すると、第１制御装置２２Ａは、充填終了制御処理を実行する。この充填終了制御処理では、第１制御装置２２Ａからの信号により第１脱圧弁１９Ａを閉弁状態から開弁するように制御する。そして、第１脱圧弁１９Ａが開弁したときには、第１脱圧管路１８Ａが大気に開放されることにより、第１ノズル７Ａ側のガスが外部に放出されて第１ノズル７Ａの圧力が大気圧レベルに減圧される。この状態で、作業者は第１ノズル７Ａの接続カプラ７Ａ１をタンク５２の充填口５２Ａから取り外すことができる。

【0082】

タンク５２の充填口５２Ａから取り外された第１ノズル７Ａは、作業者によって第１ノズル掛け８Ａに戻され、手動操作により掛止めされる。第１ノズル掛け８Ａに設けられた第１ノズル検出器２５Ａは、第１ノズル７Ａが第１ノズル掛け８Ａに戻されたか否かを検出する。第１ノズル７Ａが第１ノズル掛け８Ａに戻されて掛止めされると、第１ノズル検出器２５Ａからの検出信号が第１制御装置２２Ａに出力される。これにより、第１制御装置２２Ａは、第１ノズル７Ａによる充填作業が終了したと判定し、次回の充填作業に対する待機状態となる。

【0083】

なお、このような充填中、即ち、ディスペンサ３の正面４Ａ側の車両５１に個別充填を行っているときに、ディスペンサ３の背面４Ｂ側に別の車両が停車した場合、この別の車両にも個別充填を行うことができる。この場合、充填作業の作業者が、筐体４の背面４Ｂ側の充填開始ボタン２４Ｂ１をＯＮ操作すると、第１制御装置２２Ａは、図４のＳ２、Ｓ３およびＳ５の処理に基づいて、Ｂ系統の個別充填と判定し、この判定結果を第２制御装置２２Ｂに出力する。これにより、第２制御装置２２Ｂは、ディスペンサ３の背面４Ｂ側に停車した車両に対して、Ｂ系統となる第２ガス供給管路５Ｂ、第２ホース６Ｂおよび第２ノズル７Ｂを通じて個別充填を開始する。このように、個別充填は、ディスペンサ３の正面４Ａ側と背面４Ｂ側との両方に停車した車両５１に対して同時に行うことができる。

【0084】

次に、２つの充填口５２Ａを有する車両５１が、ディスペンサ３（筐体４）の正面４Ａ側に停車した場合について説明する。図３に示すように、２つの充填口５２Ａ，５２Ｂを有する車両５１が、ディスペンサ３（筐体４）の正面４Ａ側に停車する。充填作業を行う作業者は、第１ノズル７Ａを第１ノズル掛け８Ａから取り外す。また、第２ノズル７Ｂを第２ノズル掛け８Ｂから取り外す。そして、第１ノズル７Ａおよび第２ノズル７Ｂを車両５１の２つの充填口５２Ａ，５２Ｂに接続し、当該接続部位をロックする。この状態で、充填作業の作業者が、充填開始ボタン２４Ａ１をＯＮ操作すると、第１制御装置２２Ａは、図４のＳ２、Ｓ３、Ｓ４、Ｓ８、Ｓ９の処理に基づいて、Ａ系統とＢ系統との同一充填を同時に開始する同時同一充填と判定する。この判定結果は、第１制御装置２２Ａから第２制御装置２２Ｂに出力される。これにより、制御装置２２Ａ，２２Ｂは、第１流量調整弁１２Ａ、第２流量調整弁１２Ｂ、第１遮断弁１３Ａおよび第２遮断弁１３Ｂに開弁信号を出力する。即ち、制御装置２２Ａ，２２Ｂは、第１流量調整弁１２Ａ、第２流量調整弁１２Ｂ、第１遮断弁１３Ａおよび第２遮断弁１３Ｂを開弁させる。

