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特開2025-59019繊維製品の製造方法、および寝具カバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025059019
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】繊維製品の製造方法、および寝具カバー
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/02 20060101AFI20250401BHJP
【FI】
A47G9/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165282
(22)【出願日】2024-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2023166119
(32)【優先日】2023-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】浜口 貴司
(72)【発明者】
【氏名】原 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 真也
(72)【発明者】
【氏名】坂東 丈徳
【テーマコード(参考)】
3B102
【Fターム(参考)】
3B102BA12
(57)【要約】
【課題】滑りを抑制するとともに、コストを抑えて人に対する触感が良好な繊維製品の製造方法、および寝具カバーを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る繊維製品の製造方法は、繊維によって構成され、人に直接または間接的に接触する繊維製品の製造方法である。繊維製品の製造方法は、第1方向D1、および第1方向D1に交差する第2方向に延在する第1面20gと、第1面20gとは反対側を向く第2面20hと、を有する生地20の第1面20gおよび第2面20hの少なくともいずれかに起毛加工を施す工程と、生地20の起毛加工を施した面に樹脂を付着させることにより、生地20に樹脂加工を施す工程と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維によって構成され、人に直接または間接的に接触する繊維製品の製造方法であって、
第1方向、および前記第1方向に交差する第2方向に延在する第1面と、前記第1面とは反対側を向く第2面と、を有する生地の前記第1面および前記第2面の少なくともいずれかに起毛加工を施す工程と、
前記生地の前記起毛加工を施した面に樹脂を付着させることにより、前記生地に樹脂加工を施す工程と、
を備える、
繊維製品の製造方法。
【請求項2】
前記起毛加工を施す工程では、前記第1面および前記第2面の双方に起毛加工を施し、
前記生地に樹脂加工を施す工程では、液状の樹脂に前記生地を浸漬させることによって前記第1面および前記第2面の双方に樹脂加工を施す、
請求項1に記載の繊維製品の製造方法。
【請求項3】
前記起毛加工を施す工程では、前記生地の前記第1面および前記第2面の少なくともいずれかに微起毛加工を施す、
請求項1または請求項2に記載の繊維製品の製造方法。
【請求項4】
前記起毛加工を施す工程では、前記生地の前記第1面に少なくとも1回の微起毛加工を施すとともに、前記生地の前記第2面に複数回の微起毛加工を施し、
前記第2面に施す前記微起毛加工の回数が前記第1面に施す前記微起毛加工の回数よりも多い、
請求項1または請求項2に記載の繊維製品の製造方法。
【請求項5】
前記繊維製品は、寝具カバーであって、
2枚の前記生地に対して前記起毛加工を施す工程、および前記樹脂加工を施す工程を実行した後に、前記第1方向および前記第2方向の双方に交差する第3方向に並ぶように2枚の前記生地を重ねる工程と、
前記第3方向に重ねられた2枚の前記生地の外縁同士を縫い合わせることによって前記寝具カバーを製造する工程と、
を備える、
請求項1または請求項2に記載の繊維製品の製造方法。
【請求項6】
前記繊維製品は、寝具カバーであって、
1枚の前記生地に対して前記起毛加工を施す工程、および前記樹脂加工を施す工程を実行した後に、前記第1方向および前記第2方向の双方に交差する第3方向に並ぶように1枚の前記生地に別生地を重ねる工程と、
前記第3方向に重ねられた1枚の前記生地および前記別生地の外縁同士を縫い合わせることによって前記寝具カバーを製造する工程と、
を備える、
請求項1または請求項2に記載の繊維製品の製造方法。
【請求項7】
前記第3方向から見たときに、2枚の前記生地は長方形状を呈し、2枚の前記生地は、前記第3方向に互いに重なる第1辺、第2辺、第3辺および第4辺を有し、
前記寝具カバーを製造する工程は、
2枚の前記生地における互いに対向する前記第1辺、前記第2辺、前記第3辺および前記第4辺の少なくとも2辺に、互いに着脱されるファスナーを縫い付ける工程と、
2枚の前記生地における互いに対向する前記第1辺、前記第2辺、前記第3辺および前記第4辺のうち前記ファスナーが縫い付けられていない辺同士を縫い合わせる工程と、
を含む、
請求項5に記載の繊維製品の製造方法。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の前記生地を備える寝具カバーであって、
前記生地に、前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向に重ね合わされる別生地と、
ファスナーと、
を備え、
前記生地および前記別生地は、前記第3方向から見たときに長方形状を呈し、
前記生地および前記別生地は、前記第3方向に重なる第1長辺、第2長辺、および一対の短辺を有し、
前記ファスナーは、前記第1長辺に設けられており、
前記第2長辺および前記一対の短辺では、前記生地と前記別生地とが縫い合わされており、
前記寝具カバーは、前記第2長辺および前記一対の短辺の少なくともいずれかに設けられているとともに、前記生地および前記別生地によって画成されたスリットを有する、
寝具カバー。
【請求項9】
前記第2長辺には一対の前記スリットが設けられており、
一対の前記スリットは、前記第2長辺の中点を挟む位置に設けられている、
請求項8に記載の寝具カバー。
【請求項10】
前記第3方向から見たときの前記生地の隅部から前記スリットまで、前記第2長辺に沿って延在する縫製部を更に有する、請求項9に記載の寝具カバー。
【請求項11】
前記スリットは、前記第2長辺の中点と重なる位置に設けられている、請求項8に記載の寝具カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人に直接または間接的に接触する繊維製品の製造方法、および寝具カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中の布団をずれ難くする布団カバーが記載されている。この布団カバーは、人側を向く第1布と、外側の第2布とを有する。布団カバーは、長方形状を呈する。布団カバーには、滑り止め用の布帛aが縫製によって取り付けられる。布帛aは、単繊維径が10~10000nmの繊維Aを含む。
【0003】
繊維Aは、フィラメント数が500本以上の長繊維である。繊維Aは、ポリエステルによって構成されており、海成分と島成分からなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条である。布帛aには、単繊維径が10000nmより大きい繊維Bがさらに含まれる。布帛aは、上記の構成により、粘着性が高い生地とされている。布帛aは、第1布の第2布に対向する面における長手方向の一方側および他方側のそれぞれと、第1布の第2布とは反対を向く面における長手方向の一方側と、に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-205205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した布団カバーでは、縫製によって布団の側生地に固定された布帛aによって滑り止めの効果が発揮される。しかしながら、布帛aは粘着性が高い生地であるため、側生地に布帛aが縫製されると側生地を傷める可能性がある。前述した布団カバーでは、布帛aを用意して布帛aを側生地に縫製しなければならないので、縫製等のコストが高いという問題がある。さらに、前述した布団カバーでは、人側を向く第1布の両面に布帛aが固定されているので、粘着性が高い布帛aが直接または間接的に人の肌に接触する可能性がある。その結果、人に違和感を感じさせる懸念がある。
【0006】
本開示は、滑りを抑制するとともに、コストを抑えて人に対する触感が良好な繊維製品の製造方法、および寝具カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示に係る繊維製品の製造方法は、繊維によって構成され、人に直接または間接的に接触する繊維製品の製造方法である。繊維製品の製造方法は、第1方向、および第1方向に交差する第2方向に延在する第1面と、第1面とは反対側を向く第2面と、を有する生地の第1面および第2面の少なくともいずれかに起毛加工を施す工程と、生地の起毛加工を施した面に樹脂を付着させることにより、生地に樹脂加工を施す工程と、を備える。
