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特開2025-58514経路形成装置、経路設定装置、駆動装置、経路形成方法、記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025058514
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】経路形成装置、経路設定装置、駆動装置、経路形成方法、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/12 20200101AFI20250402BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20250402BHJP
   G06F 111/20 20200101ALN20250402BHJP
【FI】
G06F30/12
G06F30/13
G06F111:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023168496
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】沖 智浩
(72)【発明者】
【氏名】市川 智子
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA07
5B146DG01
5B146DL01
5B146FA02
(57)【要約】
【課題】被駆動物の経路に関するユーザの操作負担を軽減できる経路形成装置等を提供する。
【解決手段】経路管理装置4は、連続的に接続されることによって被駆動物の経路を形成する、互いに異なる形状の複数の経路要素を格納している経路要素格納部40と、ユーザUが操作可能な操作画面Dに表示されている既存の経路要素からのユーザUによる移動操作を検出する操作検出部41と、移動操作における操作画面D上の移動軌跡と、既存の経路要素との連続性を考慮して、経路要素格納部40に格納されている複数の経路要素のうち一の経路要素を選択する経路要素選択部45と、一の経路要素を、既存の経路要素と連続的に接続されるように操作画面D上に配置する経路要素自動配置部46と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作画面上におけるユーザの移動操作を検出する操作検出部と、
前記移動操作に基づく移動軌跡と、前記操作画面に表示されている既存の経路要素との連続性を考慮して、当該既存の経路要素と連続的に接続される経路要素を配置し、被駆動物の経路を形成する経路要素自動配置部と、
を備える経路形成装置。
【請求項2】
連続的に接続されることによって前記被駆動物の経路を形成する、互いに異なる形状の複数の前記経路要素を格納している経路要素格納部と、
前記操作画面に表示されている前記既存の経路要素からの前記移動操作を検出する前記操作検出部と、
前記移動軌跡と、前記既存の経路要素との連続性を考慮して、前記経路要素格納部に格納されている前記複数の経路要素のうち一の経路要素を選択する経路要素選択部と、
前記一の経路要素を、前記既存の経路要素と連続的に接続されるように前記操作画面上に配置する前記経路要素自動配置部と、
を備える請求項1に記載の経路形成装置。
【請求項3】
前記経路要素格納部に格納されている前記複数の経路要素は、直線状経路要素および曲線状経路要素を含む、請求項2に記載の経路形成装置。
【請求項4】
前記操作画面は、それぞれ前記経路要素を一つ配置可能な複数の単位領域に分割されており、
前記経路要素自動配置部は、前記一の経路要素を、前記移動軌跡が通過した前記既存の経路要素に隣接する一の単位領域に配置する、
請求項3に記載の経路形成装置。
【請求項5】
前記移動軌跡が前記一の単位領域に入った入口点と、当該移動軌跡が当該一の単位領域から出た出口点を検出する出入口点検出部を備え、
前記経路要素選択部は、前記入口点と前記出口点の相対的な位置関係と、前記既存の経路要素との連続性を考慮して、前記一の経路要素を選択する、
請求項4に記載の経路形成装置。
【請求項6】
前記曲線状経路要素は、互いに曲率が異なる第1曲線状経路要素および第2曲線状経路要素を含み、
前記経路要素選択部は、前記入口点と前記出口点の相対的な位置関係と、前記既存の経路要素との連続性を考慮して、前記直線状経路要素、前記第1曲線状経路要素、前記第2曲線状経路要素のうち前記一の経路要素を選択する、
請求項5に記載の経路形成装置。
【請求項7】
前記複数の経路要素は帯状であり、その幅方向の一方側の縁が前記被駆動物を実際に駆動する軌道面に対応する軌道線として設定されており、
前記経路要素選択部は、前記移動軌跡と、前記既存の経路要素における軌道線との連続性を考慮して、前記一の経路要素を選択し、
前記経路要素自動配置部は、前記一の経路要素を、その軌道線が前記既存の経路要素における軌道線と連続的に接続されるように前記操作画面上に配置する、
請求項3から6のいずれかに記載の経路形成装置。
【請求項8】
前記曲線状経路要素は、内周側の縁を前記軌道線とする内周軌道経路要素および外周側の縁を前記軌道線とする外周軌道経路要素を含む、請求項7に記載の経路形成装置。
【請求項9】
前記操作検出部によって検出される前記ユーザによる配置操作に応じて、前記経路における最初の前記既存の経路要素となるべき起点経路要素を前記操作画面上に配置する起点経路要素配置部を備える、請求項3から6のいずれかに記載の経路形成装置。
【請求項10】
前記操作検出部は、形成された前記被駆動物の経路に対する前記ユーザによる選択操作を検出し、
前記選択操作に応じて、前記経路要素自動配置部によって前記操作画面上に配置された連続する複数の経路要素を含む任意の経路領域を一括して選択する領域選択部を備える、
請求項2から6のいずれかに記載の経路形成装置。
【請求項11】
前記操作検出部によって検出される前記ユーザによる入力操作に応じて、前記領域選択部によって選択された前記経路領域に対する設定情報を入力する設定情報入力部を備える、請求項10に記載の経路形成装置。
【請求項12】
複数の経路要素が連続的に接続されることによって形成される被駆動物の経路を、ユーザが操作可能な操作画面に表示する経路表示部と、
前記経路に対する前記ユーザによる選択操作を検出する操作検出部と、
前記選択操作に応じて、前記経路において連続する複数の経路要素を含む任意の経路領域を一括して選択する領域選択部と、
前記操作検出部によって検出される前記ユーザによる入力操作に応じて、前記領域選択部によって選択された前記経路領域に対する設定情報を入力する設定情報入力部と、
を備える経路設定装置。
【請求項13】
操作画面上におけるユーザの移動操作を検出する操作検出部と、
前記移動操作に基づく移動軌跡と、前記操作画面に表示されている既存の経路要素との連続性を考慮して、当該既存の経路要素と連続的に接続される経路要素を配置し、被駆動物の経路を形成する経路要素自動配置部と、
