(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005915
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】モータ動作機構ユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 5/00 20060101AFI20250109BHJP
F04B 23/00 20060101ALI20250109BHJP
F24H 9/06 20060101ALI20250109BHJP
F04B 53/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02K5/00 A
F04B23/00 Z
F24H9/06 301A
F04B53/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106349
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和晃
【テーマコード(参考)】
3H071
3L037
5H605
【Fターム(参考)】
3H071AA01
3H071BB01
3H071BB03
3H071CC21
3H071CC47
3H071DD89
3L037CA01
3L037CB02
3L037CB08
5H605AA04
5H605BB05
5H605CC03
5H605EA02
(57)【要約】
【課題】モータおよびその駆動対象物を含む動作機構部を支持する支持板が、所定の非通常時に下方へ大きく撓み変形することを防止し、かつ通常時に動作機構部の振動に起因する不具合を生じないモータ動作機構ユニットを提供する。
【解決手段】モータ30およびその駆動対象物31を含む動作機構部3、制御盤ユニット4、これらを収容する筐体1、この筐体1内に棚状に設けられ、かつ動作機構部3を支持する支持板2、および筐体1内に別途取付けられた制御盤ユニット4を備えている、モータ動作機構ユニットAであって、支持板2および制御盤ユニット4にそれぞれ設けられた第1および第2の係合可能部E1,E2を備え、これらは動作機構部3に突発的な荷重が作用して支持板2が通常位置よりも下方に撓み変形する現象が発生した非通常時には、支持板2が所定高さよりもさらに下降することを阻止するように互いに係合する一方、通常時には非係合状態にある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータおよびこのモータにより駆動される駆動対象物を含む動作機構部と、
この動作機構部を内部に収容する筐体と、
この筐体内の上下高さ方向途中箇所に棚状に設けられ、かつ前記動作機構部を支持する支持板と、
前記動作機構部の制御用電気部品を有しており、かつ前記筐体内のうち、前記動作機構部および前記支持板とは異なる箇所に取付けられた制御盤ユニットと、
を備えている、モータ動作機構ユニットであって、
前記支持板および前記制御盤ユニットにそれぞれ設けられた第1および第2の係合可能部を、さらに備えており、
これら第1および第2の係合可能部は、前記動作機構部に突発的な荷重が作用して前記支持板が通常位置よりも下方に撓み変形する現象が発生した非通常時には、前記支持板が所定高さよりもさらに下降することを阻止するように互いに係合する一方、前記現象が発生していない通常時においては、非係合状態にあることを特徴としている、モータ動作機構ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ動作機構ユニットであって、
前記第1および第2の係合可能部は、前記通常時においては、上下高さ方向に離間した配置で互いにオーバラップした部位であり、かつ前記非通常時においては、前記第1の係合可能部が前記支持板の下方への撓み変形に伴って下降して前記第2の係合可能部に当接し、前記第2の係合可能部によって支持されるように構成されている、モータ動作機構ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のモータ動作機構ユニットであって、
前記第1および第2の係合可能部の一方は、略水平方向を向いて開口する開口部の周縁部を含み、かつ他方は、略水平方向に延びて前記開口部に差し込まれた凸状部を含むとともに、前記開口部は、前記凸状部よりも上下幅または直径が大きくされており、
前記開口部の周縁部および前記凸状部は、前記通常時においては、互いに非接触の非係合状態にある一方、前記非通常時においては、互いに当接した係合状態となるように構成されている、モータ動作機構ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ動作機構ユニットであって、
