(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005799
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】作業車及び、作業車システム
(51)【国際特許分類】
B64U 70/80 20230101AFI20250109BHJP
B64U 80/30 20230101ALI20250109BHJP
B64U 70/93 20230101ALI20250109BHJP
B60P 3/11 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B64U70/80
B64U80/30
B64U70/93
B60P3/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106175
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 悠平
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】山中 之史
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】吉井 嘉一郎
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】陣内 克俊
(72)【発明者】
【氏名】仁木 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山岸 亮太
(57)【要約】
【課題】無人飛行体が着陸可能な離着陸部の傾斜角度を制御する作業車を提供すること。
【解決手段】無人飛行体DRが離着陸可能な離着陸部5と、離着陸部5を支持し、地面を走行可能な走行部2と、水平に対する離着陸部5の傾斜角度を取得する傾斜角取得部と、を備える機体と、傾斜角取得部が取得した傾斜角度に応じて機体の姿勢を変更する姿勢変更機構3と、を備え、姿勢変更機構3は傾斜角度が閾値以上である場合、傾斜角度が閾値よりも小さくなるように機体の姿勢を変更する作業車。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人飛行体が離着陸可能な離着陸部と、前記離着陸部を支持し、地面を走行可能な走行部と、水平に対する前記離着陸部の傾斜角度を取得する傾斜角取得部と、を備える機体と、
前記傾斜角取得部が取得した前記傾斜角度に応じて前記機体の姿勢を変更する姿勢変更機構と、を備え、
前記姿勢変更機構は前記傾斜角度が閾値以上である場合、前記傾斜角度が閾値よりも小さくなるように前記機体の姿勢を変更する作業車。
【請求項2】
前記姿勢変更機構は、走行車輪によって支持され、伸縮可能な伸縮機構を有し、
前記姿勢変更機構は、前記無人飛行体が前記離着陸部に着陸する際に、前記傾斜角度が閾値以上である場合、前記伸縮機構を伸縮することによって、前記傾斜角度が閾値よりも小さくなるように前記機体の姿勢を変更する請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記姿勢変更機構は、前記無人飛行体が前記離着陸部に着陸する際に前記傾斜角度が0度となるように前記機体の姿勢を変更する請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
前記無人飛行体が有する飛行体側通信部と通信可能な作業車側通信部と、前記離着陸部に前記無人飛行体が着陸可能か判定する判定部と、を更に備え、
前記判定部は前記傾斜角度が閾値以上である場合には前記離着陸部が着陸不可状態であると判定し、かつ、前記傾斜角度が閾値よりも小さい場合には前記離着陸部が着陸可能状態であると判定し、
前記作業車側通信部は、前記着陸可能状態であるか否かを前記飛行体側通信部へ送信する請求項1に記載の作業車。
【請求項5】
前記機体は、前記機体の周囲を検知するセンサを更に備え、
前記センサの出力信号によって前記機体の周囲に障害物が存在すると判断した場合には、前記作業車側通信部は前記着陸不可状態である旨を前記飛行体側通信部へ送信する請求項4に記載の作業車。
【請求項6】
前記離着陸部は、前記無人飛行体に対して前記離着陸部の位置を示すマーカを有する請求項1に記載の作業車。
【請求項7】
前記機体は、前記機体に電力を供給するバッテリを更に備え、
