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特開2025-5870筆記具用部品及び筆記具用部品を備えた筆記具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005870
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】筆記具用部品及び筆記具用部品を備えた筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/08 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B43K24/08 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106278
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】植原 淳也
(72)【発明者】
【氏名】守本 大作
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HC04
2C353HG03
2C353HJ03
(57)【要約】
【課題】外面に突出部が形成された筒状の筆記具用部品において、突出部近傍のヒケの発生を抑制した筆記具用部品及び筆記具用部品を備えた筆記具を提供する。
【解決手段】射出成形品である筒状部材を有する内筒3が、少なくとも、軸線方向に延びる第1の肉厚t1を有するカム突起部21と、軸線方向に延び且つ第1の肉厚t1よりも薄い第2の肉厚t2を有する第1溝部22の部分とを有し、内筒3の外面には接続部11が形成され、第1肉厚部と前記第2肉厚部と前記突出部とを含む前記筒状部材の横断面の形状が線対称である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形品である筒状部材を有する筆記具用部品であって、
前記筒状部材が、少なくとも、軸線方向に延びる第1の肉厚を有する第1肉厚部と、軸線方向に延び且つ前記第1の肉厚よりも薄い第2の肉厚を有する第2肉厚部とを有し、
前記筒状部材の外面には突出部が形成され、
前記第1肉厚部と前記第2肉厚部と前記突出部とを含む前記筒状部材の横断面の形状が線対称であることを特徴とする筆記具用部品。
【請求項2】
前記横断面において、前記第1肉厚部以外の部分が前記突出部と径方向に整列して配置されている請求項1に記載の筆記具用部品。
【請求項3】
複数の前記第1肉厚部と複数の前記第2肉厚部とを有し、前記第1肉厚部の各々及び前記第2肉厚部の各々が、周方向に沿って等間隔に配置されている請求項1又は2に記載の筆記具用部品。
【請求項4】
前記第1肉厚部が回転子と協働する突起状の複数の外カムであり、隣接する前記外カムによって、ノック部材の摺動突起が配置される第1溝部が画成され、前記第1溝部の部分が前記第2肉厚部であり、前記外カムには軸線方向に延び且つ前記ノック部材の摺動突起が配置される第2溝部が形成され、前記第2溝部の部分が軸線方向に延びる第3の肉厚を有する第3肉厚部であり、前記第3の肉厚が、前記第1の肉厚よりも薄く且つ前記第2の肉厚よりも厚く、前記横断面において、前記第3肉厚部の部分が前記突出部と径方向に整列して配置されている請求項1に記載の筆記具用部品。
【請求項5】
請求項4に記載の筆記具用部品と、前記外カムと協働する回転子と、前記回転子と協働するノック部材とを具備するノック式の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用部品及び筆記具用部品を備えた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形において、材料が起こす成形収縮によって成形品表面に凹部、いわゆる「ヒケ」が生じ、外観を損なう場合がある。ヒケは、成形品の肉厚差によって生じ得る。例えば、特許文献1には、筒部とクリップ部が一体に射出成形された筆記具用部品が開示されている。筒部の内周面には、軸線方向に延びる複数のリブが周方向に沿って等間隔に形成されている。筒部の外周面に設けられたクリップ部及び筒部の内周面に設けられた複数のリブというように、筒部には肉厚の異なる部分が存在することから、例えばクリップ部の周囲の筒部の外周面において、ヒケが生じる可能性がある。
【0003】
