(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005875
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ワイン推薦システム、及びワイン推薦方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/015 20230101AFI20250109BHJP
G06Q 30/0601 20230101ALI20250109BHJP
【FI】
G06Q30/015
G06Q30/0601 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106285
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣中 直
(72)【発明者】
【氏名】南部 成仁
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB08
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】ワインの専門知識を有しないユーザであっても、そのユーザの嗜好に適したワインを推薦できるようにする。
【解決手段】本開示の一態様に係るシステムは、果物飲食品についてのユーザの嗜好に関する果物嗜好情報、及び前記果物飲食品についての果物成分に関する果物成分情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記果物嗜好情報及び前記果物成分情報に基づいて、複数種類のワインについての前記ユーザに対する推薦度を決定するための推薦基準情報を作成する作成部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果物飲食品についてのユーザの嗜好に関する果物嗜好情報、及び前記果物飲食品についての果物成分に関する果物成分情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記果物嗜好情報及び前記果物成分情報に基づいて、複数種類のワインについての前記ユーザに対する推薦度を決定するための推薦基準情報を作成する作成部と、を備えるワイン推薦システム。
【請求項2】
前記取得部は、前記複数種類のワインそれぞれのワイン成分に関するワイン成分情報をさらに取得し、
前記推薦基準情報及び前記ワイン成分情報に基づいて前記推薦度を決定する決定部をさらに備える請求項1に記載のワイン推薦システム。
【請求項3】
前記決定部は、前記推薦基準情報と前記ワイン成分情報との相関に基づいて前記推薦度を決定する、請求項2に記載のワイン推薦システム。
【請求項4】
前記推薦基準情報は、前記ワイン成分と同じ成分を含む前記果物成分に関する情報を有し、
前記決定部は、前記果物成分及び前記ワイン成分の同じ成分同士を対比して前記推薦度を決定する、請求項2に記載のワイン推薦システム。
【請求項5】
前記推薦基準情報は、前記ワイン成分と同じ成分を含む前記果物成分に関する情報を有し、
前記決定部は、前記果物成分及び前記ワイン成分の同じ成分同士の相関に基づいて、前記推薦度を決定する、請求項2に記載のワイン推薦システム。
【請求項6】
前記推薦度を視覚的に把握可能な形態で、前記複数種類のワインに関するワイン情報を表示する表示部をさらに備える請求項2又は請求項3に記載のワイン推薦システム。
【請求項7】
前記複数種類のワインのうち、前記推薦度が高い順に少なくとも1種類のワインに関するワイン情報を表示する表示部をさらに備える請求項2又は請求項3に記載のワイン推薦システム。
【請求項8】
前記作成部は、前記取得部により前記果物嗜好情報が新たに取得された場合、前記推薦基準情報を新たに作成する、請求項1又は請求項2に記載のワイン推薦システム。
【請求項9】
前記決定部は、前記取得部により前記ワイン成分情報が新たに取得された場合、又は前記作成部により前記推薦基準情報が新たに作成された場合、前記推薦度を新たに決定する、請求項2又は請求項3に記載のワイン推薦システム。
【請求項10】
前記果物成分は、糖度、滴定酸度、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、水素イオン指数(pH)、タンニン、及びアントシアニンのうちの少なくとも1つである、請求項1又は請求項2に記載のワイン推薦システム。
【請求項11】
前記果物嗜好情報の入力を受け付ける入力部をさらに備え、
前記取得部は、前記入力部での入力操作によって前記果物嗜好情報を取得する、請求項1又は請求項2に記載のワイン推薦システム。
【請求項12】
前記取得部は、前記ユーザが購入した前記果物飲食品に基づいて、前記果物嗜好情報を取得する、請求項1又は請求項2に記載のワイン推薦システム。
