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特開2025-5832深紫外光透過型透明電極付き基材及び深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法
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  • 特開-深紫外光透過型透明電極付き基材及び深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005832
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】深紫外光透過型透明電極付き基材及び深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/08 20060101AFI20250109BHJP
   C23C 14/28 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C23C14/08
C23C14/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106223
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 靖
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA04
4K029AA24
4K029BA15
4K029BA16
4K029BA43
4K029BC08
4K029BC09
4K029CA02
4K029DB05
4K029DB20
(57)【要約】
【課題】深紫外線に対する透過性の高い、深紫外光透過型透明電極付き基材及び深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法を提供する。
【解決手段】透明基材と、前記透明基材上に形成された透明酸化物層と、を備え、前記透明基材は、サファイア基材と、窒化アルミニウム基材と、窒化アルミニウム及び窒化ガリウムの混晶で構成された基材と、からなる群から選択されるいずれかの基材であり、前記透明酸化物層は、SnOを主成分とし、Ta元素を含む金属酸化物からなり、前記金属酸化物のTa元素の量は、前記金属酸化物のSn元素及びTa元素の和に対して0.8原子%以上7.0原子%以下である、深紫外光透過型透明電極付き基材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、前記透明基材上に形成された透明酸化物層と、を備え、
前記透明基材は、サファイア基材と、窒化アルミニウム基材と、窒化アルミニウム及び窒化ガリウムの混晶で構成された基材と、からなる群から選択されるいずれかであり、
前記透明酸化物層は、SnOを主成分とし、Ta元素を含む金属酸化物からなり、
前記金属酸化物のTa元素の量は、前記金属酸化物のSn元素及びTa元素の和に対して0.8原子%以上7.0原子%以下である、深紫外光透過型透明電極付き基材。
【請求項2】
前記透明酸化物層において、前記金属酸化物は、Sn元素に対して1.0原子%以上5.0原子%以下のTa元素を含む、請求項1に記載の深紫外光透過型透明電極付き基材。
【請求項3】
前記透明酸化物層のキャリア密度が4.5×1020cm-3以上である、請求項2に記載の深紫外光透過型透明電極付き基材。
【請求項4】
前記透明酸化物層は、前記金属酸化物のエピタキシャル層である、請求項1又は2に記載の深紫外光透過型透明電極付き基材。
【請求項5】
透明基材としてサファイア基材と、窒化アルミニウム基材と、窒化アルミニウム及び窒化ガリウムの混晶で構成された基材と、からなる群から選択されるいずれかの基材を準備する準備工程と、
Sn元素及びTa元素の量の和に対するTa元素の量が0.8原子%以上7.0原子%であるターゲットを前記透明基材に対向して配置し、物理気相成長法を行い、前記透明基材上に金属酸化物で構成された透明酸化物層を形成する、成膜工程と、を有する、深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法。
【請求項6】
前記ターゲットは、SnOが主成分であり、前記Ta元素の量が0.8原子%以上7.0原子%以下である、請求項5に記載の深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法。
【請求項7】
前記ターゲットは、前記Ta元素の量が1.0原子%以上5.0原子%以下である、請求項5又は6に記載の深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法。
【請求項8】
前記成膜工程は、パルスレーザ堆積法により行う、請求項5又は6に記載の深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深紫外光透過型透明電極付き基材及び深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル、ディスプレイ等の表示デバイス、スマートウィンドウ等の調光デバイス、LED等の発光デバイス、太陽電池等の受光デバイス等には、透明導電性組成物を有する透明電極が用いられている。上記デバイスの普及に伴い、各用途に適した性質を有する透明導電性組成物の開発が求められている。例えば、紫外光デバイスの効率化のために、紫外光用の透明導電性組成物の開発が求められている。