前記経路要素自動配置部によって形成された経路上で前記被駆動物を駆動する駆動部と、
を備える駆動装置。
【請求項14】
操作画面上におけるユーザの移動操作を検出することと、
前記移動操作に基づく移動軌跡と、前記操作画面に表示されている既存の経路要素との連続性を考慮して、当該既存の経路要素と連続的に接続される経路要素を配置し、被駆動物の経路を形成することと、
を実行する経路形成方法。
【請求項15】
操作画面上におけるユーザの移動操作を検出することと、
前記移動操作に基づく移動軌跡と、前記操作画面に表示されている既存の経路要素との連続性を考慮して、当該既存の経路要素と連続的に接続される経路要素を配置し、被駆動物の経路を形成することと、
をコンピュータに実行させる経路形成プログラムを記憶している記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、環状軌道に沿って可動子を駆動するリニア搬送システムが開示されている。このような環状軌道は、画像オブジェクトとしての直線状の軌道要素および曲線状の軌道要素を、ユーザが操作画面上に配置して組み合わせることによって設計可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-99385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の軌道設計では、ユーザが配置したい軌道要素を一つずつ選択し、ドラッグ・アンド・ドロップ等の選択操作および移動操作を通じて、所望の位置まで移動させて配置していた。このように、ユーザはドラッグ・アンド・ドロップ等の操作を、配置したい全ての軌道要素について行う必要があった。このため、設計対象の軌道が長い場合や、複雑な形をしている場合には、ユーザの操作負担が大きくなり、軌道設計にかかる時間も長期化してしまう。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、被駆動物の経路に関するユーザの操作負担を軽減できる経路形成装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の経路形成装置は、操作画面上におけるユーザの移動操作を検出する操作検出部と、移動操作に基づく移動軌跡と、操作画面に表示されている既存の経路要素との連続性を考慮して、当該既存の経路要素と連続的に接続される経路要素を配置し、被駆動物の経路を形成する経路要素自動配置部と、を備える。
【0007】
本態様では、ユーザによる移動操作に応じて、新たな経路要素が当該既存の経路要素と連続的に接続されるように配置される。新たな経路要素の選択は自動的に行われるため、ユーザは明示的な選択操作を行う必要がない。このため、本態様によれば、被駆動物の経路設計におけるユーザの操作負担を軽減できる。
【0008】
本開示の別の態様は、経路設定装置である。この装置は、複数の経路要素が連続的に接続されることによって形成される被駆動物の経路を、ユーザが操作可能な操作画面に表示する経路表示部と、経路に対するユーザによる選択操作を検出する操作検出部と、選択操作に応じて、経路において連続する複数の経路要素を含む任意の経路領域を一括して選択する領域選択部と、ユーザによる入力操作に応じて、領域選択部によって選択された経路領域に対する設定情報を入力する設定情報入力部と、を備える。
【0009】
本態様では、ユーザによる選択操作に応じて複数の経路要素を含む経路領域を一括して選択でき、当該経路領域に対する設定情報をまとめて入力できる。このため、本態様によれば、被駆動物の経路設定におけるユーザの操作負担を軽減できる。
【0010】
本開示の更に別の態様は、駆動装置である。この装置は、操作画面上におけるユーザの移動操作を検出する操作検出部と、移動操作に基づく移動軌跡と、操作画面に表示されている既存の経路要素との連続性を考慮して、当該既存の経路要素と連続的に接続される経路要素を配置し、被駆動物の経路を形成する経路要素自動配置部と、経路要素自動配置部によって形成された経路上で被駆動物を駆動する駆動部と、を備える。
【0011】
本開示の更に別の態様は、経路形成方法である。この方法は、操作画面上におけるユーザの移動操作を検出することと、移動操作に基づく移動軌跡と、操作画面に表示されている既存の経路要素との連続性を考慮して、当該既存の経路要素と連続的に接続される経路要素を配置し、被駆動物の経路を形成することと、を実行する。
【0012】
本開示の更に別の態様は、記憶媒体である。この記憶媒体は、操作画面上におけるユーザの移動操作を検出することと、移動操作に基づく移動軌跡と、操作画面に表示されている既存の経路要素との連続性を考慮して、当該既存の経路要素と連続的に接続される経路要素を配置し、被駆動物の経路を形成することと、をコンピュータに実行させる経路形成プログラムを記憶している。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本開示に包含される。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、被駆動物の経路に関するユーザの操作負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】リニア搬送システムの全体構造を示す斜視図である。
図2】リニア搬送システムの経路管理装置の機能ブロック図である。
図3】経路要素格納部に格納されている経路要素の例を模式的に示す。
図4】様々な経路要素を組み合わせることで可動子の経路を作成可能な経路作成領域を模式的に示す。
図5】可動子の経路の作成例を示す。
図6】起点経路要素の方向の調整例を示す。
図7】可動子の経路の作成例を示す。
図8】可動子の経路の作成例を示す。
図9】出入口点検出部および経路要素選択部が実行する処理のコンセプトを模式的に示す。
図10】可動子の経路の作成例を示す。
図11】可動子の経路の作成例を示す。
図12】可動子の経路の作成例を示す。
図13】可動子の経路の作成例を示す。
図14】可動子の経路に対する処理例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態(以下では、実施形態とも表される)について詳細に記述する。記述および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する記述を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、記述の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。実施形態において提示される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。実施形態は、便宜的に、それを実現する機能毎および/または機能群毎の構成要素に分解されて提示される。但し、実施形態における一つの構成要素が、実際には別体としての複数の構成要素の組合せによって実現されてもよいし、実施形態における複数の構成要素が、実際には一体としての一つの構成要素によって実現されてもよい。
