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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005952
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106423
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 育夫
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087BB25
3B087CD04
3B087DB03
3B087DB10
(57)【要約】
【課題】車両の衝突に伴う荷重が入力された際におけるブラケットの変形を抑制すると共に、シートクッションの調節範囲が狭くなることを抑制する。
【解決手段】車両用シートは、シートクッション12と、シートクッションの位置を調節するリフタ装置16と、ブラケット22と、変形抑制部材30と、を備えている。ブラケット22は、シートクッション12の一部分と対向して配置される底壁部22Aと、底壁部22Aと一体に形成されていると共に車両の衝突に伴う荷重が入力される右側壁部22Bと、を備えている。変形抑制部材30は、右側壁部22Bに沿って配置されることで右側壁部22Bの底壁部22Aに対する変形を抑制する。また、変形抑制部材30は、リフタ装置16の作動に伴いシートクッション12の一部分が底壁部22A側へ変位する際に底壁部22A側へ変位する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
作動することで前記シートクッションの位置を調節するシート調節部と、
前記シートクッションの一部分と対向して配置される対向部と、前記対向部と一体に形成されていると共に車両の衝突に伴う荷重が入力される荷重入力部と、を有するブラケットと、
前記荷重入力部に沿って配置されることで前記荷重入力部の前記対向部に対する変形を抑制し、前記シート調節部の作動に伴い前記シートクッションの一部分が前記対向部側へ変位する際に前記対向部側へ変位する変形抑制部材と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記シート調節部の作動に伴い前記シートクッションの一部分が前記対向部とは反対側へ変位する際に前記変形抑制部材を元の位置に戻す付勢部材をさらに備えた請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記変形抑制部材は、前記対向部にヒンジを介して傾動可能に支持されており、
前記付勢部材が前記ヒンジと一体に設けられている請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記変形抑制部材は、前記対向部にヒンジを介して傾動可能に支持されており、
前記対向部の一部分は、前記対向部の他の部分に対して突出しているヒンジ接合部となっており、
前記ヒンジが前記ヒンジ接合部に溶接で接合されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記変形抑制部材は、前記対向部に沿って配置された軸部を備えており、
前記軸部が前記対向部に形成された切り起し部分に係止されることで、前記変形抑制部材が前記対向部に傾動可能に支持されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記荷重入力部には、シートベルト装置の一部を構成するベルトアンカが固定されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記シート調節部は、前記シートクッションの骨格を構成するクッションフレームをシート上下方向に変位させるリフタ装置となっており、
前記クッションフレームの一部分が前記対向部とシート上下方向に対向して配置されている請求項6に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両の後突時にシートクッションのサイドフレームをシートベルトアンカブラケットの一部によって受けることができるように、サイドフレームとシートベルトアンカブラケットの一部とをシート上下方向に対向して配置させた自動車用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-214329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された自動車用シートは、シートクッションのシート上下方向への高さを調節することができる機構を備えている。