前記離着陸部は、前記バッテリの電力を前記無人飛行体に供給可能な供給機構を有する請求項1に記載の作業車。
【請求項8】
前記無人飛行体が前記離着陸部に着陸する際に、前記走行部を停止する請求項1に記載の作業車。
【請求項9】
無人飛行体と、
前記無人飛行体が離着陸可能な離着陸部と、前記離着陸部を支持し、地面を走行可能な走行部と、水平に対する前記離着陸部の傾斜角度を取得する傾斜角取得部と、前記傾斜角取得部が取得した前記傾斜角度に応じて姿勢を変更する姿勢変更機構と、を有する作業車と、を備える作業車システムであって、
前記姿勢変更機構は前記傾斜角度が閾値以上である場合、前記傾斜角度が閾値よりも小さくなるように前記作業車の姿勢を変更する作業車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車及び、作業車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドローンの離着陸に使用されるヘリポートを備える無人走行移動体が開示されている。このヘリポートはプラットホームの基盤とその上に設けたプラットホームの上板の二段構造であり、基盤上に杆体を回動させる駆動機構を設けている。杆体は駆動機構によって回動されることでドローンを捕捉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているヘリポートはドローンを捕捉できる杆体が設けられている。これによりドローンをヘリポートに固定できる。しかしながら、このヘリポートには、上板の傾斜角度を制御する機構は設けられていない。
【0005】
また、凹凸の多い地面や傾斜した地面を走行する場合、機体が傾くことで無人飛行体が着陸可能な離着陸部が傾きやすくなる。離着陸部が傾くことで無人飛行体が離着陸部に着陸しにくくなる。
【0006】
本発明の目的は、無人飛行体が着陸可能な離着陸部の傾斜角度を制御する作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する手段として、本発明の作業車は、無人飛行体が離着陸可能な離着陸部と、前記離着陸部を支持し、地面を走行可能な走行部と、水平に対する前記離着陸部の傾斜角度を取得する傾斜角取得部と、を備える機体と、前記傾斜角取得部が取得した前記傾斜角度に応じて前記機体の姿勢を変更する姿勢変更機構と、を備え、前記姿勢変更機構は前記傾斜角度が閾値以上である場合、前記傾斜角度が閾値よりも小さくなるように前記機体の姿勢を変更することを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、凹凸の多い地面や傾斜した地面を走行する際に機体が傾いた場合でも、従来と比較して姿勢変更機構によって無人飛行体が離着陸部に着陸しやすくなる。
【0009】
本発明において、前記姿勢変更機構は、走行車輪によって支持され、伸縮可能な伸縮機構を有し、前記姿勢変更機構は、前記無人飛行体が前記離着陸部に着陸する際に、前記傾斜角度が閾値以上である場合、前記伸縮機構を伸縮することによって、前記傾斜角度が閾値よりも小さくなるように前記機体の姿勢を変更すると好適である。
【0010】
傾斜した地面を走行する際に機体の傾斜角度を小さくするように制御する場合、高い位置にある機体の一部が傾斜面に近づく方向に動くと、機体が地面に接触する場合がある。本構成によれば、機体を通り水平方向に延びる軸芯周りに機体を回動させる構成と比較して、柔軟な姿勢変更が可能となり、機体が地面に接触しにくくなる。
【0011】
本発明において、前記姿勢変更機構は、前記無人飛行体が前記離着陸部に着陸する際に前記傾斜角度が0度となるように前記機体の姿勢を変更すると好適である。
【0012】
本構成によれば、姿勢変更機構によって離着陸部の水平を維持されるので、無人飛行体が離着陸部に着陸しやすくなる。
【0013】
本発明において、前記無人飛行体が有する飛行体側通信部と通信可能な作業車側通信部と、前記離着陸部に前記無人飛行体が着陸可能か判定する判定部と、を更に備え、前記判定部は前記傾斜角度が閾値以上である場合には前記離着陸部が着陸不可状態であると判定し、かつ、前記傾斜角度が閾値よりも小さい場合には前記離着陸部が着陸可能状態であると判定し、前記作業車側通信部は、前記着陸可能状態であるか否かを前記飛行体側通信部へ送信すると好適である。
【0014】
本構成によれば、無人飛行体が着陸する場合に、離着陸部が着陸可能であるか否かを無人飛行体に送信することで、無人飛行体が離着陸部に安全に着陸することができる。