【0085】

これにより、ガス蓄圧器２内の水素ガスは、Ａ系統、即ち、第１ガス供給管路５Ａ、第１ホース６Ａ、ノズル７Ａおよび充填口５２Ａを通じて車両５１のタンク５２に充填され、かつ、Ｂ系統、即ち、第２ガス供給管路５Ｂ、第２ホース６Ｂ、ノズル７Ｂおよび充填口５２Ｂを通じて車両５１のタンク５２に充填される。このとき、第１制御装置２２Ａは、例えば第１流量計１４Ａ、第１圧力センサ２０Ａ、第１温度センサ２１Ａの測定結果を監視しつつ、第１流量調整弁１２Ａの開度等を予め設定された制御方式（定圧上昇制御方式または定流量制御方式）等で調整する。これと共に、第２制御装置２２Ｂは、例えば第２流量計１４Ｂ、第２圧力センサ２０Ｂ、第２温度センサ２１Ｂの測定結果を監視しつつ、第２流量調整弁１２Ｂの開度等を予め設定された制御方式（定圧上昇制御方式または定流量制御方式）等で調整する。この場合、制御装置２２Ａ，２２Ｂは、Ａ系統とＢ系統とで同じ制御方式で充填を行う。また、第１制御装置２２Ａと第２制御装置２２Ｂは、Ａ系統とＢ系統との両方を通じた充填を適切に行うことができるように、第１制御装置２２Ａを上位とした協調制御を行う。これにより、第１ガス供給管路５Ａ内および第２ガス供給管路５Ｂ内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。

【0086】

このとき、第１制御装置２２Ａは、第１流量計１４Ａからの流量パルスを積算してＡ系統の水素ガスの充填量（流量）を演算する。また、第２制御装置２２Ｂは、第２流量計１４Ｂからの流量パルスを積算してＢ系統の水素ガスの充填量（流量）を演算する。第１制御装置２２Ａは、Ａ系統の充填量とＢ系統の充填量とを合算し、この合算した充填量を表示器２３Ａ，２３Ｂに表示する。また、第１制御装置２２Ａは、合算した充填量が水素ガスの充填量が予め設定された目標充填量に達したか否かを判定する。これと共に、第１制御装置２２Ａは、第１圧力センサ２０Ａおよび／または第２圧力センサ２０Ｂにより検出した水素ガスの圧力が予め設定された目標充填圧力（目標充填圧）に達したか否かを判定する。目標とする充填量または圧力に達すると、制御装置２２Ａ，２２Ｂからの信号により第１流量調整弁１２Ａ、第２流量調整弁１２Ｂ、第１遮断弁１３Ａおよび第２遮断弁１３Ｂが閉弁され、タンク５２への水素ガスの充填が終了される。なお、作業者が充填停止ボタン２４Ａ２，２４Ｂ２を操作した場合にも、充填が終了される。また、Ａ系統およびＢ系統による同一充填の場合は、例えば、充填終了前にＡ系統とＢ系統とのうちのいずれか一方の系統による充填を停止（一方の系統の遮断弁を閉弁）し、他方の系統により満充填を完了させるようにしてもよい。

【0087】

充填が終了すると、第１制御装置２２Ａは、充填終了制御処理を実行する。この充填終了制御処理では、制御装置２２Ａ，２２Ｂからの信号により第１脱圧弁１９Ａおよび第２脱圧弁１９Ｂを閉弁状態から開弁するように制御する。そして、第１脱圧弁１９Ａの開弁に伴って第１脱圧管路１８Ａが大気に開放されることにより、第１ノズル７Ａ側のガスが外部に放出されて第１ノズル７Ａの圧力が大気圧レベルに減圧される。また、第２脱圧弁１９Ｂの開弁に伴って第２脱圧管路１８Ｂが大気に開放されることにより、第２ノズル７Ｂ側のガスが外部に放出されて第２ノズル７Ｂの圧力が大気圧レベルに減圧される。この状態で、作業者は第１ノズル７Ａの接続カプラ７Ａ１および第２ノズル７Ｂの接続カプラ７Ｂ１をタンク５２の充填口５２Ａ，５２Ｂから取り外すことができる。

