(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025058510
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】極低温冷凍機
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20250402BHJP
【FI】
F25B9/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023168492
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】望月 健生
(57)【要約】
【課題】セラミックス系磁性蓄冷材を内蔵した極低温冷凍機の性能低下を抑制する。
【解決手段】極低温冷凍機10は、第1熱伝導率を有し、軸方向に延在する第2シリンダ16bと、第1熱伝導率よりも高い第2熱伝導率を有し、ステージ末端部35aと、ステージ末端部35aを第2シリンダ16bに軸方向に接続するステージ筒部35bとを備える第2冷却ステージ35と、第2シリンダ16b内で軸方向に往復動可能であり、ステージ末端部35aとの間に第2膨張室34を形成し、上死点にて第2膨張室34が最大容積をとる第2ディスプレーサ18bと、第2ディスプレーサ18bに収容され、第2ディスプレーサ18bが上死点にあるときステージ筒部35bと軸方向に重なるように第2ディスプレーサ18b内での軸方向位置が定められているセラミックス系磁性蓄冷材28cと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱伝導率を有し、軸方向に延在するシリンダと、
前記第1熱伝導率よりも高い第2熱伝導率を有する冷却ステージであって、ステージ末端部と、前記ステージ末端部を前記シリンダに前記軸方向に接続するステージ筒部とを備える冷却ステージと、
前記シリンダ内で前記軸方向に往復動可能であり、前記ステージ末端部との間に膨張空間を形成し、上死点にて前記膨張空間が最大容積をとるディスプレーサと、
前記ディスプレーサに収容されたセラミックス系磁性蓄冷材であって、前記ディスプレーサが前記上死点にあるとき前記ステージ筒部と前記軸方向に重なるように前記ディスプレーサ内での軸方向位置が定められているセラミックス系磁性蓄冷材と、を備えることを特徴とする極低温冷凍機。
【請求項2】
前記ディスプレーサに収容された金属系磁性蓄冷材であって、前記ディスプレーサが前記上死点にあるとき前記ステージ筒部と前記軸方向に重ならないように前記ディスプレーサ内での軸方向位置が定められている金属系磁性蓄冷材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項3】
前記ディスプレーサは、前記膨張空間を挟んで前記ステージ末端部に対向するディスプレーサキャップを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の極低温冷凍機。
【請求項4】
前記ディスプレーサキャップは、前記冷却ステージに比べて電気抵抗率の大きい材料で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の極低温冷凍機。
【請求項5】
前記ディスプレーサキャップは、セラミックス系磁性蓄冷材で形成された蓄冷体を備えることを特徴とする請求項3に記載の極低温冷凍機。
【請求項6】
前記蓄冷体は、前記膨張空間に露出されていることを特徴とする請求項5に記載の極低温冷凍機。
【請求項7】
前記セラミックス系磁性蓄冷材は、前記ディスプレーサ内で前記ディスプレーサキャップに前記軸方向に隣接して配置され、
前記ディスプレーサ内での前記セラミックス系磁性蓄冷材の軸方向位置は、前記軸方向における前記ディスプレーサの往復動のストローク長をS、前記ディスプレーサキャップの軸方向高さをHc、前記ディスプレーサキャップから前記セラミックス系磁性蓄冷材の上端までの軸方向高さをHsとするとき、Hs>S-Hcを満たすように定められていることを特徴とする請求項3に記載の極低温冷凍機。
【請求項8】
前記ディスプレーサ内での前記セラミックス系磁性蓄冷材の軸方向位置は、Hs>(3/4)S-Hcを満たすように定められていることを特徴とする請求項7に記載の極低温冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、約10K以下(例えば約4.2Kの液体ヘリウム温度)の極低温への冷却を提供する極低温冷凍機には、磁気相転移に伴う大きな比熱のピークをこの温度域に有する磁性蓄冷材を備えた蓄冷器が搭載されている。磁性蓄冷材は、こうした極低温での極低温冷凍機の冷凍能力の向上に役立っている。磁性蓄冷材には大きく二種類あり、HoCu2などの金属系磁性蓄冷材と、Gd2O2S(GOSとも呼ばれる)などのセラミックス系磁性蓄冷材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機のように、蓄冷材を内蔵したディスプレーサが軸方向に移動する極低温冷凍機では、ディスプレーサの軸方向移動に伴って、蓄冷材の温度が、冷凍機自身に生じている軸方向温度分布に影響されてわずかに変動しうる。