【0015】
本発明において、前記機体は、前記機体の周囲を検知するセンサを更に備え、前記センサの出力信号によって前記機体の周囲に障害物が存在すると判断した場合には、前記作業車側通信部は前記着陸不可状態である旨を前記飛行体側通信部へ送信すると好適である。
【0016】
離着陸部が着陸可能な傾斜角度を保っている場合でも、作業車の周囲に木などの障害物がある場合は、着陸の際に無人飛行体が障害物に接触してしまう場合がある。本構成によれば、無人飛行体が着陸する際に、機体の周囲に障害物が存在すると判断した場合には、離着陸部が着陸不能である旨の情報を無人飛行体に送信することで、無人飛行体が機体の周囲の障害物に接触しにくくなる。
【0017】
本発明において、前記離着陸部は、前記無人飛行体に対して前記離着陸部の位置を示すマーカを有すると好適である。
【0018】
本構成によれば、離着陸部の位置を無人飛行体に示すことで、無人飛行体が離着陸部に着陸しやすくなる。
【0019】
本発明において、前記機体は、前記機体に電力を供給するバッテリを更に備え、前記離着陸部は、前記バッテリの電力を前記無人飛行体に供給可能な供給機構を有すると好適である。
【0020】
無人飛行体に搭載されるバッテリの容量は限られており、定期的に充電を行うことが必要である。例えば、充電ステーションが近くにない山間部での作業では、無人飛行体の充電の機会がかぎられてしまう。本構成によれば、供給機構によって作業車のバッテリの電力を無人飛行体に供給することができるので、充電の機会が限られる環境であっても、無人飛行体を長時間の作業に用いることができる。
【0021】
本発明において、前記無人飛行体が前記離着陸部に着陸する際に、前記走行部を停止すると好適である。
【0022】
本構成によれば、無人飛行体が離着陸部に安全に着陸することができる。
【0023】
また、本発明の作業車システムは、無人飛行体と、前記無人飛行体が離着陸可能な離着陸部と、前記離着陸部を支持し、地面を走行可能な走行部と、水平に対する前記離着陸部の傾斜角度を取得する傾斜角取得部と、前記傾斜角取得部が取得した前記傾斜角度に応じて姿勢を変更する姿勢変更機構と、を有する作業車と、を備える作業車システムであって、前記姿勢変更機構は前記傾斜角度が閾値以上である場合、前記傾斜角度が閾値よりも小さくなるように前記作業車の姿勢を変更することを特徴とする。
【0024】
本構成によれば、凹凸の多い地面や傾斜した地面を走行する際に機体が傾いた場合でも、従来と比較して姿勢変更機構によって無人飛行体が離着陸部に着陸しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】無人飛行体が離着陸部に着陸している作業車を示す左側面図である。
【
図2】無人飛行体が離着陸部から離陸している作業車を示す左側面図である。
【
図9】姿勢変更機構による機体の姿勢変更を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る作業車及び、作業車システムについて、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図面における矢印FWの方向を「前側」、矢印BKの方向を「後側」、矢印UPの方向を「上側」、矢印DWの方向を「下側」、矢印RHの方向を「右側」、矢印LHの方向を「左側」とする。
【0027】
作業車は不整地を走行可能である。この作業車は、リモコン操作による遠隔操作または自律走行が可能である。不整地とは凹凸のある地面や傾斜した地面などを示す。
【0028】
図1、
図2、
図3に示すように、作業車WVは、地面を走行可能な走行部2と、無人飛行体DRが離着陸可能な離着陸部5と、離着陸部5の傾斜角度に応じて作業車WVの機体の姿勢を変更する姿勢変更機構3と、を備える。作業車WVの機体は平面視で矩形状である。
【0029】
図1は、無人飛行体DRの一例であるドローンが離着陸部5に着陸している状態を示している。また、
図2は、無人飛行体DRの一例であるドローンが離着陸部5から離陸している状態を示している。無人飛行体DRは、記憶部(図示なし)と、プログラムを実行するCPUと、を有している。記憶部は、例えば、HDDやROM、不揮発性メモリなどで構成される。無人飛行体DRは上部に回転翼のプロペラを複数有する。また、無人飛行体DRは下部に複数の接地脚を有する。
【0030】
図1、