【請求項13】
前記取得部は、複数種類の果物飲食品それぞれについての前記果物嗜好情報、及び前記複数種類の果物飲食品それぞれについての前記果物成分情報を取得する、請求項1又は請求項2に記載のワイン推薦システム。
【請求項14】
ワイン推薦システムにより実行される方法であって、
前記ワイン推薦システムが備える取得部が、果物飲食品についてのユーザの嗜好に関する果物嗜好情報、及び前記果物飲食品についての果物成分に関する果物成分情報を取得するステップと、
前記ワイン推薦システムが備える作成部が、前記取得部により取得された前記果物嗜好情報及び前記果物成分情報に基づいて、複数種類のワインについての前記ユーザに対する推薦度を決定するための推薦基準情報を作成するステップと、を含むワイン推薦方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイン推薦システム、及びワイン推薦方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワインについて、価格、ぶどう品種及び味等の特徴毎に嗜好を要求するユーザに対して、適切なワインを推薦するアルゴリズムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ワインのぶどう品種や味等に関する専門知識を有するユーザに対してワインを推薦している。すなわち、特許文献1では、ワインの専門知識を有しない初心者等のユーザに対してワインを推薦することは想定されていない。
本開示は、ワインの専門知識を有しないユーザであっても、そのユーザの嗜好に適したワインを推薦できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るシステムは、果物飲食品についてのユーザの嗜好に関する果物嗜好情報、及び前記果物飲食品についての果物成分に関する果物成分情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記果物嗜好情報及び前記果物成分情報に基づいて、複数種類のワインについての前記ユーザに対する推薦度を決定するための推薦基準情報を作成する作成部と、を備える。
【0006】
本開示の一態様に係る方法は、システムにより実行される方法であって、前記ワイン推薦システムが備える取得部が、果物飲食品についてのユーザの嗜好に関する果物嗜好情報、及び前記果物飲食品についての果物成分に関する果物成分情報を取得するステップと、前記ワイン推薦システムが備える作成部が、前記取得部により取得された前記果物嗜好情報及び前記果物成分情報に基づいて、複数種類のワインについての前記ユーザに対する推薦度を決定するための推薦基準情報を作成するステップと、を含む。
【0007】
本開示の実施態様は、装置、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、若しくはコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体、或いはこれらの任意の組み合わせにより実現され得る。コンピュータが読み取り可能な記憶媒体は、揮発性の記憶媒体及び不揮発性の記憶媒体のいずれを含んでもよい。装置は、個別の複数の装置で構成してもよい。個別の複数の装置で構成する場合、それらを1つの筐体に配置する構成、及び離れた2つ以上の筐体に分かれて配置する構成のいずれであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ワインの専門知識を有しないユーザであっても、そのユーザの嗜好に適したワインを推薦することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るワイン推薦システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、推薦基準情報の作成アルゴリズムの一例を示す説明図であり、果物成分の正規化及びベクトル化を示している。
【
図3】
図3は、推薦基準情報の作成アルゴリズムの一例を示す説明図であり、果物成分ベクトルの重み付けを示している。
【
図4】
図4は、推薦基準情報の作成アルゴリズムの一例を示す説明図であり、複数の果物成分ベクトルの合算を示している。
【
図5】
図5は、推薦度の決定アルゴリズムの一例を示す説明図であり、ワイン成分の正規化及びベクトル化を示している。
【
図6】
図6は、推薦度の決定アルゴリズムの一例を示す説明図であり、コサイン類似度からの推薦度の決定を示している。
【
図7】
