(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025058511
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】極低温冷凍機用蓄冷器および極低温冷凍機
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20250402BHJP
【FI】
F25B9/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023168493
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】三上 行雄
(57)【要約】
【課題】ヘリウムガスを蓄冷材に利用した極低温冷凍機用蓄冷器における圧力損失を低減する。
【解決手段】極低温冷凍機用蓄冷器は、ヘリウムガスを収容可能な複数の管52を撚り合わせた撚合管50を備える。撚合管50は、例えばハニカム巻きにより、コイル状に巻回されていてもよい。このような極低温冷凍機用蓄冷器を備える極低温冷凍機が提供されてもよい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリウムガスを収容可能な複数の管を撚り合わせた撚合管を備えることを特徴とする極低温冷凍機用蓄冷器。
【請求項2】
前記撚合管は、コイル状に巻回されていることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機用蓄冷器。
【請求項3】
前記撚合管は、ハニカム巻きにより巻回されていることを特徴とする請求項2に記載の極低温冷凍機用蓄冷器。
【請求項4】
ヘリウムガスを収容可能な管を備え、
前記管は、ハニカム巻きによりコイル状に巻回されていることを特徴とする極低温冷凍機用蓄冷器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の極低温冷凍機用蓄冷器を備えることを特徴とする極低温冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷凍機用蓄冷器およびこれを用いた極低温冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリウムガスは、10K程度以下の極低温において、さまざまな他の材料に比べて大きな比熱をもつことが知られている。そこで、そうした極低温への冷却を提供するギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機などの極低温冷凍機で、ヘリウムガスを蓄冷材として用いることが提案されている。このような極低温冷凍機には、蓄冷器として例えば、ヘリウムガスを封入した管がソレノイドコイルのように巻回されたものが内蔵されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、ヘリウムガスを蓄冷材に利用した上述のような極低温冷凍機を検討し、以下の課題を認識した。こうした極低温冷凍機では、ヘリウムガスの管は、コイルのターン間で互いに密に隣接するように巻き回されている。しかしながら、この巻き方の蓄冷器では、管どうしの密接により、極低温冷凍機の作動ガスのための作動ガス流路が狭く、また長くなり、その結果、蓄冷器での作動ガスの圧力損失が大きくなりがちである。圧力損失の増加は、極低温冷凍機の冷凍能力を低下させうる。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、ヘリウムガスを蓄冷材に利用した極低温冷凍機用蓄冷器における圧力損失を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機用蓄冷器は、ヘリウムガスを収容可能な複数の管を撚り合わせた撚合管を備える。
【0007】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機用蓄冷器は、ヘリウムガスを収容可能な管を備え、管は、ハニカム巻きによりコイル状に巻回されている。
【0008】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機は、上述のいずれかの態様の極低温冷凍機用蓄冷器を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヘリウムガスを蓄冷材に利用した極低温冷凍機用蓄冷器における圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【
図3】実施の形態に係り、第2段の蓄冷器の低温側の断面の一部を拡大して概略的に示す図である。
【
図4】実施の形態に係り、低温側蓄冷器を構成する撚合管を概略的に示す斜視図である。