図2に示すように、無人飛行体DRは、撮像装置22を備えている。撮像装置22は作業車WV及び作業車WVの周囲を撮影可能なカメラである。不整地を自律走行する作業車WVにおいて、作業車WVの周囲に凹凸や障害物が存在する場合がある。本実施形態では、無人飛行体DRが離着陸部5から離陸している場合は、作業車WVよりも高い位置から作業車WV及び作業車WVの周囲を撮影できる。これにより作業車WVの機体に設けられた撮像装置22によって作業車WV及び作業車WVの周囲を撮影する構成と比較して、広い範囲を撮影することができる。撮像装置22によって撮影された画像は、無人飛行体DRの記憶部に記録される。本実施形態において画像は、静止画である。これに限らず、画像は、静止画を連続的に表示させるものである動画及び映像でもよい。
【0031】
作業車WVの機体は、機体フレーム1と、荷物を積載可能な平板状の積載部4と、走行部2を駆動させるための油圧供給源6と、マイクロコンピュータによって作業車WVの制御を行う制御装置7と、走行部2を操舵可能な操作ハンドル8bを有する操向装置8と、機体に電力を供給するバッテリ9と、外部電源に接続可能であり、バッテリ9を充電するための充電器10と、GPSアンテナユニット11と、を備える。
【0032】
走行部2は、複数の走行車輪2aと、補助車輪2bと、を備えており、姿勢変更機構3及び作業車WVの機体を支持している。つまり、走行部2は機体が備える離着陸部5を支持している。また、姿勢変更機構3は走行車輪2aによって支持されている。
【0033】
本実施形態において、複数の走行車輪2aは、作業車WVの左前側、右前側、右後側及び左後側にそれぞれ位置している。複数の走行車輪2aは4つの駆動輪である。これに限らず、例えば、複数の走行車輪2aは6つまたは8つでもよい。
【0034】
機体フレーム1は、姿勢変更機構3に支持される上部フレーム1aと、上部フレーム1aから下方へ延出する下部フレーム1bと、上部フレーム1aの機体外側部分を覆っている外周フレーム(図示なし)と、充電器10を機体前側から覆っており、開閉可能なカバー1cと、を備える。上部フレーム1aは、機体前後方向に延びる左右のフレームと左右のフレームを連結する複数の連結フレームとを有する。上部フレーム1aの前端部に充電器10が固定されている。
【0035】
積載部4は、機体フレーム1の上面に設けられている。積載部4は平面視で矩形状である。積載部4は上部フレーム1aの全体を上側から覆っている。積載部4の上面には、荷物が載置可能である。積載部4に載置される荷物は、例えば、農機具、肥料や薬剤などの農業資材、収穫物や収穫かごなどを載せるパレットなどである。積載部4の上面には、離着陸部5及びGPSアンテナユニット11が設けられている。
【0036】
〔離着陸部〕
図1、
図2、
図3に示すように、離着陸部5は、箱状であり、平面視で矩形状である。離着陸部5の上面に無人飛行体DRが離着陸可能である。離着陸部5の上面は平坦状である。離着陸部5の上面は積載部4の上面より上側に位置している。
【0037】
図3に示すように、離着陸部5は平面視で上部フレーム1aと重複する位置にある。これにより、離着陸部5は上部フレーム1aに支持されて安定する。離着陸部5は機体の左右中央に位置している。また、離着陸部5は機体の前後中央に位置している。これにより、離着陸部5が機体に安定して支持される。
【0038】
離着陸部5は、無人飛行体DRに対して離着陸部5の位置を示すマーカ5bを有する。マーカ5bは、無人飛行体DRの撮像装置22に撮影されることで、離着陸部5が着陸目標である旨の情報を無人飛行体DRに読み取らせる。本実施形態において、マーカ5bは撮像装置22によって読み取り可能なコード(例えば、QRコード(登録商標))である。これに限らず、マーカ5bは離着陸部5を示す「H」の文字でもよい。
【0039】
図1に示すように、油圧供給源6は、姿勢変更機構3及び走行部2に作動油を供給する油圧ポンプ6aと、油圧ポンプ6aを駆動させる電動モータ6bと、作動油タンク6cと、を備える。油圧ポンプ6a、電動モータ6b及び作動油タンク6cは上部フレーム1aによって支持されている。バッテリ9は下部フレーム1bによって支持されている。
【0040】
図1に示すように、操作ハンドル8bは作業車WVの機体の上面から垂直方向に立設されている。本実施形態において、操作ハンドル8bはジョイスティックである。操作ハンドル8bは、操作ハンドル8bが倒された方向や倒された角度に応じて走行部2の進行方向や進行速度を変更可能である。
