(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005848
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】検出対象物の検出方法、排水の監視方法、検出対象物検出キット、及び排水監視キット
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20250109BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20250109BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20250109BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12N15/11 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106247
(22)【出願日】2023-06-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 電気通信回線による発表: 掲載年月日:令和5年3月17日 掲載アドレス:https://www.covid19-ai.jp/ja-jp/movie-2022/movie_special_04/ https://www.covid19-ai.jp/ja-jp/movie-2022/movie_015/ https://www.covid19-ai.jp/ja-jp/2022_report/ ポスター展示: 展示日:令和5年3月20日(月)10:30~14:00 展示場所:COVID-19 AI・シミュレーションプロジェクト 2022年度成果報告会 株式会社三菱総合研究所 4階 大会議室 東京都千代田区永田町二丁目10番3号 東急キャピトルタワー内 集会及びWEBによるライブ配信による発表: 開催日:令和5年3月20日(月)10:30~14:00 集会名、開催場所:COVID-19 AI・シミュレーションプロジェクト 2022年度成果報告会 株式会社三菱総合研究所 4階 大会議室、およびウェブによるライブ配信 東京都千代田区永田町二丁目10番3号 東急キャピトルタワー内
(71)【出願人】
【識別番号】519164415
【氏名又は名称】BioSeeds株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】マニシュ ビヤニ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB13
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA03
4B029FA15
4B029GA03
4B029GA08
4B029GB06
4B029GB10
4B063QA07
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4B063QQ10
4B063QQ18
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ62
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR42
4B063QR79
4B063QS03
4B063QS24
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】試料中の検出対象を短時間で簡単に検出できる検出対象物の検出方法を提供する。
【解決手段】本発明の検出対象物の検出方法は、捕捉工程、収集工程、及び、遺伝子検出工程を含み、前記捕捉工程は、検出対象の試料を捕捉剤と接触させる試料接触工程を含み、前記捕捉剤は、磁性担体に親和性物質が結合した複合体であり、前記親和性物質は、前記検出対象に対し親和性を有し、前記収集工程は、磁気を使用して前記捕捉剤を収集する工程を含み、前記遺伝子検出工程は、前記収集された前記捕捉剤に捕捉された検出対象物の遺伝子を特異的に増幅して検出する遺伝子増幅工程を含み、前記遺伝子増幅工程は、RNAゲノム中の標的配列の等温遺伝子増幅方法(RICCA(RNA Isothermal Co-assisted and Coupled Amplification)反応)により実施される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕捉工程、収集工程、及び、遺伝子検出工程を含み、
前記捕捉工程は、検出対象の試料を捕捉剤と接触させる試料接触工程を含み、
前記捕捉剤は、磁性担体に親和性物質が結合した複合体であり、
前記親和性物質は、検出対象物に対し親和性を有し、
前記収集工程は、磁気を使用して前記捕捉剤を収集する工程を含み、
前記遺伝子検出工程は、前記収集された前記捕捉剤に捕捉された検出対象物の遺伝子を特異的に増幅して検出する遺伝子増幅工程を含み、
前記遺伝子増幅工程は、RNAゲノム中の標的配列の等温遺伝子増幅方法により実施され、
前記等温遺伝子増幅方法は、下記の(A)増幅反応テンプレート生成工程、(B)前記増幅反応テンプレートの増加のためのDNA増幅工程、及び、(C)RNA増幅工程、を含む検出対象物の検出方法:
(A)下記の(A1)から(A3)の各工程を含む前記増幅反応テンプレート生成工程:
(A1) 5´側にRNAポリメラーゼのプロモータ配列を含み、かつ、3´側に前記RNAゲノム中の前記標的配列の5´側の配列と相補的な相補配列を含む第1プライマーを、前記RNAゲノム中の前記標的配列の5´側の前記配列にハイブリダイズさせ、逆転写酵素による逆転写活性により、前記第1プライマーの3´末端を伸長させて、前記RNAゲノム及び伸長DNA鎖の複合二本鎖を生成させる逆転写工程;
(A2) 前記(A1)で形成された前記複合二本鎖の前記RNAゲノムを、前記逆転写酵素のRNA分解活性により分解して、前記第1プライマーを含む一本鎖DNAを生成する一本鎖DNA生成工程;
(A3) 前記標的配列の3´側の配列と同じ配列を持つ第2プライマーを、前記(A2)工程で生成した一本鎖DNAの前記標的配列と相補的な配列にハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素のDNA合成活性により、前記第2プライマーの3´末端を伸長させて前記第2プライマーを含む一本鎖DNAを生成して前記増幅反応テンプレートである二本鎖DNAを生成させる二本鎖DNA生成工程;
(B)下記の(B1)及び(B2)の各工程を含む前記増幅反応テンプレート増加のためのDNA増幅工程:
(B1)一本鎖DNA結合タンパク質の存在下、リコンビナーゼにより、前記(A3)の増幅反応テンプレートの二本鎖DNAにおいて、前記第1プライマーを含む一本鎖DNAの3´側に前記第2プライマーをハイブリダイズさせ、かつ、前記第2プライマーを含む一本鎖DNAの3´側に前記第1プライマーをハイブリダイズさせる、プライマーハイブリダイズ工程;
(B2)前記一本鎖DNA結合タンパク質の存在下、鎖置換DNAポリメラーゼの鎖置換DNA合成活性により、前記第1プライマーの3´末端及び前記第2プライマーの3´末端を伸長させて、前記(A3)の前記増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを生成する二本鎖DNA生成工程;
(C)下記の(C1)から(C4)の各工程を含むRNA増幅工程:
(C1)RNAポリメラーゼのRNA合成活性により、前記(A3)の増幅反応テンプレートの二本鎖DNAのRNAポリメラーゼのプロモータ配列よりも3´側下流の配列を鋳型配列として、一本鎖RNAを合成する一本鎖RNA合成工程;
(C2)前記(C1)の一本鎖RNAの5´側に、前記第2プライマーをハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素の逆転写活性により、前記第2プライマーの3´末端を伸長させて、前記一本鎖RNA及び伸長DNAの複合二本鎖を生成させる逆転写工程;
(C3)前記逆転写酵素のRNA分解活性により、前記(C2)の前記複合二本鎖の一本鎖RNAを分解して、一本鎖DNAを生成する工程;
(C4)前記(C3)の一本鎖DNAの3´側に、前記第1プライマーをハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素のDNA合成活性により、前記第1プライマーの3´末端を伸長させ、かつ、前記第1プライマーの前記RNAポリメラーゼのプロモータ配列を鋳型として前記(C3)の一本鎖DNAの3´末端を伸長させて、前記(A3)で生成した増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを生成する二本鎖DNA生成工程。
【請求項2】
前記複合体において、前記磁性担体は、磁性多孔質ヒドロゲル粒子である、
請求項1記載の検出対象物の検出方法。
【請求項3】
前記親和性物質は、親和性色素である、
請求項1記載の検出対象物の検出方法。
【請求項4】
前記捕捉剤は、前記磁性多孔質ヒドロゲル粒子及び前記磁性多孔質ヒドロゲル粒子を覆う多孔質外殻体から構成されている、
請求項2記載の検出対象物の検出方法。
【請求項5】
前記試料が、排水であり、
前記検出対象物が、前記排水中のウイルス及び微生物の少なくとも一方である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の検出対象物の検出方法。
【請求項6】
前記第1プライマーが含むRNAポリメラーゼのプロモータ配列が、T7プロモータ配列であり、
前記RNAポリメラーゼが、T7RNAポリメラーゼである、請求項1記載の検出対象物の検出方法。
【請求項7】
前記RNAゲノムが、センス鎖であり、前記第1プライマーがアンチセンスプライマーであり、前記第2プライマーがセンスプライマーである、
請求項1に記載の検出対象物の検出方法。
【請求項8】
前記遺伝子検出工程は、前記遺伝子増幅工程において増幅した遺伝子を検出する増幅遺伝子検出工程を含み、
前記遺伝子増幅工程において、前記第1プライマー及び前記第2プライマーの一方のプライマーは、5´末端に、基板に固定された固定化抗体と特異的に結合可能な抗原が組み込まれたプライマーであり、前記第1プライマー及び前記第2プライマーの他方のプライマーは、5´末端に第1結合体が組み込まれており、
前記増幅遺伝子検出工程において、前記遺伝子増幅工程で生成した遺伝子増幅物の前記一方のプライマーの前記抗原は、前記固定化抗体と結合して前記遺伝子増幅物が前記基板に固定され、前記他方のプライマーの前記第1結合体は、前記第1結合体と特異的に結合する第2結合体を含む標識物と前記第2結合体を介して結合することで前記標識物が前記基板に固定され、前記基板に固定された前記標識物を検出する、
請求項1に記載の検出対象物の検出方法。
【請求項9】
前記第1結合体は、ビオチン(Biotin)であり、前記第2結合体は、ストレプトアビジン(streptavidin)であり、前記標識物は、前記ストレプトアビジンが表面に固定された着色微粒子である、
請求項8記載の検出対象物の検出方法。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか一項に記載の検出対象物の検出方法を含む排水監視方法。
【請求項11】
前記捕捉剤と、遺伝子検出剤とを含み、
前記遺伝子検出剤は、遺伝子増幅剤を含み、
前記遺伝子増幅剤が、下記の(a1)から(a3)、(b1)から(b3)及び(c1)を含む:
(a1)前記逆転写酵素;
(a2)前記第1プライマー;
(a3)前記第2プライマー;
(b1)前記リコンビナーゼ;
(b2)前記一本鎖DNA結合タンパク質;
(b3)前記鎖置換DNAポリメラーゼ;
(c1)前記RNAポリメラーゼ:
請求項1から4のいずれか一項に記載の検出対象物の検出方法に使用する検出対象物検出キット。
【請求項12】
前記捕捉剤が、前記磁性担体に親和性物質が結合した複合体を含む、請求項11記載の検出対象物検出キット。
【請求項13】
前記複合体において、前記磁性担体は、磁性多孔質ヒドロゲル粒子である、請求項12記載の検出対象物検出キット。
【請求項14】
前記親和性物質は、親和性色素である、請求項12記載の検出対象物検出キット。
【請求項15】
前記捕捉剤は、前記磁性多孔質ヒドロゲル粒子及び前記磁性多孔質ヒドロゲル粒子を覆う多孔質外殻体から構成されている、請求項13記載の検出対象物検出キット。
【請求項16】
前記遺伝子検出剤が、増幅遺伝子検出剤を含み、前記増幅遺伝子検出剤が、下記の(d1)から(d3)を含み、請求項8または9記載の検出対象物の検出方法に使用する請求項11記載の検出対象物検出キット:
(d1)前記固定化抗体;
(d2)基板;
(d3)標識物。
【請求項17】
請求項11記載の検出対象物検出キットを含む排水監視キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象物の検出方法、排水の監視方法、検出対象物検出キット、及び排水監視キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒト及び鳥のインフルエンザ並びに重症急性呼吸器症候群(SARS)等のRNAウイルス性の感染症が起きており、最近では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による世界的な感染(パンデミック)が世界的な問題となっている。ウイルス性の感染症の流行予測において、下水中に含まれるウイルスの検出が試みられている(非特許文献1)。非特許文献1には、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿法等を用いて、下水処理場に流入する下水の採水・分析を実施したことが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室 厚生労働省 国土交通省,“下水サーベイランスに関する推進計画”,[online],令和3年11月16日,[令和5年4月26日検索],インターネット、<URL:https://corona.go.jp/surveillance/pdf/surveillance_plan_20211116.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PEG沈殿法を利用したウイルス検出は、下水中の不純物除去に工数が必要であり、手間と時間がかかるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、試料中の検出対象を短時間で簡単に検出できる検出対象物の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の検出対象物の検出方法は、
