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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025058655
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】潤滑油診断システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20250402BHJP
   G01N 33/30 20060101ALI20250402BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
G06Q50/08
G01N33/30
E02F9/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023168719
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】倉迫 彬
(72)【発明者】
【氏名】秋田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸仁
(72)【発明者】
【氏名】小升 章裕
(72)【発明者】
【氏名】宇尾 直也
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】潤滑部位を有する機械(潤滑対象機械)から潤滑油を採取する手間の増加および潤滑対象機械内の潤滑油量の減少を抑制しつつ潤滑油の異常を検出することが可能な潤滑油診断システムを提供する。
【解決手段】潤滑油の分析結果を基に前記潤滑油の劣化状態を診断する潤滑油診断システム100において、前記分析結果を受信するサーバ200を備え、サーバ200は、前記分析結果に含まれる分析項目のうち、異常の兆候を示す所定の閾値を上回る分析項目を要監視分析項目として選定し、前記要監視分析項目に対応する油の劣化または汚染現象を検出可能なセンサ測定項目を選定し、複数種類のセンサキットのうち、前記センサ測定項目を測定可能なものを、前記油の劣化または汚染現象を監視するための監視用センサキットとして選定し、前記監視用センサキットに関する情報を出力する。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油の分析結果を基に前記潤滑油の劣化状態を診断する潤滑油診断システムにおいて、
前記分析結果を受信するサーバを備え、
前記サーバは、
前記分析結果に含まれる分析項目のうち、異常の兆候を示す所定の閾値を上回る分析項目を要監視分析項目として選定し、
前記要監視分析項目に対応する油の劣化または汚染現象を検出可能なセンサ測定項目を選定し、
複数種類のセンサキットのうち、前記センサ測定項目を測定可能なものを、前記油の劣化または汚染現象を監視するための監視用センサキットとして選定し、
前記監視用センサキットに関する情報を出力する
ことを特徴とする潤滑油診断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の潤滑油診断システムにおいて、
前記油の劣化または汚染現象には、酸化、水分混入、砂埃混入、摩耗粉混入、燃料混入、スス混入、クーラント混入の1つ以上が含まれる
ことを特徴とする潤滑油診断システム。
【請求項3】
請求項1に記載の潤滑油診断システムにおいて、
前記センサ測定項目には、色、粒子、粘度、密度、誘電率、導電率、磁気変化の1つ以上が含まれる
ことを特徴とする潤滑油診断システム。
【請求項4】
請求項1に記載の潤滑油診断システムにおいて、
前記センサ測定項目には、前記油の劣化または汚染現象と前記作業機械の機種と前記潤滑油の種類と前記作業機械に搭載されている機器の部位とに関連付けられた振動、圧力、音、画像の1つ以上が含まれる
ことを特徴とする潤滑油診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油の劣化状態を診断するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械では、作動油、エンジンオイル等の潤滑油(オイル)が使用されている。潤滑油は作業機械の使用状況に応じて劣化し、潤滑性能が低下する。この潤滑油の状態は作業機械の油回路内の部品全体に影響するため、作業機械を長期的に健全に保つためには、潤滑油の状態を適切に管理することが重要である。そのため、作業機械から定期的に潤滑油を採取して分析し、潤滑油の劣化状態を診断することが行われている。
【0003】
特許文献1には、建設機械から採取されたオイルの試験結果を用いて建設機械及びその構成品の状態を診断する建設機械の管理システムが開示されている。また、特許文献2には、オイル採取を伴う詳細なオイル分析の必要性の有無を的確に判断できる作業機械の診断システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6329892号公報