前記凸状部は、前記支持板または前記制御盤ユニットに螺合装着されたネジ部材を用いて構成されている、モータ動作機構ユニット。
【請求項5】
請求項3に記載のモータ動作機構ユニットであって、
前記支持板は、前記支持板の縁部が上下高さ方向に起立するように屈曲された屈曲片部を具備しており、かつこの屈曲片部に、前記開口部が設けられている、モータ動作機構ユニット。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のモータ動作機構ユニットであって、
前記筐体は、左右一対の側板部、上板部、底板部、および背板部を有し、かつ前面パネルによって塞ぐことが可能な前面開口部を形成している中空略直方体状の筐体本体部を備えており、
前記支持板は、長手方向両端部が前記一対の側板部に連結されて前記一対の側板部の相互間に架け渡されているとともに、前記支持板の長手方向途中箇所の後寄り部は、前記背板部に連結されており、
前記制御盤ユニットは、前記制御用電気部品が取付けられるベース部材を有し、かつこのベース部材が前記支持板の長手方向途中箇所の前寄り部に接近するように、前記底板部
および前記一対の側板部のうちの少なくともいずれかの部位に固定されており、
前記支持板の前記前寄り部および前記制御盤ユニットの前記ベース部材に、前記第1および第2の係合可能部がそれぞれ設けられている、モータ動作機構ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプユニットなどのモータ動作機構ユニット、より詳しくは、モータおよびこのモータにより駆動される駆動対象物が筐体内に収容されているモータ動作機構ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、モータ動作機構ユニットの具体例として、特許文献1に記載のものを先に提案している。
同文献に記載のモータ動作機構ユニットは、モータおよびこのモータにより駆動されるポンプが筐体内に収容されたポンプユニットである。モータおよびポンプは、筐体の底板部上であって、筐体内の低位置に配されている。また、筐体内のうち、モータおよびポンプよりも上方の位置には、モータおよびポンプの駆動制御を行なうための制御盤ユニット(コントローラ)が取付けられている。
前記した構成によれば、重量の大きいモータおよびポンプを低い高さに設けているため、モータ動作機構ユニットを低重心として、全体の安定性をよくすることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、種々の理由により、筐体内におけるモータおよびポンプの取付け位置を、前記した位置よりも高くすることが要望される場合がある。この場合、たとえば筐体内の上下高さ方向の中間部(途中箇所)に、略水平な棚状の支持板を設け、かつこの支持板上にモータおよびポンプを載設する手段を採用することが考えられる。
ところが、このような手段が採用されたユニットにおいては、たとえば運搬作業時に不注意によって落下させてしまい衝撃を受けた際に、モータおよびポンプが載設されている支持板が下方へ大きく撓み変形する虞がある。支持板が大きく撓み変形すると、支持板が大きなダメージを受けるばかりか、モータやポンプもダメージを受け、これらが故障する可能性もでてくる。したがって、前記した虞を適切になくすことが望まれる。
【0005】
前記した虞をなくすための一手段としては、支持板の近傍に制御盤ユニットを配置し、この制御盤ユニットに支持板を連結させて支持させる手段が考えられる。ところが、このような手段を採用したのでは、モータおよびポンプの駆動時に発生する振動が制御盤ユニットに常時伝達する(モータおよびポンプは、振動発生源である)。その結果、たとえば制御盤ユニットの電気部品ビス止め箇所が前記振動に起因して緩むなど、新たな不具合を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、突発的な荷重が発生した所定の非通常時に、モータおよびその駆動対象物を含む動作機構部を支持する支持板が下方に大きく撓み変形することを適切に防止し得るとともに、通常時においては、動作機構部の振動に起因する不具合も生じないようにすることが可能なモータ動作機構ユニットを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供されるモータ動作機構ユニットは、モータおよびこのモータにより駆動される駆動対象物を含む動作機構部と、この動作機構部を内部に収容する筐体と、この筐体内の上下高さ方向途中箇所に棚状に設けられ、かつ前記動作機構部を支持する支持板と、前記動作機構部の制御用電気部品を有しており、かつ前記筐体内のうち、前記動作機構部および前記支持板とは異なる箇所に取付けられた制御盤ユニットと、を備えている