(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005920
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ロータおよびそれを有する永久磁石型モータジェネレータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/274 20220101AFI20250109BHJP
【FI】
H02K1/274
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106357
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391002487
【氏名又は名称】学校法人大同学園
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 智茂也
(72)【発明者】
【氏名】南山 拓真
(72)【発明者】
【氏名】藪見 崇生
(72)【発明者】
【氏名】加納 善明
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA14
5H622CB04
5H622PP03
(57)【要約】
【課題】Gap磁束密度が正弦波化された永久磁石型モータジェネレータに用い得るロータの提供。
【解決手段】シャフトと、シャフトと接合されている回転部材と、湾曲形状でシャフトへ向かって凸となるように回転部材の外周部内に配置された磁石と、を有するロータであって、磁石はシャフトの中心軸に平行な2つの側面ならびに内周面および外周面を有し、シャフトの中心軸に垂直な方向の断面Fにおいて、磁化容易軸が円弧状をなすように配向されており、その円弧は同心円の一部であり、その同心円の中心点をA点とし、側面のうちの1つと外周面との境界を示す点をB点とし、側面のうちの1つと内周面との境界を示す点をC点としたときに、A点とB点とを結ぶ直線である直線L
1と、B点とC点とを結ぶ直線である直線L
2とがなす角の角度αが3~15度であるロータ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトと接合されている回転部材と、
湾曲形状で、前記シャフトへ向かって凸となるように前記回転部材の外周部内に配置された磁石と、
を有するロータであって、
前記磁石は、
前記シャフトの中心軸に平行な2つの側面ならびに内周面および外周面を有し、
前記シャフトの中心軸に垂直な方向の断面Fにおいて、磁化容易軸が円弧状をなすように配向されており、その円弧は同心円の一部であり、その同心円の中心点をA点とし、
前記断面Fにおいて、前記側面のうちの1つと前記外周面との境界を示す点をB点とし、前記側面のうちの1つと前記内周面との境界を示す点をC点としたときに、A点とB点とを結ぶ直線である直線L1と、B点とC点とを結ぶ直線である直線L2とがなす角の角度αが3~15度である、ロータ。
【請求項2】
前記断面Fにおいて、前記磁石における前記側面が外側に凸な曲線をなしている、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記断面Fにおいて、前記曲線が直線L1と直線L2との間に存在している、請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のロータをインナーロータとして有し、
さらに、中心の貫通穴に前記インナーロータが挿入されているアウターステータを有する永久磁石型モータジェネレータ。
【請求項5】
前記アウターステータは、
電機子コイルの鉄心となる複数のティースが放射線状に配置されていて、前記ティースの周囲にコイルが巻き付けられている、請求項4に記載の永久磁石型モータジェネレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータおよびそれを有する永久磁石型モータジェネレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータ、それに用いる磁石、またはそれを含むモータが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、中心軸を中心として回転可能なロータコアと、前記ロータコアの外周面に固定されたロータマグネットと、を備え、前記ロータマグネットは、ハルバッハ配列で周方向に沿って並ぶ複数の磁化部を有し、前記複数の磁化部は、磁化方向が径方向である複数の径方向磁化部と、磁化方向が径方向と異なる複数の非径方向磁化部と、を含み、前記ロータコアは、前記ロータコアの軸方向一方側の面から軸方向他方側に窪む穴部を有し、かつ、非磁性体を材料とする非磁性部材であり、前記穴部は、前記径方向磁化部の径方向内側に位置する、ロータが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、環状の永久磁石と、前記永久磁石を径方向内側から支持する支持体とを備えるロータであって、前記永久磁石は、前記ロータの軸方向に対して直交する面に沿って、ハルバッハ配列に磁化され、前記支持体には、前記ロータの軸周りに並ぶ複数の空隙が形成されている、ことを特徴とするハルバッハ配列ロータが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、以下の構成を備えた極異方磁石、(1)前記極異方磁石は、一体磁石からなる、(2)前記極異方磁石は、z軸に対して平行方向に磁極の境界面がある、(3)前記極異方磁石は、xy平面上において、磁化容易軸が円弧状に、かつ、同心円状に配向している配向領域を備えている、が記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、固定子の外側に回転可能に設けられ、略円筒状に構成される回転子ヨークと、この回転子ヨークの内周側において複数の磁極を有するように配置され、前記固定子に対向する面が曲面をなすように形成される異方性磁石とを備えて構成される永久磁石形モータにおいて、前記異方性磁石の1磁極を構成する部分は、両端における径方向厚さが中央における径方向厚さの0.4~0.8倍となるように形成されており、且つ、当該磁極内における配向の中心が、回転中心から磁石側にずれた位置にあることを特徴とする永久磁石形モータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2020/195006号公報
【特許文献2】特開2020-129888号公報
【特許文献3】特開2018-38162号公報
【特許文献4】特開2006-94604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
永久磁石型モータジェネレータにおいて、ステータとロータとの間のGap磁束密度が正弦波化すること(正弦波により近い形状になること)が好ましい。これによって、鉄損の低下が期待でき、また、コギングトルクの低下によって振動および騒音の元になるトルク脈動が低下することが期待できる。
【0009】
本発明は、Gap磁束密度が正弦波化された永久磁石型モータジェネレータおよびそれに用いることができるロータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の(1)~(5)である。
(1)シャフトと、
前記シャフトと接合されている回転部材と、
湾曲形状で、前記シャフトへ向かって凸となるように前記回転部材の外周部内に配置された磁石と、
を有するロータであって、
前記磁石は、
前記シャフトの中心軸に平行な2つの側面ならびに内周面および外周面を有し、
前記シャフトの中心軸に垂直な方向の断面Fにおいて、磁化容易軸が円弧状をなすように配向されており、その円弧は同心円の一部であり、その同心円の中心点をA点とし、
前記断面Fにおいて、前記側面のうちの1つと前記外周面との境界を示す点をB点とし、前記側面のうちの1つと前記内周面との境界を示す点をC点としたときに、A点とB点とを結ぶ直線である直線L1と、B点とC点とを結ぶ直線である直線L2とがなす角の角度αが3~15度である、ロータ。
(2)前記断面Fにおいて、前記磁石における前記側面が外側に凸な曲線をなしている、上記(1)に記載のロータ。
(3)前記断面Fにおいて、前記曲線が直線L1と直線L2との間に存在している、上記(2)に記載のロータ。
(4)上記(1)または(2)に記載のロータをインナーロータとして有し、
さらに、中心の貫通穴に前記インナーロータが挿入されているアウターステータを有する永久磁石型モータジェネレータ。
(5)前記アウターステータは、
