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特開2025-5841コンクリート構造物の製造方法及びコンクリート構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005841
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の製造方法及びコンクリート構造物
(51)【国際特許分類】
   B28B 13/00 20060101AFI20250109BHJP
   B28B 1/14 20060101ALI20250109BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20250109BHJP
   C04B 18/167 20230101ALI20250109BHJP
   E02B 3/06 20060101ALI20250109BHJP
   E02B 3/08 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B28B13/00 B
B28B1/14 F
C04B28/02
C04B18/167
E02B3/06 301
E02B3/08 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106237
(22)【出願日】2023-06-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願」
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】昇 悟志
(72)【発明者】
【氏名】橋田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭梧
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 紀一
(72)【発明者】
【氏名】境 美緒
(72)【発明者】
【氏名】関 健吾
(72)【発明者】
【氏名】山野 泰明
(72)【発明者】
【氏名】取違 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂井 吾郎
【テーマコード(参考)】
2D118
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
2D118AA11
2D118BA01
2D118BA03
2D118CA02
2D118CA07
2D118DA05
2D118DA06
2D118FA06
2D118FB01
2D118GA32
2D118GA51
2D118HD01
2D118JA12
2D118JA13
4G055AA01
4G055AB00
4G055AC00
4G112PA30
(57)【要約】
【課題】型枠内にコンクリートがらなどのような粗骨材を容易に配置でき、施工の効率化を図ることができるプレパックドコンクリート工法によるコンクリート構造物の製造方法を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物100の製造方法は、収容部材20と、収容部材20に収容された粗骨材30とを含むプレパックド部材10を、型枠40内に配置する工程と、固化材を型枠40内に打設する工程と、打設された固化材を硬化する工程とを含み、収容部材20は、粗骨材30を保持し、固化材が通過可能な複数の開口部を有する保持部を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部材と、前記収容部材に収容された粗骨材とを含むプレパックド部材を、型枠内に配置する工程と、
固化材を前記型枠内に打設する工程と、
打設された固化材を硬化する工程と、
を含み、
前記収容部材は、前記粗骨材を保持し、固化材が通過可能な複数の開口部を有する保持部を含む、コンクリート構造物の製造方法。
【請求項2】
前記固化材はセメントを含む、請求項1に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項3】
前記保持部は、網状、格子状、柵状、多孔状、又はこれらの組み合わせである、請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項4】
前記収容部材は籠又は袋である、請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項5】
前記粗骨材はコンクリートがらを含む、請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項6】
前記粗骨材は二酸化炭素が固定された炭酸化コンクリート硬化体を含んでいる、請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項7】
前記プレパックド部材は、前記固化材を打設するための圧送管を挿入可能な挿入孔を有している、請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項8】