【
図5】比較例に係るヘリウムガス蓄冷器を概略的に示す図である。
【
図6】他の実施の形態に係るヘリウムガス蓄冷器を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1および
図2は、実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。極低温冷凍機10は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機である。
図1には、極低温冷凍機10の外観を示し、
図2には、極低温冷凍機10の内部構造を示す。
【0013】
極低温冷凍機10は、圧縮機12と、膨張機14とを備える。圧縮機12は、極低温冷凍機10の作動ガスを膨張機14から回収し、回収した作動ガスを昇圧して、再び作動ガスを膨張機14に供給するよう構成されている。作動ガスは、冷媒ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。
【0014】
膨張機14は、冷凍機シリンダ16と、ディスプレーサ組立体18と、冷凍機ハウジング20とを備える。冷凍機ハウジング20は、冷凍機シリンダ16と結合され、それにより、ディスプレーサ組立体18を収容する気密容器が構成される。なお、冷凍機ハウジング20の内部容積は圧縮機12の低圧側に接続され、低圧に維持されてもよい。
【0015】
冷凍機シリンダ16は、第1シリンダ16a、第2シリンダ16bを有する。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2シリンダ16bが第1シリンダ16aよりも小径である。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは同軸に配置され、第1シリンダ16aの下端が第2シリンダ16bの上端に剛に連結されている。
【0016】
ディスプレーサ組立体18は、第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bとを有する。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2ディスプレーサ18bが第1ディスプレーサ18aよりも小径である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは同軸に配置されている。
【0017】
第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに収容され、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに収容されている。第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに沿って軸方向に往復移動可能であり、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに沿って軸方向に往復移動可能である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは互いに連結され、一体に移動する。
【0018】
本書では、極低温冷凍機10の構成要素間の位置関係を説明するために、便宜上、ディスプレーサの軸方向往復動の上死点に近い側を「上」、下死点に近い側を「下」と表記することとする。上死点は膨張空間の容積が最大となるディスプレーサの位置であり、下死点は膨張空間の容積が最小となるディスプレーサの位置である。極低温冷凍機10の運転時には軸方向上方から下方へと温度が下がる温度勾配が生じるので、上側を高温側、下側を低温側と呼ぶこともできる。
【0019】
第1ディスプレーサ18aは、第1蓄冷器26を収容する。第1ディスプレーサ18aの筒状の本体が、軸方向に延在する第1蓄冷器容器となる。第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの本体の中に、例えば銅などの金網またはその他適宜の第1蓄冷材を充填することによって形成されている。第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は第1ディスプレーサ18aの本体とは別の部材として提供されてもよく、第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第1蓄冷材が第1ディスプレーサ18aに収容されてもよい。
【0020】
