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  • 特開-複合構造体及び落石の予防方法 図1
  • 特開-複合構造体及び落石の予防方法 図2
  • 特開-複合構造体及び落石の予防方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005959
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】複合構造体及び落石の予防方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/02 20060101AFI20250109BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E02D29/02 309
E02D17/20 106
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106435
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大輔
【テーマコード(参考)】
2D044
2D048
【Fターム(参考)】
2D044DC11
2D044EA05
2D048AA91
2D048CA11
(57)【要約】
【課題】落石を予防する。
【解決手段】複合構造体10は、複数の岩石12と、複数の岩石12を内包する発泡体14とを備えている。このように、複数の岩石12を内包するように発泡体14を形成した複合構造体10を作ることで、複数の岩石12の位置関係を発泡体14によって維持することができることから、岩石12の位置関係が崩れて岩石12が転がることを予防できる。また、複合構造体10は、発泡体14と地面との間に、水を通すための通水路16を有していてもよい。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の岩石と、
前記複数の岩石を内包する発泡体と、を備える
ことを特徴とする複合構造体。
【請求項2】
前記発泡体と地面との間に通水路を有する請求項1に記載の複合構造体。
【請求項3】
複数の岩石を内包するように発泡体を形成することで、前記複数の岩石の位置関係を維持する
ことを特徴とする落石の予防方法。
【請求項4】
前記発泡体と地面との間に通水路を設ける請求項3に記載の落石の予防方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複合構造体及び落石の予防方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、斜面上の浮石の落石、滑動を防止する落石防止工法が開示されている。この方法は、対象浮石の下方側に、浮石の全部または一部を被覆するにいたるまで擁壁を構築して浮石を支持する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-251073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような方法では、擁壁を構築するために大量のコンクリートと、コンクリートを打設するための枠や重機等の大掛かりな設備が用いられる。このため、より簡便に、落石を防止する技術が求められている。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、落石を防止できる複合構造体及び落石の予防方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る複合構造体の第1態様は、
複数の岩石と、
前記複数の岩石を内包する発泡体と、を備えることを要旨とする。
【0007】
本発明に係る複合構造体の第2態様は、前記複合構造体の第1態様において、
前記発泡体と地面との間に通水路を有していてもよい。
【0008】
本発明に係る落石の予防方法の第1態様は、
複数の岩石を内包するように発泡体を形成することで、前記複数の岩石の位置関係を維持することを要旨とする。
【0009】
本発明に係る落石の予防方法の第2態様は、前記落石の予防方法の第1態様において、
前記発泡体と地面との間に通水路を設けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る複合構造体によれば、発泡体によって複数の岩石の位置関係を保つことで、落石を防止できる。
本発明に係る落石の予防方法によれば、発泡体によって複数の岩石の位置関係を保つことで、落石を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る複合構造体を示す縦断面図である。
図2】実施例の複合構造体を示す平面図である。
図3】実施例の複合構造体の製造過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る複合構造体及び落石の予防方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【実施例0013】
図1に示すように、実施例に係る複合構造体10は、複数の岩石12と、複数の岩石12を内包する発泡体14とを備えている。本開示でいう岩石12は、岩や石を含み、比較的堅い塊状物を指している。岩石12は、自然のものであってもよく、人工のものであってもよい。また、岩石12の大きさは、特に限定されない。更に、岩石12は、地面20の上に全体が露出しているものだけでなく、地中に一部埋まっているものであってもよい。すなわち、複数の岩石12が、地面20の上に全体が露出しているものだけの集合であってもよく、地中に一部埋まっているものだけの集合であってもよく、地面20の上に全体が露出しているものと地中に一部埋まっているものとの集合であってもよい。
【0014】
