(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025058759
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20250402BHJP
E02F 9/18 20060101ALI20250402BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20250402BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20250402BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20250402BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20250402BHJP
B60L 58/33 20190101ALI20250402BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E02F9/18
H01M8/00 Z
H01M8/04007
H01M8/04 Z
B60L50/70
B60L58/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023168894
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 泰典
(72)【発明者】
【氏名】荒川 貴文
(72)【発明者】
【氏名】中本 拓志
(72)【発明者】
【氏名】福士 幸治
(72)【発明者】
【氏名】桑岡 謙太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 肇
【テーマコード(参考)】
2D015
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
2D015FA02
5H125AA12
5H125AC07
5H125BD02
5H125BD12
5H125EE33
5H125FF22
5H125FF26
5H127AB01
5H127AB29
5H127AC09
5H127AC14
5H127BA02
5H127BA22
5H127BB02
5H127CC07
5H127DC55
5H127DC90
5H127EE01
(57)【要約】
【課題】作業機械の運転終了時に、運転者に対し、パージ処理が実行されていることを、より確実に認識させることができる作業機械を提供することができる。
【解決手段】自機の左右方向の一方、かつ、前方に設けられた運転室8と、動力源となる電動モータ23に供給される電力を生成する燃料電池21と、燃料電池21を冷却する燃料電池用冷却システム70と、備え、燃料電池用冷却システム70は、自機の左右方向の一方、かつ、運転室8の後ろに配置されていることを特徴とする作業機械。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自機の左右方向の一方、かつ、前方に設けられた運転室と、
動力源となる電動モータに供給される電力を生成する燃料電池と、
前記燃料電池を冷却する第1の冷却装置と、を備え
前記第1の冷却装置は、自機の左右方向の一方、かつ、前記運転室の後ろに配置されていることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記第1の冷却装置は、前記運転室に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
前記第1の冷却装置は、第1の熱交換器と前記第1の熱交換器と対面して配置されて前記第1の熱交換器に冷却風を送風する複数の第1の冷却ファンとを有し、
前記複数の第1の冷却ファンは、自機の側面に沿って配置されていることを特徴とする請求項2記載の作業機械。
【請求項4】
自機の後端には、カウンタウエイトが設けられており、
前記第1の冷却装置は、第1の熱交換器と前記第1の熱交換器と対面して配置されて前記第1の熱交換器に冷却風を送風する第1の冷却ファンとを有し、
前記第1の冷却ファンは、自機の前後方向において、前記運転室と前記カウンタウエイトとの間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項5】
