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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025058512
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】極低温冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20250402BHJP
【FI】
F25B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023168494
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】森江 孝明
(57)【要約】
【課題】極低温冷凍機の長期的な信頼性を向上する。
【解決手段】極低温冷凍機10は、コールドヘッドモータ40と、コールドヘッドモータ40に連結されたクランク44と、コールドヘッドモータ40とクランク44を収容するコールドヘッドハウジング20と、クランク44を支持するクランク支持ベアリング50であって、クランク44とともにコールドヘッドハウジング20を第1室22aと第2室22bに区分けするようにコールドヘッドハウジング20に取り付けられたクランク支持ベアリング50と、第1室22aと第2室22bを接続する均圧通路58と、を備える。均圧通路58は、クランク44に形成されていてもよく、またはコールドヘッドハウジング20に形成されていてもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールドヘッドモータと、
前記コールドヘッドモータに連結されたクランクと、
前記コールドヘッドモータと前記クランクを収容するハウジングと、
前記クランクを支持するベアリングであって、前記クランクとともに前記ハウジングを二室に区分けするように前記ハウジングに取り付けられたベアリングと、
前記二室を接続する均圧通路と、を備えることを特徴とする極低温冷凍機。
【請求項2】
前記均圧通路は、前記クランクに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項3】
前記均圧通路は、前記ハウジングに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記極低温冷凍機の作動ガスを排出する排気ポートを備え、
前記二室は、前記排気ポートに接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の極低温冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温冷凍機には、たとえばギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機のように、作動ガスの膨張空間の容積を周期的に変化させるために往復動するディスプレーサを有するものがある。膨張空間の周期的な容積変動と適切に同期して膨張空間の圧力を変動させることにより、極低温冷凍機に冷凍サイクルが構成される。ディスプレーサの往復動を駆動する代表的な方式の1つとして、例えばスコッチヨーク機構などの運動変換機構を介してモータをディスプレーサに機械的に連結するタイプがある。運動変換機構は、モータの出力する回転運動をディスプレーサの直線的な往復動に変換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-57025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
極低温冷凍機の運転中、作動ガスの吸排気に応じた周期的な荷重がディスプレーサに作用し、これはモータへの負荷となる。高い冷凍能力をもつ大型の極低温冷凍機では、こうした作動ガスの吸排気に起因するモータの負荷は大きくなりがちである。過剰な負荷は、モータの動作異常や故障の原因となりうる。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、極低温冷凍機の長期的な信頼性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機は、コールドヘッドモータと、コールドヘッドモータに連結されたクランクと、コールドヘッドモータとクランクを収容するハウジングと、クランクを支持するベアリングであって、クランクとともにハウジングを二室に区分けするようにハウジングに取り付けられたベアリングと、二室を接続する均圧通路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、極低温冷凍機の長期的な信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図2】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図3】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
