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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025059355
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】坩堝
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20250403BHJP
   C30B 23/06 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169401
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】595009109
【氏名又は名称】SECカーボン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】曾根 真之佑
(72)【発明者】
【氏名】錦織 徳二郎
(72)【発明者】
【氏名】塩見 弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 雅英
(72)【発明者】
【氏名】山口 知希
(72)【発明者】
【氏名】小田垣 学
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BE08
4G077DA02
4G077DA18
4G077DA19
4G077EG01
4G077EG02
4G077SA04
4G077SA12
(57)【要約】
【課題】SiC単結晶の割れを抑えることができる坩堝を提供する。
【解決手段】坩堝10は、昇華法によるSiC単結晶の製造に用いられる坩堝であって、黒鉛からなる容器12と、容器12の上に設けられ、SiC種結晶22を取り付けるための下面160を有し、黒鉛からなる蓋16と、蓋16とSiC種結晶22との間に設けられ、SiC単結晶26よりも割れやすい自己犠牲板18とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇華法によるSiC単結晶の製造に用いられる坩堝であって、
黒鉛からなる容器と、
前記容器の上に設けられ、SiC種結晶を取り付けるための下面を有し、黒鉛からなる蓋と、
前記蓋と前記SiC種結晶との間に設けられ、前記SiC単結晶よりも割れやすい自己犠牲板とを備える、坩堝。
【請求項2】
請求項1に記載の坩堝であって、
前記自己犠牲板は、前記SiC種結晶の硬さよりも小さい硬さを有する、坩堝。
【請求項3】
請求項1に記載の坩堝であって、
前記自己犠牲板は、前記SiC種結晶の破壊強度よりも小さい破壊強度を有する、坩堝。
【請求項4】
請求項1に記載の坩堝であって、
前記自己犠牲板は、1.5mm以下の厚さを有する、坩堝。
【請求項5】
請求項1に記載の坩堝であって、
前記自己犠牲板は黒鉛からなる、坩堝。
【請求項6】
請求項1に記載の坩堝であって、
前記自己犠牲板はCIP材からなる、坩堝。
【請求項7】
請求項1に記載の坩堝であって、
前記自己犠牲板は、前記蓋の下面に対向する上面を有し、前記上面は1又は2以上のけがきを有する、坩堝。
【請求項8】
請求項1に記載の坩堝であってさらに、
前記SiC種結晶を支持するための支持部を備える、坩堝。
【請求項9】
請求項1に記載の坩堝であって、
前記蓋は、
前記下面を有する円形の台座を含む、坩堝。
【請求項10】
請求項9に記載の坩堝であって、
前記自己犠牲板はCIP材からなり、前記台座は押出材からなる、坩堝。
【請求項11】
請求項9に記載の坩堝であって、
前記自己犠牲板は、前記台座の直径よりも大きい直径を有する、坩堝。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、坩堝に関し、より具体的には、昇華法によるSiC(Silicon Carbide;炭化珪素)単結晶の製造に用いられる坩堝に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007-290880号公報(特許文献1)、特開2011-195360号公報(特許文献2)、及び特開2015-36348号公報(特許文献3)は、昇華法によりSiC単結晶を製造するときに用いられる坩堝を開示する。
