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特開2025-5948不織布、及びこれを利用した各種製品、並びに不織布の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005948
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】不織布、及びこれを利用した各種製品、並びに不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/147 20120101AFI20250109BHJP
【FI】
D04H3/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106416
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】523419521
【氏名又は名称】エム・エーライフマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100190137
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 仁郎
(72)【発明者】
【氏名】江口 大樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 瑛大
(72)【発明者】
【氏名】猪熊 宣広
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA14
4L047AA27
4L047AB03
4L047AB09
4L047BA09
4L047BB01
4L047BB09
4L047CA14
4L047CB08
4L047CB10
4L047CC03
4L047CC04
(57)【要約】
【課題】液拡散性、SAP担持性、及び通水性に優れる不織布を提供する。
【解決手段】繊維により構成される、不織布10であって、
繊維同士で接着している交点を所定数有し、かつ、所定厚みを有する第1領域1Aと、
繊維同士で接着している交点の数が第1領域1Aよりも少なく、かつ、第1領域1Aよりも厚みが大きい第2領域2Aと、を備え、
第2領域2Aは、所定方向に沿って複数存在する複数の第1領域1Aの間に存在し、
第1領域1Aの所定方向の幅は、0.5~20.0mmであり、
第1領域の所定方向の間隔は、2~50.0mmである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維により構成される、不織布であって、
前記繊維同士で接着している交点を所定数有し、かつ、所定厚みを有する第1領域と、
前記繊維同士で接着している交点の数が前記第1領域よりも少なく、かつ、前記第1領域よりも厚みが大きい第2領域と、を備え、
前記第2領域は、所定方向に沿って複数存在する複数の前記第1領域の間に存在し、
前記第1領域の前記所定方向の幅は、0.5~20.0mmであり、
前記第1領域の前記所定方向の間隔は、2~50.0mmである、
不織布。
【請求項2】
前記所定方向は、前記不織布の幅方向である、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記第1領域、及び前記第2領域を、前記不織布の表面、及び裏面の少なくとも一面に備える、請求項1に記載の不織布。
【請求項4】
前記交点の多数が接着している前記第1領域と、前記交点の多数が接着していない前記第2領域とが、幅方向に交互に存在し、
前記第1領域の厚みは、前記第2領域の厚みよりも小さく、
前記第1領域の幅は、0.5~20mmであり、
前記第1領域の間隔は、2~50mmである、請求項1に記載の不織布。
【請求項5】
前記第1領域、及び前記第2領域の厚み差は、0.20mm以上である、請求項1に記載の不織布。
【請求項6】
前記不織布のうち、任意に選択される複数の前記交点を観察したとき、
前記第1領域では、接着している前記交点が半数以上観察され、
前記第2領域では、接着していない前記交点が半数以上観察される、請求項1に記載の不織布。
【請求項7】
長繊維を用いて構成される、請求項1に記載の不織布。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の不織布を含む、SAP支持体。
【請求項9】
請求項8に記載のSAP支持体とSAPを含む、SAPシート。
【請求項10】
請求項9に記載のSAPシートを含む、吸収性物品。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の不織布を含む、衛生材料。
【請求項12】
繊維により構成される不織布を製造するための、不織布の製造方法であって、
前記繊維のウェブを、所定方向に沿って所定の間隔で融着させる工程、を含む、
不織布の製造方法。
【請求項13】
前記所定方向に沿って間欠的に配される熱風吹き出し口から熱風を前記ウェブに吹き付けることで、前記ウェブを前記融着させる、請求項12に記載の不織布の製造方法。
【請求項14】
前記繊維をコンベア上に堆積して前記ウェブを形成する工程、及び
前記ウェブを前記コンベアで搬送しながら、前記所定方向に間欠的に配される熱風吹き出し口から熱風を前記ウェブに吹き付けることで、前記ウェブに第1領域を形成する工程、を含み、
前記第1領域の前記所定方向の幅は、0.5~20.0mmであり、
前記第1領域の前記所定方向の間隔は、2~50.0mmである、請求項13に記載の不織布の製造方法。
【請求項15】
前記熱風吹き出し口の、所定方向の幅は、0.5~20mmであり、
前記熱風吹き出し口の、所定方向の間隔は、2~50mmである、請求項13又は14に記載の不織布の製造方法。
【請求項16】
前記熱風の風速が5m/sec以上である、請求項13又は14に記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布、及びこれを利用した各種製品、並びに不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮する観点から、おむつについて、省資源化、及びリサイクルの容易化が望まれている。大人用おむつに対しては、シニア層の増大を背景に、より動き易いこと、衣類の下のおむつがより目立ち難いこと、スマートな外観をより実現し易いこと、等を理由に、薄型化が望まれている。
【0003】
おむつの吸収体としては、吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymers;以下、「SAP」と称する場合がある。)が知られている。SAPは、支持体(以下、「SAP支持体」と称する場合がある。)に担持させられる。SAP支持体には、SAPを多く担持し易いこと、SAPへの通水を阻害し難いこと、及びSAPの局所的な吸水によって生じ得る吸水性阻害(ゲルブロッキング)を防ぐため、好適な液拡散性を有すること、等が求められる。
【0004】
SAP支持体に適した不織布として、KES法による平均摩擦係数の変動値(MMD)の縦横の比(縦/横)が0.5以上であり、かつ、マーチンデール法による毛羽等級が4級以下である、衛生材料用不織布が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1の目的は、保水性、SAP担持性、及び通水性に優れる衛生材料用不織布を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/239838号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SAPシートの更なる高性能化のため、液拡散性、SAP担持性、及び通水性の更なる向上が求められている。