図4】実施の形態に係り、コールドヘッドの駆動部の要部の分解斜視図を概略的に示す図である。
図5】他の実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0010】
図1から図3は、実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。図1には極低温冷凍機10の外観が示される。図2には極低温冷凍機10の低温部の内部構造が示され、図3には駆動部の内部構造が示される。極低温冷凍機10は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機である。
【0011】
極低温冷凍機10は、圧縮機12と、膨張機14とを備える。圧縮機12は、極低温冷凍機10の作動ガスを膨張機14から回収し、回収した作動ガスを昇圧して、再び作動ガスを膨張機14に供給するよう構成されている。圧縮機12と膨張機14により極低温冷凍機10の冷凍サイクルが構成され、それにより極低温冷凍機10は所望の極低温冷却を提供することができる。膨張機14は、コールドヘッドともしばしば称される。コールドヘッドは通例、図示しない真空容器に、低温部が真空容器内に配置され駆動部が真空容器外の周囲環境(例えば室温大気圧環境)に配置されるようにして設置され、圧縮機12は周囲環境に配置される。作動ガスは、冷媒ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。理解のために、作動ガスの流れる方向を図1に矢印で示す。
【0012】
なお、一般に、圧縮機12から膨張機14に供給される作動ガスの圧力と、膨張機14から圧縮機12に回収される作動ガスの圧力は、ともに大気圧よりかなり高く、それぞれ第1高圧及び第2高圧と呼ぶことができる。説明の便宜上、第1高圧及び第2高圧はそれぞれ単に高圧及び低圧とも呼ばれる。典型的には、高圧は例えば2~3MPaである。低圧は例えば0.5~1.5MPaであり、例えば約0.8MPaである。理解のために、作動ガスの流れる方向を矢印で示す。
【0013】
膨張機14は、コールドヘッドシリンダ16と、ディスプレーサ組立体(以下では単にディスプレーサと呼ぶこともある)18と、コールドヘッドハウジング(以下、単にハウジングとも呼ぶ)20とを備える。コールドヘッドシリンダ16は、ディスプレーサ18の直線往復運動をガイドするとともに、ディスプレーサ18との間に作動ガスの膨張空間としての膨張室(32、34)を形成する。コールドヘッドシリンダ16はコールドヘッドハウジング20に固定され、それにより、膨張機14の筐体が構成され、ディスプレーサ18を収容する気密空間がコールドヘッドシリンダ16内に形成される。
【0014】
本書では、極低温冷凍機10の構成要素間の位置関係を説明するために、便宜上、ディスプレーサ18の軸方向往復動の上死点に近い側を「上」、下死点に近い側を「下」と表記することとする。上死点は膨張空間の容積が最大となるディスプレーサ18の位置であり、下死点は膨張空間の容積が最小となるディスプレーサ18の位置である。極低温冷凍機10の運転時には上方から下方へと温度が下がる温度勾配が生じるので、上側を高温側、下側を低温側と呼ぶこともできる。
【0015】
コールドヘッドシリンダ16は、第1シリンダ16a、第2シリンダ16bを有する。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2シリンダ16bが第1シリンダ16aよりも小径である。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは同軸に配置され、第1シリンダ16aの下端が第2シリンダ16bの上端に剛に連結されている。
【0016】
ディスプレーサ組立体18は、互いに連結された第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bを備え、これらは一体に移動する。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2ディスプレーサ18bが第1ディスプレーサ18aよりも小径である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは同軸に配置されている。
【0017】
第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに収容され、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに収容されている。第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに沿って軸方向に往復移動可能であり、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに沿って軸方向に往復移動可能である。