【0041】
無人飛行体DRは、接続部材13によって操作ハンドル8bと接続されている。接続部材13は可撓性のあるケーブルである。作業車WVは、無人飛行体DRに追従して、無人飛行体DRが飛行した方向に走行する。例えば、無人飛行体DRが作業車WVよりも前側を飛行した場合、操作ハンドル8bが前側に倒されるので、作業車WVが無人飛行体DRに追従して前方に走行する。また、無人飛行体DRが作業車WVよりも後側を飛行した場合、操作ハンドル8bが後側に倒されるので、作業車WVが無人飛行体DRに追従して後方に走行する。これにより、作業車WVが山間部を走行している際に、作業車WVが無線電波を受信できない状況でも、作業車WVよりも無線電波を受信しやすい無人飛行体DRに追従して作業車WVを走行させることができる。これに限らず、無人飛行体DRは、接続部材13によって操作ハンドル8bと接続されていなくてもよい。
【0042】
GPSアンテナユニット11は、GNSS(グローバルナビゲーションサテライトシステム、例えばGPS、QZSS、Galileo、GLONASS、BeiDou等)で用いられる人工衛星からの測位信号を受信する。GPSアンテナユニット11は離着陸部5と隣接した位置に設けられる。具体的には、GPSアンテナユニット11は、機体の前部に設けられ、離着陸部5よりも前側に位置している。
図3に示すように、GPSアンテナユニット11は機体の左右中央に位置している。
【0043】
〔姿勢変更機構〕
姿勢変更機構3は、機体フレーム1から下方に延出する複数の伸縮機構Fを有する。具体的には、複数の伸縮機構Fは作業車WVの左前側、右前側、右後側及び左後側にそれぞれ位置している。換言すると、姿勢変更機構3は4つの伸縮機構Fを有する。複数の伸縮機構Fがそれぞれ独立して伸縮することで、作業車WVの機体の姿勢を変更することができる。
【0044】
図4に示すように、伸縮機構Fは、機体左右方向に延びる軸芯P1を中心に揺動可能な棒状の第一リンク32aと、機体左右方向に延びる軸芯P2を中心に揺動可能な棒状の第二リンク32bと、伸縮可能な第一油圧シリンダ31aと、伸縮可能な第二油圧シリンダ31bと、によって構成される。
【0045】
第一リンク32aの一方側の端部は上部フレーム1aに揺動可能に連結され、第一リンク32aの他方側の端部は第二リンク32bに揺動可能に連結されている。第二リンク32bの一方側の端部は第一リンク32aに揺動可能に連結され、第二リンク32bの他方側の端部は走行車輪2aによって支持されている。第一リンク32aと第二リンク32bとの接続部分には、回転可能な補助車輪2bが設けられている。
【0046】
第一油圧シリンダ31aの一方側の端部は上部フレーム1aに連結され、第一油圧シリンダ31aの他方側の端部は第一リンク32aに連結されている。第一油圧シリンダ31aの伸縮によって、第一リンク32aが上部フレーム1aに対して軸芯P1を中心に揺動する。
【0047】
第二油圧シリンダ31bの一方側の端部は上部フレーム1aに連結され、第二油圧シリンダ31bの他方側の端部は第二リンク32bに連結されている。第二油圧シリンダ31bの伸縮によって、第二リンク32bが第一リンク32aに対して軸芯P2を中心に揺動する。
【0048】
図4に示すように、走行車輪2aは上下方向に延びる軸芯P3周りで回動可能である。操向装置8は第二リンク32bと走行車輪2aとに亘って設けられた旋回シリンダ8aを備える。走行車輪2aは旋回シリンダ8aの伸縮によって軸芯P3周りで回動する。それぞれの走行車輪2aには走行車輪2aを駆動する油圧モータ2cが連結されている。具体的には、それぞれの走行車輪2aと隣接した位置に油圧モータ2cが設けられている。
【0049】
図5に示すように、油圧供給源6は、オイルクーラ6eと、インバータ6dと、油圧制御弁6fと、を備えている。バッテリ9から供給される電力は、インバータ6dによって変換されて電動モータ6bに供給される。作動油タンク6cの作動油は、油圧ポンプ6aによって複数の油圧モータ2c、複数の第一油圧シリンダ31a及び複数の第二油圧シリンダ31bに供給される。油圧制御弁6fは、油圧ポンプ6aから供給される作業油の流量を調整している。例えば、油圧ポンプ6aから油圧モータ2cに供給される作動油の流量が、油圧制御弁6fによって調整されることで走行車輪2aの回転速度が変更される。
【0050】