捕捉工程、収集工程、及び、遺伝子検出工程を含み、
前記捕捉工程は、検出対象の試料を捕捉剤と接触させる試料接触工程を含み、
前記捕捉剤は、磁性担体に親和性物質が結合した複合体であり、
前記親和性物質は、前記検出対象に対し親和性を有し、
前記収集工程は、磁気を使用して前記捕捉剤を収集する工程を含み、
前記遺伝子検出工程は、前記収集された前記捕捉剤に捕捉された検出対象物の遺伝子を特異的に増幅して検出する遺伝子増幅工程を含み、
前記遺伝子増幅工程は、RNAゲノム中の標的配列の等温遺伝子増幅方法により実施され、
前記等温遺伝子増幅方法は、下記の(A)増幅反応テンプレート生成工程、(B)前記増幅反応テンプレートの増加のためのDNA増幅工程、及び、(C)RNA増幅工程、を含む検出対象物の検出方法:
(A)下記の(A1)から(A3)の各工程を含む前記増幅反応テンプレート生成工程:
(A1) 5´側にRNAポリメラーゼのプロモータ配列を含み、かつ、3´側に前記RNAゲノム中の前記標的配列の5´側の配列と相補的な相補配列を含む第1プライマーを、前記RNAゲノム中の前記標的配列の5´側の前記配列にハイブリダイズさせ、逆転写酵素による逆転写活性により、前記第1プライマーの3´末端を伸長させて、前記RNAゲノム及び伸長DNA鎖の複合二本鎖を生成させる逆転写工程;
(A2) 前記(A1)で形成された前記複合二本鎖の前記RNAゲノムを、前記逆転写酵素のRNA分解活性により分解して、前記第1プライマーを含む一本鎖DNAを生成する一本鎖DNA生成工程;
(A3) 前記標的配列の3´側の配列と同じ配列を持つ第2プライマーを、前記(A2)工程で生成した一本鎖DNAの前記標的配列と相補的な配列にハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素のDNA合成活性により、前記第2プライマーの3´末端を伸長させて前記第2プライマーを含む一本鎖DNAを生成して前記増幅反応テンプレートである二本鎖DNAを生成させる二本鎖DNA生成工程;
(B)下記の(B1)及び(B2)の各工程を含む前記増幅反応テンプレート増加のためのDNA増幅工程:
(B1)一本鎖DNA結合タンパク質の存在下、リコンビナーゼにより、前記(A3)の増幅反応テンプレートの二本鎖DNAにおいて、前記第1プライマーを含む一本鎖DNAの3´側に前記第2プライマーをハイブリダイズさせ、かつ、前記第2プライマーを含む一本鎖DNAの3´側に前記第1プライマーをハイブリダイズさせる、プライマーハイブリダイズ工程;
(B2)前記一本鎖DNA結合タンパク質の存在下、鎖置換DNAポリメラーゼの鎖置換DNA合成活性により、前記第1プライマーの3´末端及び前記第2プライマーの3´末端を伸長させて、前記(A3)の前記増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを生成する二本鎖DNA生成工程;
(C)下記の(C1)から(C4)の各工程を含むRNA増幅工程:
(C1)RNAポリメラーゼのRNA合成活性により、前記(A3)の増幅反応テンプレートの二本鎖DNAのRNAポリメラーゼのプロモータ配列よりも3´側下流の配列を鋳型配列として、一本鎖RNAを合成する一本鎖RNA合成工程;
(C2)前記(C1)の一本鎖RNAの5´側に、前記第2プライマーをハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素の逆転写活性により、前記第2プライマーの3´末端を伸長させて、前記一本鎖RNA及び伸長DNAの複合二本鎖を生成させる逆転写工程;
(C3)前記逆転写酵素のRNA分解活性により、前記(C2)の前記複合二本鎖の一本鎖RNAを分解して、一本鎖DNAを生成する工程;
(C4)前記(C3)の一本鎖DNAの3´側に、前記第1プライマーをハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素のDNA合成活性により、前記第1プライマーの3´末端を伸長させ、かつ、前記第1プライマーの前記RNAポリメラーゼのプロモータ配列を鋳型として前記(C3)の一本鎖DNAの3´末端を伸長させて、前記(A3)で生成した増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを生成する二本鎖DNA生成工程。
【0007】
本発明の排水の監視方法は、前記本発明の検出対象物の検出方法を含む。
【0008】
本発明の検出対象物検出キットは、
捕捉剤と、遺伝子検出剤とを含み、
前記遺伝子検出剤は、遺伝子増幅剤を含み、
前記遺伝子増幅剤が、下記の(a1)から(a3)、(b1)から(b3)及び(c1)を含む:
(a1)前記逆転写酵素;
(a2)前記第1プライマー;
(a3)前記第2プライマー;
(b1)前記リコンビナーゼ;
(b2)前記一本鎖DNA結合タンパク質;
(b3)前記鎖置換DNAポリメラーゼ;
(c1)前記RNAポリメラーゼ:
前記本発明の検出対象物の検出方法に使用する検出対象物検出キットである。
【0009】
本発明の排水監視キットは、前記本発明の検出対象物検出キットを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、試料中の検出対象を短時間で簡単に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の検出方法における遺伝子増幅工程のメカニズムと主要な工程とを示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施例1のラテラルフローイムノアッセイの結果を示す写真である。
【
図3】
図3は、実施例2のラテラルフローイムノアッセイの結果を示す写真である。
【
図4】
図4は、実施例2のqPCRの結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施例3のqPCRの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、「検出対象物」は、特に制限されず、例えば、ウイルス、タンパク質、細菌、菌類、微生物、細胞、及びこれらに産出された産出物等が挙げられる。
【0013】
本発明において、「ウイルス」は、例えば、DNAウイルスでもよいし、RNAウイルスでもよい。前記ウイルスは、例えば、エンベロープウイルスでもよいし、非エンベロープウイルスでもよい。前記エンベロープウイルスの具体例としては、例えば、トウガラシ微斑ウイルス(PMMoV:Pepper mild mottle virus)等のトバモウイルス;コロナウイルス229E、コロナウイルスOC43、SARS-CoV、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2、MERSの原因ウイルスであるMERS-CoV等のコロナウイルス;C型肝炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルス、ジカウイルス等のフラビウイルス;インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザウイルス等のオルトミクソウイルス;チクングニアウイルス、風疹ウイルス等のトガウイルス;D型肝炎ウイルス;麻疹ウイルス、ヒトRSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)等のパラミクソウイル;狂犬病ウイルス等のラブドウイルス;エボラウイルス等のフィロウイルス;水痘・帯状疱疹ウイルス等のヘルペスウイルス;サル痘ウイルス(Mpox virus)、天然痘ウイルス等のポックスウイルス;B型肝炎ウイルス等のヘパドナウイルス;ヒト免疫不全ウイルス等のレトロウイルス;等があげられる。前記非エンベロープウイルスの具体例としては、例えば、アデノウイルス;ヒトパピローマウイルス;ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス等のピコルナウイルス;ノロウイルス等のカリシウイルス;ロタウイルス等のレオウイルス;等があげられる。
【0014】
本発明において、前記「細菌」は、特に制限されず、例えば、大腸菌(E. Coli)、サルモネラエンテリカ(Salmonella enterica)、カンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)、リステリアモノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、クロストリジオイデスディフィシル(Clostridioides difficile))等があげられる。
【0015】
本発明において、前記「微生物」は、特に制限されず、例えば、カンジダアウリス(Candida auris)等の真菌;クリプトスポリジウムパルバム(Cryptosporidium)等の寄生性原虫;ランブル鞭毛虫(Giardia duodenalis)等の寄生性鞭毛虫;等があげられる。
【0016】
本発明において「検出対象の試料」は、特に制限されず、例えば、前記検出対象物を含んでいるものでもよいし、前記検出対象物を含んでいないものでもよいし、前記検出対象物を含んでいるか否か不明なものでもよい、前記試料の具体例としては、例えば、排水があげられる。前記排水は、例えば、生活排水、工場排水、店舗からの排水、飛行機、列車(例えば、新幹線)、船などの移動体の排水等があげられる。なお、前記試料は、例えば、前記排水には限定されず、例えば、唾液、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、鼻腔ぬぐい液、鼻汁、咽頭ぬぐい液、含漱液、全血、血清、血漿、汗、尿等の生体試料等であってもよく、粘稠性を有する検体であってもよい。前記粘稠性を有する検体としては、特に限定されないが、例えば、唾液、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、鼻腔ぬぐい液、鼻汁、咽頭ぬぐい液、含漱液等があげられる。前記検体は、液状のものに限られず、固体状のものを緩衝液等に溶解したものでもよく、例えば、細胞、糞便等の生体試料、動物及び植物等の食物や加工食品等の食品等が挙げられる。前記緩衝液としては、特に限定されないが、例えば、後述する緩衝液等があげられる。
【0017】
<検出対象物の検出方法>
本発明の検出対象物の検出方法について説明する。本発明の検出対象物の検出方法は、捕捉工程、収集工程、及び、遺伝子検出工程を含むことが特徴であって、その他の工程及び条件は、特に制限されない。
【0018】
前記捕捉工程は、前述のように、前記検出対象の試料を捕捉剤と接触させる工程であり、その接触条件は、特に制限されない。前記捕捉剤は、例えば、検出対象物と特異的に結合して特定の検出対象物を捕捉するものでもよいし、複数の検出対象物を捕捉するものでもよい。前記検出対象物は、特に制限されず、例えば、前記検出対象物に由来するタンパク質、ペプチド、核酸、微生物、ホルモン、乱用薬物、細胞外小胞等があげられる。前記捕捉剤は、例えば、磁性担体に親和性物質が結合した複合体である。前記親和性物質は、前記検出対象物に対し親和性を有する。前記複合体において、前記磁性担体は、例えば、磁性多孔質ヒドロゲル粒子であってもよい。前記磁性多孔質ヒドロゲル粒子は、例えば、磁性ナノ粒子を内包した多孔質のヒドロゲル粒子であってもよい。前記親和性物質は、例えば、親和性色素である。前記捕捉剤は、例えば、前記磁性多孔質ヒドロゲル粒子及び前記磁性多孔質ヒドロゲル粒子を覆う多孔質外殻体から構成されていてもよい。前記捕捉剤の具体例としては、例えば、市販の製品でもよい。前記製品としては、例えば、Ceres Nanosciences社のNanotrap(登録商標) Microbiome Particles等があげられる。具体例として、Nanotrap(登録商標)Microbiome A Particlesは、例えば、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、コロナウイルス229E、コロナウイルスOC43、SARS-CoV-2、ジカウイルス、チクングニアウイルス、デング熱ウイルス、ペッパーマイルドモトルウイルス、A型肝炎ウイルス、サル痘ウイルス、ノロウイルスGII等の各種ウイルスの捕捉に適している。また、Nanotrap(登録商標)Microbiome B Particlesは、例えば、大腸菌、サルモネラエンテリカ、カンピロバクタージェジュニ、リステリアモノサイトゲネス、クロストリジオイデスディフィシル、カンジダアウリス、クリプトスポリジウムパルバム、 ランブル鞭毛虫等の捕捉に適している。前記捕捉剤がNanotrap(登録商標)である場合、例えば、前記捕捉工程および後述する収集工程は、例えば、使用するNanotrap(登録商標) Microbiome Particlesの添付文書に記載のプロトコルを採用してもよい。
【0019】
前記収集工程は、例えば、前述のように、磁気を使用して前記捕捉剤を収集する固定である。前記収集工程は、例えば、磁石(永久磁石でもよいし、電磁石でもよい)を用いて前記捕捉剤を収集してもよいし、前記捕捉剤が磁気を帯びている磁気ビーズである場合、磁性体を用いて前記捕捉剤を収集してもよい。前記収集工程は、例えば、後述する実施例のようにして実施できるが、本発明の前記ウイルス収集工程は、例えば、実施例の方法には限定されない。
【0020】
前記遺伝子検出工程は、前記収集された前記ウイルス捕捉剤に捕捉された検出対象物の遺伝子を特異的に増幅して検出する遺伝子増幅工程を含む。また、前記遺伝子検出工程は、例えば、前記遺伝子増幅工程において増幅した遺伝子を検出する増幅遺伝子検出工程を含んでもよい。
【0021】
前記遺伝子増幅工程は、例えば、RICCA(RNA Isothermal Co-assisted and Coupled Amplification) 反応ともいう。前記RICCA反応は、例えば、下記参考文献1の記載に従って実施できる。
参考文献1:Biyani, R.; Sharma, K.; Kojima, K.; Biyani, M.; Sharma, V.; Kumawat, T.; Juma, K. M.; Yanagihara, I.; Fujiwara, S.; Kodama, E.; Takamura, Y.; Takagi, M.; Yasukawa, K.; Biyani, M. “Development of Robust Isothermal RNA Amplification Assay for Lab-Free Testing of RNA Viruses”. Sci. Rep. 2021, 11 (1), 15997. https://doi.org/10.1038/s41598-021-95411-x.
