(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005968
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車載電池の冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6569 20140101AFI20250109BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20250109BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20250109BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20250109BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M10/6569
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/633
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106447
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楢原 和晃
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】液体状態の冷媒が第1コンプレッサに流入するのを抑制する。
【解決手段】冷媒と電池セル71とを熱交換させる熱交換器2と、熱交換器2から流出した冷媒を加圧する第1コンプレッサ3と、第1コンプレッサ3で加圧された冷媒を冷却して凝縮させるコンデンサ4と、冷媒が通る冷媒経路10におけるコンデンサ4と熱交換器2との間に設けられ、冷媒を脈動させる冷媒脈動装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の冷媒を気体へと相変化させる際の吸熱反応により電池を冷却する、車載電池の冷却装置であって、
前記冷媒と前記電池とを熱交換させる熱交換器と、
前記熱交換器から流出した前記冷媒を加圧する加圧器と、
前記加圧器で加圧された前記冷媒を冷却して凝縮させる凝縮器と、
前記冷媒が通る冷媒経路における前記凝縮器と前記熱交換器との間に設けられ、前記冷媒を脈動させる冷媒脈動装置と、を備えることを特徴とする車載電池の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載電池の冷却装置において、
前記冷媒脈動装置を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記加圧器に流入する前記冷媒の一部が液体であるときには、前記冷媒脈動装置により前記冷媒を脈動させることを特徴とする車載電池の冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載電池の冷却装置において、
前記冷媒経路における前記凝縮器と前記冷媒脈動装置との間に設けられ、前記凝縮器で凝縮された冷媒の圧力を低下させる膨張弁を備え、
前記冷媒脈動装置は、前記膨張弁を通過した前記冷媒の圧力を調整することで該冷媒を脈動させる圧力調整器で構成されていることを特徴とする車載電池の冷却装置。
【請求項4】
請求項2に記載の車載電池の冷却装置において、
前記冷媒脈動装置は、前記凝縮器で凝縮された冷媒の圧力を低下させる膨張弁を有し、
前記コントローラは、前記膨張弁の開閉動作により前記冷媒を脈動させることを特徴とする車載電池の冷却装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の車載電池の冷却装置において、
前記熱交換器から流出しかつ前記加圧器に流入する前の前記冷媒と、前記凝縮器から流出しかつ前記膨張弁を通過する前の前記冷媒とを熱交換させる冷媒熱交換器を備えることを特徴とする車載電池の冷却装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1つに記載の車載電池の冷却装置において、
前記熱交換器は、前記冷媒が通る配管を有し、
前記配管は、前記冷媒との接触面積を増加させるための面積拡大部を有することを特徴とする車載電池の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、車載電池の冷却装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載された電池と冷媒とを熱交換することで電池を冷却する冷却装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電池セルを温調する温調用流体(冷媒)が流れる温調プレートと、温調用流体を圧送するポンプと、ポンプと温調プレートの流入口との間の流体循環管路に配設され、温調用流体に脈動を生成する脈動生成機構と、を備え、温調用流体に空気が含まれているときに、脈動生成機構を稼働させ、温調用流体の流れに変化を加える、冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電池の冷却装置には、液体の冷媒が気体に相変化する際の吸熱反応により電池を冷却するものがある。このような冷却装置では、電池と熱交換して気化した冷媒は、加圧器により加圧された後、冷やされて凝縮される。このとき、加圧器に液体状態の冷媒が流入してしまうと、加圧器の劣化を促進するおそれがある。
