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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025059571
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20250403BHJP
   E06B 7/18 20060101ALI20250403BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/18 D
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169731
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌也
【テーマコード(参考)】
2E036
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EB01
2E036FA06
2E036GA02
2E036HA02
2E036HB38
2E139AA10
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】位置合わせや取付作業が容易で、低コストの止水装置を実現することができる。
【解決手段】止水装置10は、少なくとも2つの第1磁性体25と、第1磁性体25の間を塞ぐように配置され、進水を防止するための止水板30と、を備える。止水板30の各第1磁性体25と対向する対向板面31Aには、第2磁性体45と、対向板面31Aに沿う方向に第2磁性体45と隣接するシール材40Aと、が設けられる。止水板30の第2磁性体45は、第1磁性体25と磁気的に吸着する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの第1磁性体と、
前記第1磁性体の間を塞ぐように配置され、進水を防止するための止水板と、を備え、
前記止水板の前記各第1磁性体と対向する対向板面には、第2磁性体と、前記対向板面に沿う方向に前記第2磁性体と隣接するシール材と、が設けられ、
前記止水板の前記第2磁性体は、前記第1磁性体と磁気的に吸着する止水装置。
【請求項2】
前記止水板の前記第2磁性体と前記第1磁性体とは、前記第1磁性体または前記第2磁性体の少なくとも一方から発生する磁力によって吸着可能に設けられている請求項1に記載の止水装置。
【請求項3】
前記第1磁性体は、前記止水板の前記対向板面と交わる方向に沿って延在する第1吸着面を有し、
前記第2磁性体は、前記止水板の前記対向板面と交わる方向に沿って延在し、前記第1吸着面と磁気的に吸着する第2吸着面を有する請求項2に記載の止水装置。
【請求項4】
前記止水板の前記対向板面には、前記第2吸着面が前記止水板の前記対向板面と交わる方向に沿って延在するように前記第2磁性体を配設するための取付部材が設けられる請求項3に記載の止水装置。
【請求項5】
前記第1磁性体は、前記止水板の前記対向板面と対向する端面を有する請求項2または請求項3に記載の止水装置。
【請求項6】
前記シール材は、発泡ゴム製であって、前記止水板の前記対向板面と前記第1磁性体の前記端面との間に介在する請求項5に記載の止水装置。
【請求項7】
前記第1磁性体、及び前記第2磁性体は、上下方向に沿って延在し、
前記シール材は、前記第1磁性体の下方に隣接し、
前記第2磁性体は、前記第1磁性体と接触する第1接触部と、前記シール材と接触する第2接触部と、を有し、
前記第2磁性体の前記第1接触部は、磁力によって前記第1磁性体と吸着される請求項1に記載の止水装置。
【請求項8】
前記シール材は、前記対向板面において前記第1磁性体の下方及び側方に隣接するよう設けられる請求項7に記載の止水装置。
【請求項9】
前記シール材は、発泡ゴム製である請求項7または請求項8に記載の止水装置。
【請求項10】
前記止水板は、複数積み重ねられるための嵌合部を有する請求項1から請求項4、請求項7、及び請求項8のいずれか1項に記載の止水装置。
【請求項11】
前記止水板は、外部と連通し水の流路となる中空部を有する請求項1から請求項4、請求項7、及び請求項8のいずれか1項に記載の止水装置。