前記電動モータを冷却させる第2の冷却装置をさらに備え、
前記第1の冷却装置は、第1の熱交換器と前記第1の熱交換器と対面して配置されて前記第1の熱交換器に冷却風を送風する第1の冷却ファンとを有し、
前記第2の冷却装置は、第2の熱交換器と前記第2の熱交換器と対面して配置されて前記第2の熱交換器に冷却風を送風する第2の冷却ファンとを有し、
前記第1の冷却ファンは、自機の左右方向の一方に配置されると共に、自機の前記左右方向の一方の側面側から外気を取り込み、
前記第2の冷却ファンは、自機の左右方向の他方、かつ、前記第1の冷却ファンと対向して配置されると共に、自機の前記左右方向の他方の側面側から外気を取り込むことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項6】
自機の後端には、カウンタウエイトが設けられており、
前記カウンタウエイトには、前記第1の冷却ファンおよび前記第2の冷却ファンにより取り込まれた外気を排出するための開口が設けられていることを特徴とする請求項5記載の作業機械。
【請求項7】
前記燃料電池のパージ処理が実行されているときの前記第1の冷却ファンの駆動は、前記燃料電池から発生する発電電力により駆動されることを特徴とする請求項3記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。本発明は、特に燃料電池を備え、燃料電池により発生する電力により駆動する作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、環境に配慮する観点から、燃料電池が搭載された作業機械が用いられつつある。一般に燃料電池は、水素のイオン化を促進するために燃料電池の内部を加湿状態としておくことが必要である。また、発電の際に水を生成するため、排水経路に水分が残留することがある。しかしながら、これらの残留水分は,氷点下などの低温環境下において凍結してしまうおそれがあり、システム停止時には残留水分を除去する必要がある。
【0003】
特許文献1には、建設機械について開示されている。この建設機械は、本体部と、該本体部を走行する走行装置との間に設けられ、本体部を旋回する第1旋回部と、本体部に接続された作業装置と、第1旋回部とは異なる第2旋回部により旋回可能な収容部と、を備える。収容部は、水素を貯蔵する水素タンクと水素タンクから供給される水素により発電を行う燃料電池とを収容し、本体部には、作業装置を駆動する油圧装置が配置されている。
特許文献2には、電力を出力する電源システムについて開示されている。電源システムは、プロトン伝導性を有する電解質層と、該電解質層に接合される水素透過性金属層とを備える燃料電池と、燃料電池のアノード側に、水素を含有する燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と、を備える。また、電源システムは、燃料電池のアノード側に、水素を含有しないパージガスを供給するパージガス供給部と、燃料電池における発電の停止後に、パージガス供給部を駆動して、燃料電池内の燃料ガスを、パージガスによって置き換えるパージ制御部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-180565号公報
【特許文献2】国際公開第2005/043663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池が搭載された作業機械では、燃料電池の停止の際に、燃料電池の内部や排水経路の残留水分を除去するパージ処理を行い、低温環境下における凍結防止を行う必要がある。
パージ処理は、作業機械の運転終了時、すなわちキーオフ後に実施されるものであるが、停止処理の一部として必要に応じて実行される。一方、作業機械では、バッテリの消耗防止、盗難防止、車体メンテナンスの安全性向上等を目的とし、バッテリからの電力の供給ラインを手動で遮断して、システム電源供給源を遮断する場面が存在する。
しかしながら、運転者が作業終了後にパージ処理が実行されていることに気付かず、システム電源供給源を遮断してしまうと、パージ処理が中断され、燃料電池内部や排出経路に残留水分が残ってしまうことがある。この場合、低温環境下では凍結により、以降の燃料電池の起動性を損なうおそれがある。
