(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025057987
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】投薬器
(51)【国際特許分類】
A61M 13/00 20060101AFI20250402BHJP
A61M 15/00 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
A61M13/00
A61M15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023167868
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂巳
(72)【発明者】
【氏名】石関 一則
(72)【発明者】
【氏名】堀越 清良
(57)【要約】
【課題】 部品点数を増やすことなく、薬粉収容室と蓋体との間のシール性を高めることができるようにする。
【解決手段】 カプセル収容室3,4の周壁3C,4Cの対向面3C1,4C1には、カプセル収容室3,4を囲む全周から蓋体5の対向面5Aに向けて延伸し、蓋体5の対向面5Aと弾性的に接触することによって周壁3C,4Cと蓋体5との間をシールするシール部としての内側シール部18と外側シール部19が設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に設けられ、周壁に囲まれると共に開口部を有する薬粉収容室と、
前記本体に回動可能に設けられ、前記開口部を開放する開位置と前記開口部を閉塞する閉位置との間で開閉される蓋体と、
前記本体に設けられ、外部から前記薬粉収容室に空気を流入させる空気流入路と、
前記本体に設けられ、前記空気流入路から前記薬粉収容室に流入した空気と一緒に薬粉を吸入する薬粉吸入部と、
を備えてなる投薬器において、
前記周壁と前記蓋体との対向面のうち、少なくとも一方の対向面には、前記薬粉収容室を囲む全周から他方の対向面に向けて延伸し、前記他方の対向面と弾性的に接触することによって前記周壁と前記蓋体との間をシールするシール部が設けられていることを特徴とする投薬器。
【請求項2】
請求項1に記載の投薬器であって、
前記シール部は、前記他方の対向面に対して前記蓋体の開閉方向で接触することを特徴とする投薬器。
【請求項3】
請求項1に記載の投薬器であって、
前記周壁は、厚さ方向の中間部の凹部によって内側壁部と外側壁部とを有し、
前記シール部は、前記内側壁部の前記凹部側の外角部、前記外側壁部の前記凹部側の内角部のうち、少なくとも一方の角部に設けられていることを特徴とする投薬器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、粉体状の薬剤(薬粉)を肺や気管支に投与するのに用いて好適な投薬器に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体状の薬剤(薬粉)を肺や気管支に投与する治療方法には、薬粉収容室に収容された薬粉を空気と一緒に吸入して肺等に投与する治療方法が用いられている。
【0003】
薬粉を空気と一緒に吸入する治療方法に用いられる投薬器は、本体と、本体に設けられ、周壁に囲まれると共に開口部を有する薬粉収容室と、本体に回動可能に設けられ、開口部を開放する開位置と開口部を閉塞する閉位置との間で開閉される蓋体と、本体に設けられ、外部から薬粉収容室に空気を流入させる空気流入路と、本体に設けられ、空気流入路から薬粉収容室に流入した空気と一緒に薬粉を吸入する薬粉吸入部と、を備えている(特許文献1)。
【0004】
この投薬器を用いた薬粉の投薬手順は、本体の薬粉収容室に薬粉を充填して蓋体を閉じ、薬粉収容室の開口部を閉塞する。この状態で、薬粉吸入部をくわえて息を吸い込む。これにより、患者は、空気流入路から薬粉収容室に流入した空気と一緒に薬粉を吸入して肺等に投与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の投薬器は、薬粉収容室の開口部を蓋体で閉じているだけであるから、薬粉収容室の周壁と蓋体との間に隙間が形成されている。このため、薬粉吸入部をくわえて息を吸い込んだときには、周壁と蓋体との間の隙間を通って外部の空気が薬粉収容室に流入してしまう。これにより、薬粉を吸い込むときの空気の流量にバラつきが生じてしまい、規定量の薬粉を安定的に投与できない虞がある。
【0007】