、モータ動作機構ユニットであって、前記支持板および前記制御盤ユニットにそれぞれ設けられた第1および第2の係合可能部を、さらに備えており、これら第1および第2の係合可能部は、前記動作機構部に突発的な荷重が作用して前記支持板が通常位置よりも下方に撓み変形する現象が発生した非通常時には、前記支持板が所定高さよりもさらに下降することを阻止するように互いに係合する一方、前記現象が発生していない通常時においては、非係合状態にあることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、このモータ動作機構ユニットが運搬時に落下するなどし、モータおよびその駆動対象物を含む動作機構部に突発的な荷重が作用し、支持板が下方に撓み変形する現象が発生した際(非通常時)には、第1および第2の係合可能部が係合することにより、支持板が所定の高さよりも下降することは阻止される。このため、支持板が大きく下方に撓み変形することに起因して、支持板の他、動作機構部の構成部材などが破損、あるいは故障することを適切に防止することが可能である。
非通常時における支持板の下降阻止作用は、支持板および制御盤ユニットに設けられた第1および第2の係合可能部を利用して行なわれており、制御盤ユニットが有効活用されている。したがって、その構成は合理的であって、部品点数や全体重量の増加を効果的に抑制することができる。
一方、通常時においては、第1および第2の係合可能部は、非係合状態にあるため、動作機構部の振動が、それら第1および第2の係合可能部を介して支持板から制御盤ユニットに伝達することは防止される。したがって、制御盤ユニットにおける制御用電気部品の組み付け状態が振動に起因して不良化するなどの不具合も適切に回避することが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2の係合可能部は、前記通常時においては、上下高さ方向に離間した配置で互いにオーバラップした部位であり、かつ前記非通常時においては、前記第1の係合可能部が前記支持板の下方への撓み変形に伴って下降して前記第2の係合可能部に当接し、前記第2の係合可能部によって支持されるように構成されている。
【0012】
このような構成によれば、第1および第2の係合可能部の構成を簡易な構成とすることができる。また、第1および第2の係合可能部の係合、非係合の動作の確実性も良好なものとすることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2の係合可能部の一方は、略水平方向を向いて開口する開口部の周縁部を含み、かつ他方は、略水平方向に延びて前記開口部に差し込まれた凸状部を含むとともに、前記開口部は、前記凸状部よりも上下幅または直径が大きくされており、前記開口部の周縁部および前記凸状部は、前記通常時においては、互いに非接触の非係合状態にある一方、前記非通常時においては、互いに当接した係合状態となるように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、凸状部が開口部に差し込まれている状態にある限りは、非通常時において、開口部の周縁部と凸状部とを確実に当接させることができ、それらを係合させることの信頼性を高めることができる。また、モータ動作機構ユニットの組立製造時に際し、第1および第2の係合可能部の位置決めを行なう場合には、凸状部を開口部に差し込む配置とすればよく、その作業は容易である。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記凸状部は、前記支持板または前記制御盤ユニットに螺合装着されたネジ部材を用いて構成されている。
【0016】
このような構成によれば、汎用品であるネジ部材を用いることにより、凸状部を支持板または制御盤ユニットに設けることを、簡易かつ低コストで行なうことができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記支持板は、前記支持板の縁部が上下高さ方向に起立するように屈曲された屈曲片部を具備しており、かつこの屈曲片部に、前記開口部が設けられている。
【0018】
このような構成によれば、支持板に、略水平方向を向いて開口する開口部を設けることを簡易かつ低コストで行なうことができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記筐体は、左右一対の側板部、上板部、底板部、および背板部を有し、かつ前面パネルによって塞ぐことが可能な前面開口部を形成している中空略直方体状の筐体本体部を備えており、前記支持板は、長手方向両端部が前記一対の側板部に連結されて前記一対の側板部の相互間に架け渡されているとともに、前記支持板の長手方向途中箇所の後寄り部は、前記背板部に連結されており、前記制御盤ユニットは、前記制御用電気部品が取付けられるベース部材を有し、かつこのベース部材が前記支持板の長手方向途中箇所の前寄り部に接近するように、前記底板部および前記一対の側板部のうちの少なくともいずれかの部位に固定されており、前記支持板の前記前寄り部および前記制御盤ユニットの前記ベース部材に、前記第1および第2の係合可能部がそれぞれ設けられている。
