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特開2025-5901ブローイングアウト設備およびブローイングアウト方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005901
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ブローイングアウト設備およびブローイングアウト方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/54 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
F22B37/54 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106328
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】辻辺 博一
(72)【発明者】
【氏名】宮内 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】番匠谷 勝之
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 勇介
(57)【要約】
【課題】本開示は、排出される気体中の錆を取り除いて変色を抑制しつつ効率よく大気に排出することができるブローイングアウト設備を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の一態様は、ボイラの配管内部の錆を気体によって除去するためのブローイングアウト設備であって、上記配管に連結される連結口および内部を通過した気体を大気に排出する排出口を有する連結管と、上記排出口から気体とともに排出される錆を捕集する捕集部とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの配管内部の錆を気体によって除去するためのブローイングアウト設備であって、
上記配管に連結される連結口および内部を通過した気体を大気に排出する排出口を有する連結管と、
上記排出口から気体とともに排出される錆を捕集する捕集部と
を備えていることを特徴とするブローイングアウト設備。
【請求項2】
上記捕集部が、網状部材と、この網状部材に液体を供給する給液器とを有する請求項1に記載のブローイングアウト設備。
【請求項3】
上記捕集部が上記排出口の上方に配置され、
上記排出口および上記網状部材を取り囲むように地面または床に立設されている側壁をさらに備える請求項2に記載のブローイングアウト設備。
【請求項4】
上記地面または上記床と上記側壁との間に間隙が形成されている請求項3に記載のブローイングアウト設備。
【請求項5】
上記網状部材の上方が面積基準で80%以上解放されている請求項2、請求項3または請求項4に記載ブローイングアウト設備。
【請求項6】
ボイラの配管内部の錆を気体によって除去するブローイングアウト方法であって、
上記配管内の気体の圧力を高める工程と、
圧力を高めた上記気体を上記配管に連結された連結管の排出口から大気に排出する工程と、
上記排出口から上記気体とともに排出された錆を捕集する工程と
を備えていることを特徴とするブローイングアウト方法。
【請求項7】
上記捕集する工程で、上記排出口から排出された上記気体を、液体が供給されている網状部材に通過させる請求項6に記載のブローイングアウト方法。
【請求項8】
上記排出口から排出された上記気体を上記網状部材に誘導する工程をさらに備える請求項7に記載のブローイングアウト方法。
【請求項9】
上記誘導する工程で、上記網状部材を取り囲むように地面または床に立設されている側壁を用いる請求項8に記載のブローイングアウト方法。
【請求項10】
上記地面または上記床と上記側壁との間に間隙が形成されている請求項9に記載のブローイングアウト方法。
【請求項11】
上記網状部材の上方が面積基準で80%以上解放されている請求項7または請求項8に記載のブローイングアウト方法。
【請求項12】
上記捕集する工程の後に、
上記気体の排出を完了して上記網状部材および上記側壁を撤去する工程をさらに備える請求項9または請求項10に記載のブローイングアウト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブローイングアウト設備およびブローイングアウト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所などで用いられている大型のボイラでは、蒸気が供給されるタービン内へ錆などの異物が入ることを抑制するため、ボイラの内部に配置されている配管の内面を高温高圧の蒸気で洗浄するブローイングアウトと称される作業が行われる。ブローイングアウトを行うための装置として、冷却タンクを備えるブローイングアウト蒸気処理システムが知られている(特開2003-065502号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-065502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブローイングアウトにおけるブローの初期では、タービンに蒸気を供給する配管内の錆が蒸気と共に排出され、大気に放出される蒸気が赤茶色などに変色することがある。特許文献1に記載のブローイングアウト蒸気処理システムは、蒸気を排出する放出部に冷却タンクを備え、この冷却タンクで蒸気の一部を液化し、残部を上記冷却タンクから排出することで蒸気の排出量を低減している。しかし、蒸気を排出する放出部に冷却タンクを備えると、この冷却タンクが蒸気を排出する抵抗(圧力損失)になり、蒸気の排出が抑制されて配管内の洗浄効率が低減するおそれがある。圧力損失を低減するために上記冷却タンクを大型化すると、一時的な設備として配設されるブローイングアウト設備が大型化して設置および撤去が煩雑になり、上記配管の洗浄コストが増大するおそれがある。