【特許文献2】特許第6234359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の建設機械の管理システム、および、特許文献2に記載の作業機械の診断システムのいずれにおいても、潤滑油の異常を検出するために、作業機械から潤滑油を採取する必要がある。そのため、分析結果に異常の兆候が見られた場合は、潤滑油の異常を速やかに検出できるように、それ以降は潤滑油の分析間隔を短くする必要がある。しかしながら、潤滑油を採取する頻度が多くなると、採取の手間が増えるとともに作業機械内の潤滑油の減少量が大きくなるため、分析間隔を短くすることは運用上難しい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、潤滑部位を有する機械(潤滑対象機械)から潤滑油を採取する手間の増加および潤滑対象機械内の潤滑油量の減少を抑制しつつ潤滑油の異常を検出することが可能な潤滑油診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、潤滑油の分析結果を基に前記潤滑油の劣化状態を診断する潤滑油診断システムにおいて、前記分析結果を受信するサーバを備え、前記サーバは、前記分析結果に含まれる分析項目のうち、異常の兆候を示す所定の閾値を上回る分析項目を要監視分析項目として選定し、前記要監視分析項目に対応する油の劣化または汚染現象を検出可能なセンサ測定項目を選定し、複数種類のセンサキットのうち、前記センサ測定項目を測定可能なものを、前記油の劣化または汚染現象を監視するための監視用センサキットとして選定し、前記監視用センサキットに関する情報を出力するものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、潤滑対象機械から採取された潤滑油の分析結果に異常の兆候が見られた場合に、当該異常を検出可能な監視用センサキットの情報を得ることができる。この監視用センサキットを潤滑対象機械に取り付けることにより、それ以降は潤滑油の採取および分析を行うことなく、監視用センサキットで潤滑油の異常を検出することが可能となる。これにより、潤滑対象機械から潤滑油を採取する手間の増加および潤滑対象機械内の潤滑油の減少を抑制しつつ潤滑油の異常を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態における潤滑油診断システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態における作業機械の稼働時間とオイル分析項目の値との関係を示す図である。
図3】本発明の実施形態におけるメーカ用コンピュータの機能ブロック図である。
図4】本発明の実施形態におけるオイル分析項目データベースに格納されている情報の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態におけるオイルセンサ測定項目データベースに格納されている情報の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態におけるオイルセンサキットデータベースに格納されている情報の一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態における他種センサキットデータベースに格納されている情報の一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態におけるセンサキット在庫データベースに格納されている情報の一例を示す図である。
図9】本発明の実施形態における輸送情報データベースに格納されている情報の一例を示す図である。
図10】本発明の実施形態におけるオイルメーカ用コンピュータの処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施形態におけるオイル分析結果に含まれるオイル分析項目の1つであるカールフィッシャー試験が注意レベルと判定された場合のセンサキット候補の出力例を示す図である。
図12】本発明の実施形態におけるオイル分析結果に含まれるオイル分析項目の1つである汚染度(計数法)が注意レベルと判定された場合のセンサキット候補の出力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。本発明の実施形態では、潤滑部位を有する機械(潤滑対象機械)として、油圧ショベル等の作業機械を例に挙げて説明するが、潤滑対象機械は作業機械に限定されない。
【0011】
図1は、本実施形態における潤滑油診断システムの構成を示す図である。潤滑油診断システム100は、油圧ショベル等の作業機械101を製造する作業機械メーカが保有するサーバからなるメーカ用コンピュータ200と、作業機械101の部品等の在庫を管理する中央倉庫コンピュータ103と、作業機械101から採取された潤滑油(作動油、エンジンオイル等)を分析するオイル分析会社が保有する分析会社用コンピュータ104と、作業機械101のユーザが保有する管理者用コンピュータ105と、作業機械メーカの代理店等が保有するサービス用コンピュータ106とを備えている。メーカ用コンピュータ200は、インターネット等の通信手段を介して、中央倉庫コンピュータ103、分析会社用コンピュータ104、管理者用コンピュータ105、サービス用コンピュータ106と相互に情報伝達を行う。
【0012】