【0088】

タンク５２の充填口５２Ａ，５２Ｂから取り外された第１ノズル７Ａおよび第２ノズル７Ｂは、作業者によって第１ノズル掛け８Ａおよび第２ノズル掛け８Ｂに戻され、手動操作により掛止めされる。ノズル検出器２５Ａ，２５Ｂは、ノズル７Ａ，７Ｂがノズル掛け８Ａ，８Ｂに戻されたか否かを検出する。ノズル７Ａ，７Ｂがノズル掛け８Ａ，８Ｂに戻されて掛止めされると、ノズル検出器２５Ａ，２５Ｂからの検出信号が制御装置２２Ａ，２２Ｂに出力される。これにより、制御装置２２Ａ，２２Ｂは、ノズル７Ａ，７Ｂによる同一充填の作業が終了したと判定し、次回の充填作業に対する待機状態となる。なお、このような同一充填は、ディスペンサ３（筐体４）の背面４Ｂ側に停車した車両（２つの充填口を有する車両）に対して行うこともできる。

【0089】

なお、２つの充填口５２Ａを有する車両５１に充填を行うときに、一方の系統による充填を開始してから、他方の系統による充填を開始する場合もある。即ち、充填作業を行う作業者は、第１ノズル７Ａを第１ノズル掛け８Ａから取り外し、第１ノズル７Ａを車両５１の２つの充填口５２Ａ，５２Ｂの一方に接続する。この状態で、充填作業の作業者は、充填開始ボタン２４Ａ１をＯＮ操作すると、第１制御装置２２Ａは、図４のＳ２、Ｓ３およびＳ５の処理に基づいて、Ａ系統の個別充填を開始する。即ち、第１制御装置２２Ａは、第１流量調整弁１２Ａおよび遮断弁１３Ａを開弁させる。

【0090】

続いて、充填作業を行う作業者は、第２ノズル７Ｂを第２ノズル掛け８Ｂから取り外し、第２ノズル７Ｂを車両５１の２つの充填口５２Ａ，５２Ｂの他方に接続する。この状態で、充填作業の作業者は、充填開始ボタン２４Ｂ１をＯＮ操作すると、第１制御装置２２Ａは、図４のＳ２、Ｓ３、Ｓ４、Ｓ８、Ｓ１０の処理に基づいて、Ａ系統とＢ系統との同一充填を時間差で開始する時間差同一充填と判定し、Ａ系統の個別充填からＡ系統とＢ系統との同一充填に切り換える。即ち、第１制御装置２２Ａは、第２制御装置２２Ｂを介して、第２流量調整弁１２Ｂおよび第２遮断弁１３Ｂを開弁させる。この場合、第１制御装置２２Ａは、Ａ系統の充填量（流量）とＢ系統の充填量（流量）とを合算し、この合算した充填量を表示器２３Ａ，２３Ｂに表示する。Ａ系統とＢ系統との同一充填に切り換えた後の流れは、上述した同時同一充填と同様である。

【0091】

以上のように、実施形態によれば、第１制御装置２２Ａは、図４のＳ２、Ｓ３、Ｓ４の処理を行う。これにより、第１制御装置２２Ａは、車両５１（タンク５２）の情報に基づいて、Ａ系統の第１ガス供給管路５ＡとＢ系統の第２ガス供給管路５Ｂを用いた同一の車両５１（タンク５２）への充填（同一充填）であるか、または、単一のガス供給管路５Ａ（５Ｂ）を用いた充填（個別充填）であるか、を判定する。そして、第１制御装置２２Ａは、図４のＳ２、Ｓ３、Ｓ４の判定結果に応じて、図４のＳ５、Ｓ９、Ｓ１０の処理、即ち、ガスの充填を制御する。このため、充填の作業者は、「同一充填」であるか「個別充填」であるかの選択の操作を行う必要がなくなり、誤った操作がなされることを抑制できる。この結果、作業者の意図しない充填が行われることを抑制できる。

【0092】

実施形態によれば、それぞれのノズル７Ａ，７Ｂに受信器２７Ａ，２７Ｂが設けられている。そして、受信器２７Ａ，２７Ｂは、車両５１（タンク５２）にノズル７Ａ（７Ｂ）が接続されたことにより、車両５１（タンク５２）から情報を取得する。このため、受信器２７Ａ，２７Ｂは、車両５１（タンク５２）にノズル７Ａ（７Ｂ）が接続されたときに、この車両５１（タンク５２）に関する情報を安定して取得することができる。

【0093】

実施形態によれば、第１制御装置２２Ａは、図４のＳ４の処理により、受信器２７Ａ，２７Ｂで取得したタンク情報が一致した場合に、Ａ系統の第１ガス供給管路５ＡとＢ系統の第２ガス供給管路５Ｂを用いた同一の車両５１（タンク５２）への充填（同一充填）である、と判定する。このため、タンク情報を用いて「同一充填」であるとの判定を精度よく行うことができる。

