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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005840
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】橋梁構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 1/00 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
E01D1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106235
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 康行
(72)【発明者】
【氏名】坂本 義仁
(72)【発明者】
【氏名】ドアン ティーフィン
(72)【発明者】
【氏名】白石 瑛人
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕明
(72)【発明者】
【氏名】志賀 弘明
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA07
2D059GG01
2D059GG21
(57)【要約】
【課題】腐食耐久性を向上させた橋梁構造を提供する。
【解決手段】複数の鋼製鈑桁を用いた橋梁構造であって、高耐食金属部材を外面側の合せ材として構成したクラッド鋼が、最も外側の鈑桁のウェブ部に少なくとも配置され、その余の鋼材が炭素鋼であり、最も外側の鈑桁のウェブ部の外側下端から、最も外側の鈑桁の下フランジの外側上面および下面、隣り合う鈑桁の下フランジ間開口部のすべて、ならびに、他の鈑桁の下フランジ下面のすべてにかけて、腐食耐久性の高い板部材で覆われており、最も外側の鈑桁の上端が床版に埋め込まれ、または、当接し、炭素鋼部分が露出しないように覆われている構造を有する、橋梁構造。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼製鈑桁を用いた橋梁構造であって、
高耐食金属部材を外面側の合せ材として構成したクラッド鋼が、最も外側の鈑桁のウェブ部に少なくとも配置され、
その余の鋼材が炭素鋼であり、
最も外側の鈑桁のウェブ部の外側下端から、最も外側の鈑桁の下フランジの外側上面および下面、隣り合う鈑桁の下フランジ間開口部のすべて、ならびに、他の鈑桁の下フランジ下面のすべてにかけて、腐食耐久性の高い板部材で覆われており、
最も外側の鈑桁の上端が下記A~Dのいずれか一つの構造を有する、橋梁構造。

A.前記ウェブ部上端が、RC床版、PC床版または合成床版に当接するかまたは埋め込まれていること、
B.上フランジの外側が、RC床版またはPC床版に埋め込まれていること、
C.高耐食金属部材を下面側の合せ材として構成したクラッド鋼が上フランジに配置され、該上フランジの上面がRC床版、PC床版または合成床版に覆われ、該上フランジの外部に露出する炭素鋼部分が腐食耐久性の高い板部材または被覆溶接で覆われていること、D.前記ウェブ部の上端がRC床版、PC床版または合成床版に沿って外側に向けて延伸させており、延伸した端部の外部に露出する炭素鋼部分が腐食耐久性の高い板部材または被覆溶接で覆われていること。
【請求項2】
高耐食金属部材を外面側の合せ材として構成したクラッド鋼が、さらに、全ての鈑桁の下フランジに配置され、
鈑桁の下面側全体が板部材で覆われているのに替えて、下記EまたはFの構造を有する、請求項1に記載の橋梁構造。

E.最も外側の鈑桁の下フランジの外側上面および外側端面、ならびに、隣り合う鈑桁の下フランジ間開口部が腐食耐久性の高い板部材で覆われていること、
F.最も外側の鈑桁の下フランジの外側上面およびすべての下フランジの側端面、ならびに、隣り合う鈑桁の下フランジ間開口部が腐食耐久性の高い板部材で閉塞されていること。
【請求項3】
一の鈑桁と隣接する他の鈑桁との下フランジ側開口部には、それぞれの下フランジ下面または上面の開口部近傍に前記板部材が接着固定されている、請求項2に記載の橋梁構造。
【請求項4】
隣り合う鈑桁の下フランジ間開口部を覆う板部材と、鈑桁の長手方向断面がS字状の部材の一端と、によって、前記下フランジの端部が挟持されており、
前記下フランジの上面および側面と前記S字状の部材または前記板部材との間に絶縁性挟装材が配され、