【0017】
図1は、本開示に係る駆動装置の一態様であるリニア搬送システム1の全体構造を示す斜視図である。リニア搬送システム1は、環状のレール、軌道、経路等を構成する固定子2と、当該固定子2に対して駆動されてレールに沿って移動可能な複数の被駆動物または可動子3A、3B、3C、3D(以下では、総称して被駆動物3または可動子3とも表される)を備える。固定子2に設けられる電磁石またはコイルと、可動子3に設けられる永久磁石が互いに対向することで、環状のレールに沿って駆動部またはアクチュエータとしてのリニアモータが構成されている。
【0018】
なお、固定子2が形成するレールは環状に限らない任意の形状でよい。例えば、レールは直線状でもよいし、曲線状でもよいし、一つのレールが複数のレールに分岐してもよいし、複数のレールが一つのレールに合流してもよい。また、固定子2が形成するレールの設置方向も任意である、図1の例では水平面内にレールが配設されるが、レールは鉛直面内に配設されてもよいし、任意の傾斜角の平面内や曲面内に配設されてもよい。
【0019】
固定子2は、水平方向を法線方向とするレール面21を有する。軌道面としてのレール面21はレールの形成方向に沿って帯状に延在し、図1の例のように環状のレールを形成する場合は、仮想的な両端が連結された無端帯状となる。このように任意の形状のレールを形成可能なレール面21には、電磁石を備える複数の駆動モジュール(不図示)が、レールに沿って連続的または周期的に埋設または配置されている。駆動モジュールにおける電磁石は、可動子3の永久磁石および/または電磁石自体に対してレールに沿った推進力または推力を及ぼす磁界を発生させる。具体的には、これらの多数の電磁石に三相交流等の駆動電流を流すと、永久磁石を備える可動子3をレールに沿う所望の接線方向に直線駆動する移動磁界が発生する。
【0020】
なお、図1の例では環状のレールを水平面内に形成するレール面21の法線方向が水平方向であったが、レール面21の法線方向は鉛直方向その他の任意の方向でもよい。また、後述されるように、レール面21は、図1に示されるようにレールの外周側の表面だけでなく、レールの内周側の表面に設けられてもよい。このようなレールの外周側および/または内周側の表面としてのレール面21は、上記のような駆動部としての駆動モジュールを当該表面の直下に備え、可動子3を実際に駆動する軌道面として機能する。
【0021】
固定子2において、レール面21に対して垂直な上面または下面に設けられる測位部22には、可動子3に取り付けられる測位対象または測位スケールとしての磁気スケール(不図示)の位置を測定可能な複数の位置検知部としての磁気センサ(不図示)が連続的にまたは周期的に埋設されている。一定ピッチの縞状の磁気パターンまたは磁気目盛りによって形成される磁気スケールを測位対象とする磁気センサは、一般的に複数の磁気検出ヘッドを備える。磁気スケールの磁気パターンのピッチまたは周期に対して、複数の磁気検出ヘッドの間隔をずらすことによって、磁気センサは磁気スケールの位置を高精度に測定できる。二つの磁気検出ヘッドが設けられる典型的な磁気センサでは、例えば、二つの磁気検出ヘッドの間隔が磁気スケールの磁気パターンに対して1/4ピッチずれている(位相が90度ずれている)。
【0022】
なお、以上とは逆に、可動子3に磁気センサを設け、固定子2に磁気スケールを設けてもよい。また、測位部22によって測定された可動子3の位置を時間で微分すれば可動子3の速度を検知でき、当該速度を時間で微分すれば可動子3の加速度を検知できる。なお、以上とは逆に、可動子3に磁気センサを設け、固定子2に磁気スケールを設けてもよい。
【0023】
固定子2および/または可動子3に設けられる位置検知部および可動子3に取り付けられる測位対象または測位スケールは以上のような磁気式に限らず、光学式その他の方式でもよい。光学式の場合、可動子3(または固定子2)には一定ピッチの縞模様または目盛りによって形成される光学スケールが取り付けられ、固定子2(または可動子3)には光学スケールの縞模様を光学的に読み取り可能な光学センサが設けられる。磁気式や光学式では、位置検知部が測位対象(磁気スケールや光学スケール)を非接触で測定するため、可動子3が搬送する被搬送物が飛散して測位箇所(固定子2の上面)に入り込んだ場合の位置検知部の故障等のリスクを低減できる。但し、光学式では測位箇所に入り込んだ液体や粉体等の被搬送物によって光学スケールが覆われると測位精度が悪化してしまうため、磁性が無視できる被搬送物であれば測位箇所に入り込んでも測位精度を悪化させない磁気式とするのが好ましい。
【0024】
可動子3は、固定子2のレール面21に対向する可動子本体31と、可動子本体31の上部から水平方向に張り出して固定子2の測位部22に対向する被測位部32と、被測位部32とは反対側(固定子2から遠い側)に可動子本体31から水平方向に張り出して被搬送物が載置または固定される搬送部33を備える。可動子本体31は、レールに沿って固定子2のレール面21に埋設されている複数の電磁石と対向する一または複数の永久磁石(不図示)を備える。固定子2の電磁石が発生させる移動磁界が可動子3の永久磁石および/または電磁石自体にレールの接線方向の直線動力または推進力を加えるため、可動子3は固定子2に対してレール面21に沿って直線駆動される。
【0025】
可動子3の被測位部32には、測位対象または測位スケールとしての磁気スケールや光学スケールが、固定子2の測位部22に設けられる位置検知部(磁気センサや光学センサ)と対向するように設けられる。位置検知部が固定子2の上面に設けられる図1の例では、磁気スケール等の測位対象が可動子3の被測位部32の下面に取り付けられる。測位部22および被測位部32が磁気式の場合、レール面21の電磁石および可動子本体31の永久磁石の間の磁界が、測位部22および被測位部32の磁気測位に影響しないように、固定子2においてはレール面21と測位部22を異なる面または離れた箇所に形成し、可動子3においては可動子本体31と被測位部32を異なる面または離れた箇所に形成するのが好ましい。
【0026】
図1では四つの可動子3A、3B、3C、3Dが例示されたが、例えば多数の被搬送物を搬送するリニア搬送システム1では、1,000を超える数の可動子3が必要になることも想定される。
【0027】