本発明は、作業機械の運転終了時に、運転者に対し、パージ処理が実行されていることを、より確実に認識させることができる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため本発明は、自機の左右方向の一方、かつ、前方に設けられた運転室と、動力源となる電動モータに供給される電力を生成する燃料電池と、燃料電池を冷却する第1の冷却装置と、備え、第1の冷却装置は、自機の左右方向の一方、かつ、運転室の後ろに配置されていることを特徴とする作業機械である。この場合、作業機械の運転終了時に、運転者に対し、パージ処理が実行されていることを、より確実に認識させることができる作業機械を提供することができる。
【0007】
ここで、第1の冷却装置は、運転室に隣接して配置するようにできる。この場合、運転者に電動ファンや電動水ポンプの作動音を認識させやすくすることができる。
また、第1の冷却装置は、第1の熱交換器と第1の熱交換器と対面して配置されて第1の熱交換器に冷却風を送風する複数の第1の冷却ファンとを有し、複数の第1の冷却ファンは、自機の側面に沿って配置されるようにできる。この場合、外気を取り込みやすくなる。また、第1の冷却ファンが複数になっても、それぞれの第1の冷却ファンで外気を取り込むことができる。
またさらに、自機の後端には、カウンタウエイトが設けられており、第1の冷却装置は、第1の熱交換器と第1の熱交換器と対面して配置されて第1の熱交換器に冷却風を送風する第1の冷却ファンとを有し、第1の冷却ファンは、自機の前後方向において、運転室とカウンタウエイトとの間に配置されるようにできる。この場合、第1の冷却ファンの作動音が運転者に聞こえやすくなる。
また、電動モータを冷却させる第2の冷却装置をさらに備え、第1の冷却装置は、第1の熱交換器と第1の熱交換器と対面して配置されて第1の熱交換器に冷却風を送風する第1の冷却ファンとを有し、第2の冷却装置は、第2の熱交換器と第2の熱交換器と対面して配置されて第2の熱交換器に冷却風を送風する第2の冷却ファンとを有し、第1の冷却ファンは、自機の左右方向の一方に配置されると共に、自機の左右方向の一方の側面側から外気を取り込み、第2の冷却ファンは、自機の左右方向の他方、かつ、第1の冷却ファンと対向して配置されると共に、自機の左右方向の他方の側面側から外気を取り込むようにできる。この場合、冷却性能を悪化させるリサーキュレーションを抑制することができる。
そして、自機の後端には、カウンタウエイトが設けられており、カウンタウエイトには、第1の冷却ファンおよび第2の冷却ファンにより取り込まれた外気を排出するための開口が設けられるようにできる。この場合、自機の後方から熱風を排出しやすくなる。
さらに、燃料電池のパージ処理が実行されているときの、第1の冷却ファンの駆動は、燃料電池から発生する発電電力により駆動されるようにできる。この場合、燃料電池の排熱により、燃料電池内部や接続配管に残留する水分を車外へ排出することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業機械の運転終了時に、運転者に対し、パージ処理が実行されていることを、より確実に認識させることができる作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態における作業機械の全体構成について示した図である。
【
図2】油圧ショベルのシステム構成について示した図である。
【
図3】本実施の形態の作業機械の燃料電池用冷却システムの説明図である。
【
図4】本実施形態の油圧ショベルの旋回体の上面図である。
【
図5】本実施形態の油圧ショベルの旋回体の左側面図である。
【
図6】本実施形態の油圧ショベルの旋回体の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0011】
<作業機械の全体構成の説明>
図1は、本実施の形態における作業機械の全体構成について示した図である。
図示する作業機械は、油圧ショベル100である。ただし、作業機械はこれに限られるものではなく、ホイールローダ、ブルドーザ、クレーン車などの建設機械とすることができる。また、作業機械は、伐倒機、造材機、トラクタ、林内作業車、集材機などの農業機械とすることもできる。
【0012】