図7は、推薦度の表示形態の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、推薦度の表示形態の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1)本実施形態に係るワイン推薦システムは、果物飲食品についてのユーザの嗜好に関する果物嗜好情報、及び前記果物飲食品についての果物成分に関する果物成分情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記果物嗜好情報及び前記果物成分情報に基づいて、複数種類のワインについての前記ユーザに対する推薦度を決定するための推薦基準情報を作成する作成部と、を備える。
【0011】
本実施形態のワイン推薦システムによれば、果物飲食品についてのユーザの嗜好を示す果物嗜好情報及び果物成分情報に基づいて推薦基準情報が作成されることで、複数種類のワインについてのユーザに対する推薦度が決定される。したがって、ワインの専門知識を有しないユーザであっても、ユーザの果物飲食品の嗜好から、ユーザの嗜好に適したワインを推薦することができる。
【0012】
(2)上記(1)のワイン推薦システムにおいて、前記取得部は、前記複数種類のワインそれぞれのワイン成分に関するワイン成分情報をさらに取得し、前記推薦基準情報及び前記ワイン成分情報に基づいて前記推薦度を決定する決定部をさらに備えるのが好ましい。
この場合、複数種類のワインそれぞれのワイン成分に関するワイン成分情報を用いて推薦度が決定されるので、ユーザの嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0013】
(3)上記(2)のワイン推薦システムにおいて、前記決定部は、前記推薦基準情報と前記ワイン成分情報との相関に基づいて前記推薦度を決定するのが好ましい。
この場合、ユーザの嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0014】
(4)上記(2)のワイン推薦システムにおいて、前記推薦基準情報は、前記ワイン成分と同じ成分を含む前記果物成分に関する情報を有し、前記決定部は、前記果物成分及び前記ワイン成分の同じ成分同士を対比して前記推薦度を決定してもよい。
この場合、果物成分及びワイン成分の同じ成分同士の対比によって推薦度が決定されるので、ユーザの嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0015】
(5)上記(2)のワイン推薦システムにおいて、前記推薦基準情報は、前記ワイン成分と同じ成分を含む前記果物成分に関する情報を有し、前記決定部は、前記果物成分及び前記ワイン成分の同じ成分同士の相関に基づいて、前記推薦度を決定してもよい。
この場合、果物成分及びワイン成分の同じ成分同士の相関によって推薦度が決定されるので、ユーザの嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0016】
(6)上記(2)から(5)のいずれかのワイン推薦システムは、前記推薦度を視覚的に把握可能な形態で、前記複数種類のワインに関するワイン情報を表示する表示部をさらに備えるのが好ましい。
この場合、ユーザは、表示部を見れば、複数種類のワインの推薦度を容易に把握することができる。
【0017】
(7)上記(2)から(5)のいずれかのワイン推薦システムは、前記複数種類のワインのうち、前記推薦度が高い順に少なくとも1種類のワインに関するワイン情報を表示する表示部をさらに備えてもよい。
この場合、ユーザは、表示部に表示されたワイン情報により、推薦度が最も高いワインに関する情報を容易に把握することができる。
【0018】
(8)上記(1)から(7)のいずれかのワイン推薦システムにおいて、前記作成部は、前記取得部により前記果物嗜好情報が新たに取得された場合、前記推薦基準情報を新たに作成するのが好ましい。
この場合、最新の推薦基準情報を用いて推薦度が決定されるので、ユーザの嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0019】
(9)上記(2)から(8)のいずれかのワイン推薦システムにおいて、前記決定部は、前記取得部により前記ワイン成分情報が新たに取得された場合、又は前記作成部により前記推薦基準情報が新たに作成された場合、前記推薦度を新たに決定するのが好ましい。
この場合、最新のワイン成分情報又は最新の推薦基準情報を用いて推薦度が決定されるので、ユーザの嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0020】
(10)上記(1)から(9)のいずれかのワイン推薦システムにおいて、前記果物成分は、糖度、滴定酸度、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、水素イオン指数(pH)、タンニン、及びアントシアニンのうちの少なくとも1つであるのが好ましい。