前記保持部は鉄筋を含んでいる、請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項9】
前記コンクリート構造物は消波ブロックである、請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項10】
収容部材と、前記収容部材に収容された粗骨材とを含むプレパックド部材と、
前記粗骨材同士及び前記プレパックド部材同士を結合する、固化材の硬化体と、
を備え、
前記収容部材は、前記粗骨材を保持し、複数の開口部を有する保持部を含み、
前記複数の開口部には、前記固化材の硬化体が配置されている、コンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の製造方法及びコンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、港湾又は河川工事等において、プレパックドコンクリート工法を利用し、大型の無筋コンクリート構造物を製造する方法が知られている。また、近年では、コンクリートがらの有効利用を目的として、プレパックドコンクリート工法により、コンクリートを製造する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、200mm以上500mm以下の大きさに破砕されたコンクリートがらの粗骨材が収容された型枠に、結合材及び細骨材を海水で練り混ぜた注入用モルタルを注入し、所定の期間が経過した後、型枠を取り外す方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-20925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、消波ブロックのようなコンクリート構造物は、コンクリートがらの粗骨材を投入できる型枠の開口部が狭い場合がある。しかしながら、バックホウなどのような機械では細かい作業が困難であり、重量物であるコンクリートがらの骨材を機械で型枠内に直接投入することが難しい。また、コンクリートがらの骨材を機械で型枠内に投入できたとしても、骨材が型枠に勢いよく衝突して、型枠に傷や凹みなどの損傷が生じるおそれがある。損傷が型枠に生じた場合、出来形を損なうだけでなく、多額の修理費用が生じてしまうおそれがある。
【0006】
型枠に損傷ができるだけ生じないようにするためには、骨材を手作業で型枠内に投入する必要がある。しかしながら、手作業の割合が多いと、コンクリート構造物の製造に多くの時間を要するとともに、コンクリートがらは重量物でもあるため多大な労力を要するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、型枠内にコンクリートがらなどのような粗骨材を容易に配置でき、施工の効率化を図ることができるプレパックドコンクリート工法によるコンクリート構造物の製造方法及びコンクリート構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係るコンクリート構造物の製造方法は、収容部材と、収容部材に収容された粗骨材とを含むプレパックド部材を、型枠内に配置する工程と、固化材を型枠内に打設する工程と、打設された固化材を硬化する工程とを含む。収容部材は、粗骨材を保持し、固化材が通過可能な複数の開口部を有する保持部を含む。
【0009】
本発明の第2の態様に係るコンクリート構造物は、収容部材と、収容部材に収容された粗骨材とを含むプレパックド部材と、粗骨材同士及びプレパックド部材同士を結合する、固化材の硬化体とを備える。収容部材は、粗骨材を保持し、複数の開口部を有する保持部を含む。複数の開口部には、固化材の硬化体が配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、型枠内にコンクリートがらなどのような粗骨材を容易に配置でき、施工の効率化を図ることができるプレパックドコンクリート工法によるコンクリート構造物の製造方法及びコンクリート構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】挿入孔無タイプの網籠の一例を示す斜視図である。
図2】挿入孔無タイプの網籠に粗骨材を収容したプレパックド部材の一例を示す断面図である。
図3】挿入孔有タイプの網籠の一例を示す斜視図である。
図4】挿入孔有タイプの網籠に粗骨材を収容したプレパックド部材の一例を示す断面図である。
図5】型枠内にプレパックド部材を収容した様子の一例を示す断面図である。
図6】型枠内に圧送管を挿入した様子の一例を示す断面図である。
図7】一実施形態に係るコンクリート構造物の一例を示す断面図である。
図8】挿入孔無タイプの格子籠の例を示す斜視図である。
図9】挿入孔有タイプの格子籠の例を示す斜視図である。
図10】挿入孔無タイプの網袋の一例を示す斜視図である。
図11】挿入孔無タイプの網袋の一例を示す側面図である。
図12】挿入孔無タイプの網袋に粗骨材が収容されている様子の一例を示す斜視図である。
図13】挿入孔無タイプの網袋の一例を示す断面図である。
図14】挿入孔有タイプの網袋の一例を示す斜視図である。
図15】挿入孔有タイプの網袋の一例を示す断面図である。