【0007】
本発明の目的は、液拡散性、SAP担持性、及び通水性に優れる不織布を提供することである。また、本発明の目的は、不織布を利用した各種製品、及び不織布の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態の例は、以下のとおりである。
[1]
繊維により構成される、不織布であって、
前記繊維同士で接着している交点を所定数有し、かつ、所定厚みを有する第1領域と、
前記繊維同士で接着している交点の数が前記第1領域よりも少なく、かつ、前記第1領域よりも厚みが大きい第2領域と、を備え、
前記第2領域は、所定方向に沿って複数存在する複数の前記第1領域の間に存在し、
前記第1領域の前記所定方向の幅は、0.5~20.0mmであり、
前記第1領域の前記所定方向の間隔は、2~50.0mmである、
不織布。
[2]
前記所定方向は、前記不織布の幅方向である、項目1に記載の不織布。
[3]
前記第1領域、及び前記第2領域を、前記不織布の表面、及び裏面の少なくとも一面に備える、項目1又は2に記載の不織布。
[4]
前記交点の多数が接着している前記第1領域と、前記交点の多数が接着していない前記第2領域とが、幅方向に交互に存在し、
前記第1領域の厚みは、前記第2領域の厚みよりも小さく、
前記第1領域の幅は、0.5~20mmであり、
前記第1領域の間隔は、2~50mmである、項目1~3のいずれか1項に記載の不織布。
[5]
前記第1領域、及び前記第2領域の厚み差は、0.20mm以上である、項目1~4のいずれか1項に記載の不織布。
[6]
前記不織布のうち、任意に選択される複数の前記交点を観察したとき、
前記第1領域では、接着している前記交点が半数以上観察され、
前記第2領域では、接着していない前記交点が半数以上観察される、項目1~5のいずれか1項に記載の不織布。
[7]
長繊維を用いて構成される、項目1~6のいずれか1項に記載の不織布。
[8]
項目1~7のいずれか1項に記載の不織布を含む、SAP支持体。
[9]
項目8に記載のSAP支持体とSAPを含む、SAPシート。
[10]
項目9に記載のSAPシートを含む、吸収性物品。
[11]
項目1~7のいずれか1項に記載の不織布を含む、衛生材料。
[12]
繊維により構成される不織布を製造するための、不織布の製造方法であって、
前記繊維のウェブを、所定方向に沿って所定の間隔で融着させる工程、を含む、
不織布の製造方法。
[13]
前記所定方向に沿って間欠的に配される熱風吹き出し口から熱風を前記ウェブに吹き付けることで、前記ウェブを前記融着させる、項目12に記載の不織布の製造方法。
[14]
前記繊維をコンベア上に堆積して前記ウェブを形成する工程、及び
前記ウェブを前記コンベアで搬送しながら、前記所定方向に間欠的に配される熱風吹き出し口から熱風を前記ウェブに吹き付けることで、前記ウェブに第1領域を形成する工程、を含み、
前記第1領域の前記所定方向の幅は、0.5~20.0mmであり、
前記第1領域の前記所定方向の間隔は、2~50.0mmである、項目13に記載の不織布の製造方法。
[15]
前記熱風吹き出し口の、所定方向の幅は、0.5~20mmであり、
前記熱風吹き出し口の、所定方向の間隔は、2~50mmである、項目13又は14に記載の不織布の製造方法。
[16]
前記熱風の風速が5m/sec以上である、項目13~15のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液拡散性、SAP担持性、及び通水性に優れる不織布を提供することができる。また、本発明によれば、不織布を利用した各種製品、及び不織布の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の不織布の構成例を示す、模式図である。
図2】熱風吹き出し口の構成例を示す平面図である。
図3】熱風吹き出し口の構成例を示す平面図である。
図4】熱風吹き出し口の構成例を示す平面図である。
図5】熱風吹き出し口の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本明細書中、段階的な数値範囲について、ある数値範囲における上限値又は下限値は、他の段階的な数値範囲における上限値又は下限値に置き換わることができ、また、実施例における対応する値に置き換わることもできる。本明細書中、用語「工程」は、独立した工程のみを意味するのではなく、ゆえに、他の工程と明確に区別できない場合でも、その工程の機能が達成される態様であれば、本用語「工程」に含まれる。また、図面に示される内容において、縮尺、形状及び長さは、明確性を更に図るために、誇張して示されている場合がある。本明細書中、各種の測定は、特に断りがない限り、実施例に記載の手法に基づいて行われる。
【0012】
本明細書中、用語「所定方向に沿う」は、対象となる方向に対して完全に一致する態様のみならず、対象となる方向に対して概ね一致する、すなわち、ある程度の傾きを有する態様をも意味する。従って、例えば、用語「不織布の長手方向に沿う方向」には、該長手方向に対して完全に一致する方向のみならず、該長手方向に対してある程度の傾きを有する方向も含まれる。ここでの「ある程度の傾き」は、本発明の要旨の範囲内において許容される。不織布を構成する材料は、一種単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0013】
[実施形態1]
本実施形態は、
繊維により構成される、不織布であって、
繊維同士で接着している交点を所定数有し、かつ、所定厚みを有する第1領域と、
繊維同士で接着している交点の数が第1領域よりも少なく、かつ、第1領域よりも厚みが大きい第2領域と、を備え、
第2領域は、所定方向に沿って複数存在する複数の第1領域の間に存在し、
第1領域の所定方向の幅は、0.5~20.0mmであり、
第1領域の所定方向の間隔は、2~50.0mmである、
不織布である。
本実施形態によれば、液拡散性、SAP担持性、及び通水性に優れる不織布を提供することができる。以下、図面を参照しつつ、本実施形態について説明する。
【0014】
〈不織布〉
図1は、本実施形態の不織布10の表面、及び/又は裏面の構成例を示す、模式図である。
図1に示される構成は、不織布10の表面又は裏面のどちらに採用されてもよく、また、表面及び裏面の両方に採用されてもよい。X方向は、例えば、不織布10の長手方向に沿う方向であり、また、Y方向は、例えば、不織布10の短手方向(幅方向)に沿う方向である。ここで、X方向、及びY方向は直交する。
【0015】
第1領域1Aは、一態様において接着部1であり、第2領域2Aは、一態様において非接着部2である。
すなわち、不織布10には、表面、及び裏面の少なくとも一面において、
X方向に延在し、かつ、繊維の交点の多数が接着している接着部1(第1領域1A)と、
X方向に延在し、かつ、繊維の交点の多数が接着していない非接着部2(第2領域2A)と、が、Y方向に交互に存在する。接着部1は、Y方向に沿って複数存在しており、この複数の接着部1の間に、非接着部2が存在している。
【0016】
本実施形態の不織布について、その最小単位は、二つの接着部1と、その接着部1の間に配される、一つの非接着部2と、である。