そこで、薬粉収容室の周壁と蓋体との間をシールするシール部材を設けることが考えられる。しかし、シール部材を別途設けた場合には、部品コスト、製造コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0008】
本発明の一実施形態の目的は、部品点数を増やすことなく、薬粉収容室と蓋体との間のシール性を高めることができるようにした投薬器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、本体と、前記本体に設けられ、周壁に囲まれると共に開口部を有する薬粉収容室と、前記本体に回動可能に設けられ、前記開口部を開放する開位置と前記開口部を閉塞する閉位置との間で開閉される蓋体と、前記本体に設けられ、外部から前記薬粉収容室に空気を流入させる空気流入路と、前記本体に設けられ、前記空気流入路から前記薬粉収容室に流入した空気と一緒に薬粉を吸入する薬粉吸入部と、を備えてなる投薬器において、前記周壁と前記蓋体との対向面のうち、少なくとも一方の対向面には、前記薬粉収容室を囲む全周から他方の対向面に向けて延伸し、前記他方の対向面と弾性的に接触することによって前記周壁と前記蓋体との間をシールするシール部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、部品点数を増やすことなく、薬粉収容室と蓋体との間のシール性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態による投薬器を示す斜視図である。
【
図2】蓋体が開位置に配置された状態の投薬器を示す斜視図である。
【
図4】
図3中の矢示IV-IV方向から見た投薬器の断面図である。
【
図6】
図5をシール部から蓋体を離間させた状態で示す断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態によるシール部を示す
図5と同様の断面図である。
【
図8】
図7を周壁からシール部を離間させた状態で示す断面図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態によるシール部を示す
図5と同様の断面図である。
【
図10】
図9をシール部から蓋体を離間させた状態で示す断面図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態によるシール部を示す
図5と同様の断面図である。
【
図12】
図11を周壁からシール部を離間させた状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る投薬器を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0013】
図1ないし
図6は、本発明の第1の実施形態を示している。
図1、
図2において、本実施形態による投薬器1は、例えば、粉体状の薬剤(薬粉)を肺や気管支に投与するものであり、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ウイルス性疾患等の治療に用いられる。投薬器1は、息を吸い込むことで、例えば、カプセル20に充填された薬粉を空気と一緒に吸入する吸入式の投薬器として構成されている。また、投薬器1は、2個のカプセル20から連続して薬粉を吸入できるように、対称的に配置された第1投薬器1Aと第2投薬器1Bとからなる。
【0014】
そして、投薬器1は、後述の本体2、カプセル収容室3,4、蓋体5、空気流入路8,9、薬粉吸入部10,11、内側シール部18、外側シール部19を含んで構成されている。
【0015】
本体2は、樹脂材料を用いて上下方向に扁平な直方体状に形成されている。具体的には、本体2は、正面側(薬粉の吸入時に患者と対面する側)の前面部2A、背面側の後面部2B、左面部2C、右面部2D、上面部2Eおよび下面部2F(
図4参照)を有している。なお、実施形態の本体2は、軽量化や材料費の削減を図るために複数個の部品によって形成しているが、単一の部材として形成することもできる。
【0016】
本体2の前面部2Aには、左右方向に間隔をもって2個の薬粉吸入部10,11が設けられている。左面部2Cには、後述の穴開け部材12が設けられ、右面部2Dには、穴開け部材13が設けられている。上面部2Eには、カプセル収容室3,4よりも広範囲を一段下げて形成された長方形状の蓋体収容部2Gが設けられている。また、上面部2Eには、左右方向に間隔をもって2個のカプセル収容室3,4が設けられている。さらに、下面部2Fには、空気孔(図示せず)が開口しており、この空気孔は、カプセル収容室3,4に外部の空気を取り入れるもので、空気流入路8,9の一部をなしている。