油圧ショベル100は、左右一対の履体1,2を備えた走行体3と、走行体3の上に取り付けられ、自機の一例としての旋回体4と、旋回体4の一端に回転自在にピン結合されたブーム5と、ブーム5の一端に回転自在にピン結合されたアーム6と、アーム6の一端に回転自在にピン結合されたバケット7とを備えている。
さらに、油圧ショベル100は、旋回体4上であって自機の左右方向の一方、かつ、前方に設けられた運転室8と、後述する電動モータ23やメインポンプ31(
図2参照)を格納する機械室9と、自機の後端に設けられるカウンタウエイト10と、履体1、2を駆動する走行モータ11、12と、ブーム5を駆動する左右一対のブームシリンダ14、15と、アーム6を駆動するアームシリンダ16と、バケット7を駆動するバケットシリンダ17とを備えている。
このとき、主な作業腕体はブーム5とアーム6とバケット7に相当し、ブームシリンダ14、15、アームシリンダ16、およびバケットシリンダ17のそれぞれの伸縮によってこれらの作業腕体機構の姿勢が決定される。
【0013】
図2は、油圧ショベル100のシステム構成について示した図である。
走行モータ11、12及び旋回モータ13は、いずれも油圧モータとして同様の構成を有しているため、以下では旋回モータ13を例に挙げて説明し、走行モータ11、12についてはその説明を割愛する。同様に、ブームシリンダ14、15、アームシリンダ16、及びバケットシリンダ17は、いずれも油圧シリンダとして同様の構成を有しているため、以下ではアームシリンダ16を例に挙げて説明し、ブームシリンダ14、15及びバケットシリンダ17についてはその説明を割愛する。したがって、
図2では、アームシリンダ16及び旋回モータ13に係る油圧回路構成のみを図示しており、その他の油圧アクチュエータの図示を省略している。
【0014】
油圧ショベル100は、システム構成として、電動機器を動作させる電力回路20と、油圧を発生させる油圧回路30と、電力回路20や油圧回路30の動作を制御するための操作を行う操作系40と、水素を貯蔵する水素タンク50と、低電圧の電力回路である低電圧回路60と、燃料電池を冷却する燃料電池用冷却システム70とを備える。
【0015】
油圧回路30は、メインポンプ31及びパイロットポンプ32と、作動油を貯蔵する作動油タンク33と、旋回体4を駆動する旋回モータ13と、旋回モータ13に係る作動油の流れを制御する第1方向制御弁34と、アームシリンダ16に係る作動油の流れを制御する第2方向制御弁35等が設けられている。
メインポンプ31は、電動モータ23によって駆動される可変容量型の油圧ポンプである。このメインポンプ31は、作動油タンク33から作動油を吸入し、第1方向制御弁34及び第2方向制御弁35を介して旋回モータ13及びアームシリンダ16にそれぞれ作動油を供給する。なお、本実施の形態では、メインポンプ31には可変容量型の油圧ポンプが用いられているが、これに限らず、固定容量型の油圧ポンプを用いてもよい。
パイロットポンプ32は、電動モータ23によって駆動される固定容量型の油圧ポンプである。このパイロットポンプ32は、作動油タンク33から作動油を吸入し、第1方向制御弁34の一対の受圧室34A、34B及び第2方向制御弁35の一対の受圧室35A、35Bにそれぞれ供給する。
油圧回路30には、さらに、メインポンプ31の吐出圧の上限を規定するメインリリーフ弁36と、パイロットポンプ32の吐出圧の上限を規定するパイロットリリーフ弁37と、第2方向制御弁と作動油タンク33との間の管路を開閉する開閉弁38とを含んで構成されている。
【0016】
運転室8内には、操作系40として、作業モード選択スイッチ41や後述する電動モータ23の回転数を設定するモータコントロールダイヤル42、操作レバー43A,43B、および車体コントローラ45等が設けられている。
操作レバー43A,43Bは、各々の旋回モータ13およびアームシリンダ16に対応しており、例えば、操作量に応じた電気的な操作信号(レバー信号Lv)を出力する電気レバーが用いられる。車体コントローラ45には、操作レバー43A,43Bのレバー信号Lvが入力され、電磁比例弁34a,34bおよび電磁比例弁35a,35bに対し、レバー信号Lvに応じた指令信号を出力することで、第1方向制御弁34、第2方向制御弁35の切換方向とストローク量を制御する。同時に、メインポンプ31のレギュレータ31Rに対し、レバー信号Lvやポンプ吐出圧センサ31S、電動モータ回転数センサ(図示せず)等に応じた指令信号を出力することで、ポンプ容量(吐出流量)を制御する。このような構成により、操作レバー43A,43Bによって、各油圧アクチュエータが所望の動作を行う。
