(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025058878
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】オニウム塩の製造方法及びオニウム塩の精製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 213/10 20060101AFI20250402BHJP
C07C 217/08 20060101ALI20250402BHJP
C07C 51/487 20060101ALI20250402BHJP
C07C 53/10 20060101ALI20250402BHJP
C07C 53/122 20060101ALI20250402BHJP
C07C 59/125 20060101ALI20250402BHJP
C07D 233/58 20060101ALI20250402BHJP
C07D 233/60 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
C07C213/10
C07C217/08
C07C51/487
C07C53/10
C07C53/122
C07C59/125 A
C07C59/125 E
C07D233/58
C07D233/60 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024093747
(22)【出願日】2024-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2023168608
(32)【優先日】2023-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000167646
【氏名又は名称】広栄化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武知 義明
(72)【発明者】
【氏名】玉越 里美
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB80
4H006AD16
4H006AD30
4H006BB14
4H006BB31
4H006BP10
4H006BS70
4H006BU50
(57)【要約】
【課題】カルボン酸を含まないオニウム塩、または、オニウム塩に対するセルロースの充分な溶解度が得られる程度にカルボン酸の含有量が低減されたオニウム塩の製造方法を提供する。
【解決手段】オニウム塩とカルボン酸を含む混合物から前記オニウム塩を得ることを特徴とするオニウム塩の製造方法であって、下記工程(1)及び工程(2)を含む、前記オニウム塩の製造方法。
工程(1):オニウム塩とカルボン酸を含む混合物に、アミンを添加して、該アミンとカルボン酸とからなるアミンーカルボン酸塩を生成させる工程。
工程(2):オニウム塩と、工程(1)で生成したアミンーカルボン酸塩を分離し、オニウム塩を得る工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるオニウム塩と下記式(3)のカルボン酸を含む混合物から式(1)で表されるオニウム塩を得ることを特徴とするオニウム塩の製造方法であって、下記工程(1)及び工程(2)を含む、式(1)で表されるオニウム塩の製造方法。
式(1):
【化1】
(式(1)中、A
+は、ピリジニウム、アンモニウム又はイミダゾリウムのいずれかを表し、
X
-は、下記式(2)で表されるカルボン酸アニオンである。)
式(2):
【化2】
(式(2)中、R
1は炭素数1~12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子及び/又は二重結合を含んでも良い。)
式(3):
【化3】
(式(3)中、R
2は炭素数1~12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子及び/又は二重結合を含んでも良く、R
1と同一でも良い。)
工程(1):
式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物に、アミンを添加して、該アミンと式(3)のカルボン酸とからなるアミンーカルボン酸塩を生成させる工程。
工程(2):
式(1)で表されるオニウム塩と、工程(1)で生成したアミンーカルボン酸塩を分離し、式(1)で表されるオニウム塩を得る工程。
【請求項2】
前記工程(1)で添加するアミンが、下記式(4)で表されるアミンである、請求項1に記載のオニウム塩の製造方法。
式(4):
【化4】
(式(4)中、R
3、R
4及びR
5は、同一でも異なっても良く、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基であり、前記炭化水素基は二重結合を含んでも良く、分岐構造及び又は環構造を含んでも良い。また、R
3、R
4及びR
5のそれぞれに含まれる炭素数の合計は8以上である。)
【請求項3】
前記式(1)で表されるオニウム塩が少なくとも2種である、請求項1に記載のオニウム塩の製造方法。
【請求項4】
前記式(1)で表されるオニウム塩と前記式(3)のカルボン酸を含む混合物が、さらに、水及び/又は親水性溶媒を含む、請求項1に記載のオニウム塩の製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)で添加するアミンが、溶媒で希釈されたアミン溶液である、請求項1に記載のオニウム塩の製造方法。
【請求項6】
下記式(1)で表されるオニウム塩と下記式(3)のカルボン酸を含む混合物から式(3)のカルボン酸を除去することによる前記オニウム塩の精製方法であって、下記工程(1)及び工程(2)を含む、式(1)で表されるオニウム塩の精製方法。
式(1):
【化5】
(式(1)中、A
+は、ピリジニウム、アンモニウム又はイミダゾリウムのいずれかを表し、
X
-は、下記式(2)で表されるカルボン酸アニオンである。)
式(2):
【化6】
(式(2)中、R
1は炭素数1~12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子及び/又は二重結合を含んでも良い。)
式(3):
【化7】
(式(3)中、R
2は炭素数1~12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子及び/又は二重結合を含んでも良く、R
1と同一でも良い。)
工程(1):
式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物に、アミンを添加して、該アミンと式(3)のカルボン酸とからなるアミンーカルボン酸塩を生成させる工程。
工程(2):
式(1)で表されるオニウム塩と、工程(1)で生成したアミンーカルボン酸塩を分離し、式(1)で表されるオニウム塩を得る工程。
【請求項7】
前記工程(1)で添加するアミンが、下記式(4)で表されるアミンである、請求項6に記載のオニウム塩の精製方法。
式(4):
【化8】
(式(4)中、R
3、R
4及びR
5は、同一でも異なっても良く、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基であり、前記炭化水素基は二重結合を含んでも良く、分岐構造及び又は環構造を含んでも良い。また、R
3、R
4及びR
5のそれぞれに含まれる炭素数の合計は8以上である。)
【請求項8】
前記式(1)で表されるオニウム塩が少なくとも2種である、請求項6に記載のオニウム塩の精製方法。
【請求項9】
前記式(1)で表されるオニウム塩と前記式(3)のカルボン酸を含む混合物が、さらに、水及び/又は親水性溶媒を含む、請求項6に記載のオニウム塩の精製方法。
【請求項10】
前記工程(1)で添加するアミンが、溶媒で希釈されたアミン溶液である、請求項6に記載のオニウム塩の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オニウム塩の製造方法及びオニウム塩の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多糖類はグリコシド結合によって単糖分子が多数重合した物質である。その中でもβ-グルコース分子から構成される多糖類のセルロースは地球上に最も多く存在するバイオマス資源であり、環境配慮型素材として、溶解や成型に関する研究が広く行われている。しかしながらセルロースは分子鎖間又は分子鎖内の強固な水素結合をもつため、一般的な溶剤では溶解させることが難しい。
【0003】
セルロースを溶解させる溶媒としてオニウム塩が提案されており、特許文献1には、セルロースを溶解する方法に、1-アルキル-3-メチルイミダゾリウム陽イオン及びアセテート陰イオンからなる溶融イオン性液体を用いることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、四級アンモニウム炭酸塩を製造し、生成した四級アンモニウム炭酸塩を有機酸と混合して、有機酸にアニオン交換することを特徴とする四級アンモニウム有機酸塩の製造方法が記載されており、N-メチルイミダゾール、N-メチルベンズイミダゾールなどの含窒素ヘテロ環芳香族類を原料として四級アンモニウム炭酸塩を製造し、有機酸として酢酸を混合してアニオン交換する四級アンモニウム有機酸塩の製造方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、第4級アンモニウムアルキル炭酸塩を、カルボン酸と反応させることを特徴とする第4級アンモニウムカルボン酸塩の製造方法が記載されており、その実施例には、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウム=メチルカーボネートとメトキシ酢酸を反応させて、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウム=メトキシアセテートを得たことが記載されている。
【0006】
また、非特許文献1には、下記のスキームで表される1,3-ジアルキルイミダゾリウム アセテート(R
1とR
2が同一の場合)及び、1-アルキル-3-メチルイミダゾリウム アセテート、1,3-ジアルキルイミダゾリウム アセテート、1,3-ジメチルイミダゾリウム アセテート(R
1がメチル基で、R
1とR
2が異なる場合)の混合物のOne-pot(ワン-ポット)合成法が記載されている。そして、イオン液体であるイミダゾリウム アセテート等を脱色チャコールカラムに通すことによって、着色不純物が除去されることが記載されている。
【化1】
【0007】
非特許文献2には、イオン液体である1-エチルー3-メチルイミダゾリウム アセテートを含む合成混合物から酢酸を分離する方法が記載されており、その分離方法として、1-エチルー3-メチルイミダゾリウム アセテートを含む混合物から揮発成分として酢酸を蒸発させる方法、1-エチルー3-メチルイミダゾリウム アセテートと混和しない溶媒によって酢酸を抽出する方法、及び、1-エチルー3-メチルイミダゾリウム アセテートを含む混合物にメタノールを加えて酢酸をエステル化して、酢酸メチルを蒸留して除去する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2005-506401号公報
【特許文献2】特開昭63-280045号公報
【特許文献3】特開2015-83545号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Pure Appl. Chem., Vol.84, No.3, pp.745-754, 2012
【非特許文献2】J. Chem. Eng. Data 2013, 58, 197-202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行技術文献に記載されているイオン液体であり、オニウム塩である四級アンモニウムカルボン酸塩の製造方法では、使用するカルボン酸が生成物である四級アンモニウムカルボン酸塩に含まれて残存する。残存したカルボン酸は、生成した四級アンモニウムカルボン酸塩と会合体を作り、該会合体を含む四級アンモニウムカルボン酸塩をセルロースの溶解に用いると、四級アンモニウムカルボン酸塩に対するセルロースの溶解度が低下する。
【0011】
かかる先行技術の状況において、本発明はカルボン酸を含まないオニウム塩、または、オニウム塩に対するセルロースの充分な溶解度が得られる程度にカルボン酸の含有量が低減されたオニウム塩の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明はオニウム塩に含まれるカルボン酸を除去する、または、オニウム塩に対するセルロースの充分な溶解度が得られる程度にカルボン酸の含有量を低減させるオニウム塩の精製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、カルボン酸を含まないオニウム塩、または、オニウム塩に対するセルロースの充分な溶解度が得られる程度にカルボン酸の含有量が低減されたオニウム塩の製造方法、及び、オニウム塩の精製方法について、鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち本発明は、以下の[1]~[10]を提供するものである。
[1]
下記式(1)で表されるオニウム塩と下記式(3)のカルボン酸を含む混合物から式(1)で表されるオニウム塩を得ることを特徴とするオニウム塩の製造方法であって、下記工程(1)及び工程(2)を含む、式(1)で表されるオニウム塩の製造方法。
式(1):
【化2】
(式(1)中、A
+は、ピリジニウム、アンモニウム又はイミダゾリウムのいずれかを表し、
X
-は、下記式(2)で表されるカルボン酸アニオンである。)
式(2):
【化3】
(式(2)中、R
1は炭素数1~12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子及び/又は二重結合を含んでも良い。)
式(3):
【化4】
(式(3)中、R
1は前記に定義されるとおりである。)
工程(1):
式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物に、アミンを添加して、該アミンと式(3)のカルボン酸とからなるアミンーカルボン酸塩を生成させる工程。
工程(2):
式(1)で表されるオニウム塩と、工程(1)で生成したアミンーカルボン酸塩を分離し、式(1)で表されるオニウム塩を得る工程。
[2]
前記工程(1)で添加するアミンが、下記式(4)で表されるアミンである、[1]に記載のオニウム塩の製造方法。
式(4):
【化5】
(式(4)中、R
3、R
4及びR
5は、同一でも異なっても良く、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基であり、前記炭化水素基は二重結合を含んでも良く、分岐構造及び又は環構造を含んでも良い。また、R
3、R
4及びR
5のそれぞれに含まれる炭素数の合計は8以上である。)
[3]
前記式(1)で表されるオニウム塩が少なくとも2種である、[1]に記載のオニウム塩の製造方法。
[4]
前記式(1)で表されるオニウム塩と前記式(3)のカルボン酸を含む混合物が、さらに、水及び/又は親水性溶媒を含む、[1]に記載のオニウム塩の製造方法。
[5]
前記工程(1)で添加するアミンが、溶媒で希釈されたアミン溶液である、[1]に記載のオニウム塩の製造方法。
[6]
下記式(1)で表されるオニウム塩と下記式(3)のカルボン酸を含む混合物から式(3)のカルボン酸を除去することによる前記オニウム塩の精製方法であって、下記工程(1)及び工程(2)を含む、式(1)で表されるオニウム塩の精製方法。
式(1):
【化6】
(式(1)中、A
+は、ピリジニウム、アンモニウム又はイミダゾリウムのいずれかを表し、
X
-は、下記式(2)で表されるカルボン酸アニオンである。)
式(2):
【化7】
(式(2)中、R
1は炭素数1~12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子及び/又は二重結合を含んでも良い。)
式(3):
【化8】
(式(3)中、R
1は前記に定義されるとおりである。)
工程(1):
式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物に、アミンを添加して、該アミンと式(3)のカルボン酸とからなるアミンーカルボン酸塩を生成させる工程。
工程(2):
式(1)で表されるオニウム塩と、工程(1)で生成したアミンーカルボン酸塩を分離し、式(1)で表されるオニウム塩を得る工程。
[7]
前記工程(1)で添加するアミンが、下記式(4)で表されるアミンである、[6]に記載のオニウム塩の精製方法。
式(4):
【化9】