【0020】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、支持板は、長手方向両端部が一対の側板部に連結されており、この支持板の長手方向中央部側が下方に撓み変形し易くなっている。これに対し、支持板の長手方向途中箇所の後寄り部は、筐体の背板部に連結されており、この部分が非通常時に下方へ大きく下降することは阻止されている。一方、支持板の長手方向途中箇所の前寄り部は、支持板の前寄り部に設けられた第1の係合可能部と、制御盤ユニットのベース部材に設けられた第2の係合可能部との係合作用により、非通常時に下方へ大きく下降することは適切に阻止される。このようなことから、支持板の長手方向中央部側が下方に大きく下降することは効率よく、かつ適切に防止される。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るモータ動作機構ユニットの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図2の要部分解斜視図であり、制御盤ユニットのカバー体を一部開けた状態である。
【
図5】(a)は、筐体内における支持板の取付け構造を示す要部概略斜視図であり、(b)は、(a)に示す支持板の斜視図である。
【
図6】(a)は、
図1の筐体本体部の概略側面断面図であり、(b)は、(a)の概略分解側面断面図である。
【
図7】(a)は、
図6(a)のVIIa部拡大図であり、(b)は、(a)の作用状態説明図である。
【
図8】(a)は、
図1のVIII-VIII要部断面図であり、(b)は、(a)の一部断面要部正面斜視図である。
【
図11】(a)は、
図1の第1の配管用ブラケットの斜視図であり、(b)は、(a)のXIb-XIb断面図であり、(c)は、(b)のXIc-XIc断面図であり、(d)は、(b)のXId-XId断面図である。
【
図12】(a)は、
図1の第2の配管用ブラケットの斜視図であり、(b)は、(a)の側面図であり、(c)は、(a)の平面図である。
【
図13】(a),(b)は、本発明の他の例を示す一部断面要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1~
図3において、本実施形態のモータ動作機構ユニットAは、ポンプ31を備えたポンプユニットとして構成されている。
このモータ動作機構ユニットAは、たとえば濾過装置(不図示)と給湯装置(不図示)とを組み合わせることにより、濾過装置に設けられた熱交換器に温水を供給し、濾過対象の水を加熱する用途に用いられる。また、たとえば給湯装置と組み合わせることにより、給湯装置への給水用途に用いるなど、他の用途に用いることも可能である。
【0025】
モータ動作機構ユニットAは、筐体1、この筐体1内に収容された動作機構部3、制御盤ユニット4、ならびに少なくとも一対の第1および第2の係合可能部E1,E2を備えている。
【0026】
筐体1は、筐体本体部1a、前面パネル1b、および支持板2を備えている。筐体本体部1aは、前面開口部10を有する中空略直方体状であり、左右一対の側板部11a,11b、上板部11c、底板部11d、および背板部11eを有している。前面パネル1bは、前面開口部10を塞ぐように筐体本体部1aの前部にビス止めなどの手段を用いて取付けられる。
この筐体1は、いわゆる壁掛け方式で所望の箇所(架台あるいは壁面など)に取付け設置される。具体的には、
図6に示すように、筐体1の後側の上部および下部には、上側および下側のブラケット50,51が取付けられており、これらのブラケット50,51を所望の箇所にビス止めするなどして筐体1の設置が図られる。
【0027】
支持板2は、動作機構部3を載せて支持するためのものである。この支持板2は、
図5に示すように、筐体1の左右横幅方向に延びる平板状部20、およびこの平板状部20の前縁部および後縁部からそれぞれ下向き、または上向きに屈曲した状態に連設された前側および後側の屈曲片部21,22を備えている。
支持板2の長手方向(筐体1の横幅方向)両端部2a,2bは、筐体1の左右一対の側板部11a,11bにブラケット52a,52bを介して連結されている。このことにより、支持板2は、筐体1内の上下高さ方向途中箇所において、一対の側板部11a,11bの相互間に架け渡された略水平な棚状とされる。
