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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005800
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 63/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B62D63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106176
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】陣内 克俊
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】山中 之史
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】吉井 嘉一郎
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 悠平
(72)【発明者】
【氏名】仁木 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山岸 亮太
(57)【要約】
【課題】機体及び作業装置の姿勢変更動作を簡略化でき、部品点数の少ない作業車を提供すること。
【解決手段】走行面Gの上を無人走行可能な作業車WVであって、機体1と、機体1を支持し、走行面Gを走行可能な走行装置2と、機体1に固定された作業装置5と、機体1の姿勢を変更する姿勢変更機構3と、を備え、姿勢変更機構3による機体1の姿勢変更によって、作業装置5の姿勢変更が可能である作業車。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行面の上を無人走行可能な作業車であって、
機体と、
前記機体を支持し、前記走行面を走行可能な走行装置と、
前記機体に固定された作業装置と、
前記機体の姿勢を変更する姿勢変更機構と、を備え、
前記姿勢変更機構による前記機体の姿勢変更によって、前記作業装置の姿勢変更が可能である作業車。
【請求項2】
前記姿勢変更機構は、走行車輪によって支持され、伸縮可能な伸縮機構を有し、
前記姿勢変更機構は、前記伸縮機構を伸縮することによって、前記走行面を走行する際の姿勢である走行姿勢と、前記作業装置によって作業を行う際の姿勢である作業姿勢と、に前記機体を姿勢変更可能である請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記姿勢変更機構は、前記伸縮機構を伸縮することによって、前記機体及び前記作業装置の高さを変更できる請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記機体は、水平に対する前記機体の傾斜角度を取得する傾斜取得部を備え、
前記姿勢変更機構は、前記傾斜取得部の検出結果に基づいて前記走行姿勢において前記機体の上面が水平となるように前記機体の姿勢を変更し、かつ、前記作業姿勢において前記機体の上面が水平に対して傾斜するように前記機体の姿勢を変更する請求項2に記載の作業車。
【請求項5】
前記作業装置は、前記走行面を測定する測定装置であり、
前記姿勢変更機構による前記機体の姿勢変更によって、前記測定装置は前記走行面を測定可能である請求項1に記載の作業車。
【請求項6】
前記走行装置を操舵可能な操向装置を更に備え、
前記走行装置は、左右の走行車輪を有し、前記走行面として水道管における内側の面を走行可能であり、
機体左右方向における水平に対する前記機体の傾きが閾値以上である場合、前記操向装置は、左右の前記走行車輪のうち低い位置にある前記走行車輪の側に前記走行装置を操舵する請求項1に記載の作業車。
【請求項7】
前記作業装置は、前記走行面上の対象物をすくい上げるバケットであり、
前記姿勢変更機構による前記機体の姿勢変更によって、前記バケットは前記対象物をすくい上げることが可能である請求項1に記載の作業車。
【請求項8】
前記作業装置は、前記走行面上の対象物を吊支するクレーンであり、
前記姿勢変更機構による前記機体の姿勢変更によって、前記クレーンは前記対象物を吊支可能である請求項1に記載の作業車。
【請求項9】
前記機体は、荷物を載置可能な載置台を有し、