前記S字状の部材の他端は下フランジ間開口部を覆う板部材に固定されている、請求項2に記載の橋梁構造。
【請求項5】
最も外側の鈑桁の下フランジに替えて、前記高耐食金属部材が外側になるように構成し、ウェブの下部を内側に向けて延伸させた、請求項2に記載の橋梁構造。
【請求項6】
隣り合う前記鈑桁のウェブ間開口部に腐食耐久性の高い蓋部材を設置した、請求項1~5のいずれか1項に記載の橋梁構造。
【請求項7】
密封された前記鈑桁の内部に乾燥空気を送り込む装置を備えた、請求項6に記載の橋梁構造。
【請求項8】
前記高耐食金属部材がステンレス鋼またはチタンである、請求項1~5のいずれか1項に記載の橋梁構造。
【請求項9】
前記腐食耐久性の高い板部材がステンレス鋼、チタンおよび炭素繊維強化プラスチックから選ばれるいずれかからなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の橋梁構造。
【請求項10】
前記腐食耐久性の高い蓋部材がステンレス鋼、チタンおよび炭素繊維強化プラスチックから選ばれるいずれかからなる、請求項6に記載の橋梁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製鈑桁を用い、施工性と強度を確保して、外面の腐食耐久性を向上させた橋梁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁で用いられている鋼製桁は、飛来塩分やSOx、湿潤環境など大気の影響を受け腐食が促進される環境に設置される場合も多い。このように腐食環境が厳しい場合はC5塗装系(非特許文献1)などの対策がとられる。しかし、長期の使用で塗装の劣化が起こり、細かい傷から膨れさびなどが発生するため、桁全体を塗装する、定期的な塗り替えを行う必要がある。また、塗装橋で定期的な塗り替えを行う場合、はがれた古い塗装の飛散対策や新規塗装をする際の化学物質の排出などが問題となっている。
【0003】
そこで、特許文献1では、腐食環境が厳しい部分にステンレスまたはチタンなどの高耐食性鋼板と炭素鋼を合わせたクラッド鋼を効果的に配置することで腐食耐久性の高い橋梁を提供することを可能とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-89839号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本道路協会:鋼道路橋防食便覧、2014年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、以下のような課題があった。
特許文献1の技術は、クラッド以外の箇所が腐食環境下にあるため、全体としての腐食耐久性は向上しないので、弱点部からの腐食が生じ、橋梁全体としての腐食耐久性は下がるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、鋼製鈑桁を用い、外面の腐食耐久性を向上させ、長期使用に耐えうる橋梁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる橋梁構造は、複数の鋼製鈑桁を用いた橋梁構造であって、高耐食金属部材を外面側の合せ材として構成したクラッド鋼が、最も外側の鈑桁のウェブ部に少なくとも配置され、その余の鋼材が炭素鋼であり、最も外側の鈑桁のウェブ部の外側下端から、最も外側の鈑桁の下フランジの外側上面および下面、隣り合う鈑桁の下フランジ間開口部のすべて、ならびに、他の鈑桁の下フランジ下面のすべてにかけて、腐食耐久性の高い板部材で覆われており、最も外側の鈑桁の上端が下記A~Dのいずれか一つの構造を有することを特徴とする。

A.前記ウェブ部上端が、RC床版、PC床版または合成床版に当接するかまたは埋め込まれていること、
B.上フランジの外側が、RC床版またはPC床版に埋め込まれていること、
C.高耐食金属部材を下面側の合せ材として構成したクラッド鋼が上フランジに配置され、該上フランジの上面がRC床版、PC床版または合成床版に覆われ、該上フランジの外部に露出する炭素鋼部分が腐食耐久性の高い板部材または被覆溶接で覆われていること、D.前記ウェブ部の上端がRC床版、PC床版または合成床版に沿って外側に向けて延伸させており、延伸した端部の外部に露出する炭素鋼部分が腐食耐久性の高い板部材または被覆溶接で覆われていること。
【0009】
なお、本発明にかかる橋梁構造は、
(a)高耐食金属部材を外面側の合せ材として構成したクラッド鋼が、さらに、全ての鈑桁の下フランジに配置され、鈑桁の下面側全体が板部材で覆われているのに替えて、下記EまたはFの構造を有すること、