GOSをはじめとして多くのセラミックス系磁性蓄冷材では、比熱が温度にかなり敏感であり、つまり比熱のピークが非常にシャープである。そのため、セラミックス系磁性蓄冷材における温度変動は、たとえそれがわずかであっても、比熱の顕著な変動、例えば大幅な低下につながりうる。これにより、セラミックス系磁性蓄冷材の蓄冷性能、ひいては極低温冷凍機の性能に影響が生じるかもしれない。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、セラミックス系磁性蓄冷材を内蔵した極低温冷凍機の性能低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機は、第1熱伝導率を有し、軸方向に延在するシリンダと、第1熱伝導率よりも高い第2熱伝導率を有する冷却ステージであって、ステージ末端部と、ステージ末端部をシリンダに軸方向に接続するステージ筒部とを備える冷却ステージと、シリンダ内で軸方向に往復動可能であり、ステージ末端部との間に膨張空間を形成し、上死点にて膨張空間が最大容積をとるディスプレーサと、ディスプレーサに収容されたセラミックス系磁性蓄冷材であって、ディスプレーサが上死点にあるときステージ筒部と軸方向に重なるようにディスプレーサ内での軸方向位置が定められているセラミックス系磁性蓄冷材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セラミックス系磁性蓄冷材を内蔵した極低温冷凍機の性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【
図3】代表的な磁性蓄冷材の比熱の温度変化を示す図である。
【
図4】比較例に係る極低温冷凍機の一部を概略的に示す図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、実施の形態に係り、ディスプレーサ組立体の軸方向往復動を概略的に示す図である。
【
図6】実施の形態に係り、ディスプレーサキャップの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0010】
図1および
図2は、実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。極低温冷凍機10は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機である。
図1には、極低温冷凍機10の外観を示し、
図2には、極低温冷凍機10の内部構造を示す。
【0011】
極低温冷凍機10は、圧縮機12と、膨張機14とを備える。圧縮機12は、極低温冷凍機10の作動ガスを膨張機14から回収し、回収した作動ガスを昇圧して、再び作動ガスを膨張機14に供給するよう構成されている。作動ガスは、冷媒ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。
【0012】
膨張機14は、冷凍機シリンダ16と、ディスプレーサ組立体18と、冷凍機ハウジング20とを備える。冷凍機ハウジング20は、冷凍機シリンダ16と結合され、それにより、ディスプレーサ組立体18を収容する気密容器が構成される。なお、冷凍機ハウジング20の内部容積は圧縮機12の低圧側に接続され、低圧に維持されてもよい。
【0013】
冷凍機シリンダ16は、軸方向に延在する第1シリンダ16aおよび第2シリンダ16bを有する。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2シリンダ16bが第1シリンダ16aよりも小径である。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは同軸に配置され、第1シリンダ16aの下端が第2シリンダ16bの上端に剛に連結されている。
【0014】
図2に示されるように、ディスプレーサ組立体18は、第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bとを有する。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2ディスプレーサ18bが第1ディスプレーサ18aよりも小径である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは同軸に配置されている。
【0015】
第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに収容され、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに収容されている。第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに沿って軸方向に往復動可能であり、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに沿って軸方向に往復動可能である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは互いに連結され、一体に移動する。
【0016】