【0006】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体の冷媒が気体に相変化する際の吸熱反応により電池を冷却する冷却装置において、液体状態の冷媒が加圧器に流入するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様では、液体の冷媒を気体へと相変化させる際の吸熱反応により電池を冷却する、車載電池の冷却装置を対象として、前記冷媒と前記電池とを熱交換させる熱交換器と、前記熱交換器から流出した前記冷媒を加圧する加圧器と、前記加圧器で加圧された前記冷媒を冷却して凝縮させる凝縮器と、前記冷媒が通る冷媒経路における前記凝縮器と前記熱交換器との間に設けられ、前記冷媒を脈動させる冷媒脈動装置と、を備える、という構成とした。
【0008】
この構成によると、冷媒脈動装置により冷媒が脈動されると、冷媒が攪拌されるため、熱交換器内において冷媒全体が万遍なく電池と熱交換される。これにより、冷媒全体が熱交換器内において温められるため、冷媒全体が気化しやすくなる。したがって、液体状態の冷媒が加圧器に流入するのを抑制することができる。
【0009】
ここに開示された技術の第2の態様では、前記第1の態様において、前記冷媒脈動装置を制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記加圧器に流入する前記冷媒の一部が液体であるときには、前記冷媒脈動装置により前記冷媒を脈動させる。
【0010】
この構成によると、常時冷媒脈動装置を作動させるときと比較して、冷媒脈動装置の負荷を低減することができる。これにより、冷媒の脈動を適切に行うことができ、液体状態の冷媒が加圧器に流入するのをより適切に抑制することができる。
【0011】
ここに開示された技術の第3の態様では、前記第2の態様において、前記冷媒経路における前記凝縮器と前記冷媒脈動装置との間に設けられ、前記凝縮器で凝縮された冷媒の圧力を低下させる膨張弁を備え、前記冷媒脈動装置は、前記膨張弁を通過した前記冷媒の圧力を調整することで該冷媒を脈動させる圧力調整器で構成されている。
【0012】
この構成によると、膨張弁の開度を調整することで熱交換器に流入させる冷媒の流量を調整できる。また、冷媒の量が増えたとしても圧力調整器により冷媒を脈動させることで冷媒を電池と万遍なく熱交換させることができる。これにより、液体状態の冷媒が加圧器に流入するのをより適切に抑制することができる。
【0013】
ここに開示された技術の第4の態様では、前記第2の態様において、前記冷媒脈動装置は、前記凝縮器で凝縮された冷媒の圧力を低下させる膨張弁を有し、前記コントローラは、前記膨張弁の開閉動作により前記冷媒を脈動させる。
【0014】
この構成によると、熱交換器に流入させる冷媒の流量の調整と冷媒の脈動とを1つの装置で実現することができる。このため、液体状態の冷媒が加圧器に流入するのを抑制しつつ、冷却装置をコンパクトな構成とすることができる。
【0015】
ここに開示された技術の第5の態様では、前記第3又は第4の態様において、前記熱交換器から流出しかつ前記加圧器に流入する前の前記冷媒と、前記凝縮器から流出しかつ前記膨張弁を通過する前の前記冷媒とを熱交換させる冷媒熱交換器を備える。
【0016】
この構成によると、凝縮器から流出しかつ膨張弁を通過する前の冷媒は、加圧器により加圧されたものであるため、凝縮器で冷却されていたとしても、熱交換器から流出しかつ加圧器で加圧される前の冷媒と比較すると高温である。このため、熱交換器から流出した冷媒の一部が液体であったとしても、液体状態の冷媒を冷媒熱交換器により温めることで気化させることができる。これにより、液体状態の冷媒が加圧器に流入するのをより効果的に抑制することができる。
【0017】
ここに開示された技術の第6の態様では、前記第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、前記熱交換器は、前記冷媒が通る配管を有し、前記配管は、前記冷媒との接触面積を増加させるための面積拡大部を有する。
【0018】
この構成によると、冷媒と電池との熱交換が促進されるため、冷媒全体を適切に気化させることができる。また、例えば、面積拡大部を配管内に突出する突起で形成したときには、脈動する冷媒が突起と干渉することで乱流状態になる。これにより、冷媒が攪拌されやすくなるため、冷媒全体が気化しやすくなる。したがって、液体状態の冷媒が加圧器に流入するのをより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、液体状態の冷媒が加圧器に流入するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る冷却装置を有する車両の構成図である。
【
図2】