図1では、七つの接着部1と、六つの非接着部2と、が図示されているが、この繰り返し数は限定されない。繰り返される接着部1の各構成は、互いに同一でも異なってもよく、また、繰り返され得る非接着部2の各構成も、互いに同一でも異なってもよい。
【0017】
不織布10の断面は、例えば、カミソリによって切り出される。切り出された断面は、マイクロスコープ、例えば、KEYENCE製 VHX-6000を用いて、倍率20倍で観察される。このとき、相対的に厚みの小さい部分(以下、「凹部」と称する場合がある。)と、相対的に厚みの大きい部分(以下、「凸部」と称する場合がある。)と、の境界、又はその付近を確認する。
【0018】
上記境界、又はその付近について、KEYENCE製 VE-8800を用いて、倍率100倍で不織布10の表面から観察し、繊維同士の交点を任意に所定数(例えば、10点)選択する。繊維同士が溶け合って接着している状態が観察される場合に「交点の接着が認められる」と判断し、また、繊維同士が溶け合って接着していない状態が観察される場合に「交点の接着が認められない」と判断するとき、半数以上(交点を10点選択した場合には5点以上)の交点に接着が認められれば「接着部1(第1領域1A)」、そうでなければ「非接着部2(第2領域2A)」と定義することができ、これにより、接着部1、及び非接着部2の各領域を判断ことができる。
つまり、不織布10のうち、任意に選択される複数の交点を観察したとき、
接着部1(第1領域1A)では、接着している交点が半数以上観察され、
非接着部2(第2領域2A)では、接着していない交点が半数以上観察されることが好ましい。非接着部2(第2領域2A)においては、接着している交点が観察されないことも好ましい。
【0019】
不織布10は、非接着部2が存在することで、不織布10を用いて各種製品を作製するときの各工程(例えば、おむつ製造工程、及びSAPシート製造工程等)において、不織布の長手方向に張力を付与する場合、非接着部2が収縮し易くなり、よって、非接着部2の繊維が立ち上がり易くなる。このため、非接着部2において、低い嵩密度を得易くなる。非接着部2の嵩密度が低くなることで、不織布10にSAPを担持させ易くなり、また、通水性が向上し易い。
【0020】
不織布10は、接着部1が存在することで、シートの形態を保ち易くなる。
接着部1のY方向の幅は、0.5~20.0mmである。接着部1の幅が0.5mm以上であることにより、不織布全体のうち接着している交点の割合を十分に確保し易いので、製造中に不織布を問題なく搬送し易い。接着部1の幅が20.0mm以下であることにより、不織布全体のうち接着している交点の割合の過剰な増加を抑え易いので、液拡散性、通水性、及び風合いが良好となり易い。上記と同様の観点から、接着部1の幅は、好ましくは0.75~10.0mm、より好ましくは1.0~5.0mmである。なお、本明細書中、用語「ウェブ」は、繊維同士が接着する前の集合体を意味する。
【0021】
接着部1のY方向の間隔は、2.0~50.0mmである。接着部1の間隔が2.0mm以上であることにより、不織布10の嵩高さが得られ易く、ゆえに、SAPの担持性が良好となり易い。接着部1の間隔が50.0mm以下であることにより、不織布全体のうち接着している交点の割合を十分に確保し易いので、不織布を問題なく搬送し易い。上記と同様の観点から、接着部1の間隔は、好ましくは5.0~40.0mm、より好ましくは10.0~30.0mmである。繰り返される接着部1の間隔は、互いに同一でも異なってもよい。
【0022】
不織布10は、液拡散性を高めるため、接着部1の厚みが、非接着部2の厚みよりも小さい。不織布10に対して厚み方向に負荷がかかっていない状態で、接着部1、及び非接着部2の厚み差は、0.20mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.40mm以上である。なお、非接着部2の厚みの上限は、2.50mm程度でよい。
【0023】
以上のとおり、不織布10は、
繊維同士で接着している交点を所定数有し、かつ、所定厚みを有する第1領域1Aと、
繊維同士で接着している交点の数が第1領域1Aよりも少なく、かつ、第1領域1Aよりも厚みが大きい第2領域2Aと、を備える。
【0024】
不織布10は、長繊維、及び短繊維のいずれの繊維により構成されてもよい。ただし、強度の確保、生産性の確保、肌への刺激低減等の観点から、不織布10は、長繊維を含むことが好ましく、特に、スパンボンド不織布であることが好ましい。ここでの「スパンボンド不織布」は、紡糸口金における複数の微細な開口から樹脂フィラメントを押し出し、そして押出した樹脂フィラメントを急速に細化させることによって形成される繊維を用いて構成される不織布を意味する。
【0025】
本明細書中、「長繊維」とは、繊維長が50mm以上の繊維を意味する。繊維の脱落による、各種製品の製造工程(例えば、おむつの製造工程)中の汚染を抑制する観点から、繊維長は長いほど好ましい。不織布10は、好ましくは平均繊維長が50mm以上、より好ましくは80mm以上、更に好ましくは100mm以上の繊維で構成される。
【0026】
不織布10は、熱可塑性樹脂から成る繊維を用いて構成されることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、
ポリエチレン、ポリプロピレン、及び共重合ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及び共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;
ナイロン-6、ナイロン-66、及び共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂;及び
ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、及びポリエチレンサクシネート等の生分解性樹脂;
が挙げられる。不織布の風合いの観点、また、不織布の用途の多くが使い捨て材料であるため、汎用性、回収の利便性、及びリサイクルの観点から、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0027】
不織布10を構成する繊維の形態としては、例えば、断面が円形の繊維、断面が異型の繊維、中空繊維、2種類以上の熱可塑性樹脂から構成される複合繊維等が挙げられる。不織布に適度な空隙を設けてSAP担持量を向上させる観点から、不織布を構成する繊維は、捲縮していることが好ましい。繊維を捲縮させる手段としては、
断面が異形の繊維を用い、そして、紡糸冷却時に偏冷却させる方法;及び
2種類以上の熱可塑性樹脂から構成される複合繊維を用いる方法;
が挙げられる。「サイドバイサイド型(S/S)」の繊維、また、「偏芯鞘芯型(eS/C)」の繊維等の複合繊維を用いることで、捲縮を発現させ易い。
【0028】
不織布を構成する繊維が偏芯鞘芯型(eS/C)である場合、芯部が完全に鞘部に覆われていてもよく、芯部の一部が繊維表面に露出してもよい。芯部の一部が繊維表面に露出する場合、芯部における露出する部分の面積が繊維表面の面積に占める割合(芯部における露出する部分の面積/繊維表面の面積)は、0%超50%以下が好ましく、より好ましくは0%超30%以下である。この割合が50%以下であれば、不織布の接合時に悪影響が生じ難く、ゆえに、十分な強度を実現し易い。
【0029】
不織布を構成する繊維が、2種類以上の熱可塑性樹脂から構成される複合繊維である場合、上記熱可塑性樹脂のいずれを組み合せてもよく、この場合、繊維同士が好適に接合する観点から、融点差のある熱可塑性樹脂の組み合わせが好ましい。不織布を構成する繊維が、2種類(実質的に2種類である場合を含む。)の熱可塑性樹脂から構成される複合繊維である場合、融点の高い方の樹脂が繊維内に占める質量比(融点の高い方の樹脂の質量/繊維を構成する樹脂の総質量)は、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは30~80質量%、更に好ましくは50~70質量%である。ここでの「実質的に2種類である場合」は、不織布を構成する繊維が、3種類以上の熱可塑性樹脂から構成される複合繊維である場合であっても、所定の2種類以外の熱可塑性樹脂の繊維内に占める質量比が微量(例えば、1質量%以下)である組み合わせを意味する。
【0030】
不織布を構成する繊維が、3種類以上の熱可塑性樹脂から構成される複合繊維である場合、融点が最大である樹脂が繊維内に占める質量比(融点が最大である樹脂の質量/繊維を構成する樹脂の総質量)は、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは30~80質量%、更に好ましくは50~70質量%である。この質量比も、上記と同様、繊維内に占める質量比が微量(例えば、1質量%以下)である樹脂は省いて算出されてよい。
【0031】
不織布を構成する繊維が、2種類以上の熱可塑性樹脂から構成される複合繊維である場合、不織布の風合いの観点から、2種類以上のポリオレフィン系樹脂同士の組み合わせ、又はポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂との組み合わせが好ましい。
2種類以上のポリオレフィン系樹脂同士を組み合わせる場合、使用されるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらのモノマーと他のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。他のα-オレフィンとしては、炭素数3~10のオレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキサン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。
【0032】
上記オレフィン系樹脂は、バイオエタノール又はバイオイソプロパノールであってもよく、また、植物油由来のバイオナフサ等から製造された植物由来の樹脂であってもよい。ポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂とを組み合わせる場合、ポリオレフィン系樹脂としては、上記の樹脂を用いることができ、また、ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート単一成分又はイソフタル酸等を含んだ共重合体を用いることができる。ポリエチレンテレフタレートは、ブレンド等により改質したものでも、添加剤等を付与したものでもよい。熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、強度が高くそして破断し難いこと、衛生材料の生産時における加工特性に優れていること、風合いが良いこと、及びリサイクル性に優れること、等の観点から、ポリプロピレンとポリエチレンとの組み合わせが好ましい。上記と同様の観点から、複合繊維が偏芯鞘芯型である場合には、芯部の樹脂としてポリプロピレンを用い、及び/又は鞘部の樹脂としてポリエチレンを用いることが好ましい。
【0033】
不織布を構成する繊維として、ポリプロピレンを用いる場合、一般的なチーグラナッタ触媒により合成されるポリプロピレン、メタロセンに代表されるシングルサイト活性触媒により合成されたポリプロピレン、及びエチレンランダム共重合ポリプロピレンのいずれでもよく、これらは1種単独でも2種以上が併用されてもよい。風合い、強度、寸法安定性の観点から、ホモポリプロピレンを主成分(例えば、全樹脂のうち50質量%以上)に用いることが好ましい。
【0034】
不織布を構成する繊維としてポリプロピレンを用いる場合、繊維の製造時の紡糸性、及び/又は繊維の強度の観点から、そのポリプロピレンのメルトフローレイト(以下、「MFR」と略記する場合がある。)は、好ましくは20g/10min以上、より好ましくは30g/10分超え、更に好ましくは40g/10min超え、最も好ましくは、53g/10分超えである。ポリプロピレンのMFRは、好ましくは250g/10min以下、より好ましくは120g/10分以下、更に好ましくは60g/10min以下である。ポリプロピレンのMFRは、JIS-K7210「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」の付属書Aにおける表1のうち、「試験温度230℃」、及び「試験荷重2.16kg」の組み合わせに準じて測定される。
【0035】
不織布を構成する繊維としてポリエチレンを用いる場合、一般的なチーグラナッタ触媒により合成されるポリエチレン、及びメタロセンに代表されるシングルサイト活性触媒により合成されるポリエチレンのいずれが用いられてもよい。ポリエチレンは、高密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましく、その密度は、好ましくは0.92~0.97g/cmであり、より好ましくは0.925~0.96g/cmである。ポリエチレンは、1種単独でも2種以上が併用されてもよい。繊維同士の交点の接着性を向上させる観点から、高密度ポリエチレンに対して0.5~80質量%の割合で直鎖状ポリエチレンを混合して用いることが好ましい。
【0036】
不織布を構成する繊維としてポリエチレンを用いる場合、繊維の製造時の紡糸性の観点から、ポリエチレンのメルトインデックス(以下、単に「MI」と略記する場合がある。)は、10g/10min以上が好ましく、より好ましくは15g/10min超えである。ポリエチレンのMIは、好ましくは100g/10min以下であり、より好ましくは60g/10min以下、更に好ましくは、40g/10min以下である。ポリエチレンのMIは、JIS-K7210「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」の付属書Aにおける表1のうち、「試験温度190℃」、及び「試験荷重2.16kg」の組み合わせに準じて測定される。
【0037】
不織布を構成する繊維としてポリエステル系樹脂を用いる場合、そのポリエステル系樹脂の溶液粘度ηsp/cは、0.2以上であることが好ましく、より好ましくは0.6以上である。溶液粘度ηsp/cは、好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.8以下である。溶液粘度ηsp/cは、o-クロロフェノール(OCP)を溶媒として用い、濃度0.01g/mL、及び温度35℃の恒温水槽中の粘度管を用いて測定される。
【0038】
不織布は、透水剤を含んでよい。透水剤としては、人体への安全性、製造工程での安全性等の観点から、高級アルコール、高級脂肪酸、エチレンオキサイドを付加した非イオン系活性剤(アルキルフェノール等)、アルキルフォスフェート塩、アニオン系活性剤(アルキル硫酸塩等)等が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上が併用されてもよい。