【請求項12】
前記止水板は、アルミニウム合金製の押出形材からなる請求項1から請求項4、請求項7、及び請求項8のいずれか1項に記載の止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洪水等の自然災害の発生時に、水の侵入を防ぐために建物の出入口等に設置する止水装置が知られている。近年、使用者によって取り付け可能な着脱式の止水装置が提案されており、その一例が特許文献1及び特許文献2に開示されている。特許文献1には、出入口に立設された一対の方立て(支柱)の間に、出入口を遮断する止水パネル(止水板)を上方から落とし込むことによって取り付ける止水装置が記載されている。特許文献2には、出入口に立設された一対の支持柱(支柱)に対して、進水方向上流側から止水板を押し当て、止水板と支柱とを係合部によって固定することで取り付ける止水装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6348866号公報
【特許文献2】特開2018-48535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような落とし込み式の止水装置の場合、使用者が重い止水板を持ち上げて支柱間に落とし込む必要があるため、取り付け作業が容易ではなく、危険を伴うことがある。また、止水板の浮き上がりを防止するロック機構が必要となり、コストが増大してしまう。一方、特許文献2のような係合式の止水装置の場合、取り付け作業は容易であるが、係合部に専用部材を用いざるを得ない。また確実に係合させるために、製品の製造と施工の両方において高い寸法精度が必要となり、高コストになる。更に、従来の止水板は一度設置すると、再度動かすことが困難で、設置後に止水板の位置を微調整したい場合などの位置合わせも困難である。
【0005】
本技術は上記のような実情に基づいて完成されたものであって、位置合わせ及び取付作業が容易で、低コストの止水装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本技術に関わる止水装置は、少なくとも2つの第1磁性体と、前記第1磁性体の間を塞ぐように配置され、進水を防止するための止水板と、を備え、前記止水板の前記各第1磁性体と対向する対向板面には、第2磁性体と、前記対向板面に沿う方向に前記第2磁性体と隣接するシール材と、が設けられ、前記止水板の前記第2磁性体は、第1磁性体と磁気的に吸着する。
【0007】
また、前記止水板の前記第2磁性体と前記第1磁性体とは、前記第1磁性体又は前記第2磁性体の少なくとも一方から発生する磁力によって吸着されていてもよい。
【0008】
また、前記第1磁性体は、前記止水板の前記対向板面と交わる方向に沿って延在する第1吸着面を有し、前記第2磁性体は、前記止水板の前記対向板面と交わる方向に沿って延在し、前記第1吸着面と磁気的に吸着する第2吸着面を有してもよい。
【0009】
また、前記止水板の前記対向板面には、前記第2吸着面が前記止水板の前記対向板面と交わる方向に沿って延在するように前記第2磁性体を配設するための取付部材が設けられてもよい。
【0010】
また、前記第1磁性体は、前記止水板の前記対向板面と対向する端面を有してもよい。
【0011】
また、前記シール材は、発泡ゴム製であって、前記止水板の前記対向板面と前記第1磁性体の前記端面との間に介在してもよい。
【0012】
また、前記第1磁性体、及び前記第2磁性体は、上下方向に沿って延在し、前記シール材は、前記第1磁性体の下方に隣接し、前記第2磁性体は、前記第1磁性体と接触する第1接触部と、前記シール材と接触する第2接触部と、を有し、前記第2磁性体の前記第1接触部は、磁力によって前記第1磁性体と吸着されてもよい。
【0013】
また、前記シール材は、前記対向板面において前記第1磁性体の下方及び側方に隣接するよう設けられてもよい。
【0014】
また、前記シール材は、発泡ゴム製であってもよい。
【0015】
また、前記止水板は、複数積み重ねられるための嵌合部を有してもよい。
【0016】
また、前記止水板は、外部と連通し水の流路となる中空部を有してもよい。
【0017】