また、支持板2の後側の屈曲片部22(支持板の後寄り部に相当)のうち、その長手方向途中の1箇所または複数箇所は、筐体1の背板部11eにブラケット52cを介して連
結されている。この連結は、支持板2の長手方向途中箇所の後寄り部の固定を図り、この部分が動作機構部3の重量などに起因して下方に撓むことを防止する。複数のブラケット52a~52cは、たとえばスポット溶接などの手段により筐体1に取付けられている。
【0028】
動作機構部3は、たとえばポンプ31の上側にモータ30が連結された構成であり、支持板2上に載せられて固定されている。この動作機構部3は、一種の振動発生源である。ポンプ31には、吸入側および吐出側の配管部6a,6bの一端側が接続されており、これらの配管部6a,6bの他端側は、筐体1の底板部11dからその下方に突出した配置とされ、この突出部分の先端部にはポンプ31用の入水口60aおよび出水口60bが設けられている。なお、吐出側の配管部6bの一部は、ポンプ31よりも高い位置とされ、かつこの部分に気水分離器67および自動エア抜き弁68が取付けられている。
【0029】
制御盤ユニット4は、動作機構部3の制御を行なうための複数の制御用電気部品40、ベース部材41、およびカバー体42を備えている。
複数の制御用電気部品40は、モータ30に対する給電のオン・オフ、回転速度の制御などを行なうためのものである。
ベース部材41は、複数の制御用電気部品40がビス止めなどの手段によって組み付けられる部材であり、たとえばプレート状である。このベース部材41は、後述するように、所定の非通常時において動作機構部3から荷重を受けるため、そのような荷重に対する耐久性・強度を十分にもつものとされる。
カバー体42は、複数の制御用電気部品40の全体を覆い、保護するためのものであり、たとえば透明な樹脂製であって、複数の制御用電気部品40の全体を一括して覆うことが可能なケース状である。このカバー体42の前部には、正面視逆Π状のスリット42aが設けられ、その内側領域は、蓋部42bとされている。蓋部42bは、
図3に示すように、手前側上方に持ち上げることが可能であり、このことによりカバー体42の前部の蓋部42bが存在していた箇所は開放部42cとなる。この開放部42cからドライバなどの工具99をカバー体42の内側に差し入れて、各種ネジ部材の締め付け作業などを図ることが可能である。
【0030】
制御盤ユニット4は、筐体1内のうち、支持板2よりも前方(手前側)であって、底板部11d上に載設されるように筐体1に固定されている。この制御盤ユニット4の固定手段としては、
図2によく表われているように、底板部11dおよび側板部11bにスポット溶接などの手段で固定されたブラケット53a,53bがある。これらのブラケット53a,53bに対し、制御盤ユニット4のベース部材41がビスなどのネジ部材90a,90bを用いて連結されている(
図6も参照)。
【0031】
本実施形態では、第1および第2の係合可能部E1,E2が2対で設けられており、これらは後述する非通常時において、互いに係合し、支持板2が大きく下降することを阻止するための部位である。
第1の係合可能部E1は、支持板2の前側の屈曲片部21に設けられた開口部23、およびその周縁部を含む部位である。開口部23は、略水平方向を向いて開口した貫通孔である。
第2の係合可能部E2は、制御盤ユニット4のベース部材41の上部寄り領域に設けられた凸状部45aを含む部位である。この凸状部45aは、ベース部材41から支持板2側に略水平に突出している(
図4も参照)。好ましくは、この凸状部45aは、ベース部材41に設けられたネジ装着用孔部46に螺合されたビスなどのネジ部材45の軸部である。
【0032】
図6および
図7(a)に示すように、凸状部45aは、開口部23に差し込まれている。これら凸状部45aと開口部23とは、それらの中心が一致するように位置合わせされ
ている。また、開口部23は、凸状部45aよりも上下幅または直径が大きい、いわゆるバカ孔である。このため、開口部23の周縁部と凸状部45aの外周とは、通常時において、非接触であり、これら開口部23の周縁部および凸状部45a(第1および第2の係合可能部E1,E2)は、互いに非係合状態にある。
【0033】
一方、後述する非通常時であって、支持板2が下方に撓み変形を生じると、
図7(b)に示すように、開口部23の周縁部が凸状部45aの上部に当接し、これらは係合状態(第1および第2の係合可能部E1,E2の係合状態)となる。このような係合状態においては、凸状部45aが開口部23の周縁部を支持することとなり、支持板2がそれよりも低い高さに撓み変形することは阻止される。
【0034】
前記したモータ動作機構ユニットAによれば、次のような作用が得られる。
【0035】
モータ動作機構ユニットAの運搬時などにおいては、不注意によってモータ動作機構ユニットAを落下させてしまう場合があり得る。この場合、落下時の衝撃に起因して動作機構部3に突発的な荷重が作用し、支持板2が下方に撓み変形する現象が発生する虞がある。支持板2の後寄り部(後側の屈曲片部22の周辺領域)は、筐体1の背板部11eに連結されているため、この部分は下方に撓み変形し難くなっているものの、支持板2の前寄り部(前側の屈曲片部21の周縁領域)については、下方に撓み変形する虞がある。これに対し、前記現象が発生した非通常時には、
図7(b)に示したように、第1および第2の係合可能部E1,E2(開口部23の周縁部および凸状部45a)が互いに係合し、支持板2がそれ以上に下降することは阻止される。このため、支持板2が大きく下方に撓み変形することに起因して、支持板2が損傷する他、動作機構部3の各部が破損、あるいは故障することを適切に防止することが可能となる。
【0036】
前記した非通常時における支持板2の下方へ撓み変形防止は、制御盤ユニット4を利用して図られているが、この制御盤ユニット4は、筐体1内に元々収容されるものである。このため、その構成は合理的である。非通常時における支持板2の下方への撓み変形防止手段として、それ専用の大きなサイズの部品を追加で設けたのでは、重量や製造コストの増加を招くが、本実施形態によれば、そのような虞はない、または殆どない。
【0037】
一方、通常時においては、第1および第2の係合可能部E1,E2(開口部23の周縁部および凸状部45a)は、
図7(a)に示したように、非係合状態にある。このため、動作機構部3の振動が、それら第1および第2の係合可能部E1,E2を介して支持板2から制御盤ユニット4に伝達することは防止される。したがって、制御盤ユニット4の制御用電気部品40のビス止めが振動に起因して緩むなど、その取付け状態が不良化する不具合を生じないようにすることが可能である。
【0038】
本実施形態においては、第1の係合可能部E1は、支持板2の前側の屈曲片部21にいわゆるバカ孔としての開口部23が設けられた簡易な構成とされている。また、第2の係合可能部E2は、開口部23に差し込まれた凸状部45aを含む簡易な構成とされ、しかもこの凸状部45aは、ビスなどのネジ部材45を制御盤ユニット4のベース部材41に螺合装着することにより構成されている。したがって、第1および第2の係合可能部E1,E2の作製は容易であり、製造コストの上昇を抑制することができる。
また、バカ孔として開口部23に凸状部45aが差し込まれた構成によれば、支持板2が所定以上に下降することを阻止し得るだけではなく、所定以上の高さに上昇することも阻止可能である。
【0039】
本実施形態のモータ動作機構ユニットAにおいては、筐体1の強度向上や、防振性能を高めるための構成として、次に述べるような構成をさらに備えている。
【0040】
図1、
図2および
図8に示すように、筐体1の上側の左右の隅部の手前寄り領域には、補強板18が設けられている。この補強板18は、正面視略三角形状の補強板本体部18aと、その上部および側部に連設された折り曲げフランジ部18b,18cとを有しており、折り曲げフランジ部18b,18cを、筐体1の上板部11cおよび側板部11a,11bにスポット溶接するなどして筐体1への取付けが図られている。
このような構成によれば、筐体1の上側左右の隅部の強度を効果的に高めることが可能である。
【0041】
図9に示すように、モータ動作機構ユニットAを所望の箇所に取付けるのに用いられる下側のブラケット51は、筐体1の底板部11dにネジ部材91を用いて締結されている。ただし、この締結は、防振用ゴムなどの防振用部材7aが介装された状態とされている。
このような構成によれば、動作機構部3の振動が筐体1および下側のブラケット51を経由して、モータ動作機構ユニットAの取付け箇所に伝達することを抑制することが可能である。
図示説明は省略するが、好ましくは、上側のブラケット50も前記同様に、防振用ゴムが用いられた構成とされる。
【0042】
図10に示すように、モータ30は、平面視略コ字状などのクランプ部材19を利用して筐体1の背板部11eに固定保持されている。ただし、クランプ部材19とモータ30との間には、防振用部材7bが介装されている。また、背板部11eにはモータ30側に突出する突出片部19aが設けられ、かつこの突出片部19aとモータ30との間にも、防振用部材7cが介装されている。
このような構成によれば、モータ30を安定的に支持することができる一方、モータ30から筐体1への振動伝達を抑制することができる。
【0043】
図11に示すように、筐体1の側板部11bには、配管部6bをこの側板部11bに固定させるための配管用ブラケット8bが取付けられている。この配管用ブラケット8bは、平板状およびU字状の一対のクランプ部材80a,80bを組み合わせたクランプ部80を有し、この部分において配管部6bを保持可能である。ただし、クランプ部80は、防振用部材7dが備え、かつこの防振用部材7dが配管部6bの外周面に当接するようになっている。