同様に、第2ディスプレーサ18bは、第2蓄冷器28を収容する。第2ディスプレーサ18bの筒状の本体が、軸方向に延在する第2蓄冷器容器となる。第2ディスプレーサ18bの上蓋部および下蓋部は第2ディスプレーサ18bの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第2ディスプレーサ18bの上蓋部および下蓋部はそれぞれ、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第2蓄冷材が第2ディスプレーサ18bに収容されてもよい。
【0021】
第2蓄冷器28は、少なくとも二種の蓄冷材を備え、これら蓄冷材は、第2ディスプレーサ18bの軸方向に積層されている。
図2に示されるように、第2蓄冷器28は、高温側蓄冷器28aと低温側蓄冷器28bを備える。極低温冷凍機10の第2段の冷凍能力を高めるために、これらの蓄冷器にはそれぞれ異なる温度で大きな比熱をもつ蓄冷材が選択される。
【0022】
例えば、高温側蓄冷器28aは、第2ディスプレーサ18bの高温側の温度、例えば10Kから50Kの温度範囲またはその少なくとも一部において比較的高い容積比熱をもつ蓄冷材で形成されていてもよい。高温側蓄冷器28aを形成する蓄冷材は、この温度範囲またはその少なくとも一部において、第1ディスプレーサ18aで典型的に使用される蓄冷材である銅よりも高い容積比熱を有してもよい。また、高温側蓄冷器28aを形成する蓄冷材は、この温度範囲またはその少なくとも一部において、低温側蓄冷器28bを形成する蓄冷材よりも高い容積比熱を有してもよい。高温側蓄冷器28aは、例えば、ビスマス、亜鉛、またはその合金など、非磁性の金属材料で形成されていてもよい。
【0023】
低温側蓄冷器28bは、第2ディスプレーサ18bの低温側の温度、例えば1Kから10Kの温度範囲またはその少なくとも一部(例えば4K)において比較的高い容積比熱をもつ蓄冷材で形成されていてもよい。この実施の形態では、低温側蓄冷器28bには、ヘリウムガスが用いられる。そこで、低温側蓄冷器28bは、ヘリウムガスを収容可能な管52(
図3および
図4参照)を備える。この管52の少なくとも一方の端部が開放されていてもよい。それにより、極低温冷凍機10の動作に伴い第2蓄冷器28内に供給された極低温冷凍機10の作動ガス(すなわちヘリウムガス)が管52内に導入されてもよい。あるいは、あらかじめヘリウムガスが封入され両端が閉塞された管が使用されてもよい。このようなヘリウムガス蓄冷器の例示的な構成の詳細については、
図3および
図4を参照してさらに後述される。
【0024】
図2を参照すると、ディスプレーサ組立体18は、上部室30、第1膨張室32、第2膨張室34を冷凍機シリンダ16の内部に形成する。極低温冷凍機10によって冷却すべき所望の物体または媒体との熱交換のために、膨張機14は、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35を備える。上部室30は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部と第1シリンダ16aの上部との間に形成される。第1膨張室32は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部と第1冷却ステージ33との間に形成される。第2膨張室34は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部と第2冷却ステージ35との間に形成される。第1冷却ステージ33は、第1膨張室32を取り囲むように第1シリンダ16aの下部に固着され、第2冷却ステージ35は、第2膨張室34を取り囲むように第2シリンダ16bの下部に固着されている。
【0025】
第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に形成された作動ガス流路36aを通じて上部室30に接続され、第1ディスプレーサ18aの下蓋部に形成された作動ガス流路36bを通じて第1膨張室32に接続されている。第2蓄冷器28は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部から第2ディスプレーサ18bの上蓋部へと形成された作動ガス流路36cを通じて第1蓄冷器26に接続されている。また、第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部に形成された作動ガス流路36dを通じて第2膨張室34に接続されている。
【0026】
第1膨張室32、第2膨張室34と上部室30との間の作動ガス流れが、冷凍機シリンダ16とディスプレーサ組立体18との間のクリアランスではなく、第1蓄冷器26、第2蓄冷器28に導かれるようにするために、第1シール38a、第2シール38bが設けられていてもよい。第1シール38aは、第1ディスプレーサ18aと第1シリンダ16aとの間に配置されるように第1ディスプレーサ18aの上蓋部に装着されてもよい。第2シール38bは、第2ディスプレーサ18bと第2シリンダ16bとの間に配置されるように第2ディスプレーサ18bの上蓋部に装着されてもよい。
