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特開2025-5970ボイラ、発電設備、およびボイラの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005970
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ボイラ、発電設備、およびボイラの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20250109BHJP
   F23N 1/00 20060101ALI20250109BHJP
   F23C 1/10 20060101ALI20250109BHJP
   F23C 1/12 20060101ALI20250109BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F22B35/00 J
F23N1/00 102A
F23N1/00 115Z
F23N1/00 116
F23C1/10
F23C1/12
F22B1/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106449
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】冨永 幸洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 明正
(72)【発明者】
【氏名】富澤 直季
(72)【発明者】
【氏名】嶺 聡彦
(72)【発明者】
【氏名】浦方 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】槌谷 勇太
(72)【発明者】
【氏名】甘利 猛
【テーマコード(参考)】
3K068
3K091
3L021
【Fターム(参考)】
3K068FA03
3K068FB01
3K068FC02
3K068FD07
3K068HA02
3K091AA20
3K091BB02
3K091CC02
3K091CC13
3K091DD02
3L021BA08
3L021FA12
(57)【要約】
【課題】固体燃料とアンモニア燃料の双方を火炉で燃焼させるボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、ボイラの負荷変化速度を高める。
【解決手段】ボイラの制御方法であって、ボイラは、火炉内に固体燃料を用いて火炎を形成する固体燃料バーナと、固体燃料バーナに供給される固体燃料の供給量を調整する固体燃料調整部と、火炉内にアンモニア燃料を用いて火炎を形成するアンモニア燃料バーナと、アンモニア燃料バーナに供給されるアンモニア燃料の供給量を調整するアンモニア燃料調整部と、を有し、固体燃料調整部およびアンモニア燃料調整部を制御する制御工程を備え、制御工程S102は、ボイラの負荷を上昇させる負荷上昇動作を実行する際に、負荷上昇動作の開始から完了に至るまでの動作期間において、アンモニア燃料バーナへ供給されるアンモニア燃料の供給量を増加させるようアンモニア燃料調整部を制御するボイラの制御方法を提供する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉へ固体燃料を噴射して燃焼させる固体燃料バーナと、
前記固体燃料バーナに供給される前記固体燃料の供給量を調整する固体燃料調整部と、
前記火炉へアンモニア燃料を噴射して燃焼させるアンモニア燃料バーナと、
前記アンモニア燃料バーナに供給される前記アンモニア燃料の供給量を調整するアンモニア燃料調整部と、
前記固体燃料調整部および前記アンモニア燃料調整部を制御する制御部と、を備えるボイラであって、
前記制御部は、前記ボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、前記負荷変化動作の開始から完了に至るまでの動作期間において、前記アンモニア燃料バーナへ供給される前記アンモニア燃料の供給量を変化させるよう前記アンモニア燃料調整部を制御するボイラ。
【請求項2】
前記制御部は、前記ボイラの負荷を変化させる際に、前記固体燃料バーナへ供給される前記固体燃料の供給量を変化させるよう前記固体燃料調整部を制御する請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記制御部は、前記ボイラの負荷を変化させる際に、前記固体燃料バーナへ供給される前記固体燃料の供給量が一定となるように前記固体燃料調整部を制御する請求項1に記載のボイラ。
【請求項4】
前記制御部は、前記ボイラが運転状態となる所定の運転期間中に、前記固体燃料の入熱量と前記アンモニア燃料の入熱量の合計した総入熱量に対する前記アンモニア燃料の入熱量の割合が20%以上かつ80%以下となるように前記固体燃料調整部および前記アンモニア燃料調整部を制御する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のボイラ。
【請求項5】
前記制御部は、前記ボイラが運転状態となる所定の運転期間中に、前記固体燃料の入熱量と前記アンモニア燃料の入熱量の合計した総入熱量に対する前記アンモニア燃料の入熱量の割合が20%以上かつ50%以下となるように前記固体燃料調整部および前記アンモニア燃料調整部を制御する請求項3に記載のボイラ。