電機子コイルの鉄心となる複数のティースが放射線状に配置されていて、前記ティースの周囲にコイルが巻き付けられている、上記(4)に記載の永久磁石型モータジェネレータ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Gap磁束密度が正弦波化された永久磁石型モータジェネレータおよびそれに用いることができるロータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明のロータをシャフトの中心軸に垂直な方向で切った場合の断面(断面Fとする)を示す図(概略図)である。
【
図2】
図2は、
図1における本発明の磁石10の一つを拡大した図(概略図)である。
【
図3】
図3は、本発明の磁石10の好適態様を示す拡大図(概略図)である。
【
図4】
図4は本発明のモータジェネレータを、本発明のロータのシャフトの中心軸に垂直な方向で切った場合の断面(概略図)を示している。
【
図5】実施例において測定した、機械角(deg)と磁束密度(T)との関係を示す図(グラフ)である。
【
図6】実施例において測定した、機械角(deg)と線間誘起電圧(V)との関係を示す図(グラフ)である。
【
図7】実施例において測定した、角度αと誘起電圧波形THD(%)との関係を示す図(グラフ)である。
【
図8】実施例において測定した、角度αとコギングトルク(mNm)との関係を示す図(グラフ)である。
【
図9】実施例において用いた、ダイナモモータと供試モータとがトルク計を挟んで一軸で連結したモータ測定装置の側面を表す図(概略図)である。
【
図10】
図10(a)は距離Rを変化させた場合の角度αと誘起電圧またはトルク減少率との関係を示すグラフである。
図10(b)は距離DRを変化させた場合の角度αと誘起電圧またはトルク減少率との関係を示すグラフである。
【
図11】
図11(a)は距離DRを変化させた場合の角度αとコギングトルクとの関係を示すグラフである。
図11(b)は距離Rを変化させた場合の角度αとコギングトルクとの関係を示すグラフである。 なお、
図8および11の縦軸のコギングトルクは、コギングトルク波形の最大と最小の差を計算した結果に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について説明する。
本発明は、シャフトと、前記シャフトと接合されている回転部材と、湾曲形状で、前記シャフトへ向かって凸となるように前記回転部材の外周部内に配置された磁石と、を有するロータであって、前記磁石は、前記シャフトの中心軸に平行な2つの側面ならびに内周面および外周面を有し、前記シャフトの中心軸に垂直な方向の断面Fにおいて、磁化容易軸が円弧状をなすように配向されており、その円弧は同心円の一部であり、その同心円の中心点をA点とし、前記断面Fにおいて、前記側面のうちの1つと前記外周面との境界を示す点をB点とし、前記側面のうちの1つと前記内周面との境界を示す点をC点としたときに、A点とB点とを結ぶ直線である直線L1と、B点とC点とを結ぶ直線である直線L2とがなす角の角度αが3~15度である、ロータである。
このようなロータを、以下では「本発明のロータ」ともいう。
【0014】
また、本発明のロータが有する磁石を、以下では「本発明の磁石」ともいう。
【0015】
また、本発明は、本発明のロータをインナーロータとして有し、さらに、中心の貫通穴に前記インナーロータが挿入されているアウターステータを有する永久磁石型モータジェネレータである。
このような永久磁石型モータジェネレータを、以下では「本発明のモータジェネレータ」ともいう。
【0016】
本発明のロータについて図を用いて説明する。
図1は本発明のロータを、シャフトの中心軸に垂直な方向で切った場合の断面(断面Fとする)を示している。
なお、
図1を含め、以下に用いる図は、本発明のロータまたはそれを含む本発明のモータジェネレータの例を示しており、本発明のロータおよび本発明のモータジェネレータは図に示す態様に限定されない。
【0017】
本発明のロータ1は、シャフト2と、回転部材4と、本発明の磁石10とを有する。
【0018】
シャフト2は本発明のロータ1の中心に存在する回転軸である。
【0019】
回転部材4はシャフト2と接合されている。
回転部材4は非磁性材料を用いることができる。