【0094】

なお、実施形態では、複数のガス供給管路（ガス供給経路）として、第１ガス供給管路５Ａと第２ガス供給管路５Ｂとの２つの系統（経路）を備える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、３つ以上のガス供給管路（ガス供給経路）を備える構成としてもよい。この場合も、例えば、ディスペンサの制御装置は、情報取得部により取得した情報（タンク情報、車両情報）により「同一充填」であるか「個別充填」であるかを判定する判定手段（判定部）を備える構成とする。そして、ディスペンサの制御装置（制御手段、制御部）は、判定手段（判定部）による判定結果に応じて、ガスの充填を制御する。

【0095】

実施形態では、充填対象（タンク、車両）の情報（タンク情報、車両情報）を取得する情報取得部を受信器２７Ａ，２７Ｂとした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、情報取得部は、例えば、Ａ系統のセンサ（第１圧力センサ２０Ａおよび／または第１温度センサ２１Ａ）とＢ系統のセンサ（第１圧力センサ２０Ｂおよび／または第２温度センサ２１Ｂ）としてもよい。この場合、例えば、本充填を行う前にタンクに少量のガスを充填してタンクの圧力および／または温度を検出するプレ充填を行ったときのタンク情報（圧力、温度）に基づいて、「同一充填」であるか「個別充填」であるかを判定してもよい。この場合も、タンク情報（圧力、温度）が一致するか否かに基づいて、「同一充填」であるか「個別充填」であるかを判定することができる。また、前述したように、情報取得部は、水素ステーション内の監視カメラ、ディスペンサに設けられる監視カメラ等、充填対象（車両、タンク）に関する画像情報、映像情報を取得するカメラ（画像取得装置、映像取得装置）を用いることもできる。

【0096】

実施形態では、情報取得部（受信器２７Ａ，２７Ｂ）による情報の取得、即ち、ディスペンサ側と車両側との通信を、無線通信により行う場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、ディスペンサ側と車両側との通信は、例えば、ノズル側とタンク側（車両側）とに設けたコネクタの接続による有線通信としてもよい。この場合には、接続により通信が可能になるコネクタ、延いては、コネクタの接続によりディスペンサ側と接続される車両側の制御装置、車両側の圧力センサ、温度センサ等が情報取得部に対応する。

【0097】

実施形態では、２つの充填口を有する車両として、２つの充填口５２Ａ，５２Ｂを有する１つのタンク５２が搭載された車両５１を例に挙げて説明した。即ち、実施形態では、複数の充填口を有する車両として、複数の充填口を有する１つのタンクを搭載した車両を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、車両は、１の充填口を有するタンクを複数搭載した車両としてもよい。また、車両は、複数の充填口を有するタンクを複数搭載した車両としてもよい。

【0098】

実施形態では、ディスペンサ３は、Ａ系統の充填開始ボタン２４Ａ１とＢ系統の充填開始ボタン２４Ｂ１とを備える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、ディスペンサは、例えば、１つの充填開始ボタンと、複数のガス供給管路とを備える構成としてもよい。この場合も、１つの充填開始ボタンが操作されると、充填対象に関する情報に基づいて、同一充填であるか個別充填であるかを判定し、この判定結果に応じてガスの充填を行うことができる。

【0099】

実施形態では、第１制御装置２２Ａで同一充填であるか個別充填であるかを判定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第２制御装置２２Ｂで同一充填であるか個別充填であるかを判定する構成としてもよい。また、例えば、第１制御装置２２Ａおよび第２制御装置２２Ｂ以外の制御装置により同一充填であるか個別充填であるかを判定する構成としてもよい。例えば、ディスペンサ（充填機構）に各制御装置（第１制御装置、第２制御装置）と通信接続された管理部となる制御装置、即ち、管理用の制御装置を設け、この管理用の制御装置で同一充填であるか個別充填であるかを判定してもよい。