図16】型枠内に圧送管を挿入した様子の別の例を示す断面図である。
図17】型枠内に圧送管を挿入した様子の別の例を示す断面図である。
図18】型枠内に圧送管を挿入した様子の別の例を示す断面図である。
図19】型枠内に圧送管を挿入した様子の別の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法及びコンクリート構造物について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0013】
本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法は、プレパックド部材準備工程と、プレパックド部材配置工程と、打設工程と、固化材硬化工程とを含んでいる。本実施形態では、コンクリート構造物が、截頭円錐体の4本脚から構成された消波ブロックである例について説明する。
【0014】
プレパックド部材準備工程では、プレパックド部材10を準備する。プレパックド部材10を予め準備しておくことで、プレパックドコンクリート工法によるコンクリート構造物の製造を効率的に行うことができる。
【0015】
プレパックド部材10は、収容部材20と、収容部材20に収容された粗骨材30とを含んでいる。収容部材20は、粗骨材30を保持し、固化材が通過可能な複数の開口部を有する保持部を含んでいる。
【0016】
図1は、挿入孔無タイプの網籠20Aの一例を示す斜視図である。図2は、挿入孔無タイプの網籠20Aに粗骨材30を収容したプレパックド部材10Aの一例を示す断面図である。すなわち、収容部材20が網籠20Aであり、保持部が網状である例を示している。
【0017】
網籠20Aは、固化材を打設するための圧送管50を挿入可能な挿入孔25を有しない挿入孔無タイプの網籠20Aである(図6参照)。網籠20Aは、円板状の底壁21と、底壁21の円周上から上方向に延在する外側壁22と、外側壁22の底壁21とは反対側の端部に接続された円板状の蓋部23とを含んでいる。底壁21、外側壁22及び蓋部23は、粗骨材30を保持する保持部を構成しており、網状部材で形成されている。網籠20Aは、粗骨材30を収容可能な内部空間を有している。内部空間は、底壁21と外側壁22と蓋部23とによって囲われて形成されている。
【0018】
網籠20Aの蓋部23を開け、粗骨材30を内部空間に充填し、蓋部23を閉じることでプレパックド部材10Aを得ることができる。
【0019】
図1及び図2では、挿入孔無タイプの網籠20Aを用いたプレパックド部材10Aについて説明したが、プレパックド部材10は、固化材を打設するための圧送管50を挿入可能な挿入孔25を有していてもよい(図6参照)。すなわち、図1及び図2では、挿入孔無タイプの網籠20Aについて説明したが、収容部材20は、図3及び図4に示すように、挿入孔25を有する挿入孔有タイプの網籠20Bであってもよい。
【0020】
網籠20Bは、網籠20Aに対し、外側壁22の内側に、上下方向に延在する円筒状の内側壁24をさらに含んでいる。また、底壁21は開口部21Aを有している。同様に、蓋部23は開口部23Aを有している。内側壁24の両端は、開口部21A及び開口部23Aと接続するように構成されており、圧送管50が内側壁24の内側に挿入可能なように構成されている。底壁21、外側壁22、蓋部23及び内側壁24は、粗骨材30を保持する保持部を構成しており、網状部材で形成されている。網籠20Bは、粗骨材30を収容可能な内部空間を有している。内部空間は、底壁21と外側壁22と蓋部23と内側壁24によって囲われて形成されている。
【0021】
網籠20Aと同様に、網籠20Bの蓋部23を開け、粗骨材30を内部空間に充填し、蓋部23を閉じることでプレパックド部材10Bを得ることができる。プレパックド部材10Bは、挿入孔25を有しているため、固化材の圧送管50を挿入することができる。そのため、圧送管50を型枠40の奥の方まで挿入することができ、粗骨材30間に固化材を十分に浸透させることができる。
【0022】
粗骨材30は、特に限定されず、ポーラスコンクリート、再生骨材、及びコンクリート塊からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。これらの粗骨材30は、セメントが固まる際に生じる発熱や、セメントの固化後の収縮を抑制することができる。再生骨材は、コンクリートがらを含んでいてもよい。すなわち、粗骨材30はコンクリートがらを含んでいてもよい。粗骨材30が、コンクリートがらを含むことで、コンクリート瓦礫の廃棄量を低減できるとともに、コンクリート瓦礫を有効利用することができる。
【0023】
粗骨材30は、二酸化炭素が固定された炭酸化コンクリート硬化体を含んでいてもよい。これにより、コンクリート構造物の製造工程における二酸化炭素ガス排出量の削減に大きく貢献することができる。炭酸ガスを吸収したコンクリート硬化体は、公知の方法にて生成することができる。
【0024】
