(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005815
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車椅子スロープ安全昇降補助具
(51)【国際特許分類】
A61G 3/06 20060101AFI20250109BHJP
A61G 5/00 20060101ALI20250109BHJP
A61G 5/06 20060101ALI20250109BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20250109BHJP
E04F 11/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61G3/06 711
A61G5/00 701
A61G5/06
B62B3/00 Z
E04F11/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106196
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】519284816
【氏名又は名称】森岡 昭
(72)【発明者】
【氏名】森岡 昭
【テーマコード(参考)】
2E301
3D050
【Fターム(参考)】
2E301AA03
3D050AA04
3D050JJ04
3D050JJ07
(57)【要約】
【課題】車椅子が小刻みに車椅子スロープを登り降りする事を可能にする、車椅子スロープ安全昇降補助具を提供する。
【解決手段】車椅子スロープに取り付けられた鋸歯状板の上を、車椅子に牽引されるローラが転がって登るとき、ローラーは、鋸歯の坂を登っては鋸歯の谷に落ちる、を繰り返しながら進行する。介助者が車椅子を押す力を緩めると、ローラーは下方直近の鋸歯の谷にはまって止まる。車椅子がスロープを下るときは、介助者が車椅子のハンドル部に取り付けられたローラー引き上げレバーを握ってローラーを鋸歯状板の鋸歯より高くで引き上げる。これにより車椅子は車椅子スロープを下ることが可能になる。下る車椅子を停止させたいときは、ローラー引き上げレバーを開放してローラーを鋸歯状板におろすことにより、ローラーは下方直近の鋸歯の谷にはまって止まる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子スロープ上を小刻みに昇降することができる車椅子スロープ安全昇降補助具であって、車椅子に取り付けてローラーを牽引するローラー装置と、車椅子スロープに取り付ける鋸歯状板と、の二つの部分からなることを特徴とする車椅子スロープ安全昇降補助具。
【請求項2】
前記ローラー装置は、車椅子に牽引される前記ローラーが、前記鋸歯状板の上を転がりながら進むことを可能とする請求項1に記載の車椅子スロープ安全昇降補助具
【請求項3】
前記ローラー装置は、前記ローラーをローラー引き上げレバーによって引き上げることにより、前記鋸歯状板の上を転がらずに移動できることを特徴とする請求項1に記載の車椅子スロープ安全昇降補助具
【請求項4】
前記鋸歯状板は、表面が鋸歯状の波面を持ち、車椅子が前記ローラー装置を牽引して上昇するときには、前記ローラーの進行を妨げず、下降するときには前記ローラーを鋸歯の谷で受け止めることを特徴とする請求項1に記載の車椅子スロープ安全昇降補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子が小刻みに車椅子スロープを登り降りする事を可能にする、車椅子スロープ安全昇降補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
障害者を乗せて移動している車椅子が、車椅子スロープを登り降りする際には、介助者が後から身体を傾けて、一歩一歩車椅子を押し上げる、または足を踏ん張りながら後退する車椅子を支えて一歩一歩降りる、ことになる。この場合、介助者には体力が強く持久力があることが求められ、非力な介助者では事故の危険性がある。
【0003】
車椅子のハンドグリップに介助ブレーキが付いている車椅子の場合は、ブレーキをかけたりゆるめたりして、停止と移動を繰り返しながら車椅子スロープをゆっくり昇降する事ができる。しかし、車椅子スロープ上で車椅子を停止させている時には、腕の力でブレーキを強く引きつづける必要があり、腕力がない高齢や虚弱な介助者には、安全な昇降は保障できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、障害者を乗せて移動している車椅子が、車椅子スロープを登り降りする際に、高齢等のために体力が弱い介助者でも、車椅子スロープ上を小刻みに車椅子を進めたり止めたりしながら、安全に昇降することができる、車椅子スロープ安全昇降補助具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による車椅子スロープ安全昇降補助具の概念図を、