【0100】

この場合、管理用の制御装置は、各制御装置（第１制御装置、第２制御装置）を介して各充填系統の情報（流量計の計測流量や圧力計による圧力、情報取得部となる通信手段により取得された車両情報等）を取得する。また、管理用の制御装置は、情報取得部により取得した情報により同一充填であるか個別充填であるかを判定する判定部（判定手段）を備える。そして、管理用の制御装置は、判定部（判定手段）により同一充填（合算充填）と判定された場合、各充填系統の流量計で計測された流量を合算し、この合算した値（合算値）を、それぞれの表示器（表示部）に表示させる。この場合も、作業者の意図しない充填が行われることを抑制できる。

【0101】

実施形態では、表示器２３Ａ，２３Ｂを筐体４の正面４Ａ側と背面４Ｂ側との両方に設けると共に、同一充填（合算充填）の場合に、両方の表示器２３Ａ，２３Ｂに充填量の合算値が表示される構成とした場合を例に挙げて説明した。このような構成によれば、充填が行われていない側に位置する作業者（充填者）が、同一充填が行われていること（充填ができないこと）を把握することができる。しかし、これに限らず、例えば、表示器に、合算値ではなく、対応する系統の充填量を表示させる構成としてもよい。この場合に、例えば、同一充填であれば、それぞれの表示器に表示された充填量を合算した合算値で精算が行われるようにすることができる。

【0102】

実施形態では、タンク５２が搭載された車両５１として自動車を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、車両は、フォークリフト等の作業車両としてもよい。また、自動車としては、例えば、バス等の乗合自動車でもよいし、トラック等の貨物自動車でもよい。

【0103】

実施形態では、車両５１のタンク５２に水素ガスを充填する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、車両以外の機械、機器のタンク、タンク以外のガス容器等、各種の充填対象に水素ガスを充填するときに用いることもできる。また、水素ガス充填装置１のディスペンサ３は、他の場所に水素ガスを給送するための管路（水素給送管路）の途中に設置させてもよい。さらに、ガス（燃料ガス）として水素ガスを例に挙げて説明したが、天然ガス（ＮＧ）、プロパンガス（ＬＰＧ）等の水素ガス以外のガス（燃料ガス）を用いる構成（ガス充填装置）としてもよい。

【0104】

以上説明した実施形態によれば、判定手段は、充填対象の情報により、複数のガス供給管路を用いた同一の充填対象への充填（同一充填）であるか、または、単一のガス供給管路を用いた充填（個別充填）であるか、を判定する。そして、制御手段は、判定手段の判定結果に応じて、ガスの充填を制御する。このため、充填の作業者は、「同一充填」であるか「個別充填」であるかの選択の操作を行う必要がなくなり、誤った操作がなされることを抑制できる。この結果、作業者の意図しない充填が行われることを抑制できる。

【0105】

実施形態によれば、情報取得部は、それぞれの充填ノズルに設けられている。そして、情報取得部は、充填対象に充填ノズルが接続されたことにより、充填対象から情報を取得する。このため、情報取得部は、充填対象に充填ノズルが接続されたときに、この充填対象に関する情報を安定して取得することができる。

【0106】

実施形態によれば、判定手段は、情報取得部により取得したタンク情報が一致した場合に、複数のガス供給管路を用いた同一の充填対象への充填（同一充填）である、と判定する。このため、タンク情報を用いて「同一充填」であるとの判定を精度よく行うことができる。

【符号の説明】

【0107】

１ 水素ガス充填装置（ガス充填装置）
２ ガス蓄圧器（ガス供給源）
３ ディスペンサ（充填機構）
５Ａ 第１ガス供給管路（ガス供給管路）
５Ｂ 第２ガス供給管路（ガス供給管路）
６Ａ 第１ホース（ガス供給管路）
６Ｂ 第２ホース（ガス供給管路）
７Ａ 第１ノズル（充填ノズル）
７Ｂ 第２ノズル（充填ノズル）
１３Ａ 第１遮断弁（遮断弁）
１３Ｂ 第２遮断弁（遮断弁）
１４Ａ 第１流量計（流量計）
１４Ｂ 第２流量計（流量計）
２２Ａ 第１制御装置（制御手段、判定手段）
２２Ｂ 第２制御装置（制御手段）
２７Ａ 第１受信器（情報取得部）
２７Ｂ 第２受信器（情報取得部）
５１ 車両（充填対象）
５２ タンク（充填対象）

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】