また、クランプ部80は、ネジ部材92および防振用部材7eを介してベース部材81に取付けられている。ベース部材81は、筐体1の側板部11bにスポット溶接された取付け部材82にネジ部材92を介して取付けられている。
このような構成によれば、配管部6bの位置決め保持を適切に行なうことができることに加え、配管部6bから筐体1への振動伝達を抑制することができる。
なお、モータ動作機構ユニットAにおいては、
図1および
図2に示した配管部6aを側板部11aに固定させるの配管用ブラケット8aも具備されており、好ましくは、その構成は、配管用ブラケット8bの前記した構成と同様とされている。
【0044】
図12に示すように、筐体1の背板部11eには、配管部6bをこの背板部11eに固定させるための配管用ブラケット8cが取付けられている。この配管用ブラケット8cは、平面視略Ω状のクランプ部材84を有している。このクランプ部材84は、筐体1の背板部11eにスポット溶接などによって固定された取付け片85に対し、ネジ部材93を用いて取付けられている。ただし、クランプ部材84には、配管部6bの外周面に接触する防振用部材7f,7gが設けられている。また、ネジ部材93の頭部と取付け片85との相互間にも防振用部材7hが介装されている。
このような構成によれば、配管部6bを背板部11eに固定させること、および配管部
6bから背板部11eへの振動伝達を抑制することができる。
【0045】
図13は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、重複説明は省略する。
【0046】
図13(a)に示す構成においては、支持板2の前側の屈曲片部21に設けられた開口部23a(第1の係合可能部E1を構成する開口部23a)が、一部切欠き状の開口部とされている。
同図(b)に示す構成においては、第2の係合可能部E2を構成する凸状部45aが、先端が上向きに屈曲した断面非円形のバー状である(非屈曲であってもよい)。凸状部45aは、ネジ部材を用いて構成されていない。また、第1の係合可能部E1は、開口部を含む領域ではなく、支持板2の前側の屈曲片部21のうち、凸状部45aの直上に位置する部分、つまり支持板2が下方に撓み変形した際に、凸状部45aと当接・係合する部分である。
これらのいずれの構成においても、第1および第2の係合可能部E1,E2を通常時には非係合状態とし、かつ支持板2が下方に撓み変形する非通常時には係合状態として、本発明が意図する作用を得ることが可能である。
【0047】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るモータ動作機構ユニットの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0048】
上述の実施形態においては、支持板2に設けられる第1の係合可能部E1が、開口部23の形成領域を含み、かつ制御盤ユニット4に設けられる第2の係合可能部E2が、凸状部45aを含む構成とされているが、本発明はこれに限定されず、それらの位置を反対にすることもできる。すなわち、支持板2の第1の係合可能部E1が凸状部45aを含み、制御盤ユニット4の第2の係合可能部E2が開口部23の形成領域を含む構成としてもよい。
第1および第2の係合可能部は、
図13に示した実施形態から理解されるように、必ずしも開口部とこの開口部に差し込まれる凸状部との組合せ構成に限定されない。また、開口部と凸状部との組合せ構成を採用する場合においては、それら開口部および凸状部の具体的な形状やサイズなどを種々に変更することが可能である。第1および第2の係合可能部は、少なくとも1対で設けられていればよく、その具体的な数も限定されない。
【0049】
動作機構部は、モータとポンプとが組み合わされたものに限定されない。モータにより駆動される駆動対象物としては、ポンプに代えて、または加えて、たとえば圧縮機や、ファンなどとすることも可能であり、その種類は問わない。モータの種類も問わない。したがって、制御盤ユニットに具備される制御用電気部品の具体的な種類なども限定されない。
【符号の説明】
【0050】
A モータ動作機構ユニット
E1,E2 第1および第2の係合可能部
1 筐体
11a,11d 側板部
11c 上板部
11d 底板部
11e 背板部
2 支持板
21 前側の屈曲片部(支持板の前寄り部)
23 開口部(第1の係合可能部)
3 動作機構部
30 モータ
31 ポンプ(駆動対象物)
4 制御盤ユニット
40 制御用電気部品
45a 凸状部(第2の係合可能部)
45 ネジ部材