【0017】
薬粉収容室としてのカプセル収容室3,4は、左右方向に間隔をもって本体2に上方に開口して設けられている。カプセル収容室3,4は、前後方向に延びた長円状の凹陥部として形成されている。
【0018】
具体的には、
図3、
図4に示すように、カプセル収容室3は、カプセル20よりも僅かに大きな長円状の凹部からなり、奥部側(底部側)に位置してカプセル20の下半分が嵌るカプセル嵌合部3Aと、カプセル嵌合部3Aの上部から水平方向に延びた長円環状の環状底板3Bと、環状底板3Bの周縁から上向きに延びた長円筒状の周壁3Cと、により構成されている。これにより、カプセル収容室3は、周壁3Cの上方がカプセル20を出し入れする開口部3Dとなっている。周壁3Cは、本体2と同様に、樹脂材料を用いて形成されている。また、周壁3Cの上端部は、蓋体5の閉位置で当該蓋体5に対面する対向面3C1となり、この対向面3C1には、後述の内側シール部18、外側シール部19が一体成形されている。
【0019】
さらに、カプセル収容室3には、薬粉吸入部10と反対側となる後側に位置して後述の空気流入路8が連通している。この構成は、カプセル収容室4(カプセル嵌合部4A、環状底板4B、周壁4C、開口部4D)も同様であるので、カプセル収容室4の説明を省略する。
【0020】
蓋体5は、本体2の上面部2Eに設けられている。蓋体5は、蓋体収容部2Gに僅かな隙間をもって収まる長方形状の板体として形成されている。蓋体5は、樹脂材料を用いて形成されている。蓋体5は、後側の端部が本体2に対してヒンジ構造をもって回動可能に取付けられている。これにより、蓋体5は、カプセル収容室3,4を開放する開位置(
図2,
図3に示す位置)と、カプセル収容室3,4を閉塞する閉位置(
図1に示す位置)との間で開閉することができる。
【0021】
蓋体5は、閉位置でカプセル収容室3,4の周壁3C,4Cの対向面3C1,4C1と対面する対向面5Aを有している。ここで、蓋体5の後端部を本体2に回動可能に取付けた構造では、周壁3C,4Cの対向面3C1,4C1に蓋体5の対向面5Aを接近させたときに、後述の内側シール部18、外側シール部19に対する対向面5Aの接触方向は、上下方向となる。詳しくは、蓋体5を閉じたときには、対向面5Aは、内側シール部18、外側シール部19に大きく摺接することなく、内側シール部18、外側シール部19を弾性変形させて密着することができる。
【0022】
仕切部材6,7は、カプセル収容室3,4に対応するように蓋体5の対向面5Aに設けられている。カプセル収容室3側、即ち、第1投薬器1A側の仕切部材6は、蓋体5の閉位置でカプセル収容室3を空気流入側と空気流出側とに仕切っている。また、仕切部材6は、蓋体5が閉位置に配置されたときに、カプセル収容室3に収容されたカプセル20の胴部(長さ方向の中間部分)に嵌合する。これにより、仕切部材6は、カプセル20をカプセル収容室3の所定位置(正しい位置)に位置決めすることができる。これらの構成は、カプセル収容室4側の仕切部材7も同様であるので、仕切部材7の説明を省略する。
【0023】
空気流入路8は、カプセル収容室3に連通した状態で本体2に設けられている。空気流入路8は、外部からカプセル収容室3に空気を流入させる。空気流入路8は、カプセル収容室3の空気流入側となる後側に位置して左右方向(水平方向)に延びて設けられている。空気流入路8は、後述する穴開け部材12の後側の針が挿通される針挿通穴を兼ねている。これらの構成は、カプセル収容室4側の空気流入路9も同様であるので、空気流入路9の説明を省略する。
【0024】
薬粉吸入部10,11は、本体2の前面部2Aに左右方向に間隔をもって、第1投薬器1A、第2投薬器1B毎に独立して設けられている。薬粉吸入部10,11は、前面部2Aから前側に向けて突出している。薬粉吸入部10,11は、大きく口を開くことなく容易にくわえることができ、かつ、通路面積を大きく形成できるように、例えば、左右方向に長尺な楕円筒状に形成されている。薬粉吸入部10内は、カプセル収容室3に連通し、薬粉吸入部11内は、カプセル収容室4に連通している。
【0025】
穴開け部材12,13は、本体2に設けられている。穴開け部材12,13は、カプセル収容室3,4に収容されたカプセル20に流入穴と流出穴を開けるものである。第1投薬器1A側の穴開け部材12は、本体2の左側部分に左右方向に移動可能に設けられた支持部12Aと、基端側が支持部12Aに取付けられ、鋭利な先端側がカプセル収容室3に向けて延びた後側の針および前側の針(いずれも図示せず)と、を備えている。後側の針は、空気流入路8に配置されている。前側の針は、カプセル収容室3の前側に配置された針挿通穴(図示せず)に配置されている。これらの構成は、第2投薬器1B側の穴開け部材13(支持部13A、針)も同様であるので、穴開け部材13の説明を省略する。