【0003】
非特許文献1には、有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition; MOCVD)法により、二酸化スズにタンタルがドープされた透明導電性組成物で構成された薄膜をr面サファイア基板上に形成することが開示されている。非特許文献1に開示された透明導電性組成物は、Sn元素に対するTa元素の割合が0~8原子%であり、Sn元素に対するTa元素の割合が0~8原子%であるときにキャリア密度が最大値3.0~4.0×1020cm-3であるとの結果が示されている。非特許文献1には、上記透明導電性組成物は、波長280~320nmの紫外線(UV-B)に対して高い透過性を示すと開示されている。
【0004】
非特許文献2には、分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy)法により、二酸化スズにアンチモン(Sb)がドープされた透明導電性組成物で構成された薄膜をr面サファイア基板上に形成することが開示されている。非特許文献2には、上記透明導電性組成物が波長300nm~400nmの紫外線に対して高い透過性を示すと開示されている。
【0005】
非特許文献3には、透明導電性組成物として(111)配向の酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide; ITO)を有する薄膜をMOCVD法によりc面サファイア基板上に形成することが開示されている。非特許文献3には、上記透明導電性組成物は、波長315~400nmの紫外線(UV-A)、波長280~315nmの紫外線(UV-B)における平均透過率がそれぞれ94%、74%であり、高い透過性を示すと開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“UV-vis transparent conducting Ta-doped SnO2 epitaxial films grown by metal-organic chemical vapor deposition”, He et al., Mater. Res. Bull. (2019), doi: 10.1016/j.materresbull.2019.05.013
【非特許文献2】“Conductivity and transparency limits of Sb-doped SnO2 grown by molecular beam epitaxy”, Martinez-Gazoni et al., Phys. Rev. B (2018), doi:10.1103/PhysRevB.98.155308
【非特許文献3】“Highly ultraviolet transparent textured indium tin oxide thin films and the application in light emitting diodes”, Chen et al., Appl. Phys. Lett. (2017), doi:10.1063/1.4986452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、また、非特許文献1~非特許文献3に開示された透明導電性組成物は、波長280nm以下の深紫外線(UV-C)に対する透過性が低かった。深紫外線は、殺菌、浄水、空気浄化といった作用が期待されており、近年、深紫外光の発光デバイスの外部量子効率ηextの向上が求められている。これに伴い、深紫外光の光取出し効率ηleeを向上するために深紫外線に対する透過性の高い透明電極付き基材が求められている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされた発明であり、深紫外線に対する透過性の高い、深紫外光透過型透明電極付き基材及び深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
【0010】
[1]本発明の一態様に係る深紫外光透過型透明電極付き基材は、透明基材と、前記透明基材上に形成された透明酸化物層と、を備え、前記透明基材は、サファイア基材と、窒化アルミニウム基材と、窒化アルミニウム及び窒化ガリウムの混晶で構成された基材と、からなる群から選択されるいずれかの基材であり、前記透明酸化物層は、SnOを主成分とし、Ta元素を含む金属酸化物からなり、前記金属酸化物のTa元素の量は、前記金属酸化物のSn元素及びTa元素の和に対して0.8原子%以上7.0原子%以下である。
【0011】
[2]上記[1]の深紫外光透過型透明電極付き基材は、前記透明酸化物層において、前記金属酸化物は、Sn元素に対して1.0原子%以上5.0原子%以下のTa元素を含んでいてもよい。
【0012】
[3]上記[1]又は[2]の深紫外光透過型透明電極付き基材において、前記透明酸化物層のキャリア密度は、4.5×1020cm-3以上であってもよい。
【0013】
[4]上記[1]~[3]の深紫外光透過型透明電極付き基材において、前記透明酸化物層は、前記金属酸化物のエピタキシャル層であってもよい。
【0014】