【0022】
前記遺伝子増幅工程(RICCA反応)の具体例について説明する。前記遺伝子増幅工程は、RNAゲノム中の標的配列の等温遺伝子増幅方法であって、下記の(A)増幅反応テンプレート生成工程、(B)前記増幅反応テンプレートの増加のためのDNA増幅工程、及び、(C)RNA増幅工程、を含むことが特徴であって、その他の工程及び条件は、特に制限されない。
(A)下記の(A1)から(A3)の各工程を含む前記増幅反応テンプレート生成工程:
(A1) 5´側にRNAポリメラーゼのプロモータ配列を含み、かつ、3´側に前記RNAゲノム中の前記標的配列の5´側の配列と相補的な相補配列を含む第1プライマーを、前記RNAゲノム中の前記標的配列の5´側の前記配列にハイブリダイズさせ、逆転写酵素による逆転写活性により、前記第1プライマーの3´末端を伸長させて、前記RNAゲノム及び伸長DNA鎖の複合二本鎖を生成させる逆転写工程;
(A2) 前記(A1)で形成された前記複合二本鎖の前記RNAゲノムを、前記逆転写酵素のRNA分解活性により分解して、前記第1プライマーを含む一本鎖DNAを生成する一本鎖DNA生成工程;
(A3) 前記標的配列の3´側の配列と同じ配列を持つ第2プライマーを、前記(A2)工程で生成した一本鎖DNAの前記標的配列と相補的な配列にハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素のDNA合成活性により、前記第2プライマーの3´末端を伸長させて前記第2プライマーを含む一本鎖DNAを生成して前記増幅反応テンプレートである二本鎖DNAを生成させる二本鎖DNA生成工程;
(B)下記の(B1)及び(B2)の各工程を含む前記増幅反応テンプレート増加のためのDNA増幅工程:
(B1)一本鎖DNA結合タンパク質の存在下、リコンビナーゼにより、前記(A3)の増幅反応テンプレートの二本鎖DNAにおいて、前記第1プライマーを含む一本鎖DNAの3´側に前記第2プライマーをハイブリダイズさせ、かつ、前記第2プライマーを含む一本鎖DNAの3´側に前記第1プライマーをハイブリダイズさせる、プライマーハイブリダイズ工程;
(B2)前記一本鎖DNA結合タンパク質の存在下、鎖置換DNAポリメラーゼの鎖置換DNA合成活性により、前記第1プライマーの3´末端及び前記第2プライマーの3´末端を伸長させて、前記(A3)の前記増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを生成する二本鎖DNA生成工程;
(C)下記の(C1)から(C4)の各工程を含むRNA増幅工程:
(C1)RNAポリメラーゼのRNA合成活性により、前記(A3)の増幅反応テンプレートの二本鎖DNAの前記プロモータ配列よりも3´側下流の配列を鋳型配列として、一本鎖RNAを合成する一本鎖RNA合成工程;
(C2)前記(C1)の一本鎖RNAの5´側に、前記第2プライマーをハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素の逆転写活性により、前記第2プライマーの3´末端を伸長させて、前記一本鎖RNA及び伸長DNAの複合二本鎖を生成させる逆転写工程;
(C3)前記逆転写酵素のRNA分解活性により、前記(C2)の前記複合二本鎖の一本鎖RNAを分解して、一本鎖DNAを生成する工程;
(C4)前記(C3)の一本鎖DNAの3´側に、前記第1プライマーをハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素のDNA合成活性により、前記第1プライマーの3´末端を伸長させ、かつ、前記第1プライマーの前記RNAポリメラーゼのプロモータ配列を鋳型として前記(C3)の一本鎖DNAの3´末端を伸長させて、前記(A3)で生成した増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを生成する二本鎖DNA生成工程。
【0023】
以下、(A)増幅反応テンプレート生成工程、(B)前記増幅反応テンプレートの増加のためのDNA増幅工程、及び、(C)RNA増幅工程について、順に説明する。
【0024】
前記RNAゲノムは、例えば、センス鎖でも、アンチセンス鎖でもよいが、センス鎖であることが好ましい。前記RNAゲノムがセンス鎖である場合、例えば、前記遺伝子増幅工程による遺伝子増幅の特異性を向上することができる。
【0025】
「等温増幅法」は、一般に、等温で核酸増幅反応を行う方法をいう。前記遺伝子増幅工程において、増幅反応の条件は、特に制限されず、例えば、当業者であれば適宜決定できる。前記遺伝子増幅工程において、反応温度は、特に制限されず、例えば、プライマーの融解温度(Tm)付近の温度又はそれ以下に設定することが好ましく、さらに、プライマーの融解温度(Tm)を考慮し、ストリンジェンシーのレベルを設定することが好ましい。前記反応温度の具体例としては、例えば、33~47℃、35℃~45℃、37℃~43℃があげられる。前記遺伝子増幅工程において、反応時間は、特に制限されず、例えば、当業者であれば適宜決定できる。前記反応時間の具体例としては、例えば、5分~60分、10分~30分、10分~20分があげられる。前記遺伝子増幅工程における増幅の特異度を向上できることから、前記反応時間は、例えば、20分以下であることが好ましい。
【0026】
前記標的配列は、例えば、ターゲットとなる検出対象のRNAゲノムにおける、増幅対象の配列であり、特に制限されない。前記標的配列の長さは、特に制限されず、例えば、100~400塩基長である。
【0027】
前記第1プライマーは、例えば、一本鎖のポリヌクレオチドであり、その5´側にRNAポリメラーゼのプロモータ配列を含み、かつ、その3´側に前記RNAゲノム中の前記標的配列の5´側の配列と相補的な相補配列(以下、「標的結合配列」ともいう)を含むこと以外は特に制限されない。前記第1プライマーは、例えば、前記遺伝子増幅工程における反応条件下において、前記RNAゲノム中の標的配列の5´側の前記配列にハイブリダイズ可能である。前記第1プライマーにおいて、前記標的結合配列の長さは、前記標的配列の5´側の前記配列にハイブリダイズ可能な長さであれば特に制限されず、例えば、20~35塩基長である。前記第1プライマーは、例えば、前記RNAゲノムがセンス鎖である場合、アンチセンスプライマーであり、前記RNAゲノムがアンチセンス鎖である場合、センスプライマーであるが、アンチセンスプライマーであることが好ましい。前記RNAゲノムがセンス鎖であり、前記第1プライマーがアンチセンスプライマーである場合、例えば、前記遺伝子増幅工程による遺伝子増幅の特異性を向上することができる。
【0028】
前記第1プライマーは、例えば、すべての第1プライマーがRNAポリメラーゼのプロモータ配列を含んでもよいし、一部の第1プライマーがRNAポリメラーゼのプロモータ配列を含んでいてもよい。後者の場合、例えば、前記RNAポリメラーゼのプロモータ配列を含まない第1プライマーは、その5´末端に、後述する増幅遺伝子検出工程における第1結合物質が組み込まれていてもよい。具体的には、前記RNAポリメラーゼのプロモータ配列を含まない第1プライマーは、例えば、前記第1結合物質として、ビオチンが組み込まれたビオチン化第1結合プライマーであってもよい。この場合、後述する前記増幅遺伝子検出工程において、例えば、増幅産物を簡便に検出できるため好ましい。
【0029】
前記第1プライマーの標的結合配列の塩基配列は、特に制限されず、前記標的核酸の配列に応じて適宜設定することができる。前記標的結合配列は、例えば、従来公知の方法により設定でき、通常、前記RNAゲノムにおける前記標的配列が、増幅産物に含まれるように、ストリンジェントな条件下で、前記核酸にハイブリダイズするように設計される。「ストリンジェントな条件」は、例えば、前記第1プライマーとその相補鎖との二重鎖の融解温度Tm(℃)、及び、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度等に依存して決定できる。具体例として、ザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等を参照できる。例えば、使用するプライマーの融解温度よりわずかに低い温度下でハイブリダイゼーションを行なうと、標的核酸配列を有する核酸にプライマーを特異的にハイブリダイズできる。このようなプライマーは、市販のプライマー構築ソフト、例えば、Primer3(Whitehead Institute for Biomedical Research社製)等を用いて設計できる。また、前記「ストリンジェントな条件」は、例えば、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。ストリンジェンシーの程度は、当業者であれば、例えば、温度、塩濃度、プローブの濃度及び長さ、イオン強度、時間等の条件を適宜選択することで、設定可能である。「ストリンジェントな条件」は、例えば、前述したザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載の条件を採用することもできる。
【0030】
本発明において、前記第1プライマー及び後述する第2プライマーの基本骨格は、特に制限されず、例えば、オリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、修飾オリゴヌクレオシド、ポリヌクレオチド、修飾ポリヌクレオチド、ポリヌクレオシド、修飾ポリヌクレオシド、DNA、修飾DNA、RNA、修飾RNA、又は、これらキメラ分子のいずれであっても良いし、その他の構造であっても良い。前記核酸は、例えば、塩基対結合を形成し得るものであればよく、核酸試料や標的核酸配列の場合、例えば、相補鎖合成のための鋳型として機能すればよい。前記第1プライマー及び第2プライマーとしては、前記基本骨格は、例えば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、それらの修飾体であることが好ましい。本発明において、「ヌクレオチド」とは、例えば、デオキシヌクレオチド及びリボヌクレオチドのいずれであってもよく、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、例えば、デオキシヌクレオチド及びリボヌクレオチドのいずれか一方から構成されてもよいし、両者を含んでもよい。本発明において、核酸の構成塩基数は、特に制限されない。核酸という用語は、一般に、ポリヌクレオチドという用語と同義である。オリゴヌクレオチドという用語は、一般に、ポリヌクレオチドの中でも、特に構成塩基数が少ないものを示す用語として用いる。一般には、例えば、2~100塩基長、より一般的には、2~50塩基長程度のポリヌクレオチドを「オリゴヌクレオチド」と呼ぶが、これらの数値に限定されるものではない。ポリヌクレオチドという用語は、本発明において、例えば、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドをも含むものとする。
【0031】
前記RNAポリメラーゼのプロモータ配列は、RNAポリメラーゼに特異的に認識される配列であり、公知のRNAポリメラーゼのプロモータ配列が利用できる。前記RNAポリメラーゼのプロモータ配列の具体例としては、例えば、バクテリオファージT7由来のT7RNAポリメラーゼに特異的に認識されるT7プロモータ配列、バクテリオファージSP6由来のSP6RNAポリメラーゼに特異的に認識されるSP6プロモータ配列等があげられる。前記T7プロモータ配列の具体例として、例えば、配列番号1(5'-aattctaatacgactcactatagggaga-3')に示す塩基配列で表されるポリヌクレオチドがあげられる。前記SP6プロモータ配列の具体例として、例えば、配列番号2(5'-atttaggtgacactatagaa -3')に示す塩基配列で表されるポリヌクレオチドがあげられる。
【0032】
前記逆転写酵素(Reverse Transcriptase)は、一本鎖RNAを一本鎖DNAに転写(逆転写)するDNAポリメラーゼであり、逆転写活性と、RNA分解活性とを有する酵素である。前記逆転写酵素としては、特に制限されず、例えば、公知の逆転写酵素が使用できる。前記逆転写酵素の具体例としては、M-MuLV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、トランスクリプター逆転写酵素、SuperScript(登録商標)トランスクリプター逆転写酵素、又はMultiScribe逆転写酵素などがあげられる。