【0026】
そして、穴開け部材12による穴開け動作は、カプセル収容室3にカプセル20を収容した状態で、支持部12Aを本体2内に押し込む。これにより、針がカプセル収容室3内のカプセル20を径方向に貫通し、カプセル20には、流入穴と流出穴を開けることができる。穴開け部材13も同様の動作となるので、説明を省略する。
【0027】
次に、本実施形態の特徴部分となる内側シール部18、外側シール部19を備えたシール装置14の構成と機能(効果)について述べる。
【0028】
シール装置14は、カプセル収容室3の周壁3Cに一体形成された内側シール部18、外側シール部19を含んで構成されている。シール装置14は、周壁3Cの上部に設けた凹部15により、周壁3Cの上部に内側壁部16と外側壁部17とを形成している。
【0029】
図4に示すように、凹部15は、周壁3Cの厚さ方向の中間部に当該周壁3Cの全周に亘って設けられている。凹部15は、対向面3C1から周壁3Cを下向きに切り欠いた深溝として形成されている。また、内側壁部16と外側壁部17は、周壁3Cの上部に凹部15を設けたことにより、凹部15を挟んだ二重筒体として配置されている。
【0030】
内側シール部18と外側シール部19は、蓋体5と対向する周壁3Cの対向面3C1に設けられたシール部を構成している。内側シール部18と外側シール部19は、カプセル収容室3を囲む周壁3Cの対向面3C1の全周から蓋体5の対向面5Aに向けて延伸している。即ち、内側シール部18と外側シール部19は、弾性を有する樹脂材料からなる周壁3Cと一体成形されている。これにより、内側シール部18と外側シール部19は、蓋体5の対向面5Aと弾性的に接触することによって周壁3Cと蓋体5との間を気密にシールすることができる。
【0031】
内側シール部18は、内側壁部16の凹部15側となる厚さ方向の外角部16Aに設けられている。
図6に示す自由状態の内側シール部18は、内側壁部16の外角部16Aから蓋体5の対向面5A側となる上側に向け、外側に傾斜するように一体的に延伸している。また、内側シール部18は、薄板状に形成されている。詳しくは、内側シール部18の厚さ寸法は、
図5に示すように、蓋体5を軽い力で上側から押して閉じたときに、対向面5Aに当接した先端が容易に撓むことができ、蓋体5の対向面5Aと弾性力をもって密着できる寸法に設定されている。具体的には、内側シール部18は、カプセル収容室3側(内側壁部16)に設けられ、カプセル収容室3の反対(外側壁部17と蓋体5との間隙)方向の蓋体5側(上方)に向けて延伸するよう形成されている。従って、内側シール部18は、蓋体5を閉じ、カプセル収容室3内の薬粉を吸入した際にカプセル収容室3内が負圧になった場合でも、外部(カプセル収容室3と反対側:外側壁部17と蓋体5との間隙)から流入した空気(圧力)により内側シール部18が蓋体5(上方)側へ撓むよう作用するので、より内側シール部18と蓋体5とが密着され、シール性が向上できる。
【0032】
内側シール部18は、カプセル収容室3と反対側となる内側壁部16の外角部16Aに設けている。従って、内側シール部18は、カプセル収容室3にカプセル20を出し入れしたり、カプセル収容室3を清掃したりするときに、邪魔にならない。
【0033】
外側シール部19は、外側壁部17の凹部15側となる厚さ方向の内角部17Aに設けられている。
図6に示す自由状態の外側シール部19は、外側壁部17の内角部17Aから蓋体5の対向面5A側となる上側に向け、内側に傾斜するように一体的に延伸している。また、外側シール部19は、内側シール部18と同様に、薄板状に形成されている。詳しくは、外側シール部19の厚さ寸法は、
図5に示すように、内側シール部18と同様に、蓋体5を軽い力で上側から押して閉じたときに、対向面5Aに当接した先端が容易に撓むことができ、蓋体5の対向面5Aと弾性力をもって密着できる寸法に設定されている。
【0034】
カプセル20は、円筒状の胴部の両端を半球面部で閉塞することにより形成されている。このカプセル20内には、粉体状の薬剤(薬粉)が充填されている。また、カプセル20には、穴開け部材12,13によって流入穴と流出穴を開けることができる。
【0035】
本実施形態による投薬器1は、上述の如き構成を有するもので、次に、カプセル20に充填された薬粉を吸入するときの動作について述べる。
【0036】