【請求項6】
前記負荷変化動作は、前記ボイラの起動後の運転状態において実行される動作である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のボイラ。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のボイラと、
前記ボイラで生成された蒸気により駆動される蒸気タービンと、
前記蒸気タービンに連結される発電機と、を備える発電設備。
【請求項8】
ボイラの制御方法であって、
前記ボイラは、
火炉内に固体燃料を用いて火炎を形成する固体燃料バーナと、
前記固体燃料バーナに供給される前記固体燃料の供給量を調整する固体燃料調整部と、
前記火炉内にアンモニア燃料を用いて火炎を形成するアンモニア燃料バーナと、
前記アンモニア燃料バーナに供給される前記アンモニア燃料の供給量を調整するアンモニア燃料調整部と、を有し、
前記固体燃料調整部および前記アンモニア燃料調整部を制御する制御工程を備え、
前記制御工程は、前記ボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、前記負荷変化動作の開始から完了に至るまでの動作期間において、前記アンモニア燃料バーナへ供給される前記アンモニア燃料の供給量を変化させるよう前記アンモニア燃料調整部を制御するボイラの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボイラ、発電設備、およびボイラの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微粉炭とアンモニアとを複合燃焼させるボイラが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されるボイラは、負荷を上昇させる負荷上昇動作を実行する際に、負荷上昇動作の開始時にはアンモニア燃料以外の他の燃料のみをバーナ部に供給し、その後にバーナ部の空気比と火炉内の温度が判定条件を満たす場合に、アンモニア燃料の供給を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-155820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンモニア燃料と微粉炭等の固体燃料とを混焼させる場合において、アンモニア燃料の混焼率(燃料の総入熱量に対するアンモニア燃料の入熱量の比率)が固体燃料の混焼率(燃料の総入熱量に対する固体燃料の入熱量の比率)よりも低い場合、主たる燃料が固体燃料となる。この場合、ボイラの負荷を変化させる際には、主たる燃料である固体燃料の供給量を変化させることで、ボイラへの入熱量を変化させることが一般的である。そのため、ボイラの負荷の変化速度は、ボイラへ供給される固体燃料量の変化速度により制限される。
【0005】
一方、液体あるいは気体であるアンモニア燃料と固体燃料とを比較すると、アンモニア燃料(特に液体アンモニア)の方が供給量を変化させやすい特性があることが知られている。特許文献1では、負荷上昇動作の開始時にはアンモニア燃料をバーナ部に供給せず、微粉炭等の他の燃料のみを供給しているため、ボイラの負荷変化速度を高めるためには改善の余地がある。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、固体燃料とアンモニア燃料の双方を火炉で燃焼させるボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、ボイラの負荷変化速度を高めることが可能なボイラ、発電設備、およびボイラの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様にかかるボイラ、発電設備、およびボイラの制御方法は以下の手段を採用する。
本開示の一態様にかかるボイラは、火炉へ固体燃料を噴射して燃焼させる固体燃料バーナと、前記固体燃料バーナに供給される前記固体燃料の供給量を調整する固体燃料調整部と、前記火炉へアンモニア燃料を噴射して燃焼させるアンモニア燃料バーナと、前記アンモニア燃料バーナに供給される前記アンモニア燃料の供給量を調整するアンモニア燃料調整部と、前記固体燃料調整部および前記アンモニア燃料調整部を制御する制御部と、を備えるボイラであって、前記制御部は、前記ボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、前記負荷変化動作の開始から完了に至るまでの動作期間において、前記アンモニア燃料バーナへ供給される前記アンモニア燃料の供給量を変化させるよう前記アンモニア燃料調整部を制御する。
【0008】
本開示の一態様にかかるボイラの制御方法において、前記ボイラは、火炉内に固体燃料を用いて火炎を形成する固体燃料バーナと、前記固体燃料バーナに供給される前記固体燃料の供給量を調整する固体燃料調整部と、前記火炉内にアンモニア燃料を用いて火炎を形成するアンモニア燃料バーナと、前記アンモニア燃料バーナに供給される前記アンモニア燃料の供給量を調整するアンモニア燃料調整部と、を有し、前記固体燃料調整部および前記アンモニア燃料調整部を制御する制御工程を備え、前記制御工程は、前記ボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、前記負荷変化動作の開始から完了に至るまでの動作期間において、前記アンモニア燃料バーナへ供給される前記アンモニア燃料の供給量を変化させるよう前記アンモニア燃料調整部を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、固体燃料とアンモニア燃料の双方を火炉で燃焼させるボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、ボイラの負荷変化速度を高めることが可能なボイラ、発電設備、およびボイラの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態に係るボイラを示す概略構成図である。
