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2025-59317熱交換器ユニット、空調室内機、および冷凍サイクル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025059317
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】熱交換器ユニット、空調室内機、および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20250403BHJP
   F28D 1/04 20060101ALI20250403BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
F28F9/02 301J
F28D1/04 Z
F25B39/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169345
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 祥太
(72)【発明者】
【氏名】山本 周太郎
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA18
3L103BB42
3L103CC17
3L103CC18
3L103CC23
3L103DD03
3L103DD33
3L103DD85
3L103DD97
(57)【要約】
【課題】分流流路を有する熱交換器ユニットの分流性能を向上する。
【解決手段】分流流路(70)は、鉛直方向に沿った第2方向に延びる流入路(71)と、流入路(71)の流出口(O)が接続する分流空間(80)と、分流空間(80)に接続する流入口(I1,I2,I3)をそれぞれが有するとともに第2方向に延びる複数の流出路(91,92,93)とを含む。複数のプレート(P)は、プレート空間(81,82,83)がそれぞれ形成されるとともに第1方向に隣接する複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)を含む。分流空間(80)は、複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)の各プレート空間(81,82,83)が第1方向に連続することによって構成される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィン(41)および伝熱管(42)を有する熱交換部(40A)と、
水平方向に沿った第1方向に積層される複数のプレート(P)を有するとともに、前記伝熱管(42)と連通する冷媒流路(51)が形成されるプレート積層体(50,60)とを備え、
前記プレート積層体(50)には、冷媒を分流させるための分流流路(70)が形成され、
前記分流流路(70)は、
鉛直方向に沿った第2方向に延びる流入路(71)と、
前記流入路(71)の流出口(O)が接続する分流空間(80)と、
前記分流空間(80)に接続する流入口(I1,I2,I3)をそれぞれが有するとともに、前記第2方向に延びる複数の流出路(91,92,93)とを含み、
前記複数のプレート(P)は、プレート空間(81,82,83)がそれぞれ形成されるとともに前記第1方向に隣接する複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)を含み、
前記分流空間(80)は、前記複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)の各プレート空間(81,82,83)が前記第1方向に連続することによって構成される
熱交換器ユニット。
【請求項2】
前記流出口(O)は、前記分流空間(80)を挟んで前記流入口(I1,I2,I3)と反対側に配置される
請求項1に記載の熱交換器ユニット。
【請求項3】
前記流出口(O)と前記流入口(I1,I2,I3)とは、前記第2方向で見る場合に互いにずれている
請求項2に記載の熱交換器ユニット。
【請求項4】
前記複数の流入口(I1,I2,I3)の少なくとも2つは、互いに異なる前記分流プレート(FP2,FP3,FP4)に形成される
請求項1~3のいずれか1つに記載の熱交換器ユニット。
【請求項5】
前記複数の流入口(I1,I2,I3)は3つ以上であり、
該複数の流入口(I1,I2,I3)の少なくとも3つが、互いに異なる前記分流プレート(FP2,FP3,FP4)に形成される
請求項4に記載の熱交換器ユニット。
【請求項6】
複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)は、
前記流出口(O)が形成される第1プレート(FP3)と、
前記第1プレート(FP3)の厚さ方向の一端側に配置され、前記流入口(I1,I2,I3)が形成される第2プレート(FP2)と、
前記該第1プレート(FP3)の厚さ方向の他端側に配置され、前記流入口(I1,I2,I3)が形成される第3プレート(FP4)とを含む
請求項1~3のいずれか1つに記載の熱交換器ユニット。
【請求項7】
前記プレート空間(81,82,83)は、前記第2方向で見る場合に、前記第1方向と直交し且つ水平方向に沿った第3方向に延びる横長の形状である
請求項1~3のいずれか1つに記載の熱交換器ユニット。
【請求項8】
前記プレート空間(81,82,83)は、前記分流プレート(FP2,FP3,FP4)を厚さ方向に貫通する穴である
請求項1~3のいずれか1つに記載の熱交換器ユニット。
【請求項9】
前記プレート空間(81,82,83)は、互いに同じ形状である
請求項8に記載の熱交換器ユニット。
【請求項10】
前記流出口(O)は、前記プレート空間(81,82,83)の前記第3方向における中間部に配置され、
前記流入口(I1,I2,I3)は、前記プレート空間(81,82,83)の前記第3方向における端部寄りに配置される
請求項7に記載の熱交換器ユニット。
【請求項11】
前記流入路(71)には、前記分流空間(80)に近づくにつれて流路断面を縮小させる縮小部(75a)が形成される
請求項1~3のいずれか1つに記載の熱交換器ユニット。
【請求項12】
前記複数の流出路(91,92,93)は、3つ以上、5つ以下である
請求項1~3のいずれか1つに記載の熱交換器ユニット。
【請求項13】
前記分流空間(80)の前記第2方向の長さは、1mm以上6mm以下である
請求項1~3のいずれか1つに記載の熱交換器ユニット。
【請求項14】
前記プレート積層体(50)には、前記熱交換部(40A)と前記第1方向に重ならない第1領域(A1)が形成され、
前記分流流路(70)は、前記第1領域(A1)に形成される
請求項1~3のいずれか1つに記載の熱交換器ユニット。
【請求項15】
請求項1~3のいずれか1つに記載の熱交換器ユニット(U)を備えた空調室内機。
【請求項16】
請求項1~3のいずれか1つに記載の熱交換器ユニット(U)が接続される冷媒回路(11)を備える
冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器ユニット、空調室内機、および冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、熱交換器に設けられるヘッダを開示する。特許文献1のヘッダは、複数の板が積層されて構成される。特許文献1の図6に示すように、ヘッダの内部には、冷媒を分流させるための空間(分流空間)が形成される。分流空間には、1つの流入路と、複数の流出路とが接続する。流入路から、分流空間に流入した冷媒は、複数の流出路に分流する。各流出路に分流した冷媒は、熱交換器の各伝熱管に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-179308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような分流構造において、冷媒が一部の流出路に偏流してしまうと、熱交換器の性能が低下してしまう。
【0005】
本開示の目的は、分流流路を有する熱交換器ユニットの分流性能を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、熱交換器ユニットを対象とし、フィン(41)および伝熱管(42)を有する熱交換部(40A)と、水平方向に沿った第1方向に積層される複数のプレート(P)を有するとともに、伝熱管(42)と連通する冷媒流路(51)が形成されるプレート積層体(50)とを備える。プレート積層体(50)には、冷媒を分流させるための分流流路(70)が形成される。分流流路(70)は、鉛直方向に沿った第2方向に延びる流入路(71)と、流入路(71)の流出口(O)が接続する分流空間(80)と、分流空間(80)に接続する流入口(I1,I2,I3)をそれぞれが有するとともに、第2方向に延びる複数の流出路(91,92,93)とを含む。複数のプレート(P)は、プレート空間(81,82,83)がそれぞれ形成されるとともに第1方向に隣接する複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)を含む。分流空間(80)は、複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)の各プレート空間(81,82,83)が第1方向に連続することによって構成される。