(式(4)中、R
3、R
4及びR
5は、同一でも異なっても良く、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基であり、前記炭化水素基は二重結合を含んでも良く、分岐構造及び又は環構造を含んでも良い。また、R
3、R
4及びR
5のそれぞれに含まれる炭素数の合計は8以上である。)
[8]
前記式(1)で表されるオニウム塩が少なくとも2種である、[6]に記載のオニウム塩の精製方法。
[9]
前記式(1)で表されるオニウム塩と前記式(3)のカルボン酸を含む混合物が、さらに、水及び/又は親水性溶媒を含む、[6]に記載のオニウム塩の精製方法。
[10]
前記工程(1)で添加するアミンが、溶媒で希釈されたアミン溶液である、[6]に記載のオニウム塩の精製方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カルボン酸を含まないオニウム塩、または、オニウム塩に対するセルロースの充分な溶解度が得られる程度にカルボン酸の含有量が低減されたオニウム塩の製造方法を提供できる。また、本発明によれば、オニウム塩に含まれるカルボン酸を除去する、または、オニウム塩に対するセルロースの充分な溶解度が得られる程度にカルボン酸の含有量を低減させるオニウム塩の精製方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明の一つの実施形態は、
下記式(1)で表されるオニウム塩と下記式(3)のカルボン酸を含む混合物から式(1)で表されるオニウム塩を得ることを特徴とするオニウム塩の製造方法であって、下記工程(1)及び工程(2)を含む、式(1)で表されるオニウム塩の製造方法に係るものである。
式(1):
【化10】
(式(1)中、A
+は、ピリジニウム、アンモニウム又はイミダゾリウムのいずれかを表し、
X
-は、下記式(2)で表されるカルボン酸アニオンである。)
式(2):
【化11】
式(2)中、R
1は炭素数1~12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子及び/又は二重結合を含んでも良い。)
式(3):
【化12】
(式(3)中、R
1は前記に定義されるとおりである。)
工程(1):
式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物に、アミンを添加して、該アミンと式(3)のカルボン酸とからなるアミンーカルボン酸塩を生成させる工程。
工程(2):
式(1)で表されるオニウム塩と、工程(1)で生成したアミンーカルボン酸塩を分離し、式(1)で表されるオニウム塩を得る工程。
【0016】
前記式(1)中、A+は、ピリジニウム、アンモニウム又はイミダゾリウムのいずれかを表す。
【0017】
ピリジニウムとしては、下記式(1-1)で表されるピリジニウムが挙げられる。
式(1-1):
【化13】
(式(1-1)中、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11は同一又は異なって、水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R
6、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11は分岐や環構造、二重結合を含んでいてもよく、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11の一部又は全てが、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。)
【0018】
式(1-1)中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基を示す。「ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基」は直鎖であってもよく、分岐や環構造、二重結合を含んでいてもよい。また、R6、R7、R8、R9、R10及びR11において、炭化水素基はヘテロ原子を含んでいなくても良い。
【0019】
式(1-1)中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11がヘテロ原子を含まない炭化水素基の場合、炭素数として好ましくは1~12であり、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~3である。R6、R7、R8、R9、R10及びR11がヘテロ原子を含む炭化水素基である場合、炭素数として好ましくは2~12であり、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~4である。
【0020】
式(1-1)中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子の数として好ましくは1~5個であり、より好ましくは1~2個である。炭化水素基の炭素数は2以上となり、好ましくは2~12であり、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~4である。
【0021】
式(1-1)中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11がヘテロ原子を含む炭化水素基である場合、「ヘテロ原子」としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。また、ヘテロ原子の数として好ましくは1~5個であり、より好ましくは1~2個である。
【0022】
式(1-1)中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11において、「ヘテロ原子を含む炭化水素基」は、ヘテロ原子を含まない炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-、-N<、-NH-、-S-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、=N-、-C(=O)-N<、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-N<、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-N[-C(=O)-]-、-C(=O)-NH-C(=O)-、>N-C(=O)-N<、>N-C(=O)-NH-、-HN-C(=O)-NH-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-、-O-S(=O)2-O-、>N-C(=S)-N<、>N-C(=S)-NH-、-HN-C(=S)-NH-、-C(=N-)-、-C(=NH)-等の構造により置換されたものであり、これらの構造による置換の数や組み合わせは、特に限定されないが、R6、R7、R8、R9、R10及びR11中のヘテロ原子が1~5個が好ましく、1~2個となるものがより好ましい。
【0023】
好ましくは炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-又は-S-の構造により置換されているものであり、より好ましくは-O-の構造により置換されているものである。
【0024】
本発明において、炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他の-CH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-又は-S-の構造により置換されている構造としては、エーテル構造、チオエーテル構造といった構造以外にも、たとえば、エポキシ基やチオエポキシ基、グリシジルエーテル基、エポキシシクロヘキシル基等のエポキシ構造もしくはチオエポキシ構造を形成していても良い。この場合において、R6、R7、R8、R9、R10及びR11がエポキシ基やチオエポキシ基等となっても良い。
【0025】
R6、R7、R8、R9、R10及びR11において、-O-及び/又は-S-の構造を2個以上含む場合、-O-及び/又は-S-の構造間の炭素数は2以上であることが望ましい。
【0026】
式(1-1)中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11において「ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基」としては、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いアリール基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いアラルキル基等が挙げられる。好ましくはヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基である。
【0027】
「ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~8の直鎖又は分岐を有するアルキル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~4の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、より好ましくは炭素数1~8の直鎖又は分岐を有するアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~3の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。
【0028】
「ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~8の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~4の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、より好ましくは炭素数2~8の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、さらに好ましくは炭素数2~3の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。
【0029】
「ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~8の分岐を有していても良いシクロアルキル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~4の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基、より好ましくは炭素数3~8の分岐を有していても良いシクロアルキル基、さらに好ましくは炭素数3のシクロアルキル基である。
【0030】
式(1-1)中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11において、「ヘテロ原子を含まない炭化水素基」としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ビニル基、エチニル基、プロぺニル基、イソプロぺニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、クロチル基、ブタジエニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、スチリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基である。
【0031】
式(1-1)中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11において「ヘテロ原子を含む炭化水素基」としては、好ましくは3-インドリル基、p-メトキシフェニル基、7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エン-2-イル基、1,2-エポキシエチル基、1-メチル-2-メトキシビニル基、2-フリル基、2-ピリジル基、4-イミダゾリル基、ベンジルオキシメチル基であり、より好ましくは1-メチル-2-メトキシビニル基、2-フリル基であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
式(1-1)中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11として、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0033】
式(1-1)において、R6、R7、R8、R9、R10及びR11の一部又は全てが、それらが結合している窒素原子や炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。環構造とは、具体的にはR6及びR7、R7及びR8、R8及びR9、R9及びR10、R10及びR11、又はR6及びR11が結合しヘテロ原子を2~10個含む炭素数2~24の炭化水素によって架橋されたことにより環状となった構造が挙げられるが、特に限定されない。
【0034】
式(1-1)で表されるピリジニウムとしては、具体的には、N-メチルピリジニウム、N-メチル-2,6-ジメチルピリジニウム、N-メチル-3,5-ジメチルピリジニウム、N-メチル-4-メチルピリジニウム、N-メチル-2,6-メトキシメチルピリジニウム、N-メチル-2,6-メトキシメトキシメチルピリジニウム、N-メチル-2,6-メトキシエトキシメチルピリジニウム、N-メチル-2,6-メトキシエチルピリジニウム、N-メチル-2,6-メトキシメトキシエチルピリジニウム、N-メチル-2,6-メトキシエトキシエチルピリジニウム、N-エチルピリジニウム、N-エチル-2,6-ジメチルピリジニウム、N-エチル-3,5-ジメチルピリジニウム、N-エチル-4-メチルピリジニウム、N-エチル-2,6-メトキシメチルピリジニウム、N-エチル-2,6-メトキシメトキシメチルピリジニウム、N-エチル-2,6-メトキシエトキシメチルピリジニウム、N-エチル-2,6-メトキシエチルピリジニウム、N-エチル-2,6-メトキシメトキシエチルピリジニウム、N-エチル-2,6-メトキシエトキシエチルピリジニウム、N-(2-メトキシエチル)ピリジニウム、N-(2-メトキシエチル)ピリジニウム等が挙げられる。
【0035】
アンモニウムとしては、下記式(1-2)で表されるアンモニウムが挙げられる。
式(1-2):
【化14】
(式(1-2)中、R
12、R
13、R
14及びR
15は同一又は異なって、水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R
12、R
13、R
14及びR
15は分岐や環構造、二重結合を含んでいてもよく、R
12、R
13、R
14及びR
15の一部又は全てが、R
12、R
13、R
14及びR
15が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。)
【0036】
式(1-2)中、R12、R13、R14及びR15は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基を示す。「ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基」は直鎖であってもよく、分岐や環構造、二重結合を含んでいてもよい。また、R12、R13、R14及びR15において、炭化水素基はヘテロ原子を含んでいなくても良い。
【0037】
式(1-2)中、R12、R13、R14及びR15がヘテロ原子を含まない炭化水素基の場合、炭素数として好ましくは1~12であり、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~3である。R12、R13、R14及びR15がヘテロ原子を含む炭化水素基である場合、炭素数として好ましくは2~12であり、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~4である。
【0038】
式(1-2)中、R12、R13、R14及びR15がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子の数として好ましくは1~5個であり、より好ましくは1~2個である。炭化水素基の炭素数は2以上となり、好ましくは2~12であり、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~4である。
【0039】