図2図1に示す燃焼バーナの正面図である。
図3図1に示す燃焼バーナが有するアンモニア燃料バーナの横断面図である。
図4図1に示すボイラの燃焼バーナの微粉燃料バーナの横断面図である。
図5】本開示の第1実施形態に係るボイラの制御方法を示すフローチャートである。
図6】ボイラの負荷の時間変化を示すグラフである。
図7】微粉燃料の供給量の時間変化を示すグラフである。
図8】アンモニア燃料の供給量の時間変化を示すグラフである。
図9】本開示の第2実施形態に係るボイラの制御方法を示すフローチャートである。
図10】微粉燃料の供給量の時間変化を示すグラフである。
図11】アンモニア燃料の供給量の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下に、本開示の第1実施形態に係るボイラ10について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るボイラ10は、微粉燃料(固体燃料)およびアンモニア燃料を燃焼バーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を回収する装置である。
【0012】
図1は、本開示の第1実施形態に係るボイラ10を示す概略構成図である。図1に示すように、本実施形態のボイラ10は、火炉11と燃焼装置12と煙道13を有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置され、この火炉11を構成する火炉壁の下部に燃焼装置12が設けられている。
【0013】
燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数の燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eを有している。本実施例にて、この燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eは、火炉11が延びる鉛直方向を中心軸とした周方向に沿って4個均等間隔で配設されたものが1セットとして、鉛直方向に沿って5セット(5段)配置されている。なお、ここでは5セットとしたが、6セットあるいはその他の任意のセット数とすることができる。
【0014】
各燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eは、微粉燃料供給管26,27,28,29,30を介して粉砕機31,32,33,34,35に連結されている。粉砕機31,32,33,34,35は、石炭等の固体炭素質燃料を粉砕して微粉燃料とし、空気等の搬送用ガスとともに微粉燃料供給管26,27,28,29,30へ供給する。微粉燃料は、微粉燃料供給管26,27,28,29,30から、燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eに供給される。
【0015】
粉砕機31,32,33,34,35は、それぞれ固体燃料供給管31b,32b,33b,34b,35bを介して流量調整部(固体燃料調整部)31a,32a,33a,34a,35aと連結されている。微粉燃料供給管26,27,28,29,30を介して燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eに供給される微粉燃料の供給量は、粉砕機31,32,33,34,35に供給される固体炭素質燃料の量を、流量調整部(固体燃料調整部)31a,32a,33a,34a,35aにより調整することで制御される。
【0016】
なお、図1では、流量調整部(固体燃料調整部)31a,32a,33a,34a,35aにベルトコンベヤを適用した例を示す。例えば、粉砕機31,32,33,34,35に供給される固体炭素質燃料の量はベルトコンベヤのベルトの移動速度で調整する。ここで、粉砕機31,32,33,34,35の内部には、未粉砕の固体炭素質燃料が残存しているため、ベルトの移動速度による固体炭素質燃料供給量の調整は、一定の遅れ時間を持って、燃焼バーナに供給される微粉燃料の量に反映されることとなる。
【0017】
各燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eは、アンモニア燃料供給管51,52,53,53,55を介してアンモニア燃料供給部50に連結されている。アンモニア燃料供給部50は、成分としてアンモニアを含む液相または気相のアンモニア燃料を、アンモニア燃料供給管51,52,53,54,55へ供給する。アンモニア燃料は、アンモニア燃料供給管51,52,53,54,55から、燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eに供給される。