【0008】
この繊維製品の製造方法では、人に直接または間接的に接触する繊維製品が製造される。この製造方法では、生地の第1面および第2面の少なくともいずれかに起毛加工が施される。起毛加工によって第1面および第2面の少なくともいずれかを毛羽立たせることができるので、生地を滑りにくくすることができる。さらに、生地の起毛加工が施された面には樹脂加工によって樹脂が付着する。生地の毛羽立った面に樹脂が付着することにより、生地を滑りにくくするとともに肌触りを良好にすることができる。したがって、滑りを抑制するとともに触感を良好にすることができる。さらに、この繊維製品の製造方法では、滑り止めのための他の布等を生地に縫製する必要がない。したがって、他の布および縫製のコストを抑えることができる。
【0009】
(2)上記(1)において、起毛加工を施す工程では、第1面および第2面の双方に起毛加工を施してもよく、生地に樹脂加工を施す工程では、液状の樹脂に生地を浸漬させることによって第1面および第2面の双方に樹脂加工を施してもよい。この場合、生地の両面に起毛加工を施し、かつ生地の両面に樹脂加工を施すので、生地の両面において滑りを抑制するとともに触感を良好にできる。さらに、液状の樹脂に生地を浸漬させることにより、生地に対する樹脂加工を容易に行うことができる。よって、樹脂を付着させる作業のコストを抑えることができる。
【0010】
(3)上記(1)または(2)において、起毛加工を施す工程では、生地の第1面および第2面の少なくともいずれかに微起毛加工を施してもよい。この場合、生地の第1面および第2面の少なくともいずれかに微起毛加工が施されることにより、第1面および第2面の少なくともいずれかを滑りにくくするとともに微起毛によって肌触りを良好にすることができる。
【0011】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、起毛加工を施す工程では、生地の第1面に少なくとも1回の微起毛加工を施すとともに、生地の第2面に複数回の微起毛加工を施してもよく、第2面に施す微起毛加工の回数が第1面に施す微起毛加工の回数よりも多くてもよい。この場合、生地の第1面および第2面の両方に微起毛加工を施すことにより、第1面および第2面の両方を滑りにくくするとともに肌触りを良好にすることができる。さらに、第2面に施す微起毛加工の回数が第1面に施す微起毛加工の回数より多いことにより、第2面を第1面より滑りにくくできるとともに第1面の肌触りを一層良好にできる。このように、繊維製品において、より滑りにくい面、およびより肌触りが良い面の両方を形成できる。
【0012】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、繊維製品は、寝具カバーであってもよい。繊維製品の製造方法は、2枚の生地に対して起毛加工を施す工程、および樹脂加工を施す工程を実行した後に、第1方向および第2方向の双方に交差する第3方向に並ぶように2枚の生地を重ねる工程と、第3方向に重ねられた2枚の生地の外縁同士を縫い合わせることによって寝具カバーを製造する工程と、を備えてもよい。この場合、滑りにくいとともに肌触りが良好な2枚の生地から寝具カバーを製造できる。したがって、寝具カバーの内部の寝具本体を滑りにくくできるとともに、人に対する触感が良好な寝具カバーとすることができる。
【0013】
(6)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、繊維製品は、寝具カバーであってもよい。繊維製品の製造方法は、1枚の生地に対して起毛加工を施す工程、および樹脂加工を施す工程を実行した後に、第1方向および第2方向の双方に交差する第3方向に並ぶように1枚の生地に別生地を重ねる工程と、第3方向に重ねられた1枚の生地および別生地の外縁同士を縫い合わせることによって寝具カバーを製造する工程と、を備えてもよい。この場合、滑りにくくかつ肌触りが良好な1枚の生地と別生地とから寝具カバーを製造できる。当該1枚の生地の内面に対して寝具本体を滑りにくくできるので、寝具カバーの内部における寝具本体の位置がずれることを抑制できる。当該1枚の生地の外面を肌面に当てることによって、人に対する触感が良好な寝具カバーとすることができる。
【0014】
(7)上記(5)において、第3方向から見たときに、2枚の生地は長方形状を呈してもよく、2枚の生地は、第3方向に互いに重なる第1辺、第2辺、第3辺および第4辺を有してもよい。寝具カバーを製造する工程は、2枚の生地における互いに対向する第1辺、第2辺、第3辺および第4辺の少なくとも2辺に、互いに着脱されるファスナーを縫い付ける工程と、2枚の生地における互いに対向する第1辺、第2辺、第3辺および第4辺のうちファスナーが縫い付けられていない辺同士を縫い合わせる工程と、を含んでもよい。この場合、2枚の生地の少なくとも2辺にファスナーが縫い付けられた寝具カバーが製造される。したがって、2枚の生地に、一対の長辺に縫い込まれたファスナー、一対の短辺に縫い込まれたファスナー、またはL字ファスナーが形成された寝具カバーが製造される。その結果、ファスナーの着脱によって、寝具カバーに対する寝具本体の出し入れを容易に行うことができる。また、第1辺、第2辺、第3辺および第4辺の3辺以上にファスナーを縫い付ける場合には、コの字ファスナーまたはロの字ファスナーが形成された寝具カバーが製造される。この場合、コの字ファスナー等の着脱により、寝具カバーをめくるだけで寝具カバーに対する寝具本体の出し入れを一層容易に行うことができる。
【0015】
(8)寝具カバーは、(1)~(4)のいずれかに記載の生地を備える寝具カバーであってもよい。寝具カバーは、生地に、第1方向および第2方向に交差する第3方向に重ね合わされる別生地と、ファスナーと、を備えてもよい。生地および別生地は、第3方向から見たときに長方形状を呈してもよい。生地および別生地は、第3方向に重なる第1長辺、第2長辺、および一対の短辺を有してもよい。ファスナーは、第1長辺に設けられていてもよい。第2長辺および一対の短辺では、生地と別生地とが縫い合わされていてもよい。寝具カバーは、第2長辺および一対の短辺の少なくともいずれかに設けられているとともに、生地および別生地によって画成されたスリットを有してもよい。
【0016】
この寝具カバーでは、第1長辺にファスナーが設けられているので、ファスナーを開くことで寝具カバーの内部を外部に連通させる開口が形成される。当該開口を介して、寝具本体を寝具カバーの内部に収容することができる。そして、収容された寝具本体が第1長辺寄りに位置しているときに、使用者はスリットから寝具カバーの内部に手を入れて、寝具本体が第2長辺に近づくように寝具本体を引き込むことができる。これにより、寝具カバーの内部の適切な位置に寝具本体を効率よく引き込むことができる。
【0017】
(9)上記(8)において、第2長辺には一対のスリットが設けられていてもよく、一対のスリットは、第2長辺の中点を挟む位置に設けられていてもよい。この場合、複数のスリットが設けられているので、複数のスリットのそれぞれから寝具カバーの内部に手を入れることにより、寝具本体の引き込みをより効率よく行うことができる。第2長辺の両端に位置する寝具本体の2つの隅部の近くに一対のスリットのそれぞれが位置する。よって、使用者は一方のスリットから寝具カバーの内部に手を入れて、寝具本体の一方の隅部を掴んで寝具本体を引き込むことができる。また、使用者は他方のスリットから寝具カバーの内部に手を入れて、寝具本体の他方の隅部を掴んで寝具本体を引き込むことができる。これにより、寝具カバーの内部への寝具本体の配置を一層効率よく行うことができる。
【0018】
(10)上記(9)において、寝具カバーは、第3方向から見たときの生地の隅部からスリットまで、第2長辺に沿って延在する縫製部を更に有してもよい。この場合、第2長辺の両端には縫製部が設けられており、スリットは第2長辺の両端には達していない。よって、寝具本体の隅部が寝具カバーの隅部から外部に露出することを抑制できる。
【0019】
(11)上記(8)~(10)のいずれかにおいて、スリットは、第2長辺の中点と重なる位置に設けられていてもよい。この場合、使用者は第2長辺の中点と重なる位置に設けられたスリットから寝具カバーの内部に手を入れることにより、寝具本体をその長辺の中央部分から引き込むことができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、滑りを抑制するとともに、コストを抑えて人に対する触感が良好な繊維製品および寝具カバーを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る繊維製品の一例である寝具カバーを示す斜視図である。
図2図1の寝具カバーを上方から見た斜視図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】実施形態に係る繊維製品の生地を模式的に示す断面図である。
図5】実施形態に係る繊維製品の製造方法の工程の例を示すフローチャートである。
図6】生地を液状の樹脂に浸漬させている状態を模式的に示す図である。
図7】(a)および(b)は、実施形態に係る繊維製品の使用例を示す図である。