粗骨材30の大きさは、特に限定されないが、例えば、100mm以上800mm以下であってもよい。粗骨材30の大きさが100mm以上である場合、固化材が粗骨材30の間に充填されやすくなるため、型枠40内への固化材の充填密度を高くすることができる。また、粗骨材30の大きさが800mm以下である場合、収容部材20の開口部から粗骨材30が抜け出るのを抑制することができる。また、粗骨材30としてコンクリートがらを用いる場合、コンクリート瓦礫を細かく破砕する労力を低減することができる。さらに、粗骨材30が炭酸化コンクリート硬化体を含む場合、型枠40内に多くの炭酸化コンクリート硬化体を充填することができるため、二酸化炭素の固定量を増加することができる。粗骨材30の大きさは、200mm以上であってもよく、300mm以上であってもよい。また、粗骨材30の大きさは、700mm以下であってもよく、600mm以下であってもよく、500mm以下であってもよい。
【0025】
プレパックド部材配置工程では、図5に示すように、プレパックド部材10を型枠40内に配置する。型枠40は、コンクリート構造物の側面を形成する部材であり、本実施形態では、型枠40は、截頭円錐体の4本脚から構成されている。型枠40は、内部にプレパックド部材10及び固化材を充填可能な空間を有しており、プレパックド部材10及び固化材を入れて固化材を硬化することにより、コンクリート構造物を所望の形状及び寸法に形成することができる。型枠40は、複数の部品を組み合わせることにより形成することができ、型枠40は、鋼又はアルミニウムなどのような金属により形成されていてもよい。
【0026】
プレパックド部材10を型枠40内に配置することにより、個々の粗骨材30を型枠40の中に配置する場合と比較し、作業効率を向上させることができる。また、個々の粗骨材30をバックホウなどのような建設機械を用いて型枠40の中に投入する場合、粗骨材30の落下の勢いで型枠40に衝突し、型枠40を傷つけてしまうおそれがある。しかしながら、本方法によれば、型枠40の組立時に、プレパックド部材10を吊り下げて投入することができるため、短時間で粗骨材30を型枠40内に配置することができる。そのため、型枠40を傷つけずに短時間で作業を行うことができるため、作業効率の向上及び省人化を促進することができる。本実施形態に係る方法によれば、粗骨材30が収容部材20に収容されており、粗骨材30が散らばりにくい。そのため、例えば、型枠40の底壁となる土台上にプレパックド部材10を載置した後、型枠40の側壁を底壁に組付けることができる。
【0027】
また、本実施形態に係る方法では、粗骨材30が収容部材20に収容されているため、プレパックド部材10を高さ方向に積層することができる。これにより、立方体のような単純形状だけでなく、4本脚から構成された消波ブロックのように、複雑な形状を有するコンクリート構造物を製造することができる。図5に示すように、本実施形態においては、複数のプレパックド部材10Aが、型枠40の下部の脚部の位置に対応するように配置されている。そして、複数のプレパックド部材10A上には、プレパックド部材10Bが、型枠40の上部の脚部の位置に対応するように配置されている。プレパックド部材10Bは、圧送管50が上部から挿入可能なように、平面方向中央の位置において、挿入孔25が鉛直方向に沿うように配置されている。
【0028】
打設工程では、固化材を型枠40内に打設する。固化材を型枠40内に打設することにより、プレパックド部材10同士の間、及び、プレパックド部材10内の粗骨材30同士の間の空隙に固化材を充填することができる。図6に示すように、打設工程では、まず、固化材を圧送するための圧送管50を型枠40内に挿入する。型枠40内に空隙が残存しにくいように、圧送管50の先端は、型枠40の底部近傍まで挿入することが好ましい。本実施形態では、図6に示すように、圧送管50が2段目のプレパックド部材10Bの挿入孔25に挿入されるとともに、圧送管50の先端が1段目のプレパックド部材10A同士の間に配置されるように圧送管50が型枠40内に挿入されている。なお、固化材は、図6に示すように、型枠40の上部に設けられた開口部を通じて圧入してもよく、例えば型枠40の下部に開口部を設けて下部の開口部を通じて圧入してもよい。
【0029】
固化材は、セメントを含んでいてもよく、ポリマーモルタルのような非セメント系固化材を含んでいてもよい。固化材は、セメントに加え、水又は海水を含んでいてもよい。固化材は、例えば、セメントと、水又は海水とを含む材料が混合されたペーストであってもよい。水は、例えば水道水又は井水などであってもよい。
【0030】
セメントは、例えば、ポルトランドセメント、混合セメント、又はエコセメントなどであってもよい。ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、又は低熱ポルトランドセメントなどであってもよい。混合セメントは、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、又はアルミナセメントなどであってもよい。エコセメントは、都市ゴミ焼却灰などを原料としたセメントであってもよい。
【0031】
固化材は、骨材を含んでいてもよい。骨材は粗骨材及び細骨材の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。粗骨材としては、砂利、砕石、スラグ骨材、再生骨材及びこれらの混合物などを使用することができる。細骨材としては、砂、砕砂、スラグ骨材、再生骨材及びこれらの混合物などを使用することができる。