図2は、本実施形態に係るリニア搬送システム1の経路形成装置および/または経路設定装置としての経路管理装置4の機能ブロック図である。経路管理装置4は、経路要素格納部40と、操作検出部41と、経路表示部42と、起点経路要素配置部43と、起点経路要素方向調整部44と、経路要素選択部45と、経路要素自動配置部46と、出入口点検出部47と、領域選択部48と、設定情報入力部49を備える。経路管理装置4が以下で説明する作用および/または効果の少なくとも一部を実現できる限り、これらの機能ブロックの一部は省略されてもよい。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働によって実現されてもよい。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。
【0028】
本実施形態に係る経路形成装置は、例えば、経路要素格納部40、操作検出部41、経路表示部42、起点経路要素配置部43、起点経路要素方向調整部44、経路要素選択部45、経路要素自動配置部46、出入口点検出部47、領域選択部48、設定情報入力部49の全部または一部によって構成される。本実施形態に係る経路設定装置は、例えば、操作検出部41、経路表示部42、領域選択部48、設定情報入力部49の全部または一部によって構成される。
【0029】
経路管理装置4は、リニア搬送システム1の前述のレールに対応する可動子3の経路の形成や設定を行うユーザUを、操作画面としてのディスプレイD(以下では、操作画面Dとも表される)を通じて支援する装置である。ユーザUは、ディスプレイDに表示されている経路に関する様々な情報を視認しながら、後述される操作検出部41を通じて経路の形成や設定に関する様々な操作を行う。
【0030】
操作検出部41は、ユーザUによる操作画面Dに対する後述される様々な操作を検出する。操作検出部41は、例えば、ユーザUによる操作画面Dに対する接触操作またはタッチ操作を検出可能なタッチパネルまたはタッチスクリーンによって構成されてもよい。また、操作検出部41は、ディスプレイDまたはモニタが接続されている不図示のコンピュータの任意の入力装置またはポインティングデバイスであって、操作画面D上の任意の操作位置を指定可能なものによって構成されてもよい。
【0031】
詳細については後述するが、経路表示部42は、可動子3の経路をユーザUが作成可能な経路作成領域、当該経路作成領域においてユーザUが作成中の経路または経路要素、当該経路作成領域においてユーザUが作成した経路等を、ユーザUが操作可能な操作画面Dに表示する。
【0032】
操作画面Dに表示される経路作成領域では、後述されるユーザUによる様々な操作に応じて、可動子3の経路が作成される。具体的には、経路要素格納部40に格納されている互いに異なる様々な形状および/または構成の経路要素が、ユーザUによる操作に応じて組み合わされる、または、連続的に接続されることによって、可動子3の経路が作成される。
【0033】
図3は、経路要素格納部40に格納されている経路要素の例を模式的に示す。各経路要素は、後述されるように操作画面Dにおける経路作成領域を構成する単位領域URに一つずつ配置されうる画像オブジェクトである。帯状の各経路要素は、図1における軌道としての固定子2を所定サイズまたは所定長の各軌道要素または各軌道単位に分割したものを、上面視(図1における測位部22が正面となる方向)で模式的に表したものである。図3において太い実線で模式的に示されるように、帯状の各経路要素は、その幅方向の一方側の縁が、図1におけるレール面21に対応する軌道線Rとして設定されている。
【0034】
経路要素格納部40に格納されている多数の経路要素は、直線状経路要素および曲線状経路要素に大別される。
【0035】
図示の例では、直線状経路要素が、外周直線経路要素OSと内周直線経路要素ISを含む。外周直線経路要素OSは、単位領域URの一つの頂点から隣接する頂点まで直線状に延びる経路要素であり、その外周側の縁が軌道線Rとして設定されているものである。内周直線経路要素ISは、単位領域URの一つの頂点から隣接する頂点まで直線状に延びる経路要素であり、その内周側の縁が軌道線Rとして設定されているものである。
【0036】
図示の例では、曲線状経路要素が、外周左曲線経路要素OLC1、OLC2、外周右曲線経路要素ORC1、ORC2、内周左曲線経路要素ILC1、ILC2、内周右曲線経路要素IRC1、IRC2を含む。
【0037】
第1曲線状経路要素としての外周左曲線経路要素OLC1は、単位領域URの一つの頂点から対角線上の頂点まで曲線状に延びる経路要素であり、その外周側の縁が軌道線Rとして設定されている外周軌道経路要素である。この外周左曲線経路要素OLC1の両端部の方向がなす角度は、例えば90度である。第2曲線状経路要素としての外周左曲線経路要素OLC2は、単位領域URの一つの頂点から、隣接する頂点と対角線上の頂点の中点まで曲線状に延びる経路要素であり、その外周側の縁が軌道線Rとして設定されている外周軌道経路要素である。この外周左曲線経路要素OLC1の両端部の方向がなす角度は、例えば45度である。このように、第1曲線状経路要素としての外周左曲線経路要素OLC1および第2曲線状経路要素としての外周左曲線経路要素OLC2は、互いに曲率または屈曲角度が異なる。
【0038】
第1曲線状経路要素としての外周右曲線経路要素ORC1は、単位領域URの一つの頂点から対角線上の頂点まで曲線状に延びる経路要素であり、その外周側の縁が軌道線Rとして設定されている外周軌道経路要素である。この外周右曲線経路要素ORC1の両端部の方向がなす角度は、例えば90度である。第2曲線状経路要素としての外周右曲線経路要素ORC2は、単位領域URの一つの頂点から、隣接する頂点と対角線上の頂点の中点まで曲線状に延びる経路要素であり、その外周側の縁が軌道線Rとして設定されている外周軌道経路要素である。この外周右曲線経路要素ORC1の両端部の方向がなす角度は、例えば45度である。このように、第1曲線状経路要素としての外周右曲線経路要素ORC1および第2曲線状経路要素としての外周右曲線経路要素ORC2は、互いに曲率または屈曲角度が異なる。
【0039】
外周左曲線経路要素OLC1および外周右曲線経路要素ORC1は、図3における上下方向の単位領域URの対称軸に関して線対称である。本実施形態では、このような線対称の関係にある曲線状経路要素の一方(例えば、外周左曲線経路要素OLC1)について便宜的に「左」の語を使用し、他方(例えば、外周右曲線経路要素ORC1)について便宜的に「右」の語を使用する。ここでの「左」および「右」は、互いに線対称の関係にあるということのみを意味する。なお、外周左曲線経路要素OLC1および外周右曲線経路要素ORC1のように屈曲角度が90度である場合は、両者が点対称であるため単位領域URの中心の周りに回転させれば一致する。後述されるように、経路要素自動配置部46は各経路要素を適切に回転した上で配置するため、互いに点対称な外周左曲線経路要素OLC1および外周右曲線経路要素ORC1に実質的な差異はなく、一方のみが経路要素格納部40に格納されてもよい。
【0040】