【0018】
図2に示されるように、第1ディスプレーサ18aは、第1蓄冷器26を収容する。第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの筒状の本体部の中に、例えば銅などの金網またはその他適宜の第1蓄冷材を充填することによって形成されている。第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は第1ディスプレーサ18aの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第1蓄冷材が第1ディスプレーサ18aに収容されてもよい。
【0019】
同様に、第2ディスプレーサ18bは、第2蓄冷器28を収容する。第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの筒状の本体部の中に、例えばビスマスなどの非磁性蓄冷材、HoCuなどの磁性蓄冷材、またはその他適宜の第2蓄冷材を充填することによって形成されている。第2蓄冷材は粒状に成形されていてもよい。第2ディスプレーサ18bの上蓋部および下蓋部は第2ディスプレーサ18bの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第2ディスプレーサ18bの上蓋部の下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第2蓄冷材が第2ディスプレーサ18bに収容されてもよい。
【0020】
ディスプレーサ18は、上部室30、第1膨張室32、第2膨張室34をコールドヘッドシリンダ16の内部に形成する。極低温冷凍機10によって冷却すべき所望の物体または媒体との熱交換のために、膨張機14は、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35を備える。上部室30は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部と第1シリンダ16aの上部との間に形成される。第1膨張室32は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部と第1冷却ステージ33との間に形成される。第2膨張室34は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部と第2冷却ステージ35との間に形成される。第1冷却ステージ33は、第1膨張室32を取り囲むように第1シリンダ16aの下部に固着され、第2冷却ステージ35は、第2膨張室34を取り囲むように第2シリンダ16bの下部に固着されている。
【0021】
第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に形成された作動ガス流路36aを通じて上部室30に接続され、第1ディスプレーサ18aの下蓋部に形成された作動ガス流路36bを通じて第1膨張室32に接続されている。第2蓄冷器28は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部から第2ディスプレーサ18bの上蓋部へと形成された作動ガス流路36cを通じて第1蓄冷器26に接続されている。また、第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部に形成された作動ガス流路36dを通じて第2膨張室34に接続されている。
【0022】
第1膨張室32、第2膨張室34と上部室30との間の作動ガス流れが、コールドヘッドシリンダ16とディスプレーサ18との間のクリアランスではなく、第1蓄冷器26、第2蓄冷器28に導かれるようにするために、第1シール38a、第2シール38bが設けられていてもよい。第1シール38aは、第1ディスプレーサ18aと第1シリンダ16aとの間に配置されるように第1ディスプレーサ18aの上蓋部に装着されてもよい。第2シール38bは、第2ディスプレーサ18bと第2シリンダ16bとの間に配置されるように第2ディスプレーサ18bの上蓋部に装着されてもよい。
【0023】
図3に示されるように、コールドヘッドハウジング20には、極低温冷凍機10の作動ガスの膨張機14への入口である吸気ポート20aと、膨張機14からの作動ガスの出口である排気ポート20bが設けられている。吸気ポート20aは、圧縮機12の高圧側に接続され、排気ポート20bは、圧縮機12の低圧側に接続されている。作動ガスは、吸気ポート20aから膨張機14に供給され、排気ポート20bから圧縮機12へと排出される。
【0024】