回転部材4を構成する非磁性材料としてチタン、アルミ、樹脂、セラミックス、CFRPが挙げられる。
本発明において回転部材としては、GAP磁束を有効に活用する観点から、非磁性材料を用いることが好ましい。一方、本発明において回転部材は、弱い磁性をもつセラミックなどの磁性の弱い磁性材料を適用することもできる。
【0020】
図1に示すように断面Fにおいて本発明の磁石10は湾曲形状である。そして、シャフト2へ向かって凸となるように回転部材4の外周側内に配置されている。すなわち、本発明の磁石10は、回転部材4の外周側であって、回転部材4内に埋め込まれており、本発明のロータ1の外周面に接しておらず、露出もしていない。
【0021】
本発明のロータ1が含む本発明の磁石10の個数がn個である場合、本発明のロータ1はn個(n:2以上の偶数)の磁極を備えることになる。
図1は本発明の磁石10が8個あり、本発明のロータ1が8個の磁極を有する例である。
本発明のロータ1が備える磁極の数は、特に限定されない。一般に、磁極の数が多くなるほど、コイルに鎖交する磁束の切替回数が増える。各極における磁石量の減り分を考慮しても、同じ回転数では、磁極の数が多くなるほど、トルクおよび発電量が向上する。このような効果を得るためには、磁極の数は4極以上が好ましく、8極以上がより好ましい。
一方、磁極の数が多くなりすぎると、ステータ形状と巻線が複雑になり、モータ体格が肥大化するという問題があり、特に小型モータで顕著となる。従って、磁極の数は、16極以下が好ましく、12極以下がより好ましい。
【0022】
本発明の磁石10について、
図2を用いて詳細に説明する。
図2は
図1における本発明の磁石10の一つを拡大した図(概略図)である。したがって、
図2は、断面Fにおける本発明の磁石10を示している。
【0023】
本発明の磁石10は、シャフトの中心軸に平行な2つの側面11および側面12を有している。また、同様に、シャフトの中心軸に平行な内周面13および外周面14を有している。
つまり、本発明の磁石10は、中空円筒をその長手方向の2か所で切って得た形状、またはそれに類する形状である。本発明の磁石10が中空円筒をその長手方向の2か所で切って得たものである場合、中空円筒の内面であった面が内周面13であり、中空円筒の外面であった面が外周面14であり、2か所で切ることによって現れた面が側面11および側面12である。
また、内周面13は断面Fにおいて後述するA点に近い線をなす面であり、外周面14は内周面13に対向する面であり、側面11、12は内周面13と外周面14とをつなぐ面である。
なお、断面Fにおいて内周面13および外周面14がなす曲線は円弧の一部をなしていることが好ましく、その円弧は同心円であることが好ましく、その同心円の中心は、後述するA点であることが好ましい。
【0024】
図2において磁化容易軸および配向方向を点線で示している。
図2に示すように、本発明の磁石10は断面Fにおいて磁化容易軸が円弧状をなすように配向されており、その円弧は同心円の一部である。
そして、その同心円の中心点をA点とする。
また、断面Fにおいて、2つの側面のうちの1つである側面12と、外周面14との境界を示す点をB点とする。
また、側面12と内周面13との境界を示す点をC点とする。
そして、A点とB点とを結ぶ直線を直線L
1とし、B点とC点とを結ぶ直線を直線L
2とする。
【0025】
本発明の磁石10では、直線L1と直線L2とがなす角の角度αが3~15度である。
このような本発明の磁石10を含むロータを備えた本発明のモータジェネレータは、Gap磁束密度が正弦波化されることを、本発明者は見出した。
【0026】
次に、本発明の磁石の好適態様について、
図3を用いて詳細に説明する。
図3は
図2と同様、本発明の磁石10´の断面Fにおける態様を示している。
図3に示す本発明の磁石10´と、
図2に示した本発明の磁石10との差異は、側面12´のみである。
図3に示すように、断面Fにおいて本発明の磁石10´における側面12´は外側に凸な曲線をなしている。また、その曲線が直線L
1と直線L
2との間に存在している。
このような本発明の磁石10´を含むロータを備えた本発明のモータジェネレータは、Gap磁束密度がより正弦波化されることを、本発明者は見出した。
【0027】
次に、本発明のモータジェネレータについて
図4を用いて説明する。