図8図8は、第1変形例に係る寝具カバーを上方から見た斜視図である。
図9図9は、第1変形例に係る寝具カバーの製造方法の工程の例を示すフローチャートである。
図10図10(a)は、第2変形例に係る寝具カバーを上方から見た斜視図である。図10(b)は、第3変形例に係る寝具カバーを上方から見た斜視図である。
図11図11は、第4変形例に係る寝具カバーを使用者が使用している状態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る繊維製品の製造方法および寝具カバーの実施形態について説明する。図面の説明において同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化または誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0023】
実施形態に係る繊維製品の製造方法は、繊維によって構成され、人に直接または間接的に接触する繊維製品の製造方法である。繊維製品は、寝具であってもよいし、衣類であってもよい。寝具は、掛け寝具、敷き寝具、枕、クッションまたは座布団である。掛け寝具は、人の身体に掛けられる寝具であって、例えば、掛け布団またはタオルケットである。また、掛け寝具は、肌掛け布団またはキルトケットであってもよい。敷き寝具は、人の身体が載せられる寝具であって、例えば、敷き布団、マットレス、敷きパッドまたはシーツである。後述するように、繊維製品は、寝具カバーであってもよい。寝具カバーは、寝具の芯材を覆うカバーである。寝具カバーは、例えば、掛け布団カバー、敷き布団カバー、または枕カバーである。
【0024】
「人に直接または間接的に接触する」とは、人に直接接触する繊維製品、または布等を挟んで人に間接的に接触する繊維製品を含む。例えば、人に直接接触する繊維製品は、シャツまたは下着である。布等を挟んで人に間接的に接触する繊維製品は、例えば、寝具または上着である。ただし、繊維製品は繊維によって構成されたものであればよく、繊維製品の用途は特に限定されない。
【0025】
以下では、繊維製品が寝具である例について説明する。より具体的には、繊維製品が寝具カバーである例について説明する。図1は、実施形態に係る繊維製品の一例である寝具カバー10を備えた寝具1を示す斜視図である。図1に示されるように、寝具1は、例えば、ベッドBの上に載せられた敷き寝具Cに載置された状態で使用される掛け布団である。
【0026】
図2は、寝具1を模式的に示す平面図である。図1および図2に示されるように、寝具1は、第1方向D1、および第1方向D1に交差する第2方向D2に沿って延在するとともに、第1方向D1および第2方向D2の双方に交差する第3方向D3に厚みを有する。例えば、第1方向D1は寝具1の長手方向であり、第2方向D2は寝具1の短手方向(幅方向)であり、第3方向D3は寝具1の厚さ方向である。
【0027】
図3は、図2のA-A線断面図である。図2および図3に示されるように、寝具カバー10は、2枚の生地20によって形成されている。一例として、寝具カバー10は掛け布団カバーである。本実施形態において、2枚の生地20は、生地21、および生地21に第3方向D3に対向する生地22である。
【0028】
平面視(第3方向D3に沿って見た場合)において、生地21および生地22は、長方形状を呈する。生地21の周縁部21jの一部、および生地22の周縁部22jの一部は、糸23によって縫い合わされている。周縁部21jは、後述する第1辺21b、第2辺21c、第3辺21dおよび第4辺21fによって形成された枠状部を含む部分である。同様に、周縁部22jは、後述する第1辺22b、第2辺22c、第3辺22dおよび第4辺22fによって形成された枠状部を含む部分である。
【0029】
一例として、生地21および生地22は布帛である。生地21および生地22は、例えば、掛け布団カバーとして用いられる薄手生地である。例えば、生地21は生地22の上方に位置する生地であり、寝具1において寝具カバー10の内部(生地21と生地22との間)には寝具本体2が収容される。寝具本体2は、寝具カバー10の内部に出し入れ可能とされている。一例として,寝具本体2は掛け布団本体である。寝具本体2は、例えば、繊維および布によって構成されている。
【0030】
例えば、寝具カバー10は、寝具カバー10の内部に位置する寝具本体2を寝具カバー10に固定する固定手段を有しない。なお、従来の寝具カバーでは、寝具カバーの内部に位置する寝具本体を寝具カバーに固定する輪状のチーと称される固定手段が設けられていた。これに対し、本実施形態に係る寝具カバー10では、生地20が滑りにくい生地とされているため、チー等の固定手段がなくても寝具カバー10の内部における寝具本体2の滑りおよびずれを抑制できる。したがって、寝具カバー10は、寝具カバー10の内部に寝具本体2を固定する固定手段を有しない。
【0031】
生地21は、例えば、第1方向D1に沿って延びる第1辺21bと、第1辺21bの一端部から第2方向D2に沿って延びる第2辺21cとを有する。生地21は、第2辺21cの第1辺21bとは反対の端部から第1方向D1に沿って延びる第3辺21dと、第3辺21dの第2辺21cとは反対の端部から第2方向D2に沿って延びる第4辺21fとを有する。第1辺21bは生地21の第2方向D2の一端部に位置しており、第3辺21dは生地21の第2方向D2の他端部に位置する。第2辺21cは生地21の第1方向D1の一端部に位置しており、第4辺21fは生地21の第1方向D1の他端部に位置する。
【0032】
生地22は、生地21の第1辺21bに第3方向D3に対向する第1辺22bと、生地21の第2辺21cに第3方向D3に対向する第2辺22cと、生地21の第3辺21dに第3方向D3に対向する第3辺22dと、生地21の第4辺21fに第3方向D3に対向する第4辺22fとを有する。例えば、生地21および生地22は、互いに同一の形状および同一の大きさを有する。
【0033】
生地21および生地22における互いに対向する第1辺21bと第1辺22b、および、第3辺21dと第3辺22dのそれぞれには、互いに着脱されるファスナー24が縫い付けられている。例えば、寝具カバー10の第2方向D2の一端部、および寝具カバー10の第2方向D2の他端部のそれぞれにおいて、ファスナー24が寝具カバー10の第1方向D1の一端部から他端部まで延在している。例えば、ファスナー24は樹脂製である。ファスナー24が開放された状態で寝具カバー10への寝具本体2の出し入れが可能となる。
【0034】
生地21は、第1方向D1および第2方向D2に延在する第1面21gと、第1面21gとは反対側を向く第2面21hとを有する。例えば、生地22は、生地21と同様、第1方向D1および第2方向D2に延在する第1面22gと、第1面22gとは反対側を向く第2面22hとを有する。
【0035】
例えば、寝具1において、生地21の第2面21h、および生地22の第2面22hは寝具本体2に対向する面であり、生地21の第1面21g、および生地22の第1面22gは寝具本体2とは反対側を向く面である。すなわち、第2面21hおよび第2面22hは寝具カバー10の内面であり、第1面21gおよび第1面22gは寝具カバー10の外面である。
【0036】
例えば、生地21において、第2面21hの摩擦係数(一例として静摩擦係数)は、第1面21gの摩擦係数より大きい。例えば、第2面21hは、第1面21gより毛羽立っている。生地22においては、生地21と同様、第2面22hの摩擦係数は第1面22gの摩擦係数より大きく、第2面22hは第1面22gより毛羽立っている。すなわち、第2面21hは第1面21gよりも滑りにくく、第2面22hは第1面22gよりも滑りにくい。これにより、寝具カバー10の内面は、寝具カバー10の外面より滑りにくくなっている。
【0037】
例えば、生地21は、生地22と同一である。以下では、生地21と生地22を区別する必要がない場合には、生地21および生地22のそれぞれを生地20、第1面21gおよび第1面22gのそれぞれを第1面20g、第2面21hおよび第2面22hのそれぞれを第2面20hとして説明する。
【0038】
図4は、生地20を模式的に示す断面図である。図4に示されるように、例えば、第1面20gおよび第2面20hは毛羽立っている。生地20は、後述する起毛加工、および樹脂26を付着させる樹脂加工の双方が施された生地である。生地20は、例えば、第1面20gおよび第2面20hの双方に、起毛加工によって得られた毛25と、樹脂加工によって得られた樹脂26とを有する。
【0039】
例えば、第2面20hにおける毛25の量は、第1面20gにおける毛25の量よりも多い。起毛加工は、例えば、微起毛加工である。微起毛加工が施されることにより、薄手生地である生地20でも傷むことをより確実に抑制できる。微起毛加工では、例えば、ローラ状のやすり(一例として紙やすり)が生地20に当てられて生地20を起毛する。この起毛加工は、サンディング加工とも称される。この微起毛加工およびサンディング加工の場合、針で生地を掻き出す加工等と比較して、生地20を傷めないようにすることができる。
【0040】
樹脂26は、例えば、生地20に付着する前では液状樹脂であって、生地20に付着している状態では粒状のゴム材料とされている。樹脂26が粒状のゴム材料とされていることにより、生地20を滑りにくくできるとともに生地20を滑らかな肌触りとすることができる。