【0017】
第1方向制御弁34は、センターバイパス型の方向制御弁であり、旋回モータ13を正回転させる第1切換位置34Lと、メインポンプ31と作動油タンク33とを連通させて作動油を作動油タンク33へ直接戻す中立位置34Nと、旋回モータ13を逆回転させる第2切換位置34Rとを有している。第1方向制御弁34は、一対の受圧室34A,34Bにそれぞれ作用するパイロット圧に応じて内部のスプールがストロークすることにより、第1切換位置34L、中立位置34N、及び第2切換位置34Rのいずれかに切り換わる構成になっている。これにより、メインポンプ31から旋回モータ13へ供給される作動油の流量及び方向(流れ)が制御される。
【0018】
第2方向制御弁35は、第1方向制御弁34と同様にセンターバイパス型の方向制御弁であり、アームシリンダ16のロッド16Cを縮ませる第1切換位置35Lと、メインポンプ31と作動油タンク33とを連通させて作動油を作動油タンク33へ直接戻す中立位置35Nと、アームシリンダ16のロッド16Cを伸長させる第2切換位置35Rとを有している。第2方向制御弁35は、第1方向制御弁34と同様に、一対の受圧室35A,35Bにそれぞれ作用するパイロット圧に応じて内部のスプールがストロークすることにより、第1切換位置35L、中立位置35N、及び第2切換位置35Rのいずれかに切り換わる構成になっている。これにより、メインポンプ31からアームシリンダ16へ供給される作動油の流量及び方向(流れ)が制御される。
【0019】
開閉弁38は、指令電流の大きさに比例して開度が調整される電磁比例弁であって、車体コントローラ45からの指令電流の大きさに比例して開口面積が調整される。このため、非操作状態や、油圧アクチュエータ負荷が小さい時にも、メインポンプ31の圧力を自在に設定可能な構成となっている。
【0020】
電力回路20は、燃料電池21と、インバータ22と、二次電池25と、昇圧コンバータ28と、高電圧DCDCコンバータ29とを備え、電動モータ23および種々な電動補機(図示せず)が接続されている。
油圧ショベル100は、メインポンプ31を電動モータ23によって駆動することで動作する。即ち、電動モータ23は、動力源である。この場合、水素タンク50から水素を供給される燃料電池21により発電電力を用い、電動モータ23を駆動している。即ち、燃料電池21は、電動モータ23に供給する電力を生成する。
【0021】
燃料電池21の出力は電圧によって制御されるため、燃料電池電圧とシステム電圧(例えば650V)との間で電圧変換が必要となるが、燃料電池21に設けられた昇圧コンバータ28により昇圧することで電動モータ23の定格電圧に対応している。
インバータ22は、昇圧コンバータ28で昇圧された直流電圧(システム電圧)を交流電圧に変換して、電動モータ23を回転数制御する。
高電圧DCDCコンバータ29は、システム電圧を降圧して二次電池25を充電、あるいは、二次電池25の電圧をシステム電圧にまで昇圧してインバータ22に供給する双方向の電圧変換器である。
二次電池25は、燃料電池21が発電した余剰電力を用いて蓄電可能であり、電動モータ23を含む負荷に電力供給する電源としても機能する。ここで二次電池25は、充放電可能な蓄電装置であればよく、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池で構成することが可能である。なお、二次電池25には、二次電池25の電圧、電流、および残存容量(SOC(State Of Charge))等の動作状態を検知するためのバッテリセンサ(図示せず)が設けられている。
【0022】
車体コントローラ45は、油圧ショベル100の全体システムを統括する上位コントローラであって、油圧回路30の電磁比例弁34a,34b,35a,35bや下位コントローラ(燃料電池コントローラ47、バッテリコントローラ46)、低電圧DCDCコンバータ63、インバータ22等に適切な指令値を出力する。