【0033】
前記第2プライマーは、例えば、一本鎖のポリヌクレオチドであり、前記標的配列の3´側の配列と同じ配列を有すること以外は、特に制限されない。前記「標的配列の3´側の配列と同じ配列を有する」とは、例えば、前記RNAゲノム中の標的配列における、3´末端から5´側に連続する塩基配列と同じ塩基配列を有することを意味する。前記第2プライマーの長さは、特に制限されず、例えば、15~30塩基長、20~30塩基長、22~27塩基長である。前記第2プライマーは、例えば、前記RNAゲノムがセンス鎖である場合、センスプライマーであり、前記RNAゲノムがアンチセンス鎖である場合、アンチセンスプライマーであるが、センスプライマーであることが好ましい。前記RNAゲノムがセンス鎖であり、前記第2プライマーがセンスプライマーである場合、例えば、前記遺伝子増幅工程による遺伝子増幅の特異性を向上することができる。
【0034】
前記(A3)工程で生成される増幅反応テンプレートである二本鎖DNAは、例えば、本発明の遺伝子増幅方法における増幅中間体であり、アンプリコン、増幅反応テンプレートともいう。
【0035】
前記リコンビナーゼは、相同性のあるDNA配列間での組み換え反応を触媒するタンパク質であり、例えば、一般的なRPA(Recombinase Polymerase Amplification)法における公知のリコンビナーゼが使用できる。前記リコンビナーゼの具体例としては、バクテリオファージT4由来のUvsXリコンビナーゼ(UvsX recombinase)、バクテリオファージP1由来のCreリコンビナーゼ(Cre recombinase)、酵母由来のFlpリコンビナーゼ、バクテリオファージφ31由来のインテグラーゼ等があげられる。
【0036】
前記一本鎖DNA結合タンパク質は、一本鎖DNAに特異的に結合するタンパク質であり、SSB(Single-strand DNA-binding protein)ともいう。前記一本鎖DNA結合タンパク質は、例えば、一般的なRPA(Recombinase Polymerase Amplification)法において使用される公知の一本鎖DNA結合タンパク質が使用できる。前記SSBの具体例としては、例えば、大腸菌、ショウジョウバエ、及びアフリカツメガエルに由来する一本鎖DNA結合タンパク質、バクテリオファージT4由来の遺伝子32タンパク質(T4 Gene 32 Protein)、ならびに、この他に、他の種に由来するこれらのタンパク質等があげられる。
【0037】
前記鎖置換DNAポリメラーゼは、鋳型DNAに相補的なDNA鎖を合成していく過程で、その伸長方向に二本鎖領域があった場合に、前記二本鎖領域を解離しながら相補鎖を合成することができるDNA合成酵素、すなわち、鎖置換(strand displacement)能(鎖置換活性)を有するポリメラーゼである。前記鎖置換DNAポリメラーゼは、例えば、一般的なRPA(Recombinase Polymerase Amplification)法において使用される公知の鎖置換DNAポリメラーゼが使用できる。前記鎖置換DNAポリメラーゼは、例えば、常温性、中温性及び耐熱性のいずれであってもよい。また、前記鎖置換能を有するポリメラーゼは、例えば、天然由来酵素でもよく、遺伝子工学等により調製した酵素でもよく、また、人工的に変異を加えた変異体酵素であってもよい。このようなポリメラーゼとしては、例えば、DNAポリメラーゼが好ましく、より好ましくは、実質的に5´→3´エキソヌクレアーゼ活性を有しないDNAポリメラーゼである。前記鎖置換能鎖置換能を有するDNAポリメラーゼの具体例としては、例えば、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus; 以下、「B.st」という)、バチルス・カルドテナックス(Bacillus caldotenax、以下、「B.ca」という)、Bacillus thermostearophilus等の好熱性バチルス属細菌由来DNAポリメラーゼや、それらの5´→3´エキソヌクレアーゼ活性を欠失した変異体、大腸菌(E.coli)由来DNAポリメラーゼIや、そのクレノウフラグメント等があげられる。この他にも、例えば、Vent DNAポリメラーゼ、Vent (Exo-) DNAポリメラーゼ、DeepVent DNAポリメラーゼ、DeepVent (Exo-) DNAポリメラーゼ、Φ29ファージDNAポリメラーゼ、MS-2ファージDNAポリメラーゼ、Z-Taq DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、Pfu turbo DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、9°Nm DNAポリメラーゼ、Therminater DNAポリメラーゼ、Aac DNA ポリメラーゼ、Gca DNA ポリメラーゼ、Bsm DNA ポリメラーゼ等があげられる。
【0038】
また、前記鎖置換DNAポリメラーゼは、例えば、逆転写活性を併せ持つDNAポリメラーゼであってもよい。このような鎖置換DNAポリメラーゼとしては、例えば、BcaBEST DNAポリメラーゼ、Bca(exo-)DNAポリメラーゼ等があげられる。このようなDNAポリメラーゼによれば、例えば、全RNAもしくはmRNAからの逆転写反応とcDNAを鋳型にしたDNAポリメラーゼ反応を1種類のポリメラーゼで行なうことができる。また、DNAポリメラーゼと、MMLV逆転写酵素等の前記逆転写酵素とを組み合わせて使用することもできる。
【0039】
前記遺伝子増幅工程において、前記RNAポリメラーゼは、例えば、DNAの鋳型鎖の塩基配列を読み取って相補的なRNAを合成する転写反応を触媒するDNAポリメラーゼであり、公知のRNAポリメラーゼが使用できる。前記RNAポリメラーゼの具体例としては、例えば、バクテリオファージT7に由来するT7RNAポリメラーゼ、バクテリオファージSP6に由来するSP6RNAポリメラーゼがあげられる。前記T7RNAポリメラーゼは、前記T7プロモータ配列に対し特異性を示す。
【0040】
つぎに、
図1を用いて、前記遺伝子増幅工程の詳細について説明する。
図1は、前記遺伝子増幅工程のメカニズムと主要な工程とを示す模式図である。以下の説明においては、例えば、前記RNAポリメラーゼのプロモータ配列として、T7プロモータ配列を使用し、前記RNAポリメラーゼとして、T7RNAポリメラーゼを使用した場合を例に挙げて説明するが、本発明はこれに制限されない。
【0041】
まず、
図1に示すように、前記(A)増幅反応テンプレート生成工程を実施する。具体的には、ターゲットとなるRNAゲノムの標的配列の3´側に、前記5´側にT7プロモータ配列を含む第1プライマーをハイブリダイズさせ、逆転写酵素を用いて前記第1プライマーの3´側末端を伸長させ、前記RNAゲノム及び伸長DNA鎖の複合二本鎖を生成する(A1、逆転写工程)。
【0042】
つぎに、前記複合二本鎖におけるRNAゲノムを、前記逆転写酵素のRNA分解活性により分解し、前記第1プライマーを含む一本鎖DNAを生成する(A2、一本鎖DNA生成工程)。
【0043】
そして、前記標的配列の3´側の配列と同じ配列を持つ第2プライマーを、前記(A2)工程で生成した一本鎖DNAの前記標的配列と相補的な配列にハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素のDNA合成活性により、前記第2プライマーの3´末端を伸長させて前記第2プライマーを含む一本鎖DNAを生成して前記増幅反応テンプレートである二本鎖DNAを生成させる(A3、二本鎖DNA生成工程)。
【0044】
つぎに、
図1に示す(B)増幅反応テンプレート増加のためのDNA増幅工程と、(C)RNA増幅工程とを実施する。以下、前記(B)DNA増幅工程と、(C)RNA増幅工程とについて順に説明するが、
図1に示すように、前記(B)DNA増幅工程と、(C)RNA増幅工程とは、例えば、並行して反応が進み、並列して実施される工程である。なお、本発明はこれには制限されず、例えば、前記(B)DNA増幅工程と、(C)RNA増幅工程とのいずれか一方が先に実施されてもよい。
【0045】
前記(B)増幅反応テンプレート増加のためのDNA増幅工程は、まず、一本鎖DNA結合タンパク質の存在下、リコンビナーゼにより、前記(A3)で生成された増幅反応テンプレートの二本鎖DNAにおいて、前記第1プライマーを含む一本鎖DNAの3´側に前記第2プライマーをハイブリダイズさせ、かつ、前記第2プライマーを含む一本鎖DNAの3´側に前記第1プライマーをハイブリダイズさせる(B1、プライマーハイブリダイズ工程)。
【0046】
つぎに、前記一本鎖DNA結合タンパク質の存在下、鎖置換DNAポリメラーゼの鎖置換DNA合成活性により、前記第1プライマーの3´末端及び前記第2プライマーの3´末端を伸長させて、前記(A3)の前記増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを生成する(B2、二本鎖DNA生成工程)。ここで、「前記増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを合成する」とは、(B2)工程で生成した前記二本鎖DNAと、前記(A3)で生成した増幅反応テンプレートとが、実質的に同一な二本鎖DNAであることを意味する。前記「実質的に同一」とは、例えば、(B2)工程で生成した前記二本鎖DNAと、前記(A3)で生成した増幅反応テンプレートとにおいて、それぞれのセンス鎖とアンチセンス鎖とが、それぞれ、他方のアンチセンス鎖とセンス鎖に、ハイブリダイズ可能であることを意味する。具体的には、前記(B2)工程で生成した前記二本鎖DNAと、前記(A3)で生成した増幅反応テンプレートとは、互いに完全に同一の配列(フルマッチ)でもよいし、一部の塩基が異なっている配列(ミスマッチ)でもよい。前記ミスマッチにおいては、例えば、2つの配列のうち一方が、他方の配列に対し、塩基の欠失、置換、及び挿入の少なくとも一つにより生じる配列であってもよい。前記配列において、欠失、置換、又は挿入が生じている塩基の数は、前記二本鎖DNA及び増幅反応テンプレートの塩基数の合計に対し、10%未満であることが好ましく、前記完全に同一、すなわち、欠失、置換、又は挿入が生じていないことが特に好ましい。また、前記配列において、欠失、置換、又は挿入が生じている箇所は、例えば、前記配列のC末端を除く。
【0047】
その後、(B2)工程で生成した、増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを用いて、反応停止までの間、(B1)~(B2)を繰り返し、増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを生産する。
【0048】
前記(C)RNA増幅工程は、まず、T7RNAポリメラーゼのRNA合成活性により、前記(A3)の増幅反応テンプレートの二本鎖DNAのT7プロモータよりも3´側下流の配列を鋳型配列として、一本鎖RNAを合成する(C1、一本鎖RNA合成工程)。
【0049】
つぎに、前記(C1)で合成した一本鎖RNAの5´側に、前記第2プライマーをハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素の逆転写活性により、前記第2プライマーの3´末端を伸長させて、前記一本鎖RNA及び伸長DNAの複合二本鎖を生成させる(C2、逆転写工程)
【0050】
つぎに、前記逆転写酵素のRNA分解活性により、前記(C2)で生成した前記複合二本鎖の一本鎖RNAを分解して、一本鎖DNAを生成する(C3、一本鎖DNA生成工程)。
【0051】