【0041】
例えば、樹脂26は、ポリアクリレート系樹脂である。樹脂26は、メチルアクリレートであってもよいし、エチルアクリレートであってもよい。樹脂26は、アクリル酸メチルを含んでいてもよい。樹脂26は、アクリル系樹脂剤であってもよい。この場合、生地20が適度な粘着性を有することとなるので、生地20を一層滑りにくくすることができる。なお、樹脂26は、繊維工業用助剤または仕上げ剤であってもよい。この場合、生地20の柔軟性を高めて生地20に艶を出すことも可能となる。
【0042】
生地20は、起毛加工が施されていることにより、滑りにくくグリップ力が高められている。生地20は、樹脂加工が施されていることにより、グリップ力がさらに高められるとともに肌触りが良く違和感が低減されている。さらに、生地20は、起毛加工が施されていることにより、樹脂のねっとりとした感触が低減されている。
【0043】
例えば、生地20の第1面20gおよび第2面20hの双方に起毛加工および樹脂加工が施されている。しかしながら、第1面20gおよび第2面20hのいずれかのみに起毛加工および樹脂加工が施されていてもよい。例えば、生地20は、ポリエステルによって構成されている。また、生地20は、TC素材(ポリエステルと綿の混紡)によって構成されていてもよい。この場合、例えば、生地20のポリエステルの比率は80%であり、生地20の綿の比率は20%である。さらに、生地20は毛布系生地によって構成されていてもよい。このように、生地20の素材は特に限定されない。
【0044】
次に、本実施形態に係る繊維製品の製造方法の例について説明する。以下では、寝具カバー10の製造方法の例について図5のフローチャートを参照しながら説明する。まず、寝具カバー10を構成する2枚の生地20である生地21および生地22を作製する。生地21および生地22の基となる原反である生地30(図6参照)を用意する(生地を用意する工程、ステップS1)。生地30は、生地30の面内方向に延在する第1面30gと、第1面30gとは反対側を向く第2面30hとを有する。
【0045】
生地30は、例えば、ポリエステル素材によって構成されている。この場合、例えば、生地30にテンションをかけて生地30を洗浄し、生地30のテンションを解除して生地30を乾燥させる。その後、以下の起毛加工を施す工程を実行する。また、生地30は、TC素材によって構成されていてもよい。この場合、例えば、生地30の毛羽を除去して生地30に糊抜きを行い、生地30から不純物を除去して生地30を漂白する。その後、以下の起毛加工を施す工程を実行する。
【0046】
起毛加工を施す工程では、生地30の第1面30gと第2面30hの双方に起毛加工を施す(起毛加工を施す工程、ステップS2)。なお、第1面30gおよび第2面30hのいずれかのみに起毛加工を施してもよく、第1面30gおよび第2面30hの少なくともいずれかに起毛加工を施せばよい。
【0047】
例えば、第1面30gおよび第2面30hの少なくともいずれかに微起毛加工を施す。なお、第1面30gおよび第2面30hの双方に微起毛加工を施してもよい。微起毛加工では、研磨紙が巻かれたローラを生地30上で転動させることによって生地30を毛羽立たせる。研磨紙は、例えば、サンドペーパーまたはエメリーペーパーである。
【0048】
例えば、研磨紙が巻かれたローラを第1面30gおよび第2面30hのそれぞれで転動させることによって第1面30gおよび第2面30hの双方に微起毛加工を施す。例えば、生地30の第1面30gに少なくとも1回の微起毛加工を施すとともに、生地30の第2面30hに複数回の微起毛加工を施す。
【0049】
すなわち、第1面30gには研磨紙が巻かれたローラを当てて当該ローラを転動させる操作を1回行い、第2面30hには研磨紙が巻かれたローラを当てて当該ローラを転動させる操作を複数回行う。このように、生地30に研磨紙が巻かれたローラを当てて当該ローラを転動させることによって微起毛加工が行われる。
【0050】
第2面30hに施す微起毛加工の回数は、第1面30gに施す微起毛加工の回数よりも多い。例えば、第1面30gに施す微起毛加工の回数は1回であり、第2面30hに施す微起毛加工の回数は2回以上かつ5回以下(一例として5回)である。この場合、第1面30gの肌触りを良好にできるとともに、第2面30hの摩擦係数を第1面30gよりも高めて第2面30hにおける滑りをより確実に抑制できる。また、第2面30hに施す微起毛加工の回数が5回以下であることにより、生地30が薄手生地であっても第2面30hが傷むことをより確実に抑制できる。
【0051】
以上のように生地30に対する起毛加工が終わった後には、生地30を染色する(生地を染色する工程)。その後、生地30がTC素材によって構成されている場合には、生地30の洗浄および乾燥を行う。TC素材では顔料染色が行われるために生地30の洗浄および乾燥が行われる。
【0052】
そして、生地30に樹脂加工を施す(生地に樹脂加工を施す工程、ステップS3)。このとき、生地30の起毛加工を施した面に樹脂26を付着させる。例えば図6に示されるように、樹脂加工では、生地30を搬送し、樹脂26が収容された凹部3に搬送した生地30を入れて生地30の起毛加工が施された面に樹脂26を付着させる。例えば、凹部3は水槽であってもよい。一例として、凹部3の容積は200kL(キロリットル)である。
【0053】
樹脂加工では、ずぶ染めによって生地30に樹脂26を付着させてもよい。この場合、凹部3に貯留された液状の樹脂26の中に生地30を浸漬させることによって生地30に樹脂26を付着させる。また、樹脂加工では、ディッピングによって生地30に樹脂26を付着させてもよい。この場合もずぶ染めと同様、凹部3に貯留された液状の樹脂26の中に生地30が漬けられる。
【0054】
上記のように、例えば、液状の樹脂26に生地30を浸漬させることによって第1面30gおよび第2面30hの双方に樹脂加工を施す。生地30が液状の樹脂26に漬けられる時間は、例えば、1秒以上かつ10秒以下である。しかしながら、生地30が液状の樹脂26に漬けられる時間は、適宜変更可能である。例えば、生地30は、樹脂26に浸漬された状態で凹部3の内部を移動し、樹脂26に浸漬してから所定時間経過後に凹部3の外に出て搬送される。一例として、生地30の移動速度は約60m/分である。上記の所定時間は、例えば、1秒以上かつ10秒以下である。
【0055】
以上のように樹脂加工が施された生地30は、テンターに搬送される。テンターにおいて、生地30は引っ張られて加熱され、これにより生地30を乾燥させる(生地を乾燥させる工程)。その後、生地30の裁断が行われて2枚の生地20(生地21および生地22)が得られる。
【0056】
2枚の生地20を得た後には、図2および図3に示されるように、第3方向D3に並ぶように生地22に生地21を重ねる(2枚の生地を重ねる工程)。このとき、第1辺22bの上に第1辺21bが位置し、第2辺22cの上に第2辺21cが位置し、第3辺22dの上に第3辺21dが位置し、かつ、第4辺22fの上に第4辺21fが位置するように、生地22の上に生地21を配置する。
【0057】
そして、第3方向D3に重ねられた生地21および生地22の外縁同士(例えば、周縁部21jの一部、および周縁部22jの一部)を縫い合わせることによって寝具カバー10を製造する(寝具カバーを製造する工程、ステップS5)。このとき、2枚の生地20のそれぞれにファスナー24を縫い付ける(ファスナーを縫い付ける工程、ステップS4)。なお、ファスナー24の縫い付けは、2枚の生地20を重ねる前に行われてもよい。
【0058】
例えば、生地21および生地22における互いに対向する第1辺21b,22b、第2辺21c,22c、第3辺21d,22dおよび第4辺21f,22fの少なくとも2辺に、互いに着脱されるファスナー24が縫いつけられる。本実施形態では、生地21および生地22における互いに対向する第1辺21b,22bおよび第3辺21d、22dにファスナー24が縫い付けられる。これにより、第3方向D3から見た場合において、生地21の第2方向D2の一端部および他端部、ならびに、生地22の第2方向D2の一端部および他端部のそれぞれに、第1方向D1に延びるファスナー24が縫い付けられる。
【0059】
ファスナー24を縫い付けた後には、2枚の生地20における互いに対向する第1辺21b,22b、第2辺21c,22c、第3辺21d,22dおよび第4辺21f,22fのうちファスナー24が縫い付けられていない辺同士を縫い合わせる(ファスナーが縫い付けられていない辺同士を縫い合わせる工程)。本実施形態では、生地21および生地22における互いに対向する第2辺21c,22c同士および第4辺21f,22f同士が縫い合わされる。以上の工程を経て寝具カバー10が完成する。
【0060】
次に、本実施形態に係る繊維製品の製造方法から得られる作用効果について説明する。この繊維製品の製造方法では、人に直接または間接的に接触する繊維製品である寝具カバー10が製造される。この製造方法では、生地30の第1面30gおよび第2面30hの少なくともいずれかに起毛加工が施される。起毛加工によって第1面30gおよび第2面30hの少なくともいずれかを毛羽立たせることができるので、生地30を滑りにくくすることができる。