式(1-2)中、R12、R13、R14及びR15がヘテロ原子を含む炭化水素基である場合、「ヘテロ原子」としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。また、ヘテロ原子の数として好ましくは1~5個であり、より好ましくは1~2個である。
【0040】
式(1-2)中、R12、R13、R14及びR15において、「ヘテロ原子を含む炭化水素基」は、ヘテロ原子を含まない炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-、-N<、-NH-、-S-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、=N-、-C(=O)-N<、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-N<、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-N[-C(=O)-]-、-C(=O)-NH-C(=O)-、>N-C(=O)-N<、>N-C(=O)-NH-、-HN-C(=O)-NH-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-、-O-S(=O)2-O-、>N-C(=S)-N<、>N-C(=S)-NH-、-HN-C(=S)-NH-、-C(=N-)-、-C(=NH)-等の構造により置換されたものであり、これらの構造による置換の数や組み合わせは、特に限定されないが、R12、R13、R14及びR15中のヘテロ原子が1~5個が好ましく、1~2個となるものがより好ましい。
【0041】
好ましくは炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他の-CH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-又は-S-の構造により置換されているものであり、より好ましくは-O-の構造により置換されているものである。
【0042】
本発明において、炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他の-CH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-又は-S-の構造により置換されている構造としては、エーテル構造、チオエーテル構造といった構造以外にも、たとえば、エポキシ基やチオエポキシ基、グリシジルエーテル基、エポキシシクロヘキシル基等のエポキシ構造もしくはチオエポキシ構造を形成していても良い。この場合において、R12、R13、R14及びR15がエポキシ基やチオエポキシ基等となっても良い。
【0043】
R12、R13、R14及びR15において、-O-及び/又は-S-の構造を2個以上含む場合、-O-及び/又は-S-の構造間の炭素数は2以上であることが望ましい。
【0044】
式(1-2)中、R12、R13、R14及びR15において「ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基」としては、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いアリール基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いアラルキル基等が挙げられる。好ましくはヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基である。
【0045】
「ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~8の直鎖又は分岐を有するアルキル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~4の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、より好ましくは炭素数1~8の直鎖又は分岐を有するアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~3の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。
【0046】
「ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~8の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~4の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、より好ましくは炭素数2~8の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、さらに好ましくは炭素数2~3の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。
【0047】
「ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~8の分岐を有していても良いシクロアルキル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~4の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基、より好ましくは炭素数3~8の分岐を有していても良いシクロアルキル基、さらに好ましくは炭素数3のシクロアルキル基である。
【0048】
式(1-2)中、R12、R13、R14及びR15において、「ヘテロ原子を含まない炭化水素基」としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ビニル基、エチニル基、プロぺニル基、イソプロぺニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、クロチル基、ブタジエニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、スチリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基である。
【0049】
式(1-2)中、R12、R13、R14及びR15において「ヘテロ原子を含む炭化水素基」としては、好ましくは3-インドリル基、p-メトキシフェニル基、7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エン-2-イル基、1,2-エポキシエチル基、1-メチル-2-メトキシビニル基、2-フリル基、2-ピリジル基、4-イミダゾリル基、ベンジルオキシメチル基であり、より好ましくは1-メチル-2-メトキシビニル基、2-フリル基であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
式(1-2)中、R12、R13、R14及びR15として、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0051】
式(1-2)において、R12、R13、R14及びR15の一部又は全てが、それらが結合している窒素原子や炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。環構造とは、具体的にはR12及びR13、R13及びR14、R14及びR15、又はR12及びR15が結合しヘテロ原子を2~10個含む炭素数2~24の炭化水素によって架橋されたことにより環状となった構造が挙げられるが、特に限定されない。
【0052】
式(1-2)で表されるアンモニウムとしては、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、テトラノニルアンモニウム、テトラ(デシル)アンモニウム、N-エチル-N,N,N-トリメチルアンモニウム、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム、N-ブチル-N,N,N-トリメチルアンモニウム、N,N,N-トリエチル-N-デシルアンモニウム、N,N,N-トリエチル-N-エイコシルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-ペンチルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-ヘキシルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-ヘプチルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-オクチルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-ノニルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-デシルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-エイコシルアンモニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウム、N-ブチル-N,N-ジエチル-N-メチルアンモニウム、N,N,N-トリメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウム、N,N,N-トリエチル-N-(2-エトキシエチル)アンモニウム、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-(2-エトキシエチル)アンモニウム、N-エチル-N-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]-N,N-ジメチルアンモニウム、N,N-ジエチル-N-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]-N-メチルアンモニウム、N,N-ジ(2-メトキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウム、N,N-ジ(2-エトキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウム、N-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]-N-(2-メトキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウム、N-(2-エトキシエチル)-N-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]-N,N-ジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0053】
イミダゾリウムとしては、下記式(1-3)で表されるイミダゾリウムが挙げられる。式(1-3):
【化15】
(式(1-3)中、R
16、R
17、R
18、R
19及びR
20は同一又は異なって、水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R
16、R
17、R
18、R
19及びR
20は分岐や環構造、二重結合を含んでいてもよく、R
16、R
17、R
18、R
19及びR
20の一部又は全てが、R
16、R
17、R
18、R
19及びR
20が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。)
【0054】
式(1-3)中、R16、R17、R18、R19及びR20は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基を示す。「ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基」は直鎖であってもよく、分岐や環構造、二重結合を含んでいてもよい。また、R16、R17、R18、R19及びR20において、炭化水素基はヘテロ原子を含んでいなくても良い。
【0055】
式(1-3)中、R16、R17、R18、R19及びR20がヘテロ原子を含まない炭化水素基の場合、炭素数として好ましくは1~12であり、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~3である。R16、R17、R18、R19及びR20がヘテロ原子を含む炭化水素基である場合、炭素数として好ましくは2~12であり、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~4である。
【0056】
式(1-3)中、R16、R17、R18、R19及びR20がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子の数として好ましくは1~5個であり、より好ましくは1~2個である。炭化水素基の炭素数は2以上となり、好ましくは2~12であり、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~4である。
【0057】
式(1-3)中、R16、R17、R18、R19及びR20がヘテロ原子を含む炭化水素基である場合、「ヘテロ原子」としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。また、ヘテロ原子の数として好ましくは1~5個であり、より好ましくは1~2個である。
【0058】
式(1-3)中、R16、R17、R18、R19及びR20において、「ヘテロ原子を含む炭化水素基」は、ヘテロ原子を含まない炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-、-N<、-NH-、-S-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、=N-、-C(=O)-N<、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-N<、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-N[-C(=O)-]-、-C(=O)-NH-C(=O)-、>N-C(=O)-N<、>N-C(=O)-NH-、-HN-C(=O)-NH-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-、-O-S(=O)2-O-、>N-C(=S)-N<、>N-C(=S)-NH-、-HN-C(=S)-NH-、-C(=N-)-、-C(=NH)-等の構造により置換されたものであり、これらの構造による置換の数や組み合わせは、特に限定されないが、R16、R17、R18、R19及びR20中のヘテロ原子が1~5個が好ましく、1~2個となるものがより好ましい。
【0059】
好ましくは炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-又は-S-の構造により置換されているものであり、より好ましくは-O-の構造により置換されているものである。
【0060】
本発明において、炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他の-CH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-又は-S-の構造により置換されている構造としては、エーテル構造、チオエーテル構造といった構造以外にも、たとえば、エポキシ基やチオエポキシ基、グリシジルエーテル基、エポキシシクロヘキシル基等のエポキシ構造もしくはチオエポキシ構造を形成していても良い。この場合において、R16、R17、R18、R19及びR20がエポキシ基やチオエポキシ基等となっても良い。
【0061】
R16、R17、R18、R19及びR20において、-O-及び/又は-S-の構造を2個以上含む場合、-O-及び/又は-S-の構造間の炭素数は2以上であることが望ましい。
【0062】
式(1-3)中、R16、R17、R18、R19及びR20において「ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基」としては、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いアリール基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いアラルキル基等が挙げられる。好ましくはヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基である。
【0063】
「ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~8の直鎖又は分岐を有するアルキル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~4の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、より好ましくは炭素数1~8の直鎖又は分岐を有するアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~3の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。
【0064】
「ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~8の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~4の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、より好ましくは炭素数2~8の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、さらに好ましくは炭素数2~3の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。
【0065】
「ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~8の分岐を有していても良いシクロアルキル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~4の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基、より好ましくは炭素数3~8の分岐を有していても良いシクロアルキル基、さらに好ましくは炭素数3のシクロアルキル基である。
【0066】
式(1-3)中、R16、R17、R18、R19及びR20において、「ヘテロ原子を含まない炭化水素基」としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ビニル基、エチニル基、プロぺニル基、イソプロぺニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、クロチル基、ブタジエニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、スチリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基である。
【0067】
式(1-3)中、R16、R17、R18、R19及びR20において「ヘテロ原子を含む炭化水素基」としては、好ましくは3-インドリル基、p-メトキシフェニル基、7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エン-2-イル基、1,2-エポキシエチル基、1-メチル-2-メトキシビニル基、2-フリル基、2-ピリジル基、4-イミダゾリル基、ベンジルオキシメチル基であり、より好ましくは1-メチル-2-メトキシビニル基、2-フリル基であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
式(1-3)中、R16、R17、R18、R19及びR20として、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0069】
式(1-3)において、R16、R17、R18、R19及びR20の一部又は全てが、それらが結合している窒素原子や炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。環構造とは、具体的にはR16及びR17、R17及びR18、R18及びR19、R19及びR20、又はR16及びR20が結合しヘテロ原子を2~10個含む炭素数2~24の炭化水素によって架橋されたことにより環状となった構造が挙げられるが、特に限定されない。
【0070】
式(1-3)で表され、ヘテロ原子を含まない炭化水素基を有するイミダゾリウムとしては、具体的には、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-ペンチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘプチル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-メチル-3-ノニルイミダゾリウム、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム、1-アリル-3-メチルイミダゾリウム、1-アリル-3-エチルイミダゾリウム、1,3-ビスアリルイミダゾリウム等が挙げられ、好ましくは、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
式(1-3)で表され、ヘテロ原子を含む炭化水素基を有するイミダゾリウムとしては、具体的には、1,3-ビス(2-メトキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(2-エトキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(2-プロポキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(2-イソプロポキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(2-フェノキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(2-ベンジルオキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス[2-(p-メトキシベンジルオキシ)エチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[2-(2-メトキシエトキシメトキシ)エチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[2-(2-ベンジルオキシエトキシ)エチル]イミダゾリウム、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-エトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-プロポキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-イソプロポキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-アリルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ブトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(1-メチルプロポキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2-メチルプロポキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(1,1-ジメチルエトキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(オキソラン-2-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ペンチルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ネオペンチルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ヘキシルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-シクロヘキシルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ヘプチルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-オクチルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ノニルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス{3-[(2-エチルヘキサン-1-イル)オキシ]プロピル}イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2,4,6-トリメチルフェノキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス(2-メチルチオエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス{2-[(フラン-2-イル)メチルチオ]エチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[2-(フラン-2-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[1-(メトキシメチル)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス(4-メトキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-エトキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-プロポキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-イソプロポキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-アリルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-ブトキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス[4-(1-メチルプロポキシ)ブチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[4-(2-メチルプロポキシ)ブチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[4-(1,1-ジメチルエトキシ)ブチル]イミダゾリウム、1,3-ビス(4-ペンチルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-ネオペンチルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-ヘキシルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-シクロヘキシルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-ヘプチルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-オクチルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス{4-[(2-エチルヘキサン-1-イル)オキシ]ブチル}イミダゾリウム、1,3-ビス(5-メトキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-エトキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-プロポキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-イソプロポキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-アリルオキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-ブトキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス[5-(1-メチルプロポキシ)ペンチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[5-(2-メチルプロポキシ)ペンチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[5-(1,1-ジメチルエトキシ)ペンチル]イミダゾリウム、1,3-ビス(5-ペンチルオキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-ネオペンチルオキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-ヘキシルオキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-シクロヘキシルオキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-ヘプチルオキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-メトキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-エトキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-プロポキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-イソプロポキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-アリルオキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-ブトキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス[6-(1-メチルプロポキシ)ヘキシル]イミダゾリウム、1,3-ビス[6-(2-メチルプロポキシ)ヘキシル]イミダゾリウム、1,3-ビス[6-(1,1-ジメチルエトキシ)ヘキシル]イミダゾリウム、1,3-ビス(6-ペンチルオキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-ネオペンチルオキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-ヘキシルオキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-シクロヘキシルオキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-メトキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-エトキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-プロポキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-イソプロポキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-ブトキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス{[2-(1-メチルプロポキシ)シクロヘキサン-1-イル]メチル}イミダゾリウム、1,3-ビス{[2-(2-メチルプロポキシ)シクロヘキサン-1-イル]メチル}イミダゾリウム、1,3-ビス{[2-(1,1-ジメチルエトキシ)シクロヘキサン-1-イル]メチル}イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-ペンチルオキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-ネオペンチルオキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス(3-メチルチオプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス[2-(メチルスルホニル)エチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(チオフェン-2-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス(p-メトキシフェニル)イミダゾリウム、1,3-ビス(p-エトキシフェニル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3,4-メチレンジオキシフェニル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3,4-メチレンジオキシベンジル)イミダゾリウム、1,3-ビス{(7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2-イル)メチル}イミダゾリウム、1-メトキシプロピル-3-メチルチオプロピルイミダゾリウム、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウム、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウム等が挙げられ、好ましくは1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-エトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-プロポキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-イソプロポキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-アリルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ブトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(1-メチルプロポキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2-メチルプロポキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(1,1-ジメチルエトキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(オキソラン-2-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス(3-メチルチオプロピル)イミダゾリウム、1-メトキシプロピル-3-メチルチオプロピルイミダゾリウム、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウム、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウムであり、より好ましくは1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-エトキシプロピル)イミダゾリウム、1-メトキシプロピル-3-メチルチオプロピルイミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウム、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウムであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
式(1)中、X
-は、下記式(2)で表されるカルボン酸アニオンである。
式(2):
【化16】
(式(2)中、R
1は炭素数1~12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子及び/又は二重結合を含んでも良い。)
【0073】
式(2)中、R1はヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基を示す。「ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基」は直鎖であってもよく、分岐や環構造、二重結合を含んでいてもよい。また、R1において、炭化水素基はヘテロ原子を含んでいなくても良い。
【0074】
式(2)中、R1がヘテロ原子を含まない炭化水素基の場合、炭素数として好ましくは1~12であり、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~3である。R1がヘテロ原子を含む炭化水素基である場合、炭素数として好ましくは2~12であり、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~4である。
【0075】
式(2)中、R1がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子の数として好ましくは1~5個であり、より好ましくは1~2個である。炭化水素基の炭素数は2以上となり、好ましくは2~12であり、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~4である。
【0076】
式(2)中、R1がヘテロ原子を含む炭化水素基である場合、「ヘテロ原子」としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。また、ヘテロ原子の数として好ましくは1~5個であり、より好ましくは1~2個である。
【0077】
式(2)中、R1において、「ヘテロ原子を含む炭化水素基」は、ヘテロ原子を含まない炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-、-N<、-NH-、-S-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、=N-、-C(=O)-N<、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-N<、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-N[-C(=O)-]-、-C(=O)-NH-C(=O)-、>N-C(=O)-N<、>N-C(=O)-NH-、-HN-C(=O)-NH-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-、-O-S(=O)2-O-、>N-C(=S)-N<、>N-C(=S)-NH-、-HN-C(=S)-NH-、-C(=N-)-、-C(=NH)-等の構造により置換されたものであり、これらの構造による置換の数や組み合わせは、特に限定されないが、R1中のヘテロ原子が1~5個が好ましく、1~2個となるものがより好ましい。
【0078】
好ましくは炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-又は-S-の構造により置換されているものであり、より好ましくは-O-の構造により置換されているものである。
【0079】
本発明において、炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他の-CH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-又は-S-の構造により置換されている構造としては、エーテル構造、チオエーテル構造といった構造以外にも、たとえば、エポキシ基やチオエポキシ基、グリシジルエーテル基、エポキシシクロヘキシル基等のエポキシ構造もしくはチオエポキシ構造を形成していても良い。この場合において、R1がエポキシ基やチオエポキシ基等となっても良い。
【0080】
R1において、-O-及び/又は-S-の構造を2個以上含む場合、-O-及び/又は-S-の構造間の炭素数は2以上であることが望ましい。
【0081】
式(2)中、R1において「ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基」としては、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いアリール基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いアラルキル基等が挙げられる。好ましくはヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基である。
【0082】
「ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~8の直鎖又は分岐を有するアルキル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~4の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、より好ましくは炭素数1~8の直鎖又は分岐を有するアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~3の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。
【0083】
「ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~8の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~4の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、より好ましくは炭素数2~8の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、さらに好ましくは炭素数2~3の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。
【0084】
「ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~8の分岐を有していても良いシクロアルキル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~4の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基、より好ましくは炭素数3~8の分岐を有していても良いシクロアルキル基、さらに好ましくは炭素数3のシクロアルキル基である。
【0085】
式(2)中、R1において、「ヘテロ原子を含まない炭化水素基」としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ビニル基、エチニル基、プロぺニル基、イソプロぺニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、クロチル基、ブタジエニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、スチリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基である。
【0086】
式(2)中、R1において「ヘテロ原子を含む炭化水素基」としては、好ましくは3-インドリル基、p-メトキシフェニル基、7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エン-2-イル基、1,2-エポキシエチル基、1-メチル-2-メトキシビニル基、2-フリル基、2-ピリジル基、4-イミダゾリル基、ベンジルオキシメチル基であり、より好ましくは1-メチル-2-メトキシビニル基、2-フリル基であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
式(2)中、R1として、好ましくはメチル基、エチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基である。
【0088】
式(2)で表されるカルボン酸アニオンとしては、具体的には、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、アクリル酸イオン、プロパルギル酸イオン、酪酸イオン、イソ酪酸イオン、メタクリル酸イオン、クロトン酸イオン、テトロル酸イオン、シクロプロパンカルボン酸イオン、吉草酸イオン、イソ吉草酸イオン、ピバル酸イオン、アンゲリカ酸イオン、チグリン酸イオン、シクロブタンカルボン酸イオン、カプロン酸イオン、シクロペンタンカルボン酸イオン、エナント酸イオン、ソルビン酸イオン、シクロヘキサンカルボン酸イオン、安息香酸イオン、カプリル酸イオン、2-エチルへキシルカルボン酸イオン、トルイル酸イオン、2-ノルボルナンカルボン酸イオン、ペラルゴン酸イオン、桂皮酸イオン、カプリン酸イオン、アダマンタンカルボン酸イオン、ゲラン酸イオン、ウンデシル酸イオン、ラウリン酸イオン、ナフタレンカルボン酸イオン、等が挙げられ、好ましくは酢酸イオン、プロピオン酸イオン、アクリル酸イオン、プロパルギル酸イオン、酪酸イオン、イソ酪酸イオン、メタクリル酸イオン、クロトン酸イオン、テトロル酸イオン、吉草酸イオン、イソ吉草酸イオン、ピバル酸イオン、メトキシ酢酸イオン、エトキシ酢酸イオン、プロポキシ酢酸イオン、(2-メトキシエトキシ)酢酸イオン、(2-エトキシエトキシ)酢酸イオン、(2-プロポキシエトキシ)酢酸イオン、3-(2-メトキシエトキシ)プロパン酸イオン、3-(2-エトキシエトキシ)プロパン酸イオン、3-(2-プロポキシエトキシ)プロパン酸イオン、3-(3-メトキシプロポキシ)プロパン酸イオン、3-(3-エトキシプロポキシ)プロパン酸イオン、3-(3-プロポキシプロポキシ)プロパン酸イオン、3-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]プロパン酸イオン、3-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]プロパン酸イオン、4,7,10,13-テトラオキサテトラデカン酸イオン、4,7,10,13-テトラオキサペンタデカン酸イオン、4,7,10,13、16-ペンタオキサヘプタデカン酸イオン、4,7,10,13、16-ペンタオキサオクタデカン酸イオン、(メチルチオ)酢酸イオン、(エチルチオ)酢酸イオン、3-(メチルチオ)プロパン酸イオン、3-[(2-メトキシエチル)チオ]プロパン酸イオン、3-[(2-エトキシエチル)チオ]プロパン酸イオン等が挙げられ、好ましくはメトキシ酢酸イオン、3-(2-メトキシエトキシ)プロパン酸イオン、3-(2-エトキシエトキシ)プロパン酸イオン、3-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]プロパン酸イオン、3-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]プロパン酸イオン、4,7,10,13-テトラオキサテトラデカン酸イオンであり、特に好ましくはメトキシ酢酸イオン、3-(2-メトキシエトキシ)プロパン酸イオン、3-(2-エトキシエトキシ)プロパン酸イオン、3-(メチルチオ)プロパン酸イオンであり、特に好ましくは酢酸イオン、メトキシ酢酸イオン、アクリル酸イオン又はメタクリル酸イオンであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
本発明で用いられるカルボン酸は、式(3)で表されるカルボン酸である。
式(3):
【化17】
(式(3)中、R
1は前記に定義されるとおりである。)
【0090】
式(3)中のR1は、式(2)中のR1と同じである。
【0091】