[5]本発明の一態様に係る深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法は、透明基材としてサファイア基材と、窒化アルミニウム基材と、窒化アルミニウム及び窒化ガリウムの混晶で構成された基材と、からなる群から選択されるいずれかの基材を準備する準備工程と、Sn元素及びTa元素の量の和に対するTa元素の量が0.8原子%以上7.0原子%であるターゲットを前記透明基材に対向して配置し、物理気相成長法を行い、前記透明基材上に金属酸化物で構成された透明酸化物層を形成する、成膜工程と、を有する。
【0015】
[6]上記[5]の深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法において、前記ターゲットは、SnOが主成分であり、前記Ta元素の量が0.8原子%以上7.0原子%以下であってもよい。
【0016】
[7]上記[5]又は[6]の深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法において、前記ターゲットは、前記Ta元素の量が1.0原子%以上5.0原子%以下であってもよい。
【0017】
[8]上記[5]~[7]のいずれかの深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法において、前記成膜工程は、パルスレーザ堆積法により行ってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、構成元素の少ない透明導電性組成物を備え、深紫外線に対する透過性の高い、深紫外光透過型透明電極及び深紫外光透過型透明電極の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る深紫外光透過型透明電極付き基材の構成の一例を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法を説明する図であって、PLD法により成膜工程を行う様子を示す図である。
図3図3(a)は、SnOのバンド構造を示す図であり、図3(b)は、本実施形態に係る透明導電性組成物のバンド構造を示す図である。
図4】実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材のX線回折パターンである。
図5図5(a)は、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材の抵抗率を示すグラフであり、図5(b)は、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材のキャリア密度を示すグラフであり、図5(c)は、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材の電子移動度を示すグラフである。
図6】実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材の内部透過率のスペクトルを示すグラフである。
図7】実施例1-4及び実施例2の深紫外光透過型透明電極付き基材の透過率、反射率及び内部透過率を示すグラフである。
図8図8(a)は、波長280nmにおける実施例1-1~実施例1-5、実施例2,実施例3及び比較例1~比較例6の電極付き基材のシート抵抗及び内部透過率を示すグラフであり、図8(b)は、波長260nmにおける実施例1-1~実施例1-5及び比較例1~比較例6の電極付き基材のシート抵抗及び内部透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。このため、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっている場合がある。
【0021】
[紫外光透過型透明電極付き基材]
図1は、本発明の一実施形態に係る深紫外光透過型透明電極付き基材の構成の一例を示す断面図である。図1に示される透明電極付き基材10は、透明基材1及び透明基材1上に形成された透明酸化物層2を備える光学積層体である。透明電極付き基材10は、透明基材1及び透明酸化物層2からなることが好ましい。
【0022】
(透明基材)
透明基材1は、透明電極付き基材10の土台となる基材である。透明基材1は、サファイア基材と、窒化アルミニウム基材と、窒化アルミニウム及び窒化ガリウムの混晶で構成された基材と、からなる群から選択されるいずれかの基材である。本実施形態に係る紫外光透過型透明電極付き基材がLEDとして活用される場合、透明基材1は、窒化アルミニウム基材、或いは、窒化アルミニウム及び窒化ガリウムの混晶を主成分として含み、透明酸化物層2は、素子の一部である透明基材1上に形成される。透明基材としては、a面、c面、r面、m面の何れのものを用いてもよい。透明基材1は、透明酸化物層2と接する基材であり、透明基材1のうち、透明酸化物層2と反対側の面に深紫外光に対する透過性の高い他の基材が設けられていてもよい。例えば、透明基材1が窒化アルミニウム基材である場合、当該窒化アルミニウム基材は、サファイア基材上に形成されていてもよい。例えば、窒化アルミニウム基材がa面サファイア基材又はc面サファイア基材上に形成されていてもよい。同様に、透明基材1がサファイア基材である場合、当該サファイア基材は、窒化アルミニウム基材上に形成されていてもよい。例えば、c面サファイア基材がc面窒化アルミニウム基材上に形成されていてもよい。
【0023】
透明基材1がc面配向していることで、透明基材1上に物理気相成長した透明酸化物層2は、透明基材1の配向性を引き継ぎ、c面成長する。