【0005】
上述のような事情を鑑み、本開示は、排出される気体中の錆を取り除いて変色を抑制しつつ効率よく大気に排出することができるブローイングアウト設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一態様は、ボイラの配管内部の錆を気体によって除去するためのブローイングアウト設備であって、上記配管に連結される連結口および内部を通過した気体を大気に排出する排出口を有する連結管と、上記排出口から気体とともに排出される錆を捕集する捕集部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係るブローイングアウト設備は、排出される気体中の錆を取り除いて変色を抑制しつつ効率よく大気に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るブローイングアウト設備と、このブローイングアウト設備によって配管内が洗浄されるボイラとを示す模式的側面図である。
図2図2は、図1のブローイングアウト設備の模式的拡大平面図である。
図3図3は、実施例における試験装置を示す模式的側面図である。
図4図4は、実施例の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の一態様は、ボイラの配管内部の錆を気体によって除去するためのブローイングアウト設備であって、上記配管に連結される連結口および内部を通過した気体を大気に排出する排出口を有する連結管と、上記排出口から気体とともに排出される錆を捕集する捕集部とを備えている。
【0011】
当該ブローイングアウト設備は、ボイラの配管内を洗浄した気体と共に排出される錆を捕集する捕集部を備える。このため、上記捕集部を通過する気体中の錆を低減することができ、大気に放出される気体の変色を抑制することができる。また、上記捕集部は、大気に排出された後の気体中の錆を捕集するものであり、上記配管から排出される気体に対する圧力損失が生じ難いため、気体を効率よく大気に放出することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、上記捕集部が、網状部材と、この網状部材に液体を供給する給液器とを有していてもよい。このようにすることで、錆を効率的に捕集することができる。
【0013】
(3)上記(2)において、上記捕集部が上記排出口の上方に配置され、上記排出口および上記網状部材を取り囲むように地面または床に立設されている側壁をさらに備えていてもよい。このようにすることで、錆をより効率的に捕集することができる。
【0014】
(4)上記(3)において、上記地面または上記床と上記側壁との間に間隙が形成されていてもよい。すなわち、上記側壁は簡易に設置されるものであってよい。
【0015】
(5)上記(2)から上記(4)のいずれかにおいて、上記網状部材の上方が面積基準で80%以上解放されていてもよい。このようにすることで、気体を大気に放出する効率性が低下することを抑制できる。
【0016】
(6)本開示の一態様は、ボイラの配管内部の錆を気体によって除去するブローイングアウト方法であって、上記配管内の気体の圧力を高める工程と、圧力を高めた上記気体を上記配管に連結された連結管の排出口から排出する工程と、上記排出口から気体とともに排出されたを捕集する工程とを備えている。
【0017】
当該ブローイングアウト方法は、ボイラの配管に連結された連結管から排出される気体に含まれる錆を捕集するため、上記気体中の錆を低減することができ、大気に放出される上記気体の変色を抑制することができる。また、当該ブローイングアウト方法では、上記配管から排出される上記気体の圧力損失が生じ難いため、気体を効率よく大気に放出することができる。
【0018】
(7)上記(6)において、上記捕集する工程で、上記排出口から排出された気体を、液体が供給されている網状部材に通過させてもよい。このようにすることで、上記錆を効率的に捕集することができる。
【0019】
(8)上記(7)において、上記排出口から排出された気体を上記網状部材に誘導する工程をさらに備えてもよい。このようにすることで、上記錆をより効率的に捕集することができる。
【0020】
(9)上記(8)において、上記誘導する工程で、上記網状部材を取り囲むように地面または床に立設されている側壁を用いてもよい。このようにすることで、上記気体の誘導を容易に行うことができる。
【0021】
(10)上記(9)において、上記地面または上記床と上記側壁との間に間隙が形成されていてもよい。すなわち、上記側壁は簡易に設置されるものであってよい。
【0022】
(11)上記(7)から上記(10)のいずれかにおいて、上記網状部材の上方が面積基準で80%以上解放されていてもよい。このようにすることで、上記気体を大気に放出する効率性が低下することを抑制できる。