そして、前記(C3)で生成した一本鎖DNAの3´側に、前記第1プライマーをハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素のDNA合成活性により、前記第1プライマーの3´末端を伸長させ、かつ、前記第1プライマーの前記T7プロモータ配列を鋳型として前記(C3)の一本鎖DNAの3´末端を伸長させて、前記(A3)で生成した増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを生成する(C4、二本鎖DNA生成工程)。ここで、「前記増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを合成する」とは、(C4)工程で生成した前記二本鎖DNAと、前記(A3)で生成した増幅反応テンプレートとが、実質的に同一な二本鎖DNAであることを意味する。前記「実質的に同一」とは、例えば、(C4)工程で生成した前記二本鎖DNAと、前記(A3)で生成した増幅反応テンプレートとにおいて、それぞれのセンス鎖とアンチセンス鎖とが、それぞれ、他方のアンチセンス鎖とセンス鎖に、ハイブリダイズ可能であることを意味する。具体的には、前記(C4)工程で生成した前記二本鎖DNAと、前記(A3)で生成した増幅反応テンプレートとは、互いに完全に同一の配列(フルマッチ)でもよいし、一部の塩基が異なっている配列(ミスマッチ)でもよい。前記ミスマッチにおいては、例えば、2つの配列のうち一方が、他方の配列に対し、塩基の欠失、置換、及び挿入の少なくとも一つにより生じる配列であってもよい。前記配列において、欠失、置換、又は挿入が生じている塩基の数は、前記二本鎖DNA及び増幅反応テンプレートの塩基数の合計に対し、10%未満であることが好ましく、前記完全に同一、すなわち、欠失、置換、又は挿入が生じていないことが特に好ましい。また、前記配列において、欠失、置換、又は挿入が生じている箇所は、例えば、前記配列のC末端を除く。
【0052】
その後、(C4)工程で生成した、増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを用いて、反応停止までの間、(C1)~(C4)を繰り返し、前記一本鎖RNAと、増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAとを生産する。
【0053】
前記遺伝子増幅工程は、前述のように、(B)DNA増幅工程と(C)RNA増幅工程を組み合わせたことがポイントである。このように、例えば、(B)DNA増幅工程と(C)RNA増幅工程とを並列して実施すると、(B)DNA増幅工程により、増幅反応中間体(アンプリコン)であるテンプレートが供給され、(C)RNA増幅反応の効率が向上すると推察される。ただし、本発明は前記推察になんら制限されない。
【0054】
また、前記遺伝子増幅工程は、例えば、前記(A)、(B)、(C)工程の実施に先立ち、試料から前記RNAゲノムを抽出するRNA抽出工程を含んでもよい。前記試料は、例えば、被験者から採取した生体試料でもよいし、環境中から採取した環境試料でもよい。
【0055】
前記RNA抽出工程において、RNAの抽出方法は、何ら制限されず、例えば、グアニジンイソチオシアネート及びフェノール・クロロホルム抽出等、従来公知の方法が採用できる。また、市販のRNA抽出試薬を用いてもよい。
【0056】
つぎに、前記増幅遺伝子検出工程について説明する。前記増幅遺伝子検出工程は、特に制限されず、例えば、アガロースゲル電気泳動等、公知の増幅遺伝子の検出方法が利用できるが、後述する遺伝子検出方法により実施されることが好ましい。以下、前記増幅遺伝子検出工程の具体例について具体例をあげて説明するが、前記増幅遺伝子検出工程は、以下の例示における遺伝子検出方法の実施には制限されない。前記増幅遺伝子検出工程は、例えば、検出対象物の定量を実施することにより、前記増幅遺伝子を検出してもよい。前記定量は、例えば、リアルタイムPCR、qPCR、次世代シーケンサー(NGS)によるシークエンス等により実施できる。この場合、前記増幅遺伝子検出工程は、例えば、前記検出対象物の定量工程ともいう。
【0057】
前記増幅遺伝子検出工程の具体例について説明する。以下の説明においては、前記遺伝子増幅工程において、例えば、前記第1プライマー及び前記第2プライマーの一方のプライマーは、5´末端に、基板に固定された固定化抗体と特異的に結合可能な抗原が組み込まれたプライマーであり、前記第1プライマー及び前記第2プライマーの他方のプライマーは、5´末端に第1結合体が組み込まれている。前記増幅遺伝子検出工程において、前記遺伝子増幅工程で生成した遺伝子増幅物の前記一方のプライマーの前記抗原は、前記固定化抗体と結合して前記遺伝子増幅物が前記基板に固定され、前記他方のプライマーの前記第1結合体は、前記第1結合体と特異的に結合する第2結合体を含む標識物と前記第2結合体を介して結合することで前記標識物が前記基板に固定され、前記基板に固定された前記標識物を検出する。
【0058】
前記増幅遺伝子検出工程は、例えば、一般的なラテラルフローイムノアッセイ(LFIA)における各種工程、条件、試薬等が参照できる。具体的には、前記増幅遺伝子検出工程は、例えば、後述する実施例に示す方法により実施できる。
【0059】
前記第1プライマー及び前記第2プライマーのいずれか一方の5´側に組み込まれた前記抗原は、特に制限されず、後述する固定化抗体と抗原-抗体複合体を形成可能な公知の抗原であれば特に制限されない。前記抗原の具体例としては、例えばジゴキシン(Digoxin)があげられる。以下の説明において、前記第1プライマー及び前記第2プライマーのうち、前記抗原が組み込まれたプライマーを、例えば、標識化プライマーともいう。
【0060】
前記第1プライマー及び前記第2プライマーのいずれか一方の5´側と、前記抗原との結合は、例えば、直接的な結合でもよいし、間接的な結合でもよい。前記間接的な結合は、例えば、リンカーを介した結合があげられる。
【0061】
前記固定化抗体は、例えば、前記第1プライマー又は第2プライマーに結合された抗原に結合可能、すなわち、前記抗原-抗体複合体を形成可能な抗体であれば特に制限されない。前記抗原が、例えば、前記ジゴキシンである場合、前記抗体は、抗ジゴキシン抗体があげられる。前記基板への前記固定化抗体の固定化方法は、特に制限されず、例えば、塗布装置等を用いて、前記基板の前記多孔質体上に前記固定化抗体を含む抗体液を塗布し、乾燥機等により風乾させる等、従来公知の方法を用いることができる。
【0062】
前記第1結合体は、後述する第2結合体と特異的に結合可能な物質であれば特に制限されず、例えば、ビオチン(Biotin)又はビオチン類縁体があげられる。前記ビオチン類縁体は、例えば、デスチオビオチン等があげられる。以下の説明において、前記第1結合体がビオチンである場合、前記第1プライマー及び前記第2プライマーのうち、前記第1結合体が組み込まれたプライマーを、ビオチン化プライマーともいう。
【0063】
前記第1プライマー及び前記第2プライマーのいずれか一方の5´側と、前記第1結合体との結合は、例えば、直接的な結合でもよいし、間接的な結合でもよい。前記間接的な結合は、例えば、リンカーを介した結合があげられる。
【0064】
前記第2結合体は、前記第1結合体と特異的に結合可能なものであれば特に制限されず、前記第1結合体がビオチンである場合、例えば、アビジン又はアビジン類縁体があげられる。前記アビジン類縁体は、例えば、ストレプトアビジン、ニュートアビジン等があげられる。
【0065】
前記標識物は、例えば、前記第2結合体が表面に固定された着色微粒子である。前記着色微粒子としては、特に制限されず、例えば、着色ラテックス粒子、金属コロイド粒子、着色ポリメチルメタクリレート粒子、着色ポリ乳酸粒子、着色多孔性ガラス粒子、着色シリカ粒子、着色アガロース粒子、着色デキストラン粒子等があげられる。前記着色ラテックス粒子としては、特に限定されず、例えば、青色ラテックス粒子、赤色ラテックス粒子等があげられる。前記金属コロイド粒子としては、特に限定されず、例えば、金コロイド粒子、白金コロイド粒子等があげられる。前記着色微粒子の平均粒子径は、特に限定されず、前記着色ラテックス粒子の場合には、例えば、0.05μm~5μmの範囲であり、好ましくは、0.1μm~1μmの範囲であり、前記金属コロイド粒子の場合には、例えば、2nm~100nmの範囲であり、好ましくは、10nm~50nmの範囲である。
【0066】
前記基板は、例えば、公知のラテラルフローイムノアッセイに使用する基板が使用できる。前記基板は、例えば、支持体と、多孔質体である多孔質膜と、コンジュゲートパッドと、サンプルパッドとを備え、前記支持体上に、前記支持体より長さの短い前記多孔質膜が配置され、前記多孔質膜の表面上の一端に前記コンジュゲートパッドが配置され、前記コンジュゲートパッドにおける、前記多孔質膜が配置された側と反対側の他端に、前記サンプルパッドが配置されている。前記サンプルパッドは、前記遺伝子増幅工程で生成した前記遺伝子増幅物を含む検体が供給される検体供給部であり、前記サンプルパッド側が、前記検体の流れの上流側となる。前記多孔質膜の表面には、上流側から順に、前記固定化抗体が固定された検出部が形成され、前記コンジュゲートパッドが配置された側とは反対側の他端には、例えば、吸収パッドが配置されている。前記コンジュゲートパッドは、その全体が前記多孔質膜上に載っていてもよいし、一部のみが前記多孔質膜上に載っていてもよい。また、前記サンプルパッドは、その全体が前記コンジュゲートパッドに載っていてもよいし、一部のみが前記コンジュゲートパッドに載っていてもよい。
【0067】
前記支持体の材質は、特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、酢酸セルロース等が挙げられる。また、前記支持体の形状としては、特に制限されず、例えば、フィルム状、シート状、板状等が挙げられる。前記支持体の形及び大きさは、特に制限されず、その他の構成等に応じて、適宜設定できる。
【0068】
前記多孔質膜は、毛細管作用を奏するものであれば特に限定されず、例えば、セルロース膜、酢酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース誘導体膜、ガラスフィルター、濾紙等が挙げられる。本発明において、前記多孔質膜の形状は、特に限定されず、例えば、長方形、円形等が挙げられる。本発明において、前記多孔質膜の大きさは、特に制限されず、適宜設定できる。本発明において、前記多孔質体は、前記多孔質膜に限られず、例えば、ポリマービーズ、ガラスビーズ、二酸化チタン、セルロース、塩類、疎水化多糖類等の粒状物質又は微粒子粉末等であってもよく、多孔質構造であれば特に制限されない。本発明において、前記多孔質体の形状及び大きさは、特に制限されず、適宜設定できる。前記多孔質膜は、例えば、常法により前記支持体上に配置でき、具体的には、両面テープや接着剤を用いて、前記支持体上に固定できる。
【0069】
前記コンジュゲートパッドの材質としては、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、グラスファイバー、レーヨン、ナイロン、紙、セルロース等が挙げられる。前記コンジュゲートパッドの形状及び大きさは、特に制限されず、適宜設定できる。前記コンジュゲートパッドには、例えば、前記第2結合体を含む前記標識物が保持されている。
【0070】
本発明の検出対象物の検出方法は、前記捕捉工程および前記収集工程により、例えば、迅速かつ簡便に試料中の検出対象物を濃縮、収集できる。既存のPEG沈殿を利用した検出対象物(例えば、ウイルス)の濃縮方法は、下水からウイルスを検出可能にするための処理(濃縮処理)に3日~7日程度と長期間を要する。これに対し、本発明の検出対象物の検出方法は、後述する実施例に示すように、前記捕捉工程および前記収集工程をわずか20~30分程度の短時間で実施できる。また、本発明の検出方法において、前記遺伝子増幅工程が、例えば、前記RICCA反応である場合、前記遺伝子増幅工程についても、安価且つ短時間で実施することができる。このため、本発明の検出対象物の検出方法によれば、試料から検出対象物を安価且つ短時間で検出できる。
【0071】
<排水監視方法>
本発明の排水監視方法は、前述のように、本発明の検出対象物の検出方法を含む。本発明の排水監視方法は、例えば、前記本発明の検出対象物の検出方法を含むことが特徴であり、その他の構成及び工程は、特に制限されない。本発明の排水監視方法は、前記本発明の検出対象物の検出方法の記載を援用できる。本発明の排水監視方法によれば、例えば、容易に排水の監視が可能である。本発明の排水監視方法によれば、例えば、排水中の検出対象物(例えば、コロナウイルス)のモニタリングを容易に実施できる。例えば、本発明の排水監視方法を飛行機、列車(例えば、新幹線)、船などの移動体の排水の監視に適用することにより、例えば、飛行機等の前記移動体中での感染症の蔓延を予測することも可能となる。