そのため、車両の後突時にサイドフレームをシートベルトアンカブラケットの一部によって受けることができるように、サイドフレームとシートベルトアンカブラケットの一部とをシート上下方向に対向して配置させると、シートクッションのシート上下方向への高さの調節範囲が狭くなることが考えられる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両の衝突に伴う荷重が入力された際におけるブラケットの変形を抑制することができると共に、シートクッションの調節範囲が狭くなることを抑制することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートは、乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、作動することで前記シートクッションの位置を調節するシート調節部と、前記シートクッションの一部分と対向して配置される対向部と、前記対向部と一体に形成されていると共に車両の衝突に伴う荷重が入力される荷重入力部と、を有するブラケットと、前記荷重入力部に沿って配置されることで前記荷重入力部の前記対向部に対する変形を抑制し、前記シート調節部の作動に伴い前記シートクッションの一部分が前記対向部側へ変位する際に前記対向部側へ変位する変形抑制部材と、を備えている。
【0007】
第1の態様の車両用シートによれば、ブラケットの荷重入力部には、車両の衝突に伴う荷重が入力される。ここで、変形抑制部材は、ブラケットの荷重入力部に沿って配置されている。そのため、車両の衝突に伴う荷重が荷重入力部に入力された際に、荷重入力部が対向部に対して変形することが変形抑制部材によって抑制される。また、シート調節部が作動すると、シートクッションの位置が調節される。シート調節部の作動に伴いシートクッションの一部分がブラケットの対向部側へ変位する際においては、変形抑制部材が対向部側へ変位する。これにより、シートクッションの一部分がブラケットの対向部側へ変位することが変形抑制部材によって妨げられることが抑制される。このように、第1の態様の車両用シートによれば、車両の衝突に伴う荷重が荷重入力部に入力された際におけるブラケットの変形を抑制することができると共に、シートクッションの調節範囲が狭くなることを抑制することができる。
【0008】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様の車両用シートにおいて、前記シート調節部の作動に伴い前記シートクッションの一部分が前記対向部とは反対側へ変位する際に前記変形抑制部材を元の位置に戻す付勢部材をさらに備えている。
【0009】
第2の態様の車両用シートによれば、シート調節部の作動に伴いシートクッションの一部分が対向部とは反対側へ変位する際においては、付勢部材が変形抑制部材の位置を元の位置(変形抑制部材がブラケットの荷重入力部に沿って配置されている位置)に戻す。このように、第2の態様の車両用シートによれば、変形抑制部材の位置を元の位置に容易に戻すことができる。
【0010】
第3の態様の車両用シートは、第2の態様の車両用シートにおいて、前記変形抑制部材は、前記対向部にヒンジを介して傾動可能に支持されており、前記付勢部材が前記ヒンジと一体に設けられている。
【0011】
第3の態様の車両用シートによれば、付勢部材がヒンジと一体に設けられている。この構成では、付勢部材が係止される部分をブラケットに形成することを不要にすることができる。
【0012】
第4の態様の車両用シートは、第1の態様~第3の態様のいずれか1つの態様の車両用シートにおいて、前記変形抑制部材は、前記対向部にヒンジを介して傾動可能に支持されており、前記対向部の一部分は、前記対向部の他の部分に対して突出しているヒンジ接合部となっており、前記ヒンジが前記ヒンジ接合部に溶接で接合されている。
【0013】
第4の態様の車両用シートによれば、ブラケットの対向部の一部分が対向部の他の部分に対して突出しているヒンジ接合部となっている。これにより、ヒンジをヒンジ接合部に溶接で接合する際の作業性を良好にすることができる。
【0014】
第5の態様の車両用シートは、第1の態様又は第2の態様の車両用シートにおいて、前記変形抑制部材は、前記対向部に沿って配置された軸部を備えており、前記軸部が前記対向部に形成された切り起し部分に係止されることで、前記変形抑制部材が前記対向部に傾動可能に支持されている。
【0015】
第5の態様の車両用シートによれば、変形抑制部材の軸部がブラケットの対向部に形成された切り起し部分に係止されることで、変形抑制部材が対向部に傾動可能に支持されている。この構成では、変形抑制部材を対向部に傾動可能に支持させるための別部材のヒンジを設けることを不要にすることができる。
【0016】
第6の態様の車両用シートは、第1の態様~第5の態様のいずれか1つの態様の車両用シートにおいて、前記荷重入力部には、シートベルト装置の一部を構成するベルトアンカが固定されている。
【0017】
第6の態様の車両用シートによれば、車両の衝突に伴いベルトアンカから荷重入力部に入力された荷重に伴うブラケットの変形を変形抑制部材によって抑制することができる。
【0018】
第7の態様の車両用シートは、第1の態様~第6の態様のいずれか1つの態様の車両用シートにおいて、前記シート調節部は、前記シートクッションの骨格を構成するクッションフレームをシート上下方向に変位させるリフタ装置となっており、前記クッションフレームの一部分が前記対向部とシート上下方向に対向して配置されている。
【0019】