【0023】
(12)上記(9)または上記(10)において、上記捕集する工程の後に、気体の排出を完了して上記網状部材および上記側壁を撤去する工程をさらに備えていてもよい。すなわち、上記網状部材および上記側壁は簡易に設置および撤去をすることができる仮設部材であってよい。
【0024】
なお、「上」とは、重力方向の反対方向を意味する。
【0025】
[発明を実施するための形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態を詳説する。
【0026】
<ブローイングアウト設備>
図1および図2で示すように、当該ブローイングアウト設備1は、ボイラBの配管Pに連結される連結口11および内部を通過した気体を大気(屋外)に排出する排出口12を有する連結管10と、排出口12から気体とともに排出される錆を捕集する捕集部20とを備えている。ブローイングアウト設備1はボイラBの配管P内部の錆を気体によって除去する。気体としては、特に限定されるものではないが、空気より比重が小さいものが好ましく、例えば水を気化した蒸気(水蒸気)が好ましい。
【0027】
ボイラBとしては、特に限定されるものではなく、例えば発電所に設置され、タービンTを回転させるための蒸気を発生させるものなどが挙げられる。ボイラBは、タービンTに蒸気を供給するための配管Pを有する。配管Pは、一部がボイラBの本体内に配置され、ボイラBとタービンTとの間で分岐している分岐部P1を有する。分岐部P1には、連結口11と連結可能な被連結口P2が設けられ、その上流側にバルブVが配置されている。
【0028】
〔連結管〕
連結管10は、配管Pの被連結口P2に連結される連結口11と、気体を大気に排出する排出口12とを有する。排出口12には、気体を排出する際の音量を低減するサイレンサSが接続されてもよい。この場合、サイレンサSの出口が排出口12となり、気体はサイレンサSの排出口12から大気に放出される。
【0029】
〔捕集部〕
捕集部20は、排出口12から気体とともに排出される錆を捕集する。捕集部20は、排出口12の上方に配置されることが好ましい。排出口12にサイレンサSが接続されている場合は、サイレンサSの上方に配置するとよい。すなわち、気体が排出される上方に配置されるのが好ましい。このようにすることで、排出口12から立ち昇る気体中の錆を効率的に捕集できる。
【0030】
捕集部20は、網状部材21と、この網状部材21に液体を供給する給液器22とを有することが好ましい。給液器22は、網状部材21の上方に配置されることが好ましい。このようにすることで、網状部材21に上記液体を効率的に供給することができる。
【0031】
(給液器)
給液器22は、網状部材21に液体を供給する。上記液体としては、特に限定されるものではなく、例えば水を用いることができる。網状部材21への液体の供給としては、特に限定されるものではないが、連続して網状部材21の表面(上面)に上記液体が略均一に供給されるように散布することが好ましい。このようにすることで、網状部材21による錆の捕集効率を向上することができる。
【0032】
本実施形態では、給液器22が、給水管23と、この給水管23に配設され、上記液体をミスト状にして所定の範囲(面積)に略均一に噴出可能なノズルチップ24とを備える。給水管23には、網状部材21の表面全体にミスト状の上記液体を供給するように複数のノズルチップ24が配設されている。このノズルチップ24としては、特に限定されるものではないが、充角錐ノズルが好ましい。
【0033】
(網状部材)
網状部材21は、排出された気体中の錆を捕集する。網状部材21としては、特に限定されるものではないが、線材を編んで形成されているワイヤメッシュデミスタであることが好ましい。上記線材の材質としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属などが挙げられる。
【0034】
網状部材21の空間率の下限値としては、80%が好ましく、90%がより好ましく、95%がさらに好ましい。網状部材21の空間率の上限値としては、特に限定されるものではなく、例えば99%であってもよい。網状部材21の空間率を上記範囲とすることで、気体が網状部材21を通過する際の抵抗(圧力損失)を低減することができ、気体を大気に効率よく放出できる。なお、「空間率」とは、単位容積あたりの空間の容積の割合を意味する。
【0035】
網状部材21に液体が供給されると、個々の上記線材に水膜が形成される。液体が供給された網状部材21を気体が通過すると、この気体中の錆の一部が上記線材の水膜に捕集される。上記線材の水膜に捕集された錆は、自重、上記水膜の水滴化などにより網状部材21から落下する。排出口12から排出される気体は、配管P内から除去された錆によって赤茶色などの変色をしていることがある。網状部材21は、通過する気体中の錆の一部を捕集するため、網状部材21を通過して大気に放出される気体の変色を低減することができる。
【0036】