【0024】
透明基材1は、上記基材で構成されていることで、深紫外光に対して高い透過性を示す。透明基材1は、平坦形状の基板に限定されず、湾曲した形状を有する基板であってもよく、可撓性の高い所謂フレキシブル基板であってもよい。
【0025】
透明基材1の厚みは、任意に設定できるが、例えば、40μm以上1000μm以下である。透明基材1は、ロールに巻き上げ及び巻出し可能な基材であることが好ましい。透明基材1がロールに巻き上げ及び巻出し可能な基材であると、透明基材1の厚みが上記範囲内であることで、透明電極付き基材10をロール・トゥ・ロール方式で製造することができ、高い生産性を実現できる。
【0026】
(透明酸化物層)
透明酸化物層2は、SnOを主成分とし、Ta元素を含む金属酸化物からなり、金属酸化物のTa元素の量は、前記金属酸化物のSn元素及びTa元素の和に対して0.8原子%以上7.0原子%以下である。透明酸化物層2を構成する金属酸化物は、一般式(1)により表される。
Sn100-xTa・・・(1)
(式中、xは、0.8≦x≦7.0を満たす。)
【0027】
上記金属酸化物において、Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素は、1.0原子%以上5.0原子%以下であることが好ましく、1.5原子%以上4.0原子%以下であることがより好ましく、2.0原子%以上3.0原子%以下であることがさらに好ましい。すなわち、上記式(1)において、xは、0.8≦x≦7.0を満たし、1.0≦x≦5.0を満たすことが好ましく、1.5≦x≦4.0を満たすことがより好ましく、2.0≦x≦3.0を満たすことがさらに好ましい。
【0028】
上記の通り、透明酸化物層2は、透明基材1の配向性を引き継いで形成される。透明酸化物層2は、上記金属酸化物のエピタキシャル層である。透明酸化物層2は、例えば、面直方向における方位が1種類であり、面内方向における方位が、基板を構成する結晶に応じて1種類~3種類となるように構成されている。
【0029】
透明酸化物層2の抵抗率は、例えば、1.0×10-4Ω・cm以上5.0×10-4Ω・cm以下であり、4.0×10-4Ω・cm以下であることが好ましく、3.0×10-4Ω・cm以下であることがより好ましい。
【0030】
透明酸化物層2のキャリア密度は、例えば、2.8×1020cm-3以上であり、4.5×1020cm-3以上であることが好ましく、5.1×1020cm-3以上であることがより好ましく、6.0×1020cm-3以上であることがさらに好ましい。本実施形態に係る透明電極付き基材10に備えられる透明酸化物層2は、後述する製造方法により製造されることで、ドーピングされたTa元素の量に対するキャリア密度の量が高く、ドーピングされたTa元素が不活性となることが抑制されている。そのため、透明酸化物層2は、高い電気導電性を示す。
【0031】
透明酸化物層2の移動度は、例えば、15cm-1-1以上であり、25cm-1-1以上であることが好ましく、40cm-1-1以上であることがより好ましく、60cm-1-1以上であることがさらに好ましい。
【0032】
波長280nmの深紫外線の透明酸化物層2に対する透過率は、30%以上であり、35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが特に好ましい。
【0033】
透明酸化物層2の厚みは、例えば、10nm以上1000nm以下であり、50nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0034】
透明電極付き基材10の性能指数(Figure of Merit; FoM)は、式(2)で表される。式(2)中、ρは透明酸化物層2の抵抗率を表し、αは透明電極付き基材10の吸収係数を表す。抵抗率ρは、式(2-1)、吸収係数αは、式(2-2)で求められる。式(2-1)および(2-2)中、Rは透明酸化物層2の電気抵抗を表し、tは膜厚、wは幅、lは電極間隔、Tは光透過率を表す。
FoM=(ρ・α)-1・・・(2)
ρ=R×t×w/l・・・(2-1)
α=-(logeT)/t・・・(2-2)
【0035】
波長280nmの深紫外光に対する透明電極付き基材10のFoMは、例えば、0.05以上であり、0.1以上であることが好ましい。
【0036】
[深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法]
以下、上記実施形態に係る深紫外光透過型透明電極付き基材を製造する方法について説明する。本発明の一実施形態に係る透明電極付き基材の製造方法は、透明基材としてサファイア基材と、窒化アルミニウム基材と、窒化アルミニウム及び窒化ガリウムの混晶で構成された基材と、からなる群から選択されるいずれかの基材を準備する準備工程、並びに、Sn元素及びTa元素の量の和に対するTa元素の量が0.8原子%以上7.0原子%であるターゲットを透明基材に対向して配置し、物理気相成長法を行い、透明基材上に金属酸化物で構成された透明酸化物層を形成する、成膜工程を有する。
【0037】
(準備工程)
先ず、c面サファイア基材又はc面窒化アルミニウム基材を準備する。c面サファイア基材又はc面窒化アルミニウム基材は、c面配向しており、Al又はAlNで構成された基材を用いてもよい。また、c面又はa面配向したAl基材上にAlNを成膜し、c面サファイア基材上にc面窒化アルミニウム基材を形成してもよい。同様に、c面配向したAlN基材上にAlを成膜し、c面窒化アルミニウム基材上にc面サファイア基材を形成してもよい。