前記姿勢変更機構による前記機体の姿勢変更によって、前記載置台に載置された荷物は前記機体の外部に搬送される請求項1に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、滞留水を移送するためのホースを、滞留水に投入する自走式のホース投入機が開示されている。このホース投入機には、複数のカメラが設けられている。複数のカメラのうち、第二のカメラは回転支持部材の先端に設けられており、回転支持部材を回転させることで第二のカメラの姿勢が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-188930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているホース投入機には、第二のカメラの姿勢を変更する機構は設けられているが、機体の姿勢を変更する機構は設けられていない。
【0005】
また、凹凸の多い走行面を走行する際には、段差を乗り越えるために機体の姿勢を変更する場合がある。この場合、カメラの姿勢変更と、機体の姿勢変更と、を個別に行う必要がある。
【0006】
本発明の目的は、機体及び作業装置の姿勢変更動作を簡略化でき、部品点数の少ない作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する手段として、本発明の作業車は、走行面の上を無人走行可能な作業車であって、機体と、前記機体を支持し、前記走行面を走行可能な走行装置と、前記機体に固定された作業装置と、前記機体の姿勢を変更する姿勢変更機構と、を備え、前記姿勢変更機構による前記機体の姿勢変更によって、前記作業装置の姿勢変更が可能であることを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、姿勢変更機構によって、機体の姿勢と作業装置の姿勢との両方を変更できるので、機体の姿勢変更と作業装置の姿勢変更とを個別に行うよりも、機体及び作業装置の姿勢変更動作を簡略化できる。また、部品点数も少なくなり、コストを削減することができる。
【0009】
本発明において、前記姿勢変更機構は、走行車輪によって支持され、伸縮可能な伸縮機構を有し、前記姿勢変更機構は、前記伸縮機構を伸縮することによって、前記走行面を走行する際の姿勢である走行姿勢と、前記作業装置によって作業を行う際の姿勢である作業姿勢と、に前記機体を姿勢変更可能であると好適である。
【0010】
傾斜した走行面を走行する際に機体の傾斜角度を小さくするように制御する場合、高い位置にある機体の一部が傾斜面に近づく方向に動くと、機体が地面に接触する場合がある。本構成によれば、機体を通り水平方向に延びる軸芯周りに機体を回動させる構成と比較して、柔軟な姿勢変更が可能となり、機体が地面に接触しにくくなる。
【0011】
本発明において、前記姿勢変更機構は、前記伸縮機構を伸縮することによって、前記機体及び前記作業装置の高さを変更できると好適である。
【0012】
本構成によれば、伸縮機構を伸縮することによって、機体の高さと作業装置の高さとの両方を変更できるので、機体の高さ変更と作業装置の高さ変更とを個別に行うよりも、機体及び作業装置の高さ変更動作を簡略化できる。また、部品点数も少なくなり、コストを削減することができる。
【0013】
本発明において、前記機体は、水平に対する前記機体の傾斜角度を取得する傾斜取得部を備え、前記姿勢変更機構は、前記傾斜取得部の検出結果に基づいて前記走行姿勢において前記機体の上面が水平となるように前記機体の姿勢を変更し、かつ、前記作業姿勢において前記機体の上面が水平に対して傾斜するように前記機体の姿勢を変更すると好適である。
【0014】
本構成によれば、走行姿勢においては機体が安定した姿勢で走行可能であり、かつ、作業姿勢においては作業装置が傾くので作業が行いやすい姿勢に変更できる。
【0015】
本発明において、前記作業装置は、前記走行面を測定する測定装置であり、前記姿勢変更機構による前記機体の姿勢変更によって、前記測定装置は前記走行面を測定可能であると好適である。
【0016】
本構成によれば、姿勢変更機構によって、機体の姿勢と測定装置の姿勢との両方を変更できるので、機体の姿勢変更と作業装置の姿勢変更とを個別に行うよりも、機体及び作業装置の姿勢変更動作を簡略化できる。また、部品点数も少なくなり、コストを削減することができる。
【0017】
本発明において、前記走行装置を操舵可能な操向装置を更に備え、前記走行装置は、左右の走行車輪を有し、前記走行面として水道管における内側の面を走行可能であり、機体左右方向における水平に対する前記機体の傾きが閾値以上である場合、前記操向装置は、左右の前記走行車輪のうち低い位置にある前記走行車輪の側に前記走行装置を操舵すると好適である。