外周左曲線経路要素OLC2および外周右曲線経路要素ORC2は、図3における上下方向の単位領域URの対称軸に関して線対称である。ここで、外周左曲線経路要素OLC2および外周右曲線経路要素ORC2のように屈曲角度が90度でない場合は、両者が点対称でないため単位領域URの中心の周りに回転させても一致しない。このため、一方が省略されてもよい外周左曲線経路要素OLC1および外周右曲線経路要素ORC1と異なり、外周左曲線経路要素OLC2および外周右曲線経路要素ORC2は両方が経路要素格納部40に格納されるのが好ましい。
【0041】
第1曲線状経路要素としての内周左曲線経路要素ILC1は、単位領域URの一つの頂点から対角線上の頂点まで曲線状に延びる経路要素であり、その内周側の縁が軌道線Rとして設定されている内周軌道経路要素である。この内周左曲線経路要素ILC1の両端部の方向がなす角度は、例えば90度である。第2曲線状経路要素としての内周左曲線経路要素ILC2は、単位領域URの一つの頂点から、隣接する頂点と対角線上の頂点の中点まで曲線状に延びる経路要素であり、その内周側の縁が軌道線Rとして設定されている内周軌道経路要素である。この内周左曲線経路要素ILC1の両端部の方向がなす角度は、例えば45度である。このように、第1曲線状経路要素としての内周左曲線経路要素ILC1および第2曲線状経路要素としての内周左曲線経路要素ILC2は、互いに曲率または屈曲角度が異なる。
【0042】
第1曲線状経路要素としての内周右曲線経路要素IRC1は、単位領域URの一つの頂点から対角線上の頂点まで曲線状に延びる経路要素であり、その内周側の縁が軌道線Rとして設定されている内周軌道経路要素である。この内周右曲線経路要素IRC1の両端部の方向がなす角度は、例えば90度である。第2曲線状経路要素としての内周右曲線経路要素IRC2は、単位領域URの一つの頂点から、隣接する頂点と対角線上の頂点の中点まで曲線状に延びる経路要素であり、その内周側の縁が軌道線Rとして設定されている内周軌道経路要素である。この内周右曲線経路要素IRC1の両端部の方向がなす角度は、例えば45度である。このように、第1曲線状経路要素としての内周右曲線経路要素IRC1および第2曲線状経路要素としての内周右曲線経路要素IRC2は、互いに曲率または屈曲角度が異なる。
【0043】
内周左曲線経路要素ILC1および内周右曲線経路要素IRC1は、図3における上下方向の単位領域URの対称軸に関して線対称である。なお、内周左曲線経路要素ILC1および内周右曲線経路要素IRC1のように屈曲角度が90度である場合は、両者が点対称であるため単位領域URの中心の周りに回転させれば一致する。後述されるように、経路要素自動配置部46は各経路要素を適切に回転した上で配置するため、互いに点対称な内周左曲線経路要素ILC1および内周右曲線経路要素IRC1に実質的な差異はなく、一方のみが経路要素格納部40に格納されてもよい。
【0044】
内周左曲線経路要素ILC2および内周右曲線経路要素IRC2は、図3における上下方向の単位領域URの対称軸に関して線対称である。ここで、内周左曲線経路要素ILC2および内周右曲線経路要素IRC2のように屈曲角度が90度でない場合は、両者が点対称でないため単位領域URの中心の周りに回転させても一致しない。このため、一方が省略されてもよい内周左曲線経路要素ILC1および内周右曲線経路要素IRC1と異なり、内周左曲線経路要素ILC2および内周右曲線経路要素IRC2は両方が経路要素格納部40に格納されるのが好ましい。
【0045】
図4は、図3に例示されるような様々な形状および/または構成の経路要素を組み合わせることで可動子3の経路を作成可能な、操作画面Dに表示される経路作成領域Aを模式的に示す。初期状態または経路作成開始状態を示す図4の例における経路作成領域Aには、経路要素および経路が未だ配置されていない。図4に模式的に示されるように、経路作成領域Aは、それぞれ経路要素を一つ配置可能な複数の単位領域URに分割されている。図4の例では、大きい矩形状の経路作成領域Aが、小さい矩形状の単位領域URに格子状に分割されているが、経路作成領域Aおよび/または各単位領域URの形状は矩形状に限られず、各単位領域URの位置や方向も格子状に限られない。
【0046】
例えば、図3に示される経路要素のうち、直線状経路要素OS、ISと90度屈曲曲線状経路要素OLC1、ORC1、ILC1、IRC1のみが経路作成に使用される場合は、図4のような矩形状かつ格子状の単位領域URで十分である。一方、図3に示される経路要素のうち、45度屈曲曲線状経路要素OLC2、ORC2、ILC2、IRC2が使用される場合は、その一端部(図3における上端部)が単位領域URの頂点で終わらない。この場合、図4のような単位領域URの格子状配置では、経路要素を連続的に接続できなくなってしまう。そこで、45度屈曲曲線状経路要素OLC2、ORC2、ILC2、IRC2等の変則的な経路要素が配置された場合には、それと連続的に接続される次の経路要素を収められるように、隣接する単位領域URの位置および/または方向が自動的に調整される。
【0047】
このように、単位領域URの配置や形状は、図4に示されるような固定的なものに限らず、後述されるように順次配置される経路要素に応じて動的に変化するものでもよい。なお、図4の例では、矩形状および格子状の単位領域URの全てが点線によって模式的に示されているが、実際の経路作成領域Aまたは操作画面Dでは単位領域URが全く表示されなくてもよいし、現在または次の操作に関わる一部の単位領域URのみが表示されてもよい。例えば、図4の例では、ユーザUによって選択された現在の操作対象の単位領域SRが実線で示されているが、この操作対象領域SRのみが経路作成領域Aに表示されてもよいし、当該操作対象領域SRに加えて、それに隣接する(例えば、図4における上下左右の)単位領域URのみが経路作成領域Aに表示されてもよい。
【0048】
図5に示されるように、起点経路要素配置部43は、操作検出部41によって検出されるユーザUによる操作対象領域SRの選択操作および/または配置操作に応じて、作成対象の経路における最初の経路要素となる起点経路要素を、操作画面Dおよび経路作成領域Aにおける操作対象領域SR上に配置する。この起点経路要素は、経路要素格納部40に格納されている任意の経路要素でもよい。但し、起点経路要素は、直線状経路要素であるのが好ましく、図5の例では、外周直線経路要素OSが起点経路要素として、操作対象領域SR上に配置されている。起点経路要素は、内周直線経路要素ISでもよいし、操作検出部41によって検出されるユーザUによる選択操作に応じて外周直線経路要素OSおよび内周直線経路要素ISのうちから選択された直線状経路要素でもよいし、操作検出部41によって検出されるユーザUによる選択操作に応じて選択された曲線状経路要素でもよい。
【0049】