図2は、熱交換器の配置を示す平面図である。
【
図3】
図3は、熱交換器の配管を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第2コンプレッサ概略断面図である。
【
図5】
図5は、冷却装置の制御系を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、冷却装置おける冷媒経路の位置と冷媒温度との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、第2コンプレッサを制御する際のコントローラの処理動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、脈動の振幅及び周波数と冷却能力との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、電池温度、冷媒の過熱度、及び熱交換器内の冷媒の流用の関係を示すタイムチャートである。
【
図10】
図10は、熱交換器の配管の変形例1を示す断面図である。
【
図11】
図11は、熱交換器の配管の変形例2を示す断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る冷却装置を有する車両の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
(実施形態1)
〈冷却装置の全体構成〉
図1は、本実施形態1に係る冷却装置1を有する車両100を示す。車両100は、電気自動車やハイブリッド自動車などの電力で走行可能な自動車の車両である。
【0023】
車両100は、電力が蓄積された電池モジュール70を有する。電池モジュール70は、矩形箱状の電池セル71(
図2参照)が複数積層されて構成されている。電池モジュール70は、車両100のフロアパネルの下側に配置されている。車両100は、駆動源としての電動モータ(図示省略)を備えていて、電池モジュール70に蓄積された電力により前記電動モータを回転駆動させることで車輪101を回転させて走行する。電池セル71は、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池で構成されている。
【0024】
冷却装置1は、液体の冷媒を気体へと相変化させる際の吸熱反応により電池モジュール70の電池セル71をそれぞれ冷却する。冷媒は、例えばHFO(ハイドロフルオロオレフィン)系冷媒であって、具体的にはR1234yfである。
【0025】
冷却装置1は、冷媒と電池セル71とを熱交換させる熱交換器2と、熱交換器2から流出した冷媒を加圧する第1コンプレッサ3と、第1コンプレッサ3で加圧された冷媒を冷却して凝縮させるコンデンサ4と、熱交換器2、第1コンプレッサ3、及びコンデンサ4を互いに接続して環状に形成された冷媒経路10と、を有する。また、冷却装置1は、コンデンサ4で凝縮された冷媒の圧力を低下させる膨張弁5と、熱交換器2内の冷媒を脈動させる第2コンプレッサ6とを有する。第2コンプレッサ6は、冷媒脈動装置に相当する。
【0026】
図2及び
図3に示すように、熱交換器2は、電池モジュール70の下面に配置される冷却プレート21と、冷却プレート21と電池モジュール70との間に配置された熱伝導シート22と、を有する。
図2では、1つの電池モジュール70のみを示しているが、実際には、電池モジュール70は複数設けられており、電池モジュール70の数に応じて冷却プレート21及び熱伝導シート22が設けられている。また、電池モジュール70を構成する電池セル71の数は、
図2では10個であるが、11個以上であってもよいし、9個未満であってもよい。
【0027】
冷却プレート21は、矩形板状をなしていて、その長辺が電池セル71の積層方向に延びている。冷却プレート21の短辺の長さは、電池セル71の底面における長手方向の幅よりも小さい。冷却プレート21は、アルミニウムなどの熱伝導率の高い金属で形成されている。
【0028】
図3に示すように、冷却プレート21内には、長辺方向に延びる複数の配管23を有する。各配管23は、冷媒がそれぞれ流通する経路である。各配管23の一端部は冷媒の流入口となっており、各配管23の他端部は冷媒の流出口となっている。各配管23内には、配管23の長手方向に延びる突出部23aが複数形成されている。突出部23aは、冷媒との接触面積を増加させるための面積拡大部に相当する。尚、
図3では、突出部23aは、配管23の上面と底面にのみ形成されているが、配管23の側面にも形成してよい。
【0029】
熱伝導シート22は、電池モジュール70を構成する複数の電池セル71の底面を全て覆うように広がっている。熱伝導シート22の長手方向の長さは、電池モジュール70の長手方向の長さと同等であり、熱伝導シート22の短手方向の長さは、電池モジュール70の底面における積層方向と直交する方向の幅よりも僅かに大きい。熱伝導シート22があることで、冷却プレート21の短辺の長さが、電池セル71の底面における長手方向の幅よりも小さかったとしても、各電池セル71全体から冷却プレート21に熱を伝導させることができる。
【0030】