【0007】
第1の態様では、複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)が第1方向に積層されることで、各分流プレート(FP2,FP3,FP4)のプレート空間(81,82,83)が第1方向に連続する。これにより、熱交換器ユニットでは、複数のプレート空間(81,82,83)によって分流空間(80)が形成される。分流空間(80)は、1つのプレート(P)ではなく、複数のプレート(P)に亘るので、空間の容積がプレート(P)の第1方向(積層方向)に拡がる。このため、流入路(71)の流出口(O)と、複数の流出路(91,92,93)の流入口(I1,I2,I3)との間の距離が大きく異なってしまうことを抑制できる。その結果、流出口(O)と、各流入口(I1,I2,I3)との間の流路抵抗が大きく異なってしまうことを抑制できるので、冷媒が一部の流出路(91,92,93)に偏流してしまうことを抑制できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、流出口(O)は、分流空間(80)を挟んで流入口(I1,I2,I3)と反対側に配置される。
【0009】
第2の態様では、分流空間(80)を流れる冷媒の流路抵抗を低減できる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、流出口(O)と流入口(I1,I2,I3)とは、第2方向から見る場合に互いにずれている。
【0011】
第3の態様では、流出口(O)と、ある流入口(I1,I2,I3)とが第2方向でみる場合に重ならないので、冷媒が、ある流入口(I1,I2,I3)に偏流してしまうことを抑制できる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、複数の流入口(I1,I2,I3)の少なくとも2つは、互いに異なる分流プレート(FP2,FP3,FP4)に形成される。
【0013】
第4の態様では、複数の流入口(I1,I2,I3)の少なくとも2つが、同じ分流プレート(FP2,FP3,FP4)に形成されないので、流出口(O)と、これらの流入口(I1,I2,I3)との間の距離が大きく異なってしまうことを抑制できる。
【0014】
第5の態様は、第4の態様において、複数の流入口(I1,I2,I3)は3つ以上であり、複数の流入口(I1,I2,I3)の少なくとも3つが、互いに異なる分流プレート(FP2,FP3,FP4)に形成される。
【0015】
第5の態様では、3つ以上の流入口(I1,I2,I3)のうちの少なくとも3つが、同じ分流プレート(FP2,FP3,FP4)に形成されないので、流出口(O)とこれらの流入口(I1,I2,I3)との間の距離が大きく異なってしまうことを抑制できる。
【0016】
第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)は、流出口(O)が形成される第1プレート(FP3)と、第1プレート(FP3)の厚さ方向の一端側に配置され、流入口(I1,I2,I3)が形成される第2プレート(FP2)と、第1プレート(FP3)の厚さ方向の他端側に配置され、流入口(I1,I2,I3)が形成される第3プレート(FP4)とを含む。
【0017】
第6の態様では、第1プレート(FP3)の流出口(O)から流出した冷媒が、第1プレート(FP3)の厚さ方向の一端側と他端側とに分流する。一端側に流れた冷媒は、第2プレート(FP2)の流入口(I1,I2,I3)に流入し、他端側に流れた冷媒は、第3プレート(FP4)の流入口(I1,I2,I3)に分流する。このように、第2プレート(FP2)と流入口(I1,I2,I3)と第3プレート(FP4)の流入口(I1,I2,I3)とは、第1プレート(FP3)を挟んで互いに反対側に位置する。これにより、第1プレート(FP3)の流出口(O)と第2プレート(FP2)の流入口(I1,I2,I3)との間の距離、および第1プレート(FP3)の流出口(O)と第3プレート(FP4)の流入口(I1,I2,I3)との間の距離が大きく異なることを抑制できる。
【0018】
第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様において、プレート空間(81,82,83)は、第2方向で見る場合に、第1方向と直交し且つ水平方向に沿った第3方向に延びる横長の形状である。
【0019】
第7の態様では、複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)のそれぞれのプレート空間(81,82,83)が第3方向に延びる横長に形成される。このため、これらの分流プレート(FP2,FP3,FP4)が連続することで形成される分流空間(80)の容積を拡大できる。
【0020】
第8の態様は、第1~第7のいずれか1つの態様において、プレート空間(81,82,83)は、分流プレート(FP2,FP3,FP4)を厚さ方向に貫通する穴である。
【0021】
第8の態様では、分流プレート(FP2,FP3,FP4)の穴によってプレート空間(81,82,83)が構成される。このため、プレート空間(81,82,83)を分流プレート(FP2,FP3,FP4)の厚さ方向に延ばすことができる。
【0022】
第9の態様は、第8の態様においては、前記プレート空間(81,82,83)は、互いに同じ形状である。
【0023】
第9の態様では、分流空間(80)の加工が容易になる。
【0024】
第10の態様は、第7の態様において、流出口(O)は、分流空間(80)の第3方向における中間部に配置され、流入口(I1,I2,I3)は、分流空間(80)の第3方向における端部寄りに配置される。
【0025】
第10の態様では、流出口(O)と、流入口(I1,I2,I3)との距離が短くなることと抑制でき、この流入口(I1,I2,I3)に冷媒が偏流することを抑制できる。
【0026】
第11の態様は、第1~第10のいずれか1つの態様において、流入路(71)には、下流側に近づくにつれて流路断面を縮小させる縮小部(75a)が形成される。
【0027】
第11の態様では、冷媒が流入路(71)の縮小部(75a)を流れることで、この冷媒の流速が大きくなる。冷媒の流速を大きくすることで冷媒が一部の流出路(91,92,93)に偏流してしまうことを抑制できる。
【0028】
第12の態様は、第1~第11のいずれか1つの態様において、複数の流出路(91,92,93)は、3つ以上、5つ以下である。
【0029】
第12の態様では、流出路(91,92,93)を3つ以上としても分流空間(80)により分流性能を向上できる。複数の流出路(91,92,93)を5つ以下とすることで、流出路(91,92,93)を増やすことに起因して分流性能が悪化することを抑制できる。
【0030】
第13の態様は、第1~第12のいずれか1つの態様において、分流空間(80)の第2方向の長さは、1mm以上6mm以下である。
【0031】
第13の態様では、分流空間(80)の第2方向の長さが1mm以上であるので、分流空間(80)の流路抵抗を低減できる。分流空間(80)の第2方向の長さが6mm以下であるので、冷媒が一部の流出路(91,92,93)に偏流することを抑制できる。
【0032】
第14の態様は、第1~第13のいずれか1つの態様において、プレート積層体(50)には、熱交換部(40A)と第1方向に重ならない第1領域(A1)が形成され、分流流路(70)は、前記第1領域(A1)に形成される。
【0033】
第14の態様では、熱交換部(40A)の伝熱管(42)と、分流流路(70)とが第1方向において干渉することを抑制できる。
【0034】
第15の態様は、第1~第14のいずれか1つの態様の熱交換器ユニット(U)を備えた空調室内機である。
【0035】
第16の態様は、第1~14のいずれか1つの態様の熱交換器ユニット(U)が接続される冷媒回路(11)を備える冷凍サイクル装置である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、実施形態に係る空気調和装置の配管系統図である。
図2図2は、空調室内機の正面図である。
図3図3は、空調室内機のA-A線の断面図である。
図4図4は、空調室内機の内部構造を示す正面図である。
図5図5は、伝熱管と、プレート積層体の接続構造を示す断面図である。
図6図6は、熱交換器ユニットの要部の斜視図である。
図7図7は、前側プレート積層体の分解斜視図である。
図8図8は、分流流路の要部の斜視図である。
図9図9は、第3前側プレートの分流流路を拡大した側面図であり、図7のR9の一点鎖線で囲んだ部分に対応する。
図10図10は、第2前側プレートの分流流路を拡大した側面図であり、図7のR10の一点鎖線で囲んだ部分に対応する。
図11図11は、第4前側プレートの分流流路を拡大した側面図であり、図7のR11の一点鎖線で囲んだ部分に対応する。
図12図12は、分流流路の横断面図である。
図13図13は、変形例1の分流流路の横断面図である。
図14図14は、変形例2の分流流路の横断面図である。
図15図15は、変形例3の分流流路の横断面図である。
図16図16は、変形例4の分流流路の横断面図である。
図17図17は、変形例5の分流流路の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0038】