【0061】
より具体的には、生地30では、生地30の面内方向(第1面30gまたは第2面30hに沿った方向)への摩擦力が高められているので、当該面内方向への寝具本体2のずれを抑制できる。一方、生地30の面外方向(第1面30gまたは第2面30hに交差する方向)へは寝具本体2を容易に離脱させることができる。さらに、本実施形態に係る繊維製品である寝具カバー10では、寝具カバー10の外面である第1面20gよりも内面である第2面20hの摩擦力が高められているので、寝具カバー10の内部における寝具本体2をずれを抑制できるとともにチー等の固定手段を不要とすることができる。その結果、寝具カバー10に対する寝具本体2の出し入れを容易に行うことができる。
【0062】
さらに、生地30の起毛加工が施された面(例えば第1面30gおよび第2面30h)には樹脂加工によって樹脂26が付着する。生地30の毛羽立った面に樹脂26が付着することにより、樹脂26を滑りにくくするとともに肌触りを良好にすることができる。したがって、滑りを抑制するとともに触感を良好にすることができる。さらに、この繊維製品の製造方法では、滑り止めのための他の布等を生地30に縫製する必要がない。したがって、他の布および縫製のコストを抑えることができる。
【0063】
本実施形態において、起毛加工を施す工程では、第1面30gおよび第2面30hの双方に起毛加工を施してもよく、生地30に樹脂加工を施す工程では、液状の樹脂26に生地30を浸漬させることによって第1面30gおよび第2面30hの双方に樹脂加工を施す。この場合、生地30の両面に起毛加工を施し、かつ生地30の両面に樹脂加工を施すので、生地30の両面において滑りを抑制するとともに触感を良好にできる。さらに、液状の樹脂26に生地30を浸漬させることにより、生地30に対する樹脂加工を容易に行うことができる。よって、樹脂26を付着させる作業のコストを抑えることができる。
【0064】
本実施形態において、起毛加工を施す工程では、生地30の第1面30gおよび第2面30hの少なくともいずれかに微起毛加工を施す。この場合、生地30の第1面30gおよび第2面30hの少なくともいずれかに微起毛加工が施されることにより、第1面30gおよび第2面30hの少なくともいずれかを滑りにくくするとともに微起毛によって肌触りを良好にすることができる。
【0065】
本実施形態において、起毛加工を施す工程では、生地30の第1面30gに少なくとも1回の微起毛加工を施すとともに、生地30の第2面30hに複数回の微起毛加工を施し、第2面30hに施す微起毛加工の回数が第1面30gに施す微起毛加工の回数よりも多い。この場合、生地30の第1面30gおよび第2面30hの両方に微起毛加工を施すことにより、第1面30gおよび第2面30hの両方を滑りにくくするとともに肌触りを良好にすることができる。さらに、第2面30hに施す微起毛加工の回数が第1面30gに施す微起毛加工の回数より多いことにより、第2面30hを第1面30gより滑りにくくできるとともに第1面30gの肌触りを一層良好にできる。このように、寝具カバー10において、より滑りにくい面、およびより肌触りが良い面の両方を形成できる。
【0066】
本実施形態において、繊維製品は、寝具カバー10である。本実施形態に係る繊維製品の製造方法は、起毛加工を施す工程、および樹脂加工を施す工程を実行した後に、第1方向D1および第2方向D2の双方に交差する第3方向D3に並ぶように2枚の生地20を重ねる工程と、第3方向D3に重ねられた2枚の生地20の外縁同士を縫い合わせることによって寝具カバー10を製造する工程と、を備える。この場合、滑りにくいとともに肌触りが良好な2枚の生地20から寝具カバー10を製造できる。したがって、寝具カバー10の内部の寝具本体2を滑りにくくできるとともに、人に対する触感が良好な寝具カバー10とすることができる。
【0067】
本実施形態において、第3方向D3から見たときに、2枚の生地20は長方形状を呈する。2枚の生地20は、第3方向D3に互いに重なる第1辺21b,22b、第2辺21c,22c、第3辺21d,22dおよび第4辺21f,22fを有する。寝具カバー10を製造する工程は、2枚の生地20における互いに対向する第1辺21b,22b、第2辺21c,22c、第3辺21d,22dおよび第4辺21f,22fの少なくとも2辺に、互いに着脱されるファスナー24を縫い付ける工程と、2枚の生地20における互いに対向する第1辺21b,22b、第2辺21c,22c、第3辺21d,22dおよび第4辺21f,22fのうちファスナー24が縫い付けられていない辺同士を縫い合わせる工程と、を含む。
【0068】
本実施形態では、生地20の長辺を構成する第1辺21b,22bおよび第3辺21d,22dにファスナー24が縫い付けられ、生地20の短辺を構成する第2辺21c,22c同士および第4辺21f,22f同士が縫い合わされる。この場合、図7(a)および図7(b)に示されるように、生地20の長辺に沿って互いに平行に延びる2本のファスナー24によって寝具本体2に対する寝具カバー10の着脱を容易に行うことができる。
【0069】
生地20の長辺に沿って互いに平行に延びる2本のファスナー24を有する寝具カバー10では、図7(a)に示されるように、2本のファスナー24を開いた状態で寝具カバー10に第2方向D2に貫通する穴11を形成できる。この穴11に寝具本体2を第2方向D2に通すことにより、寝具本体2に対する寝具カバー10の着脱を容易に行うことができる。
【0070】
より具体的には、図7(a)および図7(b)に示されるように、2本のファスナー24を開いた状態として穴11に寝具本体2を通し、穴11に寝具本体2を通した状態で生地21および生地22を広げて2本のファスナー24を閉じることにより、寝具本体2を寝具カバー10の内部に容易に収容できる。
【0071】
また、寝具本体2から寝具カバー10を外すときには、2本のファスナー24を開けて生地20の第1辺21b,22bおよび第3辺21d,22dを寝具本体2の第2方向D2の中央に寄せて、図7(b)に示される状態とする。この状態で寝具カバー10から寝具本体2を引き抜くことによって容易に寝具カバー10を寝具本体2から外すことができる。以上のように、寝具カバー10では、寝具本体2に対向する第2面20h(第2面21hおよび第2面22h)の摩擦係数を高めて寝具カバー10の内部における寝具本体2の滑りを抑制できるとともに、寝具本体2に対する着脱を容易に行うことができる。
【0072】
なお、ファスナー24の配置は、上記の例に限定されない。例えば、寝具カバー10を製造する工程において、2枚の生地20における互いに対向する第1辺21b,22b、第2辺21c,22c、第3辺21d,22dおよび第4辺21f,22fの少なくとも2辺に、互いに着脱されるファスナー24が縫い付けられてもよい。そして、2枚の生地20における互いに対向する第1辺21b,22b、第2辺21c,22c,第3辺21d,22dおよび第4辺21f,22fのうちファスナー24が縫い付けられていない辺同士を縫い合わせてもよい。
【0073】
この場合、2枚の生地20の少なくとも2辺に、2枚の生地20が互いに着脱されるファスナー24が縫い付けられた寝具カバー10が製造される。したがって、2枚の生地20に、一対の長辺に縫い込まれたファスナー24、一対の短辺に縫い込まれたファスナー24、またはL字ファスナーが形成された寝具カバーが製造される。その結果、ファスナー24の着脱によって、寝具カバー10に対する寝具本体2の出し入れを容易に行うことができる。
【0074】
さらに、2枚の生地20の3辺以上に、2枚の生地20が互いに着脱されるファスナー24が縫い付けられてもよく、この場合、2枚の生地20からコの字ファスナーまたはロの字ファスナーが形成された寝具カバーが製造される。このように、寝具カバーは、互いに平行に延びるファスナーを有してもよいし、L字ファスナーを有してもよいし、コの字ファスナーを有してもよいし、ロの字ファスナーを有してもよい。例えば、寝具カバーがコの字ファスナーを有する場合、両面ファスナーのようにすぼめる必要がなく、寝具カバーをめくるだけで寝具本体を出し入れできるので、寝具カバーに対する寝具本体の出し入れを一層容易に行うことができる。
【0075】
次に、本実施形態に係る生地20に対して行った実験について説明する。以下では、生地20に対して行った摩擦係数測定試験について説明する。摩擦係数測定試験は、JIS K 7125(プラスチック-フィルムおよびシート摩擦係数試験方法)に準拠して行った。摩擦係数測定試験は、生地20と、本実施形態に係る起毛加工および樹脂加工を施していない比較例に係る生地に対して行った。摩擦係数測定試験では、ポリエステル製の生地20を用い、比較例に係る生地もポリエステル製とした。
【0076】
摩擦係数測定試験は、温度20℃、湿度65%RHの環境下で生地20および比較例に係る生地の上に接触面積40cm2、質量200gfの摩擦子を置き、この摩擦子を移動させたときの生地20および比較例に係る生地の静摩擦係数および動摩擦係数をロードセルによって測定した。その結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0077】