【0003】
特開2015-131748号公報(特許文献4)は、炭化珪素単結晶の製造方法を開示する。この製造方法は、種基板と台座とを応力緩衝層を介して固定する工程と、種基板上に炭化珪素単結晶を成長させる工程と、応力緩衝層において炭化珪素単結晶と台座とを切り離す工程と、切り離す工程後の炭化珪素単結晶に付着している応力緩衝層の残渣を除去する工程とを備える。応力緩衝層は、種基板を構成する炭化珪素よりも低硬度であり、加工が容易である。そのため、切り離す工程において、応力緩衝層において炭化珪素単結晶と台座とを切り離すことにより、炭化珪素単結晶と台座とを容易に切り離すことができる、とされている。応力緩衝層は、種基板や炭化珪素単結晶と比べて硬度が低く、柔軟性および伸縮性の高い材料から構成されている。応力緩衝層を構成する材料は、たとえば黒鉛シートである。
【0004】
特開2014-159347号公報(特許文献5)は、炭化珪素単結晶基板の製造装置を開示する。この製造装置は、原料収容部と、種基板保持部とを備える。種基板保持部は、互いに対向する第1の主面および第2の主面を有する板部と、板部の第1の主面に接する本体部と、板部を本体部に固定する接続部とを含む。板部の厚みは本体部の厚みより小さい。この製造装置によれば、炭化珪素単結晶の成長中において種基板を構成する材料と板部を構成する材料との熱膨張量の違いに起因して種基板および種基板上に成長する炭化珪素単結晶に発生する応力を、板部が種基板の変形に応じて変形することにより、効率的に低減することができる、とされている。
【0005】
WO2016/006442A1(特許文献6)は、炭化珪素単結晶の製造方法を開示する。この製造方法は、接着部と、接着部の周縁の少なくとも一部に段差部とを有する支持部材を準備する工程と、段差部に緩衝材を配置する工程と、を備え、接着部と緩衝材とは支持面を構成し、さらに、支持面上に種結晶を配置するとともに、接着部と種結晶とを接着する工程と、種結晶上に単結晶を成長させる工程と、を備える。この製造方法では、接着部の周縁の少なくとも一部(たとえば支持部材においてSiC単結晶の外周に対応する部位)に段差部を設けて、当該段差部に緩衝材(たとえば黒鉛シート)を配置する。そうすることで種結晶の外周近傍に生じる熱応力を効率的に緩和できる、とされている。
【0006】
特開2015-193494号公報(特許文献7)は、炭化珪素インゴットの製造方法を開示する。この製造方法は、炭化珪素種結晶を準備する工程と、台座上に炭化珪素種結晶を固定する工程とを備えている。炭化珪素種結晶を固定する工程は、第1の接着剤が台座上に配置され、台座との間に第1の接着剤を挟んで緩衝部材が配置される第1の固定工程と、第2の接着剤が緩衝部材上に配置され、緩衝部材との間に第2の接着剤を挟んで炭化珪素種結晶が配置される第2の固定工程とを含んでいる。この製造方法は、さらに、炭化珪素種結晶において台座と反対側の結晶成長面上に炭化珪素層を成長させる工程を備えている。炭化珪素種結晶と台座との間に緩衝部材を配置することにより、炭化珪素種結晶および台座の熱膨張率の差に起因した歪を緩衝させることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-290880号公報
【特許文献2】特開2011-195360号公報
【特許文献3】特開2015-36348号公報
【特許文献4】特開2015-131748号公報
【特許文献5】特開2014-159347号公報
【特許文献6】WO2016/006442A1
【特許文献7】特開2015-193494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献4~7はいずれも、SiC単結晶(以下、「成長結晶」という場合もある。)にかかる応力を緩衝、低減又は緩和する手段を開示するものであるが、以下はこれに代わる手段を開示するものである。
【0009】