(1)空気調和装置の全体構成
本実施形態は、熱交換器ユニット(U)を備えた空気調和装置(10)である。空気調和装置(10)は、対象空間である室内空間(5)の空気の温度を調節する。
【0039】
図1に示すように、空気調和装置(10)は、冷媒回路(11)を備える冷凍サイクル装置の一例である。冷媒回路(11)には、冷媒が充填される。冷媒回路(11)は、冷媒を循環させることにより冷凍サイクルを行う。
【0040】
空気調和装置(10)は、室外機(20)、室内機(30)、第1連絡配管(12)、および第2連絡配管(13)を備える。空気調和装置(10)は、1つの室外機(20)と、1つの室内機(30)とを有するペア式である。第1連絡配管(12)は、ガス連絡配管であり、第2連絡配管(13)は、液連絡配管である。空気調和装置(10)では、室外機(20)と室内機(30)を第1連絡配管(12)及び第2連絡配管(13)で接続することによって、冷媒回路(11)が形成される。
【0041】
室外機(20)は、室外に設置される。室外機(20)は、室外ケーシング(20a)、室外ケーシング(20a)に収容される圧縮機(21)、室外熱交換器(22)、室外膨張弁(23)、四方切換弁(24)、および室外ファン(25)を含む。
【0042】
圧縮機(21)は、揺動ピストン式、ロータリ式、スクロール式などの回転式圧縮機である。室外熱交換器(22)は、冷媒と室外空気と熱交換させる。室外熱交換器(22)は、フィンアンドチューブ式の空気熱交換器である。室外膨張弁(23)は冷媒を減圧する。室外膨張弁(23)は、電子膨張弁である。四方切換弁(24)は、第1状態(図1の実線で示す状態)と第2状態(図1の破線で示す状態)とに切り換わる。第1状態の四方切換弁(24)は、圧縮機(21)の吐出部と室外熱交換器(22)のガス端部とを連通させ、且つ圧縮機(21)の吸入部と第1連絡配管(12)とを連通させる。第2状態の四方切換弁(24)は、圧縮機(21)の吐出部と第1連絡配管(12)とを連通させ、且つ圧縮機(21)の吸入部と室外熱交換器(22)のガス端部とを連通させる。室外ファン(25)は、室外熱交換器(22)を流れる空気を搬送する。室外ファン(25)は、プロペラファンである。
【0043】
室内機(30)は、ケーシング(31)と、室内ファン(32)と、熱交換器ユニット(U)とを備える。室内ファン(32)および熱交換器ユニット(U)は、ケーシング(31)に収容される。
【0044】
(2)室内機
室内空調機である室内機(30)の詳細について図2図4を参照しながら説明する。本実施形態の室内機(30)は、室内空間(5)の壁に設けられる壁掛け式である。なお、以下で説明する「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」に関する語句は、図2および図3に示す矢印の方向に対応し、ケーシング(31)を前側からみる場合の方向を示す。
【0045】
(2-1)ケーシング
ケーシング(31)は、左右に横長の箱状に形成される。ケーシング(31)は、前板(31a)、後板(31b)、上板(31c)、下板(31d)、第1側板(31e)、および第2側板(31f)を有する。
【0046】
前板(31a)は、ケーシング(31)の前側に形成され、ケーシング(31)の前面を構成する。後板(31b)は、ケーシング(31)の後側に形成され、ケーシング(31)の後面を構成する。上板(31c)は、ケーシング(31)の上側に形成され、ケーシング(31)の上面を構成する。下板(31d)は、ケーシング(31)の下側に形成され、ケーシング(31)の下面を構成する。第1側板(31e)は、ケーシング(31)の右側に形成され、ケーシング(31)の右面を構成する。第2側板(31f)は、ケーシング(31)の左側に形成され、ケーシング(31)の左面を構成する。
【0047】
上板(31c)には吸込口(33)が形成され、下板(31d)には吹出口(34)が形成される。ケーシング(31)の内部には、吸込口(33)から吹出口(34)までに亘って、空気通路(38)が形成される。吸込口(33)は、ケーシング(31)の長手方向(左右方向)に延びている。吸込口(33)は、室内空間(5)の空気を空気通路(38)に取り込むための開口である。下板(31d)には、吹出口(34)が形成される。吹出口(34)は、ケーシング(31)の長手方向に延びている。吹出口(34)は、空気通路(38)の空気を室内空間(5)へ吹き出すための開口である。
【0048】
(2-2)フィルタ
室内機(30)は、フィルタ(35)を備える。フィルタ(35)は、吸込口(33)の奥側で且つ室内熱交換器(40)の上流側に配置される。フィルタ(35)は、吸込口(33)から室内熱交換器(40)へ送られる空気中の塵埃を捕集する。室内機(30)は、フィルタ(35)が捕集した塵埃を取り除く塵埃除去機構を備えていてもよい。
【0049】
(2-3)熱交換ユニット
熱交換器ユニット(U)は、室内熱交換器(40)と、中間配管(66)と、室内膨張弁(37)と、液中継管(67)と、ガス中継管(68)とを備える。室内熱交換器(40)は、熱交換器本体(B)と、熱交換器本体(B)と接続する2つのプレート積層体(50,60)とを備える。これらの詳細は後述する。
【0050】
(2-4)室内ファン
室内ファン(32)は、空気通路(38)に配置される。室内ファン(32)は、空気通路(38)において、室内熱交換器(40)の下流側に配置される。室内ファン(32)は、クロスフローファンである。室内ファン(32)は、そのファンロータがケーシング(31)の長手方向に延びる。
【0051】
(2-5)フラップ
室内機(30)は、吹出口(34)から吹き出す空気の風向を調節するフラップ(36)を有する。フラップ(36)は、上下方向の風向を調節する。室内機(30)は、複数のフラップ(36)を有してもよい。フラップ(36)は、左右方向の風向を調節してもよい。
【0052】
(3)室内熱交換器の詳細
室内熱交換器(40)について、図3図9を参照しながら詳細に説明する。室内熱交換器(40)は、空気と冷媒とを熱交換させる。室内熱交換器(40)は、フィンアンドチューブ式の空気熱交換器である。室内熱交換器(40)は、熱交換器本体(B)と、該熱交換器本体(B)と接続する2つのプレート積層体(50)とを備える。
【0053】
(3-1)熱交換器本体
図4および図5に示すように、熱交換器本体(B)は、ケーシング(31)の長手方向に配列される複数のフィン(41)と、フィン(41)の配列方向に延びる複数の伝熱管(42)とを有する。プレート積層体(50,60)は、伝熱管(42)と連通する冷媒流路(51,61)を内部に有する。
【0054】
フィン(41)の配列方向は、ケーシング(31)の長手方向(ここでは左右方向)に対応する。フィン(41)は、長辺と短辺とを有する矩形板状である。フィン(41)の厚さ方向は、フィン(41)の配列方向に対応する。複数のフィン(41)は、その厚さ方向に所定の間隔を置いて配列される。この間隔が空気の流路を構成する。フィン(41)の材質は、アルミニウム合金である。
【0055】
複数の伝熱管(42)の材質は、アルミニウム合金である。伝熱管(42)の内部には、冷媒の流路が形成される。複数の伝熱管(42)は、フィン(41)を貫通するように互いに平行に延びる。伝熱管(42)の一端部である右側端部は、フィン(41)の右側に突出する。伝熱管(42)の一端部は、プレート積層体(50,60)に接続される。複数の伝熱管(42)の他端部である各左側端部のうち、隣接する二つの伝熱管(42)の左側端部は、U字管(49)により互いに接続される。隣接する二つの伝熱管(42)と、それらを繋ぐU字管(49)とは、継ぎ目無く一体に形成される。
【0056】
本実施形態の室内熱交換器(40)は、第1熱交換部である前側熱交換部(40A)と、第2熱交換部である後側熱交換部(40B)とを有する。前側熱交換部(40A)は、ケーシング(31)の前側寄りに位置し、後側熱交換部(40B)は、ケーシング(31)の後側寄りに位置する。前側熱交換部(40A)と、後側熱交換部(40B)とは、室内ファン(32)を挟むように、前後方向に並ぶ。前後方向は、伝熱管(42)の軸方向および上下方向に直交する方向である。
【0057】
前側熱交換部(40A)は、前側主熱交換部(43)と、第1補助熱交換部(44)と、第2補助熱交換部(45)とを有する。
【0058】
前側主熱交換部(43)は、前側熱交換部(40A)における室内ファン(32)寄りに配置される。前側主熱交換部(43)の外形は、伝熱管(42)の軸方向でみる場合に、V字状に形成される。このV字の先端は前側を指向する。前側主熱交換部(43)を構成するフィン(41)は、後側に向かって斜め上側に延びる第1部分(41a)と、後側に向かって斜め下側に延びる第2部分(41b)とを有する。第1部分(41a)と延びる方向と、第2部分(41b)の延びる方向との間の角度は、概ね90°~110°である。第1部分(41a)と第2部分(41b)とは、一体で構成されていてもよいし、別体で構成されていてもよい。
【0059】
第1補助熱交換部(44)は、第1前側主熱交換部(43a)の流入側(前側)に設けられる。第1補助熱交換部(44)のフィン(41)の長辺および短辺の長さは、第1前側主熱交換部(43a)のフィン(41)のそれらの長さよりも短い。第1補助熱交換部(44)における伝熱管(42)の長辺に沿った方向の数(以下、段数という)は、第1前側主熱交換部(43a)の伝熱管(42)の段数よりも少ない。第1補助熱交換部(44)における伝熱管(42)の短辺に沿った方向の数(以下、列数という)は、第1前側主熱交換部(43a)の伝熱管(42)の列数よりも少ない。