式(3)で表されるカルボン酸としては、具体的には、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、プロパルギル酸、酪酸、イソ酪酸、メタクリル酸、クロトン酸、テトロル酸、シクロプロパンカルボン酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、シクロブタンカルボン酸、カプロン酸、シクロペンタンカルボン酸、エナント酸、ソルビン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、カプリル酸、2-エチルへキシルカルボン酸、トルイル酸、2-ノルボルナンカルボン酸、ペラルゴン酸、桂皮酸、カプリン酸、アダマンタンカルボン酸、ゲラン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ナフタレンカルボン酸等が挙げられ、好ましくは酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、プロパルギル酸、酪酸、イソ酪酸、メタクリル酸、クロトン酸、テトロル酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、プロポキシ酢酸、(2-メトキシエトキシ)酢酸、(2-エトキシエトキシ)酢酸、(2-プロポキシエトキシ)酢酸、3-(2-メトキシエトキシ)プロパン酸、3-(2-エトキシエトキシ)プロパン酸、3-(2-プロポキシエトキシ)プロパン酸、3-(3-メトキシプロポキシ)プロパン酸、3-(3-エトキシプロポキシ)プロパン酸、3-(3-プロポキシプロポキシ)プロパン酸、3-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]プロパン酸、3-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]プロパン酸、4,7,10,13-テトラオキサテトラデカン酸、4,7,10,13-テトラオキサペンタデカン酸、4,7,10,13、16-ペンタオキサヘプタデカン酸、4,7,10,13、16-ペンタオキサオクタデカン酸、(メチルチオ)酢酸、(エチルチオ)酢酸、3-(メチルチオ)プロパン酸、3-[(2-メトキシエチル)チオ]プロパン酸、3-[(2-エトキシエチル)チオ]プロパン酸等が挙げられ、好ましくはメトキシ酢酸、3-(2-メトキシエトキシ)プロパン酸、3-(2-エトキシエトキシ)プロパン酸、3-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]プロパン酸、3-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]プロパン酸、4,7,10,13-テトラオキサテトラデカン酸であり、特に好ましくはメトキシ酢酸、3-(2-メトキシエトキシ)プロパン酸、3-(2-エトキシエトキシ)プロパン酸、3-(メチルチオ)プロパン酸であり、特に好ましくは酢酸、メトキシ酢酸、アクリル酸又はメタクリル酸であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
式(1)で表されるピリジニウム塩として好ましくは、N-メチルピリジニウム、N-メチル-2,6-ジメチルピリジニウム、N-メチル-3,5-ジメチルピリジニウム、N-メチル-4-メチルピリジニウム、N-メチル-2,6-メトキシメチルピリジニウム、N-メチル-2,6-メトキシメトキシメチルピリジニウム、N-メチル-2,6-メトキシエトキシメチルピリジニウム、N-メチル-2,6-メトキシエチルピリジニウム、N-メチル-2,6-メトキシメトキシエチルピリジニウム、N-メチル-2,6-メトキシエトキシエチルピリジニウム、N-エチルピリジニウム、N-エチル-2,6-ジメチルピリジニウム、N-エチル-3,5-ジメチルピリジニウム、N-エチル-4-メチルピリジニウム、N-エチル-2,6-メトキシメチルピリジニウム、N-エチル-2,6-メトキシメトキシメチルピリジニウム、N-エチル-2,6-メトキシエトキシメチルピリジニウム、N-エチル-2,6-メトキシエチルピリジニウム、N-エチル-2,6-メトキシメトキシエチルピリジニウム、N-エチル-2,6-メトキシエトキシエチルピリジニウム、N-(2-メトキシエチル)ピリジニウム、N-(2-メトキシエチル)ピリジニウムからなる群より選択される1つのカチオンと、酢酸イオン、メトキシ酢酸イオン、アクリル酸イオン、メタクリル酸イオンからなる群より選択される1つのアニオンとの組み合わせから構成されるピリジニウム塩である。
【0093】
式(1)で表されるピリジニウム塩として、より具体的には、N-メチルピリジニウムアセテート、N-メチル-2,6-ジメチルピリジニウムアセテート、N-メチル-3,5-ジメチルピリジニウムアセテート、N-メチル-4-メチルピリジニウムアセテート、N-(2-メトキシエチル)ピリジニウム、N-(2-メトキシエチル)ピリジニウム等が挙げられ、好ましくはN-(2-メトキシエチル)ピリジニウムアセテート、N-(2-メトキシエチル)ピリジニウムアセテートであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
式(1)で表されるアンモニウム塩として好ましくは、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、テトラノニルアンモニウム、テトラ(デシル)アンモニウム、N-エチル-N,N,N-トリメチルアンモニウム、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム、N-ブチル-N,N,N-トリメチルアンモニウム、N,N,N-トリエチル-N-デシルアンモニウム、N,N,N-トリエチル-N-エイコシルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-ペンチルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-ヘキシルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-ヘプチルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-オクチルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-ノニルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-デシルアンモニウム、N,N,N-トリブチル-N-エイコシルアンモニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウム、N-ブチル-N,N-ジエチル-N-メチルアンモニウム、N,N,N-トリメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウム、N,N,N-トリエチル-N-(2-エトキシエチル)アンモニウム、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-(2-エトキシエチル)アンモニウム、N-エチル-N-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]-N,N-ジメチルアンモニウム、N,N-ジエチル-N-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]-N-メチルアンモニウム、N,N-ジ(2-メトキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウム、N,N-ジ(2-エトキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウム、N-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]-N-(2-メトキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウム、N-(2-エトキシエチル)-N-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]-N,N-ジメチルアンモニウム、からなる群より選択される1つのカチオンと、酢酸イオン、メトキシ酢酸イオン、アクリル酸イオン、メタクリル酸イオンからなる群より選択される1つのアニオンとの組み合わせから構成されるアンモニウム塩である。
【0095】
式(1)で表されるアンモニウム塩として、より具体的には、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウム、N-エチル-N-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]-N,N-ジメチルアンモニウムが挙げられ、好ましくはN-エチル-N-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]-N,N-ジメチルアンモニウムメトキシアセテートであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
式(1)で表されるイミダゾリウム塩として好ましくは、1,3-ビス(2-メトキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-エトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-メチルチオプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウム、1-メトキシプロピル-3-メチルチオプロピルイミダゾリウム、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウム、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウムからなる群より選択される1つのカチオンと、酢酸イオン、メトキシ酢酸イオン、アクリル酸イオン、メタクリル酸イオンからなる群より選択される1つのアニオンとの組み合わせから構成されるオニウム塩である。
【0097】
式(1)で表されるオニウム塩として、より具体的には、1,3-ビス(2-メトキシエチル)イミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアクリレート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムメタクリレート、1,3-ビス(3-エトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート、1-メトキシプロピル-3-メチルチオプロピルイミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(3-メチルチオプロピル)イミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウムアクリレート、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウムメタクリレート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウムアクリレート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウムメタクリレート、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウムアセテート、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウムアクリレート、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウムメタクリレート等が挙げられ、好ましくは1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアクリレート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムメタクリレートであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸の混合物は、例えば、下記の反応式(1)でオニウム塩を製造する場合に、オニウム塩とカルボン酸を含む混合物が得られ、下記の反応式において、カルボン酸が残存する。
下記の反応式(1)でオニウム塩を製造することについて説明する。なお、当該反応式(1)中、A+は前述と同じピリジニウム、アンモニウム又はイミダゾリウムのいずれかを表し、Y-はハロゲンイオン、OH-はヒドロキシイオン、R1は前記に定義されるとおりであり、R1-C(=O)OHはカルボン酸であり、R1-C(=O)O-はカルボン酸アニオンである。
【0099】
【0100】
本発明の式(1)で表されるオニウム塩は、通常、A+Y-で表されるオニウムハライド塩をイオン交換樹脂、酸化銀、アルカリ金属塩等を用いてイオン交換すること(第1イオン交換と称する)によりオニウムヒドロキシド塩とした後、得られたヒドロキシド塩のヒドロキシドイオンとカルボン酸のカルボン酸アニオンをイオン交換させること(第2イオン交換と称する)によりオニウムカルボン酸塩とすることができる。
【0101】
上記の反応式において用いられるオニウムハライド塩としては、前述のA+であるピリジニウム、アンモニウム又はイミダゾリウムにY-で表されるクロロイオン、ブロモイオン、ヨードイオン等のハロゲンイオンを組み合わせた化合物が挙げられる。
【0102】
第1イオン交換に用いられるイオン交換樹脂としては、例えば、水処理用又は触媒用として市販されている強塩基性イオン交換樹脂が使用できる。当該イオン交換樹脂の使用量は、ハライド塩1当量に対して、通常、20当量以下、好ましくは1~10当量であり、特に好ましくは2~5当量である。
【0103】
第1イオン交換に用いられる酸化銀の使用量は、ハライド塩1当量に対して、通常、10当量以下、好ましくは0.5~2当量であり、特に好ましくは0.5~0.7当量である。
【0104】
第1イオン交換に用いられるアルカリ金属塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。当該アルカリ金属塩の使用量は、ハライド塩1当量に対して、通常、3当量以下である。
【0105】
第1イオン交換は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチル、水等が挙げられる。溶媒の使用量は特に制限はないが、ハライド塩1重量部に対して、通常、10重量部以下、好ましくは1~10重量部であり、特に好ましくは2~6重量部である。
【0106】
第1イオン交換の反応温度は、通常、10℃以上、好ましくは10~60℃、特に好ましくは10~30℃である。
【0107】
第1イオン交換で得られる反応混合物は、通常、そのままヒドロキシドイオンとカルボン酸アニオンとの第2イオン交換に用いるか、又は不溶物をろ過により除去した後に第2イオン交換に用いる。
【0108】
第1イオン交換で得られるヒドロキシ塩としては、前述のA+であるピリジニウム、アンモニウム又はイミダゾリウムにOH-を組み合わせた化合物が挙げられる。
【0109】
次に第2イオン交換について説明する。第2イオン交換で用いられるカルボン酸の使用量は、ヒドロキシド塩1当量に対して、通常、1当量以上、好ましくは1~2当量、特に好ましくは1.1~1.5当量である。
【0110】
第2イオン交換は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒド、水等が挙げられる。溶媒の使用量は特に制限はないが、ヒドロキシド塩1重量部に対して、通常、10重量部以下、好ましくは1~10重量部であり、特に好ましくは1~6重量部である。
【0111】
第2イオン交換の反応温度は、通常、10℃以上、好ましくは10~60℃、特に好ましくは10~30℃である。
【0112】
第2イオン交換により、オニウム塩と第2イオン交換に使用したカルボン酸を含む混合物が得られ、当該混合物にはカルボン酸が残存する。
第2イオン交換により、得られた反応混合物を加熱及び/又は減圧して濃縮することにより、第2イオン交換に使用したカルボン酸を留去することができるが、留去し切れないカルボン酸が混合物に残存する。
また、第2イオン交換により、得られたオニウム塩が結晶化するものである場合は、再結晶により精製することができるが、得られたオニウム塩の結晶にカルボン酸が残存することがある。
【0113】
また、式(1)で表されるアンモニウム塩とカルボン酸の混合物は、例えば、特許文献3に記載の方法でアンモニウム塩を製造する場合に、アンモニウム塩とカルボン酸を含む混合物が得られ、カルボン酸が残存する。
【0114】
特許文献3に記載のアンモニウム塩の製造方法について説明する。特許文献3に記載のアンモニウム塩の製造方法は、まず、炭酸ジアルキルと第3級アミンから第4級アンモニウムアルキル炭酸塩を製造し、次に、第4級アンモニウムアルキル炭酸塩から第4級アンモニウムカルボン酸塩を製造する方法である。
【0115】
炭酸ジアルキルと第3級アミンから第4級アンモニウムアルキル炭酸塩を製造する方法について説明する。
炭酸ジアルキルとして、具体的には、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジペンチル、炭酸ジヘキシル等が挙げられ、好ましくは炭酸ジメチル及び炭酸ジエチルである。
【0116】
第3級アミンとして、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチル-N-(メトキシメチル)アミン、N-(2-メトキシエチル)-N,N-ジメチルアミン、N,N-ジエチル-N-(メトキシメチル)アミン、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)アミンが挙げられ、好ましくはN,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)アミンである。