(b)一の鈑桁と隣接する他の鈑桁との下フランジ側開口部には、それぞれの下フランジ下面または上面の開口部近傍に前記板部材が接着固定されていること、
(c)隣り合う鈑桁の下フランジ間開口部を覆う板部材と、鈑桁の長手方向断面がS字状の部材の一端と、によって、前記下フランジの端部が挟持されており、前記下フランジの上面および側面と前記S字状の部材または前記板部材との間に絶縁性挟装材が配され、前記S字状の部材の他端は下フランジ間開口部を覆う板部材に固定されていること、
(d)最も外側の鈑桁の下フランジに替えて、前記合わせ材が外側になるように構成し、ウェブの下部を内側に向けて延伸させたこと、
(e)隣り合う前記鈑桁のウェブ間開口部に腐食耐久性の高い蓋部材を設置したこと、
(f)密封された前記鈑桁の内部に乾燥空気を送り込む装置を備えたこと、
(g)前記高耐食性金属部材がステンレス鋼またはチタンであること、
(h)前記腐食耐久性の高い板部材がステンレス鋼、チタンおよび炭素繊維強化プラスチックから選ばれるいずれかからなること、
(i)前記腐食耐久性の高い蓋部材がステンレス鋼、チタンおよび炭素繊維強化プラスチックから選ばれるいずれかからなること、
などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。

E.最も外側の鈑桁の下フランジの外側上面および外側端面、ならびに、隣り合う鈑桁の下フランジ間開口部が腐食耐久性の高い板部材で覆われていること、
F.最も外側の鈑桁の下フランジの外側上面およびすべての下フランジの側端面、ならびに、隣り合う鈑桁の下フランジ間開口部が腐食耐久性の高い板部材で閉塞されていること。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鋼製鈑桁を用いた橋梁構造を、外面側表層部は高耐食性の金属部材とし、外面側表層部以外は炭素鋼とし、密封構造としたので、塗装不要で腐食耐久性に優れた長スパンの鈑桁橋梁構造を提供することができる。さらに、飛来塩分量の高い沿岸地域で老朽化した橋梁を架け替える際に、下部構造を補強することなく架け替えることができる。橋梁自体は、塗装が全く不要で、金属光沢が長期に持続し景観性にも優れた耐久性の高い橋梁構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる橋梁構造の構成を示す模式図であって、(a)は模式断面図であり、(b)は全体構成を示す部分切り欠き斜視図である。
図2】(a)~(c)は、上記実施形態の応用例を示す模式断面図である。
図3】(a)~(c)は、本発明の他の実施形態を示す橋梁構造の構成を示す模式断面図である。
図4】(a)および(b)は、上記他の実施形態の応用例を示す模式断面図である。
図5】(a)および(b)は、本発明の別の実施形態を示す橋梁構造の構成を示す模式断面図である。
図6】一般的な鋼鈑桁橋を示す部分切り欠き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構造や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図6に一般的な鋼鈑桁橋100を示す。鋼鈑桁橋100は、鋼桁110の上部に床版120を載せる。鋼桁110は、ウェブ111、上フランジ112、下フランジ113および垂直補剛材114などの鋼材で構成される。鋼桁110は床版120をささえているので、さびにより板厚の減少が生じないように外気と接する鋼材のすべての面に塗装を行うか、耐候性鋼材など安定化さびの発生による防食が可能な鋼材を用いる必要がある。耐候性鋼を用いれば塗装の必要がなくなるが、飛来塩分量の多い地域では安定化さびが生じにくいため、使用することに難がある。
【0014】
本実施形態について、一例を図1に示す、I桁3主桁の鋼製鈑桁からなる橋梁構造を一例に説明する。図1(a)では、外側桁10Aのウェブ部11にクラッド鋼20を適用している。そのウェブ部11の外側に高耐食性金属部材が位置するように配置する。その余の鋼材は炭素鋼であってもよい。外側桁10Aの上フランジ12の外側部分は、RCまたはPCからなる床版4の埋め込み部5に埋め込まれている。
【0015】
床版4としては、PCプレキャスト床版が、施工性に優れる。一般的なPC床版を用いても良く、型枠設置が可能であれば、RC床版を用いても良い。また、床版4の道路面には、アスファルトが敷設される。
【0016】