【0018】
走行装置が円筒状の水道管の内側の面を走行する場合、機体が左右方向に傾きやすい。本構成によれば、操向装置による走行装置の操舵によって、水道管の内側の面を走行しやすくなる。
【0019】
本発明において、前記作業装置は、前記走行面上の対象物をすくい上げるバケットであり、前記姿勢変更機構による前記機体の姿勢変更によって、前記バケットは前記対象物をすくい上げることが可能であると好適である。
【0020】
本構成によれば、姿勢変更機構によって、機体の姿勢とバケットの姿勢との両方を変更できるので、機体の姿勢変更とバケットの姿勢変更とを個別に行うよりも、機体及びバケットの姿勢変更動作を簡略化できる。また、部品点数も少なくなり、コストを削減することができる。
【0021】
本発明において、前記作業装置は、前記走行面上の対象物を吊支するクレーンであり、前記姿勢変更機構による前記機体の姿勢変更によって、前記クレーンは前記対象物を吊支可能であると好適である。
【0022】
本構成によれば、姿勢変更機構によって、機体の姿勢とクレーンの姿勢との両方を変更できるので、機体の姿勢変更とクレーンの姿勢変更とを個別に行うよりも、機体及びクレーンの姿勢変更動作を簡略化できる。また、部品点数も少なくなり、コストを削減することができる。
【0023】
本発明において、前記機体は、荷物を載置可能な載置台を有し、前記姿勢変更機構による前記機体の姿勢変更によって、前記載置台に載置された荷物は前記機体の外部に搬送されると好適である。
【0024】
本構成によれば、姿勢変更機構によって、機体の姿勢変更と、載置台に載置された荷物の搬送と、を両方行えるので、機体の姿勢変更と荷物の搬送とを個別に行うよりも、機体の姿勢変更動作及び荷物の搬送動作を簡略化できる。また、部品点数も少なくなり、コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】走行姿勢である作業車を示す左側面図である。
図2】作業姿勢である作業車を示す左側面図である。
図3】作業車を示す平面図である。
図4】伸縮機構を示す側面図である。
図5】油圧供給源を示す油圧回路図である。
図6】作業車システムを示すブロック図である。
図7】操向装置による走行装置の操舵を示す図である。
図8】操向装置による走行装置の操舵を示すフローチャートである。
図9】作業姿勢である作業車の別の一例を示す図である。
図10】走行姿勢である作業車の別の一例を示す図である。
図11】作業姿勢である作業車の別の一例を示す図である。
図12】走行姿勢である作業車の別の一例を示す図である。
図13】作業姿勢である作業車の別の一例を示す図である。
図14】走行姿勢である作業車の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る作業車について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図面における矢印FWの方向を「前側」、矢印BKの方向を「後側」、矢印UPの方向を「上側」、矢印DWの方向を「下側」、矢印RHの方向を「右側」、矢印LHの方向を「左側」とする。
【0027】
この作業車は走行面の上を無人走行可能である。換言すると、作業車はリモコンによる遠隔操作または自律走行が可能である。作業車は走行面である不整地を走行可能である。不整地とは凹凸のある走行面や傾斜した走行面などを示す。
【0028】
図1図2図3に示すように、作業車WVは、機体1と、機体1を支持し、地面を走行可能な走行装置2と、機体1に固定された作業装置5と、機体1の姿勢を変更する姿勢変更機構3と、を備える。機体1は平面視で矩形状である。本実施形態において、走行装置2は走行面Gとして円筒状の水道管の内側の面を走行可能である。
【0029】
作業車WVの機体1は、荷物を積載可能な平板状の載置台4と、走行装置2を駆動させるための油圧供給源6と、マイクロコンピュータによって作業車WVの制御を行う制御装置7と、走行装置2を操舵可能な操作ハンドル8bを有する操向装置8と、機体1に電力を供給するバッテリ9と、外部電源に接続可能であり、バッテリ9を充電するための充電器10と、を備える。
【0030】