これらのコントローラは、鉛バッテリ61を含む、低電圧回路60(例えば、24V)に接続されている。低電圧回路60には、低電圧DCDCコンバータ63が接続されており、電力回路20からの電力を用いて、安定した低電圧を生成している。
鉛バッテリ61は、ディスコネクトスイッチ62を介して、低電圧回路60に接続されており、鉛バッテリの消耗防止、盗難防止、車体メンテナンスの安全性向上等を目的とし、システム電源供給源を遮断することが可能な構成としている。さらに、キースイッチ64は車体コントローラ45に接続され、車体動作の起動および停止をさせている。
【0023】
水素タンク50は、燃料電池21で使用する水素を貯蔵する。水素タンク50は、例えば、金属や樹脂等からなる耐圧容器である。また、水素タンク50は、水素を適切な圧力にする圧縮機(コンプレッサ)、水素を冷却するプレクーラ、水素の流量の調整を行う水素用バルブなどを備えていてもよい。
【0024】
図3は、本実施の形態の作業機械の燃料電池用冷却システム70の説明図である。
燃料電池用冷却システム70は、燃料電池21を冷却する第1の冷却装置の一例である。燃料電池用冷却システム70は、燃料電池用冷却水の循環経路である燃料電池用冷却回路71と、熱交換器である燃料電池(FC)用ラジエータ72と、燃料電池用ラジエータ72中の燃料電池用冷却水を冷却する電動ファン73aと、燃料電池用冷却水を送り出す電動水ポンプ74と、燃料電池用冷却水からイオンを取り除く燃料電池イオン交換器75と、燃料電池用冷却水の温度を測定する水温センサ76,77,78とを備える。本実施の形態で、燃料電池用ラジエータ72は、第1の熱交換器の一例であり、電動ファン73aは、第1の熱交換器と対面して配置されて第1の熱交換器に冷却風を送風する第1の冷却ファンの一例である。
【0025】
燃料電池21には、燃料電池用冷却回路71が接続され、電動水ポンプ74により燃料電池用冷却水を循環させている。循環経路には、燃料電池用ラジエータ72が設けられ、電動ファン73aにより燃料電池用冷却水を冷却している。さらに、燃料電池用冷却回路71の絶縁性を維持するため、燃料電池イオン交換器75により、燃料電池用冷却水に含有するイオン濃度が高くならないようにしている。燃料電池用冷却システム70は、循環経路中に設けた水温センサ76,77,78や、燃料電池21内の温度センサ(図示せず)のセンサ情報を基に、車体コントローラ45が制御している。水温センサ76は、燃料電池21を冷却した燃料電池用冷却水の出口温度を測定する。水温センサ76により測定された温度により、主に電動ファン73aの回転数を制御する。これにより、燃料電池用ラジエータ72への風量を調整できる。水温センサ77は、燃料電池用ラジエータ72により冷却された燃料電池用冷却水の出口温度を測定する。水温センサ77により測定された温度により、燃料電池用ラジエータ72を通らず、燃料電池イオン交換器75を通るバイパス流路の影響を見ることができる。水温センサ78は、燃料電池21に流入する燃料電池用冷却水の入口温度を測定する。水温センサ78により測定された温度により、主に電動水ポンプ74の回転数を制御する。これにより、燃料電池用冷却回路71を循環する燃料電池用冷却水の循環水量を調整できる。
【0026】
図4は、本実施形態の油圧ショベル100の旋回体4の上面図である。また、
図5は、本実施形態の油圧ショベル100の旋回体4の左側面図である。さらに、
図6は、本実施形態の油圧ショベル100の旋回体4の右側面図である。
図4~6では、本実施形態の説明が容易となるように、カバー類を除外し、構成部品が見える構成としている。
【0027】
旋回体4には、燃料電池21と、燃料電池21と電気的に接続されたインバータ22と、電動モータ23とが設けられている。電動モータ23とメインポンプ31は機械的に連結され、メインポンプ31から吐出される作動油が、運転者の操作に応じ、油圧アクチュエータ(旋回モータ13やアームシリンダ16等)に分配されることにより油圧ショベル100としての所望の動作を可能としている。旋回体4には、二次電池25がさらに設けられ、燃料電池21とインバータ22、二次電池25と高電圧ケーブル(図示せず)によって接続され、電力回路20を構成している。
【0028】
旋回体4の後部、およびカウンタウエイト10の前方に高圧水素を充填した水素タンク50が設置されている。このような構成とすることで、後方からの対物衝撃に対し、カウンタウエイト10が水素タンク50を保護している。水素タンク50と燃料電池21は水素配管(図示せず)によって接続され、燃料電池21に水素を供給可能としている。