作業機械101からは定期的に潤滑油(作動油、エンジンオイル等)が採取され、採取された潤滑油はオイル分析会社に送付される。オイル分析会社は、採取された潤滑油の分析し、分析結果を分析会社用コンピュータ104からメーカ用コンピュータ200へ送信する。メーカ用コンピュータ200は、分析会社用コンピュータ104から受信した分析結果を用いて診断を行い、診断結果を管理者用コンピュータ105とサービス用コンピュータへ送信する。また、メーカ用コンピュータ200は、潤滑油の診断結果に基づいて、中央倉庫コンピュータ103へセンサキット(後述)の在庫照会や発注を行う。
【0013】
図2は、作業機械101の稼働時間とオイル分析項目の値との関係を示す図である。作業機械101の稼働時間に応じて油の劣化または汚染現象が進行することにより、オイル分析項目の値が変化する。オイル分析項目には、異常の兆候を示す閾値として注意値が設定され、異常を示す閾値として異常値が設定されている。オイル分析項目の値が異常値(上限)以上の場合、または、異常値(上限)以下の場合は、オイル分析項目は異常レベルと判定される。オイル分析項目の値が異常値(上限)未満でかつ注意値(上限)以上の場合、または、異常値(下限)より大きくかつ注意値(下限)未満の場合は、オイル分析項目は注意レベルと判定される。オイル分析項目の値が注意値(上限)未満でかつ注意値(下限)より大きい場合は、オイル分析項目は正常レベルと判定される。メーカ用コンピュータ200は、オイル分析項目の値を、油の種類(作動油、エンジンオイル等)や作業機械101の機種情報と紐づけて管理する。
【0014】
図3は、メーカ用コンピュータ200の機能ブロック図である。メーカ用コンピュータ200の処理部201は、オイル分析項目が注意レベルか異常レベルかを判定するオイル分析結果判定部202と、注意レベルと判定されたオイル分析項目に対応する油の劣化または汚染現象を検出可能なセンサキットを選定するセンサキット選定部203と、センサキットの在庫情報と輸送情報から手配可能なセンサキットと価格情報を計算する在庫情報計算部204とを有する。センサキットは、センサと、このセンサを作業機械101の対応箇所に取り付けるための付属部品からなる。
【0015】
メーカ用コンピュータ200の記憶部210は、オイル分析項目データベース(以下、DBと略す)211と、オイルセンサ測定項目DB212と、オイルセンサキットDB213と、他種センサキットDB214と、センサキット在庫DB215と、輸送情報DB216とを有する。
【0016】
図4は、オイル分析項目DB211に格納されている情報の一例を示す図である。オイル分析項目DB211には、油の劣化または汚染現象、オイル分析項目(油の劣化または汚染現象に対するオイル分析手法の項目(規格))、オイル分析項目に対する判定値(注意値および異常値)の情報が格納されている。油の劣化の一例として酸化がある。油の使用と共に酸化が進行すると、酸化生成物が発生し、それに伴って摺動性能が悪化し、機械摺動部品の損傷に進展する恐れがある。油の汚染現象の例としては、水分、砂埃、摩耗紛、燃料、スス、クーラント等の混入がある。水分、燃料、クーラント等の液体が油に混入すると、粘度低下による機械部品摺動部の焼付きが発生する恐れがあり、水分が混入した場合は錆が発生する恐れもある。砂埃、摩耗粉、スス(燃焼時に発生する副産物)等の硬質粒子が油に混入すると、それら粒子によって機械摺動部品が摩耗する恐れがある。例えば酸化に対する分析手法としては、全酸価(JIS K2501)、汚染度(質量法)(JIS B9931)、汚染度(計数法)(ISO 4406)、色(ASTM D1500)、FTIR(ASTM E2412)がある。なお、図4では判定値の記載を簡略化しているが、例えば元素分析(ASTM D5185)であれば、鉄、銅、鉛、クロム、ニッケルなどの分析対象の元素ごとに判定値が設定されている。
【0017】
図5は、オイルセンサ測定項目DB212に格納されている情報の一例を示す図である。オイルセンサ測定項目DB212には、油の劣化または汚染現象に対して感度があるオイルセンサ測定項目の情報が格納されている。例えば酸化に対して感度があるオイルセンサ測定項目としては、色、粒子、密度、誘電率がある。
【0018】
図6は、オイルセンサキットDB213に格納されている情報の一例を示す図である。オイルセンサキットDB213には、各オイルセンサキットのセンサ測定項目の情報が格納されている。センサ測定項目が色であるセンサキットAとしては、油に透過した光をRGBセンサで測定するセンサキットがある。オイルセンサ測定項目が粘度、密度、誘導率であるセンサキットEとしては、音叉の周波数特性を利用して、粘度、密度、誘電率を測定するセンサキットがある。なお、油の劣化または汚染現象、オイル分析項目、オイルセンサ測定項目、オイルセンサキットは、図4図6に例示したものに限定されない。
【0019】