【0060】
第2補助熱交換部(45)は、第2前側主熱交換部(43b)の流入側(前側)に設けられる。第2補助熱交換部(45)のフィン(41)の長辺および短辺の長さは、第2前側主熱交換部(43b)のフィン(41)のそれらの長さよりも短い。第2補助熱交換部(45)の伝熱管(42)の段数および列数は、第2前側主熱交換部(43b)の伝熱管(42)の段数および列数よりも少ない。
【0061】
後側熱交換部(40B)は、後側主熱交換部(46)と、第3補助熱交換部(47)とを有する。後側主熱交換部(46)の後側熱交換部(40B)における室内ファン(32)寄りに配置される。第3補助熱交換部(47)は、後側主熱交換部(46)の流入側(後側)に設けられる。第3補助熱交換部(47)のフィン(41)の長辺および短辺の長さは、後側主熱交換部(46)のフィン(41)の長辺および短辺の長さよりも短い。第3補助熱交換部(47)の伝熱管(42)の段数および列数は、後側主熱交換部(46)の伝熱管(42)の段数および列数よりも少ない。
【0062】
図5に示すように、伝熱管(42)の一端部は、フレア加工されたフレア部(48)を有する。フレア部(48)は、プレート積層体(50,60)に近づくにつれて径が拡大する拡径部(48a)と、拡径部(48a)のプレート積層体(50,60)側の端部から同径で軸方向に延びる円筒部(48b)とを有する。詳しくは後述するが、フレア部(48)は、プレート積層体(50,60)の伝熱管側接続部(53,63)と接続される部分である。
【0063】
(3-2)プレート積層体
プレート積層体(50,60)は、最も右側のフィン(41)の右側に、フィン(41)と平行に配置される。プレート積層体(50,60)は、伝熱管(42)の一端部に接続される。図6に示すように、プレート積層体(50,60)は、前側熱交換部(40A)の伝熱管(42)と接続される前側プレート積層体(50)と、後側熱交換部(40B)の伝熱管(42)と接続される後側プレート積層体(60)とを含む。前側プレート積層体(50)は、伝熱管(42)の軸方向において前側熱交換部(40A)と重なるように配置される。後側プレート積層体(60)は、伝熱管(42)の軸方向において後側熱交換部(40B)と重なるように配置される。
【0064】
(3-2-1)前側プレート積層体
前側プレート積層体(50)は、内部に冷媒流路(厳密には、第1冷媒流路(51))を有する前側本体部(52)と、前側熱交換部(40A)の複数の伝熱管(42)と第1冷媒流路(51)とを接続する複数の前側接続部(53)とを有する。
【0065】
図5図7に示すように、前側本体部(52)は、5枚の前側プレートを積層することによって形成された厚板状の部材である。前側プレートの積層方向は伝熱管(42)の軸方向と同じである。
【0066】
前側プレート積層体(50)では、前側熱交換部(40A)に近い方から順に、第1前側プレート(FP1)と、第2前側プレート(FP2)と、第3前側プレート(FP3)と、第4前側プレート(FP4)と、第5前側プレート(FP5)とが重ね合わされる。第1前側プレート(FP1)は、伝熱管(42)の軸方向における熱交換器本体(B)側のカバープレートである。第5前側プレート(FP5)は、伝熱管(42)の軸方向における熱交換器本体(B)と反対側(ケーシング(31)の第1側板(31e)側)のカバープレートである。第2前側プレート(FP2)、第3前側プレート(FP3)、および第4前側プレート(FP4)は、第1前側プレート(FP1)と第5前側プレート(FP5)との間に挟まれた中間プレートである。五枚の前側プレートは、それぞれの外縁の形状が共通する平板状の部材である。各前側プレートは、伝熱管(42)および前側接続部(53)と同じ材料で構成される。本実施形態では、各前側プレートの材質は、アルミニウム合金である。第1前側プレート(FP1)および第5前側プレート(FP5)の厚みは、1.5mmである。第2前側プレート(FP2)、第3前側プレート(FP3)、および第4前側プレート(FP4)の厚みは、3.0mmである。各前側プレートは、炉中ロウ付けにより互いに接合されている。なお、前側プレートの枚数は一例であり、前側プレートの枚数は、4枚以下でもよく、6枚以上でもよい。以下、各前側プレートを区別する必要がないときには、単に前側プレートという。
【0067】
(3-2-2)後側プレート積層体
後側プレート積層体(60)は、内部に冷媒流路(厳密には、第2冷媒流路(61))を有する後側本体部(62)と、後側熱交換部(40B)の複数の伝熱管(42)と第2冷媒流路(61)とを接続する複数の後側接続部(63)とを有する。
【0068】
図5および図6に示すように、後側本体部(62)は、五枚の後側プレートを積層することによって形成された厚板状の部材である。後側プレートの積層方向は伝熱管(42)の軸方向と同じである。
【0069】
後側プレート積層体(60)では、後側熱交換部(40B)に近い方から順に、第1後側プレート(BP1)と、第2後側プレート(BP2)と、第3後側プレート(BP3)と、第4後側プレート(BP4)と、第5後側プレート(BP5)とが重ね合わされる。第1後側プレート(BP1)は、伝熱管(42)の軸方向における熱交換器本体(B)側のカバープレートである。第5後側プレート(BP5)は、伝熱管(42)の軸方向における熱交換器本体(B)と反対側(ケーシング(31)の第1側板(31e)側)のカバープレートである。第2後側プレート(BP2)、第3後側プレート(BP3)、および第4後側プレート(BP4)は、第1後側プレート(BP1)と第5後側プレート(BP5)との間に挟まれた中間プレートである。五枚の後側プレートは、それぞれの外縁の形状が共通する平板状の部材である。各後側プレートは、伝熱管(42)および後側接続部(63)と同じ材料で構成される。本実施形態では、各後側プレートの材質は、アルミニウム合金である。第1後側プレート(BP1)および第5後側プレート(BP5)の厚みは、1.5mmである。第2後側プレート(BP2)、第3後側プレート(BP3)、および第4後側プレート(BP4)の厚みは、3.0mmである。各後側プレートは、炉中ロウ付けにより互いに接合されている。なお、後側プレートの枚数は一例であり、後側プレートの枚数は、4枚以下でもよく、6枚以上でもよい。以下、各後側プレートを区別する必要がないときには、単に後側プレートという。さらに、前側プレートと後側プレートとを総称としてプレート(P)ともいう。
【0070】
(3-2-3)伝熱管側接続部
図5に示すように、プレート積層体(50,60)は、複数の前側接続部(53)と、複数の後側接続部(63)とを有する。複数の前側接続部(53)は、前側プレート積層体(50)に設けられ、複数の後側接続部(63)は、後側プレート積層体(60)に設けられる。前側接続部(53)および後側接続部(63)を区別する必要がない場合、これらを伝熱管側接続部(53,63)ともいう。
【0071】
前側接続部(53)は、前側本体部(52)の第1前側プレート(FP1)における熱交換器本体(B)側に設けられる。前側接続部(53)は、前側本体部(52)から前側熱交換部(40A)に向かって伝熱管(42)の軸方向に突出する。
【0072】
後側接続部(63)は、後側本体部(62)の第1後側プレート(BP1)における熱交換器本体(B)側に設けられる。後側接続部(63)は、後側本体部(62)から後側熱交換部(40B)に向かって伝熱管(42)の軸方向に突出する。
【0073】
伝熱管側接続部(53,63)は、円管である。伝熱管側接続部(53,63)の材質は、アルミニウム合金である。図5に示すように、伝熱管側接続部(53,63)の先端部は、対応する伝熱管(42)の端部に内挿される。言い換えると、伝熱管(42)の端部は、伝熱管側接続部(53,63)に外挿される。伝熱管側接続部(53,63)は、対応する伝熱管(42)のフレア部(48)に挿入される。伝熱管側接続部(53,63)は、フレア部(48)に挿し込まれて、フレア部(48)の円筒部(48b)とバーナーロウ付けによって接合される。
【0074】
(3-3)中間配管
図6に示すように、熱交換器ユニット(U)は、中間配管(66)を有する。中間配管(66)は、前側熱交換部(40A)と後側熱交換部(40B)とを接続する。本実施形態の中間配管(66)には、室内膨張弁(37)が接続される。
【0075】
中間配管(66)の一端は、前側プレート積層体(50)に接続される。具体的には、中間配管(66)の一端は、前側本体部(52)において、前側熱交換部(40A)と反対側の面に接続される。中間配管(66)の一端は、第1冷媒流路(51)と連通する。中間配管(66)の他端は、後側プレート積層体(60)に接続される。具体的には、中間配管(66)の他端は、後側本体部(62)において、後側熱交換部(40B)を反対側の面に接続される。中間配管(66)の他端は、第2冷媒流路(61)と連通する。
【0076】
(3-4)室内膨張弁
室内膨張弁(37)は、熱交換器本体(B)の右側に配置される。室内膨張弁(37)は、中間配管(66)に接続される。室内膨張弁(37)は、中間配管(66)を流れる冷媒を減圧する。室内膨張弁(37)は、電子膨張弁である。