本書では、極低温冷凍機10の構成要素間の位置関係を説明するために、便宜上、ディスプレーサの軸方向往復動の上死点に近い側を「上」、下死点に近い側を「下」と表記することとする。上死点は膨張空間の容積が最大となるディスプレーサの位置であり、下死点は膨張空間の容積が最小となるディスプレーサの位置である。極低温冷凍機10の運転時には軸方向上方から下方へと温度が下がる温度勾配が生じるので、上側を高温側、下側を低温側と呼ぶこともできる。
【0017】
第1ディスプレーサ18aは、第1蓄冷器26を収容する。第1ディスプレーサ18aの筒状の本体が、軸方向に延在する第1蓄冷器容器となる。第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの本体の中に、例えば銅などの金網またはその他適宜の第1蓄冷材を充填することによって形成されている。第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は第1ディスプレーサ18aの本体とは別の部材として提供されてもよく、第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第1蓄冷材が第1ディスプレーサ18aに収容されてもよい。
【0018】
同様に、第2ディスプレーサ18bは、第2蓄冷器28を収容する。第2ディスプレーサ18bの筒状の本体が、軸方向に延在する第2蓄冷器容器となる。第2ディスプレーサ18bの上蓋部および下蓋部は第2ディスプレーサ18bの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第2ディスプレーサ18bの上蓋部および下蓋部はそれぞれ、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第2蓄冷材が第2ディスプレーサ18bに収容されてもよい。以下では説明の便宜上、第2ディスプレーサ18bの下蓋部をディスプレーサキャップ46と呼ぶことにする。
【0019】
第2蓄冷器28は、少なくとも二種の蓄冷材、この例では、三種の蓄冷材を備え、これら蓄冷材は、第2ディスプレーサ18bの軸方向に積層されている。
図2に示されるように、第2蓄冷器28は、軸方向に高温側から低温側へと順に、非磁性蓄冷材28a、金属系磁性蓄冷材28b、およびセラミックス系磁性蓄冷材28cを備える。極低温冷凍機10の第2段の冷凍能力を高めるために、これらの蓄冷材としてはそれぞれ異なる温度で大きな比熱をもつ材料が選択される。
【0020】
非磁性蓄冷材28aは、第2ディスプレーサ18bの高温側に、すなわち、第2ディスプレーサ18bの上蓋部に軸方向に隣接して第2ディスプレーサ18b内に配置される。非磁性蓄冷材28aは、第2ディスプレーサ18bの高温側の温度、例えば10Kから50Kの温度範囲またはその少なくとも一部において比較的高い容積比熱(例えば、銅よりも高い容積比熱)をもつ材料で形成されていてもよい。非磁性蓄冷材28aは、この温度範囲で、上述のように第1ディスプレーサ18aで典型的に使用される蓄冷材である銅よりも高い容積比熱を有してもよい。また、非磁性蓄冷材28a、この温度範囲で後述の磁性蓄冷材よりも高い容積比熱を有してもよい。
【0021】
非磁性蓄冷材28aは、例えばビスマス、亜鉛、鉛、またはこれらのうち少なくとも一種を含有する合金など、非磁性の金属材料で形成されていてもよい。非磁性蓄冷材28aとして二種の材料が積層されて用いられてもよく、例えば、第2ディスプレーサ18bの上蓋部に軸方向に隣接して亜鉛の蓄冷材が配置され、亜鉛の蓄冷材に軸方向に隣接してビスマスの蓄冷材が配置されてもよい。
【0022】
金属系磁性蓄冷材28bは、第2ディスプレーサ18bの中間部に、すなわち、非磁性蓄冷材28aに軸方向に隣接して第2ディスプレーサ18b内に配置される。金属系磁性蓄冷材28bは、第2ディスプレーサ18bの軸方向中間部の温度、例えば5Kから10Kの温度範囲またはその少なくとも一部において比較的高い容積比熱をもつ材料で形成されていてもよい。典型的には、金属系磁性蓄冷材28bは、磁気相転移に伴う容積比熱のピークをこの温度範囲に有する。金属系磁性蓄冷材28bは、例えばHoCu2、Er3Niなど、金属の磁性材料で形成されていてもよい。
【0023】
セラミックス系磁性蓄冷材28cは、第2ディスプレーサ18bの低温部に、すなわち、ディスプレーサキャップ46に軸方向に隣接して第2ディスプレーサ18b内に配置される。セラミックス系磁性蓄冷材28cは、金属系磁性蓄冷材28bとディスプレーサキャップ46との間に配置される。セラミックス系磁性蓄冷材28cは、ディスプレーサキャップ46と直接隣接していてもよい。あるいは、セラミックス系磁性蓄冷材28cとディスプレーサキャップ46は、それらの間に整流層を挟んで隣接していてもよい。
【0024】
セラミックス系磁性蓄冷材28cは、第2ディスプレーサ18bの低温側(すなわち、ディスプレーサ組立体18で最も温度が低くなるディスプレーサ低温端)の温度、例えば1Kから5Kの温度範囲またはその少なくとも一部において比較的高い容積比熱をもつ磁性蓄冷材で形成されていてもよい。典型的には、セラミックス系磁性蓄冷材28cは、磁気相転移に伴う容積比熱のピークをこの温度範囲に有する。
【0025】