第7の態様の車両用シートによれば、リフタ装置が作動すると、シートクッションのシート上下方向への位置が調節される。リフタ装置の作動に伴いシートクッションフレームがブラケットの対向部側へ変位する際においては、変形抑制部材が対向部側へ変位する。これにより、シートクッションフレームがブラケットの対向部側へ変位することが変形抑制部材によって妨げられることが抑制される。このように、第7の態様の車両用シートによれば、シートクッションのシート上下方向への調節範囲が狭くなることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車両用シートは、車両の衝突に伴う荷重が入力された際におけるブラケットの変形を抑制することができると共に、シートクッションの調節範囲が狭くなることを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態の車両用シートを模式的に示す側面図である。
図2】右後側のブラケット及びその周辺を示す斜視図である。
図3】右後側のブラケット及びその周辺を示す斜視図であり、シートクッションが下降する前の状態を示している。
図4】右後側のブラケット及びその周辺を示す斜視図であり、シートクッションが下降している際の途中の状態を示している。
図5】右後側のブラケット及びその周辺を示す斜視図であり、シートクッションの下降が完了した状態を示している。
図6】ヒンジ及び当該ヒンジと一体に設けられた付勢部材を示す斜視図である。
図7】ヒンジ溶接部が設けられたブラケットを示す斜視図である。
図8】切り起し部が形成されたブラケット等を示す斜視図である。
図9】切り起し部が形成されたブラケット等を図8とは反対側から見た斜視図である。
図10】変形抑制部材をブラケットに取り付ける工程を説明するための側面図である。
図11】変形抑制部材をブラケットに取り付ける工程を説明するための側面図である。
図12】変形抑制部材をブラケットに取り付ける工程を説明するための側面図である。
図13】変形抑制部材をブラケットに取り付ける工程を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び図2を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、車両用シート10に着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。また、シート左右方向は、シート幅方向と一致している。
【0023】
図1に示されるように、車両用シート10は、乗員の臀部を下方側から支持するシートクッション12と、乗員の背部を後方側から支持するシートバック14と、を備えている。また、車両用シート10は、シートクッション12を上下方向に変位可能に支持するシート調節部としてのリフタ装置16を備えている。
【0024】
シートクッション12は、当該シートクッション12の骨格を構成するシートクッションフレーム18を備えている。このシートクッションフレーム18は、左右方向に間隔をあけて配置され前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム部18Aを備えている。
【0025】
リフタ装置16は、前後方向に間隔をあけて配置されていると共に左側のスライドレール20に固定された2つのブラケット22と、前後方向に間隔をあけて配置されていると共に右側のスライドレール20に固定された2つのブラケット22と、を備えている。また、リフタ装置16は、左側のスライドレール20に固定された2つのブラケット22と左側のサイドフレーム部18Aとを上下方向に連結する2つのリンク24と、右側のスライドレール20に固定された2つのブラケット22と右側のサイドフレーム部18Aとを上下方向に連結する2つのリンク24と、を備えている。さらに、リフタ装置16は、図示しないリフタ駆動部を備えている。そして、このリフタ駆動部が手動又は電動で作動することにより、4つのリンク24が上下方向に傾動する。これにより、シートクッションフレーム18のシートスライドレール20に対する上下方向への位置が調節されて、シートクッション12の上下方向への位置が調節されるようになっている。
【0026】
図2には、右側のスライドレール20の後方側に固定されたブラケット22等が示されている。この図に示されるように、ブラケット22は、一例として鋼鈑材にプレス加工等が施されることにより形成されている。このブラケット22を上下方向及び左右方向に沿って切断した断面形状は、上方側が開放されたU字状の断面形状となっている。詳述すると、ブラケット22は、スライドレール20のアッパレール20Aに固定される対向部としての底壁部22Aと、底壁部22Aの右側の端部から上方側へ向けて延びる荷重入力部としての右側壁部22Bと、底壁部22Aの左側の端部から上方側へ向けて延びる左側壁部22Cと、を備えている。
【0027】
底壁部22Aは、上下方向を厚み方向として前後方向及び左右方向に延在している。また、底壁部22Aを上方側から見た形状は、前後方向を長手方向とする矩形状に形成されている。底壁部22Aの前端部及び後端部は、締結部材26を介してアッパレール20Aに固定されている。また、底壁部22Aは、右側のサイドフレーム部18A(図1参照)と上下方向に対向して配置されている。
【0028】