また、前記止水板は、アルミニウム合金製の押出形材からなっていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本技術によれば、位置合わせ及び取付作業が容易で、低コストの止水装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1に係る止水装置の分解斜視図
図2】止水板の対向板面の平面図
図3】取り付け前の止水装置の上面図
図4】取り付け後の止水装置の上面図
図5】止水板の嵌合部付近を拡大した側面図
図6】比較例1に係る取り付け前の止水装置の上面図
図7】比較例2に係る取り付け前の止水装置の上面図
図8】実施形態2に係る止水装置の分解斜視図
図9】止水板の対向板面の平面図
図10】第2磁性体の平面図
図11】他の実施形態に係る止水装置の分解斜視図
図12】止水板の対向板面の平面図
図13】他の実施形態に係る止水板の対向板面の平面図
図14】他の実施形態に係る止水板の対向板面の平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
実施形態1を図1から図5を参照して説明する。本実施形態では、止水装置10について例示する。なお、各図面の一部には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、各軸方向が各図で共通した方向となるように描かれている。
【0021】
止水装置10は、図1に示すように、地面等の載置面に対して立設状態に取り付けられる2つの第1磁性体25と、これら第1磁性体25の間を塞ぐように配置され、進水を防止するための止水板30と、を備える。止水装置10は、例えば建物の開口の両端にそれぞれ設置された2本の支柱20に第1磁性体25を取り付け、この第1磁性体25に対して止水板30を取り付けることで、屋内へ水が浸入することを防ぐことができる。止水装置10は、屋内に限らず、駐車場や敷地内等への進水防止にも用いることができる。
【0022】
本実施形態において、第1磁性体25が取り付けられるものは特に制限されるものではなく、止水板30の設置したい箇所に合わせて取り付けることができる。以下では、図1及び図2に示すように、Z軸方向(載置面に交わる上下方向)に延出する柱状部材である支柱20に取り付けられる場合を例示する。
【0023】
ここで、第1磁性体25を取り付ける支柱20は、止水板30(詳しくは後述する対向板面31A)と対向する主面21と、主面21と交わる方向に延在する側面22と、を少なくとも備える。本実施形態に係る支柱20は、断面矩形状をなし、主面21及び側面22は、断面矩形状を構成する4つの平坦な表面(外面)のうち2つの外面である。支柱20の形状は、主面21及び側面22を含む形状であれば断面矩形状に限定されず、例えば断面台形状であっても構わない。
【0024】
本実施形態において、第1磁性体25は、後述する止水板30に配設される第2磁性体45と磁気的に吸着する箇所に取り付けることができ、例えば支柱20の側面22に取り付けられる。第1磁性体25は、上下方向(側面22の延出方向)に沿う方向が長手方向となる縦長の平板状をなす。第1磁性体25の支柱20の側面22側の面は、図3及び図4に示すように、側面22に取り付けられる取付面25Bである。本実施形態では、取付面25Bは、接着によって取り付けられているが、取付方法は限定されない。また、第1磁性体25の取付面25Bと反対側の面は、第2磁性体45の後述する第2吸着面45Cと磁気的に吸着する第1吸着面25Cとなる。
【0025】
第1磁性体25のうち止水板30(より詳しくは対向板面31A)と対向する端面25Aは、図3及び図4に示すように、支柱20の主面21と略面一となるように配置されることが好ましい。第1磁性体25と第2磁性体45とが磁気的に吸着することにより、当該端面25A及び主面21は、止水板30に設けられる後述する第1シール材40Aに押し当てられる。よって、当該端面25A及び主面21を略面一に配置することで、第1シール材40Aとの隙間が生じ難くなる。これにより止水性を向上できる。
【0026】
