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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005821
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
H01R13/42 D
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106208
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 雅仁
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE11
5E087GG16
5E087GG26
5E087MM05
5E087RR26
5E087RR29
(57)【要約】
【課題】インナー端子が適正位置まで挿入されていないとき、そのことを組み立て中に検出できるコネクタを提供する。
【解決手段】インナーハウジング20の開口部22を塞ぐ蓋体25の内面に、インナー端子30が端子収容室24の正規位置まで挿入されたとき、インナー端子の突起を受け入れることで蓋体の閉操作を可能にする収納凹部25aと、インナー端子が半挿入位置にあるとき、インナー端子の突起と干渉することで蓋体の閉操作を不可とする干渉壁部25bとが設けられている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングと、当該コネクタハウジングに挿入されるケーブルアッシーと、を備えるコネクタであって、
前記ケーブルアッシーは、
アウターハウジングと、前後方向に延在する端子収容室を有し前記アウターハウジングに収容されるインナーハウジングと、電線の端末に接続された状態で前記インナーハウジングの端子収容室に後方から前方に向けて挿入されるインナー端子と、を備え、
前記インナーハウジングには、前記インナー端子の挿入経路の側方に向けて開放する開口部と当該開口部を閉鎖する開閉可能な蓋体とが設けられると共に、前記インナー端子には、前記インナーハウジングに挿入された際に前記開口部に臨む突起が設けられ、
前記インナーハウジングの蓋体の内面には、
前記インナー端子が前記端子収容室の正規位置まで挿入されたとき、前記インナー端子の突起を受け入れることで前記蓋体の閉位置への閉操作を可能にする収納凹部と、前記インナー端子が前記端子収容室の正規位置の手前の半挿入位置にあるとき、前記インナー端子の突起と干渉することで前記蓋体の閉位置への閉操作を不可とする干渉壁部とが、設けられている、
コネクタ。
【請求項2】
前記蓋体が、前記インナーハウジングの本体の前記開口部の前縁部に、ヒンジを介して回動可能に一体に連結されている、
請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子の挿入不全を検出可能なコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一方のコネクタの端子が正規位置まで適正に挿入されていない状態で、当該コネクタを相手側コネクタと嵌合した場合、両コネクタの端子同士が接触不良を起こす場合がある。
【0003】
それを防ぐ技術として、特許文献1に、端子にバネ部を設けると共に、端子収容室の内壁に傾斜壁部を設け、半挿入位置にある端子のバネ部が傾斜壁部に弾接することで、端子をバネ力により適正位置まで押しやる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-152833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術は、端子に専用のバネ部を設ける必要があり、端子が大きくなりがちで、小型通信用のコネクタには適用が難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、インナーハウジングに対してインナー端子が適正位置まで挿入されていないときに、そのことを組み立て中に検出できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記を特徴としている。
【0008】
コネクタハウジングと、当該コネクタハウジングに挿入されるケーブルアッシーと、を備えるコネクタであって、
前記ケーブルアッシーは、
アウターハウジングと、前後方向に延在する端子収容室を有し前記アウターハウジングに収容されるインナーハウジングと、電線の端末に接続された状態で前記インナーハウジングの端子収容室に後方から前方に向けて挿入されるインナー端子と、を備え、
前記インナーハウジングには、前記インナー端子の挿入経路の側方に向けて開放する開口部と当該開口部を閉鎖する開閉可能な蓋体とが設けられると共に、前記インナー端子には、前記インナーハウジングに挿入された際に前記開口部に臨む突起が設けられ、
前記インナーハウジングの蓋体の内面には、
前記インナー端子が前記端子収容室の正規位置まで挿入されたとき、前記インナー端子の突起を受け入れることで前記蓋体の閉位置への閉操作を可能にする収納凹部と、前記インナー端子が前記端子収容室の正規位置の手前の半挿入位置にあるとき、前記インナー端子の突起と干渉することで前記蓋体の閉位置への閉操作を不可とする干渉壁部とが、設けられている、
コネクタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インナーハウジングの蓋体が適正な閉鎖位置まで閉まるか否かで端子の半挿入を検知することができる。したがって、端子にバネ部のような余計な構成を設ける必要がなく、小型通信用のコネクタに容易に適用することができる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態のコネクタを相手側コネクタに嵌合した状態を示す外観斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態のコネクタの外観斜視図である。
図3図3は、コネクタに使用するケーブルアッシーの斜視図である。
図4図4は、ケーブルアッシーに使用するインナーハウジングの外観斜視図である。
図5図5は、ケーブルアッシーに使用するインナー端子付き電線の斜視図である。
図6図6は、インナーハウジングにインナー端子を挿入しようとしている状態を示す側断面図である。
図7図7は、インナー端子が正規位置まで挿入されときの状態を示す側断面図である。
図8図8は、図7の状態から蓋体を閉じた状態を示す側断面図である。
図9図9は、図8の状態の外観側面図である。
図10図10は、インナー端子が正規位置の手前で挿入停止されたときの状態を示す側断面図である。
図11図11は、図10の状態で蓋体を閉じようとして最後まで閉じられないときの状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態のメスコネクタ1を相手側のオスコネクタ2に嵌合した状態を示す外観斜視図、図2は、実施形態のメスコネクタ1の外観斜視図、図3は、メスコネクタ1に使用するケーブルアッシー10の斜視図である。
【0014】
また、図4は、ケーブルアッシー10に使用するインナーハウジング20の外観斜視図、図5は、ケーブルアッシー10に使用するインナー端子30付き電線Wの斜視図、図6は、インナーハウジング20にインナー端子30を挿入しようとしている状態を示す側断面図、図7は、インナー端子30が正規位置まで挿入されときの状態を示す側断面図、図8は、図7の状態から蓋体25を閉じた状態を示す側断面図、図9は、図8の状態の外観側面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のメスコネクタ1は、相手側のオスコネクタと嵌合されるものである。図2に示すように、このメスコネクタ1は、コネクタハウジング5と、コネクタハウジング5に挿入される複数本のケーブルアッシー10と、を備えている。図3図5に示すように、ケーブルアッシー10は、電線Wと、アウターハウジング11と、アウターハウジング11に収容されるインナーハウジング20と、電線Wの先端に接続された状態でインナーハウジング20に収容されるインナー端子30と、を備えている。
【0016】
図6図8に示すように、インナーハウジング20の本体21には、前後方向に延在する端子収容室24が設けられており、インナー端子30は、電線Wの端末に接続された状態で、インナーハウジング20の端子収容室24に後方から前方に向けて挿入される。端子収容室24の前端壁には、相手側のオスコネクタ2の端子を受け入れる挿入孔24aが設けられている。
【0017】
インナーハウジング20の本体21には、インナー端子30の挿入経路である端子収容室24の上方(側方)に向けて開放する開口部22が設けられており、インナーハウジング20には、この開口部22を閉鎖する開閉可能な蓋体25が一体に設けられている。
【0018】
蓋体25は、開口部22の前端部に配置されたヒンジ26により、インナーハウジング20の本体21に一体に連結されており、ヒンジ26の屈曲性を利用することで、開口部22を確実に閉鎖する位置(閉位置)と、開口部22を開放する位置との間で回動可能になっている。そして、蓋体25は、図8および図9に示すように、完全に開口部22を閉鎖する位置に倒すことで、蓋体25の上面とインナーハウジング20の本体21の上面とが面一となるように構成されている。このように、蓋体25がインナーハウジング20の本体21の開口部22の前縁部にヒンジ26を介して一体に連結されていることにより、樹脂の一体成形でインナーハウジング20の本体21と蓋体25を簡単に製造することができる。
【0019】
一方、インナー端子30には、図6図8に示すように、インナーハウジング20の端子収容室24に挿入された際に前記開口部22に臨む突起31が設けられている。また、インナーハウジング20の蓋体25の内面には、図7および図8に示すように、インナー端子30が端子収容室24の正規位置まで挿入されたとき、インナー端子30の突起31を受け入れることで蓋体25の閉位置への閉操作を可能にする収納凹部25aが設けられている。
【0020】
図10は、インナー端子30が正規位置の手前で挿入停止されたときの状態を示す側断面図、図11は、図10の状態で蓋体25を閉じようとして最後まで閉じられないときの状態を示す側断面図である。
【0021】
インナーハウジング20の蓋体25の内面には、図10および図11に示すように、インナー端子30の突起31の収納凹部25aに隣接して、インナー端子30が端子収容室24の正規位置の手前の半挿入位置に留まるとき、インナー端子30の突起31と干渉することで蓋体25の閉位置への閉操作を不可とする干渉壁部25bが設けられている。
【0022】
次に作用を説明する。