【0038】
(成膜工程)
次いで、Sn元素及びTa元素の和に対して0.8原子%以上7.0原子%以下のTa元素を含むターゲットを透明基材に対向して配置し、物理気相成長(Physical Vapor Deposition; PVD)法を行い、前記透明基材上に金属酸 化物で構成された透明酸化物層を形成する。成膜工程は、例えば、スパッタリング法、パルスレーザ堆積(Pulse Laser Deposition)法、真空蒸着法といった物理気相成長法により行うことができ、パルスレーザ堆積法により行うことが好ましい。
【0039】
図2は、本発明の一実施形態に係る深紫外光透過型透明電極付き基材の製造方法を説明する図であって、PLD法により成膜工程を行う様子を示す図である。PLD法は、例えば、パルスレーザ堆積装置(PLD装置)50を用いて行う。パルスレーザ堆積装置50は、例えば、真空チャンバ40の内部に、試料設置台20及びターゲット設置台21を備える。
【0040】
試料設置台20には、透明基材1が設置される。透明基材1は、透明酸化物層が積層される面が後述するターゲットTと対向するように配置される。ターゲット設置台21には、ターゲットTが設置される。ターゲットTは、Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量が0.8原子%以上7.0原子%以下となるように秤量された基材である。ターゲットにおけるSn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量は、1.0原子%以上5.0原子%以下であることが好ましく、1.5原子%以上4.0原子%以下であることがより好ましく、2.0原子%以上3.0原子%以下であることがさらに好ましい。ターゲットは、例えば、SnOにTa元素が所定の量ドーピングされた基材である。
【0041】
パルスレーザ堆積装置50は、例えば、真空チャンバ40内を減圧する排気装置31及び真空チャンバ40内にガスを供給する供給装置32と接続されている。排気装置31は、例えば、真空ポンプである。PLD法では、例えば、排気装置31により真空チャンバ40内が真空引きされる。次いで、真空チャンバ40内が所定の雰囲気となるように、供給装置32から所定のガスが供給され、排気装置31により真空チャンバ40内が所定の気圧となるように調整される。真空チャンバ40内は、例えば、酸素ラジカル供給下、或いは、オゾンやNO等の酸化性ガス供給下となるように調整される。真空チャンバ40の内部は、例えば、酸素分圧が0.1mTorr~1Torrとなるように調整され、成膜レートの観点から1mTorr~50mTorrとなるように調整されていることが好ましい。
【0042】
パルスレーザ堆積装置50では、不図示の集光レンズにより集光されたパルスレーザLがターゲットT表面に照射される。これにより、ターゲットTの構成粒子を叩き出し、若しくは蒸発させてプルームを発生させる。プルームに含まれるターゲットTの構成粒子が透明基材1に堆積することで、透明基材1表面に透明酸化物層2が形成される。
【0043】
成膜工程は、例えば、透明基材1を加熱しながら行う。透明基材1の加熱温度は、例えば200℃以上900℃以下であり、300℃以上700℃以下であることが好ましく、450℃以上650℃以下であることがより好ましい。透明基材1の加熱は、不図示の赤外線レーザ(IRレーザ)により加熱していてもよく、抵抗加熱等により加熱していてもよい。
【0044】
ターゲットTは、ペレット状であってもよく、粉体であってもよい。
【0045】
図1では、ターゲットTが一つだけ設けられる例を示したが、ターゲットTは、複数個設けられていてもよい。ターゲットTが複数個設けられる場合、複数個のターゲットにおけるSn元素及びTa元素の量に対するTa元素の量が0.8原子%以上7.0原子%以下となるように調整されていてればよく、1.0原子%以上5.0原子%以下となるように調整されていることが好ましく、1.5原子%以上4.0原子%以下となるように調整されていることがより好ましく、2.0原子%以上3.0原子%以下となるように調整されていることがさらに好ましい。
【0046】
上記実施形態によれば、構成元素の少ない透明導電性組成物を備える透明酸化物層2が形成される。上記実施形態に係る透明導電性組成物は、母材であるSnOに対し、Taを高濃度にドーピングすることでキャリア電子が導入され、キャリア電子濃度の増大に伴うBurstein-Mossシフトにより、深紫外線に対する透過性が向上する。上記実施形態に係る透明導電性組成物は、キャリア電子濃度が高くなるように形成されているため、際立って大きなBurstein-Mossシフトが実現され、深紫外光に対する透過性が高い。
【0047】
図3(a)は、SnOのバンド構造を模式的に示す図であり、図3(b)は、本実施形態に係る透明導電性組成物のバンド構造を模式的に示す図である。図3(a)及び図3(b)を用いてBurstein-Mossシフトについて説明する。図3(a)に示される通り、SnOは、価電子帯VB及び伝導帯CB間の禁制帯のエネルギーギャップがEである。一方で、図3(b)に示される通り、SnOにTaがドーピングされてキャリア密度が高くなると、キャリア電子が伝導帯底部を占有することにより見かけのバンドギャップ(光学ギャップ)が大きくなる。