第2磁性体45及び第1磁性体25の材質は、互いに磁気的に吸着可能であれば限定されず、少なくとも一方の磁性体から発生する磁力によって吸着可能に設けられていればよい。例えば一方を強磁性体、他方を常磁性体としたり、両方を強磁性体としたりすることができる。本実施形態に係る第2磁性体45は、強磁性体であるネオジウム系磁石であり、第1磁性体25は常磁性体である。
【0027】
止水板30は、全体として矩形状をなす板状部材であり、本実施形態では横長の矩形状をなしているが、縦長の矩形状や正方形状であっても構わない。止水板30は、対向板面31Aを含む壁部31が支柱20間を覆うように、支柱20に対して進水方向上流側に配置される。
【0028】
止水板30には、図1及び図2に示すように、複数の中空部35が上下方向に積み重なるように形成されている。対向板面31Aを含む壁部31は、中空部35を構成する壁部の一部をなしている。中空部35は、左右方向に延在しており、左右方向についての両端部はそれぞれ外部と連通している。これにより中空部35は水が流入可能な流路となっている。中空部35に水が流入することで、止水板30の浮き上がりを防止することができる。中空部35の形状は、止水板30の曲げ剛性を高める点で、図5に示すように側面視矩形状が好適であるが、これに限定されず、中空部35の数も適宜調整可能である。
【0029】
止水板30は、下止水パネル30L、中止水パネル30M、及び上止水パネル30Uの各構成体が上下方向に積み重ねられる形で組み立てられている。下止水パネル30L、中止水パネル30M、上止水パネル30Uはそれぞれ、互いに嵌合されるように嵌合部36を備えている。嵌合部36は、図5に示すように、一方の構成体(例えば下止水パネル30L)に形成された嵌合突起37に対して、他方の構成体(例えば中止水パネル30M)に形成された嵌合爪38が引っ掛かることで嵌合する。各パネル30L、30M、30Uの連結部分(例えば図5の枠線部I参照)にシリコン樹脂等を原料とするシール材を塗布すると、連結したパネル30L、30M、30Uの隙間からの漏水を抑制しやすくなる。
【0030】
図1図5に示すように、下止水パネル30Lは3つの中空部35と、上端部に形成された嵌合突起37と、を備えており、載置面に設置される。中止水パネル30Mは、3つの中空部35と、上端部に形成された嵌合突起37と、下端部に形成された嵌合爪38と、を備える。中止水パネル30Mは、その嵌合爪38が下止水パネル30Lの嵌合突起37に嵌合することで、下止水パネル30L上に積み重ねられている。上止水パネル30Uは、2つの中空部35と、上端部に形成された持ち手39と、下端部に形成された嵌合爪38と、を備える。上止水パネル30Uは、その嵌合爪38が中止水パネル30Mの嵌合突起37に嵌合することで、中止水パネル30M上に積み重ねられている。止水板30は、中止水パネル30Mの数を増減することで、載置面からの高さを調整可能である。
【0031】
下止水パネル30L、中止水パネル30M、及び上止水パネル30Uは公知の材料を使用でき特に制限されるものではなく、アルミニウム、ステンレス、鉄などの公知の金属、木材、プラスチックなどの樹脂を適宜用いることができるが、本実施形態においては、それぞれアルミニウム合金の押出形材から構成されている。押出形材として中空部35、嵌合部36等の各部が一体的に製造されることで、各部を所定の形状に容易に形成することができる。また、強度及び剛性を高めることができ、大きなたわみや亀裂等が生じて漏水の原因となる事態を抑制できる。下止水パネル30L、中止水パネル30M、及び上止水パネル30Uの材質は、アルミニウム合金が好適である。アルミニウム合金製とすることで、木材のように浸水によって形状が反りかえって変形することがなく、繰り返して使用可能となり、軽量、高強度、高剛性の止水板を実現できる。また、廃棄後はリサイクルすることができる。
【0032】
ただし、止水板30は、各構成体(下止水パネル30L、中止水パネル30M、上止水パネル30U)が上下方向に積み重ねられる形で構成されていなくても構わない。止水板30は例えば、対向する2つの外板と、外板間に挟み込まれる芯材とが溶接加工等によって一体化されて形成されていても構わない。
【0033】