この場合、果物成分情報は、ワインの味と密接に関係する果物成分に関する情報になるので、ユーザの嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0021】
(11)上記(1)から(10)のいずれかのワイン推薦システムは、前記果物嗜好情報の入力を受け付ける入力部をさらに備え、前記取得部は、前記入力部での入力操作によって前記果物嗜好情報を取得するのが好ましい。
この場合、果物嗜好情報は入力部で入力操作されるので、取得部は果物嗜好情報を容易に取得することができる。
【0022】
(12)上記(1)から(10)のいずれかのワイン推薦システムにおいて、前記取得部は、前記ユーザが購入した前記果物飲食品に基づいて、前記果物嗜好情報を取得してもよい。
この場合、例えばユーザの果物飲食品の購入履歴に基づいて、果物嗜好情報を容易に取得することができる。
【0023】
(13)上記(1)から(12)のいずれかのワイン推薦システムにおいて、前記取得部は、複数種類の果物飲食品それぞれについての前記果物嗜好情報、及び前記複数種類の果物飲食品それぞれについての前記果物成分情報を取得するのが好ましい。
この場合、果物嗜好情報及び果物成分情報の各情報量が多くなるので、ユーザの嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0024】
(14)本実施形態に係る方法は、上述の(1)から(13)のワイン推薦システムにおいて実行されるワイン推薦方法である。
したがって、本実施形態のワイン推薦方法は、上述の(1)から(13)のワイン推薦システムと同様の作用効果を奏する。
【0025】
<実施形態の詳細>
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
[システムの全体構成]
図1は、実施形態に係るワイン推薦システム1の全体構成を示すブロック図である。本実施形態のワイン推薦システム1は、1台の端末装置2によって構成されている。端末装置2は、例えば、ワインを含むアルコール飲料を販売する小売業者が所有するコンピュータである。端末装置2は、ワインの購入を検討している対象消費者(ユーザ)に対して、小売業者が対象消費者の嗜好に適したワインを推薦するときに用いられる。ワイン推薦システム1は、複数の端末装置によって構成されていてもよい。
【0026】
端末装置2は、制御部3、記憶部4、入力部5、及び表示部6を備える。制御部3は、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)などを含む演算処理装置である。制御部3には、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの集積回路が含まれていてもよい。制御部3は、記憶部4に格納されたコンピュータプログラム7をメインメモリ(RAM)に読み出し、読み出したプログラム7に従って各種の情報処理を実行する。
【0027】
記憶部4は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを含む補助記憶装置である。記憶部4は、フラッシュROM(Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、又はSDカードを含んでいてもよい。記憶部4に格納されるプログラム7には、後述する推薦基準情報S4の作成処理、及び推薦度の決定処理などを制御部3に実行させるプログラムが含まれる。
【0028】
入力部5は、例えばキーボード及びマウスなどの入力インタフェースにより構成されており、端末装置2の利用者(小売業者又は対象消費者など)による後述する各種情報S1~S3の入力を受け付ける。表示部6は、例えばディスプレイなどにより構成され、各種の情報を表示する。入力部5及び表示部6は、例えばタッチパネルのように一体となっていてもよい。
【0029】
[記憶部に登録される情報]
記憶部4には、果物嗜好情報S1、果物成分情報S2、及びワイン成分情報S3が、予め登録される。従って、本実施形態の記憶部4は、果物嗜好情報S1、果物成分情報S2、及びワイン成分情報S3をそれぞれ取得する取得部に相当する。
【0030】
果物嗜好情報S1は、対象消費者の複数種類の果物飲食品それぞれについての嗜好に関する情報である。果物飲食品には、果物、及び果物の加工品(ワインを除く飲料品及び食料品など)が含まれる。前記加工品としては、例えば、フルーツジュース、フルーツゼリー、ドライフルーツなどが挙げられる。果物嗜好情報S1は、単一の果物飲食品についての嗜好に関する情報であってもよい。
【0031】