【0117】
第4級アンモニウムアルキル炭酸塩として、具体的には、テトラメチルアンモニウムメチルカーボネート、トリエチルメチルアンモニウムメチルカーボネート、N,N,N-トリメチル-N-(メトキシメチル)アンモニウムメチルカーボネート、N-(2-メトキシエチル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルカーボネート、N,N-ジエチル-N-(メトキシメチル)-N-メチルアンモニウムメチルカーボネート、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウムメチルカーボネート等が挙げられ、好ましくはN,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウムメチルカーボネートである。
【0118】
炭酸ジアルキルの使用量は、第3級アミン1当量に対して、通常、0.5当量以上、好ましくは1.0~6.0当量である。
【0119】
第4級アンモニウムアルキル炭酸塩を製造する反応では、溶媒を使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、使用する溶媒は反応に影響を与えないものであれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が挙げられ、好ましくは、メタノールおよびエタノールである。
溶媒の使用量は、第3級アミン1重量部に対して、通常、50重量部以下、好ましくは10重量部以下である。
【0120】
第4級アンモニウムアルキル炭酸塩を製造する反応における反応温度は、使用する原料、溶媒等によって最適な温度が異なるが、通常、室温以上であり、好ましくは20~200℃である。
【0121】
第4級アンモニウムアルキル炭酸塩を製造する反応における反応圧力は、第4級アンモニウムアルキル炭酸塩中に多量の副生成物を残存させないという観点から、通常、1MPa以上であり、好ましくは1~5MPa、より好ましくは1~2MPaである。
【0122】
第4級アンモニウムアルキル炭酸塩を製造する反応において、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
【0123】
第4級アンモニウムアルキル炭酸塩を製造する反応において、反応終了後は、反応液を濃縮して、溶媒、炭酸ジアルキル、第3級アミン等を留去して、第4級アンモニウムアルキル炭酸塩を単離することができる。また、第4級アンモニウムアルキル炭酸塩を単離せずに、当該反応液をそのまま第4級アンモニウムカルボン酸塩の製造に用いることもできる。
【0124】
第4級アンモニウムアルキル炭酸塩から第4級アンモニウムカルボン酸塩を製造する方法について説明する。
第4級アンモニウムカルボン酸塩は、第4級アンモニウムアルキル炭酸塩とカルボン酸を反応させて、第4級アンモニウムアルキル炭酸塩のアルキル炭酸アニオンとカルボン酸のカルボン酸アニオンをアニオン交換して製造される。
カルボン酸として、具体的には、酢酸、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、プロピオン酸、3-(2-メトキシエトキシ)プロピオン酸、3-(2-エトキシエトキシ)プロピオン酸等が挙げられ、好ましくは酢酸、メトキシ酢酸、プロピオン酸、3-(2-メトキシエトキシ)プロピオン酸である。
【0125】
第4級アンモニウムカルボン酸塩として、具体的には、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムプロピオネート、テトラメチルアンモニウムメトキシアセテート、トリエチルメチルアンモニウムアセテート、トリエチルメチルアンモニウムプロピオネート、トリエチルメチルアンモニウムメトキシアセテート、N,N-ジエチル-N-(メトキシメチル)-N-メチルアンモニウムアセテート、N,N-ジエチル-N-(メトキシメチル)-N-メチルアンモニウムプロピオネート、N,N-ジエチル-N-(メトキシメチル)-N-メチルアンモニウムメトキシアセテート、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウムアセテート、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウムプロピオネート、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウムメトキシアセテート等が挙げられ、好ましくは、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウムアセテートである。
【0126】
第4級アンモニウムアルキル炭酸塩とカルボン酸のアニオン交換反応では、溶媒を使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、使用する溶媒は反応に影響を与えないものであれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトニトリル等が挙げられ、好ましくはメタノールおよびエタノールである。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。溶媒の使用量は、第4級アンモニウムアルキル炭酸塩1重量部に対して、通常、50重量部以下、好ましくは10重量部以下である。
【0127】
第4級アンモニウムアルキル炭酸塩とカルボン酸のアニオン交換反応の反応温度は、特に制限されないが、通常、10℃以上、好ましくは10~60℃、特に好ましくは10~40℃である。
【0128】
第4級アンモニウムアルキル炭酸塩とカルボン酸のアニオン交換反応により、第4級アンモニウムカルボン酸塩とアニオン交換に使用したカルボン酸を含む混合物が得られ、当該混合物にはカルボン酸が残存する。
当該アニオン交換により、得られた反応混合物を加熱及び/又は減圧して濃縮することにより、アニオン交換に使用したカルボン酸を留去することができるが、留去し切れないカルボン酸が混合物に残存する。
また、アニオン交換により、得られた第4級アンモニウムカルボン酸塩が結晶化するものである場合は、再結晶により精製することができるが、得られた第4級アンモニウムカルボン酸塩の結晶にカルボン酸が残存することがある。
【0129】
本発明は、式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物から式(1)で表されるオニウム塩を得る方法であって、下記工程(1)及び工程(2)を有する、式(1)で表されるオニウム塩の製造方法である。
工程(1):
式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物に、アミンを添加して、該アミンと式(3)のカルボン酸とからなるアミンーカルボン酸塩を生成させる工程。
工程(2):
式(1)で表されるオニウム塩と、工程(1)で生成したアミンーカルボン酸塩を分離し、式(1)で表されるオニウム塩を得る工程。
【0130】
工程(1)で用いる式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物は、式(3)のカルボン酸を用いて式(1)で表されるオニウム塩を製造して得られる、式(1)で表されるオニウム塩に式(3)のカルボン酸が残存する混合物である。
残存する式(3)のカルボン酸は、式(1)で表されるオニウム塩1当量に対して、通常、1.5当量以下である。
【0131】
工程(1)で添加するアミンとしては、好ましくは、下記式(4)で表されるアミンである。
式(4):
【化19】
(式(4)中、R
3、R
4及びR
5は、同一でも異なっても良く、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基であり、前記炭化水素基は二重結合を含んでも良く、分岐構造及び又は環構造を含んでも良い。また、R
3、R
4及びR
5のそれぞれに含まれる炭素数の合計は8以上である。)
【0132】
式(4)中、R3、R4及びR5において、炭化水素基の炭素数として1~18、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8である。
R3、R4及びR5のそれぞれに含まれる炭素数の合計は8以上であり、好ましくは12以上24以下である。
【0133】
R3、R4及びR5において、炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。また、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基は分岐構造を含む。
【0134】
R3、R4及びR5において、二重結合を含む炭化水素基として、具体的には、ビニル基、エチニル基、プロぺニル基、イソプロぺニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、クロチル基、ブタジエニル基、オレイル基が挙げられる。
【0135】
R3、R4及びR5において、環構造を含む炭化水素基としては、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、スチリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基等が挙げられる。また、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基は分岐構造を含む。
【0136】
R3、R4及びR5として、好ましくは水素原子、メチル基、オレイル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、オクタデシル基、オクチル基である。
【0137】
式(4)で表されるアミンとして、具体的には、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、オレイルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。
【0138】
式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物に、添加するアミンの量は、カルボン酸1当量に対して、アミン1当量以上であり、通常、1当量~5当量、好ましくは1当量~3当量、より好ましくは1当量~1.5当量である。添加したアミンと式(3)のカルボン酸とからなるアミンーカルボン酸塩が生成し、式(1)で表されるオニウム塩とアミンーカルボン酸塩と残存するアミンの混合物が得られる。
【0139】
添加するアミンは、溶媒で希釈されたアミン溶液として添加してもよい。溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、1-オクタノール、酢酸エチル等が挙げられ、好ましくはクロロホルム、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、1-オクタノールである。 アミン溶液の濃度は、通常、0.01g/L~10.0g/Lであり、好ましくは0.1g/L~5.00g/Lである。
【0140】
式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物にアミンを添加して、アミンーカルボン酸塩を生成させる反応条件としては、温度は0℃~100℃、好ましくは25℃~80℃であり、反応時間はアミンの添加終了後、0.5時間~3時間攪拌することが好ましく、より好ましくは1時間~2時間である。
本発明の好ましい1つの実施形態において、工程1の混合物は、さらに水と溶媒を含む。溶媒は添加されるアミンを希釈するための溶媒であってもよく、アミンの希釈に用いることなく単独で工程1の混合物に添加してもよい。混合物に含まれる溶媒は、水と相分離する溶媒が好ましい。水と相分離する溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、1-オクタノール、酢酸エチル等が挙げられ、好ましくはクロロホルム、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、1-オクタノールが挙げられる。
工程1の混合物が水と前記溶媒を含む場合、添加されたアミンは、アミン-カルボン酸塩を形成し、主として溶媒層に抽出される。一方、式(1)で表されるオニウム塩は水層に存在するため、溶媒層を分離することで、アミン-カルボン酸塩が分離され、式(3)で表されるカルボン酸の量が低減されるかほぼ完全に除去された式(1)で表されるオニウム塩を含む水層が得られる。式(1)で表されるオニウム塩と共存する式(3)のカルボン酸は蒸発により除去することは困難であるが、式(1)で表されるオニウム塩を含む水層の水は蒸発させることにより容易に除去することができ、式(1)で表されるオニウム塩を得ることができる。本発明の製造方法もしくは精製方法を行う前の式(1)で表されるオニウム塩と式(3)で表されるカルボン酸を含む混合物は、式(3)で表されるカルボン酸の存在によりセルロースの溶解度が大きく低下するが、本発明の製造方法もしくは精製方法を実施することによりセルロースの溶解度を大きく向上させることができる。例えば式(1)で表されるオニウム塩と式(3)で表されるカルボン酸を含む混合物において、式(3)で表されるカルボン酸の量を50%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、もしくは100%除去することで、セルロースの溶解度を大きく向上させることができる。
【0141】
工程(2)は、式(1)で表されるオニウム塩と、工程(1)で生成したアミンーカルボン酸塩を分離する工程であり、分離する方法としては、分液(水と溶媒の相分離を利用したもの)、晶析(アミン-カルボン酸塩が析出する場合)等が挙げられる。
【0142】
工程(2)の分離によって、式(1)で表されるオニウム塩を含む分離液が得られる。得られた分離液に残留したアミンが含まれる場合、得られた分離液を加熱及び/又は減圧することによって残留するアミンを留去できる。
また、アミンを溶媒で希釈されたアミン溶液として添加し、工程(2)で分離された式(1)で表されるオニウム塩を含む分離液に溶媒が含まれる場合、得られた分離液を加熱及び/又は減圧することによって溶媒を留去できる。
【0143】
本発明において、式(1)で表されるオニウム塩は1種でもよく、少なくとも2種の混合物でもよい。少なくとも2種の混合物としては、具体的には、1,3-ジメチルイミダゾリウムアセテートと1,3-ジエチルイミダゾリウムアセテートの混合物、1,3-ジメチルイミダゾリウムアセテートと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートの混合物、1,3-ジエチルイミダゾリウムアセテートと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートの混合物、1,3-ジメチルイミダゾリウムアセテートと1,3-ジエチルイミダゾリウムアセテートと1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートの混合物等が挙げられる。
【0144】
本発明において、式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物は、さらに、水及び/又は親水性溶媒を含んでもよい。親水性溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。
水及び/又は親水性溶媒の含有量は、式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸をと水及び/又は親水性溶媒を含む混合物の全量を100質量%として、水及び/又は親水性溶媒の含有量は0.1質量%~90質量%、1質量%~70質量%である。好ましくは5質量%~50質量%である。
【0145】
本発明の一つの実施態様は、式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物から式(3)のカルボン酸を除去する方法であって、下記工程(1)及び工程(2)を有する、式(1)で表されるオニウム塩の精製方法に係るものである。
工程(1):
式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物に、アミンを添加して、該アミンと式(3)のカルボン酸とからなるアミンーカルボン酸塩を生成させる工程。
工程(2):
式(1)で表されるオニウム塩と、工程(1)で生成したアミンーカルボン酸塩を分離し、式(1)で表されるオニウム塩を得る工程。
【0146】