セラミックス系磁性蓄冷材28cは、一般式RxO2S又は(R1-yR′y)xO2S(R、R′は少なくとも一種類の希土類元素、0.1≦x≦9、0<y<1)、若しくはGdxAl2-xO3(1≦x<2)で表わされる磁性蓄冷材のうち少なくとも一種類を含んでもよい。希土類元素R、R′は、例えば、イットリウムY、ランタンLa、セリウムCe、プラセオジムPr、ネオジムNd、プロメチウムPm、サマリウムSm、ユーロピウムEu、ガドリニウムGd、テルビウムTb、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、エルビウムEr、ツリウムTm、又は、イッテルビウムYbであってもよい。
【0026】
よって、セラミックス系磁性蓄冷材28cは、Gd2O2S(GOSとも呼ばれる)、Tb2O2S(TBOSとも呼ばれる)、(Gd1-yTby)2O2S(0<y<1、GdTbOSとも呼ばれる)、または、GdAlO3(GAPとも呼ばれる)であってもよく、またはこれらのうち少なくとも一種類を含んでもよい。
【0027】
こうした組成を持つセラミックス系磁性蓄冷材28cは、知られているように、例えばHoCu2など金属の磁性蓄冷材に比べて、例えば1Kから5Kの温度範囲またはその少なくとも一部において高い(例えば数倍高い)容積比熱を有する。よって、セラミックス系磁性蓄冷材28cは、この温度範囲の極低温冷却を提供する極低温冷凍機10の冷凍能力を高めるのに好適である。
【0028】
なお、磁性蓄冷材の機械強度を改善するために、磁性蓄冷材に添加物が添加されてもよい。添加物は、例えば、ジルコニウムZr、アルミニウムAl、アルミナ(Al2O3)のうち少なくとも一種であってもよい。磁性蓄冷材に対する添加物の重量比は、例えば20%以下、または15%以下であってもよい。このようにすれば、磁性蓄冷材の容積比熱を大きく変えることなく(すなわち極低温冷凍機10の冷凍能力に大きな影響を与えることなく)、磁性蓄冷材の硬度を高め、衝撃による破損や粉化のリスクを低減することができる。
【0029】
非磁性蓄冷材28a、金属系磁性蓄冷材28bおよびセラミックス系磁性蓄冷材28cは、粒状であってもよい。こうした粒状蓄冷材を構成する粒体は、例えば0.01mm以上3mm以下の大きさの粒状に成形され、第2ディスプレーサ18bに充填されてもよい。粒体の粒径は、例えば、0.14mm以上1.6mm以下、好ましくは0.15mm以上1.4mm以下、更に好ましくは0.22mm以上1.3mm以下であってもよい。粒径が0.14mm以上1.6mm以下の粒体の割合が全粒体に対して70重量%以上であってもよい。粒径が0.14mm未満の場合は、蓄冷器に充填する際の密度が高くなりすぎ、作動ガス(例えばヘリウムガス)の通過抵抗が急激に増大しうることになる。また、粒径が1.6mmを超える場合には、粒体と作動ガスとの間の熱交換効率が著しく低下しうることが懸念される。
【0030】
また、粒体の最小径に対する最大径の比(アスペクト比)は、3次元の任意の方向について5以下、好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に可能な限り球形に近づけることが好ましい。アスペクト比が5を超える場合には、機械的に変形破壊を起こし易くなると共に、高密度で充填することが困難となるため、冷却効率が低下する。よって、短径に対する長径の比が5以下である粒体の割合が全粒体に対して70重量%以上であってもよい。
【0031】
こうした粒体の保護のために、その表面が例えば1~50μmの厚さのコーティング(例えば、アルミナ(Al2O3)、フッ素樹脂など)で被覆されてもよい。
【0032】
非磁性蓄冷材28aと金属系磁性蓄冷材28bを分けるために、非磁性蓄冷材28aと金属系磁性蓄冷材28bの境界29aに例えば金網などの仕切部材が配置されてもよい。また、必要に応じて、金属系磁性蓄冷材28bとセラミックス系磁性蓄冷材28cの境界29bに仕切部材が配置されてもよい。
【0033】
ディスプレーサ組立体18は、上部室30、第1膨張室32、第2膨張室34を冷凍機シリンダ16の内部に形成する。極低温冷凍機10によって冷却すべき所望の物体または媒体との熱交換のために、膨張機14は、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35を備える。冷却ステージは、熱負荷フランジと呼ばれることもある。
【0034】
第1シリンダ16aと第2シリンダ16bが第1熱伝導率を有する材料で形成されるのに対して、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35は、第1熱伝導率よりも高い第2熱伝導率を有する材料で形成される。例えば、第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは、例えばステンレス鋼など、熱伝導率が比較的小さい金属材料で形成され、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35は、例えば、銅(例えば、無酸素銅、タフピッチ銅などの純銅)などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成されてもよい。
【0035】