網状部材21の上方は、面積基準で80%以上解放されていることが好ましい。すなわち、網状部材21の上方の開放率が80%以上であることが好ましい。換言すれば、平面視における網状部材21の存在領域(面積)における他の部材(例えば、網状部材21を覆う屋根などの遮へい物)の存在割合(面積割合)が20%未満であることが好ましい。具体的には、例えば本実施形態では、網状部材21の上方に給液器22の給水管23とノズルチップ24とが配設されている(図2参照)。この給液器22のように、網状部材21の上方を遮へいするように配置される部材の平面視における面積割合が網状部材21の面積に対して20%未満であることが好ましい。このようにすることで、大気に放出される気体の圧力損失を低減することができ、ひいては配管Pを効率に洗浄することができる。網状部材21の上記開放率の下限値としては、85%であってもよく、90%であってもよく、95%であってもよい。網状部材21の上記開放率の上限値としては、100%であってもよい。
【0037】
(側壁)
当該ブローイングアウト設備1は、排出口12および網状部材21を取り囲むように地面または床に立設されている側壁25を備えることが好ましい。すなわち、側板25内に排出口12と網状部材21とが配置されることが好ましい。このようにすることで、排出口12から排出された気体を網状部材21に誘導することができ、錆の捕集効率を向上することができる。網状部材21は、側壁25に取り付けられるように構成されていてもよい。具体的には、側壁25が網状部材21を保持するための保持部材を有し、網状部材21が上記保持部材に保持されることで側壁25に取り付けられていてもよい。
【0038】
上記地面または上記床(以下、設置面Gともいう)と側壁25との間に間隙が形成されていてもよい。すなわち、側壁25は、側壁25の下端が設置面Gに完全に接するように設置されるものではなく、隙間が形成されるように簡易に設置されるものであってもよい。また、側壁25が複数の平板材で構成されるものであれば、隣接する平板材同士の間に多少の隙間が形成されてもよい。このようにすることで、側壁25を容易に設置および撤去することができる。
【0039】
側壁25としては、容易に設置および撤去が可能な仮設設備であれば特に限定されるものではなく、例えば、建設現場で仮組みされる足場を排出口12の周囲設置し、この足場に複数の足場床板を立てかけ、または複数の平板材を立てかけることなどで形成されるものであってもよい。
【0040】
(敷板)
当該ブローイングアウト設備1は、網状部材21から落下した水滴(この水滴には錆が含まれていてもよい)を回収する敷板26を有することが好ましい。敷板26は、網状部材21の下方の設置面Gに配置される。また、当該ブローイングアウト設備1は、敷板26と、捕集部20から離間した位置に設けられ、敷板26が回収した水滴を貯留する液体回収部30とを連通する連通部27を有することがより好ましい。このようにすることにより、敷板26が回収した水滴の処理を効率的に行うことができる。液体回収部30には、敷板26が回収した水滴を処理する水処理設備(不図示)に供給するポンプ(不図示)が配置されることが好ましい。
【0041】
<ブローイングアウト方法>
当該ブローイングアウト方法は、配管P内の気体の圧力を高める工程と、圧力を高めた上記気体を配管Pに連結された連結管10の排出口12から排出する工程と、排出口12から気体とともに排出された錆を捕集する工程とを備えている。
【0042】
〔圧力を高める工程〕
圧力を高める工程は、配管P内の気体の圧力を高める。配管P内の気体の圧力を高める手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、配管Pに水を供給し、この水をボイラBで加熱して蒸気にし、この蒸気の圧力を高めてもよい。具体的には、配管Pに水を供給し、分岐P1からタービンTへの流路を遮断するとともにバルブVを閉鎖し、この配管PをボイラBで加熱して供給された水を高圧蒸気にしてもよい。
【0043】
〔排出する工程〕
排出する工程は、圧力を高めた上記気体を配管Pに連結された連結管10の排出口12から大気に排出する。具体的には、配管Pに連結された連結管10の分岐部P1に配置されているバルブVを開放することで圧力を高めた気体(高圧蒸気)を配管Pに連結された連結管10の排出口12から排出口12から排出する。
【0044】
〔捕集する工程〕
捕集する工程では、排出口12から上記気体とともに排出された錆を捕集する。すなわち、大気中の気体の錆(屋外に排出された気体の錆)を捕集する。錆の捕集は、捕集部20が行う。捕集部20は、網状部材21と、この網状部材21に液体を供給する給液器22とを有することが好ましい。上記気体は、上記液体が供給されている網状部材21を通過することが好ましい。網状部材21は、排出口12の上方に配置されることが好ましく、通過する気体(水蒸気)から錆の一部を取り除く。網状部材21の上方は、面積基準で80%以上解放されていることが好ましい。
【0045】
〔誘導する工程〕
当該ブローイングアウト方法は、排出口12から排出された気体を網状部材21に誘導する工程を備えていてもよい。上記気体の誘導は、網状部材21を取り囲むように地面または床に立設されている側壁25を用いることが好ましい。具体的には、排出口12および網状部材21を取り囲む側壁25を立設し、排出された気体を側壁25で網状部材21に誘導して上記捕集する工程を行うことが好ましい。設置面Gと側壁25との間には、間隙が形成されていてもよい。
【0046】
〔撤去する工程〕