図6は作業車システムを示すブロック図である。作業車システムは、作業車WVと、無人飛行体DRと、管理装置CPと、を備えている。管理装置CPは、作業車WV及び無人飛行体DRの外部に設けられている。管理装置CPは、パソコン、携帯情報端末、リモコンまたは管理サーバなどである。管理装置CPがクラウド上に設けられてもよい。管理装置CPは作業車WV及び無人飛行体DRを遠隔操作可能である。
【0051】
制御装置7は、機体の姿勢を制御する姿勢制御部7aと、走行部2を制御する走行制御部7bと、傾斜角取得部7cと、無人飛行体DRが有する飛行体側通信部23と通信可能な作業車側通信部7fと、作業車WVの位置を算出する作業車側位置算出部7eと、離着陸部5に無人飛行体DRが着陸可能か判定する判定部7dと、を備える。制御装置7はECU(Electrоnic Contrоl Unit)である。制御装置7は、プログラムを記憶する不揮発性メモリと、プログラムを実行するCPUと、を有している。
【0052】
〔傾斜角取得部〕
作業車WVの機体は傾斜センサ12aを備える。傾斜センサ12aは慣性計測装置(Inertial measurement Unit)を有する。傾斜センサ12aは作業車WVの慣性情報(ヨー角、ピッチ角、ロール角等)を検出する。傾斜角取得部7cは、傾斜センサ12aの出力信号に応じて、水平に対する作業車WVの機体の傾きを経時的に算出する。また、傾斜角取得部7cは慣性情報に基づいて作業車WVが走行している地面の地形データを生成する。
【0053】
作業車WVは、第一油圧シリンダ31a、第二油圧シリンダ31b及び旋回シリンダ8aの伸縮量を検出するストロークセンサ12eを備える。姿勢制御部7aはストロークセンサ12eの出力信号によって作業車WVの機体の姿勢を算出する。姿勢制御部7aは第一油圧シリンダ31a及び第二油圧シリンダ31bへの作業油の流量を調整する。これにより、第一油圧シリンダ31a及び第二油圧シリンダ31bの伸縮によって、第一リンク32a及び第二リンク32bの揺動位置が変更される。以上のように、姿勢変更機構3は機体の姿勢を変更する。
【0054】
作業車WVは走行車輪2a回転数を検出する回転センサ12dと、油圧モータ2cに供給される作動油の圧力を検出する圧力センサ12cと、を備える。走行制御部7bは、回転センサ12d及び圧力センサ12cの出力信号に応じて、走行車輪2aの回転数が目標値となるように走行部2を制御する。また、走行制御部7bはストロークセンサ12eの出力信号に応じて、旋回シリンダ8aへの作業油の流量を調整する。これにより、旋回シリンダ8aの伸縮によって走行車輪2aの向きが変更される。以上のように、操向装置8は走行部2を操舵する。
【0055】
作業車WVは、機体の周囲を検知する障害物センサ12b(本発明のセンサに相当)を備える。本実施形態において、障害物センサ12bは機体に設けられた超音波センサである。制御装置7は、障害物センサ12bの出力信号によって機体の周囲に障害物が存在するか否かを判断する。これに限らず、障害物センサ12bは別の形態でもよい。例えば、障害物センサ12bは三次元計測センサであってもよい。
【0056】
作業車側位置算出部7eは、GPSアンテナユニット11から入力された作業車WVの測位情報と、傾斜角取得部7cから入力された作業車WVの慣性情報と、に基づいて作業車WVの自車位置を示す測位データを生成する。作業車WVの測位データは作業車側通信部7fによる有線通信または無線通信によって、管理装置CP及び飛行体側通信部23に送信される。
【0057】
無人飛行体DRは、飛行体側位置算出部21を備える。無人飛行体DRは、GNSS(グローバルナビゲーションサテライトシステム、例えばGPS、QZSS、Galileo、GLONASS、BeiDou等)で用いられる人工衛星からの測位信号を受信する。飛行体側位置算出部21は、入力された無人飛行体DRの測位信号と、無人飛行体DRの慣性情報と、に基づいて無人飛行体DRの自機位置を示す測位データを生成する。無人飛行体DRの測位データは飛行体側通信部23による有線通信または無線通信によって、管理装置CP及び作業車側通信部7fに送信される。また、撮像装置22によって撮影された画像は、飛行体側通信部23による有線通信または無線通信によって、管理装置CP及び作業車側通信部7fへ送信される。
【0058】