上部室30は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部と第1シリンダ16aの上部との間に形成される。第1膨張室32は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部と第1冷却ステージ33との間に形成される。第1冷却ステージ33は、第1膨張室32を取り囲むように第1シリンダ16aの下部に固着されている。
【0036】
第2冷却ステージ35は、ステージ末端部35aと、ステージ末端部35aを第2シリンダ16bに軸方向に接続するステージ筒部35bとを備える。第2冷却ステージ35は、ステージ末端部35aとステージ筒部35bを有する単一部品として提供されてもよい。あるいは、ステージ末端部35aとステージ筒部35bは、別の部材として提供されてもよく、これらが互いに接続されて、第2冷却ステージ35が形成されてもよい。
【0037】
第2膨張室34は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部すなわちディスプレーサキャップ46と、第2冷却ステージ35との間に形成される。より具体的には、ディスプレーサキャップ46は、第2膨張室34を挟んでステージ末端部35aに対向し、ステージ筒部35bは、第2膨張室34を取り囲むように第2シリンダ16bの下部に固着されている。
【0038】
第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に形成された作動ガス流路36aを通じて上部室30に接続され、第1ディスプレーサ18aの下蓋部に形成された作動ガス流路36bを通じて第1膨張室32に接続されている。第2蓄冷器28は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部から第2ディスプレーサ18bの上蓋部へと形成された作動ガス流路36cを通じて第1蓄冷器26に接続されている。また、第2蓄冷器28は、ディスプレーサキャップ46に形成された作動ガス流路36dを通じて第2膨張室34に接続されている。
【0039】
作動ガス流路36dは、軸方向流路36d1と径方向流路36d2を有してもよい。軸方向流路36d1は、セラミックス系磁性蓄冷材28cの軸方向下端からディスプレーサキャップ46内を軸方向下方に延びている。径方向流路36d2は、軸方向流路36d1の下端からディスプレーサキャップ46内を径方向に延びている。径方向流路36d2は、第2冷却ステージ35のステージ筒部35bに向けられている。作動ガスをディスプレーサキャップ46から周方向に均等に吹き出すために、複数の径方向流路36d2が軸方向流路36d1から延びていてもよい。よって、セラミックス系磁性蓄冷材28cから軸方向流路36d1に入った作動ガスは、径方向流路36d2からステージ筒部35bに向かって吹き出し、ディスプレーサキャップ46とステージ筒部35bとの間の径方向クリアランスを通って第2膨張室34に流れる。
【0040】
第1膨張室32、第2膨張室34と上部室30との間の作動ガス流れが、冷凍機シリンダ16とディスプレーサ組立体18との間のクリアランスではなく、第1蓄冷器26、第2蓄冷器28に導かれるようにするために、第1シール38a、第2シール38bが設けられていてもよい。第1シール38aは、第1ディスプレーサ18aと第1シリンダ16aとの間に配置されるように第1ディスプレーサ18aの上蓋部に装着されてもよい。第2シール38bは、第2ディスプレーサ18bと第2シリンダ16bとの間に配置されるように第2ディスプレーサ18bの上蓋部に装着されてもよい。
【0041】
また、膨張機14は、圧力切替バルブ40と、駆動モータ42とを備える。圧力切替バルブ40は、冷凍機ハウジング20に収容され、駆動モータ42は、冷凍機ハウジング20に取り付けられている。
【0042】
図2に示されるように、圧力切替バルブ40は、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを備え、冷凍機シリンダ16内に周期的圧力変動を発生させるように構成されている。圧縮機12の作動ガス吐出口が高圧バルブ40aを介して上部室30に接続され、圧縮機12の作動ガス吸入口が低圧バルブ40bを介して上部室30に接続されている。高圧バルブ40aと低圧バルブ40bは、選択的かつ交互に開閉するように(すなわち、一方が開いているとき他方が閉じるように)構成されている。高圧(例えば2~3MPa)の作動ガスが圧縮機12から高圧バルブ40aを通じて膨張機14に供給され、低圧(例えば0.5~1.5MPa)の作動ガスが膨張機14から低圧バルブ40bを通じて圧縮機12に回収される。理解のために、作動ガスの流れる方向を
図2に矢印で示す。
【0043】
駆動モータ42は、ディスプレーサ組立体18の往復動を駆動するために設けられている。駆動モータ42は、たとえばスコッチヨーク機構などの運動変換機構43を介してディスプレーサ駆動軸44に連結されている。運動変換機構43は、圧力切替バルブ40と同様に、冷凍機ハウジング20に収容されている。ディスプレーサ駆動軸44は、運動変換機構43から冷凍機ハウジング20を貫通して上部室30の中へと延び、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に固定されている。上部室30から冷凍機ハウジング20(上述のように低圧に維持されている場合がある)への作動ガスのリークを防ぐために、第3シール38cが設けられている。第3シール38cは、冷凍機ハウジング20とディスプレーサ駆動軸44との間に配置されるように冷凍機ハウジング20に装着されてもよい。