カプセル収容室3,4のそれぞれにカプセル20を投入し、蓋体5を閉じる。このときに、カプセル収容室3の周壁3Cには、カプセル収容室3を囲む全周から蓋体5の対向面5Aに向けて延伸するように内側シール部18と外側シール部19を設けているから、蓋体5の対向面5Aを内側シール部18と外側シール部19に弾性的に接触させることにより、周壁3Cと蓋体5との間を気密にシールすることができる。同様に、カプセル収容室4の周壁4Cと蓋体5との間を気密にシールすることができる。
【0037】
次に、穴開け部材12の支持部12Aを押し込んで、針をカプセル収容室3内のカプセル20に突き刺すことにより、カプセル20に流入穴と流出穴を開ける。同様に、穴開け部材13の支持部13Aを押し込んで、針をカプセル収容室4内のカプセル20に突き刺すことにより、カプセル20に流入穴と流出穴を開ける。
【0038】
カプセル20に流入穴と流出穴を開けたら、カプセル収容室3のカプセル20に充填された薬粉を吸入するときの動作に移る。この動作では、薬粉吸入部10をくわえて息を吸込む。このときには、外部の空気が空気流入路8を通って流入穴からカプセル20内に流入する。カプセル20内に流入した空気は、カプセル20内の薬粉を拡散しつつ、この薬粉を含んだ状態で流出穴から薬粉吸入部10側に流出する。
【0039】
これにより、カプセル20から流出した薬粉は、薬粉吸入部10内を通って患者に吸込まれる。続けて、薬粉吸入部11をくわえて息を吸込むことにより、カプセル収容室4のカプセル20に充填された薬粉も連続して患者に吸込まれる。
【0040】
かくして、本実施形態によれば、カプセル収容室3,4の周壁3C,4Cの対向面3C1,4C1には、カプセル収容室3,4を囲む全周から蓋体5の対向面5Aに向けて延伸し、蓋体5の対向面5Aと弾性的に接触することによって周壁3C,4Cと蓋体5との間をシールするシール部としての内側シール部18と外側シール部19が設けられている。
【0041】
従って、薬粉吸入部10,11をくわえて息を吸い込んだときには、周壁3C,4Cと蓋体5との間の隙間を通って外部の空気がカプセル収容室3,4に流入するのを低減することができる。これにより、薬粉を吸い込むときの空気の流量を一定に保つことができるから、投薬器1は、規定量の薬粉を安定的に投与することができる。
【0042】
この上で、本実施形態の投薬器1は、内側シール部18を周壁3Cの対向面3C1から延伸して設け、外側シール部19を周壁4Cの対向面4C1から延伸して設けることにより、内側シール部18、外側シール部19を周壁3C,4Cに一体成形している。この結果、本実施形態では、シール部材を別途設ける必要がないから、部品点数の増大による部品コスト、製造コストの上昇を抑えつつ、カプセル収容室3,4と蓋体5との間のシール性を高めることができる。
【0043】
また、内側シール部18、外側シール部19は、蓋体5の対向面5Aに対して蓋体5の開閉方向、即ち、上下方向で接触する構成となっている。従って、蓋体5を閉じたときには、対向面5Aは、ねじ式のキャップを閉めるように内側シール部18、外側シール部19に大きく摺接することなく、内側シール部18、外側シール部19を弾性変形させて密着することができる。これにより、本実施形態では、内側シール部18、外側シール部19の摩耗を抑えて耐久性を向上することができる。
【0044】
さらに、カプセル収容室3,4の周壁3C,4Cは、厚さ方向の中間部の凹部15によって内側壁部16と外側壁部17とを有している。そして、内側シール部18は、内側壁部16の凹部15側の外角部16Aに設けられ、外側シール部19は、外側壁部17の凹部15側の内角部17Aに設けられている。これにより、内側シール部18、外側シール部19は、カプセル収容室3にカプセル20を出し入れしたり、カプセル収容室3および周囲を清掃したりするときに、邪魔にならないから、これらの作業を容易に行うことができる。しかも、内側シール部18と外側シール部19とは、二重のシール構造をなしているから、カプセル収容室3,4と蓋体5との間のシール性(気密性)をより一層高めることができる。
【0045】
次に、
図7および
図8は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、蓋体の対向面にシール部を設ける構成としたことにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。また、第2の実施形態では、カプセル収容室3の周壁3Cに対応したシール装置21について説明し、同様の構成を有したカプセル収容室4側のシール装置の説明を省略する。