熱伝導シート22を介して冷却プレート21に伝達された熱は、冷却プレート21全体に広がって、各配管23内の冷媒と熱交換する。このため、各配管23内で冷媒が気化していて、気化した冷媒が配管23の上側部分に位置していたとしても、電池セル71と配管23内に残った液体の冷媒とが熱交換することができる。
【0031】
第1コンプレッサ3は、電池セル71と熱交換した後の冷媒を加圧する。第1コンプレッサ3は、例えばスクロール式のコンプレッサであって、回転数を調整することで流出する冷媒の圧力を調整することができる。第1コンプレッサ3で冷媒が加圧されるときには、冷媒の温度が上昇する。第1コンプレッサ3で加圧された冷媒は、液化せずに気体のまま流出する。
【0032】
コンデンサ4は、車両100の前側部分に配置されている。コンデンサ4の車両後側には、電動ファン41が設けられている。コンデンサ4は、車両100の走行時には、走行風により冷媒を冷却する一方で、車両100の停車時には、電動ファン41の回転により引き込まれた空気により冷媒を冷却する。コンデンサ4では、冷媒は、圧力が低下することなく、温度が低下することで凝縮して液化する。
【0033】
コンデンサ4の下流側には、レシーバタンク42が設けられている。レシーバタンク42は、コンデンサ4により液化した冷媒を一時的に貯留する。レシーバタンク42は、冷媒経路10と接続されている。コンデンサ4により液化した冷媒がレシーバタンク42に流入すると、流入した冷媒の量に相当するだけの量の冷媒が、レシーバタンク42から冷媒経路10に流出する。
【0034】
冷媒経路10は、主に液体状態の冷媒が通る液体冷媒経路11と、主に気体状態の冷媒が通る気体冷媒経路12と、を有する。液体冷媒経路11は、コンデンサ4から熱交換器2の流入口までの経路である。気体冷媒経路12は、熱交換器2の流出口からコンデンサ4までの経路である。前述の第1コンプレッサ3は、気体冷媒経路12の途中に設けられている。
【0035】
膨張弁5は、液体冷媒経路11の途中に設けられている。膨張弁5は、液体冷媒経路11内の冷媒の圧力を低下させる。膨張弁5を通過した冷媒は、減圧されたことにより温度が低下する。また、膨張弁5により圧力が低下することで、飽和温度(沸点に相当)が低下するため、熱交換器2の配管23内で気化しやすくなる。また、膨張弁5により圧力が低下することで、配管23内での冷媒の流れが緩やかになるため、配管23内の冷媒が電池セル71と万遍なく熱交換する。
【0036】
膨張弁5はまた、熱交換器2に流入させる冷媒の流量を調整するためにも利用される。具体的には、膨張弁5の開度が大きいほど熱交換器2に流入する冷媒の流量が大きくなる一方で、膨張弁5の開度が小さいほど熱交換器2に流入する冷媒の流量が小さくなる。
【0037】
第2コンプレッサ6は、膨張弁5を通過した冷媒の圧力を調整することで該冷媒を脈動させる。第2コンプレッサ6は、
図4に示すようなスクロール式のコンプレッサで構成されている。第2コンプレッサ6は、回転数を調整して流出する冷媒の流量を増減させることで、冷媒の圧力を調整する。詳しくは、第2コンプレッサ6は、回転数を高くして冷媒の流量を増加させることと、回転数を低くして冷媒の流量を減少させることとを交互に繰り返すことで、冷媒を脈動させる。尚、冷媒は、第2コンプレッサ6が稼働していない状態でも第2コンプレッサ6を通過することができる。例えば、第2コンプレッサ6の上流と下流とを接続するバイパス経路を有していてもよい。
【0038】
冷却装置1は、気体冷媒経路12のうち、熱交換器2から第1コンプレッサ3までの部分を流通する冷媒と、液体冷媒経路11のうち、コンデンサ4から膨張弁5までの部分を流通する冷媒とを熱交換させる冷媒熱交換器8を有する。つまり、冷媒熱交換器8は、熱交換器2から流出しかつ第1コンプレッサ3に流入する前の冷媒(以下、高圧冷媒という)と、コンデンサ4から流出しかつ膨張弁5を通過する前の冷媒(以下、低圧冷媒という)とを熱交換させる。高圧冷媒は、第1コンプレッサ3により加圧された状態であるため、飽和温度が高い。一方で、低圧冷媒は、膨張弁5により圧力がかなり低下した状態であるため、飽和温度が低い。このため、高圧冷媒は、コンデンサ4により凝縮して液化していたとしても、低圧冷媒と比較すると高温である。したがって、冷媒熱交換器8は、低圧冷媒を高圧冷媒により加熱する。尚、冷媒熱交換器8は、公知のものを採用することができるため、その構成について詳細な説明は省略する。
【0039】
〈冷却装置の制御システム〉
次に、冷却装置1の制御システムについて説明する。
【0040】
図5に示すように、車両100は、主に電池モジュール70の充放電制御及び熱交換器2における冷媒の流量制御を行うコントローラであるBECM(Battery Energy Control Module)81を有する。BECM81は、CPUを有する1つ以上のプロセッサ81aと、ROMやRAMで構成されかつ各種プログラムを記憶するメモリ81bと、を備える。メモリ81bは、例えば不揮発性メモリである。
【0041】