図4は本発明のモータジェネレータを、本発明のロータのシャフトの中心軸に垂直な方向で切った場合の断面(概略図)を示している。
【0028】
図4に示すように、本発明のモータジェネレータ20は、本発明のロータ1と、アウターステータ3とを有する。
アウターステータ3の中心には貫通穴が形成されていて、この貫通穴に本発明のロータ1が挿入されている。
【0029】
アウターステータ3は、複数のティース32を有する。
図4に示す態様においてアウターステータ3は12個のティース32を有する。
【0030】
ティース32は電機子コイルの鉄心となる。
また、アウターステータ3において複数のティース32は放射線状に配置されている。
【0031】
ティース32の周囲には、図示しないコイルが巻き付けられている。コイルの巻き方には分布巻きと集中巻きがあるが、図示の極数・スロット数の組合せの場合、集中巻きが用いられる。
交流電流をコイルに通電することで本発明のロータ1に対して回転磁界を作用させることができる。また、本発明のロータ1を外部から回転させた場合、回転に伴う磁束の変化によってコイル両端に電圧が誘起され、コイルに電流を取り出すことができる。
【0032】
本発明のモータジェネレータは、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換する電力機器(狭義の「モータ」)、力学的エネルギーを電気エネルギーに変換する電力機器(ジェネレータ)、モータとジェネレータの双方の機能を持つ電力機器(モータジェネレータ)のいずれとしても、用いることができる。
【0033】
本発明のロータは本発明のモータジェネレータにおけるインナーロータとして用いられることが好ましいが、その他にも駆動モータとして用いることができる。
【実施例0034】
本発明について実施例を挙げて説明する。
【0035】
<実験1>
磁石形状に関して、角度αとの相関を有限要素法(FEM:Finite Element Method)による電磁界解析にて検討し、Gap磁束密度波形から、適正な角度αを求めた。
さらに、線間誘起電圧波形の総合歪み率(THD:Total Harmonic Distortion)との相関、および、モータの損失および振動に関わるコギングトルクとの相関から適正な角度αを求めた。
解析検討したモータジェネレータの仕様を表1に示す。また、モータ駆動に関わる解析条件を表2に示し、解析結果を
図5~8に示す。なお、実験検証では、角度αを0、3、6、、、18degとした磁石を用いたモータジェネレータで、測定を行い、その結果を
図5内に示した。なお、機械角は、モータ軸の回転角度を示す。線間誘起電圧(V)は、ロータの回転によってステータコイルに生じる誘起電圧を示す。線間誘起電圧波形のTHD(%)は、誘起電圧波形の電気角1周期をFFT(Fast Fourier Transform)にて、得られた1次成分に対する3、5、7~127次の高調波含有比率を示し、含有比率が小さいほど波形が正弦波に近いことを意味する。補足であるが、誘起電圧波形は半波対称性を持つ波形のため、2、4、6~次の偶数高調波成分は0となる。最後に、コギングトルク(Nm)とは無負荷状態において外部から回転させた場合に現れるトルクの脈動のことを意味し、そのpeak-to-peak値(最大と最小の差)でコギングトルクの良し悪しを評価する。
【0036】
【0037】
【0038】
図5の解析結果から、角度αが3~15度である本発明の磁石を備える本発明のロータを含む本発明のモータジェネレータは、角度αが0度の磁石と比較し、Gap磁束密度が正弦波化されていることが確認できる。
また角度αが15度のGap磁束密度は、角度αが18度の波形より正弦波に近い事が確認できる。
【0039】
さらに、
図6の解析結果から、誘起電圧波形についても、角度αが3~15度である本発明の磁石を備える本発明のロータを含む本発明のモータジェネレータは、角度α0度である磁石と比較し、誘起電圧波形が正弦波化されている(正弦波により近い形状になっている)ことが確認できる。
【0040】
図7の解析結果から、角度αを大きくすると、トルクは若干減少するが、角度α15°~18°で誘起電圧波形のTHDは、ほぼ変化なく、角度α15度超になると改善しないことを確認した。
この結果から、角度αが3~15度である本発明の磁石を備える本発明のロータを含む本発明のモータジェネレータは、少ない鉄損で、高いトルクが実現できると考える。