図6に示されるように、起点経路要素方向調整部44は、操作検出部41によって検出されるユーザUによる方向調整操作に応じて、操作画面Dおよび経路作成領域Aにおける操作対象領域SR上における起点経路要素の方向を調整する。図6の例では、図5の例と同様に外周直線経路要素OSが起点経路要素として操作対象領域SR上に配置されており、当該外周直線経路要素OSまたは当該操作対象領域SRを対象とするユーザUによるタップやクリック等の一回の方向調整操作に応じて、当該外周直線経路要素OSが90度ずつ回転する。このように、ユーザUは、起点経路要素配置部43を通じて配置した起点経路要素の方向を、起点経路要素方向調整部44を通じて任意に調整できる。
【0050】
以上のような起点経路要素配置部43および/または起点経路要素方向調整部44によって、操作対象領域SRにおいて配置および/または方向調整された起点経路要素は、図5に示されるように、経路表示部42によって操作画面Dおよび経路作成領域Aに表示される。
【0051】
以上のような起点経路要素の配置に続いて、ユーザUは、図7に示されるように、操作画面Dおよび経路作成領域Aに表示されている(最初の)既存の経路要素としての起点経路要素(図7における外周直線経路要素OS)からの移動操作(その移動軌跡がMとして示されている)を行う。この移動操作は、例えば、タッチパネルとしての操作画面D上の起点経路要素または操作対象領域SRに対するタッチ操作またはタップ操作に続く操作画面D上でのスライド操作でもよいし、マウス等のポインティングデバイスによる操作画面D上の起点経路要素または操作対象領域SRに対するクリック操作または選択操作に続く操作画面D上でのスライド操作でもよい。このようなユーザUによる移動操作または移動軌跡Mは、操作検出部41によって検出される。
【0052】
経路要素選択部45は、操作検出部41によって検出された移動操作における操作画面Dおよび経路作成領域A上の移動軌跡Mと、既存の経路要素との連続性を考慮して、経路要素格納部40に格納されている複数の経路要素のうち一の経路要素を選択する。経路要素自動配置部46は、経路要素選択部45によって選択された一の経路要素を、既存の経路要素と連続的に接続されるように操作画面Dおよび経路作成領域A上に配置する。具体的には、経路要素自動配置部46は、経路要素選択部45によって選択された一の経路要素を、移動軌跡Mが通過した既存の経路要素に隣接する一の単位領域URに配置する。
【0053】
このように、経路要素選択部45および経路要素自動配置部46によって連続的に配置された経路要素は、図8に示されるように、経路表示部42によって操作画面Dおよび経路作成領域Aに表示される。詳細な処理については後述するが、図7における起点経路要素(外周直線経路要素OS)を起点とする移動軌跡Mに沿った経路が、経路要素選択部45および経路要素自動配置部46を通じて自動的に形成される。
【0054】
図8の例では、単位領域URの上辺に沿った外周直線経路要素OSである起点経路要素からの右方向の移動操作に応じて、同じ外周直線経路要素OSが右方向に連続的に自動的に配置される。この際、経路要素選択部45は、図7における右方向への移動軌跡Mと、既存の外周直線経路要素OSとの連続性を考慮して、新たな外周直線経路要素OS(一の経路要素)を選択している。ここで、経路要素間の「連続性」とは、それらの軌道線R間の連続性を意味する。図8の例では、軌道線Rが外周側にある既存の外周直線経路要素OSに対して、同じく軌道線Rが外周側にある新たな外周直線経路要素OSが選択されることで、隣接する外周直線経路要素OS間の軌道線Rの連続性が確保されている。また、経路要素自動配置部46は、経路要素選択部45によって選択された外周直線経路要素OSを、右方向への移動軌跡Mが通過した右に隣接する一の単位領域URに配置している。
【0055】
図8の例では、続いて、右端における外周直線経路要素OSからの下方向の移動操作に応じて、外周左曲線経路要素OLC1が自動的に配置される。この際、経路要素選択部45は、図7における下方向への移動軌跡Mと、既存の外周直線経路要素OSとの連続性を考慮して、新たな外周左曲線経路要素OLC1(一の経路要素)を選択している。図8の例では、軌道線Rが外周側にある既存の外周直線経路要素OSに対して、同じく軌道線Rが外周側にある新たな外周左曲線経路要素OLC1が選択されることで、両経路要素間の軌道線Rの連続性が確保されている。また、経路要素自動配置部46は、経路要素選択部45によって選択された外周左曲線経路要素OLC1を、下方向への移動軌跡Mが通過した右に隣接する一の単位領域URに配置している。
【0056】
図8の例では、続いて、外周左曲線経路要素OLC1からの下方向の移動操作に応じて、単位領域URの右辺に沿った外周直線経路要素OSが自動的に配置される。この際、経路要素選択部45は、図7における下方向への移動軌跡Mと、既存の外周左曲線経路要素OLC1との連続性を考慮して、新たな外周直線経路要素OS(一の経路要素)を選択している。図8の例では、軌道線Rが外周側にある既存の外周左曲線経路要素OLC1に対して、同じく軌道線Rが外周側にある新たな外周直線経路要素OSが選択されることで、両経路要素間の軌道線Rの連続性が確保されている。また、経路要素自動配置部46は、経路要素選択部45によって選択された外周直線経路要素OSを、下方向への移動軌跡Mが通過した下に隣接する一の単位領域URに配置している。なお、新たな外周直線経路要素OSは、既存の外周左曲線経路要素OLC1と連続的に接続されるように、適切な方向(図6における右上の方向)に自動的に調整または回転された上で配置される。
【0057】
経路要素選択部45は、出入口点検出部47を利用して、経路要素格納部40に格納されている複数の経路要素のうち一の経路要素を選択してもよい。図9は、出入口点検出部47および経路要素選択部45が実行する処理のコンセプトを模式的に示す。本図の例では、操作対象領域(または、操作済領域)SRに配置されている既存の外周直線経路要素OSに対して行われうる様々な移動操作の様々な移動軌跡Mが、複数の矢印によって模式的かつ例示的に示されている。このような各移動操作に応じて、操作対象領域SRに隣接する(一の)単位領域UR-LまたはUR-Rに、適切な経路要素が自動的に選択される。
【0058】
出入口点検出部47は、各矢印によって模式的に示される各移動軌跡Mが隣接する単位領域UR-LまたはUR-Rに入った入口点ENTと、当該各移動軌跡Mが当該単位領域UR-LまたはUR-Rから出た出口点EXTを検出してもよい。本図の例では、便宜的に、全ての移動軌跡Mが同じ入口点ENTを有するが、入口点ENTは移動軌跡M毎に異なっていてもよい。また、入口点ENTは、既存の外周直線経路要素OSに接していなくてもよく、例えば、操作対象領域SRの右辺上の任意の点でよい。
【0059】
なお、以下の説明から理解されるように、既存の外周直線経路要素OSに連続的に接続される新たな経路要素を移動軌跡Mに応じて適切に選択する上では、入口点ENTの情報より出口点EXTの情報の方が重要である。このため、経路要素選択部45は、入口点ENTの情報を考慮せずに、出口点EXTの情報に基づいて、新たな経路要素を選択してもよい。また、経路要素選択部45は、適切な経路要素を選択する際に、入口点ENTおよび/または出口点EXTの情報に加えてまたは代えて、入口点ENTと出口点EXTの間の移動軌跡Mの形状や曲率を考慮してもよい。