ところで、内周面に複数の外カムが形成された軸筒と、外周面に複数の内カムが形成された回転子とを有し、ノック部材のノック操作に応じて外カムと内カムとが係止又は係止解除をすることによって、筆記状態及び非筆記状態が切り替え可能なノック式筆記具が公知である。ここで、従来の筆記具用部品とヒケとの関係を、図9及び図10を参照しながら説明する。
【0004】
図9は、従来のノック式筆記具の内筒103の後端部の縦断面図であり、図10は、図9の線C-Cにおける横断面図である。図9及び図10では、筒状部材である筆記具用部品として軸筒、具体的には軸筒を構成する内筒103を例にしている。内筒103の外周面には、クリップ110が一体的に設けられている。クリップ110は、接続部111とクリップ本体112とを有している。クリップ本体112は、接続部111を介して内筒103の外周面に設けられている。内筒103の内周面には、4つの外カム120が、周方向に沿って等間隔に設けられている。外カム120の各々は、軸線方向に延びるカム突起部121を有している。隣接する外カム120によって、軸線方向に延びる第1溝部122が画成されている。外カム120、すなわちカム突起部121の幅方向、すなわち周方向における中央には、軸線方向に延びる第2溝部123が形成されている。
【0005】
カム突起部121を第1の肉厚t11を有する第1肉厚部とし、第1溝部122の部分を第2の肉厚t12を有する第2肉厚部とし、第2溝部123の部分を第3の肉厚t13を有する第3肉厚部とすると、第2の肉厚t12は、第1の肉厚t11よりも薄く、第3の肉厚t13は、第1の肉厚t11よりも薄く且つ第2の肉厚t12よりも厚い。なお、外カム120が設けられていない部分の内筒103は、主に第2の肉厚t12を有している。外周面に8つの摺動突起部が周方向に沿って等間隔に設けられているノック部材において、摺動突起部の各々は、ノック操作によって、内筒103に形成された外カム120の第1溝部122内及び第2溝部123内を前後方向に移動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-103882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
外カム120の部分の肉厚、すなわち第1の肉厚t11及び第3の肉厚t13は、外カム120が設けられていない内筒103の部分の肉厚、すなわち第2の肉厚t12と比べて厚いことから、ヒケが生じやすい。特に、図10に示されるように、内筒103の横断面では、内筒103に対する接続部111の対称線Sと、外カムの対称線とは一致しておらず、横断面における各部の形状は、線対称とはなっていない。その結果、図10において、接続部111に対して反時計回り側の接続部111近傍(参照符号t11及びt13で示される部分)の肉厚又は合成樹脂量が、接続部111に対して時計回り側の接続部111近傍の肉厚又は合成樹脂量(参照符号t12で示される部分)と比較して大きい。すなわち、接続部111と、接続部111に近接する肉厚が厚い部分との間の合成樹脂が、射出成形時により収縮しやすく、ヒケが生じる可能性が高い。言い換えると、外面に突起状の部分が存在すると、当該部分において、内面の形状との関係で合成樹脂が収縮しやすく、ヒケが生じる可能性が高い。
【0008】
本発明は、外面に突出部が形成された筒状の筆記具用部品において、突出部近傍のヒケの発生を抑制した筆記具用部品及び筆記具用部品を備えた筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、射出成形品である筒状部材を有する筆記具用部品であって、前記筒状部材が、少なくとも、軸線方向に延びる第1の肉厚を有する第1肉厚部と、軸線方向に延び且つ前記第1の肉厚よりも薄い第2の肉厚を有する第2肉厚部とを有し、前記筒状部材の外面には突出部が形成され、前記第1肉厚部と前記第2肉厚部と前記突出部とを含む前記筒状部材の横断面の形状が線対称であることを特徴とする筆記具用部品が提供される。
【0010】