【0046】
図7において、第2の実施形態によるシール装置21は、後述の円弧状端面22とシール部23とにより構成されている。円弧状端面22は、カプセル収容室3の周壁3Cの上部に円弧面として形成されている。円弧状端面22は、その円弧形状により、外周側に接触する後述のシール部23を押し広げるように弾性変形させる。なお、円弧状端面22は、周壁3Cの対向面を兼ねている。
【0047】
シール部23は、蓋体5の対向面5Aに一体成形されている。対向面5Aのシール部23は、カプセル収容室3を囲む全周から他方の対向面となる円弧状端面22に向けて延伸している。シール部23は、弾性を有する樹脂材料からなり、周壁3Cに当接したときに弾性変形できる板厚に設定されている。これにより、シール部23は、円弧状端面22と弾性的に接触することによって周壁3Cと蓋体5との間をシールすることができる。より具体的には、シール部23は、カプセル収容室3の反対側となる円弧状端面22の外周側に当接するよう形成されている。このため、シール部23は、蓋体5を閉じ、カプセル収容室3内の薬粉を吸入した際にカプセル収容室3内が負圧になった場合でも、カプセル収容室3と外部との圧力差により円弧状端面22の外周側へ撓むよう作用するので、よりシール部23と円弧状端面22とが密着され、シール性が向上できる。
【0048】
シール部23は、長円筒状の周壁3Cよりも僅かに小さい長円筒状に形成されている。詳しくは、シール部23は、
図8に示す自由状態(周壁3Cから離間した状態)において、その内周面が周壁3Cの外周面よりも寸法Sだけ小さく形成されている。この場合の寸法Sは、
図7に示すように、蓋体5を軽い力で上側から押して閉じ、シール部23が円弧状端面22に当接したときに容易に撓むことができ、円弧状端面22と弾性力をもって密着できる寸法に設定されている。なお、シール部23は、円弧状端面22の内周側に接触させる構成としてもよい。
【0049】
かくして、このように構成された第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
次に、
図9および
図10は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、蓋体の対向面にアーチ状のシール部を設ける構成としたことにある。なお、第3の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。また、第3の実施形態では、カプセル収容室3の周壁3Cに対応したシール装置31について説明し、同様の構成を有したカプセル収容室4側のシール装置の説明を省略する。
【0051】
図9において、第3の実施形態によるシール装置31は、カプセル収容室3の周壁3Cに一体形成されたアーチ状シール部35を含んで構成されている。シール装置31は、第1の実施形態によるシール装置14と同様に、周壁3Cの上部に凹部32、内側壁部33、外側壁部34とを形成している。
【0052】
シール部としてのアーチ状シール部35は、凹部32を跨ぐように内側壁部33の上部と外側壁部34の上部とに亘って設けられている。換言すると、アーチ状シール部35は、内側壁部33から蓋体5の対向面5A側となる上側に向け、外側壁部34から蓋体5の対向面5A側となる上側に向けて一体的に延伸し、上部で連結されている。
図10に示すように、アーチ状シール部35は、弾性を有する樹脂材料からなり、周壁3Cの対向面3C1よりも上側(蓋体5側)に突出した円弧状の薄板として周壁3Cと一体成形されている。詳しくは、アーチ状シール部35の厚さ寸法は、
図9に示すように、蓋体5を軽い力で上側から押して閉じたときに、対向面5Aに当接した上部が容易に撓むことができ、蓋体5の対向面5Aと弾性力をもって密着できる寸法に設定されている。
【0053】
かくして、このように構成された第3の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施形態によれば、アーチ状シール部35は、周壁3Cから内外にはみ出していないから、カプセル収容室3にカプセル20を出し入れしたり、カプセル収容室3を清掃したりするときに、邪魔にならない。また、アーチ状シール部35は、凹部32を塞ぐことができるから、凹部32内に薬粉が入り込んで残留するのを防止することができる。
【0054】
次に、
図11および