当該ブローイングアウト方法は、上記捕集する工程の後に、気体の排出を完了して網状部材21および側壁25を撤去する工程をさらに備えていてもよい。具体的には、配管P中の高圧にされた気体の全部を排出して錆の捕集を完了した後、配置された網状部材21、および気体を網状部材21に誘導するように設置した側壁25を撤去する。同時に給液器22も撤去することが好ましい。また、連結管10と配管Pとの連結を解除し、配管PをタービンTと接続する。当該ブローイングアウト設備1は、ボイラBの配管Pの洗浄以外では使用されるものではないため、撤去することが好ましい。
【0047】
<利点>
当該ブローイングアウト設備1は、連結管10の排出口12から気体とともに排出される錆を捕集する捕集部20を備えるため、上記気体中の錆を低減することができる。このため、大気に放出される気体の変色を抑制することができる。当該ブローイングアウト設備1の捕集部20は、例えばタンク、建屋などの構造物の中に配置されるものではなく、排出口12から大気(屋外)に排出された後の気体中の錆を取り除くように配置されている。換言すれば、当該ブローイングアウト設備1は、錆を除去した後の気体を排出口から大気に排出するものではなく、排出口12から大気に排出された後の気体の錆を除去している。このため、当該ブローイングアウト設備1は、排出口12から排出される気体に対する圧力損失を生じさせ難く、連結管10内および配管P内の気体を効率よく排出することができ、ひいては配管P内を効率的に洗浄することができる。また、当該ブローイングアウト設備1は、捕集部20を配置するための上記構造物などを要しないため、構成が簡易であり、容易に設置および撤去することができる。このため、低コストかつ容易に気体中の錆を取り除きつつブローイングアウトを行うことができる。当該ブローイングアウト方法は、当該ブローイングアウト設備1を用いているため、容易にブローイングアウトを行うことができる。
【0048】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載および技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換または追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【実施例0049】
以下、実施例によって本開示をさらに説明するが、本開示はこの実施例に限定されるものではない。
【0050】
図3に示すような試験装置100を用いて、気体中の錆の除去効果を確認した。試験装置100は、パイプ101と、このパイプ101に圧縮空気を供給するコンプレッサ102と、パイプ101に粉状の錆を供給するタンク103と、パイプ101の排出口に接続されるケーシング104と、このケーシング104の上方に配置した網状部材105と、この網状部材105の上方に配置された給液器とを備える。上記給液器は、網状部材105の表面に略均一に散水するノズルチップ106と、このノズルチップ106に水を供給する給水管107とを有する。
【0051】
網状部材105としては、厚さ25mm、空間率97.5%のワイヤメッシュデミスタを使用した。ノズルチップ106としては、標準圧力0.2MPaの充角錐ノズルを使用した。網状部材105を通過する空気の流速は、実際のブローイングアウト時に網状部材を通過する気体流速と同等の3.8m/sとした。
【0052】
網状部材105の厚さ(上面と下面との距離)、網状部材105への散水パターンおよび網状部材105への散水量を変更し、それぞれの網状部材105による錆の捕集率を比較した。捕集率は、それぞれの試験後に、タンク103からの錆の供給量に対する網状部材105に付着した錆およびケーシング104の底部に落下した錆の合計量の比率(質量比)として算出した。その結果を表1および図4に示す。表1中、網状部材105の厚さが50mmのものは、網状部材21を2枚重ねたものを意味する。「散水なし」とは、給液器による散水をしなかったもの、「事前散水」とは、ケーシング104内に圧縮空気および錆が供給される前に、散水と散水の停止とを行ったもの、「常時散水」とは、試験中に連続して散水したものを意味する。「散水量」とは、試験中の散水量を意味する。
【0053】
【表1】
【0054】
表1および図4より、試験例3と試験例4とを比較すると、この試験で用いた網状部材105の厚さが25mmを超えても捕集率に変化がないことが分かる。すなわち、厚さが25mmの網状部材105を2枚重ねても捕集効果の向上は確認できなかった。また、散水なし、および事前散水(試験例1および試験例2)は、捕集率が低いことが分かる。散水量は、0.22L/min・mを超えても捕集率が向上しないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示の一態様に係るブローイングアウト設備は、洗浄された配管から排出される気体の変色を抑制することができるため、特に大型ボイラの配管の洗浄に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0056】
1 ブローイングアウト設備
10 連結管
11 連結口
12 排出口
20 捕集部
21,105 網状部材
22 給液器
23,107 給水管
24,106 ノズルチップ
25 側壁
26 敷板
27 連通部
30 回収部
100 試験装置
101 パイプ
102 コンプレッサ
103 タンク
104 ケーシング
B ボイラ
G 設置面
P 配管
P1 分岐部
P2 被連結口
S サイレンサ
T タービン
V バルブ
図1
図2
図3
図4