BECM81は、電池セル71の温度を検出する電池温度センサSW1、第1コンプレッサ3に流入する冷媒の温度を検出する冷媒温度センサSW2、第1コンプレッサ3で加圧されかつ膨張弁5で減圧される前の冷媒の圧力を検出する第1冷媒圧力センサSW3、及び膨張弁5で減圧されかつ第1コンプレッサ3で加圧される前の冷媒の圧力を検出する第2冷媒圧力センサSW4からの検出結果が入力される。電池温度センサSW1は、例えば、電池モジュール70における冷媒の流出口の近傍に配置されている。冷媒温度センサSW2及び第2冷媒圧力センサSW4は、気体冷媒経路12における冷媒熱交換器8よりも下流でかつ第1コンプレッサ3よりも上流の位置に配置されている。第1冷媒圧力センサSW3は、気体冷媒経路12における第1コンプレッサ3よりも下流でかつコンデンサ4よりも上流の位置に配置されている。尚、電池温度センサSW1は、複数設けられていてもよく、例えば、電池モジュール70における冷媒の流出口の近傍に加えて、平面視で電池モジュール70の中央にも配置されていてもよい。
【0042】
BECM81は、各センサSW1~SW4からの信号に基づいて膨張弁5を制御する。具体的には、BECM81は、膨張弁5の開度を制御する。BECM81は、熱交換器2に流入させる冷媒の流量を増加させるときには、膨張弁5の開度を現在の開度よりも大きくする一方で、熱交換器2に流入させる冷媒の流量を減少させるときには、膨張弁5の開度を現在の開度よりも小さくする。
【0043】
また、BECM81は、各センサSW1~SW4からの信号に基づいて第2コンプレッサ6を制御する。BECM81は、第2コンプレッサ6の回転数を制御する。BECM81は、第2コンプレッサ6の回転数を増減させて、熱交換器2に流入する冷媒を脈動させる。BECM81は、熱交換器2に流入する冷媒の圧力(流量)の時間平均は、膨張弁5を通過したときの冷媒の圧力(流量)になるように、第2コンプレッサ6を制御する。BECM81は、脈動の振幅を大きくするときには、増減させる回転数の最大値及び最小値を大きくする。BECM81は、脈動の周波数を大きくするときには、回転数を増減させて周期を短くする。
【0044】
BECM81が行う制御は、メモリ81bにプログラムとして記憶されている。BECM81は、コントローラの一例である。
【0045】
車両100は、車両100の動力系統全体の制御を行うコントローラであるPCM(Powertrain Control Module)80を有する。PCM80は、CPUを有する1つ以上のプロセッサ80aと、ROMやRAMを有しかつ各種プログラムを記憶するメモリ80bと、を備える。メモリ80bは、例えば不揮発性メモリである。
【0046】
PCM80は、外気温度を検出する外気温度センサSW5の検出結果が入力される。外気温度センサSW5は、コンデンサ4の車両前側に位置している。外気温度センサSW5の検出結果は、電動ファン41により引き込む空気の温度に相当する。PCM80はまた、BECM81を介して、各センサSW1~SW4の検出結果を取得する。
【0047】
PCM80は、各センサSW1~SW4からの信号に基づいて、電動ファン41及び第1コンプレッサ3を制御する。PCM60は、電池温度センサSW1の検出結果から目標冷却能力を設定して、設定した目標冷却能力に基づいて第1コンプレッサ3の回転数を設定する。PCM60は、第1冷媒圧力センサSW3及び外気温度センサSW5の各検出結果に基づいて、電動ファン41の回転数を設定する。
【0048】
PCM80が行う制御は、メモリ80bにプログラムとして記憶されている。
【0049】
〈冷媒経路の各位置における冷媒の状態〉
図6は、冷媒経路10の各位置における冷媒温度を模式的に示す。
図6は、液体冷媒経路11におけるレシーバタンク42の下流でかつ冷媒熱交換器8の上流の位置から、気体冷媒経路12における冷媒熱交換器8の下流でかつ第1コンプレッサ3の上流の位置までの冷媒温度の変化を示す。また、
図6では、第2コンプレッサ6が稼働していない状態での冷媒温度の変化を示す。
【0050】
まず、実線の温度変化に注目する。冷媒は、液体冷媒経路11における冷媒熱交換器8よりも上流では前記高圧冷媒の状態であるため、液化されていても温度が比較的高い。冷媒は、冷媒熱交換器8を通過すると、気体冷媒経路12を通る前記低圧冷媒と熱交換して、温度が低下する。次に、冷媒が膨張弁5を通過すると、冷媒は断熱膨張により温度が大きく低下する。そして、冷媒が熱交換器2の配管23に入ると、冷媒は、温度が少し上昇して、気化する。冷媒は、気化するときの吸熱反応により電池セル71を冷却する。冷媒は、熱交換器2の配管23を流通している間は気化し続けるため、温度は飽和温度に維持される。この例では、熱交換器2の流出口では、冷媒は、完全に気化せずに、一部が液体の状態で残っている。このため、熱交換器2から流出した冷媒の温度は飽和温度のままである。その後、冷媒が冷媒熱交換器8に流入すると、冷媒は、液体冷媒経路11を通る前記高圧冷媒と熱交換する。この熱交換により、冷媒が完全に気化する。冷媒が完全に気化することで、冷媒は飽和温度よりも高温になる。
【0051】
このように、熱交換器2では冷媒の一部が液体で残り、冷媒熱交換器8で完全に気化すると、熱交換器2の配管23を通過している間は、冷媒が常に吸熱反応するため、効率的に電池セル71を冷却することができる。また、第1コンプレッサ3には液体の冷媒がほとんど流入しないため、第1コンプレッサ3の劣化を抑制することができる。