【0029】
作動油タンク33後方の旋回体4の右外縁には、オイルクーラ81、電動機器用ラジエータ82、補機用ラジエータ83が設置される。一方、運転室8後方の旋回体4の左外縁には燃料電池21を冷却する燃料電池用ラジエータ72が設置される。ここで燃料電池用ラジエータ72は、大きな冷却性能が求められるため、
図5に示すように3個で構成されているが、冷却性能が満足されるものであれば、その個数が限定されるものではない。また、燃料電池用ラジエータ72中の燃料電池用冷却水を冷却する電動ファン73aは、
図5に示すように6個設けられるが、同様に冷却性能が満足されるものであれば、その個数が限定されるものではない。
【0030】
オイルクーラ81は、メインポンプ31や作動油タンク33等を含む油圧回路30に接続され、作動油を冷却する。電動機器用ラジエータ82は、インバータ22、電動モータ23、二次電池25等の高電圧機器冷却水回路(図示せず)に接続され、これらを循環する冷却水を冷却する。補機用ラジエータ83は燃料電池21に内蔵されている過給機等の冷却水回路(図示せず)に接続され、これらを循環する冷却水を冷却する。
オイルクーラ81、電動機器用ラジエータ82、補機用ラジエータ83は、燃料電池用ラジエータ72と同様、それぞれ個別に電動ファン81F、電動ファン73b、電動ファン73cを備える。電動ファン81Fおよび電動ファン73bは、
図6に示すようにそれぞれ2個設けられる。また、電動ファン73cは、
図6に示すように1個設けられる。
電動機器用ラジエータ82、補機用ラジエータ83、冷却水回路、電動ファン73b、電動ファン73cは、電動モータ23を冷却させる第2の冷却装置の一例である。またこのうち、電動機器用ラジエータ82、補機用ラジエータ83は、第2の熱交換器の一例である。さらに、これらに備えられる電動ファン73b、電動ファン73cは、電動機器用ラジエータ82、補機用ラジエータ83と対面して配置されて第2の熱交換器に冷却風を送風する第2の冷却ファンの一例である。
【0031】
図2に戻り、本実施の形態のシステム動作を説明する。運転者が運転室8内のキースイッチ64をON操作すると車体コントローラ45が起動する。車体コントローラ45は、インバータ22、低電圧DCDCコンバータ63、バッテリコントローラ46、燃料電池コントローラ47を起動させ、さらに、バッテリコントローラ46が、二次電池25や高電圧DCDCコンバータ29を、燃料電池コントローラ47が、燃料電池21や、昇圧コンバータ28、水素タンク50に接続される水素用バルブ(図示せず)を起動する。
車体コントローラ45は、作業モード選択スイッチ41、モータコントロールダイヤル42の設定や、操作レバー43A,43Bのレバー信号Lvに従い、燃料電池21の発電、電動モータ23の駆動や、油圧回路30等の制御を開始する。
【0032】
一方、運転者が運転室8内のキースイッチ64をOFF操作すると、車体コントローラ45は、インバータ22を停止処理することで、電動モータ23を停止する。次に、燃料電池コントローラ47は、燃料電池21内部や接続配管に残留する水分を車外に排出するパージ処理を実行する。
【0033】
パージ処理には燃料電池の発電を必要とし、燃料システムのみならず、発電電力の充電および消費に関連する機器を作動させる。詳細には燃料電池21、水素タンク50、昇圧コンバータ28と、燃料電池コントローラ47により燃料電池21を発電させるが、このとき、反応水素に対する必要空気供給量を意図的に下げ、燃料電池21の排熱を増やすことで、燃料電池21内部や接続配管に残留する水分を車外へ排出する。パージ処理によって発生する発電電力は、電力回路20を介し、二次電池25に充電することも可能であるが、燃料電池用冷却システム70を起動させる必要があるため、パージ処理時に燃料電池21から発生する発電電力の少なくとも一部は、低電圧DCDCコンバータ63および低電圧回路60を介し、燃料電池用冷却システム70の電動ファン73aや電動水ポンプ74を駆動するのに使用される。これは、燃料電池21のパージ処理が実行されているときの、電動ファン73aの駆動は、燃料電池21から発生する発電電力により駆動される、と言うこともできる。また、パージ処理が終了するまで燃料電池用冷却システム70の電動ファン73aや電動水ポンプ74は駆動される。