電波状態の悪い山間地において、作業車WVのGPSアンテナユニット11が測位信号を受信できない場合がある。この場合、作業車WVが作業車WVの測位データを算出できず、作業車WVの自律走行が困難な場合がある。作業車WVは無人飛行体DRから送信される情報によって、作業車WVの位置情報を算出できる。これにより、作業車WVは電波状態認の悪い山間地においても自律走行を行うことができる。
【0059】
無人飛行体DRは、離着陸部5に着陸している状態から定期的に作業車WVの上方に離陸する。無人飛行体DRが作業車WVの真上を飛行する。作業車側位置算出部7eは、無人飛行体DRの測量データと、作業車WVの慣性情報によって作業車WVの自車位置を算出できる。これにより、電波状況の悪い山間部においても、作業車WVの自律走行が可能である。
【0060】
制御装置7は、傾斜角取得部7cが生成した地形データと、無人飛行体DRが撮影した画像と、に基づいて作業車WVの周囲の地形マップを生成する。これに限らず、制御装置7は、傾斜角取得部7cが生成した地形データと、無人飛行体DRが有する三次元計測センサの出力信号に基づいて作業車WVの周囲の地形マップを生成してもよい。
【0061】
〔供給機構〕
離着陸部5は、作業車WVのバッテリ9の電力を無人飛行体DRのバッテリ(図示なし)に供給可能な供給機構5aを有する。供給機構5aはバッテリ9と接続されている。本実施形態において、供給機構5aは、離着陸部5の上面に設けられた出力端子と、無人飛行体DRの入力端子と、の接続によって、作業車WVのバッテリ9の電力を無人飛行体DRに供給する。これに限らず、供給機構5aは、離着陸部5の上面に設けられ、無線給電によって作業車WVのバッテリ9の電力を無人飛行体DRのバッテリに供給してもよい。無線給電は、例えば、電磁誘導による給電である。
【0062】
図7は離着陸部5の着陸可能状態を示す図面である。着陸可能状態とは、離着陸部5の上面が所定よりも傾いていない状態である。換言すると、離着陸部5の水平面に対する傾斜角度が閾値よりも小さい状態である。閾値は無人飛行体DRが離着陸部5に安全に着陸できないとされる傾斜角度である。例えば、閾値は5度である。本実施形態において、離着陸部5上面の傾斜角度は、離着陸部5の上面に沿って延びる水平面に対して0度である。
【0063】
図8は離着陸部5の着陸不可状態を示す図面である。
図8に示される点CHは、離着陸部5における前後左右の中心を示している。着陸不可状態とは離着陸部5の上面が所定よりも傾いている状態である。換言すると、離着陸部5の水平面に対する傾斜角度θが閾値以上である状態である。本実施形態において、傾斜角度θは、点CHを通る水平面に対する離着陸部5上面の傾斜角度である。
【0064】
離着陸部5が着陸可能状態であるか否かは、判定部7dによって判定される。傾斜角取得部7cは水平に対する離着陸部5の傾斜角度θを取得する。
図6に示すように、判定部7dは傾斜角取得部7cから取得した傾斜角度θに基づいて、離着陸部5が着陸可能状態であるか、着陸不可状態であるか、を判定する。具体的には、判定部7dは、傾斜角度θが閾値以上である場合には離着陸部5が着陸不可状態であると判定し、かつ、傾斜角度θが閾値よりも小さい場合には離着陸部5が着陸可能状態であると判定する。作業車側通信部7fは、着陸可能状態であるか否かを飛行体側通信部23へ送信する。
【0065】
〔姿勢変更機構による機体の姿勢変更〕
次に、姿勢変更機構3による機体の姿勢変更について、
図9に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、下記に記載するステップは矛盾が生じない限り、順番が前後してもよく、複数のステップが同時に行われてもよい。
【0066】
作業車WVは地面を走行しており、無人飛行体DRから無人飛行体DRが着陸する旨の情報を受信する(ステップS01)。具体的には、無人飛行体DRが離着陸部5に向けて下降する前に、飛行体側通信部23は、無人飛行体DRが着陸する旨の情報を作業車側通信部7fへ送信する。作業車側通信部7fは、受信した無人飛行体DRが着陸する旨の情報を制御装置7へ送信する。
【0067】
障害物センサ12bの出力信号によって、制御装置7が作業車WVの機体の周囲に障害物が存在すると判断した場合は(ステップS002;Yes)、作業車側通信部7fは離着陸部5が着陸不可状態である旨の情報を飛行体側通信部23へ送信して、(ステップS003)ステップS002に移行する。
【0068】
制御装置7が作業車WVの機体の周囲に障害物が存在しないと判断した場合は(ステップS002;No)、走行制御部7bが走行部2を停止させる(ステップS004)。換言すると、作業車WVは無人飛行体DRが離着陸部5に着陸する際に走行部2を停止する。