右側壁部22Bは、左右方向を厚み方向として前後方向及び上下方向に延在している。また、右側壁部22Bを左右方向から見た形状は、前方側から後方側へ向かうにつれて上下方向への寸法が次第に大きくなっている四角形状となっている。この右側壁部22Bの後端部には、シートベルト装置の一部を構成するベルトアンカ28が固定されている。
【0029】
左側壁部22Cは、左右方向を厚み方向として前後方向及び上下方向に延在していると共に右側壁部22Bと平行に延在している。また、左側壁部22Cを左右方向から見た形状は、前後方向の中央部の上下方向への寸法が前端部及び後端部の上下方向への寸法よりも大きな寸法に設定された五角形状となっている。この左側壁部22Cの前後方向の中央部には、リンク24の下端部が左右方向を軸方向として回転可能に連結されている。
【0030】
また、ブラケット22は、右側壁部22Bの前端部から左側へ向けて延出する舌片状の付勢部材係止部22Dを備えている。この付勢部材係止部22Dには、付勢部材係止孔22Eが形成されている。
【0031】
底壁部22Aの前後方向の中央部には、変形抑制部材30が取付けられている。この変形抑制部材30は、ブラケット22と同様に鋼鈑材にプレス加工等が施されることにより形成されている。この変形抑制部材30は、ブラケット22の右側壁部22Bと左側壁部22Cとの間において左右方向に延在する矩形板状の基板部30Aを備えている。また、変形抑制部材30は、基板部30Aの左右方向の両端部から当該基板部30Aの厚み方向一方側へ向けて屈曲して延びる左右一対の屈曲端部30Bを備えている。基板部30Aの左右方向の中央部における一方側の端部(図2に示された状態における上方側の端部)には、付勢部材係止孔30Cが形成されている。また、基板部30Aの左右方向の中央部における他方側の端部(図2に示された状態における下方側の端部)は、ブラケット22の底壁部22Aにヒンジ32を介して取付けられている。また、ヒンジ32の回転軸は左右方向に沿う方向となっている。これにより、変形抑制部材30は、ヒンジ32を回転中心として上下方向に傾動可能となっている。
【0032】
ブラケット22と変形抑制部材30との間には、付勢部材34が掛け渡されている。この付勢部材34は、一例として引張コイルスプリングである。そして、この付勢部材34の一方側の端部はブラケット22の付勢部材係止孔22Eに係止され、付勢部材34の他方側の端部は変形抑制部材30の付勢部材係止孔30Cに係止されている。これにより、変形抑制部材30がブラケット22の底壁部22Aに対して上方側へ起き上がる方向側へ付勢されている。
【0033】
ここで、後述するように、右側のサイドフレーム部18Aが変形抑制部材30を押圧する前の状態では、変形抑制部材30がブラケット22の底壁部22Aに対して上方側へ起き上がっている状態になっている。なお、この状態における変形抑制部材30の位置を起立位置Pと呼ぶことにする。変形抑制部材30が起立位置Pに位置している状態では、変形抑制部材30の左右一対の屈曲端部30Bがブラケット22の底壁部22Aに接触した状態となっている。これにより、変形抑制部材30は起立位置Pから前方側へは傾動できなくなっている。
【0034】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0035】
図1に示されるように、車両用シート10に着座した乗員は、シートベルト装置の一部を構成するシートベルトを装着することができる。そして、車両用シート10を備えた車両が前面衝突すると、シートベルトが乗員によって引っ張られ、図2に示されるように、ブラケット22の右側壁部22Bがベルトアンカ28を介して上方側、斜め前方側及び左側に引っ張られることになる。すなわち、ブラケット22の右側壁部22Bには、前面衝突による乗員からの荷重が入力される。ここで、前面衝突による乗員からの荷重がブラケット22の右側壁部22Bに入力されると、右側壁部22Bが上方側、斜め前方側及び左側に移動するようにブラケット22が変形することが考えられる。しかしながら、本実施形態では、ブラケット22の右側壁部22Bと左側壁部22Cと底壁部22Aとの間には、起立位置Pに位置している変形抑制部材30が設けられている。これにより、変形抑制部材30がブラケット22の上記のような変形に抗することとなる。その結果、本実施形態では、車両の前面衝突に伴う荷重が入力された際におけるブラケット22の変形を抑制することができる。
【0036】
図3図6には、付勢部材34等の図示を省略した図2に対応する斜視図が示されている。図3に示されるように、シートクッション12の上下方向への位置が最も高い位置に位置している状態では、右側のサイドフレーム部18Aはブラケット22に対して上方側に位置している。
【0037】
図4に示されるように、リフタ装置16の作動に伴い、シートクッション12が下降すると、右側のサイドフレーム部18Aが、ブラケット22の底壁部22A側へ向けて下降すると共に右側壁部22Bと左側壁部22Cとの間に入り始める。そして、右側のサイドフレーム部18Aがブラケット22の底壁部22A側へ向けてさらに下降すると、図5に示されるように、右側のサイドフレーム部18Aが変形抑制部材30を押圧する。これにより、変形抑制部材30が起立位置P(図4参照)から後方側へ傾動して、右側のサイドフレーム部18Aの更なる下降が許容される。このように、本実施形態では、変形抑制部材30を設けることによってシートクッション12の調節範囲が狭くなることを抑制することができる。