図12は本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、蓋体の対向面にシール部を設け、シール部との間で弾性力を発生する部分をカプセル収容室の周壁に設ける構成としたことにある。なお、第4の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。また、第4の実施形態では、カプセル収容室3の周壁3Cに対応したシール装置41について説明し、同様の構成を有したカプセル収容室4側のシール装置の説明を省略する。
【0055】
図11において、第4の実施形態によるシール装置41は、後述の弾性板42とシール部43とにより構成されている。弾性板42は、カプセル収容室3の周壁3Cの上部に、片持ちの板体として形成されている。弾性板42は、蓋体5と反対側となる下側に隙間を有しており、上側から押圧されたときに弾性変形することができる。
【0056】
シール部43は、蓋体5の対向面5Aに一体成形されている。シール部43は、カプセル収容室3を囲む全周から他方の対向面となる周壁3Cの対向面3C1に向けて延伸し、カプセル収容室3に向けて傾きが小さくなる環状の三角突起として形成されている。シール部43は、その先端(下端)を弾性板42に押し付けることにより、弾性板42の弾性力によって周壁3Cと蓋体5との間をシールすることができる。より具体的には、シール部43は、周壁3Cの対向面3C1に向けて延伸している。また、弾性板42の下側には、隙間を有している。従って、蓋体5を閉じ、カプセル収容室3内の薬粉を吸入した際にカプセル収容室3内が負圧になった場合には、カプセル収容室3と外部との圧力差により弾性板42がシール部43側へ撓むよう作用するので、より弾性板42とシール部43とが密着され、シール性が向上できる。
【0057】
かくして、このように構成された第4の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
なお、第1の実施形態では、投薬器1は、対称的に配置された第1投薬器1Aと第2投薬器1Bとによって構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、1個の投薬器に適用する構成としてもよい。他の実施形態も同様である。
【0059】
以上説明した実施形態に基づく投薬器として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0060】
投薬器の第1の態様としては、本体と、前記本体に設けられ、周壁に囲まれると共に開口部を有する薬粉収容室と、前記本体に回動可能に設けられ、前記開口部を開放する開位置と前記開口部を閉塞する閉位置との間で開閉される蓋体と、前記本体に設けられ、外部から前記薬粉収容室に空気を流入させる空気流入路と、前記本体に設けられ、前記空気流入路から前記薬粉収容室に流入した空気と一緒に薬粉を吸入する薬粉吸入部と、を備えてなる投薬器において、前記周壁と前記蓋体との対向面のうち、少なくとも一方の対向面には、前記薬粉収容室を囲む全周から他方の対向面に向けて延伸し、前記他方の対向面と弾性的に接触することによって前記周壁と前記蓋体との間をシールするシール部が設けられていることを特徴としている。これにより、部品点数を増やすことなく、薬粉収容室と蓋体との間のシール性を高めることができる。
【0061】
投薬器の第2の態様としては、前記第1の態様において、前記シール部は、前記他方の対向面に対して前記蓋体の開閉方向で接触することを特徴としている。これにより、蓋体を閉じたときのシール部の摩耗を抑えて耐久性を向上することができる。
【0062】
投薬器の第3の態様としては、前記第1の態様において、前記周壁は、厚さ方向の中間部の凹部によって内側壁部と外側壁部とを有し、前記シール部は、前記内側壁部の前記凹部側の外角部、前記外側壁部の前記凹部側の内角部のうち、少なくとも一方の角部に設けられていることを特徴としている。これにより、薬粉収容室に薬粉を出し入れしたり、薬粉収容室および周囲を清掃したりするときに、邪魔にならないから、これらの作業を容易に行うことができる。また、二重のシール構造とした場合には、薬粉収容室と蓋体との間のシール性(気密性)をより一層高めることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 投薬器
2 本体
3,4 カプセル収容室(薬粉収容室)
3C,4C 周壁
3C1,4C1 対向面
5 蓋体
5A 対向面
8,9 空気流入路
10,11 薬粉吸入部
15,32 凹部
16,33 内側壁部
16A 外角部
17,34 外側壁部
17A 内角部
18 内側シール部(シール部)
19 外側シール部(シール部)
22 円弧状端面(対向面)
23,43 シール部
35 アーチ状シール部(シール部)