コールドヘッドの駆動部は、コールドヘッドモータ40と、ロータリーバルブ42と、運動変換機構43とを備える。駆動部のこれら構成要素は、コールドヘッドハウジング20の内部に画定される低圧ガス室22に収容されている。低圧ガス室22は、排気ポート20bを通じて圧縮機12の低圧側に連通している。そのため、低圧ガス室22は常に低圧に維持される。
【0025】
コールドヘッドモータ40は、ディスプレーサ18およびロータリーバルブ42の駆動源として膨張機14に設けられている。コールドヘッドモータ40は、適宜の電磁モータであってもよく、モータ回転軸40aを一定の回転速度で回転させるように構成され、またはモータ回転軸40aの回転速度を可変に制御可能としてもよい。
【0026】
ロータリーバルブ42は、圧縮機12の高圧側と低圧側を交互にコールドヘッドシリンダ16(つまり、上部室30、第1膨張室32および第2膨張室34)に接続し、コールドヘッドシリンダ16の吸気と排気とを周期的に切り替えるように構成されている。
【0027】
ロータリーバルブ42は、バルブロータ42aとバルブステータ42bを備え、バルブロータ42aは、バルブステータ42bに対し摺動しながら回転するようにバルブステータ42bと接触している。バルブステータ42bは、コールドヘッドハウジング20に固定されている。バルブステータ42bとコールドヘッドハウジング20との間には、バルブロータ42aの回転軸の方向にバルブステータ42bをバルブロータ42aに向かって押し付けるためのスプリングなどの弾性体が介在してもよい。
【0028】
コールドヘッドハウジング20にはロータリーバルブ42を上部室30に接続するハウジング内部流路24が形成されている。ロータリーバルブ42のバルブロータ42aとバルブステータ42bには、ハウジング内部流路24をコールドヘッドハウジング20の吸気ポート20aと低圧ガス室22に交互に接続するようにバルブ内部流路が形成されている。バルブ内部流路にはさまざまな公知の形態を採用することができ、ここでは詳述しない。
【0029】
運動変換機構43は、モータ回転軸40aの回転をロータリーバルブ42に伝達するとともにディスプレーサ18の直線往復動に変換するように、コールドヘッドモータ40をロータリーバルブ42とディスプレーサ18に連結するように構成されている。運動変換機構43の一例は後述する。モータ回転軸40aの一回転が運動変換機構43を介してディスプレーサ18の一往復をもたらし、それにより作動ガスの膨張空間の容積が周期的に変化する。同時に、モータ回転軸40aの一回転が運動変換機構43を介してロータリーバルブ42の一回転をもたらし、それにより作動ガスの膨張空間の圧力が周期的に変化する。
【0030】
図4は、実施の形態に係り、コールドヘッドの駆動部の要部の分解斜視図を概略的に示す図である。図4には、モータ回転軸40aと運動変換機構43が示されている。運動変換機構43は、この実施の形態では、スコッチヨーク機構を含む。よって、図3および図4に示されるように、運動変換機構43は、クランクピン44aを有するクランク44と、スコッチヨーク軸45と、クランクピン軸受46とを備える。スコッチヨーク軸45は、スコッチヨーク板45aと、上部ロッド45bと、下部ロッド45cとを備える。
【0031】
クランク44は、モータ回転軸40aに固定され、それにより、コールドヘッドモータ40に連結される。クランク44は、コールドヘッドモータ40とともにコールドヘッドハウジング20に収容されている。クランク44は、モータ回転軸40aとは反対側で、スコッチヨーク機構に向かって延出しているクランクピン44aを有する。クランクピン44aは、モータ回転軸40aから偏心した位置でモータ回転軸40aと平行に延びている。
【0032】
スコッチヨーク板45aは、横長窓47を有する矩形の板状部材である。横長窓47は、コールドヘッドの軸方向およびモータ回転軸40aに垂直な方向に延在する。この横長窓47にクランクピン軸受46が転動可能に配置される。クランクピン軸受46は例えば、ころ軸受であってもよい。クランクピン軸受46の中心には、クランクピン44aと係合する係合孔46aが形成されており、クランクピン44aが係合孔46aを貫通する。
【0033】
スコッチヨーク板45aに対してクランク44と反対側には、ロータリーバルブ42のバルブロータ42aがその中心軸をモータ回転軸40aと一致させて配置されており、係合孔46aを貫通したクランクピン44aの先端はバルブロータ42aに固定される。
【0034】
上部ロッド45bは、スコッチヨーク板45aの上枠中央から上方に延出し、下部ロッド45cは、スコッチヨーク板45aの下枠中央から下方に延出し、これらロッドは同軸に配置されている。スコッチヨーク板45aと上部ロッド45bは低圧ガス室22に収容され、下部ロッド45cはコールドヘッドハウジング20を貫通してコールドヘッドシリンダ16内へと延出している。下部ロッド45cの先端はコールドヘッドシリンダ16内でディスプレーサ18に連結されている。