【0069】
傾斜角取得部7cが離着陸部5の傾斜角度θを取得する(ステップS005)。傾斜角取得部7cが取得した離着陸部5の傾斜角度θが閾値以上である場合は(ステップS006;Yes)、作業車側通信部7fは、離着陸部5が着陸不可状態である旨の情報を飛行体側通信部23へ送信する(ステップS007)。傾斜角取得部7cが取得した離着陸部5の傾斜角度θが閾値よりも小さい場合は(ステップS006;N0)、ステップS009へと移行する。
【0070】
次に、制御装置7は、姿勢変更機構3に傾斜角度θが閾値よりも小さくなるように作業車WVの機体の姿勢を変更させて、(ステップS008)ステップS006へ移行する。換言すると、姿勢変更機構3は、伸縮機構Fを伸縮することによって、傾斜角度θが閾値よりも小さくなるように作業車WVの機体の姿勢を変更する。本実施形態において、姿勢変更機構3は傾斜角度θが0度となるように機体の姿勢を変更する。これに限らず、姿勢変更機構3は傾斜角度θが閾値よりも小さくなれば、0度になるまで機体の姿勢を変更しなくてもよい。
【0071】
図8に示すように、離着陸部5が機体前後方向において前下がり傾斜している場合は、右前の伸縮機構F及び左前の伸縮機構Fが伸ばされて、右前の伸縮機構F及び左前の伸縮機構Fに支持されている機体前部の地面に対する高さが高くなる。これにより、離着陸部5の上面が水平を維持するように制御される。
【0072】
傾斜角取得部7cが取得した離着陸部5の傾斜角度θが閾値よりも小さい場合は(ステップS006;No)、作業車側通信部7fは、離着陸部5が着陸可能状態である旨の情報を飛行体側通信部23へ送信する(ステップS009)。無人飛行体DRは、作業車WVから離着陸部5が着陸可能状態である旨の情報を受信すると、離着陸部5へ着陸する(S010)。以上のように、姿勢変更機構3は、無人飛行体DRが離着陸部5に安全に着陸できるように機体の姿勢変更を行う。
【0073】
〔別実施形態〕
本発明は、上述した実施形態に限られない。例えば、以下の別実施形態のように構成しても良い。以下に説明する別実施形態では実施形態と同じ構成には上述した実施形態と共通の番号、符号を付している。
【0074】
〔1〕上述の実施形態では、無人飛行体DRはドローンである。これに限らず、例えば、無人飛行体DRはラジコンヘリでもよい。
【0075】
〔2〕上述の実施形態では、離着陸部5は、箱状であり、平面視で矩形状である。これに限らず、離着陸部5は他の形態でもよい。例えば、離着陸部5には無人飛行体DRの脚部が挿入可能な凹部が設けられてもよい。また、平面視で離着陸部5の外周部がすり鉢状であってもよい。離着陸部5は平面視で矩形状でなくてもよい。
【0076】
〔3〕上述の実施形態では、作業車WVは無人飛行体DRが離着陸部5に着陸する際に走行部2を停止する。これに限らず、作業車WVは無人飛行体DRが離着陸部5に着陸する際に徐行してもよい。
【0077】
〔4〕上述の実施形態では伸縮機構Fは、第一油圧シリンダ31a及び第二油圧シリンダ31bを有する。これに限らず、伸縮機構Fは、第一油圧シリンダ31a及び第二油圧シリンダ31bのうち、少なくとも一方が電動で伸縮する電動シリンダであってもよい。
【0078】
〔5〕無人飛行体DRは薬剤を散布するため作業装置を備え、離着陸部5は薬剤を貯留するタンクを備えていてもよい。無人飛行体DRは筒状の部材によってタンクに貯留された薬剤を吸入するように構成されてもよい。
【0079】
〔6〕傾斜角取得部7c及び判定部7dは管理装置CPに設けられてもよい。
【0080】
〔7〕上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、凹凸の多い地面や傾斜した地面を走行可能な作業車に適用できるのであり、作業者が搭乗可能な作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0082】
2 :走行部
2a :走行車輪
3 :姿勢変更機構
31a :第一油圧シリンダ(伸縮機構)
31b :第二油圧シリンダ(伸縮機構)
32a :第一リンク(伸縮機構)
32b :第二リンク(伸縮機構)
5 :離着陸部
5a :供給機構
5b :マーカ
7c :傾斜角取得部
7d :判定部
7f :作業車側通信部
9 :バッテリ
23 :飛行体側通信部
DR :無人飛行体
WV :作業車
θ :傾斜角度