【0052】
ここで、熱交換器2への冷媒の流量が少ないと、
図6に一点鎖線で示すように、熱交換器2の途中で冷媒が完全に気化してしまい、熱交換器2の配管23内の冷媒温度が上昇する。熱交換器2の途中で冷媒が完全に気化してしまうと、特に、冷却プレート21における流出口近傍に位置する電池セル71が冷却されにくくなって、電池セル71の温度が上昇する。
【0053】
BECM81は、電池セル71の温度が上昇して、所定温度TC以上になったことを電池温度センサSW1から取得したときには、膨張弁5を制御して、冷媒の流量を増大させる。しかしながら、冷媒の流量が多くなると、
図6に二点鎖線で示すように、冷媒熱交換器8を通過した後でも液体の冷媒が残ってしまうおそれがある。液体の冷媒が残ってしまうと、液体の冷媒が第1コンプレッサ3に流入してしまい、第1コンプレッサ3の劣化を促進してしまうおそれがある。
【0054】
そこで、本実施形態では、BECM81は、第1コンプレッサ3に流入する冷媒の一部が液体であるときには、第2コンプレッサ6により熱交換器2に流入する冷媒を脈動させるようにした。
【0055】
〈第2コンプレッサの制御〉
図7は、BECM81により第2コンプレッサ6を制御するフローチャートを示す。
【0056】
まず、ステップS1において、BECM81は、各センサSW1~SW4の検出結果を読み込む。
【0057】
次に、ステップS2において、電池温度TBが所定温度TC以上であるか否かを判定する。BECM81は、電池温度TBが所定温度TC以上であるYESのときには、ステップS3に進む。一方で、BECM81は、電池温度TBが所定温度TC未満であるNOのときには、リターンする。
【0058】
前記ステップS3では、BECM81は、冷媒の流量を増加させる。BECM81は、膨張弁5の開度を大きくすることで冷媒の流量を増加させる。
【0059】
次に、ステップS4において、BECM81は、第1コンプレッサ3に流入する冷媒の一部が液体であるか否かを判定する。BECM81は、冷媒熱交換器8と第1コンプレッサ3との間の気体冷媒経路12において冷媒が全て気化していると推定されるときには、第1コンプレッサ3に流入する冷媒が全て気体であると判定する一方で、前記気体冷媒経路12に液体状態の冷媒が残っていると推定されるときには、第1コンプレッサ3に流入する冷媒の一部が液体であると判定する。BECM81は、冷媒温度センサSW2及び第2冷媒圧力センサSW4の検出結果に基づいて、前記気体冷媒経路12の冷媒が全て気化しているか否かを推定する。具体的には、第2冷媒圧力センサSW4の検出結果から、前記気体冷媒経路12における平均圧力を算出する。次に、BECM81は、該平均圧力における冷媒の飽和温度を算出する。BECM81は、予めメモリ81bに冷媒についての蒸気圧曲線(例えば、R1234yfの蒸気圧曲線)を記憶しておき、該蒸気圧曲線を読み込んで飽和温度を算出する。次いで、BECM81は、冷媒温度センサSW2の検出結果と飽和温度とを比較する。そして、BECM81は、冷媒温度センサSW2が検出した冷媒温度が飽和温度よりも高いときには、前記気体冷媒経路12の冷媒が全て気化していると推定する一方で、該冷媒温度が飽和温度以下であるときには、前記気体冷媒経路12に液体状態の冷媒が残っていると推定する。
【0060】
前記ステップS4において、BECM81は、第1コンプレッサ3に流入する冷媒が全て気体であるYESのときにはリターンする。一方で、BECM81は、第1コンプレッサ3に流入する冷媒の一部が液体であるNOのときにはステップS5に進む。
【0061】
前記ステップS5において、BECM81は、第2コンプレッサ6による脈動を強化する。BECM81は、第2コンプレッサ6の回転数を調整して、脈動の振幅及び周波数の少なくとも一方を増加させる。ステップS5の後は前記ステップS4に戻る。尚、ここでいう「脈動を強化」には、冷媒を脈動させていない状態から脈動させるときも含む。
【0062】
図8には、脈動の振幅及び周波数と冷却能力との関係を示す。
図8中の周波数高の曲線は、3つの曲線の中では最も周波数が高く、周波数低の曲線は、3つ曲線の中では最も周波数が低い。周波数中の曲線は、周波数高と周波数低との中間の周波数の曲線である。
図8に示すように、脈動の振幅及び周波数を大きくすると、冷却能力が向上する。これは、熱交換器2の配管23内に乱流が生じて、冷媒が攪拌されることで、冷媒が万遍なく熱交換するためである。特に、本実施形態では、前述したように、配管23内に突出部23aが形成されているため、突出部23aにより障害物となって乱流が形成されやすく、さらに突出部23aにより表面積が拡大しているため、熱交換が進みやすい。これにより、配管23内での冷媒の気化が促進されて、熱交換器2から流出する冷媒に含まれる液体状態の冷媒の量が減少する。この結果、第1コンプレッサ3に液体状態の冷媒が流入するのを抑制することができる。
【0063】
図9は、電池温度、冷媒熱交換器8と第1コンプレッサ3との間の気体冷媒経路12における冷媒の過熱度、及び熱交換器2内の冷媒の流量の関係を示す。冷媒の過熱度は、冷媒の温度と飽和温度との差分であり、過熱度が0より大きければ、冷媒が全て気化していることを意味し、過熱度が0であれば、冷媒の一部が液体の状態であることを意味する。