【0072】
<検出対象物検出キット>
本発明の検出対象物検出キット(以下、「本発明のキット」ということがある)は、前述のように、捕捉剤と、遺伝子検出剤とを含む。本発明の検出対象物検出キットによれば、例えば、前記本発明の検出対象物の検出方法を容易且つ簡便に実施することができる。前記捕捉剤は、例えば、前述の本発明の対象物検出方法の記載を援用できる。前記捕捉剤は、例えば、市販の試薬を含んでもよい。前記市販の試薬は、例えば、Ceres Nanosciences社のNanotrap(登録商標) Microbiome Particles等があげられる。
【0073】
前記遺伝子検出剤は、例えば、遺伝子増幅剤を含む。前記遺伝子増幅剤は、例えば、下記の(a1)から(a3)、(b1)から(b3)及び(c1)を含む。
(a1)前記逆転写酵素;
(a2)前記第1プライマー;
(a3)前記第2プライマー;
(b1)前記リコンビナーゼ;
(b2)前記一本鎖DNA結合タンパク質;
(b3)前記鎖置換DNAポリメラーゼ;
(c1)前記RNAポリメラーゼ。
【0074】
前記遺伝子増幅剤は、前記(a1)から(a3)、(b1)から(b3)及び(c1)を含むことが特徴であって、その他の構成及び条件は、特に制限されない。前記逆転写酵素、前記第1プライマー、前記第2プライマー、前記リコンビナーゼ、前記一本鎖DNA結合タンパク質、前記鎖置換DNAポリメラーゼ、前記RNAポリメラーゼは、特に制限されず、前記本発明の対象物検出方法の記載を援用できる。
【0075】
本発明のキットは、前記(a1)から(a3)、(b1)から(b3)及び(c1)以外のその他の構成を含んでもよい。前記その他の構成は、例えば使用説明書があげられる。また、本発明のキットは、さらに、例えば、dNTP mix(dATP、dTTP、dCTP、dGTP)等の基質;トリス塩酸バッファー、トライシンバッファー、リン酸ナトリウムバッファー、リン酸カリウムバッファー等の緩衝液;塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等の触媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)やベタイン(N,N,N-trimethylglycine)等の添加物;陽イオン錯体;酵素安定剤等を含んでもよい。前記酵素安定剤としては、特に制限されず、例えば、グリセロール、ウシ血清アルブミン、糖類等があげられ、中でも、糖類が好ましく、より好ましくは単糖又はオリゴ糖、より好ましくは、トレハロース、ソルビトールもしくはマンニトール、又はこれらの2種以上の混合物があげられる。また、本発明のキットは、さらに、融解温度調整剤を含んでもよい。前記融解温度調整剤としては、例えば、DMSO、ベタイン、ホルムアミドもしくはグリセロール、又はこれらの任意の組合せ等があげられ、好ましくは、DMSOである。本発明のキットにおいて、これらの試薬の割合等は特に制限されず、当業者が適宜決定できる。本発明のキットは、例えば、市販の試薬を含んでもよく、前記市販の試薬の具体例として、例えば、Twist Amp(登録商標) Basicキット(TwistDx社)等があげられる。
【0076】
本発明のキットにおいて、前記捕捉剤、前記遺伝子検出剤(前記(a1)から(a3)、(b1)から(b3)及び(c1))、及び前記その他の構成等の各試薬は、それぞれ別個の容器に収容されていてもよいし、同じ容器に収容されていてもよい。本発明のキットは、例えば、本発明の検出対象物の検出方法に使用するための、対象物検出用試薬ということもできる。
【0077】
また、本発明の対象物の検出方法において、前記遺伝子増幅方法が、前記RNA抽出工程を含む場合、本発明のキットは、例えば、さらに、市販のRNA抽出試薬を含んでもよい。
【0078】
また、前記遺伝子検出剤は、例えば、増幅遺伝子検出剤を含んでもよい。前記増幅遺伝子検出剤は、例えば、(d1)から(d3)を含む。
(d1)前記固定化抗体;
(d2)基板;
(d3)標識物。
【0079】
前記逆転写酵素、前記第1プライマー、前記第2プライマー、前記リコンビナーゼ、前記一本鎖DNA結合タンパク質、前記鎖置換DNAポリメラーゼ、前記RNAポリメラーゼ、前記固定化抗体、前記基板、前記標識物は、特に制限されず、前記本発明の対象物の検出方法の記載を援用できる。
【0080】
<排水監視キット>
本発明の排水監視キットは、前述のように、本発明の検出対象物検出キットを含む。本発明の排水監視キットは、例えば、前記本発明の検出対象物検出キットを含むことが特徴であり、その他の構成は、特に制限されない。本発明の排水監視キットは、前記本発明の検出対象物の検出方法および検出キットの記載を援用できる。本発明の排水監視キットによれば、例えば、本発明の排水監視方法を容易に実施できる。
【実施例0081】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
【0082】
[実施例1]
本発明の検出対象物の検出方法により、ウイルスを検出可能なことを確認した。
【0083】
(1)試料の調製
まず、生理食塩水に、検出対象物として、ウイルス(SARS-CoV-2、アメリカン タイプ カルチャー コレクション(ATCC:American Type Culture Collection)から入手)を、その濃度が10,000copies/ml、1,000copies/ml、または100copies/mlとなるように添加し、試料1~3(試料1:10,000copies/ml、試料2:1,000copies/ml、試料3:100copies/ml)を作成した。
【0084】
(2)実施例
つぎに、本発明の対象物の検出方法により、前記(1)で調製した試料中の検出対象物(ウイルス)を検出した。
【0085】
(2-1)捕捉工程
捕捉工程および収集工程は、Ceres Nanosciences社のNanotrap(登録商標)キットを用い、そのプロトコル(APP-034、参考URL:https://www.ceresnano.com/_files/ugd/f7710c_215bb60d02c04572ae60153e24770650.pdf)に従って実施した。まず、試料1~3をそれぞれ、シリンジで50mlコニカルチューブに30mlずつ分注し、各試料を室温(約25℃)で45秒間静置した。つぎに、各試料1~3を含む前記コニカルチューブに、300μlのNanotrap(登録商標) Enhancement Reagent 2(ER2)を添加し、数秒間十分に混合した。つぎに、混合後の各試料を含む前記コニカルチューブに、Nanotrap(登録商標) Magnetic Virus Particles(磁性担体にウイルス特異的結合体が結合した複合体)を150μl加え、2~3回転倒させて粒子を混合した。つぎに、前記混合後の試料1~3について、室温(25℃)で10分間インキュベートし、その間、五分経過時点で2~3回転倒混和した。これにより、試料中のウイルスを前記複合体と接触させ、特異的に結合させた。
【0086】
(2-2)収集工程
(2-1)の後、前記チューブをマグネットラック((IBA Lifesciences GmbH、ドイツ)上に置き、前記複合体(検出対象物と結合させたMagnetic Virus Particles)をペレット化した。ピペットを用いて、前記ペレットを崩さないようにして上清を廃棄し、前記チューブに500μlのmolecular grade waterを添加して前記ペレットを再懸濁させた。懸濁液を1.5mlのマイクロチューブに移した。その後、マグネットラック(MagneSphere(登録商標) Technology Magnetic Separation Stands, Promega)による分離、上清除去、再懸濁を繰り返して、前記複合体を試料から分離させて収集した。その後、ピペットにより、前記ペレットを崩さないように、前記チューブ中の上清をすべて除去した。
【0087】
(2-3)遺伝子検出工程
(2-3-1)RNA抽出工程
(2-2)収集工程にて得られたペレットから核酸(RNA)を抽出した。具体的に、まず、試料1~3のペレットに、それぞれ、7μlの1×PBSおよび23μlのQIAamp Viral RNA Mini KitのBuffer AVEを添加し、30秒間のボルテックス処理を行った。その後、室温で5分間インキュベートし、さらに、95℃で5分間インキュベートし、各試料のRNAテンプレートとした。
【0088】
(2-3-2)遺伝子増幅工程
(A)増幅反応テンプレート増加のためのDNA増幅工程
つぎに、PCRチューブに、前記RNAテンプレート5μl、基質保存溶液10μl、10μlのプライマー保存溶液と、酵素原液5μlを添加し、41℃で30分間インキュベートして反応混合物を調製した。
【0089】
前記基質保存溶液の組成は、17.6μlのヌクレアーゼフリーウォーター(NFW)、5.6μlの1M MgCl2、19.8μlの1.9M Tris HCl(pH8.6)、0.6μlの40U/μlのRNase Inhibitor、3.3μlの100mM DTT、41.3μlの2.0mM dNTP、17.1μlの58mM NTP、4.8μLの250mM ITPであった。
前記プライマー保存溶液の組成は、32.5μlのNFW、21.5μlの2M KCl、6.6μlの50μMセンスフォワードプライマー(フォワードプライマー1)、6.6μlの50μM T7プロモータを5´側配列に含むアンチセンスリバースプライマー(リバースプライマー2)、及び42.9μlジメチルスルホキシドであった。前記酵素保存溶液の組成は、10 mg/ml Bovine Serum Albumin 4.0 μl、20,000 unit/ml AMV Reverse Transcriptase (Life sciences Inc, Petersburg, FL)4.4 μl、60% Sorbitol 11.1 μl、T7 RNA Polymerase Solution (Toyobo)35.5 μlであった。
【0090】
以下に、遺伝子増幅工程で使用したプライマー配列を示す。下記に示すプライマーの塩基配列において、下線部で示す配列は、T7プロモータ配列である。なお、プライマーセット(フォワードプライマー1およびリバースプライマー2)は、Eurofins Genomics, Tokyo, Japanから購入した。なお、下記のプライマーセットは、SARS-CoV-2(MN908947.3)の配列28195-29358領域を増幅ターゲットとした配列である。
フォワードプライマー1(配列番号3)
5´-GTTGTTCGTTCTATGAAGAC-3´
リバースプライマー2(配列番号4)
5´-AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAGATCTGGTTACTGCCAGTTGAATCTG-3´
【0091】
(B)DNA増幅工程及び(C)RNA増幅工程
前記(B)DNA増幅工程及び(C)RNA増幅工程は、市販の試薬(TwistAmp(登録商標) Basicキット(TwistDx, Cambridge, MA))を使用して実施した。具体的には、得られた増幅産物のそれぞれについて、5μlのプローブミックス(10μMジゴキシン修飾プローブ及び10μMビオチン修飾プローブ)及び29.5μlのプライマーフリーの補液バッファーと混合した。つぎに、前記混合後の混合液(49.5μl)に、TwistAmp(登録商標) Basicキットに付属する乾燥酵素ペレットを添加し、さらに、2.5μlの280mM酢酸マグネシウムを加えて反応を開始し、41℃、10分間の条件で静置し、これらを、実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3の増幅産物とした。
ジゴキシン修飾プローブ(配列番号5)
5´-Digoxigenin-CGTTCTATGAAGACTTTTTAGAGTATCATG-3´
ビオチン修飾プローブ(配列番号6)
5´-CCAAAATCAGCGAAATGCACCCCGCATTAC- Biotin-3´