本実施形態の果物嗜好情報S1は、複数種類の果物飲食品それぞれについての好き嫌いを、対象消費者が下記の「1」~「5」の5段階で評価した評価値である。果物嗜好情報S1は、本実施形態に限定されず、2段階以上で評価された評価値であればよい。
5:とても好き
4:好き
3:普通
2:嫌い
1:とても嫌い
【0032】
果物嗜好情報S1は、例えば小売業者が、対象消費者に対して複数種類の果物飲食品それぞれの嗜好についてアンケート調査を行い、その調査結果を入力部5で入力操作することによって、記憶部4に登録される。果物嗜好情報S1は、小売業者以外(例えば対象消費者)によって入力部5で入力操作されてもよい。
【0033】
果物嗜好情報S1は、対象消費者が購入した果物飲食品に基づいて作成されてもよい。例えば、果物嗜好情報S1は、複数種類の果物飲食品ついての対象消費者の購入履歴から、購入数が多い果物飲食品ほど評価値が高い値となるように作成されてもよい。購入履歴としては、実店舗の購入履歴、及びウェブ上の仮想店舗の購入履歴などが挙げられる。
【0034】
果物成分情報S2は、複数種類の果物飲食品それぞれについての果物成分に関する情報である。果物成分には、果物嗜好情報S1と同じ種類の果物飲食品の果物成分が含まれるが、他の代表的な果物飲食品の果物成分が含まれていてもよい。果物成分は、ワインの味と密接に関係する、糖度、滴定酸度、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、水素イオン指数(pH)、タンニン、及びアントシアニンのうちの少なくとも1つであるのが好ましい。本実施形態では、果物成分として、ワイン成分情報S3の後述するワイン成分と同じ成分である糖度及び滴定酸度が用いられる。以下、滴定酸度は、単に酸度ともいう。
【0035】
果物成分情報S2は、例えば、各果物飲食品についての全成分に対する糖度及び酸度の各割合(%)を示す値である。糖度及び酸度の各割合(%)は、例えば、分光分析法を利用して果物飲食品を非破壊で測定する測定装置により測定され、その測定装置から直接又は入力部5を介して記憶部4に登録される。
【0036】
ワイン成分情報S3は、複数種類のワインそれぞれのワイン成分に関する情報である。ワインの種類には、ぶどう品種及び産地などが含まれる。したがって、同一のぶどう品種であっても産地が異なれば、異なる種類となる。ワイン成分は、糖度、滴定酸度、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、水素イオン指数(pH)、タンニン、及びアントシアニンのうちの少なくとも1つであるのが好ましい。本実施形態では、ワイン成分として糖度及び滴定酸度が用いられる。
【0037】
ワイン成分情報S3は、例えば、各ワインについての全成分に対する糖度及び酸度の各割合(%)を示す値である。糖度及び酸度の各割合(%)は、例えば、上述の測定装置により測定され、その測定装置から直接又は入力部5を介して記憶部4に登録される。
【0038】
[システムの制御構成]
制御部3は、当該制御部3が実行するプログラム7の機能部として、作成部31と、決定部32と、を有する。作成部31は、上述のように記憶部4に各種情報S1~S3が登録された後、記憶部4の果物嗜好情報S1及び果物成分情報S2に基づいて、推薦基準情報S4を作成する。推薦基準情報S4は、複数種類のワインについての対象消費者に対する推薦度を決定するための基準となる情報である。以下、複数種類のワインについての対象消費者に対する推薦度は、単に推薦度ともいう。
【0039】
作成部31は、作成した推薦基準情報S4を決定部32に渡す。決定部32は、記憶部4のワイン成分情報S3、及び作成部31により作成された推薦基準情報S4に基づいて、推薦度を決定する。本実施形態の決定部32は、ワイン成分情報S3と推薦基準情報S4との相関に基づいて、推薦度を決定する。決定部32は、前記相関以外の指標に基づいて、推薦度を決定してもよい。
【0040】
[推薦基準情報の作成]
図2~
図4は、推薦基準情報S4の作成アルゴリズムの一例を示す説明図である。
図2~
図4は、3種類の果物飲食品である果物(いちご、みかん、りんご)それぞれについての対象消費者の嗜好及び果物成分に基づいて、推薦基準情報S4が作成される場合のアルゴリズムを示している。なお、3種類の果物飲食品は、互いに異なる果物に限定されず、例えば互いに品種が異なる同一の果物であってもよい。
【0041】
まず、
図2に示すように、作成部31は、記憶部4から読み出した果物成分情報S2を、果物成分(糖度及び酸度)毎に正規化し、これらの正規化値をベクトル化した果物成分ベクトル[糖度,酸度]を作成する(ステップST11)。その際、作成部31は、複数種類の果物飲食品のうち、果物成分の割合が最も高い最高値を「1」に正規化し、果物成分の割合が最も低い最低値を「0」に正規化する。また、作成部31は、果物成分の割合が最高値と最低値との間の中間値を示す場合、その中間値を、次の式(1)を用いて、0から1までの間の相対値に正規化する。