止水板30には、図1及び図2に示すように、止水性を向上するためのシール材40と、第2磁性体45と、第2磁性体45を取り付けるための取付部材47と、が設けられる。第2磁性体45及び取付部材47は、止水板30の壁部31の対向板面31Aに設けられる。シール材40は、止水板30の対向板面31A及び底面31Bに設けられる。対向板面31Aに設けられるシール材40を第1シール材40Aとし、底面31Bに設けられるシール材40を第2シール材40Bとする。第1シール材40A、第2磁性体45、及び取付部材47は、対向板面31Aの左側部及び右側部に1つずつ、計2つ設けられる。より詳しくは、第1シール材40A、第2磁性体45、及び取付部材47の組は、対向板面31Aの左右方向(X軸方向)についての中央部31A1と左側端部31A2との間に1つ、中央部31A1と右側端部31A3との間に1つが、支柱20の位置に対応するように設けられる。
【0034】
各取付部材47は、図3に示すように、例えば断面L字状のアングル材とされる。取付部材47の断面L字状を構成する一方の第1平板部47Aが、止水板30の対向板面31Aに取り付けられると、他方の第2平板部47Bは、対向板面31AからY軸方向(対向板面31Aに交わる方向)に沿って突出する。取付部材47の対向板面31Aへの取り付け方法は限定されず、例えば両面テープや溶接によって接着したり、締結部材(ボルトナット、リベット等)によって着脱可能に取り付けたりしてもよい。取付部材47の材質は、止水板30と同一でも、異なっていても構わないが、例えば止水板30と同じアルミニウム合金とされる。
【0035】
第2磁性体45は、図3に示すように、取付部材47の第2平板部47Bに設けられる。第2磁性体45は、図2に示すように、上下方向(第2平板部47Bの延出方向)に沿って縦長となる平板状をなす。第2磁性体45の第2平板部47B側の面は、第2平板部47Bに取り付けられる取付面45Bとなる。また、第2磁性体45の取付面45Bと反対側の面は、第1磁性体25の第1吸着面25Cと磁気的に吸着する第2吸着面45Cとなる。第2磁性体45の第2吸着面45Cと第1磁性体25の第1吸着面25Cは、X軸方向(対向板面31Aに沿う方向)に沿って発生する磁力(磁界)によって吸着される(図4参照)。
【0036】
止水板30は、第2磁性体45が支柱20に設けられた第1磁性体25に磁気的に吸着することで、支柱20に取り付けられる。より詳しくは、図4に示すように第2磁性体45の第2吸着面45Cは、止水板30の対向板面31A側の部分45C1が第1シール材40Aと隣接し、支柱20側の部分(第1シール材40Aと隣接しない部分)45C2が第1吸着面25Cと吸着する。第2磁性体45は、取り付けられた状態において、取付部材47と第1磁性体25との間に挟まれるように配置されるものとなる。
【0037】
各第1シール材40Aは、図1から図4に示すように、縦長の平板状をなし、支柱20の主面21、及び第1磁性体25の対向板面31A側の端面25Aに押し当てられるように、これらの対向位置に設けられる。第1シール材40Aは、第2磁性体45とX軸方向(対向板面31Aに沿う方向)に隣接し、第2磁性体45に対して取付部材47と反対側に設けられる。第2シール材40Bは、止水板30の底面31B全体を覆うように横長の平板状をなしている。シール材40の材質は、圧縮によって高い止水性を発揮する材料(例えば発泡ゴム)が好ましい。止水板30を支柱20に対して取り付ける際の押力、及び進水時の水の圧力によって、対向板面31Aが支柱20の主面21及び第1磁性体25の端面25Aに対して押し当てられると、シール材40が圧縮され、止水性を高めることができる。
【0038】
以上説明した止水装置10によれば、使用者は、支柱20に対して止水板30を押し当て、止水板30に設けられた第2磁性体45と、支柱20に設けられた第1磁性体25とを磁気的に吸着することで、止水装置10を容易に設置できる。また、第1シール材40Aによって止水性を向上できる。第1シール材40Aを対向板面31Aに沿う方向(X軸方向)に第2磁性体45と隣接するように設けることで、第2磁性体45と第1磁性体25とを第1シール材40Aを介さずに吸着させ、止水性と磁力による固定性とを両立できる。仮に、図7に示す比較例2に係る止水装置910のように、第1シール材940AをY軸方向(対向板面31Aに交わる方向)に第2磁性体845と隣接するように設けると、第2磁性体845と第1磁性体825との間に発生する磁力が低下し、固定性が劣ってしまう。なお、比較例2に係る止水装置910は、図7に示す構成を上下方向全体に亘って有するものとする。