本開示の目的は、SiC単結晶の割れを抑えることができる坩堝を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示による坩堝は、昇華法によるSiC単結晶の製造に用いられる坩堝であって、黒鉛からなる容器と、前記容器の上に設けられ、SiC種結晶を取り付けるための下面を有し、黒鉛からなる蓋と、前記蓋と前記SiC種結晶との間に設けられ、前記SiC単結晶よりも割れやすい自己犠牲板とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1による坩堝の構造を示す断面図である。
図2】実施形態2による坩堝における蓋及び自己犠牲板の構造を示す断面図である。
図3】実施形態3による坩堝における蓋及び自己犠牲板の構造を示す断面図である。
図4】直径150mmの自己犠牲板及び成長結晶にかかる応力を示すグラフである。
図5】直径200mmの自己犠牲板及び成長結晶にかかる応力を示すグラフである。
図6】直径250mmの自己犠牲板及び成長結晶にかかる応力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態の概要>
本実施形態による坩堝は、昇華法によるSiC単結晶の製造に用いられる坩堝であって、黒鉛からなる容器と、容器の上に設けられ、SiC種結晶を取り付けるための下面を有し、黒鉛からなる蓋と、蓋とSiC種結晶との間に設けられ、SiC単結晶よりも割れやすい自己犠牲板とを備える。
【0013】
本実施形態による坩堝は自己犠牲板を備えているため、SiC単結晶が割れる前に自己犠牲板が割れる。その結果、SiC単結晶の割れを抑えることができる。
【0014】
自己犠牲板は、SiC種結晶の硬さよりも小さい硬さを有していてもよい。
【0015】
自己犠牲板は、SiC種結晶の破壊強度よりも小さい破壊強度を有していてもよい。この場合、SiC単結晶よりも自己犠牲板の方が割れやすいため、SiC単結晶が割れる前に自己犠牲板が割れる。
【0016】
自己犠牲板は、1.5mm以下の厚さを有していてもよい。この場合、自己犠牲板が薄いため、SiC単結晶が割れる前に自己犠牲板が割れる。
【0017】
自己犠牲板は黒鉛からなっていてもよい。
【0018】
自己犠牲板はCIP(Cold Isostatic Press;冷間静水圧プレス)材からなっていてもよい。
【0019】
自己犠牲板は、蓋の下面に対向する上面を有し、その上面は1又は2以上のけがきを有していてもよい。この場合、自己犠牲板はけがきを起点として割れやすい。
【0020】
坩堝はさらに、容器と蓋との間に設けられ、SiC種結晶を支持するための支持部を備えていてもよい。
【0021】
蓋は、蓋の下面を有する円形の台座を含んでいてもよい。
【0022】
自己犠牲板はCIP材からなっていてもよく、また、台座は押出材からなっていてもよい。CIP材の熱膨張係数はSiC単結晶よりも大きく、押出材の熱膨張係数はSiC単結晶よりも小さい。SiC単結晶の成長を完了した後の降温過程において、自己犠牲板が押出材からなる場合、SiC単結晶に引張応力がかかるが、自己犠牲板がCIP材からなる場合、SiC単結晶に圧縮応力がかかる。SiC単結晶は、引張応力よりも圧縮応力に強い。そのため、自己犠牲板がCIP材からなる場合、SiC単結晶が割れる前に自己犠牲板が割れ、SiC単結晶は割れにくい。一方、熱伝導率はCIP材よりも押出材の方が高い。SiC種結晶を冷却して結晶成長速度を大きくするためには、台座はCIP材よりも押出材からなる方が好ましい。したがって、自己犠牲板がCIP材からなり、かつ、台座が押出材からなる場合、SiC単結晶は割れにくくなり、かつ、結晶成長速度は大きくなる。また、高価なCIP材の使用量を少なくすることができる。
【0023】
自己犠牲板は、台座の直径よりも大きい直径を有していてもよい。この場合、台座から突出した自己犠牲板が障壁として機能し、台座の周りに成長したSiC多結晶がSiC種結晶上に成長したSiC単結晶まで到達するのを妨げることができる。
【0024】
<実施形態の詳細>
以下、図面を参照し、実施形態による坩堝を詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0025】
<実施形態1>
<坩堝の構造>