【0032】
固化材は、必要に応じ、混和材料を含んでいてもよい。混和材料としては、特に限定されないが、フライアッシュ、高炉スラグ粉末、膨張材、シリカフューム、γビーライト、AE剤、減水剤、流動化剤、防錆剤、硬化促進剤、凝結遅延剤などが例として挙げられる。
【0033】
固化材硬化工程では、打設された固化材を硬化する。固化材の硬化条件は特に限定されず、例えば、所定の期間放置して固化材を硬化してもよい。固化材の硬化後、型枠40を外すことで、所望の形状を有するブロック中間体を得ることができる。
【0034】
コンクリート構造物の製造方法は、固化材が固化して形成されたブロック中間体を養生する養生工程を含んでいてもよい。養生としては、特に限定されないが、標準養生、水中養生、湿潤養生、膜養生、促進養生、炭酸化養生、又は、蒸気養生などが例示される。
【0035】
本実施形態に係る方法により、コンクリート構造物100を製造することができる。図7に示すように、コンクリート構造物100は、複数のプレパックド部材10と、固化材の硬化体60とを備えている。プレパックド部材10は、収容部材20と、収容部材20に収容された粗骨材30とを含んでいる。硬化体60は、粗骨材30同士及びプレパックド部材10同士を結合している。収容部材20は、粗骨材30を保持し、複数の開口部を有する保持部を含んでいる。固化材は、保持部の複数の開口部を通過して固化するため、複数の開口部には、固化材の硬化体60が配置されている。
【0036】
本実施形態では、コンクリート構造物100は、四脚ブロックの消波ブロックである。消波ブロックは、消波根固めブロック、又は、波消しブロックとも言われている。消波ブロックは、海及び河川などにおいて護岸などを目的として設置される。なお、消波ブロックは、四脚ブロックに限定されず、例えば、六脚ブロック、若しくは八脚ブロックなどのような立体型ブロック、又は平型ブロックなどであってもよい。また、本方法により得られるコンクリート構造物100は、消波ブロックに限定されず、例えば直方体状、円柱状、円錐台状などのような種々の形状であってもよい。
【0037】
なお、上述したように、網籠20A及び網籠20Bでは、蓋部23は外側壁22に接続されているが、蓋部23は外側壁22から取り外し可能であってもよい。また、蓋部23は、必須ではなく、蓋部23がない網籠20A及び網籠20Bを用いてプレパックド部材10を準備してもよい。ただし、網籠20A又は網籠20Bに蓋部23を設けるなど、粗骨材30の全周囲を囲うように収容部材20が粗骨材30を収容すると、粗骨材30が収容部材20から漏れ出して散らばるのを抑制することができる。また、網籠20A及び網籠20Bは、本実施形態においては、円柱状の外観をしている。しかしながら、網籠20A及び網籠20Bの形状は特に限定されず、立方体、直方体、多角柱、球体、楕円体、円錐体、又は円柱体などであってもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、保持部が網状である網籠20A又は網籠20Bを収容部材20として用いた。しかしながら、保持部は、網状に限定されず、網状、格子状、柵状、多孔状、又はこれらの組み合わせであってもよい。これらのような保持部は、固化材が開口部を通過しやすいため、固化材を型枠40内に効率よく充填させることができる。
【0039】
例えば、挿入孔無タイプの網籠20Aに代えて、図8に示すような挿入孔無タイプの格子籠20Cを用いてもよい。また、挿入孔有タイプの網籠20Bに代えて、図9に示すような挿入孔有タイプの格子籠20Dを用いてもよい。網籠20A及び網籠20Bは保持部が網状であるのに対し、格子籠20C及び格子籠20Dは保持部が格子状である点においてそれぞれ異なっている。格子籠20C及び格子籠20Dを用いた場合であっても、粗骨材30を収容することでプレパックド部材10を作製することができる。
【0040】
また、棒状部材を高さ方向と周方向とに組み合わせた格子状の保持部に代え、周方向の棒状部材を、高さ方向の端部のみに接合した柵状の保持部を用いてもよい。さらに、これらに代え、パンチメタルのような複数の孔を有する多孔状の保持部を用いてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、収容部材20が籠の例について説明したが、収容部材20は袋であってもよい。すなわち、収容部材20は、籠又は袋であってもよい。収容部材20として籠を用いることで、収容部材20内の粗骨材30が型枠40と接触するのを抑制することができるため、粗骨材30によって型枠40が損傷するのをさらに抑制することができる。また、収容部材20として袋を用いることで、プレパックド部材10の形状が容易に変形するため、型枠40の設置面への追随性を高くすることができる。これにより、型枠40内への粗骨材30の充填密度をさらに高くすることができる。
【0042】
例えば、収容部材20として、図10図13に示すような挿入孔無タイプの網袋20Eを用いてもよい。また、収容部材20として、図14図15に示すような挿入孔25を有する挿入孔有タイプの網袋20Fを用いてもよい。網袋20E及び網袋20Fに粗骨材30を収容することにより、プレパックド部材10E及びプレパックド部材10Fをそれぞれ得ることができる。網袋20E及び網袋20Fでは、収容部材20が袋である。そのため、プレパックド部材10の形状が容易に変形するため、型枠40の設置面への追随性を高くすることができる。