【0018】
アンモニア燃料供給管51,52,53,54,55には、それぞれ流量調整部(アンモニア燃料調整部)51a,52a,53a,54a,55aが設けられている。流量調整部(アンモニア燃料調整部)51a,52a,53a,54a,55aには、例えば、開度により供給燃料量の調整を行う制御弁が用いられる。流量調整部51a,52a,53a,54a,55aは、アンモニア燃料供給管51,52,53,54,55から燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eに供給されるアンモニア燃料の供給量を調整する。
【0019】
ボイラ10は、流量調整部31a,32a,33a,34a,35aおよび流量調整部51a,52a,53a,54a,55aを含むボイラ10の各部を制御する制御部60を備える。制御部60は、流量調整部31a,32a,33a,34a,35aのベルト移動速度を制御して粉砕機31,32,33,34,35に供給される固体質炭素燃料の量を制御することにより、微粉燃料供給管26,27,28,29,30から燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eに供給される微粉燃料の供給量を間接的に調整する。また、制御部60は、流量調整部51a,52a,53a,54a,55aの開度を制御することにより、アンモニア燃料供給管51,52,53,54,55から燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eに供給されるアンモニア燃料の供給量を調整する。すなわち、流量調整部51a,52a,53a,54a,55aは、アンモニア燃料の供給量を直接的に制御する。
【0020】
火炉11は、各燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eの装着位置に風箱36が設けられており、この風箱36に空気ダクト37の一端部が連結されており、この空気ダクト37には、他端部に送風機38が装着されている。更に、火炉11は、各燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eの装着位置より鉛直方向上方にアディショナル空気ノズル39が設けられている。
【0021】
アディショナル空気ノズル39には、空気ダクト37から分岐した分岐空気ダクト40の端部が連結されている。従って、送風機38により送られた燃焼用空気を、空気ダクト37から風箱36に供給し、風箱36から各燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eに供給することができる。また、送風機38により送られた燃焼用空気を分岐空気ダクト40からアディショナル空気ノズル39に供給することができる。
【0022】
火炉11は、鉛直方向上部に煙道13が連結されており、この煙道13に、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器である過熱器41,42、再熱器43,44及び節炭器45,46,47が設けられており、火炉11での燃焼で発生した燃焼ガスと水や蒸気との間で熱交換が行われる。
【0023】
煙道13は、そのガス流れ下流側に熱交換を行った燃焼ガスが排ガスとして排出される排ガス管48が連結されている。この排ガス管48は、空気ダクト37との間にエアヒータ49が設けられ、空気ダクト37を流れる空気と、排ガス管48を流れる排ガスとの間で熱交換を行い、燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eに供給する燃焼用空気を昇温することができる。排ガス管48の下流端部には、煙突(図示略)が設けられている。
【0024】
燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eは、微粉燃料およびアンモニア燃料を火炉11に吹き込むと共に燃焼用空気を火炉11に吹き込み、このときに着火することで火炎を形成する。火炉11では、微粉燃料およびアンモニア燃料と燃焼用空気とが燃焼して火炎が生じ、この火炉11内の鉛直方向下部の領域で火炎が生じると、燃焼ガス(排ガス)がこの火炉11内を上昇し、煙道13に排出される。
【0025】
給水ポンプ(図示略)から供給された水は、節炭器45,46,47によって予熱された後、火炉壁を構成する伝熱管(図示略)を経て過熱器41,42に導入され、燃焼ガスとの熱交換によって過熱蒸気が生成される。
【0026】
過熱器41,42で生成された過熱蒸気は、発電プラント(発電設備)の蒸気タービン(図示略)に供給される。蒸気タービンは、発電機に連結されており、ボイラ10で生成された蒸気により発電機を駆動して発電を行う。蒸気タービンは、高圧タービンから排出された蒸気を、ボイラ100の再熱器43,44に導入して再過熱された蒸気を利用する低圧タービンを備えた多段のタービンであってもよい。
【0027】
次に、燃焼装置12について詳細に説明するが、この燃焼装置12を構成する各燃焼バーナ100A,100B,100C,100D,100Eは、ほぼ同様の構成をなしていることから、最上段に位置する燃焼バーナ100Aについてのみ説明する。
【0028】