【0077】
(3-5)液中継管
図6に示すように、熱交換器ユニット(U)は、液中継管(67)を有する。液中継管(67)の一端は、前側プレート積層体(50)に接続する。液中継管(67)の他端は、ケーシング(31)の外部において液連絡配管である第2連絡配管(13)と接続する。
【0078】
(3-6)ガス中継管
図6に示すように、熱交換器ユニット(U)は、ガス中継管(68)を有する。ガス中継管(68)の一端は、後側プレート積層体(60)に接続する。ガス中継管(68)の他端は、ケーシング(31)の外部においてガス連絡配管である第1連絡配管(12)と接続する。
【0079】
(4)分流流路
前側プレート積層体(50)には、分流流路(70)が形成される。分流流路(70)は、第1冷媒流路(51)の一部である。分流流路(70)は、前側プレート積層体(50)の内部において冷媒を分流させる。分流流路(70)の詳細について図6図12を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、第1方向は、プレート(P)の積層方向(図6の左右方向)に対応し、第2方向は、鉛直方向に沿う方向(図6の上下方向)に対応し、第3方向は、第1方向に直交し且つ水平方向に沿う方向(図6の前後方向)に対応する。
【0080】
(4-1)分流流路の基本構成
分流流路(70)は、複数のプレート(P)が積層されることで形成される。分流流路(70)は、前側プレート積層体(50)において、図7の一点鎖線で囲む第1領域(A1)に位置する。第1領域(A1)は、前側熱交換部(40A)と、第1方向に重ならない領域である。第1領域(A1)は、前側プレート積層体(50)の上部且つ前側寄りに位置する。
【0081】
図8に示すように、分流流路(70)は、1つの流入路(71)と、1つの分流空間(80)と、3つの流出路(91,92,93)とを有する。
【0082】
流入路(71)は、冷媒を分流空間(80)に流入させるための流路である。流入路(71)の流出端に位置する流出口(O)は、分流空間(80)と接続する。流出口(O)は、分流空間(80)に向かって開口する。
【0083】
分流空間(80)は、冷媒を各流出路(91,92,93)に分流させるための空間である。分流空間(80)は、前側から後側に向かって順に連続する、第2プレート空間(82)、第1プレート空間(81)、および第3プレート空間(83)によって構成される。
【0084】
流出路(91,92,93)は、分流空間(80)で分流した冷媒が流入する流路である。3つの流出路(91,92,93)は、第1流出路(91)と、第2流出路(92)と、第3流出路(93)とで構成される。第1流出路(91)の流入端に位置する流入口(第1流入口(I1))は、分流空間(80)と接続する。第1流入口(I1)は、分流空間(80)に向かって開口する。第2流出路(92)の流入端に位置する流入口(第2流入口(I2))は、分流空間(80)と接続する。第2流入口(I2)は、分流空間(80)に向かって開口する。第3流出路(93)の流入端に位置する流入口(第3流入口(I3))は、分流空間(80)と接続する。第3流入口(I3)は、分流空間(80)に向かって開口する。
【0085】
(4-2)前側プレートの構成
図7に示すように、分流流路(70)は、第2前側プレート(FP2)と、第3前側プレート(FP3)と、第4前側プレート(FP4)に形成した空間が連続することで構成される。第2前側プレート(FP2)、第3前側プレート(FP3)、および第4前側プレート(FP4)は、各々がプレート空間(81,82,83)を形成するともに第1方向に隣接する分流プレートを構成する。第1前側プレート(FP1)および第5前側プレート(FP5)は、分流流路(70)を閉塞するための閉塞プレートを構成する。
【0086】
第3前側プレート(FP3)は、第1プレートに対応する。第2前側プレート(FP2)は、第3前側プレート(FP3)の厚さ方向の一端側(図6の左側)に配置される第2プレートに対応する。第4前側プレート(FP4)は、第3前側プレート(FP3)の厚さ方向の他端側(図6の右側)に配置される第3プレートに対応する。第3前側プレート(FP3)は、第2前側プレート(FP2)と第4前側プレート(FP4)との間に配置される。
【0087】
(4-2-1)第3前側プレート
図9に示すように、第3前側プレート(FP3)には、分流流路(70)を構成するための要素として、流入中継路(75)、第1プレート空間(81)、および第1流出路(91)が形成される。流入中継路(75)、第1プレート空間(81)、および第1流出路(91)は、第3前側プレート(FP3)を厚さ方向(第1方向)に貫通する穴によって構成される。
【0088】
流入中継路(75)は、流入路(71)の一部を構成する。流入中継路(75)は、第2方向に延びる。流入中継路(75)の流入端(下端)は、略円形に形成される。流入中継路(75)には、下流側(図9の上方)に向かうにつれて、流路断面積を縮小させる縮小部(75a)が形成される。縮小部(75a)は、下流側に向かうにつれて流入路(71)における第3方向の長さ(以下、幅ともいう)を縮小させるテーパ状に形成される。流入中継路(75)の流出部は直方体状に形成される。
【0089】
第1プレート空間(81)は、第3方向に延びる横長の形状である。言い換えると、第1プレート空間(81)の長手方向が第3方向に対応する。第1プレート空間(81)は、直方体状に形成される。
【0090】
流入中継路(75)の流出端である流出口(O)は、第1プレート空間(81)に連続する。流出口(O)は、第1プレート空間(81)の下側に位置する。流出口(O)は、第1プレート空間(81)における第3方向の中間部に位置する。
【0091】
第1流出路(91)は、第2方向に延びる縦長の形状である。第1流出路(91)の流入端である第1流入口(I1)は、第1プレート空間(81)に連続する。第1流入口(I1)は、第1プレート空間(81)の上側に位置する。第1流入口(I1)は、第1プレート空間(81)における第3方向の一端寄り(後端寄り)に位置する。具体的には、第1流入口(I1)は、第1プレート空間(81)の第3方向の一端(後端)に位置する。第1プレート空間(81)の一端と、第1流入口(I1)とは段差なく連続する。
【0092】
第3前側プレート(FP3)には、分流流路(70)と連続する流路として、第1連通穴(76)と、第2連通穴(77)とが形成される。第1連通穴(76)は、第1流出路(91)の流出端の前側に位置する。第2連通穴(77)は、第1連通穴(76)および第1流出路(91)の上側に位置する。第1連通穴(76)および第2連通穴(77)は、円形状に形成される。
【0093】
(4-2-2)第2前側プレート
図10に示すように、第2前側プレート(FP2)には、分流流路(70)を構成するための要素として、導入路(78)、第2プレート空間(82)、および第2流出路(92)が形成される。導入路(78)、第2プレート空間(82)、および第2流出路(92)は、第2前側プレート(FP2)を厚さ方向(第1方向)に貫通する穴によって構成される。
【0094】
導入路(78)は、流入路(71)の一部である。本実施形態の導入路(78)は、U字状に湾曲する。導入路(78)の流出端は、流入中継路(75)の流入端と第1方向に重なる。導入路(78)の流路断面積は、各流出路(91,92,93)のそれぞれの流路断面積よりも大きい。
【0095】
第2プレート空間(82)は、第3方向に延びる横長の形状である。言い換えると、第2プレート空間(82)の長手方向が第3方向に対応する。第2プレート空間(82)は、直方体状に形成される。
【0096】
第2流出路(92)は、第2方向に延びる縦長の形状である。第2流出路(92)の流入端である第2流入口(I2)は、第2プレート空間(82)に連続する。第2流入口(I2)は、第2プレート空間(82)の上側に位置する。第2流入口(I2)は、第2プレート空間(82)における第3方向の他端寄り(前端寄り)に位置する。具体的には、第2流入口(I2)は、第2プレート空間(82)の第3方向の他端(前端)に位置する。第2プレート空間(82)の第3方向の他端と、第2流入口(I2)とは段差なく連続する。
【0097】
第2前側プレート(FP2)には、分流流路(70)と連続する流路として、第1中継流路(94)、第2中継流路(95)、および第3中継流路(96)が形成される。第1中継流路(94)、第2中継流路(95)、および第3中継流路(96)は、第2前側プレート(FP2)を厚さ方向(第1方向)に貫通する穴によって構成される。
【0098】
第1中継流路(94)は、第2前側プレート(FP2)において、第1流出路(91)と接続する。第2中継流路(95)の流入端は、第1連通穴(76)と第1方向に重なる。第2中継流路(95)は、第1連通穴(76)を介して第3流出路(93)と連通する。第3中継流路(96)の流入端は、第1流出路(91)と第1方向に重なる。第3中継流路(96)は、第1流出路(91)と連通する。
【0099】
(4-2-3)第4前側プレート
図11に示すように、第4前側プレートには、分流流路(70)を構成するための要素として、第3プレート空間(83)および第3流出路(93)が形成される。第3プレート空間(83)および第3流出路(93)は、第4前側プレート(FP4)を厚さ方向(第1方向)に貫通する穴によって構成される。