【0034】
したがって、パージ処理が実行されている間には、燃料電池用冷却システム70の電動ファン73aや電動水ポンプ74が駆動されているため、運転者は、運転室8を出た時、運転室8の後方に位置する燃料電池用ラジエータ72を冷却する電動ファン73aや電動水ポンプ74の作動音によって、パージ処理中であることを認識することが可能である。なお、特に電動ファン73aの作動音は大きいため、運転者にパージ処理中であることを認識させるのに有効である。このため、運転者がディスコネクトスイッチ62をOFFすることによる、パージ処理の中断を抑制できる。
【0035】
また、本実施の形態では、運転者に電動ファン73aや電動水ポンプ74の作動音を認識させやすくするため、燃料電池用冷却システム70を配置する位置を、
図4に示すようにする。
即ち、燃料電池用ラジエータ72や電動ファン73aを含む燃料電池用冷却システム70を、自機の左右方向の一方、かつ、運転室8の後方(後ろ)に配置する。さらに、燃料電池用冷却システム70は、運転室8に隣接して配置する。これにより、電動ファン73aや電動水ポンプ74の作動音が運転者に聞こえやすくなる。なおここで、「前方」は、運転者が通常の使用状態で旋回体4に乗車するときに向く方向であり、「後方」は、前方とは逆の方向である。
【0036】
また、
図4に示すように、燃料電池用ラジエータ72および電動ファン73aは、旋回体4の一方の側面側に配される。この場合、電動ファン73aは、自機の左右方向の一方に配置されると共に、自機の左右方向の一方の側面側から外気を取り込む。これにより、外気を取り込みやすくなる。また、電動ファン73aは、複数設けられ、それぞれの電動ファン73aは、旋回体4の側面に沿って配置されている。電動ファン73aを複数設けることで、燃料電池用ラジエータ72に大きな冷却性能が求められるときでも冷却性能が確保される。また、それぞれの電動ファン73aを、旋回体4の側面に沿って配置することで、電動ファン73aが複数になっても、それぞれの電動ファン73aで外気を取り込むことができる。なお、「一方」は、運転者が通常の使用状態で旋回体4に乗車するときに左方向となる方向であり、「他方」は、右方向となる方向である。
【0037】
さらに、
図4に示すように、電動機器用ラジエータ82、補機用ラジエータ83、およびこれらを冷却する電動ファン73bおよび電動ファン73cは、旋回体4の他方の側面側に、燃料電池用ラジエータ72に対し燃料電池21を挟み対向して配される。これらの電動ファン73bおよび電動ファン73cは、自機の左右方向の他方、かつ、電動ファン73aと対向して配置されると共に、自機の左右方向の他方の側面側から外気を取り込み、燃料電池21側に送り出す。一方、燃料電池用ラジエータ72を冷却する電動ファン73aは、自機の左右方向の一方に配置されると共に、自機の左右方向の一方の側面側から外気を取り込み、燃料電池21側に送り出す。これにより、各ラジエータから送り出された熱風は、旋回体4の中央付近で衝突するとともに、カウンタウエイト10側に方向を転換し、旋回体4の後方から排出される。これにより、各ラジエータ下流の熱風が他のラジエータ上流に回り込み、冷却性能を悪化させるリサーキュレーションが生じにくくなる。なお、カウンタウエイト10には、電動ファン73a~73cにより取り込まれた外気を排出するための開口が設けられている。
【0038】
またさらに、
図4に示すように、電動ファン73aは、旋回体4の前後方向において、運転室8とカウンタウエイト10との間に配置されている。これにより、電動ファン73aから発する音は、カウンタウエイト10があるため、後方には出にくいが、旋回体4の側面や前面に対しては出やすくなる。これにより、電動ファン73aの作動音が運転者に聞こえやすくなる。
【0039】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0040】
8…運転室、10…カウンタウエイト、21…燃料電池、23…電動モータ、70…燃料電池用冷却システム、71…燃料電池用冷却回路、72…燃料電池用ラジエータ、73a,73b,73c,81F…電動ファン、82…電動機器用ラジエータ、83…補機用ラジエータ、100…油圧ショベル