相対値=(中間値-最低値)/(最高値-最低値) ・・・(1)
【0042】
図2では、作成部31は、3種類の果物の糖度のうち、最高値を示すりんごの糖度の割合である「13.0」を「1」に正規化する。また、作成部31は、3種類の果物の糖度のうち、最低値を示すいちごの糖度の割合である「10.0」を「0」に正規化する。さらに、作成部31は、中間値を示すみかんの糖度の割合である「11.0」を、前記式(1)により相対値である「0.33」に正規化する。
【0043】
作成部31は、3種類の果物それぞれの酸度の割合についても、糖度の割合と同様の手法により正規化する。具体的には、作成部31は、いちご、みかん、及びりんごそれぞれの酸度の割合である「1.0」、「0.6」、及び「0.2」を、順に「1」、「0.5」、及び「0」に正規化する。そして、作成部31は、3種類の果物それぞれについて、糖度の割合の正規化値、及び酸度の割合の正規化値をベクトル化した果物成分ベクトルを作成する。
図2では、いちご、みかん、及びりんごそれぞれの果物成分ベクトル[糖度,酸度]は、順に[0,1]、[0.33,0.5]、及び[1,0]となる。
【0044】
次に、
図3に示すように、作成部31は、果物嗜好情報S1の各評価値を、下記のように0から1までの間で正規化する(ステップST12)。以下、評価値を正規化した値を、正規化評価値ともいう。
評価値=5→正規化評価値=1.00
評価値=4→正規化評価値=0.75
評価値=3→正規化評価値=0.50
評価値=2→正規化評価値=0.25
評価値=1→正規化評価値=0.00
【0045】
図3では、いちご、みかん、及びりんごそれぞれの評価値は、順に「4」、「3」、及び「2」である。したがって、いちご、みかん、及びりんごそれぞれの正規化評価値は、順に「0.75」、「0.5」、及び「0.25」となる。ステップST12の評価値の正規化は、ステップST11の果物成分の正規化またはベクトル化の前に行われてもよい。
【0046】
次に、作成部31は、果物成分情報S2の各果物の果物成分ベクトルを、果物嗜好情報S1の対応する果物の正規化評価値に応じて重み付けする(ステップST13)。本実施形態では、作成部31は、各果物の果物成分ベクトルに、対応する果物の正規化評価値を乗算する。
図3では、いちご、みかん、及びりんごそれぞれの重み付け後(乗算後)の果物成分ベクトル[糖度,酸度]は、順に[0,0.75]、[0.17,0.25]、及び[0.25,0]となる。
【0047】
次に、
図4に示すように、作成部31は、各果物の重み付け後の果物成分ベクトルを全て合算する(ステップST14)。
図4では、いちご、みかん、及びりんごそれぞれの重み付け後の果物成分ベクトルである[0,0.75]、[0.17,0.25]、及び[0.25,0]が全て合算され、[0.42,1]となる。この合算後の果物成分ベクトルが、対象消費者の推薦基準情報S4となる。以下、合算後の果物成分ベクトルを、合算果物成分ベクトルともいう。
【0048】
作成部31は、推薦基準情報S4を作成した後に、果物嗜好情報S1が新たに記憶部4に登録された場合、上述のステップST11~ステップST14の手順により、推薦基準情報S4を新たに作成する。例えば、いちご、みかん、及びりんご以外の果物について、対象消費者の好き嫌いの評価値が果物嗜好情報S1に追加された場合、作成部31は、新たな果物嗜好情報S1及び果物成分情報S2に基づいて、推薦基準情報S4を新たに作成する。
【0049】
その際、果物成分情報S2は、果物嗜好情報S1に追加された果物の果物成分が予め含まれている既存の果物成分情報S2、又は前記追加された果物の果物成分を含む新たな果物成分情報S2が記憶部4に登録されれば当該新たな果物成分情報S2が用いられる。
【0050】
[推薦度の決定]
図5及び
図6は、推薦度の決定アルゴリズムの一例を示す説明図である。ここでは、決定部32が、上述のステップST11~ステップST14の手順により作成された推薦基準情報S4を用いて、3種類のワインA,B,Cについての推薦度を決定する場合のアルゴリズムを示している。
【0051】
まず、
図5に示すように、決定部32は、記憶部4から読み出したワイン成分情報S3を、果物成分(糖度及び酸度)毎に正規化し、これらの正規化値をベクトル化したワイン成分ベクトル[糖度,酸度]を作成する(ステップST21)。ワイン成分ベクトルを作成するアルゴリズムは、上述の果物成分ベクトルと同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0052】