【0100】
第3プレート空間(83)は、第3方向に延びる横長の形状である。言い換えると、第3プレート空間(83)の長手方向が第3方向に対応する。第3プレート空間(83)は、直方体状に形成される。
【0101】
第3流出路(93)は、第2方向に延びる縦長の形状である。第3流出路(93)の流入端である第3流入口(I3)は、第3プレート空間(83)に連続する。第3流入口(I3)は、第3プレート空間(83)の上側に位置する。第3流入口(I3)は、第3プレート空間(83)における第3方向の他端寄り(前端寄り)に位置する。具体的には、第3流入口(I3)は、第3プレート空間(83)の第3方向の他端(前端)に位置する。第3プレート空間(83)の第3方向の他端と、第3流入口(I3)とは段差なく連続する。
【0102】
第4前側プレート(FP4)には、分流流路(70)と連続する流路として、第4中継流路(97)、第5中継流路(98)、および第6中継流路(99)とが形成される。第4中継流路(97)、第5中継流路(98)、および第6中継流路(99)は、第4前側プレート(FP4)を厚さ方向(第1方向)に貫通する穴によって構成される。
【0103】
第4中継流路(97)は、第4前側プレート(FP4)において、第3流出路(93)と接続する。第5中継流路(98)の流入端は、第2連通穴(77)と第1方向に重なる。第5中継流路(98)は、第2連通穴(77)を介して第2流出路(92)と連通する。第6中継流路(99)の流入端は、第1流出路(91)と第1方向に重なる。第6中継流路(99)は、第1流出路(91)と連通する。
【0104】
(4-4)分流空間
前側プレート積層体(50)では、各プレート(P)が積層されることで、その内部に分流空間(80)が形成される。図8に示すように、分流空間(80)は、第2プレート空間(82)、第1プレート空間(81)、および第3プレート空間(83)が第1方向に連続することで構成される。第1プレート空間(81)、第2プレート空間(82)、および第3プレート空間(83)は、第1方向において、互いに重なる。第1プレート空間(81)、第2プレート空間(82)、および第3プレート空間(83)は、同一の形状であるのが好ましい。第1プレート空間(81)、第2プレート空間(82)、および第3プレート空間(83)は、第1方向において、互いの全部が重なるのが好ましい。
【0105】
分流空間(80)は、直方体状に形成される。分流空間(80)の第1方向の長さをL1、第2方向の長さをL2、第3方向の長さをL3とすると、本実施形態の分流空間(80)は、L2<L1<L3の関係を満たす。
【0106】
分流空間(80)の第2方向の長さL2は、1mm以上6mm以下である。L2を1mm以上とすることで、分流空間(80)の流路抵抗を低減できる。L2を6mm以下とすることで、流出口(O)と各流入口(I1,I2,I3)と流出口(O)との距離が長くなり過ぎるのを抑制できる。L1は、9mm以上であるのが好ましく、L3は15mm以上であるのが好ましい。L1やL3は、分流プレート(FP2,FP3,FP4)の厚さ(例えば3mm)より大きい。
【0107】
(4-5)流出口および各流入口の位置関係
図12は、分流空間の横断面図である。流入路(71)の流出口(O)は、分流空間(80)を定義する下面(80a)に形成される。各流出路(91,92,93)の各流入口(I1,I2,I3)は、分流空間(80)を定義する上面(80b)に形成される。流出口(O)と各流入口(I1,I2,I3)とは、分流空間(80)を挟んで反対側に配置される。
【0108】
流出口(O)の横断面は方形状である。流出口(O)の横断面は、第3方向に延びる横長の形状である。このように、流出口(O)を、その流れ方向と直交するように、プレート(P)の表面および裏面に沿って延ばすことで、流出口(O)の流路断面積を拡大できる。
【0109】
流出口(O)は、分流空間(80)における第1方向の中間部に配置される。流出口(O)は、第2方向でみる場合に、分流空間(80)の第1方向の中心線(第1中心線(M1))と重なる位置にある。流出口(O)は、分流空間(80)における第3方向の中間部に配置される。流出口(O)は、第2方向でみる場合に、分流空間(80)の第3方向の中心線(第2中心線(M2))と重なる位置にある。このように、流出口(O)は、第1方向でみる場合に、分流空間(80)の中心部に位置する。
【0110】
各流入口(I1,I2,I3)の横断面は方形状である。流入口(I1,I2,I3)の横断面は、第3方向に延びる横長の形状である。このように、流入口(I1,I2,I3)を、その流れ方向と直交するように、プレート(P)の表面および裏面に沿って延ばすことで、流入口(I1,I2,I3)の流路断面積を拡大できる。第1流入口(I1)、第2流入口(I2)、および第3流入口(I3)は、第2方向でみる場合に、千鳥状に配列される。
【0111】
第1流入口(I1)と流出口(O)とは、第2方向でみる場合に、互いにずれている。第1流入口(I1)と流出口(O)は、分流空間(80)における第1方向の中間部に配置される。具体的には、第1流入口(I1)と流出口(O)とは、第2方向でみる場合に、第1中心線(M1)上に配置される。流出口(O)は、第2方向でみる場合に、第2中心線(M2)上に配置される。第1流入口(I1)は、第3方向の他端(後端)に位置する。第1流入口(I1)は、分流空間(80)を定義する後面(80c)と面一となるように配置される。
【0112】
第2流入口(I2)と流出口(O)とは、第2方向でみる場合に、互いにずれている。第2流入口(I2)は、分流空間(80)における第1方向の一端(左端)に配置される。第2流入口(I2)は、分流空間(80)における第3方向の一端(前端)に配置される。このように、第2流入口(I2)は、第2方向でみる場合に、分流空間(80)の角部に位置する。第2流入口(I2)を分流空間(80)の角部に配置することで、流出口(O)と第2流入口(I2)との距離が短くなりすぎるのを抑制できる。第2流入口(I2)は、分流空間(80)を定義する左面(80d)および前面(80e)と面一となるように配置される。
【0113】
第3流入口(I3)と流出口(O)とは、第2方向でみる場合に、互いにずれている。第3流入口(I3)は、分流空間(80)における第1方向の他端(右端)に配置される。第3流入口(I3)は、分流空間(80)における第3方向の一端(前端)に配置される。このように、第3流入口(I3)は、第2方向でみる場合に、分流空間(80)の角部に位置する。第3流入口(I3)を分流空間(80)の角部に配置することで、流出口(O)と第3流入口(I3)との距離が短くなりすぎるのを抑制できる。第3流入口(I3)は、分流空間(80)を定義する右面(80f)および前面(80e)と面一となるように配置される。
【0114】
(5)運転動作
空気調和装置(10)は、冷房運転と、暖房運転と、除湿運転とを行う。
【0115】
(5-1)冷房運転
冷房運転では、空気調和装置(10)のコントローラが、圧縮機(21)、室外ファン(25)および室内ファン(32)を運転させ、四方切換弁(24)を第1状態(図1の実線で示す状態)とし、室外膨張弁(23)の開度を適宜調節し、室内膨張弁(37)を全開とする。
【0116】
冷房運転中の冷媒回路(11)は、室外熱交換器(22)が凝縮器(放熱器)として機能し、室内熱交換器(40)が蒸発器として機能する冷凍サイクルを行う。
【0117】
室内機(30)は、室内空間(5)の室内空気を、吸込口(33)を介して空気通路(38)に吸い込む。空気通路(38)の空気は、室内熱交換器(40)によって冷却される。冷却された空気は、吹出口(34)から室内空間(5)に供給される。
【0118】
熱交換器ユニット(U)では、液中継管(67)に流入した冷媒が、前側熱交換部(40A)の前側プレート積層体(50)に流入する。前側熱交換部(40A)において、冷媒は、各伝熱管(42)を通過する間に室内空気から吸熱する。その後、冷媒は、前側プレート積層体(50)を通って第1内部配管(71a)へ流入し、室内膨張弁(37)と第2内部配管(71b)を順に通って後側熱交換部(40B)の後側プレート積層体(60)に流入する。後側熱交換部(40B)において、冷媒は、各伝熱管(42)を通過する間に室内空気から吸熱する。その後、冷媒は、後側プレート積層体(60)を通ってガス中継管(68)へ流入し、熱交換器ユニット(U)から流出する。
【0119】
(5-2)暖房運転
暖房運転では、空気調和装置(10)のコントローラが、圧縮機(21)、室外ファン(25)および室内ファン(32)を運転させ、四方切換弁(24)を第2状態(図1の破線で示す状態)とし、室外膨張弁(23)の開度を所定開度に調節し、室内膨張弁(37)を全開とする。
【0120】
暖房運転中の冷媒回路(11)は、室内熱交換器(40)が凝縮器(放熱器)として機能し、室外熱交換器(22)が蒸発器として機能する冷凍サイクルを行う。
【0121】
室内機(30)は、室内空間(5)の室内空気を、吸込口(33)を介して空気通路(38)に吸い込む。空気通路(38)の空気は、室内熱交換器(40)によって加熱される。加熱された空気は、吹出口(34)から室内空間(5)に供給される。
【0122】