本実施形態において、作業車WVは機体1と接続されているケーブル11を有する。ケーブル11は管理装置CPと接続されている。機体1はケーブル11によって水道管の外部と有線通信を行うことができる。これに限らず、ケーブル11は充電器10と接続されており、機体1はケーブル11によって水道管の外部の電源から機体1に電力を供給してもよい。
【0031】
走行装置2は、複数の走行車輪2aと、補助車輪2bと、走行車輪2aを駆動する油圧モータ2cと、を備えており、姿勢変更機構3及び機体1を支持している。また、姿勢変更機構3は走行車輪2aによって支持されている。
【0032】
本実施形態において、複数の走行車輪2aは、作業車WVの左前側、右前側、右後側及び左後側にそれぞれ位置している。複数の走行車輪2aは4つの駆動輪である。これに限らず、例えば、複数の走行車輪2aは6つまたは8つでもよい。
【0033】
機体1は、姿勢変更機構3に支持される上部フレーム1aと、上部フレーム1aから下方へ延出する下部フレーム1bと、上部フレーム1aの機体外側部分を覆っている外周フレーム(図示なし)と、充電器10を機体前側から覆っており、開閉可能なカバー1cと、を備える。上部フレーム1aは、機体前後方向に延びる左右のフレームと左右のフレームを連結する複数の連結フレームとを有する。上部フレーム1aの前端部に充電器10が固定されている。
【0034】
載置台4は、機体1の上面に設けられている。載置台4は平面視で矩形状である。載置台4は上部フレーム1aの全体を上側から覆っている。載置台4の上面には、荷物が載置可能である。載置台4に載置される荷物は、例えば、農機具、肥料や薬剤などの農業資材、収穫物や収穫かごなどを載せるパレットなどである。
【0035】
〔作業装置〕
図1図2図3に示すように、作業装置5は機体1前部に設けられている。作業装置5は走行面Gを測定する測定装置5Aである。本実施形態において、測定装置5Aはカメラである。測定装置5Aは機体1の上面に設けられており、機体1の前方を撮影する。姿勢変更機構3による機体1の姿勢変更によって、測定装置5Aの姿勢変更が可能である。作業装置5は姿勢を変更する機構を備えていない。また、作業装置5は機体1に対する高さを変更する機構を備えていない。
【0036】
図1に示すように、油圧供給源6は、姿勢変更機構3及び走行装置2に作動油を供給する油圧ポンプ6aと、油圧ポンプ6aを駆動させる電動モータ6bと、作動油タンク6cと、を備える。油圧ポンプ6a、電動モータ6b及び作動油タンク6cは上部フレーム1aによって支持されている。バッテリ9は下部フレーム1bによって支持されている。
【0037】
図1に示すように、操向装置8の操作ハンドル8bは機体1の上面から垂直方向に立設されている。本実施形態において、操作ハンドル8bはジョイスティックである。操作ハンドル8bは、操作ハンドル8bが倒された方向や倒された角度に応じて走行装置2の進行方向や進行速度を変更可能である。
【0038】
〔姿勢変更機構〕
図1図2に示すように、姿勢変更機構3は、機体1から下方に延出し、伸縮可能な複数の伸縮機構Fを有する。具体的には、複数の伸縮機構Fは作業車WVの左前側、右前側、右後側及び左後側にそれぞれ位置している。換言すると、姿勢変更機構3は4つの伸縮機構Fを有する。複数の伸縮機構Fがそれぞれ独立して伸縮することで、機体1の姿勢を変更することができる。
【0039】
姿勢変更機構3は、伸縮機構Fを伸縮させることによって、図1に示す走行面Gを走行する際の姿勢である走行姿勢と、図2に示す作業装置5によって作業を行う際の姿勢である作業姿勢と、に機体1を姿勢変更可能である。姿勢変更機構3は、伸縮機構Fを伸縮させることによって、機体1及び作業装置5の高さや傾きを変更できる。走行姿勢における水平面に対する機体1の傾きは、作業姿勢における水平面に対する機体1の傾きよりも小さい。本実施形態において、走行姿勢における水平面に対する機体1の傾きは0度である。また、走行姿勢における機体1の高さは、作業姿勢における機体1の高さよりも高い。これに限らず、走行姿勢における機体1の高さは、作業姿勢における機体1の高さよりも低くてもよい。
【0040】
図4に示すように、伸縮機構Fは、機体左右方向に延びる軸芯P1を中心に揺動可能な棒状の第一リンク32aと、機体左右方向に延びる軸芯P2を中心に揺動可能な棒状の第二リンク32bと、伸縮可能な第一油圧シリンダ31aと、伸縮可能な第二油圧シリンダ31bと、によって構成される。
【0041】