【0092】
(2-3-3)増幅遺伝子検出工程
つぎに、実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3の増幅産物について、ラテラルフローディップスティック(LFD)を用い、ラテラルフローイムノアッセイに供した。前記LFDは、金コロイド標識ストレプトアビジンを含むコンジュゲートパッドと、抗ジゴキシン抗体を固定化したメンブレンフィルターとを含む基板(ラテラルフローストリップ(旭化成株式会社製))に、サンプル添加部と、検出部とを有するカバー(BioSeeds社製)を取り付けて作成したものを用いた。そして、90μLのNFWに、前記増幅産物5μl又は、ネガティブコントロール(ゲノムRNAサンプルを含まない増幅産物)5μlを添加し、前記混合物をそれぞれ、前記LFDストリップ上のサンプルパッドへ添加した。その後、5~10分間静置し、前記LFDの検出部における発色の有無により、検出の可否を判定した。
【0093】
(3)比較例
つぎに、比較例の検出方法について説明する。比較例の検出方法は、前記(1)の試料1~3について、前記(2-1)捕捉工程および(2-2)収集工程に代えて、下記参考文献2に記載のPEG沈殿法により検体の濃縮を実施し、RNA抽出手法を変更した以外は、実施例の検出方法と同様とした。具体的に、比較例の検出方法について説明する。まず、50mlチューブに、各試料1~3のいずれかを40ml、PEG8000(和光純薬,593-09765)を4g、およびNaCl(和光純薬,191-01665)を2.35g、それぞれ添加した。つぎに、混合物を冷却機能付き振とう機に入れ、4℃で一晩インキュベートして平衡化した。その後、混合物を10,000×gで30分間遠心分離し、遠心分離後のペレットを500μlのリン酸緩衝液に懸濁し、遠心分離後、上清は廃棄した。そして、ペレットを-80℃で1日静置した。比較例の検出方法においては、PEG沈殿法により検体の濃縮を行ったため、遺伝子検出工程の実施までに2.5日を要した。そして、(2-3-1)のRNA抽出工程に代えて、リン酸緩衝液中のPEG懸濁液をQIAamp Viral RNA Mini Kitを用いてRNA抽出処理を行った以外は同様にして、(2-3)遺伝子検出工程を実施し、比較例1-1、比較例1-2、比較例1-3の増幅産物とした。そして、前記LFDの検出部における発色の有無により、検出の可否を判定した。
(参考文献2:公益社団法人、日本水環境学会タスクフォース「下水中の新型コロナウイルス遺伝子検出マニュアル」、公益財団法人日本下水道新技術機構、2021年3月、URL:<https://www.jswe.or.jp/aboutus/pdf/SARS-CoV-2_RNA_Detection_Manual_for_Wastewater.pdf>)
【0094】
(4)検出結果
前記実施例(実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3)および比較例(比較例1-1、比較例1-2、比較例1-3)の検出結果を
図2に示す。
図2は、ラテラルフローイムノアッセイの結果を示す写真である。
図2において、各スティックは、左から、実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3、比較例1-1、比較例1-2、比較例1-3の結果を示す。
図2において、検出されたターゲットバンドについて枠で囲って示す。
図2に示すように、本発明の対象物の検出方法は、検出対象物(ウイルス)を検出可能であることが分かった。また、前述のように、比較例においては、PEG沈殿法に2.5日サンプルの濃縮から検出結果を得るまでに2.5日を要した。これに対し、本発明の検出方法によれば、捕捉工程および収集工程に15分程度、検出結果を得るまでの合計時間は30~60分でよいことがわかった。
【0095】
(5)定量
さらに、実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3、比較例1-1、比較例1-2、比較例1-3のそれぞれについて、QuantStudio(登録商標)5 リアルタイムPCRシステム(ThermoFisher社)を使用し、RT-qPCRを実施した。qPCRは、SARS-CoV-2のN1遺伝子およびN2遺伝子をターゲットとして、下記のプライマーセットおよびSuperScript(商標) III Platinum(登録商標) CellsDirect One-Step qRT-PCR Master Mix (Invitrogen -Thermo Fisher Scientific, USA) を用いて実施した。反応条件は、添付のプロトコルに従って実施した。内在性コントロールは、ヒトRNasePとした。なお、Ct値は、前記qPCR装置に組み込まれているソフトウェアを用い、自動設定により決定した。
CDC N1 Forwardプライマー(配列番号7)
5´-GACCCCAAAATCAGCGAAAT-3´
CDC N1 Reverseプライマー(配列番号8)
5´-TCTGGTTACTGCCAGTTGAATCTG-3´
CDC N1 Probeプライマー(配列番号9)
5´-HEX-ACCCCGCATTACGTTTGGTGGACC-BHQ1-3´
プローブの5’側は、HEXで標識し、3’側は、BHQ1で標識した。
CDC N2 Forwardプライマー(配列番号10)
5´-TTACAAACATTGGCCGCAAA-3´
CDC N2 Reverseプライマー(配列番号11)
5´-GCGCGACATTCCGAAGAA-3´
Probe(配列番号12)
5´-Cy5-ACAATTTGCCCCCAGCGCTTCAG-BHQ1-3´
プローブの5’側は、Cy5で標識し、3’側は、BHQ1で標識した。
Human RNaseP Forward プライマー (配列番号13)
5´-AGATTTGGACCTGCGAGCG-3´
Human RNaseP Reverseプライマー(配列番号14)
5´-GAGCGGCTGTCTCCACAAGT-3´
Probe (配列番号15)
5´-FAM-TTCTGACCTGAAGGCTCTGCGCG-BHQ1-3´
プローブの5’側は、FAMで標識し、3’側は、BHQ1で標識した。
【0096】
増幅時の増幅曲線立ち上がり値(サイクル閾値:Ct値)を下記表1に示す。下記表1は、各試料について、3回分のqPCR反応を行い、それぞれのCt値と、その平均値とを示す。下記表1に示すように、実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3、のいずれも、比較例1-1、比較例1-2、比較例1-3と同程度のCt値であった。このため、本発明の対象物検出方法によれば、比較例(既存の検出方法)と同程度の感度で対象物を検出可能なことがわかった。
【表1】
【0097】
[実施例2]
本発明の検出対象物の検出方法により、下水からウイルスを検出可能なことを確認した。
【0098】
前記実施例1の(1)において、生理食塩水に代えて、汚水(金沢市で採取)を使用した以外は前記実施例1の(1)と同様にして、実施例2の試料(試料1:10,000copies/ml、試料2:1,000copies/ml、試料3:100copies/ml)を作成した。つぎに、前記実施例2の試料について、前記実施例1の実施例および比較例と同様にして、実施例の増幅産物と比較例の増幅産物を得て、LFDにより検出の可否を判定した。実施例2において、本発明の対象物検出方法(前記実施例1の(2)の各工程)により処理した試料を、実施例2-1、実施例2-2、実施例2-3とし、比較例(前記実施例1の(3)の各工程)により処理した資料を、比較例2-1、比較例2-2、比較例2-3とした。また、試料1~3(汚水とウイルスの混合物)に代えて、生理食塩水を用いて比較例の検出方法を実施した結果をネガティブコントロールとした。結果を
図3に示す。
【0099】
図3は、ラテラルフローイムノアッセイの結果を示す写真である。
図3において、各スティックは、左から、実施例2-1、実施例2-2、実施例2-3、比較例2-1、比較例2-2、比較例2-3、およびネガティブコントロールの結果を示す。
図3において、検出されたターゲットバンドについて枠で囲って示す。
図3に示すように、本発明の対象物の検出方法は、検出対象物(ウイルス)を検出可能であることが分かった。また、前述のように、比較例においては、PEG沈殿法に2.5日サンプルの濃縮から検出結果を得るまでに2.5日を要した。これに対し、本発明の検出方法によれば、試料が下水であっても、捕捉工程および収集工程に15分程度、検出結果を得るまでの合計時間は30~60分でよいことがわかった。
【0100】
さらに、実施例2-1、実施例2-2、実施例2-3について、モバイルリアルタイムPCR装置 PicoGene(登録商標) PCR 1100(日本板硝子株式会社)を使用し、RT-qPCRを実施した。また、比較例2-1、比較例2-2、比較例2-3については、前記モバイルリアルタイムPCR装置 PicoGene(登録商標) PCR 1100と、QuantStudio(登録商標)5 リアルタイムPCRシステム(ThermoFisher社)とを使用し、RT-qPCRを実施した。qPCRは、SARS-CoV-2のN1遺伝子およびN2遺伝子をターゲットとして、下記のプライマーセットおよびSuperScript(商標) III Platinum(登録商標) CellsDirect One-Step qRT-PCR Master Mix (Invitrogen -Thermo Fisher Scientific, USA) を用いて実施した。反応条件は、添付のプロトコルに従って実施した。内在性xコントロールは、ヒトRNasePとした。なお、Ct値は、前記qPCR装置に組み込まれているソフトウェアを用い、自動設定により決定した。
CDC N1 Forwardプライマー(配列番号7)
5´-GACCCCAAAATCAGCGAAAT-3´
CDC N1 Reverseプライマー(配列番号8)
5´-TCTGGTTACTGCCAGTTGAATCTG-3´
CDC N1 Probeプライマー(配列番号9)
5´-HEX-ACCCCGCATTACGTTTGGTGGACC-BHQ1-3´
プローブの5’側は、HEXで標識し、3’側は、BHQ1で標識した。
CDC N2 Forwardプライマー(配列番号10)
5´-TTACAAACATTGGCCGCAAA-3´
CDC N2 Reverseプライマー(配列番号11)
5´-GCGCGACATTCCGAAGAA-3´
Probe(配列番号12)
5´-Cy5-ACAATTTGCCCCCAGCGCTTCAG-BHQ1-3´
プローブの5’側は、Cy5で標識し、3’側は、BHQ1で標識した。
Human RNaseP Forward プライマー (配列番号13)
5´-AGATTTGGACCTGCGAGCG-3´
Human RNaseP Reverseプライマー(配列番号14)
5´-GAGCGGCTGTCTCCACAAGT-3´
Probe (配列番号15)
5´-FAM-TTCTGACCTGAAGGCTCTGCGCG-BHQ1-3´
プローブの5’側は、FAMで標識し、3’側は、BHQ1で標識した。
【0101】
結果を
図4に示す。
図4は、実施例の増幅産物(実施例2-1、実施例2-2、実施例2-3)のqPCR結果を示すグラフである。
図4に示すように、本発明の検出対象物の検出方法は、いずれの試料を用いてもウイルスRNAの検出が可能であった。また、実施例2-1および実施例2-2ならびに比較例2-1および比較例2-2の増幅時の増幅曲線立ち上がり値(サイクル閾値:Ct値)を下記表2に示す。下記表2に示すように、実施例2-1、実施例2-2のいずれも、比較例2-1、比較例2-2と同程度のCt値であった。このため、本発明の対象物検出方法によれば、比較例(既存の検出方法)と同程度の感度で対象物を検出可能なことがわかった。また、下記表2に示すように、qPCR装置の違いによるCt値の違いも小さいことがわかった。このため、定量を行う際には、PicoGene(登録商標)1100を用いることで、より迅速に対象物を検出できることがわかった。
【表2】
【0102】
[実施例3]
本発明の検出対象物の検出方法により、下水中からウイルスを検出可能なことを確認した。