【0039】
不織布が透水剤を含む場合、透水剤の含有量は、不織布の質量に対して0.10~質量2.00質量%が好ましく、より好ましくは0.15~1.50質量%である。透水剤の含有量が0.10質量%以上であることにより、不織布に対して十分な透水性能を付与し易い。透水剤の含有量が1.50質量%以下であることにより、肌への安全性の高い不織布(例えば、肌のかぶれ、及び湿疹が発生し難い不織布)を実現し易い。
【0040】
不織布は、一方の面と他方の面とで、その構成、及び/又は特性が異なってもよく、例えば、透水性能が異なってもよい。一方の面に対して、親水性の高い透水剤を含有させること、及び/又は透水剤の含有量を多くすることにより、通水性を高めことができ、また、他方の面に対して、親水性の低い透水剤を含有させること、及び/又は透水剤の含有量を少なくすることにより、液拡散性を高めることができる。
【0041】
不織布は、単層構造を有しても、2層以上の積層構造を有してもよい。積層構造を有する場合、全ての層が本開示の不織布であってもよく、一部の層だけが本開示の不織布であってもよい。一部の層だけが本開示の不織布である場合の例として、本開示の不織布と、通常のスパンボンド不織布と、の積層構造が挙げられる。
【0042】
〈不織布の製造方法〉
本実施形態に更なる一態様は、繊維により構成される不織布10を製造するための、不織布の製造方法である。
かかる方法は、繊維のウェブを、所定方向に沿って所定の間隔で融着させる工程、を含む。かかる工程では、所定方向に沿って間欠的に配される熱風吹き出し口から熱風をウェブに吹き付けることで、ウェブを融着させることができる。
【0043】
不織布の製造方法は、以下の工程1、及び工程2を含むことが好ましい。
すなわち、不織布は、例えば、
繊維をコンベア上に堆積してウェブを形成する工程(工程1)、及び
該ウェブを該コンベアで搬送しながら、所定方向に間欠的に配される熱風吹き出し口から熱風を該ウェブに吹き付けることで、該ウェブに接着部1(第1領域1A)を形成する工程(工程2)、を含む方法により、製造されることが好ましい。
【0044】
なお、不織布を構成する繊維は、例えば、溶融した熱可塑性樹脂を紡糸口金から吐出させて繊維を作製する工程(工程0)、により作製される。従って、不織布の製造方法は、工程0を含んでよい。
【0045】
(工程0)
本工程では、熱可塑性樹脂を押出機から押出し、そして、多数の紡糸孔を有する紡糸口金から樹脂フィラメントを吐出させる。2種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせた複合繊維を用いて不織布を製造する場合、例えば、2つ以上の異なる押出機からそれぞれ異なる熱可塑性樹脂を押出し、そして、紡糸口金から2種以上の熱可塑性樹脂が複合された状態で樹脂フィラメントとして吐出させることができる。
【0046】
吐出された樹脂フィラメントに、温度を好ましくは3~28℃に制御した風を当て、これにより冷却を促進し、そして繊維を作製する。繊維を作製する過程において、冷却しながら牽引装置により樹脂フィラメントを牽引してもよい。
【0047】
不織布の製造方法において、上記工程0は必須でない。不織布の製造方法では、上記工程0を省略する場合、上記工程0を含んでもよい任意の工程によって作製された繊維を用いることができる。
【0048】
(工程1)
本工程では、繊維をコンベア上に堆積してウェブを形成する。コンベア上に堆積したウェブ上に、更に別のウェブを積層してもよいし、一度ウェブを接合させた後、オンライン又はオフラインにて別のウェブを積層してもよい。積層する場合、各層を、異なる繊維径のウェブで形成してもよいし、もちろん、構成の異なる繊維(例えば、断面が円形の繊維、断面が異形の繊維、捲縮した繊維、中空繊維等)によるウェブを積層してもよい。
【0049】
(工程2)
本工程では、ウェブをコンベアで搬送しながら、所定方向(例えば、図2~5ではy方向)に間欠的に配される熱風吹き出し口から熱風を該ウェブに吹き付けることで、該ウェブに接着部1(第1領域1A)を形成する。ここでの所定方向は、不織布10の短手方向(幅方向)に沿った方向に相当する。工程2における加熱方法としては、繊維同士の交点でより多くの繊維接着点が得られ易く、結果として不織布の破断強度が高くなり易いという観点から、熱風貫通型(熱風を加熱対象に貫通させ、そして加熱させる手法)が好ましい。
【0050】
熱風吹き出し口は、機械流れ(MD)方向に所定の間隔で配置された1個又は複数個の開口から構成される。熱風吹き出し口より吹き出された熱風によって、ウェブに、接着部(第1領域)を形成することができる。熱風噴き出し口を構成する開口の形状は、正方形、長方形、真円形、楕円形等が挙げられる。ウェブに対しては、例えば、該ウェブを所定方向(例えば、図2~5ではx方向)に搬送しながら熱風を吹きかけることができる。
【0051】
熱風吹き出し口の間隔は、等しくてもよく、異ならせてもよい。熱風吹き出し口の間隔を適宜調整することで、不織布における、所定方向に沿った接着部(第1領域)の間隔を適宜調整することができる。
【0052】
図2は、熱風吹き出し口3の構成例を示す平面図である。
熱風吹き出し口3-2は、矩形形状を有する1個の開口4から構成され、かかる熱風吹き出し口3-2が所定方向(y方向)に等しい間隔で配されている。このような熱風吹き出し口3-2を用いれば、矩形形状を有し、かつ、所定方向に等しい間隔で配される接着部(第1領域)を、不織布に形成することができる。
【0053】
図3は、熱風吹き出し口3の別の構成例を示す平面図である。
熱風吹き出し口3-3は、矩形形状を有する複数個の開口4から構成され、かかる熱風吹き出し口3が所定方向(y方向)に等しい間隔で配されている。図3に示される熱風吹き出し口3-3は、x方向に沿って断続的に配された開口4から構成されている点が、図2に示される熱風吹き出し口3-2と異なる。
【0054】
図4は、熱風吹き出し口3の別の構成例を示す平面図である。
熱風吹き出し口3-4は、矩形形状を有する微小開口4の集合から構成され、かかる熱風吹き出し口3-4が所定方向(y方向)に等しい間隔で配されている。図4に示される熱風吹き出し口3-4は、サイズの小さい多数の開口4によって熱風吹き出し口3-4が構成されている点が、図3に示される熱風吹き出し口3-3と異なる。
【0055】
図5は、熱風吹き出し口3の別の構成例を示す平面図である。
熱風吹き出し口3-5は、矩形形状を有する1個又は複数個の開口4から構成され、かかる熱風吹き出し口3-5が所定方向(y方向)に等しい間隔で配されている。図5に示される熱風吹き出し口3-5は、所定方向(y方向)に沿って開口4が千鳥状に構成されている点が、図3に示される熱風吹き出し口3-3と異なる。
【0056】
図2~5に示される熱風吹き出し口3の態様は、組み合わされてよい。例えば、互いに構成が異なる熱風吹き出し口3-2~3-5が、y方向に沿ってランダムに配されるような態様も、本実施形態に範囲内に含まれる。
【0057】
熱風吹き出し口3の幅(W)は、0.5~20.0mm以下が好ましく、より好ましくは1~5mmである。熱風吹き出し口3の幅(W)が0.5mm以上であることにより、不織布全体のうち接着している交点の割合を十分に確保し易いので、ウェブを問題なく搬送し易い。熱風吹き出し口3の幅(W)が20.0mm以下であることにより、不織布全体のうち接着している交点の割合の過剰な増加を抑え易いので、液拡散性、通水性、及び風合いが良好となり易い。