【0027】
また、膨張機14は、圧力切替バルブ40と、駆動モータ42とを備える。圧力切替バルブ40は、冷凍機ハウジング20に収容され、駆動モータ42は、冷凍機ハウジング20に取り付けられている。
【0028】
図2に示されるように、圧力切替バルブ40は、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを備え、冷凍機シリンダ16内に周期的圧力変動を発生させるように構成されている。圧縮機12の作動ガス吐出口が高圧バルブ40aを介して上部室30に接続され、圧縮機12の作動ガス吸入口が低圧バルブ40bを介して上部室30に接続されている。高圧バルブ40aと低圧バルブ40bは、選択的かつ交互に開閉するように(すなわち、一方が開いているとき他方が閉じるように)構成されている。高圧(例えば2~3MPa)の作動ガスが圧縮機12から高圧バルブ40aを通じて膨張機14に供給され、低圧(例えば0.5~1.5MPa)の作動ガスが膨張機14から低圧バルブ40bを通じて圧縮機12に回収される。理解のために、作動ガスの流れる方向を
図2に矢印で示す。
【0029】
駆動モータ42は、ディスプレーサ組立体18の往復動を駆動するために設けられている。駆動モータ42は、たとえばスコッチヨーク機構などの運動変換機構43を介してディスプレーサ駆動軸44に連結されている。運動変換機構43は、圧力切替バルブ40と同様に、冷凍機ハウジング20に収容されている。ディスプレーサ駆動軸44は、運動変換機構43から冷凍機ハウジング20を貫通して上部室30の中へと延び、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に固定されている。上部室30から冷凍機ハウジング20(上述のように低圧に維持されている場合がある)への作動ガスのリークを防ぐために、第3シール38cが設けられている。第3シール38cは、冷凍機ハウジング20とディスプレーサ駆動軸44との間に配置されるように冷凍機ハウジング20に装着されてもよい。
【0030】
駆動モータ42が駆動されるとき、駆動モータ42の回転出力は運動変換機構43によってディスプレーサ駆動軸44の軸方向往復動に変換され、ディスプレーサ組立体18は冷凍機シリンダ16内を軸方向に往復する。また、駆動モータ42は、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを選択的かつ交互に開閉するようにこれらバルブに連結されている。
【0031】
極低温冷凍機10は、圧縮機12および駆動モータ42が運転されるとき、第1膨張室32および第2膨張室34において周期的な容積変動とこれに同期した作動ガスの圧力変動を発生させ、それにより冷凍サイクルが構成され、第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35が所望の極低温に冷却される。第1冷却ステージ33は、例えば約30K~約80Kの範囲にある第1冷却温度に冷却されることができる。第2冷却ステージ35は、第1冷却温度より低い第2冷却温度、例えば1K~10Kに冷却されることができる。第2冷却温度は、約4.2Kの液体ヘリウム温度またはそれよりも低い温度であってもよい。
【0032】
図3は、実施の形態に係り、第2蓄冷器28の低温側蓄冷器28bの断面の一部を拡大して概略的に示す図である。
図3には、
図2と同様に、膨張機14の中心軸を含む平面による低温側蓄冷器28bの断面の一部が示されている。理解のために、第2蓄冷器28を通る極低温冷凍機10の作動ガス流れ48が
図3で両矢印により模式的に示されている。また、
図4は、実施の形態に係り、低温側蓄冷器28bを構成する撚合管50を概略的に示す斜視図である。
【0033】
低温側蓄冷器28bは、ヘリウムガスを収容可能な複数の管52を撚り合わせた撚合管50を備える。
図4に示されるように、この例では、3本の管52が撚り合わされている。なお、撚合管50を形成する管52の本数は任意であり、2本、または4本以上であってもよい。管52は、その内部にヘリウムガスを収容できるように中空であり、少なくとも一端が開放されている。管52の内径は、例えば10~20μmであり、外径は、例えば30μm以下または40μm以下であってもよい。管52は、例えば、銅(例えば、無酸素銅、タフピッチ銅などの純銅)などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成されてもよい。
【0034】