前記横断面において、前記第1肉厚部以外の部分が前記突出部と径方向に整列して配置されていてもよい。複数の前記第1肉厚部と複数の前記第2肉厚部とを有し、前記第1肉厚部の各々及び前記第2肉厚部の各々が、周方向に沿って等間隔に配置されていてもよい。前記筒状部材が、円筒状の外周面を有していてもよい。前記第1肉厚部が回転子と協働する突起状の複数の外カムであり、隣接する前記外カムによって、ノック部材の摺動突起が配置される第1溝部が画成され、前記第1溝部の部分が前記第2肉厚部であってもよい。前記外カムには軸線方向に延び且つ前記ノック部材の摺動突起が配置される第2溝部が形成され、前記第2溝部の部分が軸線方向に延びる第3の肉厚を有する第3肉厚部であり、前記第3の肉厚が、前記第1の肉厚よりも薄く且つ前記第2の肉厚よりも厚くてもよい。前記横断面において、前記第3肉厚部の部分が前記突出部と径方向に整列して配置されていてもよい。
【0011】
また、上記筆記具用部品と、前記外カムと協働する回転子と、前記回転子と協働するノック部材とを具備するノック式の筆記具が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、外面に突出部が形成された筒状の筆記具用部品において、突出部近傍のヒケの発生を抑制した筆記具用部品及び筆記具用部品を備えた筆記具を提供するという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態によるノック式筆記具の斜視図である。
図2図2は、図1のノック式筆記具の側面図である。
図3図3は、図1のノック式筆記具の縦断面図である。
図4図4は、ノック機構の分解斜視図である。
図5図5は、軸筒の縦断面図である。
図6図6は、図3におけるA部の拡大図である。
図7図7は、内筒の後端部の縦断面図である。
図8図8は、図7の線B-Bにおける横断面図である。
図9図9は、従来のノック式筆記具の内筒の後端部の縦断面図である。
図10図10は、図9の線C-Cにおける横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に亘り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0015】
図1は、本発明の実施形態によるノック式筆記具1の斜視図であり、図2は、図1のノック式筆記具1の側面図であり、図3は、図1のノック式筆記具1の縦断面図である。また、図4は、ノック機構の分解斜視図であり、図5は、軸筒2の縦断面図である。
【0016】
ノック式筆記具1は、筒状に形成された軸筒2及び内筒3と、軸筒2内に配置され且つ一端に筆記部5aを備えた筆記体であるリフィル5と、リフィル5を後方へ付勢するスプリング6とを有している。軸筒2の前端には、リフィル5の筆記部5aを突出させるための貫通孔2aが形成されている。本明細書中では、ノック式筆記具1の軸線方向において、筆記部5a側を「前」側と規定し、筆記部5aとは反対側を「後」側と規定する。
【0017】
内筒3の前端部は、軸筒2の後端部の内部に挿入され、螺合によって嵌合している。内筒3も含めて軸筒と称してもよく、軸筒2を前軸及び後軸の二部品から構成してもよい。内筒3の内部には、ノック機構が配置されている。ノック機構は、内筒3の内周面に形成された外カム20と、ノック部材30と、回転子40とを有している。ノック部材30は回転子40と協働するように構成され、回転子40は、外カム20と協働するように構成されている。ノック機構によって、リフィル5が軸筒2内を前後方向に移動する。このとき、筆記部5aが軸筒2内に没入した状態を非筆記状態(図1乃至図3)と称し、筆記部5aが軸筒2から突出した状態を筆記状態と称す。ノック式筆記具1において、リフィル5及びスプリング6を除く各部材は、合成樹脂材料の射出成形によって製造された射出成形品である筆記具用部品であり、特に、軸筒2、内筒3及びノック部材30は、筒状部材である。
【0018】
内筒3の外面、すなわち円筒状の外周面7には、クリップ10が一体的に設けられている。クリップ10は、接続部11とクリップ本体12とを有している。クリップ本体12は、接続部11を介して内筒3の外周面7に設けられている。図4に示されるように、軸筒2の後端部の内部に挿入される内筒3の前端部の外周面には、雄ねじ部8が形成されている。雄ねじ部8の後方には、環状の突起である環状嵌合部9が形成されている。
【0019】
図5を参照すると、軸筒2の後端部の内周面には、内筒3の雄ねじ部8と螺合する雌ねじ部14が形成されている。雌ねじ部14の後方には、4つの嵌合突起15が周方向に沿って等間隔に形成されている。雌ねじ部14の前方の軸筒2の内周面は、前方に向かって徐々に内径が小さくなるように第1縮径部16が形成されている。軸筒2の前端部近傍の内周面には、軸線方向に延び且つ周方向に沿って等間隔に配置された複数のリブ17が形成されている。複数のリブ17の各々の後端部には、後方に向かって傾斜する傾斜面18が形成されている。貫通孔2a近傍の軸筒2の内周面には、前方に向かって徐々に内径が小さくなるように第2縮径部19が形成されている。