図2は、図1に示す燃焼バーナ100Aを示す正面図である。図2に示すように、燃焼バーナ100Aは、アンモニア燃料バーナ110と、一対の微粉燃料バーナ(固体燃料バーナ)120と、一対の空気ノズル130と、を有する。アンモニア燃料バーナ110と微粉燃料バーナ120と空気ノズル130は、水平方向HDの同一位置において、鉛直方向VDに沿って配置される。アンモニア燃料バーナ110は、火炉11へアンモニア燃料を噴射して燃焼させる装置である。微粉燃料バーナ120は、火炉11へ微粉燃料を噴射して燃焼させる装置である。空気ノズル130は、火炉11へ燃焼用空気を供給する装置である。なお、燃焼バーナ100Aの構成はこれに限定されない。例えば、アンモニア燃料バーナ110と微粉燃料バーナ120と空気ノズル130の数は、それぞれ1本または3本以上設けてもよい。また、アンモニア燃料バーナ110と微粉燃料バーナ120と空気ノズル130の順番は、任意に設定してもよい。
【0029】
図3は、図1に示すボイラ10の燃焼バーナ100Aのアンモニア燃料バーナ110を示す横断面図である。燃焼バーナ100Aは、図3に示すように、火炉11を形成する4つの壁面11a,11b,11c,11dに取り付けられるアンモニア燃料バーナ110a,110b,110c,110dを有する。壁面11a,11b,11c,11dは、それぞれ鉛直方向に沿って設置されている。
【0030】
アンモニア燃料バーナ110a,110b,110c,110dには、アンモニア燃料供給管51から分岐した分岐管51A,51B,51C,51Dがそれぞれ連結されている。また、アンモニア燃料バーナ110a,110b,110c,110dには、空気ダクト37から分岐した分岐管37a,37b,37c,37dがそれぞれ連結されている。
【0031】
アンモニア燃料バーナ110aは、壁面(第1の壁面)11aに設置されるとともに壁面11aに隣接した位置に対向して配置される壁面(第2の壁面)11bおよび壁面(第3の壁面)11dのうち、壁面11bに近接した位置に設置される。アンモニア燃料バーナ110bは、壁面11bに設置されるとともに壁面11bに隣接した位置に対向して配置される壁面11aおよび壁面11cのうち、壁面11cに近接した位置に設置される。
【0032】
アンモニア燃料バーナ110cは、壁面11cに設置されるとともに壁面11cに隣接した位置に対向して配置される壁面11dおよび壁面11bのうち、壁面11dに近接した位置に設置される。アンモニア燃料バーナ110dは、壁面11dに設置されるとともに壁面11dに隣接した位置に対向して配置される壁面11aおよび壁面11cのうち、壁面11aに近接した位置に設置される。
【0033】
したがって、火炉11の各壁面にある各アンモニア燃料バーナ110a,110b,110c,110dは、火炉11に対して、アンモニア燃料を火炉11の中心Ctに対して僅かな偏角を設けて吹き込み、4つの火炎F1,F2,F3,F4を形成することができる。火炎F1,F2,F3,F4は、火炉11の上方から見て反時計回り方向に旋回する火炎旋回流となる。ここでは、反時計回り方向に旋回するものとしたが、時計回りに旋回する火炎旋回流となるように各アンモニア燃料バーナ110a,110b,110c,110dを配置してもよい。
【0034】
図4は、図1に示すボイラ10の燃焼バーナ100Aの微粉燃料バーナ120を示す横断面図である。燃焼バーナ100Aは、図4に示すように、火炉11を形成する4つの壁面11a,11b,11c,11dに取り付けられる微粉燃料バーナ120a,120b,120c,120dを有する。
【0035】
微粉燃料バーナ120a,120b,120c,120dには、微粉燃料供給管26から分岐した分岐管26a,26b,26c,26dがそれぞれ連結されている。また、微粉燃料バーナ120a,120b,120c,120dには、空気ダクト37から分岐した分岐管37a,37b,37c,37dがそれぞれ連結されている。
【0036】
微粉燃料バーナ120aは、壁面(第1の壁面)11aに設置されるとともに壁面11aに隣接した位置に対向して配置される壁面(第2の壁面)11bおよび壁面(第3の壁面)11dのうち、壁面11bに近接した位置に設置される。微粉燃料バーナ120bは、壁面11bに設置されるとともに壁面11bに隣接した位置に対向して配置される壁面11aおよび壁面11cのうち、壁面11cに近接した位置に設置される。
【0037】
微粉燃料バーナ120cは、壁面11cに設置されるとともに壁面11cに隣接した位置に対向して配置される壁面11dおよび壁面11bのうち、壁面11dに近接した位置に設置される。微粉燃料バーナ120dは、壁面11dに設置されるとともに壁面11dに隣接した位置に対向して配置される壁面11aおよび壁面11cのうち、壁面11aに近接した位置に設置される。
【0038】
したがって、火炉11の各壁面にある各微粉燃料バーナ120a,120b,120c,120dは、火炉11に対して、微粉燃料を火炉11の中心に対して僅かな偏角を設けて吹き込み、4つの火炎F1,F2,F3,F4を形成することができる。火炎F1,F2,F3,F4は、火炉11の上方から見て反時計回り方向に旋回する火炎旋回流となる。ここでは、反時計回り方向に旋回するものとしたが、時計回りに旋回する火炎旋回流となるように各微粉燃料バーナ120a,120b,120c,120dを配置してもよい。
【0039】