【0039】
止水装置10によれば、特許文献1に記載の落とし込み方式の止水装置のように、止水板を持ち上げて支柱間に落とし込む作業は不要であり、取り付け作業が容易である。また、特許文献2に記載の係合式の止水装置のように、確実に係合させるために高い寸法精度が必要とされない。第1磁性体25と第2磁性体45とを磁気的に吸着させることで、第1シール材40Aによる密着性を向上させるので、第1磁性体25と第2磁性体45の磁気的結合を解除するだけで、止水板30を取り外すことができる。止水板30の精密な位置合わせが容易であり、製造コストや施工コストを低減できる。したがって、一度設置しても、再度、止水板30を動かして、止水板30の位置を微調整することができる。これにより、止水性と固定性を確保しつつ、位置合わせ及び取付作業が容易で、低コストの止水装置10を実現できる。
【0040】
また本実施形態では、止水板30の第2磁性体45と支柱20の第1磁性体25は、X軸方向(対向板面31Aに沿う方向)に沿って発生する磁力(磁界)によって吸着される。より詳しくは、第2磁性体45は、Y軸方向(対向板面31Aに交わる方向)に沿って延在する第2吸着面45Cを有し、第1磁性体25は、Y軸方向(対向板面31Aに交わる方向)に沿って延在し、第2吸着面45Cと磁気的に吸着する第1吸着面25Cを有する。これにより、第2吸着面45Cと第1吸着面25Cとの間に、X軸方向(対向板面31Aに沿う方向)に沿って発生する磁力(磁界)が生じることとなる。その結果、図6に示す比較例1に係る止水装置810のように、第2磁性体845と第1磁性体825がY軸方向(止水板30の対向板面31Aに交わる方向)に沿って発生する磁力(磁界)によって吸着される場合に比べて、止水板30を支柱20から取り外しやすくなり、止水板30の着脱容易性を向上できる。なお、比較例1に係る止水装置810は、図6に示す構成を上下方向全体に亘って有するものとする。
【0041】
また、取付部材47を設けることで、第2吸着面45CがY軸方向(対向板面31Aと交わる方向)に沿って延在するように第2磁性体45を容易に配設できる。取付部材47の位置を変更することで、支柱20の間の距離が異なる設置場所に応じて、第2磁生体45の位置を容易に変更できる。
【0042】
また、支柱20の側面22に第1磁性体25を設けることで、第1吸着面25CがY軸方向(対向板面31Aと交わる方向)に沿って延在するように第1磁性体25を配設できる。
【0043】
<実施形態2>
実施形態2に係る止水装置110について図8から図10を参照して説明する。止水装置110は、実施形態1と異なり、止水板30に設けられる第2磁性体145と支柱20に設けられる第1磁性体125とが、Y軸方向(対向板面31Aと交わる方向)に沿って発生する磁力(磁界)によって吸着される。実施形態2において、実施形態1と同様の構成、作用及び効果については同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0044】
第2磁性体145は、実施形態1と異なり、取付部材47を介さずに止水板30の対向板面31Aに直接的に設けられる。第2磁性体145の支柱20側の主面が、第1磁性体125との第2吸着面145Cとなる。第2磁性体145は、対向板面31Aの左側端部31A2、及び右側端部31A3に1つずつ設けられている。ただし、第2磁性体145は、後述するように、設置場所に応じて左側端部31A2、及び右側端部31A3から所定の距離だけ離れた位置に取り付けられても構わない(図13及び図14参照)。各第2磁性体145の下端部145Dは、底面31B(対向板面31Aの下端部)と所定の間隔L1を空けて設けられている。
【0045】
各第1シール材140Aは、図9に示すように、止水板30の対向板面31Aにおいて第2磁性体145の下方、及び側方に隣接するよう設けられる。より詳しくは、第1シール材140Aのうち第2磁性体145との下方隣接部140A1は、第2磁性体145の下端部145Dと、対向板面31Aの底面31B(対向板面31Aの下端部)との間(間隔L1の領域)に設けられる。また第1シール材140Aのうち、第2磁性体145との側方隣接部140A2は、第2磁性体145に対して対向板面31Aの中央部31A1側に設けられる。