図5では、決定部32は、3種類のワインA~Cの糖度のうち、最高値を示すワインCの糖度の割合である「3.8」を「1」に正規化する。また、決定部32は、3種類のワインA~Cの糖度のうち、最低値を示すワインAの糖度の割合である「0.3」を「0」に正規化する。さらに、決定部32は、中間値を示すワインBの糖度の割合である「1.0」を、上述の式(1)により相対値である「0.2」に正規化する。
【0053】
決定部32は、3種類のワインA~Cそれぞれの酸度の割合についても、糖度の割合と同様に正規化する。具体的には、決定部32は、3種類のワインA~Cの酸度のうち、最高値を示すワインAの酸度の割合である「0.7」を「1」に正規化する。また、決定部32は、3種類のワインA~Cのうち、最低値を示すワインCの酸度の割合である「0.5」を「0」に正規化する。さらに、決定部32は、中間値を示すワインBの酸度の割合である「0.58」を、上述の式(1)により相対値である「0.4」に正規化する。
【0054】
次に、決定部32は、3種類のワインA~Cそれぞれについて、糖度の割合の正規化値、及び酸度の割合の正規化値をベクトル化したワイン成分ベクトルを作成する。
図5では、ワインA~Cそれぞれのワイン成分ベクトル[糖度,酸度]は、順に[0,1]、[0.2,0.4]、及び[1,0]となる。
【0055】
決定部32は、合算果物成分ベクトルと、各ワインのワイン成分ベクトルとを対比し、つまり果物成分及びワイン成分の同じ成分(糖度と酸度)同士を対比し、両ベクトル(同じ成分同士)の相関を求める。ここでは、
図6に示すように、決定部32は、合算果物成分ベクトルとワイン成分ベクトルとの類似度を示すコサイン類似度を算出する(ステップST22)。具体的には、決定部32は、合算果物成分ベクトル[0.42,1]と、ワインA,B,Cの各ワイン成分ベクトル[0,1]、[0.2,0.4]、及び[1,0]とのコサイン類似度であるcosα、cosβ、及びcosγを算出する。その算出結果は下記の通りである。
ワインA:cosα≒0.922
ワインB:cosβ≒0.998
ワインC:cosγ≒0.387
【0056】
コサイン類似度は、両ベクトル(推薦基準情報S4とワイン成分情報S3)の相関の一例である。この相関は、コサイン類似度以外の類似度が用いられてもよいし、類似度以外の指標(例えば非類似度)が用いられてもよい。また、決定部32は、合算果物成分ベクトルの方向を修正した後に、両ベクトルを対比してもよい。例えば、決定部32は、合算果物成分ベクトルに対して、補正係数を乗算するなどの補正処理を行った後、その補正ベクトルとワイン成分ベクトルとを対比してもよい。
【0057】
次に、決定部32は、算出したコサイン類似度に基づいて、複数種類のワインA~Cについての対象消費者に対する推薦度を決定する(ステップST23)。推薦度は、例えば推薦順位を示す数値であり、コサイン類似度が大きいほど小さい値となる。したがって、推薦度の値が小さくなるほど、対象消費者への推薦度が高くなる。
図6では、コサイン類似度が大きい順に、ワインB、ワインA、及びワインCとなるので、決定部32は、ワインBの推薦度を「1」、ワインAの推薦度を「2」、及びワインCの推薦度を「3」と決定する。
【0058】
決定部32は、推薦度を作成した後に、ワイン成分情報S3が新たに記憶部4に登録された場合、上述のステップST21~ステップST23の手順により、推薦度を新たに決定する。例えば、新しい種類のワインのワイン成分がワイン成分情報S3に追加された場合、決定部32は、新しい種類のワインを含めて、対象消費者に対する推薦度を新たに決定する。
【0059】
また、決定部32は、推薦度を作成した後に、作成部31が推薦基準情報S4を新たに作成した場合も、上述のステップST21~ステップST23の手順により、推薦度を新たに決定する。例えば、上述のように新たな果物嗜好情報S1が登録され、作成部31が推薦基準情報S4を新たに作成した場合、決定部32は、その新たな推薦基準情報S4を用いて、対象消費者に対する推薦度を新たに決定する。
【0060】
[推薦度の表示]
図7は、推薦度の表示形態の一例を示す図である。表示部6は、決定部32が決定した推薦度を、視覚的に把握可能な形態で表示する。
図7に示すように、表示部6は、推薦度が高い順に、全3種類のワインA~Cに関するワイン情報を同時に並べて表示する。ワイン情報には、例えば、ワインボトルの写真、商品名、産地、ぶどう品種、ぶどう収穫年、容量、アルコール度、及び味わいが含まれるが、糖度、酸度などの他の情報が含まれてもよい。
【0061】
図8は、推薦度の表示形態の別例を示す図である。
図8に示すように、表示部6は、推薦度が最も高いワインに関するワイン情報のみを表示する。表示部6は、
図7及び