【0048】
上記実施形態に係る深紫外光透過型透明電極付き基材は、表示デバイス、調光デバイス及び発光デバイスに好適なものである。具体的には、紫外光を発光するLED、特にUV-A,UV-BだけでなくUV-C(深紫外光)を発光するLEDに適した深紫外光用の透明電極付き基材として活用できる。
【実施例0049】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]
先ず、準備工程として透明基材であるc面窒化アルミニウム基材を有機溶剤で洗浄することにより準備した。準備したc面窒化アルミニウム基材は、平坦形状であり、その厚みは0.5mm程度である。
【0051】
次いで、成膜工程として、PLD法によりc面窒化アルミニウム基材上に透明酸化物層を形成した。ターゲットは、以下の手順によりSn元素及びTa元素の和に対して1原子%のTa元素を含むターゲットのペレットを用意した。
【0052】
Sn元素及びTa元素の和に対して1原子%のTa元素を含むように、TaとSnOの粉末を秤量して混合し、成形した後大気中で加熱焼成してターゲットを作製した。
【0053】
このターゲットをPLD装置の真空チャンバ内のターゲット設置台に設置した。また、該ターゲットと対向するようにc面サファイア基材を試料設置台に設置した。試料設置台は、設置された基材を赤外線レーザにより加熱できるように構成されている。
【0054】
上記PLD装置を用い、真空チャンバ内が酸素ラジカル供給下となるように調整し、酸素分圧が5mTorrとなるように調整した。赤外線レーザにより、透明基材の温度が500℃となるように加熱し、レーザ導入口からターゲット表面にKrFエキシマーレーザ(パルス幅約20ns)を照射することにより、透明基材上に透明酸化物層を形成し、深紫外光透過型透明電極付き基材を作製した。
【0055】
以下、上記手順で作製した、Sn元素及びTa元素の和に対して1原子%のTa元素を含む透明導電性組成物を形成した深紫外光透過型透明電極付き基材を実施例1-1とも称する。
【0056】
(実施例1-2)
Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量が1.5原子%のターゲットを用いた点を除き、実施例1-1と同様の方法で深紫外光透過型透明電極付き基材を作製した。
【0057】
(実施例1-3)
Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量が2原子%のターゲットを用いた点を除き、実施例1-1と同様の方法で深紫外光透過型透明電極付き基材を作製した。
【0058】
(実施例1-4)
Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量が3原子%のターゲットを用いた点を除き、実施例1-1と同様の方法で深紫外光透過型透明電極付き基材を作製した。
【0059】
(実施例1-5)
Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量が5原子%のターゲットを用いた点を除き、実施例1-1と同様の方法で深紫外光透過型透明電極付き基材を作製した。
【0060】
(比較例1)
Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量が0.3原子%のターゲットを用いた点を除き、実施例1-1と同様の方法で電極付き基材を作製した。
【0061】
(比較例2)
Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量が0.6原子%のターゲットを用いた点を除き、実施例1-1と同様の方法で電極付き基材を作製した。
【0062】
(比較例3)
Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量が10原子%のターゲットを用いた点を除き、実施例1-1と同様の方法で電極付き基材を作製した。
【0063】
[構成相の分析]
実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材に対して、X線回折法(X-Ray Diffraction;XRD)を行うことにより、構成相を分析した。X線回折法による構成相の分析は、以下の条件で行った。
・X線源:Cu Kα線(出力:40kV、電流:40mA)
・走査範囲:2θ=20°~90°
・ステップ時間:0.2s/step
・スキャンスピード:6°/min
・ステップ幅:0.02°
・検出器:半導体アレイ検出器
【0064】
図4は、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材のX線回折パターンである。図4において、記号*が示されている箇所は、基材の構成相に基づくピークである。
【0065】
いずれの試料においても、基材の構成相に基づくピークの他に確認されるピークは、SnO(200)のピーク及びSnO(400)のピークであり、基材上にSnOを母材とする層がエピタキシャル成長していることが確認された。
【0066】
[抵抗率・キャリア密度・移動度の測定]
実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材の抵抗率・キャリア密度・移動度を以下の手順で測定した。
【0067】
(抵抗率)