図7は、他種センサキットDB214に格納されている情報の一例を示す図である。他種センサキットDB214には、油の劣化または汚染現象、オイル分析項目、作業機械101の機種、油の種類、特定部位、測定項目、他種センサキット(オイルセンサキット以外のセンサキット)の情報が格納されている。油の劣化または汚染現象、注意値を上回るオイル分析項目、作業機械101の機種、油の種類から、作業機械101の特定部位に異常があることが推定できる。特定部位の例として、メインポンプ、エンジン、油圧シリンダ、旋回装置、走行装置などが挙げられる。これら特定の部位に取り付けることで当該特定部位の状態を直接監視できるセンサキットがある。例えば、作業機械101の作動油で摩耗粉Cuが検出される場合は、メインポンプの部材が摩耗している可能性があるため、振動を検知する振動センサキットをメインポンプに取り付けることで異常を検知できる。作業機械101のエンジンオイルで摩耗粉Crが検出される場合は、エンジンの部材が摩耗している可能性があるため、振動センサキットをエンジンに取り付けることで異常を検知できる。なお、他種センサキットとしては、振動センサキットの他に、画像、音、圧力を検出するセンサキットなどが挙げられる。
【0020】
図8は、センサキット在庫DB215に格納されている情報の一例を示す図である。センサキット在庫DB215には、各拠点に保管されているセンサキットの品目、数量、価格の情報が格納されている。
【0021】
図9は、輸送情報DB216に格納されている情報の一例を示す図である。輸送情報DB216には、センサキットの品目、供給拠点、発注拠点、供給手段、輸送リードタイム、輸送コストの情報が格納されている。輸送情報DB216の情報は、油の劣化または汚染現象に対するセンサキット候補が出力された際に、受信日と受注場所情報(作業機械101の最寄り拠点)から、輸送手段、納期、価格を計算することに利用される。
【0022】
図10は、メーカ用コンピュータ200の処理を示すフローチャートである。オイル分析結果判定部202は、分析会社用コンピュータ104からオイル分析結果を受信すると、オイル分析項目DB211からオイル分析項目の判定値(注意値および異常値)を取得する(ステップS1)。
【0023】
ステップS1に続き、オイル分析結果に含まれる全てのオイル分析項目が注意値を下回るか否かを判定する(ステップS2)。
【0024】
ステップS2の判定結果がYesの場合は、潤滑油は正常であると判定し(ステップS3)、当該フローを終了する。
【0025】
ステップS2の判定結果がNoの場合は、オイル分析結果に含まれるオイル分析項目のうち異常値以上のオイル分析項目があるか否かを判定する(ステップS4)。
【0026】
ステップS4の判定結果がYesの場合は、潤滑油は異常であると判定する(ステップS5)。
【0027】
ステップS5に続き、メンテナンスが必要であることを通知し(ステップS6)、当該フローを終了する。
【0028】
ステップS4の判定結果がNoの場合は、センサキット選定部203は、オイルセンサ測定項目DB212を参照し、注意値を上回るオイル分析項目に該当する油の劣化または汚染現象を検出可能なオイルセンサ測定項目を選定する(ステップS7)。
【0029】
ステップS7に続き、オイルセンサキットDB213を参照し、オイルセンサ測定項目を測定可能なオイルセンサキットをオイルセンサキット候補として選定する(ステップS8)。
【0030】
ステップS8に続き、他種センサキットDB214を参照し、油の劣化または汚染現象、オイル分析項目、作業機械101の機種、油の種類に対応する他種センサキットを他種センサキット候補として選定する(ステップS9)。
【0031】
ステップS9に続き、在庫情報計算部204は、センサキット在庫DB215および輸送情報DB216を参照し、各センサキット候補の納期と価格を計算する(ステップS10)。具体的には、オイル分析を行った作業機械101から最も近い拠点のセンサキット候補の在庫を確認し、在庫がない場合には、供給拠点から近い拠点の在庫を確認し、センサキット候補の価格と納期を算出し、価格の安価な順にセンサキット候補を表示するように出力し、ユーザや代理店等に通知する。
【0032】
ステップS10に続き、通知されたセンサキット候補が選択されたか否かを判定する(ステップS11)。
【0033】
ステップS11の判定結果がYesの場合は、選択されたセンサキットを手配し(ステップS12)、当該フローを終了する。
【0034】
ステップS11の判定結果がNoの場合は、注意値に達したオイル分析項目が異常値に到達すると予想されるタイミングを次回のオイル分析のタイミングとして通知し(ステップS12)、当該フローを終了する。オイル分析項目が異常値に到達すると予想されるタイミングは、稼働時間に対するオイル分析項目の値(図2に示す)を線形補間することにより求められる。
【0035】
図11は、オイル分析結果に含まれるオイル分析項目の1つであるカールフィッシャー試験が注意レベルであった場合のセンサキット候補の出力例を示す図である。メーカ用コンピュータ200は、オイル分析項目DB211から、カールフィッシャー試験に対応する油の劣化または汚染現象として水分混入を選定する。水分混入に対応するオイルセンサ測定項目として、オイルセンサ測定項目DB212から、誘電率と導電率を選定する。オイルセンサ測定項目の誘電率と導電率に対応するオイルセンサキット候補として、オイルセンサキットDB213から、センサキットB,E,F,Gを選定する。なお、水分混入とオイル分析項目のカールフィッシャー試験とに対応する他種センサキットの情報は他種センサキットDB214に格納されていないため、他種センサキット候補は選定されない。続いて、オイル分析を行った作業機械101から最も近い拠点のセンサキット候補の在庫を確認する。在庫がない場合には、供給拠点から近い拠点の在庫を確認する。センサキットの価格と納期を算出し、価格の安価な順にオイルセンサキットを表示する。センサキット候補が選択された場合は、選択されたセンサキット候補を手配する。