【0020】
軸筒2は、第1縮径部16、傾斜面18及び第2縮径部19という、いずれも後方に面した傾斜面を有することによって、射出成形時の離型を容易にし、成形性を確保することができる。そのため、これらの傾斜角は45度未満であることが好ましい。スプリング6を軸筒2の後端部から内部に挿入する組立時には、複数のリブ17の傾斜面18によってスプリング6の前端部が案内される。その結果、スプリング6の前端部が、複数のリブ17によって包囲されることによって位置決めされ、スプリング6は座屈することなく伸縮が可能となる。
【0021】
クリップ本体12の表面には、図2に示されるように平面視においてS字状又は波状に見えるように段差部13が設けられている。段差部13は、クリップ本体12の軸線方向における中央から外方に向かって徐々に高さが高くなるよう設けられている。より後方の段差部13は図中左方に面し、より前方の段差部13は図中右方に面している。すなわち、クリップ本体12は、S字の上下の湾曲において、湾曲の内側部分が湾曲の外側部分よりも盛り上がるように段差部13が形成されている。クリップ10が段差部13を有していることによって、内筒3を軸筒2に螺合するとき、指が引っかかりやすくなり、組立性が向上する。また、段差部13によって呈されるS字状の外観は、ノック式筆記具1が持続可能な(Sustainable)製品であることを想起させる。
【0022】
図5を参照すると、ノック部材30は、後端が閉鎖し且つ前端が開口する円筒状に形成された部材である。ノック部材30の前側の外周面には、8つの摺動突起部31が周方向に沿って等間隔に設けられている。ノック部材30の前端面にはカム面32が形成されている。カム面32は周方向に沿って整列する8つの山部及び谷部を有する。
【0023】
回転子40は、ノック部材30の前端部から内部に挿入されて芯合わせに使用され且つ円筒状に形成された挿入部41と、挿入部41の前方に配置され且つ円筒状に形成されたカム部42とからなる。カム部42は挿入部41よりも大きな外径を有する。カム部42の後端面には、ノック部材30のカム面32と協働し且つ相補的な形状のカム受け面43が形成されている。カム部42の外周面には、軸線方向に延びる突起である4つの内カム44が周方向に沿って等間隔に設けられている。回転子40の前端面には、スプリング6によって後方に付勢されたリフィル5の後端面が当接する。リフィル5の後端面には、リフィル5の内部と外部との通気性を確保するため、径方向に延びる細溝45が形成されている。
【0024】
図6は、図3におけるA部の拡大図である。図6は、軸筒2の嵌合突起15と内筒3の環状嵌合部9との嵌合を示している。軸筒2の後端部の内部に対して、内筒3の前端部を挿入してねじ込むと、軸筒2の雌ねじ部14と内筒3の雄ねじ部8とが徐々に螺合する。ねじ込みを続けることで軸筒2の内部に内筒3が徐々に挿入されると、最終的には、軸筒2の嵌合突起15と内筒3の環状嵌合部9とが弾性変形を伴いながら互いを乗り越え、軸筒2の後端面が内筒3の環状の面に当接することで螺合及び嵌合が完成する。その結果、軸筒2と内筒3とは、軸筒2の雌ねじ部14と内筒3の雄ねじ部8とによって、軸線方向に係止している。
【0025】
一般に筆記具は、筆記動作によって筆記具全体に振動が加わり、その振動によって螺合部分において螺合が徐々に緩む場合がある。ノック式筆記具1では、軸筒2の嵌合突起15と内筒3の環状嵌合部9とが軸線方向に係止することで、軸筒2と内筒3との螺合が緩むことが防止される。
【0026】
軸筒2の嵌合突起15と内筒3の環状嵌合部9とは、逆に、軸筒2側に環状嵌合部が設けられ、内筒3側に嵌合突起が設けられていてもよく、軸筒2側及び内筒3側の両方に環状嵌合部が設けられていてもよい。また、軸筒2側及び内筒3側の一方に突起状の凸部が形成され、軸筒2側及び内筒3側の他方に凸部に嵌合する凹部が形成されていてもよい。
【0027】
図7は、内筒3の後端部の縦断面図であり、図8は、図7の線B-Bにおける横断面図である。内筒3の後端部の内周面には、ノック機構の一部を構成する4つの外カム20が周方向に沿って等間隔に設けられている。外カム20の各々は、軸線方向に延びるカム突起部21を有している。隣接する外カム20によって、軸線方向に延びる第1溝部22が画成されている。外カム20、すなわちカム突起部21の幅方向、すなわち周方向における中央には、軸線方向に延びる第2溝部23が形成されている。