図1を参照して、実施形態1による坩堝10は、昇華法によるSiC単結晶の製造に用いられる坩堝であって、容器12と、支持部14と、蓋16と、自己犠牲板18とを備える。容器12、支持部14、及び蓋16はいずれも、黒鉛からなる。
【0026】
容器12は、粉末状のSiC原料20を投入するためのものである。容器12は、底120と、底120の周縁から上方に延びるように設けられる側壁122とを含む。蓋16は、容器12の上に設けられ、SiC種結晶22を取り付けるための下面160を有する。蓋16は、台座162を含む。台座162は、ほぼ円形で、蓋16の下面160を有する。支持部14は、SiC種結晶22を支持するためのものである。自己犠牲板18は、蓋16とSiC種結晶22との間に設けられ、成長したSiC単結晶よりも割れやすい。
【0027】
支持部14の上面は、SiC種結晶22を下方から支持し、かつ、SiC種結晶22を上方に向かって押さえ付けるようにしてもよい。支持部14の断面形状も、長方形や直角三角形、台形等、形状に制限はない。
【0028】
自己犠牲板18は、SiC種結晶22の硬さよりも小さい硬さを有する。自己犠牲板18は、SiC種結晶22の破壊強度よりも小さい破壊強度を有する。自己犠牲板18は、SiC種結晶22の厚さよりも小さい厚さを有する。自己犠牲板18は、1.5mm以下、好ましくは1.4mm以下、さらに好ましくは1.3mm以下の厚さを有する。自己犠牲板18の厚さは、好ましくは0.1mm以上である。自己犠牲板18の厚さは、たとえば1.5mm、1.4mm、1.3mm、1.2mm、1.1mm、1.0mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、又は0.1mmである。自己犠牲板18の直径は、特に限定されないが、たとえば150~300mmである。
【0029】
自己犠牲板18は黒鉛からなる。自己犠牲板18はCIP材からなる。自己犠牲板18はCIP材からなるが、蓋16は押出材からなる。
【0030】
ここで、自己犠牲板18を蓋16に取り付ける方法の一例を説明する。
【0031】
最初に、接着剤を蓋16に塗布する。次に、接着剤が付いた蓋16の下面160上に自己犠牲板18を載せる。次に、自己犠牲板18の表面を研磨する。次に、SiC種結晶22を自己犠牲板18(の下面)上に載せる。最後に、SiC種結晶22を支持部14の支持台142で押さえ付ける。接着剤には、自己犠牲板18が割れやすいように、高温で炭化して接着力が減少又は消滅するものを用いる。接着力が消滅すると、自己犠牲板18は蓋16から自由になる。このように昇温過程において成長結晶(SiC単結晶)と自己犠牲板18は自由になるが、成長結晶と自己犠牲板18との間に外周1mm幅程度の領域で多結晶の固着層が成長する。そのため、外周1mm幅だけの領域で成長結晶と自己犠牲板18とが固着し、この固着領域を起点として自己犠牲板18が割れる。そのため、SiC種結晶22上に成長したSiC単結晶にかかる応力が緩和され、SiC単結晶は割れにくい。よって、SiC単結晶が割れる前に自己犠牲板18が割れやすい。
【0032】
次に、坩堝10を用い、昇華法によりSiC単結晶を製造する方法の一例を説明する。SiC単結晶の成長には、昇華再結晶法(レーリー法)が用いられる。昇華再結晶法は、坩堝10の下部と上部との間に温度勾配をつけ、投入されたSiC原料20を高温(2000℃以上)で加熱・昇華させ、台座162に設置されたSiC種結晶22上に再結晶化させることによりSiC単結晶を成長させる方法である。
【0033】
以上のとおり、実施形態1による坩堝10は自己犠牲板18を備えているため、SiC単結晶が割れる前に自己犠牲板18が割れる。その結果、SiC単結晶の割れを抑えることができる。
【0034】
<実施形態2>
図2を参照して、実施形態2による坩堝では、自己犠牲板18は、蓋16の下面160に対向する上面を有し、その上面は1又は2以上のけがき180を有する。自己犠牲板18を上方から見て、けがき180は、直線、折れ線、曲線、又はそれらの組合わせでもよい。けがき180は、短いもの、長いもの、又はそれらの組合わせでもよい。けがき180は、自己犠牲板18の周縁に多く形成されていてもよく、中心に多く形成されていてもよく、あるいは全体に万遍なく形成されていてもよい。自己犠牲板18にけがき180が形成されているため、自己犠牲板18はけがき180を起点として割れやすい。