【0041】
解析結果
図8から、角度αが0度の場合に比べ、角度αが3~15度である本発明の磁石を備える本発明のロータを含む本発明のモータジェネレータは、小さいトルク脈動で、高いトルクが実現できると考える。
したがって、角度αが3~15度である本発明の磁石を備える本発明のロータを含む本発明のモータジェネレータは、角度α0度と比較して、振動、および、騒音が低く、低騒音で、高いトルクのモータジェネレータが実現できる。
【0042】
<実験2>
初めに、
図2に示した態様であって、角度αと、シャフトの中心軸からB点までの距離DRと、A点から内周面13までの距離Rとを種々変化させた複数種類の磁石を作成し、各々を備えた
図4に示した態様の永久磁石型モータジェネレータを複数、作成した。
ここで角度αは1度から20度の間のいずれかの整数の角度とした。
ただし、距離DRおよび距離Rの数値により形状不成立となる角度αについては製作対象外とした。
また、距離DRは58mm、57.5mm、57mmの3つのうちのいずれかとした。また、距離Rは7mm、8mm、9mmの3つのうちのいずれかとした。
そして、各々の永久磁石型モータジェネレータについて、誘起電圧、トルク減少率およびコギングトルクを測定した。
各々の測定方法は以下の通りである。
【0043】
<誘起電圧>
図9に示すモータ測定装置で、本発明の永久磁石型モータジェネレータを実測した。モータ測定装置は、ダイナモモータと供試モータとなる永久磁石型モータジェネレータがトルク計(最大測定範囲:700Nm)を挟んで一軸で連結した配置となる。
ダイナモモータを駆動源として無負荷で供試モータを回転させ、発生した誘起電圧波形を電圧計にて測定した。ここで測定波形をFFTにて波形分析を行い、誘起電圧波形のTHDを算出した。表3に実験時の測定条件を示す。
【0044】
【0045】
<トルク減少率>
図9に示すモータ測定装置を用い、供試モータは、インバータで電流制御を行い、ダイナモモータで、供試モータに負荷をかけ、トルク計で、供試モータに発生したトルクを測定した。表4に測定条件を示す。
【0046】
【0047】
<コギングトルク>
図9に示すモータ測定装置を用い、ダイナモモータを駆動源として供試モータを1rpmで回転させた。その状態で、発生したトルクをトルク計で測定した。ここで、サンプリング周期は1000Hzとした。測定条件は、表5に示す。
【0048】
【0049】
<測定結果>
誘起電圧、トルクおよびコギングトルクの測定結果を
図10、
図11に示す。
ここで
図10(a)は距離Rを変化させた場合の角度αと誘起電圧またはトルク減少率との関係を示している。
図10(a)において「R大」はRが9mmの時を意味しており、「R中」はRが8mmの時を意味しており、「R小」はRが7mmの時を意味している。
また、
図10(b)は距離DRを変化させた場合の角度αと誘起電圧またはトルク減少率との関係を示している。
図10(b)において「DR大」はDRが58mmの時を意味しており、「DR中」はDRが57.5mmの時を意味しており、「DR小」はDRが57mmの時を意味している。
なお、トルク減少率は、α角が0度の場合のトルクを基準とした減少率を意味するものとする。α角が0度の場合のトルクはα角1度から20度にて成立する磁石形状を用いたモータの測定値より多項式近似法によって計算して求める。
【0050】
また、
図11(a)は距離DRを変化させた場合の角度αとコギングトルクとの関係を示している。
図11(a)において「DR大」はDRが58mmの時を意味しており、「DR中」はDRが57.5mmの時を意味しており、「DR小」はDRが57mmの時を意味している。
図11(b)は距離Rを変化させた場合の角度αとコギングトルクとの関係を示している。
図11(b)において「R大」はRが9mmの時を意味しており、「R中」はRが8mmの時を意味しており、「R小」はRが7mmの時を意味している。
【0051】
図10に示すように、角度αが3~15度であるロータを備えるモータジェネレータは、誘起電圧のTHDが6%以下となり、かつ、トルク減少率が20%以内となることが確認できた。
また、
図11に示すように、角度αが3~15度であるロータを備えるモータジェネレータは、コギングトルクが6Nm以下となることが確認できた。