【0035】
第1摺動軸受48aが上部ロッド45bとコールドヘッドハウジング20との間に設けられ、第2摺動軸受48bが下部ロッド45cとコールドヘッドハウジング20との間に設けられている。コールドヘッドハウジング20はその上部に上部ロッド45bを受け入れる凹部を有しており、第1摺動軸受48aはこの凹部に配置され、上部ロッド45bを軸方向に摺動可能に支持する。また、第2摺動軸受48bは、下部ロッド45cを通すコールドヘッドハウジング20の貫通穴が配置され、下部ロッド45cを軸方向に摺動可能に支持する。第2摺動軸受48bには、例えばスリッパーシールやクリアランスシールといったシール部が設けられ、気密に構成されており、そのため低圧ガス室22は上部室30から隔離されている。低圧ガス室22と上部室30との直接のガス流通はない。
【0036】
この実施の形態では、図3に示されるように、クランク44は、クランク支持ベアリング50によってコールドヘッドハウジング20に対して回転可能に支持されている。クランク支持ベアリング50は、クランク44の外周に固定された内輪と、コールドヘッドハウジング20に固定された外輪と、内輪と外輪との間に配置された転動体とを備えてもよく、例えば、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受など、適宜のベアリングであってもよい。クランク支持ベアリング50は、クランク44の回転を許容するとともに、作動ガスの吸排気に起因してディスプレーサ18からクランク44にかかるコールドヘッド軸方向(つまりスコッチヨーク軸45の延在する方向)の荷重を支えることができる。
【0037】
クランク支持ベアリング50は、クランク44とともに、コールドヘッドハウジング20内の低圧ガス室22を第1室22aと第2室22bに区分けするようにコールドヘッドハウジング20に取り付けられている。第1室22aにはコールドヘッドモータ40が収容され、第2室22bにはスコッチヨーク軸45とロータリーバルブ42が収容されている。
【0038】
コールドヘッドハウジング20へのクランク支持ベアリング50の取付の一例として、ベアリング保持部材52が用いられてもよい。ベアリング保持部材52は、クランク44との間に隙間を有してクランク44を囲むようにリング状の形状を有しており、コールドヘッドハウジング20に固定されている。ベアリング保持部材52は、クランク支持ベアリング50に対してコールドヘッドモータ40側で、クランク支持ベアリング50に隣接して配置されている。コールドヘッドハウジング20には、クランク支持ベアリング50に対してスコッチヨーク軸45側にベアリング保持部53が形成されている。クランク支持ベアリング50は、ベアリング保持部材52とベアリング保持部53に挟み込まれることで、モータ回転軸40aの方向に関して位置決めされている。ベアリング保持部材52とクランク支持ベアリング50との間には、例えばOリングなどの緩衝材54が挟み込まれていてもよい。
【0039】
クランク44と同様に、ロータリーバルブ42のバルブロータ42aも、バルブ支持ベアリング56によってコールドヘッドハウジング20に対して回転可能に支持されている。バルブ支持ベアリング56は、スコッチヨーク軸45に対してクランク支持ベアリング50と対称的に配置されてもよい。例えば、クランク支持ベアリング50とバルブ支持ベアリング56は、スコッチヨーク軸45から概ね等距離に配置されてもよい。このようにすれば、作動ガスの吸排気に起因してディスプレーサ18およびスコッチヨーク軸45に働く軸方向荷重をクランク支持ベアリング50とバルブ支持ベアリング56で均等に支持することができる。
【0040】
また、この実施の形態では、クランク44は、第1室22aと第2室22bを接続する均圧通路58を備える。第1室22aは、均圧通路58を通じて第2室22bに接続され、第2室22bは、排気ポート20bに接続されている。このようにして、低圧ガス室22、すなわち第1室22aと第2室22bは、排気ポート20bに接続されている。
【0041】
均圧通路58は、クランク44に形成された少なくとも1つの貫通穴であってもよく、モータ回転軸40aの方向に延在してもよい。図4に示されるように、クランク44は、均圧通路58として複数の貫通穴を有してもよく、これら貫通穴は、モータ回転軸40aが嵌め込まれるクランク44の軸穴44bの周囲に形成されていてもよい。
【0042】
均圧通路58の径は、軸穴44bの径以下、例えば、軸穴44bの径の90~100%であってもよい。均圧通路58の穴径を軸穴44bにそろえるか又はそれより若干小さくすることで、クランク44に軸穴44bを加工する工程で均圧通路58も同時に加工できる。クランク44を効率的に製造することができる。
【0043】
なお、均圧通路58は、貫通穴に限られない。例えば、均圧通路58は、クランク44の外周に形成された溝、切り欠きなど、クランク支持ベアリング50を跨いで第1室22aと第2室22bを接続する任意の形状であってもよい。