図1a(側面図)と
図1b(背面図)とで示す。車椅子スロープ安全昇降補助具は、
図1でグレー色で示される、車椅子スロープ(30)に取り付ける鋸歯状板(10)と、
図1で黒色で示される、車椅子(40)に取り付けるローラー装置(20)、の二つの部分からなる。
【0007】
車椅子スロープ(30)の中央に、鋸歯状板(10)を敷いて固定する。鋸歯状板(10)は、幅が車椅子(40)の幅より狭く、長さは車椅子スロープ(30)の長さ程度であり、表面は鋸歯状の波面をもつ。鋸歯状板(10)は、鋸歯波面の登り方向が車椅子スロープ(30)の登り方向と一致するように、車椅子スロープ(30)に固定される。
【0008】
なお、鋸歯状板は、車椅子スロープの製造過程において、車椅子スロープと一体構造として、鋸歯状板付き車椅子スロープとすることが可能である。
【0009】
車椅子(40)に、ローラー装置(20)を取り付ける。ローラー装置(20)は、上記鋸歯状板(10)の鋸歯の段差高程度を直径とするローラー(21)が、ローラー牽引アーム(22)を介してフレキシブルジョイントで車椅子に取り付けられ、車椅子(40)に牽引される装置である。このローラー装置(20)は、車椅子のハンドル部に取り付けるローラー引き上げレバー(252)を引くことによって、ローラー(21)を上記鋸歯状板(10)の鋸歯の高さより高い高さまで引き上げることができる機能をもつ。
【0010】
車椅子の上昇時におけるスロープ安全昇降補助具の動作概念を
図1及び
図2aを用いて示す。
図1に示すように、ローラー装置(20)を牽引する車椅子(40)が、車椅子スロープ(30)に固定された鋸歯状板(10)を車椅子(40)の車輪の間にはさんで、介助者に押されて登行するとき、
図2aに示すように、ローラー(21)は、鋸歯(12)の坂を登っては鋸歯(12)の谷に落ちる、を繰り返しながら、進行する。
図2aは上昇するローラーの3ショットを模式的に示す。介助者が車椅子(40)を押す力を緩めると、車椅子(40)はローラー(21)とともに車椅子スロープ(30)を下降しはじめるが、ローラー(21)は下方直近の鋸歯(12)の谷にはまる。このとき、ローラー(21)は、車椅子(40)の下降しようとする力を、ローラー牽引アーム(22)を介して、鋸歯(12)の壁で支えるため、車椅子(40)は下降出来ずにその場にととどまる。
【0011】
車椅子の下降時におけるスロープ安全昇降補助具の動作概念を
図2bを用いて示す。車椅子(40)が車椅子スロープ(30)を下ろうとするときは、介助者が車椅子のハンドル部に取り付けられているローラー引き上げレバー(252)を握ってワイヤー(241)を引きあげる。これによりローラー(21)は上記鋸歯状板(10)の鋸歯(12)より高い高さまで引き上げられる。これにより車椅子(40)は車椅子スロープ(30)を下ることが可能になる。下る車椅子(40)を停止させたいときは、握っていたローラー引き上げレバー(252)を開放してローラー(21)を上記鋸歯状板の上におろすことにより、ローラー(21)は下方直近の鋸歯(12)の谷にはまって止まる。
図2bは下降するローラー(21)の4ショットを模式的に示す。鋸歯(12)の谷にはまったローラー(21)はローラー牽引アーム(22)を介して車椅子(40)を支えるため、車椅子(40)は下降出来ずにその場にととどまる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、障害者を乗せて移動している車椅子が、車椅子スロープを登り降りする際に、体力が弱い介助者でも、車椅子スロープ上を小刻みに車椅子を進めたり止めたりしながら、安全に昇降することができる、車椅子スロープ安全昇降補助具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による車椅子スロープ安全昇降補助具の概念を示す図。aは側面から、bは背面から見た図である。
【
図2】車椅子昇降時におけるスロープ安全昇降補助具の動作概念を示す図。aは上昇時における動作概念図。bは下降時における動作概念図。
【
図3】車椅子スロープ安全昇降補助具の一実施例の全体図。
【
図6】ローラー装置を車椅子に取り付けた状態の俯瞰図。
【