【0064】
まず、初期状態では、電池セル71は十分に冷却されており、冷媒は全て気化して過熱度が0よりも大きくなっている。また、初期状態では、第2コンプレッサ6は作動していない。
【0065】
この初期状態から、時刻t1において、電池温度が上昇したとする。このとき、冷媒は、熱交換器2から流出する前に全て気化されて電池セル71の熱により加熱されるため、冷媒の過熱度は上昇する。
【0066】
時刻t2において、電池温度が所定温度TC以上になると、冷媒流量が増大される。これにより、電池温度の上昇が抑えられ、過熱度が低下する。
【0067】
そして、時刻t3において、過熱度が0になると、第2コンプレッサ6が作動して、熱交換器2内の冷媒が脈動される。これにより、熱交換器2内の冷媒の流量が増減する。
【0068】
ここで、現在の振幅及び周波数では、十分な冷却能力とはならず、冷媒の一部が液体のまま、つまり、過熱度が0のままであったとする。このときには、時刻t4において、脈動が強化される。ここでは、脈動の振幅が増大される。これにより、冷却能力が向上すると、電池温度が低下し、冷媒が全て気化することで冷媒の過熱度が上昇する。
【0069】
時刻t5以降は、脈動の振幅が一定の状態となって、熱交換器2から流出する液体の冷媒の流量もほぼ一定になるため、冷媒の過熱度は、冷媒熱交換器8で上昇する分のみとなりほぼ一定となる。
【0070】
〈実施形態1の効果〉
したがって、本実施形態1では、冷媒と電池セル71とを熱交換させる熱交換器2と、熱交換器2から流出した冷媒を加圧する第1コンプレッサ3と、第1コンプレッサ3で加圧された冷媒を冷却して凝縮させるコンデンサ4と、冷媒が通る冷媒経路10におけるコンデンサ4と熱交換器2との間に設けられ、冷媒を脈動させる第2コンプレッサ6と、を備える。第2コンプレッサ6により冷媒が脈動されると、冷媒が攪拌されるため、熱交換器2内において冷媒全体が万遍なく電池セル71と熱交換される。これにより、冷媒全体が熱交換器2内において温められるため、冷媒全体が気化しやすくなる。したがって、液体状態の冷媒が第1コンプレッサ3に流入するのを抑制することができる。
【0071】
特に、本実施形態1では、第2コンプレッサ6を制御するBECM81を備え、BECM81は、第1コンプレッサ3に流入する冷媒の一部が液体であるときには、第2コンプレッサ6により冷媒を脈動させる。これにより、必要なときに第2コンプレッサ6を稼働させればよいため、第2コンプレッサ6を常時稼働させる場合と比較すると、第2コンプレッサ6の負荷を低減することができる。この結果、冷媒の脈動を適切に行うことができ、液体状態の冷媒が第1コンプレッサ3に流入するのをより適切に抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態1では、BECM81は、第2コンプレッサ6を作動させた後であっても、第1コンプレッサ3に流入する冷媒の一部が液体であるときには、脈動の振幅及び周波数の少なくとも一方を大きくする。これにより、冷却能力が向上して、冷媒全体が気化しやすくなる。この結果、液体状態の冷媒が第1コンプレッサ3に流入するのをより適切に抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態1では、冷媒経路10におけるコンデンサ4と第2コンプレッサ6との間に設けられ、コンデンサ4で凝縮された冷媒の圧力を低下させる膨張弁5を備え、第2コンプレッサ6は、膨張弁5を通過した冷媒の圧力を調整することで該冷媒を脈動させる。これにより、膨張弁5の開度を調整することで熱交換器2に流入させる冷媒の量を調整できる。また、冷媒の量が増えたとしても第2コンプレッサ6により冷媒を脈動させることで冷媒を電池セル71と万遍なく熱交換させることができる。これにより、液体状態の冷媒が第1コンプレッサ3に流入するのをより適切に抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態1では、熱交換器2から流出しかつ第1コンプレッサ3に流入する前の冷媒と、コンデンサ4から流出しかつ膨張弁5を通過する前の冷媒とを熱交換させる冷媒熱交換器8を備える。これにより、熱交換器2から流出した冷媒の一部が液体であったとしても、液体状態の冷媒を冷媒熱交換器8により温めることで気化させることができる。これにより、液体状態の冷媒が第1コンプレッサ3に流入するのをより効果的に抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態1では、熱交換器2は、冷媒が通る配管23を有し、配管23は、冷媒との接触面積を増加させるための突出部23aを有する。これにより、冷媒と電池セル71との熱交換が促進されるため、冷媒全体を適切に気化させることができる。また、脈動する冷媒が突出部23aと干渉することで乱流状態になる。この結果、冷媒が攪拌されやすくなるため、冷媒全体が気化しやすくなる。したがって、液体状態の冷媒が第1コンプレッサ3に流入するのをより効果的に抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態1では、第2コンプレッサ6は、膨張弁5の下流でかつ熱交換器2の上流に配置されている。これにより、第2コンプレッサ6は、低圧の冷媒に対して脈動を加えることができるため、第2コンプレッサ6の負荷を低減することができる。