図1(a)に断面図で示すように外側桁10Aのウェブ部11の外面側にもちいる高耐食金属部材22は、外面側表層部の0.5~10mmとする。下限未満では、耐食性の向上効果が小さすぎる。また、上限を超えると高合金であるためコスト高となってしまう。好ましくは、1.5mm以上の厚みとする。外面側に用いる高耐食金属部材22と内面側の炭素鋼21とは、クラッド鋼とすることで拡散接合によって一体化できる。金属部材22としては、ステンレス鋼、チタン、チタン合金があげられる。ステンレス鋼は、Cr含有量10.5質量%以上、炭素含有量1.2質量%以下の鋼と定義される。高耐食用途では、SUS304やSUS316に代表されるように、CrおよびNiを含有するステンレス鋼が好ましい。高耐食金属部材22は、ステンレス鋼以上の耐食性を有することが好ましい。
【0017】
橋梁構造で用いられる鋼材には、15t程度の冷間曲げ加工で割れが発生しない性能が求められる(道路橋示方書 II鋼橋(H29.11)、6頁)場合がある。ステンレス鋼クラッド厚板は、たとえば、9mm厚みのSM400Bを母材とし、3mm厚みのSUS316Lを合わせ材として、JIS G0575に規定する粒界腐食試験後の1t曲げで割れが観察されず、本実施形態の材料として、好適である。
【0018】
また、橋梁構造には、いわゆる、十字継手溶接を必要とする場合がある。高耐食金属部材22面および母材21(炭素鋼)面に溶接して、高耐食金属部材22と母材21との界面が剥離しない性能を必要とする。上記ステンレス鋼クラッド厚板はこの条件を満足するので好適である。
【0019】
本実施形態でもちいる鋼桁は、運搬上の制約などから、一定の長さまでの桁を工場で製作し、それらの桁同士を現場で組み合わせる必要がある。通常は、添接板と高力ボルトを用いたガセット継手が用いられる。その方法では、腐食上の弱点となるため、部材同士を鋼桁の長手方向に突合せ溶接とすることで、防食性を確保でき、美観も高い構造が期待できる。突合せ溶接を行う場合は,構造性能を保ちながら、外面の防食性を確保するため、以下の手順とすることが好ましい。先ず、(a)内側の母材21面側が広くなるような開先加工を施し、(b)内側から母材21の溶接を行う。(c)外面から外面に用いたステンレス鋼22と同等以上の耐食性を有する溶接材料により隙間が発生しないようにバタリング溶接を行う。(d)溶接部表面を仕上げる。このようにすることで、鋼製鈑桁10どうしの接合部が完全溶け込み溶接され、内面から炭素鋼材用の溶接材料を用いて、溶接が外面側の金属部材22まで到達するように溶接接合され、炭素鋼部材断面以上の溶接断面が確保され、鋼製鈑桁10の接合部外面が高耐食金属部材22に相当する溶接材料で覆われるように構成でき、施工性・耐食性が高く、コストパフォーマンスに優れた突合せ溶接が得られる。
【0020】
本実施形態では、図1(a)に示すように、外側桁10Aのウェブ部11の外側下端から、外側桁10Aの下フランジ13の外側上面および下面、隣り合う鈑桁10の下フランジ13間開口部のすべて、ならびに、内側桁10Bの下フランジ13下面のすべてにかけて、腐食耐久性の高い板部材15で蓋をするように覆う。
【0021】
本実施形態では、図1(b)に示すように桁端部の隣り合う鈑桁10のウェブ11間開口部に腐食耐久性の高い蓋部材15を設置する。腐食耐久性の高い板部材15や蓋部材15は、ステンレス鋼板、チタン板材、チタン合金板材、および、炭素繊維強化プラスチックのいずれかを選ぶことができる。たとえば、ステンレス鋼部材は、1mm以上の薄板とし、桁の外面を覆うようにして、桁との間に隙間ができないように、ステンレス鋼用溶接材料で隅肉溶接により、桁の外面に溶接接合することが好ましい。接着剤による固定も可能である。
【0022】
上記実施形態の応用例を図2(a)~(c)に模式断面図で示す。図2(a)では、最も外側の鈑桁10Aの上フランジ12を橋梁の内側にのみ設置し、ウェブ部11を上部に延伸して、RCまたはPCからなる床版4または合成床版の埋め込み部5に埋め込んでいる。図2(b)では、最も外側の鈑桁の上フランジを橋梁の内側にのみ設置し、ウェブの上端をRCまたはPCからなる床版4または合成床版の下面に当接して炭素鋼部分を外部にさらさないようにしている。図2で(c)は、高耐食金属部材を下面側の合せ材として構成したクラッド鋼が最も外側の鈑桁の上フランジ12Aに配置されている。そして、その上フランジ12Aの上面がRC床版、PC床版または合成床版に当接され、その上フランジ12Aの外部に露出する炭素鋼部分21が腐食耐久性の高い板部材15または被覆溶接で覆われている。