【0035】
<実施形態3>
図3を参照して、実施形態3による坩堝では、自己犠牲板18は、台座162の直径よりも大きい直径を有する。自己犠牲板18の周縁は、台座162の周縁よりも外側に達している。この場合、台座162から突出した自己犠牲板18が障壁として機能し、台座162の周りの空間24内で成長したSiC多結晶が成長したSiC単結晶26まで到達するのを妨げることができる。
【0036】
自己犠牲板18が設けられていないと、SiC単結晶26が成長する一方で、台座162の外周の空間24内にSiC多結晶が形成され、台座162と成長したSiC単結晶26との間に固着層が形成されてしまう場合がある。固着層が形成されてしまうと、坩堝10が室温まで冷却された時に成長したSiC単結晶26が割れてしまう場合がある。この原因は、台座162とSiC単結晶26との間に熱膨張係数の差があるためである。押出材とSiC単結晶26との間の熱膨張係数の差は、CIP材とSiC単結晶26との間の熱膨張係数の差よりも大きい。台座162が押出材からなると、SiC単結晶が割れやすくなる。そのため、自己犠牲板18はCIP材からなる。
【実施例0037】
自己犠牲板18の厚さが2mm、1mm、0.8mm、及び0.5mmの場合において、自己犠牲板18が割れるか否かについて実験を行った。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
<実験条件>
実験には、実施形態1による坩堝10を用いた。蓋を含む坩堝は、押出材からなる。自己犠牲板はCIP材からなる。自己犠牲板の直径は150mmである。成長したSiC単結晶(成長結晶)の厚さは10mmである。自己犠牲板の線膨張係数は、温度依存性があり、異方性はなく、等方性がある。自己犠牲板の弾性定数は、等方性があり、温度依存性はない。自己犠牲板のヤング率は9.8MPaであり、ポアソン比は0.2である。成長結晶の線膨張係数は、温度依存性があり、異方性はなく、等方性がある。成長結晶の弾性定数は、等方性があり、温度依存性はない。成長結晶のヤング率は500MPaであり、ポアソン比は0.21である。成長結晶と自己犠牲板との間には外周1mm幅で固着層が存在する。SiC原料を坩堝に投入し、2300℃で加熱・昇華させ、SiC種結晶上に再結晶させることによりSiC単結晶を成長させた。その後、温度を2300℃から室温まで下げた。
【0040】
表1に示されるように、2.0mmの自己犠牲板18は割れなかったが、1.0mm、0.8mm、及び0.5mmの自己犠牲板18は割れた。
【0041】
また、自己犠牲板及び成長結晶内に発生する応力(ミーゼスの相当応力)のシミュレーションを行った。その結果を表2及び図4図6に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
図4図6のグラフを大局的にみれば、成長結晶にかかる応力は、自己犠牲板が薄いほど小さくなることがわかった。つまり、自己犠牲板が薄いほど、成長結晶が割れにくくなり、自己犠牲板が割れやすくなる、ことがわかった。また、自己犠牲板及び成長結晶にかかる応力は、成長結晶の直径にほとんど依存しないことがわかった。したがって、成長結晶の直径に関係なく、自己犠牲板の厚さが1.5mm以下であれば、成長結晶が割れにくくなり、自己犠牲板が割れやすくなる、ことがわかった。
【0044】
以上のとおり、自己犠牲板の厚さを最適化すれば、どのような直径を持った成長結晶であっても、自己犠牲板を割れやすくすることにより、成長結晶を割れにくくすることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲内で変形可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 :坩堝
12 :容器
14 :支持部
16 :蓋
18 :自己犠牲板
22 :SiC種結晶
26 :SiC単結晶
160:下面
162:台座
図1
図2
図3
図4
図5
図6