図3および図4に示すように、アンモニア燃料バーナ110aおよび微粉燃料バーナ120aは、火炉11を鉛直方向VDに沿って平面視した際に壁面11aの同一位置に配置されている。また、アンモニア燃料バーナ110bおよび微粉燃料バーナ120bは、火炉11を鉛直方向VDに沿って平面視した際に壁面11bの同一位置に配置されている。また、アンモニア燃料バーナ110cおよび微粉燃料バーナ120cは、火炉11を鉛直方向VDに沿って平面視した際に壁面11cの同一位置に配置されている。また、アンモニア燃料バーナ110dおよび微粉燃料バーナ120dは、火炉11を鉛直方向VDに沿って平面視した際に壁面11dの同一位置に配置されている。
【0040】
次に、図5から図8を参照して、本実施形態のボイラ10の制御方法について説明する。図5は、本開示の第1実施形態に係るボイラ10の制御方法を示すフローチャートである。図6は、ボイラ10の負荷の時間変化を示すグラフである。図7は、微粉燃料の供給量の時間変化を示すグラフである。図8は、アンモニア燃料の供給量の時間変化を示すグラフである。図7および図8は、アンモニア燃料の混焼率が20%である場合の微粉燃料の供給量とアンモニア燃料の供給量を示す。
【0041】
図5に示す各処理は、制御部60により実行される。本実施形態の制御部60は、ボイラ10の負荷を指令値に応じた負荷とするように、流量調整部31a,32a,33a,34a,35aおよび流量調整部51a,52a,53a,54a,55aを制御する。
【0042】
図5に示す処理は、制御部60がボイラ10の負荷を、現在の負荷L1から目標値L2に向けて増加させることに応じて開始される処理である。ここで、ボイラ10の負荷とは、例えば、ボイラ10を定格運転した際に生成される主蒸気の蒸発量に対する主蒸気の実蒸発量の割合をいう。また、ボイラ負荷の指標としては、主蒸気の蒸発量に代えて、主蒸気の温度、主蒸気の圧力、発電機出力等の他の指標を用いてもよい。
【0043】
図6に示すように、ボイラ10の負荷は、時刻t0から時刻t1まではL1で一定である。ボイラ10の負荷は、時刻t1において目標値L2が与えられてから、時刻t4まで規定変化率で増加する。図5のフローチャートの処理は、時刻t1で開始され、時刻t4で終了する。図6に示す比較例は、ボイラ10の負荷をL1からL2まで増加させる際に、微粉燃料のみを増加させた場合のボイラ負荷の実測値を示す。
【0044】
ステップS101で、制御部60は、アンモニア燃料の混焼率が20%以上であるかどうかを判定し、YESであればステップS102に処理を進め、NOであればステップS103に処理を進める。ここで、アンモニア燃料の混焼率とは、ボイラ10に供給される固体燃料の入熱量とアンモニア燃料の入熱量の合計した総入熱量に対するアンモニア燃料の入熱量の割合をいう。
【0045】
制御部60は、アンモニア燃料の混焼率を予め設定し、アンモニア燃料の混焼率が予め設定した値となるように、流量調整部31a,32a,33a,34a,35aおよび流量調整部51a,52a,53a,54a,55aを制御する。例えば、制御部60は、アンモニア燃料の混焼率が20%以上かつ80%以下となるように流量調整部31a,32a,33a,34a,35aおよび流量調整部51a,52a,53a,54a,55aを制御する。制御部60は、アンモニア燃料の混焼率が20%以上かつ50%以下となるように流量調整部31a,32a,33a,34a,35aおよび流量調整部51a,52a,53a,54a,55aを制御してもよい。
【0046】
ステップS102で、制御部60は、アンモニア燃料の供給量を規定変化率で増加させるよう流量調整部51a,52a,53a,54a,55aの開度を制御する。図8に示すように、制御部60は、時刻t1から時刻t2に至るまで、アンモニア燃料の供給量を時刻t1におけるQa1から規定変化率で漸次増加させる。
【0047】
制御部60がステップS102を実行するのは、アンモニア燃料の混焼率が20%以上の場合である。これは、アンモニア燃料の混焼率が20%未満である場合に、ボイラ10の負荷の増加にアンモニア燃料を用いてしまうと、アンモニア燃料の混焼率が予め設定した値から大きく逸脱するおそれがあるからである。
【0048】
ステップS103で、制御部60は、微粉燃料の供給量を規定変化率で増加させるよう流量調整部31a,32a,33a,34a,35aを制御する。制御部60がステップS103を実行するのは、アンモニア燃料の混焼率が20%以上の場合と20%未満の場合の双方である。図7に示すように、制御部60は、時刻t1から時刻t4に至るまで、微粉燃料の供給量を時刻t1におけるQc1から時刻t4におけるQc2まで規定変化率で漸次増加させる。
【0049】
ステップS104で、制御部60は、ボイラ10の負荷の現在時刻における指令値Ltと実測値Laとの差の絶対値が、所定値以上であるかどうかを判定し、YESであればステップS105に処理を進め、NOであればステップS106に処理を進める。ボイラ10の負荷を示す負荷指標として主蒸気の蒸発量を用いる場合、ボイラ10の負荷の実測値は、主蒸気の流量を計測する計測部(図示略)により計測する。
【0050】
ステップS105で、制御部60は、ボイラ10の負荷の指令値Ltと実測値Laとの差の絶対値が所定値Lpr以上で乖離しているため、アンモニア燃料の供給量の変化率を変更して実測値Laが指令値Ltに近づくようにする。制御部60は、流量調整部51a,52a,53a,54a,55aの開度を制御することにより、アンモニア燃料の供給量の変化率を変更する。
【0051】