【0043】
収容部材20が籠である場合、保持部は、棒状部材、線状部材、角柱部材、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。保持部の材質は、例えば、鉄、銅及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも一種の金属を含んでいてもよい。具体的には、保持部の材質は、ステンレス又は真鍮であってもよい。保持部は、例えば異形鉄筋又は丸鋼のような鉄筋を含んでいてもよい。保持部が鉄筋を含むことで、コンクリート構造物100の補強効果が期待できる。保持部は、例えば亜鉛などのような金属でめっきされていてもよく、めっきされていなくてもよい。保持部は、例えばセメント固化体であってもよい。保持部は、例えばプラスチックであってもよい。
【0044】
収容部材20が袋である場合、保持部は線状部材を含んでいてもよい。線状部材は、縄、紐、糸、又はこれらの組み合わせであってもよい。保持部の材質は、金属であってもよく、樹脂であってもよく、これらの複合体であってもよい。樹脂は、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなど公知の材料を使用することができるが、安価で強度が優れていることから、ポリエステルを含むことが好ましい。保持部は、例えば、ポリエステル繊維を含んでいてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、型枠40内に複数のプレパックド部材10Aと、1つのプレパックド部材10Bとが、型枠40の脚部に対応するように配置されている。しかしながら、プレパックド部材10は、図16に示すように、複数のプレパックド部材10Gを型枠40の底部の脚部に対応する位置に配置し、底部から1段目の平面方向中央に挿入孔有のプレパックド部材10Hを配置してもよい。そして、1段目のプレパックド部材10Hの上に2段目のプレパックド部材10Hを配置し、1段目と2段目のプレパックド部材10Hの挿入孔25が鉛直方向に連通するように配置してもよい。
【0046】
また、図17に示すように、円筒状のプレパックド部材10A及びプレパックド部材10Bに代えて、さらに型枠40の脚部の形状に沿ったプレパックド部材10I及びプレパックド部材10Jをそれぞれ用いてもよい。これにより、型枠40内により多くの粗骨材30を充填することができる。
【0047】
また、図18に示すように、プレパックド部材10A及びプレパックド部材10Bよりも高さが低く、円筒の直径が高さよりも大きい幅太タイプのプレパックド部材10K及びプレパックド部材10Lを用いてもよい。これにより、プレパックド部材10の積層が容易になるとともに、多くのプレパックド部材10を型枠40内に配置できる。そのため、型枠40内により多くの粗骨材30を充填することができる。
【0048】
また、図19に示すように、袋タイプのプレパックド部材10M及びプレパックド部材10Nを用いてもよい。袋タイプのプレパックド部材10は、籠タイプのプレパックド部材10と比較し、容易に形が変形するため、型枠40の形状に沿って敷き詰めることができる。そのため、型枠40内により多くの粗骨材30を充填することができる。
【0049】
なお、コンクリート構造物100を製造するにあたり、袋タイプのプレパックド部材10のみを使用してもよく、籠タイプのプレパックド部材10のみを使用してもよく、袋タイプと籠タイプの両方のプレパックド部材10を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係るコンクリート構造物100の製造方法は、収容部材20と、収容部材20に収容された粗骨材30とを含むプレパックド部材10を、型枠40内に配置する工程を含んでいる。本方法は、固化材を型枠40内に打設する工程と、打設された固化材を硬化する工程とを含んでいる。収容部材20は、粗骨材30を保持し、固化材が通過可能な複数の開口部を有する保持部を含んでいる。
【0051】
本実施形態に係るコンクリート構造物100の製造方法によれば、プレパックド部材10を用いて型枠40内に配置する。そのため、プレパックド部材10を型枠40の組立時に設置することで、粗骨材30によって型枠40が傷つくのを抑制することができる。また、型枠40の組立時に、人の手でコンクリートがら等の粗骨材30を投入する作業がなくなるため、作業の省力化を図ることができる。したがって、本実施形態に係るコンクリート構造物100の製造方法によれば、型枠40内にコンクリートがらなどのような粗骨材を容易に配置でき、施工の効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 プレパックド部材
20 収容部材
30 粗骨材
40 型枠
50 圧送管
60 硬化体
100 コンクリート構造物
図1
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