複数の岩石12は、岩石12同士が重なり合うなど、互いに接するように配置されている位置関係(図1又は図2参照)であってもよく、岩石12同士が互いに離れている位置関係であってもよい。ここで、複数の岩石12は、自然に形成された位置関係のものであってもよく、人為的に岩石12を移動することで位置関係を形成したものであってもよい。また、複数の岩石12は、崖などの傾斜地や法面などに配置されたものに限らず、河原などの比較的平らな場所に配置されていてもよい。
【0015】
発泡体14は、図1に示すように、複数の岩石12の一部を内包すると共に複数の岩石12の残部が発泡体14の外側に露出するように配置してもよく、複数の岩石12の全体を内包するように配置してもよい。また、発泡体14は、複数の岩石12の外側を囲むように配置するだけでなく、複数の岩石12の内側に配置されていてもよい。発泡体14は、複数の岩石12における隣り合う岩石12の間に渡って配置されていればよく、例えば、隣り合う岩石12が接触している場合、接触点を囲むように発泡体14を配置することが好ましい。このように、複合構造体10は、複数の岩石12を内包する発泡体14によって、複数の岩石12の位置関係を維持している。
【0016】
発泡体14としては、ポリウレタンフォームが好ましい。発泡体14としては、特に限定されるものではないが、例えば、強度が120kN/m、密度が36kg/mのポリウレタンフォームを用いるのが好ましい。この中でも現場発泡ポリウレタンフォームは、軽量性、施工性、岩石12などへの接着性等の観点から好適である。
【0017】
図1に示すように、複合構造体10は、発泡体14と地面20との間に設けた通水路16を有している。実施例の通水路16は、パイプを岩石12の間に通して形成している。通水路16としては、パイプを配置することに限らず、樋や通水性を有する部材を配置してもよく、発泡体14を地面20から離して設けることで形成される隙間であってもよい。複合構造体10とする前の発泡体14と地面20との間に隙間がある場合、その隙間を雨水等の水が流れていくようになっている。そのため、発泡体14と地面20との間に通水路16を設けることで、従前と同様に水の通り道を確保している。通水路16は、複合構造体10とする前の複数の岩石12の間を流れていた既存の水の通り道に沿って設けるとよい。また、例えば傾斜地である場合、通水路16を複合構造体10の上手側から下手側に渡って通じるように設けるとよい(図2参照)。このように、複合構造体10に通水路16を設けることで、既存の水の通り道への悪影響を小さくすることができる。逆に、通水路16を設けないような場合だと、従前の水の通り道が無くなり水がせき止められてしまうため、土砂崩れ等を引き起こす恐れがある。
【0018】
複合構造体10は、例えば以下のようにして得ることができる。複数の岩石12がある位置関係で集合している(図3(a)参照)。まず、複数の岩石12の間を通して通水路16となるパイプを配置する(図3(b)参照)。このとき、複数の岩石12を通る水の通り道を予め確認しておき、水の通り道を変化させないようにパイプを配置するとよい。次に、複数の岩石12の周りに、合板などのパネル22を、発泡体14用の型枠として配置する(図3(c)参照)。このとき、発泡体原料が液状である期間に、発泡体原料が複数の岩石12の周りから流れることをパネル22により防止できればよく、例えば、複数の岩石12の斜面下側と横側とにパネル22を配置して、複数の岩石12の斜面上側に配置するパネル22を省略してもよい。例えば、発泡体14としてポリウレタンフォームを用いるのであれば、現場でA液(ポリオール)とB液(イソシアネート)とを混合した混合液をパネル22内の複数の岩石12に吹き付けて発泡させることで、ポリウレタンフォームを形成する。この吹き付け作業を、下から順に繰り返して行うことで、複数の岩石12を内包する発泡体14を形成する(図3(d)参照)。液状の発泡体原料は、複数の岩石12の間にも流下して、岩石12の間の隙間で発泡して、複数の岩石12の周囲だけでなく、複数の岩石12の間にも発泡体14が形成される。そして、パネル22を取り外すことで、複合構造体10が得られる(図3(e)参照)。
【0019】
実施例の複合構造体10は、複数の岩石12が発泡体14に内包されている。複合構造体10は、発泡体14によって複数の岩石12の位置関係が保たれることから、落石の最初のきっかけとなる岩石12のズレや岩石12の動きを抑えることができる。そして、複数の岩石12の位置関係が維持されていれば、複数の岩石12の支え合いや噛み合いなどによって相互のバランスが保たれ、岩石12が転がり始めることを回避できる。このように、複数の岩石12を内包するように発泡体14を形成する簡単な方法によって、複数の岩石12の位置関係を維持することができ、これにより落石を予防することができる。
【0020】
一般的に行われている根固め工法は、岩石12を下方から支えて、岩石12の転動を抑制するため、岩石12を支える擁壁の位置、大きさ、及び範囲の設計に専門的な知識が必要となる。一方、本開示の落石の予防方法は、複数の岩石12を発泡体14に内包することにより、複数の岩石12の位置関係を維持するだけの簡単な作業で施工できる。また、岩石12の形状や地面20の形状が複雑でも、発泡体14を岩石12や地面20の形状に追従させることができ、傾斜地などの制限がある環境であっても施工性に優れている。そして、発泡体14の硬化速度や原料粘度、セルの状態等を変更することで、岩石12の凹部や岩石12の隙間まで発泡体14を行き渡らせることができる。このため、擁壁のような複雑な設計をしなくても、発泡体原料の成形条件を変更することにより、簡単に落石の予防ができる。
【0021】
落石の予防方法は、ロープ伏工法、ワイヤロープ掛け工法、グラウンドアンカー工法等と併用されてもよい。さらに、落石の予防方法は、庭石や石灯篭などの落下防止のために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0022】
10 複合構造体,12 岩石,14 発泡体,16 通水路,20 地面
図1
図2
図3