【0028】
カム突起部21を第1の肉厚t1を有する第1肉厚部とし、第1溝部22の部分を第2の肉厚t2を有する第2肉厚部とし、第2溝部23の部分を第3の肉厚t3を有する第3肉厚部とすると、第2の肉厚t2は、第1の肉厚t1よりも薄く、第3の肉厚t3は、第1の肉厚t1よりも薄く且つ第2の肉厚t2よりも厚い。なお、外カム20が設けられていない部分の内筒3は、主に第2の肉厚t2を有している。
【0029】
組立状態において、ノック部材30の摺動突起部31の各々は、内筒3に形成された外カム20の第1溝部22内及び第2溝部23内を前後方向に移動可能に構成されている。非筆記状態のノック式筆記具1では、内カム44の各々は、外カム20の第1溝部22内に配置され、筆記状態のノック式筆記具1では、内カム44の各々は、外カム20と軸線方向において係止している。ノック部材30のカム面32及び回転子40のカム受け面43は、内カム44が外カム20と係止し又は外カム20間の第1溝部22内に収容されるとき、カム面32の山部が、周方向において、カム受け面43の隣接する山部と谷部との間の斜面上に位置するように構成されている。このため、ノック操作によってカム面32の斜面がカム受け面43の斜面を押圧すると、この操作荷重及びスプリング6による付勢力に起因し、回転子40は周方向の分力を受けて周方向に回転する。
【0030】
すなわち、ノック部材30を前方に押圧するノック操作を行うと、ノック部材30のカム面32と回転子40のカム受け面43とが協働し、回転子40を回転させる。回転子40の回転に応じて、内カム44が、内筒3に形成された外カム20と係止し又は外カム20間の第1溝部22内に収容される。内カム44が外カム20間の第1溝部22内に収容されるとき、外カム20は内カム44間に収容される。要するに、ノック式筆記具1は、ノック部材30のノック操作に応じて外カム20と内カム44とが係止又は係止解除をすることによって、筆記状態及び非筆記状態が切り替え可能である。
【0031】
図10に示された従来の内筒103と異なり、ノック式筆記具1の内筒3は、図8の横断面に示されるように、内筒3に対する接続部11の対称線Sと、外カムの対称線とは一致している。すなわち、内筒3の横断面における各部の形状は、対称線Sに対して線対称となっている。具体的には、横断面において接続部11の中央及び内筒3の軸中心を通る対称線Sに対し、4つの外カム20のうち接続部11に最も近い外カム20及び最も遠い外カム20について、第2溝部23が対称的に分割され、カム突起部21が対称的に配置され、その他2つの外カム20は互いに対称的に配置されている。そのため、特に、接続部11に最も近い外カム20では、合成樹脂材料の射出成形時において、接続部11と、接続部11近傍の内筒3の内面の形状との関係で、図10に示された従来の内筒10において生じやすかった偏った収縮が生じ難い。その結果、内筒3においてヒケの発生を抑制することができる。
【0032】
内筒3の内面の形状では、第2溝部23を対称的に分割する対称線S以外に、第1溝部22を対称的に分割する対称線も考えられるが、図8に示されるように、第2溝部23が接続部11と径方向に整列して配置されていることが好ましい。すなわち、第1溝部22の第2の肉厚t2は、第2溝部23の第3の肉厚t3よりも薄いことから、第2溝部23が接続部11と径方向に整列していることによって、より薄い肉厚の第1溝部22が接続部11の周方向外側に配置されることとなり、ヒケの発生をより抑制することができる。しかしながら、第1溝部22を接続部11と径方向に整列して配置するようにしてもよい。
【0033】
なお、外カム20、すなわちカム突起部21の軸線方向の長さ、特に内筒3の後端側の長さを長くすることによって、また、カム突起部21の第1の肉厚t1をより厚くすることによって、ヒケを抑制することもできる。
【0034】