第一リンク32aの一方側の端部は上部フレーム1aに揺動可能に連結され、第一リンク32aの他方側の端部は第二リンク32bに揺動可能に連結されている。第二リンク32bの一方側の端部は第一リンク32aに揺動可能に連結され、第二リンク32bの他方側の端部は走行車輪2aによって支持されている。第一リンク32aと第二リンク32bとの接続部分には、回転可能な補助車輪2bが設けられている。
【0042】
第一油圧シリンダ31aの一方側の端部は上部フレーム1aに連結され、第一油圧シリンダ31aの他方側の端部は第一リンク32aに連結されている。第一油圧シリンダ31aの伸縮によって、第一リンク32aが上部フレーム1aに対して軸芯P1を中心に揺動する。
【0043】
第二油圧シリンダ31bの一方側の端部は上部フレーム1aに連結され、第二油圧シリンダ31bの他方側の端部は第二リンク32bに連結されている。第二油圧シリンダ31bの伸縮によって、第二リンク32bが第一リンク32aに対して軸芯P2を中心に揺動する。
【0044】
図2に示すように、姿勢変更機構3が機体1を前下がり傾斜の姿勢に機体1の姿勢を変更することで、作業装置5の姿勢が前下がり傾斜の作業姿勢に変更される。具体的には、走行姿勢の機体1において、右前及び左前の伸縮機構Fが縮められる。また、右後及び左後の伸縮機構Fが伸ばされる。以上により、機体1は作業姿勢となる。このような姿勢変更機構3による機体1の姿勢変更によって、測定装置5Aが走行面Gの対象物OBを測定可能である。
【0045】
図1に示すように、作業姿勢の機体1において、姿勢変更機構3が機体1を水平にしつつ、機体1の高さを高くする。具体的には、右前、左前の伸縮機構Fが伸ばされる。また、右後及び左後の伸縮機構Fが縮められる。以上により、機体1は作業姿勢から走行姿勢となる。このような姿勢変更機構3による機体1の姿勢変更によって、測定装置5Aの姿勢が前下がり傾斜の作業姿勢から、水平方向を向いた走行姿勢へと変更される。
【0046】
図4に示すように、走行車輪2aは上下方向に延びる軸芯P3周りで回動可能である。操向装置8は第二リンク32bと走行車輪2aとに亘って設けられた旋回シリンダ8aを備える。走行車輪2aは旋回シリンダ8aの伸縮によって軸芯P3周りで回動する。それぞれの走行車輪2aには油圧モータ2cが連結されている。具体的には、それぞれの走行車輪2aと隣接した位置に油圧モータ2cが設けられている。
【0047】
図5に示すように、油圧供給源6は、オイルクーラ6eと、インバータ6dと、油圧制御弁6fと、を備えている。バッテリ9から供給される電力は、インバータ6dによって変換されて電動モータ6bに供給される。作動油タンク6cの作動油は、油圧ポンプ6aによって複数の油圧モータ2c、複数の第一油圧シリンダ31a及び複数の第二油圧シリンダ31bに供給される。油圧制御弁6fは、油圧ポンプ6aから供給される作業油の流量を調整している。例えば、油圧ポンプ6aから油圧モータ2cに供給される作動油の流量が、油圧制御弁6fによって調整されることで走行車輪2aの回転速度が変更される。
【0048】
図6に示すように、制御装置7は、機体1の姿勢を制御する姿勢制御部7aと、走行装置2を制御する走行制御部7bと、水平に対する機体1の傾斜角度を取得する傾斜取得部7cと、作業車WVの位置を算出する自車位置算出部7dと、を備える。制御装置7はECU(Electrоnic Contrоl Unit)である。制御装置7は、プログラムを記憶する不揮発性メモリと、プログラムを実行するCPUと、を有している。
【0049】
〔傾斜取得部〕
機体1は傾斜センサ12aを備える。傾斜センサ12aは慣性計測装置(Inertial measurement Unit)を有する。傾斜センサ12aは作業車WVの慣性情報(ヨー角、ピッチ角、ロール角等)を検出する。傾斜取得部7cは、傾斜センサ12aの出力信号に応じて、水平面に対する機体1の傾きを経時的に算出する。
【0050】
機体1は、第一油圧シリンダ31a、第二油圧シリンダ31b及び旋回シリンダ8aの伸縮量を検出するストロークセンサ12eを備える。姿勢制御部7aはストロークセンサ12eの出力信号によって機体1の姿勢を算出する。姿勢制御部7aは第一油圧シリンダ31a及び第二油圧シリンダ31bへの作業油の流量を調整する。これにより、第一油圧シリンダ31a及び第二油圧シリンダ31bの伸縮によって、第一リンク32a及び第二リンク32bの揺動位置が変更される。以上のように、姿勢変更機構3は機体1の姿勢を変更する。例えば、姿勢変更機構3は、傾斜取得部7cの検出結果に基づいて走行姿勢において機体1の上面が水平となるように機体1の姿勢を変更し、かつ、作業姿勢において機体1の上面が水平に対して傾斜するように機体1の姿勢を変更する。