制御部60は、実測値Laが指令値Ltよりも所定値Lpr以上高い場合、アンモニア燃料の供給量の変化率を低下させる。また、制御部60は、実測値Laが指令値Ltよりも所定値Lpr以上低い場合、アンモニア燃料の供給量の変化率を増加させる。図6では、時刻t2で実測値Laが指令値Ltよりも所定値Lpr以上低くなり、時刻t3で実測値Laが指令値Ltよりも所定値Lpr以上高くなった例を示す。
【0052】
図8に示すように、制御部60は、実測値Laが指令値Ltよりも所定値Lpr以上低くなる時刻t2から実測値Laが指令値Ltよりも所定値Lpr以上高くなる時刻t3に至るまで、アンモニア燃料の供給量の変化率を増加させる。また、制御部60は、時刻t3から時刻t4に至るまで、アンモニア燃料の供給量の変化率を減少させる。図8に示す比較例は、時刻t1から時刻t2までのアンモニア燃料の供給量の規定変化率を時刻t2から時刻t4まで維持した例である。
【0053】
ステップS106で、制御部60は、ボイラ10の負荷の指令値が目標値L2に到達したかどうかを判定し、YESであればステップS107に処理を進め、NOであればステップS104の処理に戻る。
【0054】
ステップS107で、制御部60は、ボイラ10の負荷の指令値が目標値L2に到達したことに応じて、アンモニア燃料バーナ110へ供給されるアンモニア燃料の供給量が規定の混焼率となる供給量Qa2を維持するように流量調整部51a,52a,53a,54a,55aの開度を制御する。
【0055】
ステップS108で、制御部60は、ボイラ10の負荷の指令値が目標値L2に到達したことに応じて、微粉燃料バーナ120へ供給される微粉燃料の供給量が規定の混焼率となるように流量調整部31a,32a,33a,34a,35aを制御する。制御部60は、ステップS108を実行した後、本フローチャートの処理を終了させる。
【0056】
以上のように、図5に示すフローチャートにおいて、制御部60は、ボイラ10の負荷をL1からL2まで上昇させる負荷上昇動作(負荷変化動作)を実行する際に、負荷上昇動作を開始する時刻t1から負荷上昇動作を停止する時刻t4までの動作期間において、アンモニア燃料バーナ110へ供給されるアンモニア燃料の供給量を漸次増加させるよう流量調整部51a,52a,53a,54a,55aの開度を制御する。負荷上昇動作は、ボイラ10の起動後の運転状態において実行される動作である。
【0057】
図5に示すフローチャートにおいて、制御部60は、ボイラ10の負荷をL1からL2まで上昇させる負荷上昇動作を実行する際に、負荷上昇動作を開始する時刻t1から負荷上昇動作を停止する時刻t4までの動作期間において、微粉燃料バーナ120へ供給される微粉燃料の供給量を漸次増加させるよう流量調整部31a,32a,33a,34a,35aを制御する。
【0058】
以上において、制御部60がボイラ10の負荷をL1からL2まで上昇させる負荷上昇動作(負荷変化動作)を実行する例について説明したが、制御部60は、ボイラ10の負荷をL2からL1まで降下させる負荷降下動作(負荷変化動作)を実行することも可能である。制御部60が負荷降下動作を実行する場合、ステップS102の「アンモニア燃料の供給量を規定変化率で増加」させる処理は、「アンモニア燃料の供給量を規定変化率で減少」させる処理となる。また、ステップS103の「微粉燃料の供給量を規定変化率で増加」させる処理は、「微粉燃料の供給量を規定変化率で減少」させる処理となる。
【0059】
以上で説明した本実施形態のボイラ10によれば、以下の作用および効果を奏する。
本実施形態のボイラ10によれば、ボイラ10の負荷を上昇させる負荷上昇動作を実行する際に、負荷上昇動作の開始から完了に至るまでの時刻t1から時刻t4の動作期間において、アンモニア燃料バーナ110へ供給されるアンモニア燃料の供給量が増加する。アンモニア燃料と固体燃料とを比較すると、アンモニア燃料(特に液体アンモニア)の方が供給量を変化させやすい特性がある。そのため、アンモニア燃料バーナ110へ供給されるアンモニア燃料の供給量を増加させることにより、固体燃料の供給量のみを増加させる場合に比べ、ボイラ10の負荷の変化への追従性を高めることができる。
【0060】
また、本実施形態のボイラ10によれば、ボイラ10の負荷を上昇させる負荷上昇動作を実行する際に、負荷上昇動作の開始から完了に至るまでの動作期間において、微粉燃料バーナ120へ供給される微粉燃料の供給量が増加する。アンモニア燃料と微粉燃料の双方の供給量を増加させるため、微粉燃料の供給量のみを増加させる場合に比べ、混焼率を比較的一定に維持しつつ、ボイラ10の負荷の変化への追従性を高めることができる。
【0061】
本実施形態のボイラ10によれば、アンモニア燃料の混焼率を20%以上かつ80%以下とすることにより、アンモニア燃料の混焼率を20%未満とする場合に比べ、二酸化炭素の生成量を抑制することができる。また、アンモニア燃料の混焼率が比較的高いため、ボイラ10の負荷を上昇させる負荷上昇動作を実行する際にアンモニア燃料を用いても、アンモニア燃料の混焼率を20%以上かつ80%以下の適切な範囲に維持することができる。
【0062】
〔第2実施形態〕
以下に、本開示の第1実施形態に係るボイラ10について、図面を参照して説明する。第2実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0063】