【0060】
経路要素選択部45は、出入口点検出部47によって検出された入口点ENTと出口点EXTの相対的な位置関係および/または出口点EXTの位置と、既存の経路要素(図9における外周直線経路要素OS)との連続性を考慮して、隣接する単位領域UR-LまたはUR-Rに配置すべき新たな経路要素を選択してもよい。
【0061】
図9における既存の外周直線経路要素OSの略右方向に出口点EXT-Sを有する移動軌跡M、および/または、出口点EXT-Sにおいて単位領域UR-LまたはUR-Rから出る方向と図9における左右方向の角度差が0度近傍である移動軌跡M、および/または、出口点EXT-Sにおいて単位領域UR-LまたはUR-Rから出る方向と入口点ENTにおいて単位領域UR-LまたはUR-Rに入る方向の角度差が0度近傍である移動軌跡Mに対しては、経路要素選択部45が、当該既存の外周直線経路要素OSと連続的に接続可能な外周側に軌道線Rを有する直線状経路要素である外周直線経路要素OSを新たな経路要素として選択する。
【0062】
上記の直線状の移動軌跡Mより図9における下方に屈曲する曲線状の移動軌跡Mに対しては、左方単位領域UR-L内に新たな経路要素が配置され、上記の直線状の移動軌跡Mより図9における上方に屈曲する曲線状の移動軌跡Mに対しては、右方単位領域UR-R内に新たな経路要素が配置される。ここで、左方単位領域UR-Lは、操作対象領域SRの真右に並んで配置される単位領域であり、その上辺に沿って上記の出口点EXT-Sを有する直線状の移動軌跡Mに応じた外周直線経路要素OSが配置される。一方、右方単位領域UR-Rは、操作対象領域SRの右上に配置される単位領域であり、その下辺に沿って上記の出口点EXT-Sを有する直線状の移動軌跡Mに応じた外周直線経路要素OSが配置される。
【0063】
左方単位領域UR-Lの右辺における中点近傍に出口点EXT-LC2を有する移動軌跡M、および/または、出口点EXT-LC2において単位領域UR-Lから出る方向と図9における左右方向の角度差が45度近傍である移動軌跡M、および/または、出口点EXT-LC2において単位領域UR-Lから出る方向と入口点ENTにおいて単位領域UR-Lに入る方向の角度差が45度近傍である移動軌跡Mに対しては、経路要素選択部45が、既存の外周直線経路要素OSと連続的に接続可能な外周側に軌道線Rを有し、45度の屈曲角度を有する曲線状経路要素である外周左曲線経路要素OLC2を新たな経路要素として選択する。
【0064】
左方単位領域UR-Lの右下の頂点近傍に出口点EXT-LC1を有する移動軌跡M、および/または、出口点EXT-LC1において単位領域UR-Lから出る方向と図9における左右方向の角度差が90度近傍である移動軌跡M、および/または、出口点EXT-LC1において単位領域UR-Lから出る方向と入口点ENTにおいて単位領域UR-Lに入る方向の角度差が90度近傍である移動軌跡Mに対しては、経路要素選択部45が、既存の外周直線経路要素OSと連続的に接続可能な外周側に軌道線Rを有し、90度の屈曲角度を有する曲線状経路要素である外周左曲線経路要素OLC1を新たな経路要素として選択する。
【0065】
右方単位領域UR-Rの右辺における中点近傍に出口点EXT-RC2を有する移動軌跡M、および/または、出口点EXT-RC2において単位領域UR-Rから出る方向と図9における左右方向の角度差が45度近傍である移動軌跡M、および/または、出口点EXT-RC2において単位領域UR-Rから出る方向と入口点ENTにおいて単位領域UR-Rに入る方向の角度差が45度近傍である移動軌跡Mに対しては、経路要素選択部45が、既存の外周直線経路要素OSと連続的に接続可能な内周側に軌道線Rを有し、45度の屈曲角度を有する曲線状経路要素である内周右曲線経路要素IRC2を新たな経路要素として選択する。
【0066】
右方単位領域UR-Rの右上の頂点近傍に出口点EXT-RC1を有する移動軌跡M、および/または、出口点EXT-RC1において単位領域UR-Rから出る方向と図9における左右方向の角度差が90度近傍である移動軌跡M、および/または、出口点EXT-RC1において単位領域UR-Rから出る方向と入口点ENTにおいて単位領域UR-Rに入る方向の角度差が90度近傍である移動軌跡Mに対しては、経路要素選択部45が、既存の外周直線経路要素OSと連続的に接続可能な内周側に軌道線Rを有し、90度の屈曲角度を有する曲線状経路要素である内周右曲線経路要素IRC1を新たな経路要素として選択する。
【0067】
図8に続いて、ユーザUは、図10に示されるように、操作画面Dおよび経路作成領域Aに表示されている(最新の)既存の経路要素としての外周直線経路要素OSからの移動操作(その移動軌跡がMとして示されている)を行う。このようなユーザUによる移動操作または移動軌跡Mは、操作検出部41によって検出される。
【0068】
経路要素選択部45は、操作検出部41によって検出された移動操作における操作画面Dおよび経路作成領域A上の移動軌跡Mと、既存の経路要素との連続性を考慮して、経路要素格納部40に格納されている複数の経路要素のうち一の経路要素を選択する。経路要素自動配置部46は、経路要素選択部45によって選択された一の経路要素を、既存の経路要素と連続的に接続されるように操作画面Dおよび経路作成領域A上に配置する。具体的には、経路要素自動配置部46は、経路要素選択部45によって選択された一の経路要素を、移動軌跡Mが通過した既存の経路要素に隣接する一の単位領域URに配置する。
【0069】
このように、経路要素選択部45および経路要素自動配置部46によって連続的に配置された経路要素は、図11に示されるように、経路表示部42によって操作画面Dおよび経路作成領域Aに表示される。詳細な処理については後述するが、図10における起点経路要素(外周直線経路要素OS)を起点とする移動軌跡Mに沿った経路が、経路要素選択部45および経路要素自動配置部46を通じて自動的に形成される。
【0070】
図11の例では、操作対象領域SRの右辺に沿った外周直線経路要素OSである起点経路要素からの下方向の移動操作に応じて、同じ外周直線経路要素OSが下方向に連続的に自動的に配置される。この際、経路要素選択部45は、図10における下方向への移動軌跡Mと、既存の外周直線経路要素OSとの連続性を考慮して、新たな外周直線経路要素OS(一の経路要素)を選択している。図11の例では、軌道線Rが外周側にある既存の外周直線経路要素OSに対して、同じく軌道線Rが外周側にある新たな外周直線経路要素OSが選択されることで、隣接する外周直線経路要素OS間の軌道線Rの連続性が確保されている。また、経路要素自動配置部46は、経路要素選択部45によって選択された外周直線経路要素OSを、下方向への移動軌跡Mが通過した下に隣接する一の単位領域URに配置している。