ノック式筆記具1において、各部品を形成する合成樹脂部材を全て同一な材質及びグレードで構成することによって、再利用を容易にすることができる。なお、スプリング6も、ノック部材30等と同一の材料で構成してもよい。合成樹脂は、環境負荷低減から再生プラスチックとすることが好適である。再生プラスチックとは、分別回収プラスチックを溶融及び混練して成形用プラスチック原料として再生されたプラスチック、並びに、この成形用プラスチック原料を成型してプラスチック成形品として再生されたプラスチックをいう。具体的な再生プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の再生品が挙げられる。添加剤は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、相溶化剤等のプラスチック製造による品質安定を目的として添加される。特に耐光性に優れた添加剤を用いることが好ましい。着色剤を添加することによって、バラツキのある樹脂表面の外観を安定させることができる。
【0035】
分別回収プラスチックとして、海から回収された海洋プラスチックであってもよい。特に海洋プラスチックを用いて射出成形を行う場合、成形時の流動性の関係でヒケも生じやすい。この場合において、上述した実施形態のように内筒3を構成することによって、ヒケの発生を抑制することができる。
【0036】
リフィル5は、ボールペン以外にマーキングペン、タッチペン、消しゴム等のその他種類の筆記体であってもよい。また、ノック部材30の一部又は全部を、ノック式筆記具による筆跡を消去する消去部としてもよい。
【0037】
リフィル5は、熱変色性インクが収容されたボールペンであってもよい。ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクをいう。熱変色性インクを用いた熱変色性筆記具では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して消去部である摩擦部材によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
【0038】
ノック式筆記具1を例に本発明の実施形態を説明したが、本発明をその他の筆記具、例えばキャップ式の筆記具、多芯式筆記具に適用してもよい。要するに、内筒3のような外カム20を有する筒状部材以外に、筆記具用部品が、少なくとも、軸線方向に延びる第1の肉厚を有する第1肉厚部と、軸線方向に延び且つ第1の肉厚よりも薄い第2の肉厚を有する第2肉厚部とを有し、筒状部材の外面には突出部が形成され、第1肉厚部と第2肉厚部と突出部とを含む筒状部材の横断面の形状が線対称である限りにおいて、本発明を任意に適用し得る。
【0039】
例えば、外カム20において、第2溝部23を省略して構成してもよい。また、外カムではなく、嵌合目的等の突起部及びそれ以外の部分によって、第1肉厚部及び第2肉厚部をそれぞれ構成してもよい。内面が円筒面状に形成され、径方向外方に突出するよう、第1肉厚部及び第2肉厚部が形成された筒状部材であってもよい。この場合、横断面において、第1肉厚部以外の部分が突出部と径方向に整列して配置されていることが好ましい。また、複数の第1肉厚部と複数の第2肉厚部とを有し、第1肉厚部の各々及び第2肉厚部の各々が、周方向に沿って等間隔に配置されていることが好ましい。
【0040】
筒状部材は、円筒状の外周面を有する内筒3のような構成以外に、例えば多角形状の筒状部材であってもよい。筒状部材の外面又は外周面に形成された突出部は、クリップ10の接続部11以外に、任意の突出部、例えば装飾的な突起であってもよい。突出部は、筒状部材の外面近傍において線対称に構成されていればよく、ヒケに影響を与えない程度に外面から離間した部分においては、例えばクリップ本体12の形状に示されるように、対称的な形状でなくてもよい。
【0041】
以上より、外面に突出部が形成された筒状の筆記具用部品において、内部の形状及び配置を適切にして、部品の肉厚の不均一さを減少させることで、突出部近傍のヒケの発生を抑制した筆記具用部品及び筆記具用部品を備えた筆記具を提供することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ノック式筆記具
2 軸筒
3 内筒
5 リフィル
7 外周面
10 クリップ
11 接続部
12 クリップ本体
20 外カム
21 カム突起部
22 第1溝部
23 第2溝部
図1
図2
図3
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図8
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図10