図8以外の表示形態で推薦度を表示してもよい。例えば、表示部6は、全3種類のワインに関するワイン情報を、推薦度が高い順に1画面ずつ表示してもよい。
【0062】
[実施形態の作用効果]
以上、本実施形態のワイン推薦システム1は、果物飲食品についての対象消費者の嗜好を示す果物嗜好情報S1及び果物成分情報S2に基づいて推薦基準情報S4が作成されることで、複数種類のワインについての対象消費者に対する推薦度が決定される。したがって、ワインの専門知識を有しない対象消費者であっても、対象消費者の果物飲食品の嗜好から、対象消費者の嗜好に適したワインを推薦することができる。つまり、ワインの原料であるぶどうとの親和性のある「果物」の嗜好性を指標として、ワインを推薦しているため、より対象消費者に好まれるワインを決定することができる。言い換えれば、複数種類のワインの中から、対象消費者に好まれるワインを推薦するにあたって、果物以外の嗜好品や食品を指標としたワインの推薦に比べて、本開示は果物を指標としているため、対象消費者の嗜好に適したワインを推薦することができる。
【0063】
決定部32は、推薦基準情報S4、及び複数種類のワインそれぞれのワイン成分に関するワイン成分情報S3を用いて推薦度を決定するので、対象消費者の嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0064】
決定部32は、推薦基準情報S4である合算果物成分ベクトルと、ワイン成分情報S3であるワイン成分ベクトルとを対比し、両ベクトルの相関を示す類似度(コサイン類似度)を算出する。これにより、対象消費者の嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0065】
表示部6は、推薦度を視覚的に把握可能な形態で、全3種類のワインA~Cに関するワイン情報を同時に並べて表示する。したがって、対象消費者は、表示部6を見れば、全3種類のワインの推薦度を容易に把握することができる。
【0066】
また、表示部6が、3種類のワインA~Cのうち、推薦度が最も高いワインBに関するワイン情報のみを表示することで、対象消費者は、推薦度が最も高いワインBに関するワイン情報を容易に把握することができる。
【0067】
作成部31は、果物嗜好情報S1が新たに記憶部4に登録された場合、推薦基準情報S4を新たに作成する。これにより、最新の推薦基準情報S4を用いて推薦度が決定されるので、対象消費者の嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0068】
決定部32は、ワイン成分情報S3が新たに記憶部4に登録された場合、又は作成部31が推薦基準情報S4を新たに作成した場合、推薦度を新たに決定する。これにより、最新のワイン成分情報S3又は最新の推薦基準情報S4を用いて推薦度が決定されるので、対象消費者の嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0069】
果物成分情報S2は、ワインの味と密接に関係する果物成分(糖度と酸度)に関する情報であるため、対象消費者の嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0070】
果物嗜好情報S1は、小売業者等により入力部5で入力操作されるので、果物嗜好情報S1を記憶部4に容易に登録することができる。また、対象消費者が購入した果物飲食品に基づいて果物嗜好情報S1が作成される場合にも、果物嗜好情報S1を記憶部4に容易に登録することができる。
【0071】
果物嗜好情報S1及び果物成分情報S2は、複数種類の果物飲食品それぞれについての、対象消費者の嗜好に関する情報、及び果物成分に関する情報である。したがって、果物嗜好情報S1及び果物成分情報S2の各情報量が多くなるので、対象消費者の嗜好にさらに適したワインを推薦することができる。
【0072】
[その他]
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0073】
上述の実施形態では、記憶部4には、正規化前の果物嗜好情報S1、果物成分情報S2、及びワイン成分情報S3が登録されるが、正規化後の果物嗜好情報S1、果物成分情報S2、及びワイン成分情報S3が登録されてもよい。果物成分ベクトル及びワイン成分ベクトルは、2つの成分(糖度と酸度)により構成されているが、1つ又は3つ以上の成分により構成されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 ワイン推薦システム
2 端末装置
3 制御部
4 記憶部(取得部)
5 入力部
6 表示部
7 コンピュータプログラム
31 作成部
32 決定部
S1 果物嗜好情報
S2 果物成分情報
S3 ワイン成分情報
S4 推薦基準情報