【0071】
図11の例では、続いて、外周直線経路要素OSからの右方向の移動操作に応じて、内周右曲線経路要素IRC1が自動的に配置される。この際、経路要素選択部45は、図10における右方向への移動軌跡Mと、既存の外周直線経路要素OSとの連続性を考慮して、新たな内周右曲線経路要素IRC1(一の経路要素)を選択している。図11の例では、軌道線Rが単位領域URの外周側にある既存の外周直線経路要素OSに対して、軌道線Rが単位領域URの内周側にある新たな内周右曲線経路要素IRC1が選択されることで、両経路要素間の軌道線Rの連続性が確保されている。
【0072】
また、経路要素自動配置部46は、経路要素選択部45によって選択された内周右曲線経路要素IRC1を、右方向への移動軌跡Mが通過した下に隣接する一の単位領域URに配置している。ここで、軌道線Rが外周側(外周直線経路要素OS)から内周側(内周右曲線経路要素IRC1)に遷移したため、単位領域URの格子状配置には経路要素の幅に相当するずれが生じている。この関係は、図9において前述した、操作対象領域SRと右方単位領域UR-Rの関係と同じである。
【0073】
図11の例では、続いて、内周右曲線経路要素IRC1からの右方向の移動操作に応じて、単位領域URの下辺に沿った内周直線経路要素ISが自動的に配置される。この際、経路要素選択部45は、図10における右方向への移動軌跡Mと、既存の内周右曲線経路要素IRC1との連続性を考慮して、新たな内周直線経路要素IS(一の経路要素)を選択している。図11の例では、軌道線Rが内周側にある既存の内周右曲線経路要素IRC1に対して、同じく軌道線Rが内周側にある新たな内周直線経路要素ISが選択されることで、両経路要素間の軌道線Rの連続性が確保されている。また、経路要素自動配置部46は、経路要素選択部45によって選択された内周直線経路要素ISを、右方向への移動軌跡Mが通過した右に隣接する一の単位領域URに配置している。
【0074】
以降は同様に、経路要素自動配置部46は、起点経路要素(図7における外周直線経路要素OS)から始まり当該起点経路要素で終わるユーザUによる移動操作に応じて、図12に示されるような可動子3の閉じた経路を形成する。
【0075】
なお、詳細な説明は省略されるが、以上と同様の処理によって、外周直線経路要素OSを起点経路要素とする図12の経路と同様の経路を、図13に示されるように内周直線経路要素ISを起点経路要素として形成できる。図12の経路では軌道線Rが全体として外周側に連続的に配置されているのに対し、図13の経路では軌道線Rが全体として内周側に連続的に配置されている。
【0076】
図13では、単位領域UR(不図示)の上辺に沿った内周直線経路要素ISとしての起点経路要素から右方向に同じ内周直線経路要素ISが連続的に配置され、下方向への90度屈曲部分に内周左曲線経路要素ILC1が配置される。その下には、単位領域UR(不図示)の右辺に沿った内周直線経路要素ISが連続的に配置され、右方向への90度屈曲部分に外周右曲線経路要素ORC1が配置される。この外周右曲線経路要素ORC1の右方向には、単位領域UR(不図示)の下辺に沿った外周直線経路要素OSが連続的に配置される。
【0077】
以上のように経路形成装置によって形成された可動子3の経路に対して、経路設定装置を構成する操作検出部41、領域選択部48、設定情報入力部49は、以下のような処理を実行できる。操作検出部41は、図12または図13に示されるような完成した経路に対するユーザUによる選択操作および/または入力操作を検出する。
【0078】
領域選択部48は、操作検出部41によって検出された選択操作に応じて、起点経路要素配置部43および/または経路要素自動配置部46によって操作画面D上に配置された連続する複数の経路要素を含む任意の経路領域を一括して選択する。ユーザUは、操作画面D上の選択操作によって、経路作成領域A内の任意の経路領域SAを選択できる。図14に模式的に示されるように、経路領域SAは、ユーザUによる選択操作によって指定される任意の形状の領域でもよい。この場合、当該経路領域SAに含まれる典型的には複数の経路要素が一括して選択される(図14では、模式的に特別なハッチングが付されている)。なお、経路領域SAまたは複数の経路要素は、ユーザUによる経路をなぞるまたは辿る選択操作によって選択されてもよい。
【0079】
設定情報入力部49は、操作検出部41によって検出された入力操作に応じて、領域選択部48によって選択された経路領域SAに対する設定情報を入力する。図14に模式的に示されるように、設定情報入力部49は、領域選択部48によって選択された経路領域SA(図14では「経路領域A」と表されている)についての設定情報入力ウィンドウSETを操作画面D上に表示させてもよい。ユーザUは、操作画面D上での入力操作によって、設定情報入力ウィンドウSET内に様々な設定情報を入力できる。設定情報入力ウィンドウSETで入力可能な設定情報としては、経路領域SAの名称、当該経路領域SA内に同時に存在してよい可動子3(キャリア)の最大数(最大キャリア数)、当該経路領域SAにおける可動子3の最大速度(キャリア最大速度)、当該経路領域SAにおける駆動部としてのリニアモータの最大電流値、当該経路領域SAにおいて許容される可動子3の搬送方向が例示される。
【0080】
以上のような設定情報は、経路要素毎に入力する必要がなく、複数の経路要素を含む経路領域SAに対して一括で入力可能であるため、ユーザUによる入力操作の負担を著しく低減できる。
【0081】
駆動部としてのリニアモータは、設定情報入力部49によって入力された設定情報に基づいて、経路形成装置によって形成された経路上または軌道上で可動子3を駆動する。
【0082】
以上、本開示を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本開示の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0083】
実施形態では、可動子に設けられる永久磁石と固定子に設けられる電磁石の間の磁力に基づいて可動子を駆動するリニア搬送システムを例示したが、本開示は磁気以外の任意の原理(例えば電気や流体)に基づく任意の駆動装置に適用可能である。
【0084】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 リニア搬送システム、2 固定子、3 被駆動物(可動子)、4 経路管理装置、21 レール面、40 経路要素格納部、41 操作検出部、42 経路表示部、43 起点経路要素配置部、44 起点経路要素方向調整部、45 経路要素選択部、46 経路要素自動配置部、47 出入口点検出部、48 領域選択部、49 設定情報入力部。
図1
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