【0051】
機体1は走行車輪2a回転数を検出する回転センサ12dと、油圧モータ2cに供給される作動油の圧力を検出する圧力センサ12cと、を備える。走行制御部7bは、回転センサ12d及び圧力センサ12cの出力信号に応じて、走行車輪2aの回転数が目標値となるように走行装置2を制御する。また、走行制御部7bはストロークセンサ12eの出力信号に応じて、旋回シリンダ8aへの作業油の流量を調整する。これにより、旋回シリンダ8aの伸縮によって走行車輪2aの向きが変更される。以上のように、操向装置8は走行装置2を操舵する。
【0052】
機体1は、機体1の周囲を検知する外界センサ12bを備える。本実施形態において、外界センサ12bは機体1に設けられた超音波センサである。制御装置7は、外界センサ12bの出力信号によって機体1周囲の走行面Gに障害物が存在するか否かを判断する。これに限らず、外界センサ12bは別の形態でもよい。例えば、外界センサ12bは三次元計測センサであってもよい。
【0053】
自車位置算出部7dは、予め記憶されたマップと、外界センサ12bから入力された機体1周囲の情報と、回転センサ12dから入力された走行車輪2aの回転数と、ストロークセンサ12eから入力された旋回シリンダ8aの伸縮量と、傾斜取得部7cから入力された作業車WVの慣性情報と、に基づいて作業車WVの自車位置を示す測位データを生成する。作業車WVの測位データは有線通信によって、ケーブル11を介して機体1と接続された管理装置CPに送信される。管理装置CPは、作業車WVの外部に設けられている。管理装置CPは、パソコン、携帯情報端末、リモコンまたは管理サーバなどである。管理装置CPがクラウド上に設けられてもよい。管理装置CPは作業車WVを遠隔操作可能である。
【0054】
図7は操向装置8による走行装置2の操舵を示す図面である。図7において、点CHは、機体1の左右中央、かつ、上部フレーム1aの上下中央を示している。旋回シリンダ8aによって、4つの走行車輪2aは個別に旋回方向が変更される。機体左右方向における水平に対する機体1の傾きθが閾値以上である場合、操向装置8は、左右の走行車輪2aのうち低い位置にある走行車輪2aの側に走行装置2を操舵する。本実施形態において、傾きθは、点CHを通る水平面に対する機体1の傾斜角度である。例えば、閾値は8度である。
【0055】
〔操向装置による走行装置の操舵〕
次に、操向装置8による走行装置2の操舵について、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、下記に記載するステップは矛盾が生じない限り、順番が前後してもよく、複数のステップが同時に行われてもよい。
【0056】
作業車WVは走行面Gを走行しており、傾斜取得部7cが機体1の左右方向における傾きθを取得する(ステップS001)。傾斜取得部7cが取得した機体1の傾きθが閾値よりも小さい場合(ステップS002;No)、図7に示すように、操向装置8は、走行装置2を直進走行させる(ステップS003)。
【0057】
傾きθが閾値以上である場合(ステップS002;Yes)、かつ、傾斜取得部7cから入力された作業車WVの慣性情報によって、機体1が右側に傾いていると制御装置7が判断した場合(ステップS004:Yes)は、図7に示すように、操向装置8は、走行装置2を右方向へ操舵して(ステップS005)、ステップS002へと移行する。
【0058】
傾きθが閾値以上である場合(ステップS002;Yes)、かつ、機体1が右側に傾いていないと制御装置7が判断した場合(ステップS004;No)は、図7に示すように、操向装置8は走行装置2を左方向へ操舵して(ステップS006)、ステップS002へと移行する。
【0059】
特に、走行装置2が円筒状の水道管の内側の面を走行する場合、機体1が左右方向に傾きやすい。上述のように操向装置8による走行装置2の操舵を行うことで、機体1が転倒することなく自律走行を行うことができる。
【0060】
〔別実施形態〕
本発明は、上述した実施形態に限られない。例えば、以下の別実施形態のように構成しても良い。以下に説明する別実施形態では実施形態と同じ構成には上述した実施形態と共通の番号、符号を付している。
【0061】
〔1〕上述の実施形態では、作業装置5は走行面Gを測定する測定装置5Aである。これに限らず、図9図10に示すように、作業装置5は走行面G上の対象物OBをすくい上げるバケット5Bでもよい。姿勢変更機構3による機体1の姿勢変更によって、バケット5Bが走行面Gの対象物OBをすくい上げることが可能である。