【0044】
駆動モータ42が駆動されるとき、駆動モータ42の回転出力は運動変換機構43によってディスプレーサ駆動軸44の軸方向往復動に変換され、ディスプレーサ組立体18は冷凍機シリンダ16内を軸方向に往復する。また、駆動モータ42は、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを選択的かつ交互に開閉するようにこれらバルブに連結されている。
【0045】
極低温冷凍機10は、圧縮機12および駆動モータ42が運転されるとき、第1膨張室32および第2膨張室34において周期的な容積変動とこれに同期した作動ガスの圧力変動を発生させ、それにより冷凍サイクルが構成され、第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35が所望の極低温に冷却される。第1冷却ステージ33は、例えば約30K~約80Kの範囲にある第1冷却温度に冷却されることができる。第2冷却ステージ35は、第1冷却温度より低い第2冷却温度、例えば1K~20Kに冷却されることができる。第2冷却温度は、約4.2Kの液体ヘリウム温度またはそれよりも低い温度であってもよい。
【0046】
図3は、代表的な磁性蓄冷材の比熱の温度変化を示す図であり、より具体的には、極低温領域におけるHoCu
2およびGOSの比熱の温度変化を示すグラフである。
図3に示すように、HoCu
2およびGOSは、温度が4K程度から10K程度の範囲、すなわち、第2蓄冷器28のうちHoCu
2やGOSが収容される領域の温度範囲に、比熱が極大となるピークを持つ。例えば、HoCu
2の比熱は、温度が約6Kおよび約9Kの2箇所において比熱が極大となる。また、GOSの比熱は約5Kにおいて、非常に先鋭なピークを持つ。他の種類のセラミックス系磁性蓄冷材も、GOSと同様に、約5K以下のある特定の温度に鋭いピークを持つものが多い。
【0047】
図4は、比較例に係る極低温冷凍機の一部を概略的に示す図である。
図4には、極低温冷凍機の最低温部、すなわち第2冷却ステージ135と、第2冷却ステージ135から軸方向に上方に延在する第2シリンダ116bの低温側と、ディスプレーサキャップ146を含む第2ディスプレーサ118bの低温側とが示されている。第2冷却ステージ135は、末端部135aと、末端部135aを第2シリンダ116bに軸方向に接続する筒部135bとを備える。第2ディスプレーサ118bの低温側には、磁性蓄冷材、例えばセラミックス系磁性蓄冷材128cが収容されている。ディスプレーサキャップ146には、軸方向流路136d1と径方向流路136d2を有する作動ガス流路136dが形成されている。作動ガス流路136dを通じてセラミックス系磁性蓄冷材128cと第2膨張室134が接続されている。
【0048】
図4に示される状態では、第2ディスプレーサ118bが上死点に位置する。よって、ディスプレーサキャップ146は軸方向に最も上方にあり、第2膨張室134は最大容積をとる。典型的に、ディスプレーサキャップ146の作動ガス流路136dの既存の設計では、第2ディスプレーサ118bが上死点に位置するとき、図示されるように、作動ガスの出口である作動ガス流路136dの径方向流路136dの軸方向位置が、第2冷却ステージ135の筒部135bの軸方向上端(または第2シリンダ16bの軸方向下端)と同じになっている。このように、径方向流路136dと第2冷却ステージ135の筒部135bの上端部に軸方向高さが揃えられている。
【0049】
そのため、ディスプレーサキャップ146の軸方向上方に隣接するセラミックス系磁性蓄冷材128cは、第2ディスプレーサ118bが上死点に位置するとき、第2冷却ステージ135の筒部135bよりも軸方向上方に位置し、第2シリンダ116bに囲まれている。このように、第2ディスプレーサ118bの上死点では、セラミックス系磁性蓄冷材128cは、
図4に破線で示される、第2冷却ステージ135で囲まれる空間148の外に位置することになる。
【0050】
極低温冷凍機の運転中、ディスプレーサキャップ146とこれに隣接するセラミックス系磁性蓄冷材128cの下端部は、第2冷却ステージ135と同様に、極低温冷凍機における最低温度にある。一方、第2シリンダ116bには、軸方向に上方に向かうほど温度が高くなる軸方向温度分布が形成されている。そのため、第2ディスプレーサ118bが上死点にあるときセラミックス系磁性蓄冷材128cを囲む第2シリンダ116bの部分は、セラミックス系磁性蓄冷材128cよりもいくらか高い温度をもつ。このようなセラミックス系磁性蓄冷材128cとそれを囲む第2シリンダ116bとの温度差の影響により、第2ディスプレーサ118bの軸方向往復動に伴って、セラミックス系磁性蓄冷材128cに周期的な温度変動が生じるかもしれない。
【0051】
図3に示されるように、セラミックス系磁性蓄冷材128c、例えばGOSの比熱は温度に非常に敏感である。セラミックス系磁性蓄冷材128cにおける温度変動は、たとえそれがわずかであっても、比熱の顕著な変動、例えば大幅な低下につながりうる。これに起因して、比較例の極低温冷凍機では、セラミックス系磁性蓄冷材128cの蓄冷性能、ひいては極低温冷凍機の性能に影響が生じるかもしれない。