なお、熱風吹き出し口3の幅(W)は、熱風吹き出し口3の所定方向(例えば、図2~5でのy方向)の最大幅のことをいう。
【0058】
熱風吹き出し口3の間隔(D)は、2~50.0mmであることが好ましく、より好ましくは10~30.0mmである。間隔(D)が2mm以上であることにより、得られる不織布が十分に嵩高くなり易いため、十分なSAP担持性を得易くなる。間隔(D)が50.0mm以下であることにより、得られる不織布が十分な強度となり易いため、搬送時に不織布が破れ難くなる。
なお、間隔(D)は、ある熱風吹き出し口の幅の中心(中心線L1)と、その熱風吹き出し口に隣り合う別の熱風吹き出し口の幅の中心(中心線L2)と、の間隔である。
【0059】
熱風の風速は、好ましくは5.0m/s以上、より好ましくは10m/s以上、更に好ましくは20m/s以上であり、また、好ましくは50m/s以下、より好ましくは40m/s以下、更に好ましくは30m/s以下である。熱風の風速が5.0m/s以上であることにより、繊維同士が十分に接着し易いため、問題なく不織布を搬送し易い。熱風の風速が50m/s以下であることにより、風合いを損なうことなく繊維同士を接着し易い。
【0060】
熱風の温度は、接着させる樹脂の種類によって適宜選択される。接着させる樹脂がポリエチレンの場合、熱風の温度は、135~175℃が好ましく、より好ましくは140~170℃である。熱風の温度が135℃以上であることにより、繊維同士が十分に接着し易いため、問題なく不織布を搬送し易い。熱風の温度が175℃以下であることにより、風合いを損なうことなく繊維同士を接着し易い。
【0061】
上記工程2は、熱風を吹き付けた後の不織布に、透水剤を塗布する工程を有してよい。
透水剤を塗布する方法としては、コーティング法(グラビアコーター、キスコーター)、噴霧法等を採用でき、また、必要に応じて、コロナ放電処理、常圧プラズマ放電処理等の前処理を行ってもよい。塗布後の乾燥方法としては、対流伝熱、伝導伝熱、放射伝熱等を利用した方法が採用でき、また、熱風による乾燥、赤外線による乾燥、熱接触による乾燥方法等を用いてもよい。
【0062】
透水剤を、水等の溶媒で希釈し、これにより透水剤水溶液を得て、これを不織布に塗布してもよい。また、設備の高速化に伴い、乾燥工程で乾燥不足が生じると考えられる場合、透水剤水溶液の塗布量を少なくすることが好ましい。不織布への塗布量(不織布に塗工された透水剤の質量/不織布の質量:質量%)は、上記塗布方法のいずれの場合においても、1.0~65質量%が好ましく、より好ましくは3.0~60質量%であり、更に好ましくは5.0~50質量%である。塗布量(質量%)が1.0質量%以上であることにより、透水剤を不織布に均一に塗布し易い。塗布量(質量%)が65質量%以下であることにより、透水剤を塗布した不織布の乾燥に必要なコスト(乾燥時間、乾燥設備費用等)を下げ易く、また、乾燥不足を抑制し易い。
【0063】
透水剤を不織布に塗布する場合、塗布設備を管理する容易性の観点から、ステンレス製アプリケーターロールを用いたキスコーター方式による塗布が好ましい。この場合、透水剤をバスに連続して供給し、そしてバス内において回転するローラーを不織布に接触させることで、透水剤を塗布することができる。透水剤の塗布量は、キスロールの1min当たりの回転数を調節することで、容易に制御可能である。
【0064】
透水剤を不織布に塗布する場合、塗布の高速化に対応し易いこと、効率良く塗布し易いこと、また、不織布の厚みを制御し易いことから、噴霧法での透水剤の塗布も好ましい。噴霧法としては、圧縮空気により透水剤を細かいミスト状にし、そしてこれを吹き付けるエアスプレー方式、ローター回転の遠心力を用いて透水剤をミスト上にして、これを噴霧するローターダンプニング方式等が挙げられる。噴霧法で透水剤を塗布する場合、不織布の片面のみに噴霧しても両面に噴霧してもよい。
【0065】
透水剤を塗布した後の乾燥について、乾燥手法としては、対流伝熱、伝導伝熱、放射伝熱等を利用した手法が挙げられ、また、熱風循環型、熱風貫通型、赤外線ヒーター型も挙げられる。更に、乾燥手法としては、不織布の両面に熱風を吹き付ける方法、加熱気体中に不織布を導入する方法等を用いることもできる。
【0066】
〈SAP支持体〉
本実施形態に更なる一態様は、SAP支持体である。
SAP支持体は、本開示の不織布を含み、任意に、他の不織布を更に含んでよい。
【0067】
〈SAPシート〉
本実施形態に更なる一態様は、SAPシートである。
SAPシートは、本開示のSAP支持体と、SAPと、を含む。SAPは、自身の重さの数百倍から約千倍までの水を吸収、及び保持できる、高分子化合物を意味する。SAPとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸系高分子化合物等が挙げられ、高い吸水性の観点から、好ましくはポリアクリル酸系高分子化合物、より好ましくはポリアクリル酸ナトリウムが挙げられる。SAPシートは、SAP支持体上にSAPが担持されて構成される。
【0068】
〈吸収性物品〉
本実施形態に更なる一態様は、吸収性物品である。
吸収性物品は、本開示のSAPシートを吸収体として含む。吸収性物品としては、例えば、おむつ、生理用ナプキン、失禁パット及びペットシート等が挙げられる。吸収性物品において、吸収体以外の構成は、公知の構成が採用されてよい。
【0069】
〈衛生材料〉
本実施形態に更なる一態様は、衛生材料である。
衛生材料は、本開示の不織布を含む。衛生材料としては、例えば、おむつ、マスク、カイロ、テープの基布、貼布薬の基布、救急絆の基布、包装材、ワイプ製品、医療用ガウン、包帯、衣料、スキンケア用シート等が挙げられる。衛生材料がおむつである場合、本開示の不織布は、トップシート、セカンドシート、バックシート、及びSAPシート等に適用可能である。
【実施例0070】
実施例、及び比較例により、本実施形態をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例のみに限定されない。特に断りのない限り、本実施例における各種の測定等は、室温(約25℃)にて行った。
【0071】
[各種測定]
〈目付(g/m)〉
JIS-L1913に準じ、長手方向20cm×幅方向5cmのサンプルを不織布の幅方向に採取位置がほぼ均等になるように5枚採取した。そして、各サンプルの質量を測定し、その平均値を算出した。算出した平均値を、単位面積(m)あたりの質量(g)に換算し、これにより、「目付(g/m)」を求めた。
【0072】
〈接着部の厚み(mm)、非接着部の厚み(mm)、厚み差(mm)〉
不織布から、長手方向100mm×幅方向150mmのサンプルを得た。得られたサンプルを、シワにならないように、KEYENCE社製ワンショット3D測定マイクロスコープのステージに置いた。そして、低倍カメラ(12倍)で、連結モード:オートにて高さ18mm×幅100mmの範囲を測定した。このとき、不織布が測定範囲に含まれるように、ステージの高さを調整した。測定後、装置内の解析ソフトにおいて、プロファイル計測モードの一つである「水平線モード」を選択した。そして、ステージを基準高さとしたときの凸部の高さ、及び凹部の深さをそれぞれ読み取った。凸部20点、及び凹部20点の計40点を測定した。接着部(凹部)における計20点の平均を算出し、これを「接着部の厚み(mm)」として扱った。同様に、非接着部(凸部)における計20点の平均を算出し、これを「非接着部の厚み(mm)」として扱った。接着部の厚み(mm)と、非接着部の厚み(mm)と、の差を、「厚み差(mm)」として扱った。