【0103】
ウイルス検出対象の試料として、金沢市の三か所((A)、(B)、(C))から、下水サンプルを入手した。入手した下水サンプルは、試験まで-80℃で保管した。入手した下水サンプルを、シリンジで50mlコニカルチューブに30mlずつ分注し、各試料を室温(約25℃)で45秒間静置し、下水サンプル(A)、(B)、(C)を作成した。また、コントロールとして、下水サンプル(A)に、ウイルス(SARS-CoV-2、アメリカン タイプ カルチャー コレクション(ATCC:American Type Culture Collection)から入手)を、その濃度が100,000copies/mlとなるように添加したサンプルを作成した。つぎに、下水サンプル(A)、(B)、(C)およびコントロールのサンプルについて、前記実施例1の実施例と同様にして、実施例3の増幅産物(増幅産物A、増幅産物B、増幅産物C、およびコントロール)を得た。そして、実施例3の増幅産物(増幅産物A、増幅産物B、増幅産物C、およびコントロール)について、モバイルリアルタイムPCR装置 PicoGene(登録商標) PCR 1100(日本板硝子株式会社)を使用し、RT-qPCRを実施した。qPCRは、SARS-CoV-2のN1遺伝子およびN2遺伝子をターゲットとして、下記のプライマーセットおよびSuperScript(商標) III Platinum(登録商標) CellsDirect One-Step qRT-PCR Master Mix (Invitrogen -Thermo Fisher Scientific, USA) を用いて実施した。反応条件は、SuperScript(商標) III Platinum(登録商標) CellsDirect One-Step qRT-PCR Master Mixのプロトコルに従って実施した。また、下水中の糞便濃度を確認するため、内在性コントロールは、トウガラシ微斑ウイルス(Pepper mild mottle virus,PMMoV)とした。
CDC N1 Forwardプライマー(配列番号7)
5´-GACCCCAAAATCAGCGAAAT-3´
CDC N1 Reverseプライマー(配列番号8)
5´-TCTGGTTACTGCCAGTTGAATCTG-3´
CDC N1 Probeプライマー(配列番号9)
5´-HEX-ACCCCGCATTACGTTTGGTGGACC-BHQ1-3´
プローブの5’側は、HEXで標識し、3’側は、BHQ1で標識した。
CDC N2 Forwardプライマー(配列番号10)
5´-TTACAAACATTGGCCGCAAA-3´
CDC N2 Reverseプライマー(配列番号11)
5´-GCGCGACATTCCGAAGAA-3´
Probe(配列番号12)
5´-Cy5-ACAATTTGCCCCCAGCGCTTCAG-BHQ1-3´
プローブの5’側は、Cy5で標識し、3’側は、BHQ1で標識した。
PMMoV Forwardプライマー(配列番号16)
5´-GAGTGGTTTGACCTTAACGTTTGA-3´
PMMoV Reverseプライマー(配列番号17)
5´-TTGTCGGTTGCAATGCAAGT-3´
Probe (配列番号18)
5´-FAM-CCTACCGAAGCAAATG-MGBEQ-3´
プローブの5’側は、FAMで標識し、3’側は、MGBEQで標識した。
【0104】
定量結果を
図5に示し、増幅時の増幅曲線立ち上がり値(サイクル閾値:Ct値)を下記表3に示す。
図5は、実施例の増幅産物(実施例3-1、実施例3-2、実施例3-3、およびコントロール)のqPCR結果を示すグラフであり、表3は、増幅時の増幅曲線立ち上がり値(サイクル閾値:Ct値)を示す。
図5および表3に示すように、いずれの下水サンプルであっても、ウイルスを検出可能であった。このため、本発明の対象物検出方法によれば、下水サンプルから検出対象物を検出可能であることがわかった。
【表3】
【0105】
以上、実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0106】
<付記>
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
捕捉工程、収集工程、及び、遺伝子検出工程を含み、
前記捕捉工程は、検出対象の試料を捕捉剤と接触させる試料接触工程を含み、
前記捕捉剤は、磁性担体に親和性物質が結合した複合体であり、
前記親和性物質は、前記検出対象に対し親和性を有し、
前記収集工程は、磁気を使用して前記捕捉剤を収集する工程を含み、
前記遺伝子検出工程は、前記収集された前記捕捉剤に捕捉された検出対象物の遺伝子を特異的に増幅して検出する遺伝子増幅工程を含み、
前記遺伝子増幅工程は、RNAゲノム中の標的配列の等温遺伝子増幅方法により実施され、
前記等温遺伝子増幅方法は、下記の(A)増幅反応テンプレート生成工程、(B)前記増幅反応テンプレートの増加のためのDNA増幅工程、及び、(C)RNA増幅工程、を含む検出対象物の検出方法:
(A)下記の(A1)から(A3)の各工程を含む前記増幅反応テンプレート生成工程:
(A1) 5´側にRNAポリメラーゼのプロモータ配列を含み、かつ、3´側に前記RNAゲノム中の前記標的配列の5´側の配列と相補的な相補配列を含む第1プライマーを、前記RNAゲノム中の前記標的配列の5´側の前記配列にハイブリダイズさせ、逆転写酵素による逆転写活性により、前記第1プライマーの3´末端を伸長させて、前記RNAゲノム及び伸長DNA鎖の複合二本鎖を生成させる逆転写工程;
(A2) 前記(A1)で形成された前記複合二本鎖の前記RNAゲノムを、前記逆転写酵素のRNA分解活性により分解して、前記第1プライマーを含む一本鎖DNAを生成する一本鎖DNA生成工程;
(A3) 前記標的配列の3´側の配列と同じ配列を持つ第2プライマーを、前記(A2)工程で生成した一本鎖DNAの前記標的配列と相補的な配列にハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素のDNA合成活性により、前記第2プライマーの3´末端を伸長させて前記第2プライマーを含む一本鎖DNAを生成して前記増幅反応テンプレートである二本鎖DNAを生成させる二本鎖DNA生成工程;
(B)下記の(B1)及び(B2)の各工程を含む前記増幅反応テンプレート増加のためのDNA増幅工程:
(B1)一本鎖DNA結合タンパク質の存在下、リコンビナーゼにより、前記(A3)の増幅反応テンプレートの二本鎖DNAにおいて、前記第1プライマーを含む一本鎖DNAの3´側に前記第2プライマーをハイブリダイズさせ、かつ、前記第2プライマーを含む一本鎖DNAの3´側に前記第1プライマーをハイブリダイズさせる、プライマーハイブリダイズ工程;
(B2)前記一本鎖DNA結合タンパク質の存在下、鎖置換DNAポリメラーゼの鎖置換DNA合成活性により、前記第1プライマーの3´末端及び前記第2プライマーの3´末端を伸長させて、前記(A3)の前記増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを生成する二本鎖DNA生成工程;
(C)下記の(C1)から(C4)の各工程を含むRNA増幅工程:
(C1)RNAポリメラーゼのRNA合成活性により、前記(A3)の増幅反応テンプレートの二本鎖DNAのRNAポリメラーゼのプロモータ配列よりも3´側下流の配列を鋳型配列として、一本鎖RNAを合成する一本鎖RNA合成工程;
(C2)前記(C1)の一本鎖RNAの5´側に、前記第2プライマーをハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素の逆転写活性により、前記第2プライマーの3´末端を伸長させて、前記一本鎖RNA及び伸長DNAの複合二本鎖を生成させる逆転写工程;
(C3)前記逆転写酵素のRNA分解活性により、前記(C2)の前記複合二本鎖の一本鎖RNAを分解して、一本鎖DNAを生成する工程;
(C4)前記(C3)の一本鎖DNAの3´側に、前記第1プライマーをハイブリダイズさせ、前記逆転写酵素のDNA合成活性により、前記第1プライマーの3´末端を伸長させ、かつ、前記第1プライマーの前記RNAポリメラーゼのプロモータ配列を鋳型として前記(C3)の一本鎖DNAの3´末端を伸長させて、前記(A3)で生成した増幅反応テンプレートと同じ二本鎖DNAを生成する二本鎖DNA生成工程。
(付記2)
前記複合体において、前記磁性担体は、磁性多孔質ヒドロゲル粒子である、
付記1記載の検出対象物の検出方法。
(付記3)
前記親和性物質は、親和性色素である、
付記1または2記載の検出対象物の検出方法。
(付記4)
前記捕捉剤は、前記磁性多孔質ヒドロゲル粒子及び前記磁性多孔質ヒドロゲル粒子を覆う多孔質外殻体から構成されている、
付記2または3記載の検出対象物の検出方法。
(付記5)
前記試料が、排水であり、
前記検出対象物が、前記排水中のウイルス及び微生物の少なくとも一方である、
付記1から4のいずれかに記載の検出対象物の検出方法。
(付記6)
前記第1プライマーが含むRNAポリメラーゼのプロモータ配列が、T7プロモータ配列であり、
前記RNAポリメラーゼが、T7RNAポリメラーゼである、付記1から5のいずれか記載の検出対象物の検出方法。
(付記7)
前記RNAゲノムが、センス鎖であり、前記第1プライマーがアンチセンスプライマーであり、前記第2プライマーがセンスプライマーである、
付記1から6のいずれかに記載の検出対象物の検出方法。
(付記8)
前記遺伝子検出工程は、前記遺伝子増幅工程において増幅した遺伝子を検出する増幅遺伝子検出工程を含み、
前記遺伝子増幅工程において、前記第1プライマー及び前記第2プライマーの一方のプライマーは、5´末端に、基板に固定された固定化抗体と特異的に結合可能な抗原が組み込まれたプライマーであり、前記第1プライマー及び前記第2プライマーの他方のプライマーは、5´末端に第1結合体が組み込まれており、
前記増幅遺伝子検出工程において、前記遺伝子増幅工程で生成した遺伝子増幅物の前記一方のプライマーの前記抗原は、前記固定化抗体と結合して前記遺伝子増幅物が前記基板に固定され、前記他方のプライマーの前記第1結合体は、前記第1結合体と特異的に結合する第2結合体を含む標識物と前記第2結合体を介して結合することで前記標識物が前記基板に固定され、前記基板に固定された前記標識物を検出する、
付記1から7のいずれかに記載の検出対象物の検出方法。
(付記9)
前記第1結合体は、ビオチン(Biotin)であり、前記第2結合体は、ストレプトアビジン(streptavidin)であり、前記標識物は、前記ストレプトアビジンが表面に固定された着色微粒子である、
付記8記載の検出対象物の検出方法。
(付記10)
付記1から9のいずれかに記載の検出対象物の検出方法を含む排水監視方法。
(付記11)
前記捕捉剤と、遺伝子検出剤とを含み、
前記遺伝子検出剤は、遺伝子増幅剤を含み、
前記遺伝子増幅剤が、下記の(a1)から(a3)、(b1)から(b3)及び(c1)を含む:
(a1)前記逆転写酵素;
(a2)前記第1プライマー;
(a3)前記第2プライマー;
(b1)前記リコンビナーゼ;
(b2)前記一本鎖DNA結合タンパク質;
(b3)前記鎖置換DNAポリメラーゼ;
(c1)前記RNAポリメラーゼ:
付記1から9のいずれか記載の検出対象物の検出方法に使用する検出対象物検出キット。
(付記12)
前記捕捉剤が、前記磁性担体に親和性物質が結合した複合体を含む、付記11記載の検出対象物検出キット。
(付記13)
前記複合体において、前記磁性担体は、磁性多孔質ヒドロゲル粒子である、付記12記載の検出対象物検出キット。
(付記14)
前記親和性物質は、親和性色素である、付記12または13記載の検出対象物検出キット。
(付記15)
前記捕捉剤は、前記磁性多孔質ヒドロゲル粒子及び前記磁性多孔質ヒドロゲル粒子を覆う多孔質外殻体から構成されている、付記13または14記載の検出対象物検出キット。
(付記16)
前記遺伝子検出剤が、増幅遺伝子検出剤を含み、前記増幅遺伝子検出剤が、下記の(d1)から(d3)を含み、付記8または9記載の検出対象物の検出方法に使用する付記11から15のいずれかに記載の検出対象物検出キット:
(d1)前記固定化抗体;
(d2)基板;
(d3)標識物。
(付記17)
付記11から16のいずれかに記載の検出対象物検出キットを含む排水監視キット。