【0052】
図5(a)および
図5(b)は、実施の形態に係り、ディスプレーサ組立体18の軸方向往復動を概略的に示す図である。
図5(a)には、ディスプレーサ組立体18が上死点に位置するときの膨張機14が概略的に示され、
図5(b)には、ディスプレーサ組立体18が下死点に位置するときの膨張機14が概略的に示されている。なお、
図2においては、ディスプレーサ組立体18は、上死点と下死点との間の中間位置にある。
【0053】
上述のように、第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bが上死点にあるとき、第1膨張室32と第2膨張室34はそれぞれ最大容積となり、第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bが下死点にあるとき、第1膨張室32と第2膨張室34はそれぞれ最小容積となる。第1ディスプレーサ18aが下死点にあるときの第1ディスプレーサ18aと第1冷却ステージ33との軸方向クリアランスは、理想的にはゼロである。ただし、現実の設計では、両者の接触を回避するために、例えば約0.1mmから約1mmの軸方向クリアランスが設定される。同様に、第2ディスプレーサ18bが下死点にあるときの第2ディスプレーサ18bと第2冷却ステージ35のステージ末端部35aとの軸方向クリアランスは、例えば約0.1mmから約1mmの範囲内に設定されうる。
【0054】
逆に、上部室30は、第1ディスプレーサ18aが上死点にあるとき最小容積となり、第1ディスプレーサ18aが下死点にあるとき最大容積となる。第1ディスプレーサ18aが上死点にあるときの上部室30の軸方向高さ、つまり冷凍機ハウジング20と第1ディスプレーサ18aとの軸方向クリアランスは、理想的にはゼロであり、実際には例えば約0.1mmから約1mmの範囲内に設定されうる。これにより、上部室30での死容積を最小化することができる。
【0055】
この実施の形態では、
図5(a)に示されるように、セラミックス系磁性蓄冷材28cは、第2ディスプレーサ18bが上死点にあるときステージ筒部35bと軸方向に重なるように第2ディスプレーサ18b内での軸方向位置が定められている。よって、第2ディスプレーサ18bが上死点に位置するとき、セラミックス系磁性蓄冷材28cの少なくとも一部、例えば、セラミックス系磁性蓄冷材28cの軸方向下部は、第2冷却ステージ35のステージ筒部35bの上端50よりも軸方向下方に位置し、ステージ筒部35bに囲まれている。同様に、ディスプレーサキャップ46も、ステージ筒部35bに囲まれている。
【0056】
このように、第2ディスプレーサ118bの上死点では、第2ディスプレーサ18bの下端部、すなわち、セラミックス系磁性蓄冷材128cの少なくとも一部とディスプレーサキャップ46は、
図5(a)に破線で示される、第2冷却ステージ35で囲まれる空間48の中に位置することになる。
【0057】
また、第2ディスプレーサ18bが下死点にあるときには、
図5(b)に示されるように、第2ディスプレーサ18bは、第2冷却ステージ35で囲まれる空間48にさらに入り込む。第2ディスプレーサ118bの下死点では、セラミックス系磁性蓄冷材28cのより多くの部分がディスプレーサキャップ46とともに、ステージ筒部35bに囲まれ、空間48の中に位置することになる。
【0058】
したがって、第2ディスプレーサ18bが上死点にあるとき第2ディスプレーサ18b内でのセラミックス系磁性蓄冷材28cの軸方向位置をステージ筒部35bと軸方向に重なるように定めることにより、第2ディスプレーサ18bの軸方向往復動のストローク長Sの全体にわたり、セラミックス系磁性蓄冷材128cの少なくとも一部が、第2冷却ステージ35で囲まれる空間48の中に保持される。
【0059】
極低温冷凍機の運転中、ディスプレーサキャップ46とこれに隣接するセラミックス系磁性蓄冷材28cの下端部は、第2冷却ステージ35と同様に、極低温冷凍機における最低温度にある。したがって、
図4に示される比較例とは異なり、この実施の形態では、セラミックス系磁性蓄冷材28cは、第2冷却ステージ35に囲まれることで、温度を安定化することができる。これにより、セラミックス系磁性蓄冷材28cで生じうる温度変動による蓄冷性能、ひいては極低温冷凍機10の性能への影響を抑制することができる。
【0060】
また、この実施の形態では、金属系磁性蓄冷材28bは、第2ディスプレーサ18bが上死点にあるときステージ筒部35bと軸方向に重ならないように第2ディスプレーサ18b内での軸方向位置が定められている。よって、第2ディスプレーサ118bが上死点に位置するとき、
図5(a)に示されるように、金属系磁性蓄冷材28bは、ステージ筒部35bよりも軸方向上方に位置し、第2シリンダ16bに囲まれている。このように、第2ディスプレーサ18bの上死点では、金属系磁性蓄冷材28bは、第2冷却ステージ35で囲まれる空間48の外に位置することになる。
【0061】