表1において、「たて」は生地の長手方向に沿って摩擦子を移動させたときの摩擦係数を示しており、「よこ」は生地の短手方向に沿って摩擦子を移動させたときの摩擦係数を示している。「実施例」は生地20の摩擦係数を示しており、「比較例」は比較例に係る生地の摩擦係数を示している。表1に示されるように、生地20では、比較例に係る生地よりも静摩擦係数および動摩擦係数の双方を高められていることが分かる。
【表2】
【0078】
表2は、生地20に対し、洗濯を10回行った後、および洗濯を20回行った後、のそれぞれに測定した摩擦係数の結果を示している。起毛加工および樹脂加工を施した生地20では、洗濯を10回行った後、および洗濯を20回行った後でも、高い静摩擦係数、および高い動摩擦係数を維持できることが分かった。洗濯を20回行った後でも樹脂26がほとんど落ちていないことが分かった。
【0079】
以上、繊維製品の製造方法の実施形態について説明した。次に、実施形態に係る寝具カバーを変形例として説明する。後述する種々の変形例に係る寝具カバーの一部の構成は、前述した寝具カバー10の一部の構成と同一である。よって、以下では、寝具カバー10の構成と同一の構成については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0080】
図8は、第1変形例に係る寝具カバー10Aを上方から見た斜視図である。寝具カバー10Aは、一対のファスナー24を有することに代えて、一つのファスナー24およびスリット28を有する点において、寝具カバー10と相違する。寝具カバー10Aは、生地21と、生地22(別生地)と、ファスナー24とを備える。生地22は、生地21に第3方向D3に重ね合わされている。第1辺21b(第2長辺)および第1辺22b(第2長辺)と、第2辺21c(短辺)および第2辺22c(短辺)と、第4辺21f(短辺)および第4辺22f(短辺)とでは、生地21と生地22とが縫い合わされている。
【0081】
ファスナー24は、寝具カバー10Aの長辺に縫い付けられている。より詳細には、ファスナー24は、生地21および生地22における互いに対向する第3辺21d(第1長辺)および第3辺22d(第1長辺)に縫い付けられている。
【0082】
生地21は、第1辺21b、第2辺21c、第3辺21dおよび第4辺21fによって形成される枠状部のうち、第3辺21dを除く部分である周縁部21rを有する。生地22は、第1辺22b、第2辺22c、第3辺22dおよび第4辺22fによって形成される枠状部のうち、第3辺22dを除く部分である周縁部22rを有する。寝具カバー10Aは、縫製部27とスリット28とを有する。縫製部27は、周縁部21rおよび周縁部22rにおいて生地21および生地22が互いに縫い合わされている部分である。スリット28は、周縁部21rおよび周縁部22rにおいて生地21および生地22が互いに縫い合わされていない部分である。寝具カバー10Aは、一対のスリット28を有する。一対のスリット28は、第1辺21b(第2長辺)および第1辺22b(第2長辺)に設けられている。
【0083】
一対のスリット28は、第1辺21bの中点21k、および第1辺22bの中点22kを挟む位置に設けられている。中点21kは、第1辺21bが第2辺21cと交わる隅部21m、および第1辺21bが第4辺21fと交わる隅部21nの中点である。中点22kは、第1辺22bが第2辺22cと交わる隅部22m、および第1辺22bが第4辺22fと交わる隅部22nの中点である。隅部21m,21n,22m,22nは、第3方向D3から見たときの生地21および生地22の角部である。一対のスリット28の一方は中点21k,22kと隅部21m,22mとの間に位置しており、一対のスリット28の他方は中点21k,22kと隅部21n,22nとの間に位置している。
【0084】
スリット28は、生地21と生地22とによって画成された開口である。スリット28は、第1方向D1に延びている。スリット28を介して、生地21と生地22の間に位置する寝具カバー10Aの内部空間に寝具カバー10Aの外部からアクセス可能である。「アクセス可能」とは、寝具カバーの外部から寝具カバーの内部に手を入れることによって、寝具カバーの内部の物を手で触ることが可能であることを示している。
【0085】
スリット28は、手を入れることが可能な寝具カバー10Aの開口部である。スリット28は、寝具カバー10Aの内部に手を入れて寝具カバー10Aの内部に位置する寝具本体2を手で引っ張れるようにするために設けられている。スリット28には、手の全体が入れられてもよいし、手の一部が入れられてもよい。スリット28の長さ(スリット28の第1方向D1の長さ)は、スリット28に手の少なくとも一部を入れることが可能な長さとされている。
【0086】
スリット28の第1方向D1の長さは、一例として、150mmである。スリット28の第1方向D1の長さは、50mm以上かつ300mm以下であってもよい。スリット28は、中点21k側に位置する内側端部28aと、内側端部28aとは反対側に位置する外側端部28bとを有する。内側端部28aは、中点21kから離隔している。縫製部27は、一対のスリット28の一方の内側端部28aから他方の内側端部28aまで延在している第1縫製部27aを含む。中点21kから内側端部28aまでの距離は、一例として、400mm以上かつ990mm以下である。すなわち、一対のスリット28の内側端部28a同士の距離(第1縫製部27aの長さ)は、一例として、800mm以上かつ1980mm以下である。
【0087】
第2辺21c側に位置するスリット28の外側端部28bは、隅部21mから離隔している。縫製部27は、隅部21mから外側端部28bまで延在している第2縫製部27bを含む。第2縫製部27bは、第1辺21bに沿って延在している。外側端部28bから隅部21mまでの距離(第2縫製部27bの長さ)は、一例として、40mmである。第2縫製部27bの長さは、10mm以上かつ500mm以下であってもよい。
【0088】
第4辺21f側に位置するスリット28の外側端部28bは、隅部21nから離隔している。縫製部27は、隅部21nから外側端部28bまで延在している第3縫製部27cを含む。第3縫製部27cは、第1辺21bに沿って延在している。外側端部28bから隅部21nまでの距離(第3縫製部27cの長さ)は、一例として、40mmである。第3縫製部27cの長さは、10mm以上かつ500mm以下であってもよい。
【0089】
次に、寝具カバー10Aの製造方法の例について図9のフローチャートを参照しながら説明する。図9は、寝具カバー10Aの製造方法の工程の例を示すフローチャートである。上述の寝具カバー10の製造方法の例と同様に、生地21および生地22の基となる原反である生地30(図6参照)を用意し(生地を用意する工程、ステップS1)、生地30に起毛加工を施す(起毛加工を施す工程、ステップS2)。そして、生地30を染色し(生地を染色する工程)、生地30に樹脂加工を施し(生地に樹脂加工を施す工程、ステップS3)、生地30を乾燥させる(生地を乾燥させる工程)。その後、生地30の裁断が行われて2枚の生地20(生地21および生地22)が得られる。
【0090】
2枚の生地20を得た後には、図8に示されるように、第3方向D3に並ぶように生地22に生地21を重ねる(2枚の生地を重ねる工程)。このとき、第1辺22bの上に第1辺21bが位置し、第2辺22cの上に第2辺21cが位置し、第3辺22dの上に第3辺21dが位置し、かつ、第4辺22fの上に第4辺21fが位置するように、生地22の上に生地21を配置する。
【0091】
そして、第3方向D3に重ねられた2枚の生地20のそれぞれにファスナー24を縫い付ける(ファスナーを縫い付ける工程、ステップS6)。なお、ファスナー24の縫い付けは、2枚の生地20を重ねる前に行われてもよい。例えば、生地21および生地22における互いに対向する第3辺21d,22dに、互いに着脱されるファスナー24が縫い付けられる。
【0092】
ファスナー24を縫い付けた後には、スリット28を形成する予定の位置を除いて生地21および生地22の外縁同士(例えば、周縁部21rの一部、および周縁部22rの一部)を縫い合わせることによって寝具カバー10Aを製造する(寝具カバーを製造する工程、ステップS7)。
【0093】
例えば、2枚の生地20における互いに対向する第1辺21b,22b、第2辺21c,22c、第3辺21d,22dおよび第4辺21f,22fのうちファスナー24が縫い付けられていない辺同士を部分的に縫い合わせる(ファスナーが縫い付けられていない辺同士を縫い合わせる工程)。本実施形態では、生地21および生地22における互いに対向する第1辺21b,22b同士、第2辺21c,22c同士および第4辺21f,22f同士が部分的に縫い合わされる。
【0094】
より詳細には、第2辺21c,22c同士は、第2辺21c,22cの一端から他端まで縫い合わされる。同様に、第4辺21f,22f同士は、第4辺21f,22fの一端から他端まで縫い合わされる。一方、第1辺21b,22b同士は、第1辺21b,22bの一端である隅部21mから他端である隅部21nまでのうちの一部が縫い合わされる。第1辺21b,22b同士は、隅部21mから隅部21nに向かって、第2縫製部27b、スリット28、第1縫製部27a、スリット28および第2縫製部27bがこの順に並ぶように、縫い合わされる。以上の工程を経て寝具カバー10Aが完成する。なお、寝具カバーを製造する工程(ステップS7)は、ファスナーを縫い付ける工程(ステップS6)と同時に実行されてもよい。