【0046】
第1磁性体125は、図8に示すように、支柱20の主面21に設けられる。第1磁性体125は、止水板30に設けられる第2磁性体145、並びに第1シール材140Aの下方隣接部140A1及び側方隣接部140A2に対向して接触する。第1磁性体125の対向板面31A側の面125Dは、図10に示すように、第2磁性体145と対向して接触する第1接触部125D1と、第1シール材140Aの下方隣接部140A1と対向して接触する第2接触部125D2と、第1シール材140Aの側方隣接部140A2と対向して接触する第3接触部125D3と、を有する。第1接触部125D1は、Y軸方向(対向板面に交わる方向)に沿って発生する磁力(磁界)によって第2磁性体145と吸着される第1磁性体125の第1吸着面の別の一例である。
【0047】
このようにすれば、第1磁性体125の第1接触部125D1は、第2磁性体145の第2吸着面145Cと磁気的に吸着する一方、第2接触部125D2は第2磁性体145と吸着しないものとなる。これにより、図6に示す比較例1に係る止水装置810に比べて、止水板30の下部を支柱20の下部に対して位置合わせする際に位置を微調整しやすくなると共に、取り外しも容易になる。
【0048】
また、第1シール材140Aの下方隣接部140A1を設けることで、漏水が発生しやすい止水板30の下部の止水性を高めることができる。また、第1シール材140Aの側方隣接部140A2を設けることで、止水性をより高めることができる。ただし、第1シール材140Aの側方隣接部140A2は、図11及び図12に示すように、設けられていなくても構わない。
【0049】
<他の実施形態>
本技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本技術の技術的範囲に含まれる。
【0050】
(1)実施形態2に係る第1シール材240Aの下方隣接部240A1は、図13に示すように、止水板30の底面31B(対向板面31Aの下端部)に沿って長尺状に設けられていても構わない。さらには、第1シール材340Aの下方隣接部340A1は、図14に示すように、止水板30の左側端部31A2から右側端部31A3まで横断的に設けられていても構わない。このようにすれば、第2磁性体145の第2吸着面145CのX軸方向の位置を設置場所に合わせて調整しやすくなる。例えば、第1シール材240A、340Aの下方隣接部240A1、340A1は、止水板30の出荷時に取り付けられる一方、第2磁性体145は設置時に取り付けられるようにすれば、設置場所に合わせて調整しやすくなる。
【0051】
(2)止水板30の形状は、例えばベンチのように自立可能な形状をなしていても構わない。
【0052】
(3)止水板30は、支柱20の形状及び立設方法によっては、進水方向下流側に配置されても構わない。その場合、水圧によって止水板と支柱が離されるように力が働くこととなるため、第2磁性体45、145、及び第1磁性体25、125には、水圧に耐えられる程度の磁力が印加される強磁性体を用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
10、110…止水装置、25,125…第1磁性体、25A…端面、25C…第1吸着面、30…止水板、31A…対向板面、30L…下止水パネル(押出形材の一例)、30M…中止水パネル(押出形材の一例)、30U…上止水パネル(押出形材の一例)、35…中空部、36…嵌合部、40A、140A、240A、340A…第1シール材(シール材)、45、145…第2磁性体、45C、145C…第2吸着面、47…取付部材、125D1…第1接触部(第1吸着面の別の一例)、125D2…第2接触部
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
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図10
図11
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図13
図14