【0023】
本実施形態の他の例を図3および4に断面図で示す。これらは、上記と同様に、I桁3主桁の鋼製鈑桁からなる橋梁構造であり、外側桁10Aのウェブ部11の外面側に高耐食金属部材22が配されるようにクラッド鋼20を適用している。そして、上記の鈑桁10のすべての下フランジ13下面側に高耐食金属部材22が配置するようにクラッド鋼20で鈑桁10を組み立てている。図3(a)の例では、外側桁10Aの上フランジ12の外側部分は、RCまたはPCからなる床版4の埋め込み部5に埋め込まれている。外側桁10Aの下フランジ13が外面と接する箇所、つまり、下フランジ13の外側上面および外側端面には、高耐久性部材15で覆われている。その際、炭素鋼であるクラッド鋼の母材21と高耐久性部材15が直接接触しないように絶縁性挟装材16をその間に挟むことができる。絶縁性挟装材16を接着剤やゴムなどの弾性材とすれば、隙間が空くのを抑止できるので好ましい。加えて、炭素鋼23の電蝕を防止できる。
【0024】
さらに、隣り合う鈑桁10の下フランジ13間の開口部を腐食耐久性の高い板部材15で塞ぐように設置している。その板部材15は下フランジ13の下面端部に接着されていることが好ましい。図3(a)~(c)や図4(a)、(b)に示すように、鈑桁の長手方向断面がS字状の部材15Aで板部材15との間に下フランジ13の端部を挟むように固定してもよい。S字状の部材15Aは、腐食耐久性の高い部材とすることが好ましい。その際、炭素鋼23であるクラッド鋼の母材21とS字状の部材15Aや板部材15とが直接接触しないように上記と同様の絶縁性挟装材16をその間に挟むことができる。板部材15とS字状の部材15Aとの固定にはボルト17を用いてねじ結合とすることができる。そして、板部材15を下フランジ13の上面や下面に隙間が生じないように固定することができる。
【0025】
本実施形態の別の例を図5に示す。これらは、上記と同様に、I桁3主桁の鋼製鈑桁からなる橋梁構造であり、外側桁10Aのウェブ部11の外面側に高耐食金属部材22が配されるようにクラッド鋼20を適用している。そして、外側桁10Aの下フランジ13に替えて、高耐食金属部材22が外側になるように構成して、ウェブ部11の下端を内側に曲げて、内側に水平に延伸している。この延伸部14およびウェブ部11と延伸部14とをつなぐコーナー部14Aのいずれもクラッド鋼20とし、外面側に高耐食金属部材22を配している。コーナー部14Aは機械加工によってもよいし、図5に示すようにウェブ部11とコーナー部14Aまたはコーナー部14Aと延伸部14との間を溶接してもよい。図5(a)の例では、外側桁10Aの上フランジ12の外側部分は、RCまたはPCからなる床版4の埋め込み部5に埋め込まれている。図5(b)の例では、ウェブ部11の上部に外側に向かって水平に延伸する延伸部14を設け、この延伸部14およびウェブ部11と延伸部14とをつなぐコーナー部14Aのいずれもクラッド鋼20とし、外面側に高耐食金属部材22を配している。露出する炭素鋼21部分は、腐食耐久性の高い板部材15または被覆溶接で覆われている。
【0026】
このように密閉された鈑桁10の内部空間に乾燥空気を送り込むファンなどの装置を設置することが好ましい。内部に露出する炭素鋼の結露などを防止し腐食を抑止することができる。内部空間に露出した炭素鋼を塗装したり、耐候性鋼に置き換えることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の橋梁構造によれば、鋼製鈑桁を用い、施工性と強度を確保して、外面の腐食耐久性を向上させた橋梁構造を提供することができるので産業上有用である。
【符号の説明】
【0028】
1 鋼製鈑桁橋(橋梁構造)
2 橋脚
3 支承
4 床版
5 (上フランジの)埋め込み部
10 (鋼製)鈑桁
10A 外側桁
10B 内側桁
11 ウェブ
11A 延長したウェブ
12 上フランジ
12A (最も外側の鈑桁の)上フランジ
13 下フランジ
14 (ウェブの水平側)延伸部
14A (下部)コーナー部
14B (上部)コーナー部
15 (腐食耐久性の高い)板部材(蓋部材)
15A (腐食耐久性の高い)(断面S字状の)部材
16 (絶縁性)挟装材
17 ボルト
20 クラッド鋼
21 母材(一般構造用炭素鋼)
22 合せ材(高耐食金属部材)
23 一般構造用炭素鋼(溶接用鋼)
100 鋼鈑桁橋
110 鋼桁
111 ウェブ
112 上フランジ
113 下フランジ
114 垂直補剛材
120 床版
図1
図2
図3
図4
図5
図6