撚合管50は、コイル状に巻回されている。低温側蓄冷器28bは、芯材54を備え、この芯材54に撚合管50が巻き付けられている。撚合管50は、例えばソレノイド巻きで芯材54に巻き付けられている。あるいは、撚合管50は、そのほかの適宜の巻き方で芯材54に巻き付けられてもよい。撚合管50をコイル状に巻くことにより、第2蓄冷器28内で撚合管50の長さを長くとることができ、極低温冷凍機10の動作中における第2蓄冷器28内の圧力変動に起因して生じうる管52内の圧力変動を軽減することができる。これは、極低温冷凍機10の冷凍能力の低下を抑制することにつながる。
【0035】
図3には、理解を容易にするために、撚合管50を形成する3本の管52の外周を包絡する円を破線で描いている。管52は、この包絡円56のなかで螺旋状に延在する。したがって、
図3に示されるように、芯材54にコイル状に巻かれた撚合管50どうしの間には、隙間58が形成される。
【0036】
図5は、比較例に係るヘリウムガス蓄冷器60を概略的に示す図である。ヘリウムガス蓄冷器60は、芯材62と、内部にヘリウムガスを収容可能であり、芯材62にコイル状に巻かれた単管64とを備える。この比較例では、撚合管ではなく、通常の一本の管がコイル状に芯材62に巻き付けられている。図示されるように、単管64は、コイルのターン間で互いに密に隣接するように巻き回されている。したがって、ヘリウムガス蓄冷器60では、単管64どうしの密接により、ヘリウムガス蓄冷器60を通る作動ガスのための作動ガス流路が狭く、また長くなり、その結果、蓄冷器での作動ガスの圧力損失が大きくなりがちである。圧力損失の増加は、極低温冷凍機の冷凍能力を低下させうる。
【0037】
これに対して、実施の形態では、再び
図3を参照すると、極低温冷凍機10の動作中、第2蓄冷器28を通る作動ガス流れ48が隙間58を流れることができる。隙間58により、第2蓄冷器28の圧力損失を低減することができる。作動ガス流れ48は、隙間58を流れるとき撚合管50の各管52内のヘリウムガスと熱交換をすることができ、それにより、第2蓄冷器28は蓄冷機能を発揮することができる。
【0038】
図6は、他の実施の形態に係るヘリウムガス蓄冷器70を概略的に示す斜視図である。ヘリウムガス蓄冷器70は、ヘリウムガスを収容可能な管72を備え、管72は、ハニカム巻きによりコイル状に巻回されている。ここで、管72は、
図3および
図4を参照して述べた撚合管50であってもよい。あるいは、管72は、撚合管50に代えて、単管64であってもよい。ヘリウムガス蓄冷器70は、
図1および
図2を参照して説明した第2蓄冷器28の低温側蓄冷器28bとして用いられてもよい。
【0039】
ハニカム巻きは、ソレノイド巻きと同様に、コイルの公知の巻き方の一つである。ソレノイド巻きは上層のコイル線材を下層のコイル線材とほぼ平行となるように巻く方法であるのに対して、ハニカム巻きは上層のコイル線材を下層のコイル線材から角度をなして巻く方法である。ハニカム巻きは、ソレノイド巻きに比べて、線材間の隙間を大きくとることができる。また、ハニカム巻きでは、巻き角度を調節することで、線材間の隙間を調節することができる。
【0040】
したがって、
図6に示されるヘリウムガス蓄冷器70においても、
図1から
図4を参照して述べた実施の形態に係る第2蓄冷器28と同様に、極低温冷凍機10の作動ガスが管72どうしの隙間を流れることができる。ヘリウムガス蓄冷器70における圧力損失を低減することができる。
【0041】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0042】
上述の実施の形態では、撚合管50が複数の管52を撚り合わせて形成されている。しかしながら、ある実施の形態では、管52に代えて、撚合管50が用いられてもよい。すなわち、蓄冷器は、複数の撚合管50を撚り合わせた撚合管50の束を備えてもよい。こうした撚合管50の束が、例えばハニカム巻きで、またはソレノイド巻きなどそのほかの巻き方で、コイル状に巻き回されていてもよい。撚合管50の束は、一つの撚合管50よりも太いため、製造時に作業者にとって巻き回し作業が容易になりうるという利点がある。
【0043】
また、撚合管50、または撚合管50の束をコイル状に巻き回すことは、本発明において必須ではない。例えば、ある実施の形態においては、蓄冷器は、複数の直線状の撚合管50をまとめた束を備えてもよい。あるいは、ある実施の形態においては、蓄冷器は、網状に編み込まれた撚合管50を備えてもよい。
【0044】
上述の実施の形態では、GM冷凍機を例として説明しているが、本発明はこれに限定されない。ある実施の形態においては、極低温冷凍機10は、例えば、ソルベイ冷凍機、スターリング冷凍機、パルス管冷凍機など、他の形式の極低温冷凍機であってもよい。
【0045】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0046】
10 極低温冷凍機、 50 撚合管、 52 管。