熱交換器ユニット(U)では、ガス中継管(68)に流入した冷媒が、後側熱交換部(40B)の後側プレート積層体(60)に流入する。後側熱交換部(40B)において、冷媒は、各伝熱管(42)を通過する間に室内空気へ放熱する。その後、冷媒は、後側プレート積層体(60)を通って第2内部配管(71b)へ流入し、室内膨張弁(37)と第1内部配管(71a)を順に通って前側熱交換部(40A)の前側プレート積層体(50)に流入する。前側熱交換部(40A)において、冷媒は、各伝熱管(42)を通過する間に室内空気へ放熱する。その後、冷媒は、前側プレート積層体(50)を通って液中継管(67)へ流入し、熱交換器ユニット(U)から流出する。
【0123】
(5-3)除湿運転
除湿運転では、空気調和装置(10)のコントローラが、圧縮機(21)、室外ファン(25)および室内ファン(32)を運転させ、四方切換弁(24)を第1状態(図1の実線で示す状態)とし、室外膨張弁(23)及び室内膨張弁(37)の開度を適宜調節する。
【0124】
除湿運転中の冷媒回路(11)は、室外熱交換器(22)と、室内熱交換器(40)の前側熱交換部(40A)とが凝縮器(放熱器)として機能し、室内熱交換器(40)の後側熱交換部(40B)が蒸発器として機能する冷凍サイクルを行う。
【0125】
室内機(30)は、室内空間(5)の室内空気を、吸込口(33)を介して空気通路(38)に吸い込む。後側熱交換部(40B)は、空気通路(38)の空気を露点温度以下まで冷却する。前側熱交換部(40A)は、空気通路(38)の空気を加熱する。両者を通過した空気が空気通路(38)で混合することで、湿度が低い空気となる。このようにして除湿された空気は、吹出口(34)から室内空間(5)に供給される。
【0126】
熱交換器ユニット(U)では、液中継管(67)に流入した冷媒が、前側熱交換部(40A)の前側プレート積層体(50)に流入する。前側熱交換部(40A)において、冷媒は、各伝熱管(42)通過する間に室内空気へ放熱する。その後、冷媒は、前側プレート積層体(50)を通って第1内部配管(71a)へ流入し、室内膨張弁(37)を通過する際に減圧された後に第2内部配管(71b)を流れ、後側熱交換部(40B)の後側プレート積層体(60)に流入する。後側熱交換部(40B)において、冷媒は、各伝熱管(42)を通過する間に室内空気から吸熱する。その後、冷媒は、後側プレート積層体(60)を通ってガス中継管(68)へ流入し、熱交換器ユニット(U)から流出する。
【0127】
(5-4)分流流路の流れ
空気調和装置(10)の運転時には、前側プレート積層体(50)の内部の冷媒が分流流路(70)を流れる。分流流路(70)の冷媒の流れの一例を説明する。
【0128】
図8に示す導入路(78)を流れる冷媒は、流入中継路(75)の縮小部(75a)を流れる。縮小部(75a)では、冷媒の流速が大きくなる。その結果、分流空間(80)を流れる冷媒の流速が大きくなるので、分流空間(80)での冷媒の分流性能を向上できる。
【0129】
縮小部(75a)を通過した冷媒は、流出口(O)から分流空間(80)に流出する。分流空間(80)に分流した冷媒は、第1流入口(I1)、第2流入口(I2)、および第3流入口(I3)を指向するように分散する。
【0130】
仮に流出口(O)と、ある流入口とが第2方向でみる場合に重なっていると、冷媒はこの流入口に偏流しやすくなる。これに対し、本実施形態では、流出口(O)と各流入口(I1,I2,I3)とが第2方向でみる場合に互いにずれている。このため、流出口(O)から分流した冷媒が、一部の流出口(O)に偏流してしまうこと抑制できる。
【0131】
本実施形態では、流出口(O)と第1流入口(I1)との間の距離、流出口(O)と第2流入口(I2)との間の距離、および流出口(O)と第3流入口(I3)との間の距離が、互いに近い距離になっている。このため、流出口(O)から分流した冷媒が、一部の流入口(I1,I2,I3)に偏流してしまうこと抑制できる。
【0132】
第3前側プレート(FP3)の第1流入口(I1)に分流した冷媒は、第1流出路(91)を流れる。第1流出路(91)の冷媒は、第2前側プレート(FP2)の第3中継流路(96)と、第4前側プレート(FP4)の第6中継流路(99)とにさらに分流する。
【0133】
第2前側プレート(FP2)の第2流入口(I2)に分流した冷媒は、第2流出路(92)を流れる。第2流出路(92)の冷媒は、その一部が第2前側プレート(FP2)の第1中継流路(94)を流れる。冷媒の残部は、第3前側プレート(FP3)の第2連通穴(77)を通過した後、第4前側プレート(FP4)の第5中継流路(98)を流れる。
【0134】
第4前側プレート(FP4)の第3流入口(I3)に分流した冷媒は、第3流出路(93)を流れる。第3流出路(93)の冷媒は、その一部が第4前側プレート(FP4)の第4中継流路(97)を流れる。冷媒の残部は、第3前側プレート(FP3)の第1連通穴(76)を通過した後、第2前側プレート(FP2)の第3中継流路(96)を流れる。
【0135】
(6)実施形態の効果
(6-1)
プレート積層体(50,60)には、冷媒を分流させるための分流流路(70)が形成される。分流流路(70)は、鉛直方向に沿った第2方向に延びる流入路(71)と、流入路(71)の流出口(O)が接続する分流空間(80)と、分流空間(80)に接続する流入口(I1,I2,I3)をそれぞれが有するとともに、第2方向に延びる複数の流出路(91,92,93)とを含む。複数のプレート(P)は、プレート空間(81,82,83)がそれぞれ形成されるとともに第1方向に隣接する複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)を含む。分流空間(80)は、複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)の各プレート空間(81,82,83)が第1方向に連続することによって構成される。
【0136】
分流空間(80)は、複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)に亘るので、1つのプレート(P)に分流空間(80)を形成する場合と比較して、分流空間(80)の容積を大きくできる。これにより、流出口(O)と各流入口(I1,I2,I3)との間の距離を均一化しやすくなるので、冷媒が一部の流入口(I1,I2,I3)に偏流してしまうことを抑制できる。その結果、分流流路(70)の分流性能を向上できる。特に、流出路(91,92,93)が3つ以上である場合、この効果は顕著になる。
【0137】
加えて、複数のプレート空間(81,82,83)により分流空間(80)を構成することで、分流空間(80)の流路断面積を拡大できる。このため、冷媒の流速を低減することで、分流空間(80)を流れる冷媒の圧力損失を低減できる。
【0138】
(6-2)
流出口(O)は、分流空間(80)を挟んで流入口(I1,I2,I3)と反対側に配置される。流出口(O)と流入口(I1,I2,I3)とが分流空間(80)の同じ側にある場合と比較して、分流流路(70)の全体の流路抵抗を低減できる。
【0139】
(6-3)
流出口(O)と各流入口(I1,I2,I3)とは、第2方向から見る場合に互いにずれている。流出口(O)と、ある流入口(I1,I2,I3)とが第2方向でみる場合に重ならないので、冷媒が、ある流入口(I1,I2,I3)に偏流してしまうことを抑制できる。
【0140】
(6-4)
複数の流入口(I1,I2,I3)の少なくとも2つは、互いに異なる分流プレート(FP2,FP3,FP4)に形成される。具体的には、3つの流入口(I1,I2,I3)の少なくとも3つが互いに異なる分流プレート(FP2,FP3,FP4)に形成される。本例では、3つの流入口(I1,I2,I3)の全部が互いに異なる分流プレート(FP2,FP3,FP4)に形成される。このため、流出口(O)と、各流入口(I1,I2,I3)との距離を均一化しやすくなる。なお、3つ以上の分流プレートの数よりも、流入口の数が多い構成とする場合、少なくとも3つの流入口が互いに異なる分流プレートに形成され、2つ以上の流入口が同じ分流プレートに形成されてもよい。
【0141】
(6-5)
複数の分流プレート(FP2,FP3,FP4)は、流出口(O)が形成される第3前側プレート(FP3)と、第3前側プレート(FP3)の厚さ方向の一端側に配置され、第2流入口(I2)が形成される第2前側プレート(FP2)と、第3前側プレート(FP3)の厚さ方向の他端側に配置され、第3流入口(I3)が形成される第4前側プレート(FP4)とを含む。
【0142】
この構成により、流出口(O)と第2流入口(I2)との間の距離と、流出口(O)と第3流入口(I3)との間の距離を均一化しやすくなる。その結果、第2流出路(92)と第3流出路(93)との間での冷媒の偏流を抑制できる。
【0143】
(6-6)
プレート空間(81,82,83)は、第2方向で見る場合に、第1方向と直交し且つ水平方向に沿った第3方向に延びる横長の形状である。
【0144】
このため、プレート空間(81,82,83)によって構成される分流空間(80)を大きくできるので、流出口(O)と、各流入口(I1,I2,I3)との間の距離を均一化しやすくなる。分流空間(80)の流路断面積を拡大できる。分流空間(80)での冷媒の圧力損失を低減できる。
【0145】
(6-7)
プレート空間(81,82,83)は、分流プレート(FP2,FP3,FP4)を厚さ方向に貫通する穴である。このため、プレート(P)においてプレート空間(81,82,83)を容易に加工できる。プレート空間(81,82,83)を穴とすることで、プレート空間(81,82,83)を厚さ方向に最大限に延ばすことができる。