【0095】
次に、寝具カバー10A、および寝具カバー10Aの製造方法から得られる作用効果について説明する。寝具カバー10Aの製造方法では、滑りにくくかつ肌触りが良好な生地21,22から寝具カバー10Aを製造できる。生地21,22の内面である第2面21h,22h(図3参照)に対して寝具本体2を滑りにくくできるので、寝具カバー10Aの内部における寝具本体2の位置がずれることを抑制できる。生地21,22の外面である第1面21g,22gを肌面に当てることによって、人に対する触感が良好な寝具カバーとすることができる。
【0096】
寝具カバー10Aでは、第3辺21d,22d(第1長辺)にファスナー24が設けられているので、ファスナー24を開くことで寝具カバー10Aの内部を外部に連通させる開口が形成される。当該開口を介して、寝具本体2を寝具カバー10Aの内部に収容することができる。そして、収容された寝具本体2が第3辺21d,22d(第1長辺)寄りに位置しているときに、使用者はスリット28から寝具カバー10Aの内部に手を入れて、寝具本体2が第1辺21b,22b(第2長辺)に近づくように寝具本体2を引き込むことができる。これにより、寝具カバー10Aの内部の適切な位置に寝具本体2を効率よく引き込むことができる。
【0097】
第1辺21b,22bには一対のスリット28が設けられており、一対のスリット28は、第1辺21b,22bの中点21k,22kを挟む位置に設けられている。複数のスリット28が設けられているので、複数のスリット28のそれぞれから寝具カバー10Aの内部に手を入れることにより、寝具本体2の引き込みをより効率よく行うことができる。第1辺21b,22b(第2長辺)の両端に位置する寝具本体2の2つの隅部の近くに一対のスリット28のそれぞれが位置する。よって、使用者は一方のスリット28から寝具カバー10Aの内部に手を入れて、寝具本体2の一方の隅部を掴んで寝具本体2を引き込むことができる。また、使用者は他方のスリット28から寝具カバー10Aの内部に手を入れて、寝具本体2の他方の隅部を掴んで寝具本体2を引き込むことができる。これにより、寝具カバー10Aの内部への寝具本体2の配置を一層効率よく行うことができる。
【0098】
寝具カバー10Aは、第3方向D3から見たときの生地21,22の隅部21m,22mからスリット28まで、第1辺21b,22bに沿って延在する第2縫製部27bと、隅部21n,22nからスリット28まで、第1辺21b,22bに沿って延在する第3縫製部27cとを有する。この場合、第1辺21b,22bの両端に第2縫製部27bおよび第3縫製部27cが設けられており、スリット28は第1辺21b,22bの両端には達していない。よって、寝具本体2の隅部が寝具カバーの隅部21m,21n,22m,22nから外部に露出することを抑制できる。
【0099】
次に、図10(a)を参照しながら第2変形例に係る寝具カバー10Bを詳細に説明する。図10(a)は、寝具カバー10Bを上方から見た斜視図である。寝具カバー10Bは、一対のスリット28を有することに代えて、一つのスリット42を有する点において、寝具カバー10Aと相違する。
【0100】
寝具カバー10Bは、周縁部21rおよび周縁部22rに位置している縫製部41およびスリット42を有する。スリット42は、第1辺21b,22b(第2長辺)に設けられている。スリット42は、中点21k,22kと重なる位置に設けられている。スリット42の第1方向D1の長さは、一例として、300mmである。スリット42の第1方向D1の長さは、150mm以上かつ500mm以下であってもよい。
【0101】
スリット42は、隅部21m,22m側に位置する第1端部42aと、第1端部42aとは反対側に位置する第2端部42bとを含む。第1端部42aと第2端部42bとの間には、中点21k,22kが位置している。第1端部42aは、隅部21m,22mから離隔している。第2端部42bは、隅部21n,22nから離隔している。縫製部41は、隅部21m,22mから第1端部42aまで延在している第1縫製部41aと、隅部21n,22nから第2端部42bまで延在している第2縫製部41bと、を含む。第1端部42aから隅部21m,22mまでの距離(第1縫製部41aの長さ)は、一例として、900mmである。第1縫製部41aの長さは、600mm以上かつ1000mm以下であってもよい。第2端部42bから隅部21n,22nまでの距離(第2縫製部41bの長さ)は、一例として、900mmである。第2縫製部41bの長さは、600mm以上かつ1000mm以下であってもよい。
【0102】
次に、寝具カバー10Bから得られる作用効果について説明する。スリット42は、第1辺21b,22b(第2長辺)の中点21k,22kと重なる位置に設けられている。使用者は中点21k,22kと重なる位置に設けられたスリット42から寝具カバー10Bの内部に手を入れることにより、寝具本体2を第1方向D1の中央部分から引き込むことができる。前述したように、スリット42の第1方向D1の長さが150mm以上且つ500mm以下である場合、スリット42を介して寝具本体2の隅部の近傍を掴むことができる一方で、スリット42を介して寝具本体2が寝具カバー10Bの外部に露出することを抑制できる。
【0103】
次に、図10(b)を参照しながら第3変形例に係る寝具カバー10Cを詳細に説明する。図10(b)は、寝具カバー10Cを上方から見た斜視図である。寝具カバー10Cは、一対のスリット28を有することに代えて、寝具カバー10Cの一対の短辺のそれぞれに位置する一対のスリットを有する点において、寝具カバー10Aと相違する。
【0104】
寝具カバー10Cは、周縁部21rおよび周縁部22rに位置している縫製部43、第1スリット44および第2スリット45を有する。第1スリット44は、第2辺21c,22c(短辺)に設けられている。第2スリット45は、第4辺21f,22f(短辺)に設けられている。
【0105】
第1スリット44は、第2辺21c,22cに沿って延びている。第1スリット44の第2方向D2の長さは、一例として、150mmである。第1スリット44の第2方向D2の長さは、50mm以上かつ200mm以下であってもよい。第2スリット45は、第4辺21f,22fに沿って延びている。第2スリット45の第2方向D2の長さは、一例として、150mmである。第2スリット45の第2方向D2の長さは、50mm以上かつ200mm以下であってもよい。第1スリット44の第2方向D2の長さは、例えば、第2スリット45の第2方向D2の長さと等しい。しかしながら、第1スリット44の第2方向D2の長さは、第2スリット45の第2方向D2の長さより長くてもよく、短くてもよい。
【0106】
第1スリット44は、隅部21m,22m側に位置する第1端部44aと、反対側に位置する第2端部44bとを含む。第1端部44aは、隅部21m,22mから離隔している。第2端部44bは、隅部21p,22pから離隔している。隅部21pは、第2辺21cが第3辺21dと交わる部分である。隅部22pは、第2辺22cが第3辺22dと交わる部分である。縫製部43は、隅部21m,22mから第1端部44aまで延在している第1縫製部43aと、隅部21p,22pから第2端部44bまで延在している第2縫製部43bと、を含む。
【0107】
第1スリット44から第1辺21b,22bまでの距離は、第1スリット44から第3辺21d,22dまでの距離より短い。すなわち、第1スリット44は、第2辺21c,22cの中点よりも第1辺21b,22b寄りの位置に配置されている。第1スリット44は、第2辺21c,22cの中点と重ならない位置に設けられている。第1端部44aから隅部21m,22mまでの距離(第1縫製部43aの長さ)は、一例として、10mm以上かつ200mm以下である。第2端部44bから隅部21p,22pまでの距離(第2縫製部43bの長さ)は、一例として、750mm以上かつ1100mm以下である。
【0108】
第2スリット45は、隅部21n,22n側に位置する第3端部45aと、第3端部45aとは反対側に位置する第4端部45bとを含む。第3端部45aは、隅部21n,22nから離隔している。第4端部45bは、隅部21q,22qから離隔している。隅部21qは、第3辺21dが第4辺21fと交わる部分である。隅部22qは、第3辺22dが第4辺22fと交わる部分である。縫製部43は、隅部21n,22nから第3端部45aまで延在している第3縫製部43cと、隅部21q,22qから第4端部45bまで延在している第4縫製部43dと、を含む。
【0109】
第2スリット45から第1辺21b,22bまでの距離は、第2スリット45から第3辺21d,22dまでの距離より短い。すなわち、第2スリット45は、第4辺21f,22fの中点よりも第1辺21b,22b寄りの位置に配置されている。第2スリット45は、第4辺21f,22fの中点と重ならない位置に設けられている。第3端部45aから隅部21n,22nまでの距離(第3縫製部43cの長さ)は、一例として、10mm以上かつ200mm以下である。第4端部45bから隅部21q,22qまでの距離(第4縫製部43dの長さ)は、一例として、750mm以上かつ1100mm以下である。