【0036】
図12は、オイル分析結果に含まれるオイル分析項目の1つである汚染度(計数法)が注意レベルと判定された場合のセンサキット候補の出力例を示す図である。メーカ用コンピュータ200は、オイル分析項目DB211から、汚染度(計数法)に対応する油の劣化または汚染現象として酸化と摩耗紛混入を選定する。なお、摩耗紛の成分は鉄分とする。酸化に対応するオイルセンサ測定項目として、オイルセンサ測定項目DB212から、色、粒子、密度、誘電率を選定する。同様に、摩耗紛混入に対応するオイルセンサ測定項目として、粒子、導電率、磁気変化を選定する。酸化(オイルセンサ測定項目の色、粒子、密度、誘電率)に対応するオイルセンサキットとして、オイルセンサキットDB213から、センサキットA,B,D,E,F,G,Hを選定する。同様に、摩耗紛混入(オイルセンサ測定項目の粒子、導電率、磁気変化)に対応するオイルセンサキットとして、センサキットG,H,Iを選定する。なお、酸化または摩耗紛混入とオイル分析項目の汚染度(計数法)とに対応する他種センサキットの情報は他種センサキットDB214に格納されていないため、他種センサキット候補は選定されない。続いて、オイル分析を行った作業機械101から最も近い拠点のセンサキット候補の在庫を確認する。在庫がない場合には、供給拠点から近い拠点の在庫を確認する。センサキットの価格と納期を算出し、油の劣化または汚染現象毎に価格の安価な順にセンサキットを表示する。センサキット候補が選択された場合は、選択されたセンサキット候補を手配する。
【0037】
(まとめ)
本実施形態では、潤滑油の分析結果を基に前記潤滑油の劣化状態を診断する潤滑油診断システム100において、前記分析結果を受信するサーバ200を備え、サーバ200は、前記分析結果に含まれる分析項目のうち、異常の兆候を示す所定の閾値を上回る分析項目を要監視分析項目として選定し、前記要監視分析項目に対応する油の劣化または汚染現象を検出可能なセンサ測定項目を選定し、複数種類のセンサキットのうち、前記センサ測定項目を測定可能なものを、前記油の劣化または汚染現象を監視するための監視用センサキットとして選定し、前記監視用センサキットに関する情報を出力する。
【0038】
以上のように構成した本実施形態によれば、作業機械101から採取された潤滑油の分析結果に異常の兆候が見られた場合に、当該異常を検出可能な監視用センサキットの情報を得ることができる。この監視用センサキットを作業機械101に取り付けることにより、それ以降は潤滑油の採取および分析を行うことなく、監視用センサキットで潤滑油の異常を検出することが可能となる。これにより、作業機械101から潤滑油を採取する手間の増加および作業機械101内の潤滑油量の減少を抑制しつつ潤滑油の異常を検出することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態における油の劣化または汚染現象には、酸化、水分混入、砂埃混入、摩耗粉混入、燃料混入、スス混入、クーラント混入の1つ以上が含まれる。これにより、粘度増加、酸化、水分混入、砂埃混入、摩耗粉混入、燃料混入、スス混入、クーラントのいずれかによる油の劣化または汚染現象を検知することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態におけるセンサ測定項目には、色、粒子、粘度、密度、誘電率、導電率、磁気変化の1つ以上が含まれる。これにより、色、粒子、粘度、密度、誘電率、導電率、磁気変化のいずれかを測定することにより、油の劣化または汚染現象を検出することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態におけるセンサ測定項目には、前記油の劣化または汚染現象と作業機械101の機種と前記潤滑油の種類と作業機械101に搭載されている機器の部位とに関連付けられた振動、圧力、音、画像の1つ以上が含まれる。これにより、振動、圧力、音、画像のいずれかを測定することにより、油の劣化または汚染現象を検出することが可能となる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0043】
100…潤滑油診断システム、101…作業機械、103…中央倉庫コンピュータ、104…分析会社用コンピュータ、105…管理者用コンピュータ、106…サービス用コンピュータ、200…メーカ用コンピュータ(サーバ)、201…処理部、202…オイル分析結果判定部、203…センサキット選定部、204…在庫情報計算部、210…記憶部、211…オイル分析項目DB、211…オイル分析項目DB、212…オイルセンサ測定項目DB、213…オイルセンサキットDB、214…他種センサキットDB、215…センサキット在庫DB、216…輸送情報DB。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12