【0062】
図9に示すように、姿勢変更機構3が機体1を前下がり傾斜の姿勢に機体1の姿勢を変更することで、バケット5Bの姿勢が前下がり傾斜の作業姿勢に変更される。具体的には、右前及び左前の伸縮機構Fが縮められる。また、右後及び左後の伸縮機構Fが伸ばされる。このような作業姿勢において、バケット5Bが走行面Gの対象物OBを保持する。
【0063】
次に、図10に示すように、姿勢変更機構3が機体1を水平にしつつ、機体1の高さを高くする。具体的には、右前、左前の伸縮機構Fが伸ばされる。また、右後及び左後の伸縮機構Fが縮められる。このような姿勢変更機構3による機体1の姿勢変更によって、バケット5Bの姿勢が前下がり傾斜の作業姿勢から、対象物OBを搬送可能な走行姿勢へと変更される。
【0064】
〔2〕図11図12に示すように、作業装置5は走行面G上の対象物OBを吊支するクレーン5Cでもよい。姿勢変更機構3による機体1の姿勢変更によって、クレーン5Cが走行面Gの対象物OBを吊支可能である。
【0065】
〔3〕上述の実施形態では、作業装置5は測定装置5Aであり、具体的にはカメラである。これに限らず、図13図14に示すように、作業装置5は、土壌や液体のpHを測定するpH測定器5Dでもよい。pH測定器5Dは下部フレーム1bに固定されている。また作業装置5は、機体1の下方の土壌等を採取する採取装置(例えば、ドリル)でもよい。
【0066】
図13図14に示すように、機体1を水平な姿勢で維持したまま、姿勢変更機構3が機体1の高さを低くすることで、作業装置5が走行面Gに接触する。具体的には、右前、左前、右後及び左後の伸縮機構Fが縮められる。以上により、機体1及びpH測定器5Dは走行姿勢から作業姿勢となる。
【0067】
〔4〕上述の実施形態では、載置台4は平板状である。これに限らず、載置台4は別の形態でもよい。例えば、載置台4は回動可能な複数のローラを有していてもよい。複数のローラはローラの短手方向に並んでいる。姿勢変更機構3による機体1の姿勢変更によって、複数のローラの上に載置された荷物は、機体1の外部に搬送される。具体的には、機体1が傾斜することで載置台4の上面が斜めになり、複数のローラの回動によって、荷物が載置台4の上面に沿って搬送される。
【0068】
〔5〕上述の実施形態では伸縮機構Fは、第一油圧シリンダ31a及び第二油圧シリンダ31bを有する。これに限らず、伸縮機構Fは、第一油圧シリンダ31a及び第二油圧シリンダ31bのうち、少なくとも一方が電動で伸縮する電動シリンダであってもよい。
【0069】
〔6〕上述の実施形態では、走行姿勢における水平面に対する機体1の傾きは0度である。これに限らず、走行姿勢における水平面に対する機体1の傾きは、作業姿勢における水平面に対する機体1の傾きよりも小さければ0度でなくてもよい。
【0070】
〔7〕傾斜取得部7c及び自車位置算出部7dは管理装置CPに設けられてもよい。
【0071】
〔8〕作業車WVは複数の作業装置5を備えてもよい。また、作業車WVが、1つ又は複数の作業装置5に加えて、姿勢や高さを変更可能な作業装置を備えてもよい。
【0072】
〔9〕上述の実施形態では、作業装置5は機体1の前部や下部に設けられている。これに限らず、作業装置5の取付位置は任意である。例えば、作業装置5は機体1の後部に設けられてもよい。また、作業装置5は機体1の横側部に設けられてもよい。
【0073】
〔10〕上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、凹凸の多い地面や傾斜した地面を走行可能な作業車に適用できるのであり、作業者が搭乗可能な作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 :機体
2 :走行装置
2a :走行車輪
3 :姿勢変更機構
31a :第一油圧シリンダ(伸縮機構)
31b :第二油圧シリンダ(伸縮機構)
32a :第一リンク(伸縮機構)
32b :第二リンク(伸縮機構)
4 :載置台
5 :作業装置
5A :測定装置
5B :バケット
5C :クレーン
7c :傾斜取得部
8 :操向装置
G :走行面
OB :対象物
WV :作業車
θ :傾き
図1
図2
図3
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図5
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