図8】ブームに取り付けられたアイボルトと樹脂製パイプクランプ。
【
図11】直交クランプと押しネジストッパーの俯瞰図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施例を示す。
図3は、本実施例の全体図である。
【実施例0015】
車椅子スロープ安全昇降補助具は、
図4に示す車椅子スロープに取り付ける鋸歯状板と、
図5に示す車椅子に取り付けるローラー装置、の二つの部分からなる。
【0016】
鋸歯状板(10)の側面図を
図4aに、平面図を
図4bに示す。鋸歯状板(10)は、基板(11)と鋸歯(12)で構成される。基板(11)は、幅が車椅子の後車輪間の幅より狭く、長さは車椅子スロープの長さ程度である。鋸歯(12)は、歯の高さが2センチメートル程度以下で、鋸歯の斜面長は数センチメートルから10センチメートル程度の長さである。鋸歯(12)は、数センチメートルないし20センチメートル間隔で、基板(11)の長軸方向に直角に配置される。
【0017】
鋸歯状板(10)は、鋸歯(12)の斜面の登り方向が車椅子スロープの登り方向と一致するように、車椅子スロープ(30)に固定される。鋸歯状板(10)を車椅子スロープ(30)に固定するには、本実施例では、
図4に示すように、鋸歯状板(10)の上部先端に基板固定用フック(13)を取り付け、車椅子スロープ(30)の上端に引っかける方法がとられる。
【0018】
車椅子(40)には、
図5に示すローラー装置(20)が取り付けられる。ローラー装置(20)は、ローラー(21)、ローラー牽引アーム(22)、メインブーム(23)、ワイヤー部(24)、及び補助ハンドル部(25)で構成される。
【0019】
ローラー装置(20)は、
図6に示すように、メインブーム(23)を車椅子(40)の水平ベースフレーム(42)と垂直バックフレーム(43)の交点で固定し、補助ハンドル(25)を車椅子のハンドグリップ(41)に取り付ける事によって、車椅子(40)に装着される。
図7にメインブーム(23)取り付け部の拡大図を示す。
【0020】
ローラー(21)は、鋸歯板(10)の鋸歯(12)の歯の高さ程度の直径をもつ。このローラー(21)の軸は、
図7に示すように、その左右端をローラー牽引アーム(22)の軸受け(221)で受けられる。ローラー牽引アーム(22)は、メインブーム(23)にフレキシブルジョイント(222)で結合され、上下に可動である。
【0021】
メインブーム(23)を車椅子(40)に固定するために、本実施例では
図8aに示すように、メインブーム(23)の両端にアイボルト(231)と樹脂製パイプクランプ(232)を取り付ける。車椅子(40)の水平ベースフレーム(42)にアイボルト(231)を通し、垂直バックフレーム(43)に樹脂製パイプクランプ(232)をはめることにより、
図8bに示すように、メインブーム(23)を車椅子(40)に固定する事ができる。
【0022】
図9に、ローラー(21)と補助ハンドル部(25)を連結するワイヤー部(24)を示す。ワイヤー部(24)下端のワイヤーフック(242)は、
図7に示すように、ローラー牽引アーム(22)に取り付けらる。ワイヤーフック(242)上部はターンバックル(243)の下端に接続される。ターンバックル(243)の上端は、ワイヤー(241)に接続される。
【0023】
ワイヤー(241)のターンバックル(243)に接続される側のワイヤー(241)のループには、ローラー引き上げ用フック(244)を取り付ける。
【0024】
ワイヤー(241)の上端は、
図6に示されるように、補助ハンドル(251)の中央に開けた穴を通して、ローラー引き上げレバー(252)に接続される。
【0025】
ワイヤー部(24)の長さは、ローラー引き上げレバー(252)を引いていない時はローラー(21)が鋸歯状板(10)の基板(11)に接っし、ローラー引き上げレバー(252)を引いたときにはローラー(21)が鋸歯状板(10)の鋸歯(12)の歯の高さより高く持ち上がるように、調整される。
【0026】
ローラー引き上げフック(244)は、車椅子(40)が車椅子スロープ(30)を通過した後に、平坦地でローラー(21)を引き上げて進行するときに使用される。
図10にローラー(21)を引き上げて、ローラー引き上げフック(244)にひっかけた状態を示す。
【0027】
補助ハンドル(251)は、車椅子(40)のハンドグリップ(41)に、
図11に示す直交クランプ(253)を介して、結合される。直交クランプ(253)をハンドグリップ(41)に固定するために、押しネジストッパー(254)が付けられる。