【0044】
極低温冷凍機10の上述の構成において、コールドヘッドモータ40が駆動されると、モータ回転軸40aが回転される。回転は、ロータリーバルブ42および運動変換機構43へと伝達される。モータ回転軸40aの回転により、クランクピン44aと係合したクランクピン軸受46は、円を描くように回転する。このときクランクピン軸受46は、スコッチヨーク板45aの横長窓47を往復移動し、それとともにスコッチヨーク軸45およびディスプレーサ18が軸方向に往復運動する。このようにして、コールドヘッドモータ40は、ディスプレーサ18の軸方向往復動を駆動するとともに、これと同期してロータリーバルブ42を回転させる。
【0045】
このようにして、同期した容積変動と圧力変動が膨張空間にもたらされ、極低温冷凍機10の冷凍サイクルが構成され、それにより極低温冷凍機10は所望の極低温冷却を提供することができる。第1冷却ステージ33は、第1冷却温度に冷却され、第2冷却ステージ35は、第1冷却温度より低い第2冷却温度に冷却されることができる。第1冷却温度は、例えば、約10K~約100Kの範囲、または約20K~約40Kの範囲にあってもよい。第2冷却温度は、例えば、約20K以下、または約10K以下、または約1K~約4Kの範囲にあってもよい。
【0046】
極低温冷凍機10の運転中、作動ガスの吸排気に応じた周期的な荷重がディスプレーサ18に作用する。ディスプレーサ18が上向きに移動するとき作動ガスが第1蓄冷器26、第2蓄冷器28を経由して膨張空間(32、34)に吸気されるため、ディスプレーサ18は、作動ガスから下向きの荷重を受ける。また、ディスプレーサ18が下向きに移動するとき作動ガスが膨張空間から排気されるため、ディスプレーサは作動ガスから上向きの荷重を受ける。ディスプレーサ18の移動方向とは逆向きのこのような荷重は、コールドヘッドモータ40への負荷となる。高い冷凍能力をもつ大型の極低温冷凍機ではとりわけ、こうした作動ガスの吸排気に起因するモータの負荷は大きくなりがちである。過剰な負荷は、モータの動作異常や故障の原因となりうる。
【0047】
クランク支持ベアリング50によるクランク44の支持は、コールドヘッドモータ40へのこうした負荷を軽減することに役立つ。クランク44はモータ回転軸40aに比べてスコッチヨーク軸45の近くに配置されているから、クランク44をベアリングで支持することにより、モータ回転軸40aを支持する場合に比べて、スコッチヨーク軸45から受ける軸荷重をより効果的に支持できる。
【0048】
ところが、既存の極低温冷凍機では、中実のクランクが使用されているため、クランクがベアリングで支持された場合、クランクとベアリングによってコールドヘッドハウジング内の空間が二分されることになる。クランクとベアリングを境界として、モータ側の空間とスコッチヨーク側の空間で作動ガスの圧力が異なり、これら2つの空間に差圧が生成されうる。差圧によりベアリングに働く荷重は、ベアリングの動作や信頼性に悪影響を及ぼす可能性が懸念される。
【0049】
この実施の形態によると、クランク44に均圧通路58が設けられているため、クランク支持ベアリング50の両側、つまり第1室22aと第2室22bに差圧が生じるのを回避することができる。これにより、クランク支持ベアリング50への負荷を軽減し、ひいては極低温冷凍機10の長期的な信頼性を向上することができる。
【0050】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0051】
図5は、他の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。図5には、図3と同様に、コールドヘッドの駆動部の内部構造が示される。図5に示されるように、均圧通路58は、コールドヘッドハウジング20に形成されてもよい。このようにしても、クランク支持ベアリング50の両側、つまり第1室22aと第2室22bに差圧が生じるのを回避することができる。
【0052】
上記においては、二段式のGM冷凍機に言及して実施の形態を説明した。本発明はこれに限られず、実施の形態に係る均圧通路58は、単段式または多段式のGM冷凍機、または、クランク44がコールドヘッドハウジング20にクランク支持ベアリング50で支持されるその他の極低温冷凍機に適用可能である。
【0053】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0054】
10 極低温冷凍機、 12 圧縮機、 14 膨張機、 20 コールドヘッドハウジング、 20a 吸気ポート、 20b 排気ポート、 22 低圧ガス室、 22a 第1室、 22b 第2室、 40 コールドヘッドモータ、 44 クランク、 50 クランク支持ベアリング、 58 均圧通路。
図1
図2
図3
図4
図5