このコネクタ1を組み立てる場合、まず、電線Wの端末に接続されたインナー端子30を、インナーハウジング20の端子収容室24に後方から前方へ向けて挿入する。その際、図7および図8に示すように、インナー端子30がインナーハウジング20の端子収容室24の正規位置まで挿入されたときには、インナーハウジング20の蓋体25を、開口部22を完全に塞ぐ閉位置まで閉めることができるようになる。すなわち、適正位置まで挿入されたインナー端子30の突起31は、挿入方向の前側位置にあって、蓋体25の内面の干渉壁部25bと干渉せず、蓋体25の内面の収納凹部25aに受け入れられるので、蓋体25を適正な閉鎖位置まで閉じることができる。したがって、閉じた蓋体25の上面がインナーハウジング20の本体21の上面と面一となっていることにより、インナー端子30が適正位置まで挿入されていることを知ることができる。また、蓋体25がインナーハウジング20の外側に出っ張っていないことにより、インナーハウジング20を無理なくアウターハウジング11に収容することができるようになる。
【0023】
一方、インナー端子30がインナーハウジング20の端子収容室24内の正規位置まで挿入されていないときには、図10に示すように、インナー端子30の突起31の位置が正規位置よりも後ろ側にずれることになる(図7と比較)。そのため、図11に示すように、その突起31がインナーハウジング20の蓋体25の干渉壁部25bとが干渉することになり、蓋体25が閉位置まで閉まらない状態となる。つまり、蓋体25が閉まらないことで、蓋体25がインナーハウジング20の外側に出っ張った形となり、その外観状の変形から、インナー端子30が半挿入状態にあると検知することができる。また、外観の変形で気づかない場合でも、そのままの形では、外側に出っ張った蓋体25が邪魔になることで、アウターハウジング11にインナーハウジング20が収容できなくなる。そのことからも、インナー端子30が半挿入状態にあることを検知することができる。
【0024】
したがって、インナー端子30の半挿入状態が放置されることで、相手側のオスコネクタ2と接続した際に端子同士が接触不良になるようなことが未然に回避される。このように、インナー端子30の突起31と干渉するインナーハウジング20の蓋体25の位置により、インナー端子30の挿入不全か否かを検知できるので、簡単な構成で組み立て不良を防いで、コネクタ嵌合時の端子同士の接触不良を回避することができる。したがって、小型通信用のコネクタにも容易に適用可能である。
【0025】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るコネクタの特徴をそれぞれ以下[1]、[2]に簡潔に纏めて列記する。
[1] コネクタハウジング(5)と、当該コネクタハウジングに挿入されるケーブルアッシー(10)と、を備えるコネクタ(1)であって、
前記ケーブルアッシーは、
アウターハウジング(11)と、前後方向に延在する端子収容室(24)を有し前記アウターハウジングに収容されるインナーハウジング(20)と、電線(W)の端末に接続された状態で前記インナーハウジングの端子収容室に後方から前方に向けて挿入されるインナー端子(30)と、を備え、
前記インナーハウジングには、前記インナー端子の挿入経路の側方に向けて開放する開口部(22)と当該開口部を閉鎖する開閉可能な蓋体(25)とが設けられると共に、前記インナー端子には、前記インナーハウジングに挿入された際に前記開口部に臨む突起(31)が設けられ、
前記インナーハウジングの蓋体の内面には、
前記インナー端子が前記端子収容室の正規位置まで挿入されたとき、前記インナー端子の突起を受け入れることで前記蓋体の閉位置への閉操作を可能にする収納凹部(25a)と、前記インナー端子が前記端子収容室の正規位置の手前の半挿入位置にあるとき、前記インナー端子の突起と干渉することで前記蓋体の閉位置への閉操作を不可とする干渉壁部(25b)とが、設けられている、
ことを特徴とするコネクタ。
【0026】
上記[1]の構成のコネクタ(1)によれば、インナー端子(30)がインナーハウジング(20)の端子収容室(24)の正規位置まで挿入されているときには、インナーハウジングの蓋体(25)が開口部(22)を完全に塞ぐ閉位置まで閉まる。一方、インナー端子が正規位置まで挿入されていないときには、インナー端子の突起(31)とインナーハウジングの蓋体(25)とが干渉することで、蓋体が閉位置まで閉まらない状態となる。つまり、蓋体が閉まらないことで、蓋体がインナーハウジングの外側に出っ張った形となり、その外観状の変形から、あるいは、そのままの形では蓋体が邪魔になってアウターハウジングにインナーハウジングが収容できなくなることから、インナー端子が半挿入状態にあることが検知される。したがって、半挿入状態が放置されることで、相手側コネクタと接続した際に端子同士が接触不良になるようなことが未然に回避される。
【0027】
[2] 前記蓋体が、前記インナーハウジングの本体の前記開口部の前縁部に、ヒンジ(26)を介して回動可能に一体に連結されている、
上記[1]に記載のコネクタ。
【0028】
上記[2]の構成のコネクタによれば、蓋体がインナーハウジングの本体の開口部の前縁部にヒンジ(26)を介して一体に連結されているので、樹脂の一体成形でインナーハウジングの本体と蓋体を簡単に製造することができる。
【0029】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0030】
1 コネクタ
5 コネクタハウジング
10 ケーブルアッシー
11 アウターハウジング
20 インナーハウジング
21 インナーハウジングの本体
22 開口部
24 端子収容室
25 蓋体
26 ヒンジ
30 インナー端子
31 突起
W 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11