【0077】
(実施形態1の変形例1)
図10は実施形態1の変形例1を示し、この変形例では、冷却プレート21の配管223の構造が異なる。具体的には、この変形例1では、突出部に代えて、配管223の外側に向かって凹みかつ配管223の長手方向に延びる凹部223aが複数形成されている。この凹部223aが形成されることで、配管223の壁面と冷媒との接触面積を拡大させることができる。このことから、凹部223aは、面積拡大部に相当する。
【0078】
この変形例1であっても、凹部223aが形成されていることで、冷媒と電池セル71との熱交換が促進されるため、冷媒全体を適切に気化させることができる。また、脈動する冷媒が凹部223aによってかき乱されて乱流状態になる。この結果、冷媒が攪拌されやすくなるため、冷媒全体が気化しやすくなる。したがって、液体状態の冷媒が第1コンプレッサ3に流入するのをより効果的に抑制することができる。
【0079】
(実施形態1の変形例2)
図11は実施形態1の変形例2を示し、この変形例では、冷却プレート21の配管323の構造が異なる。具体的には、この変形例2では、突出部に代えて、配管323の外側に向かって凹みかつ配管323の長手方向と直交する方向に延びる溝部323aが、配管323の長手方向全体に亘って複数形成されている。この溝部323aが形成されることで、配管323の壁面と冷媒との接触面積を拡大させることができる。このことから、溝部323aは、面積拡大部に相当する。
【0080】
この変形例2であっても、溝部323aが形成されていることで、冷媒と電池セル71との熱交換が促進されるため、冷媒全体を適切に気化させることができる。また、脈動する冷媒が溝部323aによってかき乱されて乱流状態になる。この結果、冷媒が攪拌されやすくなるため、冷媒全体が気化しやすくなる。したがって、液体状態の冷媒が第1コンプレッサ3に流入するのをより効果的に抑制することができる。
【0081】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0082】
図12は、本実施形態2に係る冷却装置201を備える車両100を示す。本実施形態2では、第2コンプレッサ6が設けられていない点で、前述の実施形態1とは異なる。本実施形態2では、膨張弁5の開度を調整することによって、冷媒を脈動させる。つまり、BECM81は、膨張弁5の開度を大きくすることと、膨張弁5の開度を小さくすることとを交互に繰り返すことで、冷媒を脈動させる。BECM81は、熱交換器2に供給する冷媒の平均圧力(平均流量)については、目標とする圧力(流量)になるように、膨張弁5を開閉制御する。
【0083】
この実施形態2の構成でも、冷媒が攪拌されるため、熱交換器2内において冷媒全体が万遍なく電池セル71と熱交換される。これにより、冷媒全体が熱交換器2内において温められるため、冷媒全体が気化しやすくなる。したがって、液体状態の冷媒が第1コンプレッサ3に流入するのを抑制することができる。
【0084】
また、実施形態2では、熱交換器2に流入させる冷媒の流量の調整と冷媒の脈動とを1つの装置で実現することができるため、冷却装置201をコンパクトな構成とすることができる。
【0085】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0086】
前述の実施形態1及び2では、BECM81は、第1コンプレッサ3に流入する冷媒の一部が液体であるときに、熱交換器2に流入する冷媒を脈動させるようにした。これに限らず、BECM81は、熱交換器2に流入する冷媒を常に脈動させるようにしてもよい。この場合、BECM81は、通常は比較的小さな振幅でかつ比較的低い周波数で冷媒を脈動させておき、第1コンプレッサ3に流入する冷媒の一部が液体であると判定されるときに、脈動の振幅及び周波数の少なくとも一方を大きくする。
【0087】
また、前述の実施形態1及び2では、冷媒熱交換器8が設けられていたが、冷媒熱交換器8は省略してもよい。
【0088】
また、前述の実施形態1及び2では、面積拡大部として、突出部23a、凹部223a、及び溝部323aを設けていた。これに限らず、面積拡大部は、フィンのようなものを配管内に設ける構造でもよいし、配管の壁面を粗くする構造でもよい。
【0089】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
ここに開示された技術は、液体の冷媒を気体へと相変化させる際の吸熱反応により電池を冷却する、車載電池の冷却装置のエンジン制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0091】
2 熱交換器
3 第1コンプレッサ
4 コンデンサ
5 膨張弁(冷媒脈動装置)
6 第2コンプレッサ(冷媒脈動装置)
8 冷媒熱交換器
10 冷媒経路
21 冷却プレート
22 熱伝導シート
23 配管
23a 突出部(面積拡大部)
223 配管
223a 凹部(面積拡大部)
323 配管
323a 溝部(面積拡大部)