非接着部の厚み(mm)-接着部の厚み(mm)=接着部と非接着部の厚み差(mm)
【0073】
〈SAP担持量(g/44.2cm)〉
不織布から、長手方向150mm×幅方向150mmのサンプルを得て、得られた各サンプルの質量を測定した(このときの質量を「質量A(mg)」とした)。受け皿と、ふるい(内径75mm×内高20mm、目開き2.36mm)と、の間にサンプルを配し、そしてふるいに10gのSAPを入れた。その後、受け皿と、サンプルと、SAPが入ったふるいとを、ふるい振とう機(MICRO VIBRO SIFTER MODEL M-2)にセットするとともにボリュームを1にして、1minに亘って振とうさせた。振とう後、サンプル表面のSAPが落下するように、サンプルを鉛直方向に沿わせながら取り出し、すぐに天秤でサンプルの質量を測定した(このときの質量を「重量B(mg)」とした)。これを5回繰り返し、これにより、質量Bの平均値と、質量Aの平均値と、を得て、そして両者の差を求めた。求めた両者の差から、「SAP担持量(g/44.2cm)」を算出した。
SAP担持量(g/44.2cm)=(重量B(mg)-重量A(mg))
SAPは、ケニス株式会社製 超吸収性樹脂(商品コード1-110-0985)を使用した。
【0074】
SAP担持量(g/44.2cm)が0.45以上であれば、おむつのような衛生材料の用途にSAPを使用するとき、シートに担持されるSAP量を確保できることから、吸収量に優れた製品を実現し易い。
【0075】
〈液拡散指数(g)〉
不織布から、長手方向150mm×幅方向150mmのサンプルを2枚得た。1枚のサンプル全面に、1g/mとなるように、スプレータイプのホットメルトガンでホットメルトを塗布した。その後、サンプル表面に、SAP5gを均一に振りかけた。SAPを振りかけたサンプル表面に、もう1枚のサンプルを重ね合わせ、これにより、サンプル(不織布)/SAP/サンプル(不織布)の、3層構造のSAP支持体を作製した。
【0076】
150mm角を有し、かつ、中央に直径25mmの穴を開けた板(約800g)をSAP支持体の上に置き、そして、中央の穴の上方25mmの高さから、青色水溶液10mlを滴下した。なお、青色水溶液は、食用青色1号を1%濃度になるように生理食塩水に溶解したものを用いた。
【0077】
滴下後、60sec後のSAP支持体を、有効画素数1,640万画素のデジタルカメラを用いて、200mm高さから撮影することで、画像データを得た。得られた画像データを、RICOH製デジタルフルカラー複合機MP C5504で、A4サイズのコピー用紙(白色度92%、坪量68g/m)にカラー印刷した。SAP支持体のうち、青色にカラー印刷された部分(液拡散部)をカッターで切り取り、そしてその切り取った用紙部分の合計質量を測定した。この測定を5回繰り返し、得られた各質量gの平均値を「液拡散指数」として扱った。
【0078】
液拡散指数は、0.15以上であれば、通液時に液体が十分に拡散し易く、ゆえにSAPの全体に液体を行き渡らせ易い。
【0079】
〈通水速度(sec)〉
上記〈液拡散指数(-)〉と同様に、SAP支持体を作製した。SAP支持体から125mm角のサンプルを得て、そして一回り大きいプラスチック板にサンプルを載せた。その後、EDANA(European Disposables And Nonwovens Association:欧州不織布工業会)の規格での「STRIKE-THROUGH法」で用いられるLENZING INSTRUMENTS社製 LISTERの検知プレートを、サンプルの上に乗せた。検知プレートの上方30mmの高さから20mLの生理食塩水を滴下した。この滴下を1回目としたとき、30minおきに同様の滴下を行い、そして3回目の滴下後にLISTERが表示した値を、3回目通水速度として扱った。この測定を5回繰り返し、得られた平均値を、「通水速度(sec)」として扱った。
【0080】
通水速度(sec)が20sec以下であれば、液体を不織布からSAPに素早く移行させ易い。
【0081】
〈風合い〉
不織布から、長手方向300mm×幅方向300mmのサンプルを得た。そして、官能評価により、サンプルの風合いを判定した。評価基準は以下の5段階であり、旭化成社製エルタス(商標) P03040との風合いを比較し、10人の平均で判定した。判定結果の平均値を、「風合い」として扱った。
評価基準
5級:P03040よりも柔らかった。
4級:P03040よりもやや柔らかった。
3級:P03040と同等であった。
2級:P03040よりもやや硬かった。
1級:P03040よりも硬かった。
【0082】
以下、実施例1~31、及び比較例1~13について説明する。以下の説明中、メルトフローレイト(MFR)は、JIS-K7210に準じ、温度230℃、及び荷重2.16kgで測定されたMFRであり、また、メルトインデックス(MI)は、JIS-K7210に準じ、温度190℃、及び荷重2.16kgで測定されたMIである。
【0083】
[実施例1]
MFRが55g/10minのポリプロピレン(PP)樹脂を第1成分として用意し、また、MIが26g/10minの高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂を第2成分として用意した。
【0084】
全吐出量が0.80g/min・hоleである条件で、第1成分、及び第2成分の比がPP/PE=6/4となるように、サイドバイサイド型(S/S)の紡糸口金を用い、紡糸温度220℃で樹脂フィラメントを押出した。押出した樹脂フィラメントを、コンベアの吸引力を利用して牽引ゾーン内で延伸させた後、ディフューザーを通してコンベア面に堆積させた。これにより、繊維のウェブを得た。得られた繊維ウェブについて、幅W:0.5mm、及び間隔D:2.0mmの熱風吹き出し口(例えば、図2参照。)を有する熱風設備で、熱風温度145℃、及び熱風風速20.0m/secの熱風により、繊維同士を部分接着した。これにより、40g/mの不織布を得た。
【0085】
得られた不織布に、塗布量が10質量%となるよう、ローターダンプニング方式で、透水剤水溶液を塗布した。透水剤水溶液としては、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルと、ポリエーテル変性シリコーンと、から成る5質量%水溶液で、液温20℃に調整したものを用いた。透水剤水溶液を塗布後、125℃のシリンダードライヤーに通すことで該水溶液を乾燥させ、これにより、不織布を得た(実施例1)。実施例1について、各種の測定結果等を下表に示す。
【0086】
[実施例2~21]
熱風吹き出し口の幅、及び間隔を、下表のとおりに変更する以外は、実施例1と同様の手法に基づいて不織布を得た(実施例2~21)。
【0087】
[実施例22]
全吐出量が0.80g/min・hоleである条件で、第1成分、及び第2成分の比がPP/PE=6/4となるように、偏芯鞘芯型(eS/C)の紡糸口金を用い、紡糸温度220℃で樹脂フィラメントを押出した。なお、樹脂は、実施例1と同様の樹脂を用いた。押出した樹脂フィラメントを、コンベアの吸引力を利用して牽引ゾーン内で延伸させた後、ディフューザーを通してコンベア面に堆積させた。これにより、繊維のウェブを得た。次いで、得られた繊維ウェブについて、幅W:1.0mm、及び間隔D:20.0mmの熱風吹き出し口(例えば、図2参照。)を有する熱風設備で、熱風温度145℃、及び熱風風速20.0m/secの熱風により、繊維同士を部分接着した。これにより、40g/mの不織布を得た。