【0110】
次に、寝具カバー10Cから得られる作用効果について説明する。寝具カバー10Cでは、寝具カバー10Cに収容された寝具本体2が第3辺21d,22d(第1長辺)寄りに位置しているときに、使用者は第1スリット44および第2スリット45のそれぞれから寝具カバー10Cの内部に手を入れて、寝具本体2が第1辺21b,22b(第2長辺)に近づくように寝具本体2を引き込むことができる。これにより、寝具カバー10Aの内部の適切な位置に寝具本体2を効率よく引き込むことができる。
【0111】
例えば、第1スリット44は、第2辺21c,22cの中点と重ならない位置に設けられており、第2スリット45は、第4辺21f,22fの中点と重ならない位置に設けられている。よって、使用者が寝具本体2を収容した寝具カバー10Cを使用したときに、使用者の頭側に第2辺21c,22cおよび第4辺21f,22fのいずれが位置しても、第1スリット44および第2スリット45の位置を使用者の首の位置からずらすことができる。そのため、第1スリット44および第2スリット45が使用者の首に接触することにより使用者が不快感を得ることを抑制できる。
【0112】
次に、図11を参照しながら第4変形例に係る寝具カバー10Dを詳細に説明する。図11は、寝具カバー10Dを使用者が使用している状態を模式的に示す側面図である。寝具カバー10Dは、生地22を有することに代えて、生地46(別生地)を有する点において、寝具カバー10Aと相違する。生地46は、起毛加工および樹脂加工がされていない通常の生地である点において生地22と相違する。生地46の素材は、例えば、布帛織物およびニット編み物である。布帛織物は、例えば、サテン、ブロードおよびツイル等である。ニット編み物は、例えば、天竺、スムースおよびトリコット等である。例えば、滑りにくい生地21と通常の生地46とを識別するために、生地21の色彩が生地46の色彩と異なっていてもよいし、生地21に標示が付されていてもよいし、生地21の模様が生地46の模様と異なっていてもよい。
【0113】
使用者は、使用者に滑りにくい生地21が接触し、使用者に通常の生地46が接触しない向きで寝具カバー10Dを使用することで、使用者に対して寝具カバー10Dを滑りにくくすることができる。また、起毛加工および樹脂加工がされていない通常の生地46を用いて寝具カバー10Dを製造することで、製造時に用いる起毛加工および樹脂加工がされた生地の量を減らすことできるので、製造コストの低減に寄与する。
【0114】
次に、寝具カバー10Dの製造方法の例について説明する。寝具カバー10Dの製造方法では、乾燥させた生地30(図6参照)の裁断を行って1枚の生地20(生地21)を得るとともに、起毛加工および樹脂加工を施していない生地の裁断を行って1枚の生地46を得る。1枚の生地21および1枚の生地46を得た後には、寝具カバー10Aの製造方法の例と同様の工程を実行することで、寝具カバー10Dが完成する。例えば、寝具カバー10Dのスリットの位置は、寝具カバー10Aのスリット28の位置と同一である。しかしながら、寝具カバー10Dのスリットの位置は、寝具カバー10Bのスリット42の位置と同一であってもよいし、寝具カバー10Cの第1スリット44および第2スリット45の位置と同一であってもよい。
【0115】
以上、本開示に係る繊維製品の製造方法および寝具カバーの実施形態および種々の変形例について説明した。しかしながら、本開示に係る繊維製品の製造方法および寝具カバーは、前述した実施形態または変形例の内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内においてさらに変形されたものであってもよい。すなわち、本開示に係る繊維製品の製造方法の工程の内容および順序、並びに、繊維製品および寝具カバーの形状、大きさ、材料、数および配置態様は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0116】
例えば、前述した実施形態では、凹部3に収容された液状の樹脂26に生地30を浸漬させることによって生地30に樹脂26を付着させる例について説明した。しかしながら、生地30に樹脂26を付着させる方法は、上記の例に限られない。例えば、生地30に樹脂26を噴霧することによって生地30に樹脂26を付着させてもよい。
【0117】
前述した実施形態では、生地30の第1面30gおよび第2面30hの両方に起毛加工および樹脂加工を施す例について説明した。しかしながら、第1面30gおよび第2面30hの少なくともいずれかに起毛加工および樹脂加工が施されればよく、第1面30gおよび第2面30hのいずれかのみに起毛加工および樹脂加工が施されてもよい。
【0118】
前述した実施形態では、研磨紙が巻かれたローラを生地30上で転動させることによって生地30を毛羽立たせる微起毛加工を施す例について説明した。しかしながら、生地30の種類によっては、生地30に通常の起毛加工を施してもよい。例えば、表面に複数の針が突出するローラを備える針布起毛機に生地30を通し、針布起毛機のローラの表面に生地30を当てることによって生地30に起毛加工を施してもよい。
【0119】
前述した実施形態では、繊維製品が寝具カバー10である例について説明した。しかしながら、繊維製品は、寝具カバーに限られない。例えば、繊維製品は、布団または枕等、寝具そのものであってもよいし、クッション、座布団、シートまたは衣類であってもよい。例えば、寝具カバーは、枕カバーであってもよい。この場合、枕の表面の肌触りを良好にできるとともに、枕カバーの内部における枕本体のずれを抑制できる。例えば、繊維製品は、衣類のポケットであってもよい。この場合、ポケットに生地20を用いることによって滑りにくいポケットとすることができる。このように、本開示は種々の繊維製品に適用させることが可能である。
【0120】
寝具カバーが有するスリットの位置は、前述した第1変形例~第3変形例に係る寝具カバー10A,10B,10Cのスリット28,42、第1スリット44および第2スリット45の位置に限定されない。スリットは、第1辺21b,22b、第2辺21c,22cおよび第4辺21f,22fの少なくともいずれかに設けられていればよい。また、スリットの数は、1本以上であればよく、3本以上であってもよい。
【0121】
さらに、本開示に係る寝具カバーは、前述した起毛加工および樹脂加工が施されていない生地によって構成されていてもよい。例えば、寝具カバーは、以下のものであってもよい。
【0122】
生地と、前記生地に重ね合わされる別生地と、ファスナーとを備えた寝具カバーであって、
前記生地および前記別生地は、前記生地および前記別生地が重なる方向に沿って見たときに長方形状を呈し、
前記生地および前記別生地は、前記重なる方向に重なる第1長辺、第2長辺、および一対の短辺を有し、
前記ファスナーは、前記第1長辺に設けられており、
前記第2長辺および前記一対の短辺では、前記生地と前記別生地とが縫い合わされており、
前記寝具カバーは、前記第2長辺および前記一対の短辺の少なくともいずれかに設けられているとともに、前記生地および前記別生地によって画成されたスリットを有する、
寝具カバー。
【0123】
上記の寝具カバーでは、第1長辺にファスナーが設けられており、ファスナーを開くことで寝具カバーの内部を外部に連通させる開口が形成されるので、寝具本体を寝具カバーの内部に収容することができる。そして、収容された寝具本体が第1長辺寄りに位置しているときに、使用者はスリットから寝具カバーの内部に手を入れて、寝具本体が第2長辺に近づくように寝具本体を引き込むことができる。上記の寝具カバーからは、前述した寝具カバー10A,10B,10Cと同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0124】
1…寝具、2…寝具本体、3…凹部、10,10A,10B,10C,10D…寝具カバー、11…穴、20,21,22…生地、20g…第1面、20h…第2面、21b…第1辺、21c…第2辺、21d…第3辺、21f…第4辺、21g…第1面、21h…第2面、21j…周縁部、21k…中点、21m,21n,21p,21q…隅部、21r…周縁部、22b…第1辺、22c…第2辺、22d…第3辺、22f…第4辺、22g…第1面、22h…第2面、22j…周縁部、22k…中点、22m,22n,22p,22q…隅部、22r…周縁部、23…糸、24…ファスナー、25…毛、26…樹脂、27…縫製部、27a…第1縫製部、27b…第2縫製部、27c…第3縫製部、28…スリット、28a…内側端部、28b…外側端部、30…生地、30g…第1面、30h…第2面、41…縫製部、41a…第1縫製部、41b…第2縫製部、42…スリット、42a…第1端部、42b…第2端部、43…縫製部、43a…第1縫製部、43b…第2縫製部、43c…第3縫製部、43d…第4縫製部、44…第1スリット、44a…第1端部、44b…第2端部、45…第2スリット、45a…第3端部、45b…第4端部、46…生地、B…ベッド、C…敷き寝具、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11