【0038】
また、リフタ装置16の作動に伴い、シートクッション12が上昇すると、右側のサイドフレーム部18Aが上昇する。この時、図2に示されるように、変形抑制部材30の位置を付勢部材34の復元力により起立位置P側へ戻すことができる。このように、本実施形態では、変形抑制部材30の位置を元の位置に容易に戻すことができる。
【0039】
なお、本実施形態では、変形抑制部材30の位置を元の位置に戻すための付勢部材34をブラケット22と変形抑制部材30との間に掛け渡した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図6に示されるように、付勢部材34が一体に設けられたヒンジ32を用いた構成としてもよい。この構成では、付勢部材34が係止される部分(付勢部材係止部22D)をブラケット22に形成することを不要にすることができる。また、変形抑制部材30の位置を元の位置に戻すための他の機構を適用することにより、付勢部材34を用いない構成としてもよい。
【0040】
(他のブラケット22の構成)
図7には、底壁部22Aの前後方向の中央部が当該底壁部22Aの他の部分に対して上方側へ突出しているヒンジ接合部22Fとなっている構成のブラケット22が示されている。なお、図7に示されたブラケット22において前述のブラケット22(図2参照)と対応する部分には、前述のブラケット22(図2参照)と対応する部分と同じ符号を付している。このブラケット22では、ヒンジ32(図2参照)をヒンジ接合部22Fの上面にスポット溶接やアーク溶接等で接合する際の作業性を良好にすることができる。
【0041】
(ヒンジ32を用いない構成)
図8及び図9には、ヒンジ32(図2参照)を用いない構成のブラケット22及び変形抑制部材30等が示されている。なお、図8及び図9に示されたブラケット22及び変形抑制部材30において前述のブラケット22及び変形抑制部材30(図2参照)と対応する部分には、前述のブラケット22及び変形抑制部材30(図2参照)と対応する部分と同じ符号を付している。
【0042】
図8及び図9に示されるように、起立位置Pに位置している状態における変形抑制部材30の下端部には、左右一対の軸部30Dが形成されている。これらの軸部30Dは、左右方向を軸方向とする角柱状に形成されている。
【0043】
また、ブラケット22の底壁部22Aには、当該底壁部22Aの一部分が上方側へ切り起されることによって形成された切り起し部分としての左右一対の第1切り起し部22G及び第2切り起し部22Hが形成されている。左右一対の第1切り起し部22Gは、前方側へ向けて延びる舌片状に形成されており、左右方向に間隔をあけて配置されている。第1切り起し部22Gは、後方側へ向けて延びる舌片状に形成されており、上方側から見て左右一対の第1切り起し部22Gの間の中央部に配置されている。
【0044】
そして、変形抑制部材30をブラケット22に組付けるには、先ず、図10に示されるように、左右一対の第1切り起し部22Gを底壁部22Aに対して上方側へ変形させることにより、左右一対の第1切り起し部22Gの下方側に変形抑制部材30の左右一対の軸部30Dが係止されるスペースを形成する。
【0045】
次に、図11に示されるように、変形抑制部材30の左右一対の軸部30Dを左右一対の第1切り起し部22Gにそれぞれ係止させる。
【0046】
次に、図12及び図13に示されるように、第2切り起し部22Hを底壁部22Aに対して上方側へ変形させることにより、第2切り起し部22Hの後端部と変形抑制部材30の下端部における左右方向の中央部とを前後方向に対向させる。これにより、変形抑制部材30の左右一対の軸部30Dが左右一対の第1切り起し部22Gに係止された状態が保たれて、変形抑制部材30のブラケット22への組付けが完了する。
【0047】
以上説明した構成では、変形抑制部材30をブラケット22の底壁部22Aに傾動可能に支持させるための別部材のヒンジ32(図2参照)を設けることを不要にすることができる。
【0048】
なお、以上説明した例では、アンカブラケット22が固定されたブラケット22の変形を抑制するための構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明の構成は、アンカブラケット22とは異なる部材が固定されるブラケットの変形を抑制するためにも適用することができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 車両用シート
12 シートクッション
16 リフタ装置(シート調節部)
22 ブラケット
22A 底壁部(対向部)
22B 右側壁部(荷重入力部)
22F ヒンジ接合部
22G 第1切り起し部(切り起し部分)
22H 第2切り起し部(切り起し部分)
28 ベルトアンカ
30 変形抑制部材
30D 軸部
32 ヒンジ
34 付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13