【0088】
得られた不織布に、実施例1と同様の手法に基づき、透水剤水溶液を塗布、及び乾燥させ、これにより、不織布を得た(実施例22)。
【0089】
[実施例23]
溶液粘度(ηsp/c)が0.75のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を第1成分として用意し、また、実施例1で用いたものと同様の高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂を第2成分として用意した。
【0090】
全吐出量が0.80g/min・hоleである条件で、第1成分、及び第2成分の比がPET/PE=6/4となるように、サイドバイサイド型(S/S)の紡糸口金を用い、紡糸温度300℃で樹脂フィラメントを押出した。押出した樹脂フィラメントを、コンベアの吸引力を利用して牽引ゾーン内で延伸させた後、ディフューザーを通してコンベア面に堆積させた。これにより、繊維のウェブを形成した。次いで、得られた繊維ウェブについて、幅W:1.0mm、間隔D:20.0mmの熱風吹き出し口(例えば、図2参照。)を有する熱風設備で、熱風温度145℃、熱風風速20.0m/secの熱風により繊維同士を部分接着し、40g/mの不織布を得た。
【0091】
得られた不織布に、実施例1と同様の手法に基づき、透水剤水溶液を塗布、及び乾燥させ、これにより、不織布を得た(実施例23)。
【0092】
[実施例24~31]
第1成分と第2成分の樹脂比率、熱風風速、及び/又は熱風温度を下表のとおりに変更する以外は、実施例1と同様の手法に基づき、不織布を得た(実施例24~31)。
【0093】
[比較例1~8]
熱風吹き出し口の幅、及び間隔を下表のとおりに変更する以外は、実施例1と同様の手法に基づき、不織布を得た(比較例1~8)。比較例1、3、及び6~8では、不織布を搬送する過程、具体的には、熱風を吹き付けた後、これを巻き取るまでの搬送過程で不織布が破れ、ゆえに、不織布を得ることができなかった。
【0094】
[比較例9]
MFRが55g/10minのポリプロピレン(PP)樹脂を第1成分として用意し、また、MIが26g/10minの高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂を第2成分として用意した。
【0095】
全吐出量が0.80g/min・hоleである条件で、第1成分、及び第2成分の比がPP/PE=6/4となるように、サイドバイサイド型(S/S)の紡糸口金を用い、紡糸温度220℃で樹脂フィラメントを押出した。押出した樹脂フィラメントを、コンベアの吸引力を利用して牽引ゾーン内で延伸させた後、ディフューザーを通してコンベア面に堆積させた。これにより、繊維のウェブを得た。得られた繊維ウェブについて、熱風温度125℃、及び熱風風速1.2m/secの熱風により、繊維同士を部分接着した。これにより、40g/mの不織布を得た。なお、ここでの熱風設備は、実施例で用いられたような熱風吹き出し口を有するものではなかった。
得られた不織布に、実施例1と同様の手法に基づき、透水剤水溶液を塗布、及び乾燥させ、これにより、不織布を得た(比較例9)。
【0096】
[比較例10]
熱風温度を100℃に変更する以外は、比較例9と同様の手法に基づき、不織布を得た(比較例10)。
【0097】
[比較例11]
MFRが38g/10minのポリプロピレン(PP)樹脂を用意した。
【0098】
全吐出量が0.80g/min・hоleとなる条件で、ハ型異型紡口を配置した紡糸口金を用い、紡糸温度240℃で樹脂フィラメントを押出した。エアジェットによる高速気流牽引装置を用いて、移動捕集面に向けて樹脂フィラメントを更に押出し、これにより、繊維のウェブを得た。得られた繊維ウェブについて、温度135℃、及び圧力60kg/cmに設定したフラットロールと、エンボスロール(パターン仕様:直径0.425mm円形、千鳥配列、横間隔2.1mm、縦間隔1.1mm、及び圧着面積率6.3%)と、の間に通して、そして繊維同士を部分的に接着した。これにより、目付40g/mの不織布を得た。
【0099】
得られた不織布に、実施例1と同様の手法に基づき、透水剤水溶液を塗布、及び乾燥させ、これにより、不織布を得た(比較例11)。
【0100】
[比較例12]
MFRが38g/10minのポリプロピレン(PP)を第1成分(芯の成分)として有し、また、MIが26g/10minの高密度ポリエチレン(HDPE)を第2成分(鞘の成分)として有する樹脂を用意した。第1成分、及び第2成分の比は、下表のとおりに設定した。
【0101】
上記樹脂を用いて繊度2.5dtex、及びカット長38mmの短繊維を作製した。作製した短繊維を構成繊維として利用し、カード法により繊維のウェブを得た。得られた繊維ウェブについて、熱風温度140℃、及び熱風風速1.0m/secの熱風により、繊維同士を部分接着した。これにより、目付40g/mの不織布を得た
【0102】
得られた不織布に、実施例1と同様の手法に基づき、透水剤水溶液を塗布、及び乾燥させ、これにより、不織布を得た(比較例12)。
【0103】
[比較例13]
MFRが38g/10minのポリプロピレン(PP)を第1成分(芯の成分)として有し、また、MIが26g/10分の高密度ポリエチレン(HDPE)を第2成分(鞘の成分)として有する樹脂を用意した。
【0104】
上記樹脂を用いて繊度3.3dtex、及びカット長38mmの短繊維を作製した。作製した短繊維を構成繊維として利用し、カード法により繊維のウェブを得た。得られた繊維ウェブに、幅W:2mm、間隔D:3.0mmである開口が線状に連なって配列されたコンベアを載せた状態(すなわち、コンベアによって繊維ウェブを部分的にマスキングした状態)で、熱風温度130℃、及び熱風風速0.5m/secの熱風により繊維同士を部分接着した。これにより、目付40g/mの不織布を得た(比較例13)。
【0105】
得られた不織布に、実施例1と同様の手法に基づき、透水剤水溶液を塗布、及び乾燥させ、これにより、不織布を得た(比較例13)。比較例13の不織布は、接着部の厚みが、非接着部の厚みよりも大きかった。
【0106】
下表において、
「S/S(サイドバイサイド型)」、及び「eS/C(偏芯鞘芯型)」は、紡糸口金の形状を示しており、この形状の違いによって得られる糸構造が異なってくるため、項目「糸構造」として表記してある。
なお、項目「糸構造」において「SC」は、同芯鞘芯型を示している。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、液拡散性、SAP担持量、及び通水性に優れるため、SAP支持体に好適に適用することができる。また、本発明は、衛生材料、例えば、おむつ用構成部材(具体的には、トップシート、及びセカンドシート等)にも好適に適用することができる。更に、本発明は、例えば、マスク、カイロ、テープの基布、貼布薬の基布、救急絆の基布、包装材、ワイプ製品、医療用ガウン、包帯、衣料、及びスキンケア用シート、等にも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0112】
10 不織布
1 接着部
1A 第1領域
2 非接着部
2A 第2領域
3,3-2,3-3,3-4,3-5 熱風吹き出し口
4 開口
W 幅
D 間隔
L1,L2 中心線
図1
図2
図3
図4
図5