【0146】
プレート空間(81,82,83)は互いに同じ形状であるので、プレート空間(81,82,83)の加工がさらに容易になる。分流空間(80)の容積を最大限に確保できる。
【0147】
(6-8)
流出口(O)は、分流空間(80)の第3方向における中間部に配置され、第2流入口(I2)および第3流入口(I3)は、分流空間(80)の第3方向における端部寄りに配置される。このため、流出口(O)と第2流入口(I2)との間の距離や、流出口(O)と第3流入口(I3)との間の距離が短くなることを抑制できる。その結果、第2流入口(I2)や第3流入口(I3)に冷媒が偏流することを抑制できる。
【0148】
(6-9)
流入路(71)には、下流側に近づくにつれて流路断面を縮小させる縮小部(75a)が形成される。このため、分流空間(80)での冷媒の分流性能を向上できる。
【0149】
(6-10)
複数の流出路(91,92,93)は、3つ以上、5つ以下であるのが好ましい。流出路(91,92,93)の数が3つであっても、分流空間(80)を拡大することで、冷媒の偏流を抑制できる。
【0150】
複数の流出路(91,92,93)を5つ以下とすることで、流出口(O)と、各流入口(I1,I2,I3)との間の距離が不均一になることを抑制できる。分流流路(70)やプレート積層体(50,60)の構造が複雑化することを抑制できる。
【0151】
複数の流出路(91,92,93)は、奇数であるのが好ましい。
【0152】
分流空間(80)の第2方向の長さは、1mm以上6mm以下である。L2を1mm以上とすることで、分流空間(80)の流路抵抗を低減できる。L2を6mm以下とすることで、流出口(O)と各流入口(I1,I2,I3)との距離が長くなり過ぎるのを抑制できる。
【0153】
(6-11)
前側プレート積層体(50)には、前側熱交換部(40A)と第1方向に重ならない第1領域(A1)が形成される。分流流路(70)は、第1領域(A1)に形成される。
【0154】
分流流路(70)が、前側熱交換部(40A)と第1方向に重なってしまうと、前側プレート積層体(50)において、伝熱管(42)と接続する領域(第2領域)を確保するのが難しくなる。これに対し、第1領域(A1)は前側熱交換部(40A)と第1方向に重ならないので、第2領域を十分に確保できる。
【0155】
(7)変形例
上述した実施形態については、以下のような変形例としてもよい。以下では、上述した実施形態と異なる点について説明する。
【0156】
(7-1)変形例1
図13に示す変形例1では、流出口(O)と、各流入口(I1,I2,I3)とが分流空間(80)を挟んで同じ側に位置する。流出口(O)と各流入口(I1,I2,I3)とは、分流空間(80)を定義する下面(80a)に形成される。流出口(O)と各流入口(I1,I2,I3)とは、分流空間(80)を定義する上面(80b)に形成されてもよい。
【0157】
(7-2)変形例2
図14に示す変形例2では、同じ1つのプレート(P)に複数の流入口が形成される。本例では、第2前側プレート(FP2)に、第1流入口(I1)と第2流入口(I2)とが形成され、第4前側プレート(FP4)に第3流入口(I3)と第4流入口(I4)とが形成される。第4流入口(I4)は、第4流出路の流入口を構成する。第1流入口(I1)は、分流空間(80)における第3方向の一端寄りに、第2流入口(I2)は分流空間(80)における第3方向の他端寄りに位置する。第3流入口(I3)は、分流空間(80)における第3方向の一端寄りに、第4流入口(I4)は分流空間(80)における第3向の他端寄りに位置する。
【0158】
(7-3)変形例3
図15に示す変形例3では、第1流入口(I1)、第2流入口(I2)、および第3流入口(I3)が、分流空間(80)における第3方向の端部よりもやや中間部に近い位置にある。
【0159】
(7-4)変形例4
図16に示す変形例4の前側プレート積層体(50)は、熱交換部(40A)に近い側から順に、第1前側プレート(FP1)、第2前側プレート(FP2)、第3前側プレート(FP3)、第4前側プレート(FP4)、第5前側プレート(FP5)、第6前側プレート(FP6)、および第7前側プレート(FP7)を有する。第4前側プレート(FP4)には、流出口(O)および第1流入口(I1)が形成される。第3前側プレート(FP3)に第2流入口(I2)が、第5前側プレート(FP5)に第3流入口(I3)が形成される。つまり、第2流入口(I2)や第3流入口(I3)は、分流空間(80)の第1方向の端部よりもやや中間部寄りに位置する。変形例4において、第2前側プレート(FP2)に第2流入口(I2)が形成され、第6前側プレート(FP6)に第3流入口(I3)が形成されてもよい。
【0160】
(7-5)変形例5
図17に示す変形例5では、プレート(P)に形成した溝によってプレート空間(81,82,83)が構成される。第2前側プレート(FP2)には、第3前側プレート(FP3)側から第1方向(図17の左方向)に凹んだ第2プレート空間(82)が形成される。第4前側プレート(FP4)には、第3前側プレート(FP3)側から第1方向(図17の右方向)に凹んだ第2プレート空間(82)が形成される。
【0161】
(8)その他の実施形態
上述した実施形態、および各変形例においては、以下の構成としてもよい。
【0162】
分流流路(70)では、流入路(71)および各流出路(91,92,93)を冷媒が第2方向における下側に流れてもよい。
【0163】
流出口(O)と流入口(I1,I2,I3)の一部が第2方向に重なってもよい。
【0164】
プレート積層体(50,60)において、熱交換部(40A)と第1方向に重なる領域に分流流路(70)を形成してもよい。
【0165】
流入路(71)は、縮小部(75a)が省略された構成であってもよい。
【0166】
分流流路(70)は、2つ以上の流入路(71)を有してもよい。
【0167】
後側プレート積層体(60)に分流流路(70)を形成してもよい。
【0168】
冷凍サイクル装置(10)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う装置であればよく、空気調和装置に限られない。冷凍サイクル装置は、冷蔵庫や冷蔵倉庫等の庫内を冷却する冷却装置であってもよいし、水などの熱媒体を冷却し又は加熱するチラー装置であってもよいし、水を加熱して温水を生成するヒートポンプ式温水器であってもよい。
【0169】
空気調和装置(10)は、ペア式でなくてもよく、マルチ式であってもよい。
【0170】
室内機(30)は、天井設置式や床置き式であってもよい。
【0171】
前側熱交換部(40A)と後側熱交換部(40B)の並ぶ方向は、前後方向に限らず、例えば上下方向であってもよい。
【0172】
中間配管(66)に接続される弁は、膨張弁でなくてもよく、電磁弁、逆止弁、三方弁、四方切換弁、遮断弁などであってもよい。
【0173】
熱交換器ユニット(U)は、室外機(20)の室外熱交換器(22)に適用されてもよい。
【0174】
室内熱交換器(40)は、フィンアンドチューブ式でなくてもよく、例えば隣り合う伝熱管の間に波板状のフィンが配置されるコルゲート式であってもよい。
【0175】
熱交換器本体(B)は、前側熱交換部(40A)および後側熱交換部(40B)を有さず、1つの熱交換部を有する構成であってもよい。この場合、1つの熱交換部に対応してプレート積層体が設けられる。分流流路(70)は、このプレート積層体に形成される。
【0176】
熱交換器本体(B)の伝熱管(42)およびフィン(41)は、銅材料で構成されてもよい。この場合、プレート積層体(50,60)と、該プレート積層体(50,60)に接続する冷媒配管は銅材料とするのが好ましい。プレート積層体(50,60)と、該プレート積層体(50,60)に接続する冷媒配管はステンレス材料であってもよい。
【0177】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。以上の実施形態、変形例、その他の実施形態の要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0178】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0179】
以上に説明したように、本開示は、熱交換器ユニット、空調室内機、および冷凍サイクル装置について有用である。
【符号の説明】
【0180】
10 空気調和装置(冷凍サイクル装置)
11 冷媒回路
40A 熱交換部
41 フィン
42 伝熱管
50 プレート積層体
51 冷媒流路
70 分流流路
71 流入路
75a 縮小部
80 分流空間
81,82,83 プレート空間
91 第1流出路
92 第2流出路
93 第3流出路
A1 第1領域
FP2 第2前側プレート(第2プレート、分流プレート)
FP3 第3前側プレート(第1プレート、分流プレート)
FP4 第4前側プレート(第3プレート、分流プレート)
I1 第1流入口
I2 第2流入口
I3 第3流入口
O 流出口
P プレート
U 熱交換器ユニット
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