本発明のオニウム塩の精製方法において、式(1)で表されるオニウム塩は、前述のオニウム塩の製造方法における式(1)で表されるオニウム塩と同じである。また、本発明のオニウム塩の精製方法の式(1)で表されるオニウム塩において、式(2)で表されるカルボン酸アニオンは、前述のオニウム塩の製造方法における式(2)で表されるカルボン酸アニオンと同じである。
【0147】
本発明のオニウム塩の精製方法において、式(3)のカルボン酸は、前述のオニウム塩の製造方法における式(3)で表されるカルボン酸と同じである。
【0148】
本発明のオニウム塩の精製方法において、式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物は、前述のオニウム塩の製造方法における式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物と同じである。
【0149】
本発明のオニウム塩の精製方法において、式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物は、式(3)のカルボン酸を用いて式(1)で表されるオニウム塩を製造して得られる、式(1)で表されるオニウム塩に式(3)のカルボン酸が残存する混合物である。残存する式(3)のカルボン酸は、式(1)で表されるオニウム塩1当量に対して、通常、1.5当量以下である。
【0150】
本発明のオニウム塩の精製方法において、工程(1)は、前述のオニウム塩の製造方法における工程(1)と同様の工程であり、式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物に、アミンを添加して、該アミンと式(3)のカルボン酸とからなるアミンーカルボン酸塩を生成させる工程である。
【0151】
本発明のオニウム塩の精製方法の工程(1)で添加するアミンとしては、好ましくは、前述のオニウム塩の製造方法における式(4)で表されるアミンである。
【0152】
本発明のオニウム塩の精製方法の工程(1)で、式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物に、添加するアミンの量及びその好ましい量は、前述のオニウム塩の製造方法におけるアミンの添加量と同様である。
また、本発明のオニウム塩の精製方法の工程(1)では、前述のオニウム塩の製造方法の工程(1)と同様に、添加したアミンと式(3)のカルボン酸とからなるアミンーカルボン酸塩が生成し、式(1)で表されるオニウム塩とアミンーカルボン酸塩と残存するアミンの混合物が得られる。
【0153】
また、本発明のオニウム塩の精製方法の工程(1)で、添加するアミンは、前述のオニウム塩の製造方法の工程(1)で添加するアミンと同様に、溶媒で希釈されたアミン溶液として添加してもよい。また、溶媒としては、前述の製造方法の工程(1)で使用される溶媒と同様の溶媒が挙げられ、アミン溶液の濃度も前述の製造方法の工程(1)と同様の濃度が挙げられる。
【0154】
また、本発明のオニウム塩の精製方法の工程(1)において、式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物にアミンを添加して、アミンーカルボン酸塩を生成させる反応条件としては、前述の製造方法の工程(1)における反応条件、例えば、温度条件や反応時間は、前述の製造方法の工程(1)における条件と同様である。
【0155】
本発明のオニウム塩の精製方法において、工程(2)は、前述のオニウム塩の製造方法における工程(2)と同様の工程であり、式(1)で表されるオニウム塩と、工程(1)で生成したアミンーカルボン酸塩を分離する工程である。分離する方法としては、前述のオニウム塩の製造方法における工程(2)で使用される分離方法と同様の方法である。
【0156】
本発明のオニウム塩の精製方法における工程(2)の分離によって、式(1)で表されるオニウム塩を含む分離液が得られる。得られた分離液に残留したアミンやアミン溶液の溶媒が含まれる場合、前述のオニウム塩の製造方法における工程(2)と同様に、得られた分離液を加熱及び/又は減圧することによって残留するアミンや溶媒を留去できる。
【0157】
本発明のオニウム塩の精製方法において、式(1)で表されるオニウム塩は1種でもよく、少なくとも2種の混合物でもよい。少なくとも2種の混合物としては、前述のオニウム塩の製造方法における式(1)で表されるオニウム塩の少なくとも2種の混合物と同様である。
【0158】
本発明のオニウム塩の精製方法において式(1)で表されるオニウム塩と式(3)のカルボン酸を含む混合物は、前述のオニウム塩の製造方法と同様に、さらに、水及び/又は親水性溶媒を含んでもよい。親水性溶媒としては、前述のオニウム塩の製造方法で使用される親水性溶媒と同様の溶媒が挙げられ、水及び/又は親水性溶媒の含有量も前述のオニウム塩の製造方法における含有量と同様である。
【0159】
本発明の方法で製造されたオニウム塩は例えばセルロースの溶解溶媒及び二酸化炭素吸収剤として使用することができる。
【実施例0160】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。
【0161】
[実施例1]
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩(2.00g)(東京化成工業株式会社製)に10%酢酸水溶液(オニウム塩に対して0.5当量)とイオン交換水(6.00g)を添加して、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩と酢酸の混合物を用意し、1H NMRで酢酸由来のピークの積分値を確認した。1H NMR分析の結果、1.38-1.44ppm(m,3H)を基準とした酢酸イオン及び酢酸由来のメチル基を表すピークの積分値は4.67であった。なお、酢酸は純正化学株式会社製の酢酸を用いた。
その後、2-エチルヘキサノール(4.00g)(純正化学株式会社製)、表1の評価例1~6に示す各構造のアミン(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩に対して1.5当量)を添加して攪拌・静置(80℃、各1時間)した。酢酸、アミン及び2-エチルヘキサノールが含まれる上層と、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩が含まれる下層に分離した。分液後、下層を1H NMRで分析して、1.38-1.44ppm(m,3H)を基準とした酢酸由来のピークの積分値を確認した。積分値から酢酸の除去率(%)を以下の式により算出した。
酢酸除去率(%)=(1-(積分値-3.00)/(4.67-3.00))×100 なお、評価例3では、ジシクロヘキシルアミン由来のピークが酢酸由来のピークと被るため、アミン由来の2H分を除いてから除去率を算出した。
結果を表1に示す。評価例1~6のアミンを用いて得られたオニウム塩は、酢酸が除去されたものであることから、酢酸除去前のオニウム塩に比べて、いずれもセルロースの溶解度を向上させることができる。特に評価例1~5のアミンを用いて得られたオニウム塩は、セルロースの溶解度を向上させるオニウム塩として好ましい。
【0162】
【0163】
[実施例2]
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩(2.00g)(東京化成工業株式会社製)に10%酢酸水溶液(オニウム塩に対して0.5当量)とエチレングリコール(6.00g)(東京化成工業株式会社製)を添加して、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩と酢酸の混合物を用意し、1H NMRで酢酸由来のピークの積分値を確認した。1H NMR分析の結果、1.38-1.44ppm(m,3H)を基準とした酢酸イオン及び酢酸由来のメチル基を表すピークの積分値は4.67であった。なお、酢酸は純正化学株式会社製の酢酸を用いた。
その後、2-エチルヘキサノール(4.00g)(純正化学株式会社製)、表2の評価例7及び8に示す各構造のアミン(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩に対して1.5当量)を添加して攪拌・静置(80℃、各1時間)した。酢酸、アミン及び2-エチルヘキサノールが含まれる上層と、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩が含まれる下層に分離した。分液後、下層を1H NMRで分析して、1.38-1.44ppm(m,3H)を基準とした酢酸由来のピークの積分値を確認した。積分値から酢酸の除去率(%)を以下の式により算出した。
酢酸除去率(%)=(1-(積分値-3.00)/(4.67-3.00))×100
結果を表2に示す。評価例7~8のアミンを用いて得られたオニウム塩は、酢酸が除去されたものであることから、酢酸除去前のオニウム塩に比べて、セルロースの溶解度を向上させることができる。
【0164】
【0165】
[実施例3]
以下の合成例1~4に示す各構造のオニウム塩(2.00g)に、表3の評価例9~12に示す各カルボン酸の10%カルボン酸水溶液(オニウム塩に対して0.5当量)とイオン交換水(6.00g)を添加して、各構造のオニウム塩と各カルボン酸の混合物を用意し、1H NMRでカルボン酸由来のピークの積分値を確認した。評価例9~11はイミダゾリウム環の4位と5位のピークを基準とし、評価例12はジエチルの末端メチル基のピークを基準とする各カルボン酸イオン及びカルボン酸由来のメチル基を表すピークの積分値を「処理前の積分値」として表3に示す。
その後、2-エチルヘキサノール(4.00g)(純正化学株式会社製)、オレイルアミン(オニウム塩に対して1.5当量)を添加して攪拌・静置(80℃、各1時間)した。各カルボン酸、オレイルアミン及び2-エチルヘキサノールが含まれる上層と、各構造のオニウム塩が含まれる下層に分離した。分液後、下層を1H NMRで分析して、評価例9~11はイミダゾリウム環の4位と5位のピークを基準とし、評価例12はジエチルの末端メチル基のピークを基準とする各カルボン酸由来のピークの積分値を確認した。
積分値からカルボン酸の除去率(%)を以下の式により算出した。
カルボン酸除去率(%)=(1-(積分値-3.00)/(処理前の積分値-3.00))×100
結果を表3に示す。評価例9~12のアミンを用いて得られたオニウム塩は、酢酸が除去されたものであることから、酢酸除去前のオニウム塩に比べて、セルロースの溶解度を向上させることができる。
【0166】
【0167】
[合成例1]
[1-エチル-3-メチルイミダゾリウムプロピオン酸塩の合成]
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩(5.11g)(東京化成工業株式会社製)にイオン交換水(50.1g)を加えて水溶液化した。水溶液をイオン交換樹脂(和光純薬製、No.8(OH形))(22.7g)に通し、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム水酸化物塩とした。中和滴定により、濃度を測定後、当量になるようにプロピオン酸(1.97g)(純正化学製)を添加した。濃縮乾燥後、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムプロピオン酸塩を得た。
【0168】
[合成例2]
[1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメトキシエトキシプロピオン酸塩の合成]
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩(5.10g)(東京化成工業株式会社製)にイオン交換水(50.5g)を加えて水溶液化した。水溶液をイオン交換樹脂(和光純薬製、No.8(OH形))(22.8g)に通し、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム水酸化物塩とした。中和滴定により、濃度を測定後、当量になるようにメトキシエトキシプロピオン酸(0.03g)を添加した。濃縮乾燥後、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメトキシエトキシプロピオン酸塩を得た。
【0169】
[合成例3]
[1-メチル-3-メトキシエトキシエチルイミダゾリウム酢酸塩の合成]
1-メチルイミダゾール(2.51g、30.4mol)にアセトニトリル(4.01g)、1-ブロモ-2-(2-メトキシエトキシ)エタン(5.95g、30.4mol)を加えて24時間80℃で反応した。反応終了後、濃縮乾固を行い、1-メチル-3-メトキシエトキシエチルイミダゾリウムブロミドを得た。
得られた1-メチル-3-メトキシエトキシエチルイミダゾリウムブロミド(9.52g)(東京化成工業株式会社製)にイオン交換水(110g)を加えて水溶液化した。水溶液をイオン交換樹脂(和光純薬製、No.8(OH形))(62.0g)に通し、1-メチル-3-メトキシエトキシエチルイミダゾリウム水酸化物塩とした。中和滴定により、濃度を測定後、当量になるように酢酸(2.06g)(純正化学製)を添加した。濃縮乾燥後、1-メチル-3-メトキシエトキシエチルイミダゾリウム酢酸塩を得た。
【0170】
[合成例4]
[N,N-ジエチル-N-メチル-N-メトキシエチルアンモニウムメトキシ酢酸塩の合成]
500mLオートクレーブに、N,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)アミン49.8g(0.38mol)、炭酸ジメチル102.8g(1.14mol)およびメタノール24.2gを入れ、130℃でオートクレーブ内の圧力が0.3~0.4MPaとなるようにオートクレーブ内のガスを抜くことにより圧力を調整しながら、30時間反応させた。この反応液を室温まで冷却し、N,N-ジエチル-N-メチル-N-メトキシエチルアンモニウム炭酸メチル塩のメタノール溶液118.6gを得た。
N,N-ジエチル-N-メチル-N-メトキシエチルアンモニウム炭酸メチル塩のメタノール溶液118.6gにメトキシ酢酸34.0g(0.38mol)を滴下し、室温で1時間反応させた。この反応液を濃縮乾燥し、N,N-ジエチル-N-メチル-N-メトキシエチルアンモニウムメトキシ酢酸塩(89.0g)を得た。
【0171】
[実施例4]
<酢酸除去>
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩(42.02g)(東京化成工業株式会社製)に10%酢酸水溶液(オニウム塩に対して0.5当量)とイオン交換水(59.32g)を添加した。以下、これを反応液とする。一部の反応液を濃縮し、1H NMR分析で酢酸由来のピークの積分値の確認とセルロースの溶解テストを行った。1H NMR分析の結果、1.38-1.44ppm(m,3H)のピークを基準とした酢酸イオン及び酢酸由来のメチル基を表すピークの積分値は3.76であった。また、比較例には当該反応液を用いた。なお、酢酸は純正化学株式会社製の酢酸を用いた。
その後、反応液(25.06g)に2-エチルヘキサノール(12.00g)(純正化学株式会社製)、表4に示す各構造のアミン(オニウム塩に対して1.5当量)を添加して攪拌・静置(80℃、各1時間)した。分液後に下層を濃縮し、1H NMR分析と溶解テストを行った。以下、これを評価例13~18とする。
1H NMR分析では1.38-1.44ppm(m,3H)のピークを基準とした酢酸由来のピークの積分値を確認した。積分値から酢酸の除去率(%)を算出した。式は以下の通り。
酢酸除去率(%)=(1-(積分値-3.00)/(3.76-3.00))×100
なお、評価例15では、ジシクロヘキシルアミン由来のピークが酢酸由来のピークと被るため、アミン由来の2H分を除いてから除去率を算出した。結果を表5に示す。
<溶解テスト>
溶解テストでは25℃下で微結晶セルロース(15wt% vs濃縮液)(Avicel(登録商標) PH-101、Sigma-Aldrich Co. LLC製)の溶解可否を確認した。
反応液の濃縮液(比較例1)及び評価例13~18の濃縮液(1.0g)をそれぞれ試験管に入れ、25℃下で微結晶セルロース(15wt% vs濃縮液)を添加して攪拌し、24時間後に微結晶セルロースの溶解可否を目視で確認した。結晶性セルロースが完溶したものを〇、完溶しなかったものを×とした。溶解可否の結果を表5に示す。
【0172】
【0173】
本発明によれば、カルボン酸を含まないオニウム塩、または、オニウム塩に対するセルロースの充分な溶解度が得られる程度にカルボン酸の含有量が低減されたオニウム塩の製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、オニウム塩に含まれるカルボン酸を除去する、または、オニウム塩に対するセルロースの充分な溶解度が得られる程度にカルボン酸の含有量を低減させるオニウム塩の精製方法を提供できる。