極低温冷凍機10は、超伝導磁石の冷却の用途など、強磁場下で使用されることがある。金属系磁性蓄冷材28bが磁場分布中で運動するとき、金属系磁性蓄冷材28bの内部に渦電流が誘起され、渦電流は金属系磁性蓄冷材28b自身が持つ抵抗により熱に変換されうる。したがって、金属系磁性蓄冷材28bを第2冷却ステージ35から軸方向に離れた場所に配置することにより、金属系磁性蓄冷材28bの発熱による第2冷却ステージ35の温度上昇を抑えることができる。
【0062】
加えて、金属系磁性蓄冷材28bは、第2ディスプレーサ18bが下死点にあるときステージ筒部35bと軸方向に重ならないように第2ディスプレーサ18b内での軸方向位置が定められていてもよい。よって、第2ディスプレーサ118bが下死点に位置するとき、
図5(b)に示されるように、金属系磁性蓄冷材28bは、ステージ筒部35bよりも軸方向上方に位置し、第2シリンダ16bに囲まれ、空間48の外に位置してもよい。
【0063】
これを実現するために、第2ディスプレーサ18b内でのセラミックス系磁性蓄冷材28cの軸方向位置は、軸方向における第2ディスプレーサ18bの往復動のストローク長をS、ディスプレーサキャップ46の軸方向高さをHc、ディスプレーサキャップ46からセラミックス系磁性蓄冷材28cの上端(すなわち境界29b)までの軸方向高さをHsとするとき、Hs>S-Hcを満たすように定められていてもよい。
【0064】
このようにして、第2ディスプレーサ18bの軸方向往復動のストローク長Sの全体にわたり、金属系磁性蓄冷材28bが、第2冷却ステージ35で囲まれる空間48の外に保持される。したがって、金属系磁性蓄冷材28bの発熱による第2冷却ステージ35の温度上昇を抑えることができる。
【0065】
第2ディスプレーサ18bの軸方向往復動の速度は、上死点と下死点の近傍で遅く、軸方向中間部で速くなる。第2ディスプレーサ18bの移動速度が速いほど、金属系磁性蓄冷材28bに働く磁場の時間変化が大きくなり、渦電流による発熱量も大きくなりうる。軸方向中間部は、例えば、ストローク長Sのうち1/4から3/4の範囲にあたる。そこで、この範囲を避けて金属系磁性蓄冷材28bを配置するために、第2ディスプレーサ18b内でのセラミックス系磁性蓄冷材28cの軸方向位置は、Hs>(3/4)S-Hcを満たすように定められてもよい。
【0066】
ディスプレーサキャップ46は、第2冷却ステージ35に比べて電気抵抗率の大きい材料で形成されていてもよい。このようにすれば、第2ディスプレーサ18bが磁場分布中で運動するとき、ディスプレーサキャップ46の内部に誘起されうる渦電流を低減し、それによるディスプレーサキャップ46からの発熱も低減することができる。
【0067】
第2冷却ステージ35は、上述のように、典型的には銅で形成される。よって、ディスプレーサキャップ46は、ステンレス鋼、ニクロムやインコネル(登録商標)などのニッケル合金、チタン合金といった、銅よりも電気抵抗率の大きい金属で形成されてもよい。あるいは、ディスプレーサキャップ46は、例えば、フェノール樹脂など、合成樹脂材料で形成されてもよい。あるいは、ディスプレーサキャップ46は、例えば、GOSなど、セラミックス系磁性蓄冷材で形成されてもよい。
【0068】
図6は、実施の形態に係り、ディスプレーサキャップ46の一例を概略的に示す図である。ディスプレーサキャップ46は、本体46aと、蓄冷体46bとを備えてもよい。本体46aは、上述のように、例えばステンレス鋼など、第2冷却ステージ35に比べて電気抵抗率の大きい材料で形成されていてもよい。本体46aには、作動ガス流路36dが形成されていてもよい。蓄冷体46bは、例えばGOSなど、セラミックス系磁性蓄冷材で形成されていてもよい。このように、ディスプレーサキャップ46に蓄冷体46bを設けることで、ディスプレーサキャップ46の温度上昇を抑え安定化することができる。
【0069】
蓄冷体46bは、第2膨張室34に露出されていてもよい。例えば、蓄冷体46bは、ステージ末端部35aに対向するように、ディスプレーサキャップ46の外面に固定されていてもよい。本体46aには、蓄冷体46bを受け入れる凹みが形成されていてもよく、蓄冷体46bは、ニトフィックス(登録商標)などの極低温用の接着剤を用いて本体46aに接着されていてもよい。あるいは、蓄冷体46bの外周面にねじが形成され、本体46aに対応するねじ穴が形成され、蓄冷体46bが本体46aのねじ穴にねじ込まれて固定されてもよい。
【0070】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0071】
上述の実施の形態では、GM冷凍機を例として説明しているが、本発明はこれに限定されない。ある実施の形態においては、極低温冷凍機10は、例えば、ソルベイ冷凍機など、セラミックス系磁性蓄冷材を内蔵したディスプレーサが軸方向に往復動する他の形式の極低温冷凍機であってもよい。
【0072】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0073】
10 極低温冷凍機、 16 冷凍機シリンダ、 16a 第1シリンダ、 16b 第2シリンダ、 18 ディスプレーサ組立体、 18a 第1ディスプレーサ、 18b 第2ディスプレーサ、 28b 金属系磁性蓄冷材、 28c セラミックス系磁性蓄冷材、 32 第1膨張室、 33 第1冷却ステージ、 34 第2膨張室、 35 第2冷却ステージ、 35a ステージ末端部、 35b ステージ筒部、 46 ディスプレーサキャップ。