抵抗率の測定は、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材に対し、4端子法で電気抵抗を測定することにより行った。図5(a)は、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材の抵抗率を示すグラフである。
【0068】
図5(a)において横軸は、Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量(原子%)を表し、縦軸は、抵抗率(Ω・cm)を表す。図5(a)には、Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量(原子%)の低いものから順に、比較例1、比較例2、実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3、実施例1-4、実施例1-5及び比較例3の結果がプロットされている。図5(a)に示される結果より、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材は、室温において0.0004(Ω・cm)以下の優れた導電性を示し、実施例1-1~実施例1-4は、0.0003(Ω・cm)以下の特に優れた導電性を示すことが確認された。
【0069】
また、上記抵抗率を透明酸化物層の厚みで除することにより、透明酸化物層のシート抵抗を算出した。透明酸化物層の厚みは、触針式段差計を用いて測定した。
【0070】
(キャリア密度)
キャリア密度の測定は、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材に対し、ホール効果測定および4端子電気抵抗測定することにより行った。図5(b)は、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材のキャリア密度を示すグラフである。
【0071】
図5(b)における横軸は、図5(a)における横軸同様であり、図5(b)における縦軸は、キャリア密度(cm-3)を表す。図5(b)には、ドーピングしたTa原子1つにつき電子が1つ放出された場合の理想的な直線が破線で示されている。破線は、SnO結晶の格子体積およびTaドープ量から計算したTa原子の数密度に基づいている。図5(b)に示される通り、実施例1-1、実施例1-2及び実施例1-3は、破線上に載っており、理想的なキャリア密度となっていることが確認された。特に、実施例1-2~実施例1-5は、4.0×1020(cm-3)以上のキャリア密度を示し、実施例1-3~実施例1-5は、5.0×1020(cm-3)以上のキャリア密度を示した。実施例1-4、実施例1-5及び比較例3は、キャリア密度が破線の値を下回っており、キャリア密度は、6.5×1020(cm-3)程度で飽和すると考えられる。尚、実施例1-1,実施例1-2,実施例1-3,実施例1-4,実施例1-5のキャリア密度(×1020cm-3)は、それぞれ、2.9,4.2,5.1,6.1,6.2であった。また、比較例1,比較例2,比較例3のキャリア密度(×1020cm-3)は、1.0、1.7,4.0であった。
【0072】
(移動度)
移動度の測定は、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材に対し、ホール効果測定および4端子電気抵抗測定することにより行った。図5(c)は、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材の電子移動度を示すグラフである。図5(c)における縦軸は、移動度(cm-1-1)を表す。図5(c)に示される通り、実施例1-1~実施例1-5は、20(cm-1-1)以上の移動度を示し、実施例1-1~実施例1-4は、40(cm-1-1)以上の移動度を示し、実施例1-3は50(cm-1-1)以上の移動度を示した。
【0073】
[内部透過率測定]
実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材に対して、分光光度計(日本分光製、型番:V-670)を用いて積層方向における透過率T%及び反射率R%のスペクトルを測定した。また、上記透過率T及び反射率のスペクトルに基づき、{T/(100-R)}×100を計算することにより電極付き基材の内部透過率τ%のスペクトルを算出した。
【0074】
図6は、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材及び比較例1~比較例3の電極付き基材の内部透過率のスペクトルを示すグラフである。図6に示される通り、実施例1-1~実施例1-5は、波長280nm以下の深紫外領域においても高い透過性を示すことが確認された。例えば、波長280nmの深紫外光に対して、実施例1-1~実施例1-5の内部透過率は35%以上であり、実施例1-2~実施例1-5の内部透過率は40%以上であり、実施例1-4及び実施例1-5の内部透過率は、60%以上であった。
【0075】
(実施例2)
透明基材の温度が600℃となるように加熱した点を除き、実施例1-4と同様の方法で深紫外光透過型透明電極付き基材を作製した。すなわち、実施例2では、ターゲットにおけるSn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量を3原子%とした。
【0076】
(実施例3)
透明基材をAlからなるものに変更した点を除き、実施例2と同様の方法で深紫外光透過型透明電極付き基材を作製した。すなわち、実施例3では、透明基材としてc面サファイアを用い、ターゲットにおけるSn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量を3原子%とし、成膜工程時の透明基材を加熱する温度を600℃とした。
【0077】
(比較例4)
比較例4は、非特許文献1に開示された電極付き基材に関する実験データである。すなわち、比較例4は、α-Al(012)配向基板に対し、MOCVD法により、(101)配向のTaドープSnO薄膜を形成し、電極付き基材を作製した実験データである。
【0078】
比較例4として、原料ガス中のSn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量が4%にされているもの、6%にされているもの、8%にされているものを後述する図8に示す。
【0079】
比較例4-1は、Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量が4%である実験データに対応する。
比較例4-2は、Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量が6%である実験データに対応する。
比較例4-3は、Sn元素及びTa元素の和に対するTa元素の量が8%である実験データに対応する。
【0080】
(比較例5)
比較例5は、非特許文献2に開示された電極付き基材に関するデータである。すなわち、比較例5は、r面Al基板に対して、(101)配向のSbドープSnO薄膜を形成し、電極付き基材を作製した実験データである。比較例5は、Sn元素及びSb元素の和に対するSb元素の量が0.014となるように調整されている。
【0081】
(比較例6)
比較例6は、非特許文献3に開示された電極付き基材に関する実験データである。すなわち、比較例6は、c面Al基板に対し、MOCVD法により(111)配向SnドープIn薄膜、所謂ITO薄膜を形成し、電極付き基材を作製した実験データである。
【0082】
[内部透過率の測定]
実施例1の透明電極付き基材に対する内部透過率の測定方法と同様の方法で、実施例2及び実施例3の透明電極付き基材の内部透過率を測定した。
【0083】
[シート抵抗の測定]
実施例1と同様の方法で、実施例2及び実施例3の透明電極付き基材における透明酸化物層の抵抗率、厚みを測定し、実施例2及び実施例3の透明電極付き基材のシート抵抗を算出した。
【0084】
図8(a)は、波長280nmにおける実施例1-1~実施例1-5及び比較例1~比較例6の電極付き基材のシート抵抗及び内部透過率を示すグラフであり、図8(b)は、波長260nmにおける実施例1-1~実施例1-5及び比較例1~比較例6の電極付き基材のシート抵抗及び内部透過率を示すグラフである。図8(a)及び図8(b)において、比較例4~比較例6の電極付き基材の内部透過率及び該電極付き基材の基板上に積層した酸化物層のシート抵抗は、非特許文献に記載のものをプロットした。
【0085】
図8(a)及び図8(b)には、透明電極付き基材の性能指数(FoM)が破線で示されている。性能指数(FoM)は、下記式(2)で表される。
FoM=(ρ・α)-1・・・(2)
式(2)において、ρは透明酸化物層の抵抗率を表し、αは透明電極付き基材の吸収係数を表す。吸収係数αは、内部透過率と膜厚tからτ=exp(-αt)の式により算出される。性能指数(FoM)が同程度であるものは、透明電極として同程度の性能を有すると言える。
【0086】
図8(a)に結果が示される通り、実施例1-1~実施例1-5、実施例2及び実施例3の深紫外光透過型透明電極付き基材は、Al基板に対してMOCVD法によりTaドープSnO薄膜が形成された比較例4の電極付き基材と比べ、シート抵抗が同程度であり、波長280nm及び260nmの深紫外光に対して格段に優れた透過性を示すことが確認された。そのため、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材は、比較例4-1~比較例4-3の電極付き基材と比べ、性能指数(FoM)に優れている。また、波長280nmにおける測定結果の何れもFoMは、0.5以下の値であった。
【0087】
一方で、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材は、比較例5及び比較例6の電極付き基材と比べ、シート抵抗が低く、優れた導電性を示す。また、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材は、比較例5及び比較例6の電極付き基材と比べ、波長280nm及び260nmの深紫外光に対して格段に優れた透過性を示すことが確認された。従って、実施例1-1~実施例1-5の深紫外光透過型透明電極付き基材は、比較例5及び比較例6の電極付き基材と比べ、性能指数(FoM)に優れている。
【符号の説明】
【0088】
1:透明基材、2:透明酸化物層、10:透明電極付き基材、
20:試料設置台、21:ターゲット設置台、31:排気装置、32:供給装置、
40:真空チャンバ、50:パルスレーザ堆積装置、
T:ターゲット、L:パルスレーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8