第1実施形態の制御部60は、ボイラ10の負荷を増大させる際に、微粉燃料バーナ120へ供給される微粉燃料の供給量を増加させるよう流量調整部31a,32a,33a,34a,35aを制御するものであった。それに対して、本実施形態の制御部60は、ボイラ10の負荷を増大させる際に、微粉燃料バーナ120へ供給される微粉燃料の供給量が一定となるように流量調整部31a,32a,33a,34a,35aを制御するものである。
【0064】
図9から図11を参照して、本実施形態のボイラ10の制御方法について説明する。図9は、本開示の第2実施形態に係るボイラ10の制御方法を示すフローチャートである。図10は、微粉燃料の供給量の時間変化を示すグラフである。図11は、アンモニア燃料の供給量の時間変化を示すグラフである。図10および図11は、アンモニア燃料の混焼率が20%である場合の微粉燃料の供給量とアンモニア燃料の供給量を示す。また、ボイラ10の負荷の時間変化は、図6に示すグラフと同様であるものとする。
【0065】
図9において、ステップS201,S202,S203,S204,S205,S208,S209については、第1実施形態の図6のステップS101,S102,S104,S105,S106,S107,S108と同様であるため、以下での説明を省略する。
【0066】
第1実施形態のボイラ10において、制御部60は、ステップS103で、微粉燃料の供給量を規定変化率で増加させるものであった。一方、本実施形態のボイラ10において、制御部60は、微粉燃料の供給量を規定変化率で増加させない。本実施形態のボイラ10において、制御部60は、ボイラ10の負荷を増大させる際に、微粉燃料の供給量が一定となるように流量調整部31a,32a,33a,34a,35aを制御する。
【0067】
ステップS206で、制御部60は、ボイラ10の負荷の指令値が目標値L2に到達してから一定時間が経過したことに応じて、アンモニア燃料バーナ110へ供給されるアンモニア燃料の供給量が規定変化率で減少するように流量調整部51a,52a,53a,54a,55aの開度を制御する。図11は、アンモニア燃料の供給量の時間変化を示すグラフである。
【0068】
図11に示すように、制御部60は、ボイラ10の負荷の指令値が目標値L2に到達する時刻t4から一定時間が経過した時刻t5から時刻t6に至るまでの期間、アンモニア燃料の供給量が規定変化率で減少するように流量調整部51a,52a,53a,54a,55aの開度を制御する。アンモニア燃料の供給量を減少させているのは、ボイラ10の負荷をL1からL2まで上昇させるのに用いたアンモニア燃料の供給量を減らして、設定された混焼率とするためである。
【0069】
ステップS207で、制御部60は、ボイラ10の負荷の指令値が目標値L2に到達してから一定時間が経過したことに応じて、微粉燃料バーナ120へ供給される微粉燃料の供給量が規定変化率で増加するように流量調整部31a,32a,33a,34a,35aを制御する。図10は、微粉燃料の供給量の時間変化を示すグラフである。
【0070】
図10に示すように、制御部60は、ボイラ10の負荷の指令値が目標値L2に到達する時刻t4から一定時間が経過した時刻t5から時刻t6に至るまでの期間、微粉燃料の供給量が規定変化率で増加するように流量調整部31a,32a,33a,34a,35aを制御する。微粉燃料の供給量を増加させているのは、時刻t5から時刻t6に至るまでの期間でアンモニア燃料の供給量を漸次減少させるのを相殺し、ボイラ10の負荷を一定に維持するためである。
【0071】
ステップS201でアンモニア燃料の混焼率が20%よりも小さい場合、ステップS210に移行し、制御部60は、微粉燃料の供給量を規定変化率で増加させるよう流量調整部31a,32a,33a,34a,35aを制御する。
【0072】
ステップS211で、制御部60は、ボイラ10の負荷の現在時刻における指令値Ltと実測値Laとの差の絶対値が、所定値Lpr以上であるかどうかを判定し、YESであればステップS212に処理を進め、NOであればステップS213に処理を進める。ボイラ10の負荷指標として主蒸気の蒸発量を用いる場合、ボイラ10の負荷の実測値は、主蒸気の流量を計測する計測部(図示略)により計測する。
【0073】
ステップS212で、制御部60は、ボイラ10の負荷の指令値Ltと実測値Laとが所定値Lpr以上で乖離しているため、微粉燃料の供給量の変化率を変更して実測値Laが指令値Ltに近づくようにする。制御部60は、流量調整部31a,32a,33a,34a,35aを制御することにより、微粉燃料の供給量の変化率を変更する。
【0074】
ステップS213で、制御部60は、ボイラ10の負荷の指令値が目標値L2に到達したかどうかを判定し、YESであればステップS214に処理を進め、NOであればステップS211の処理に戻る。
【0075】
ステップS214で、制御部60は、ボイラ10の負荷の指令値が目標値L2に到達してから一定時間が経過したことに応じて、アンモニア燃料バーナ110へ供給されるアンモニア燃料の供給量が規定変化率で増加するように流量調整部51a,52a,53a,54a,55aの開度を制御する。
【0076】
ステップS215で、制御部60は、ボイラ10の負荷の指令値が目標値L2に到達してから一定時間が経過したことに応じて、微粉燃料バーナ120へ供給される微粉燃料の供給量が規定変化率で減少するように流量調整部31a,32a,33a,34a,35aを制御する。アンモニア燃料の供給量を増加させる一方で微粉燃料の供給量を減少させているのは、ボイラ10の負荷をL1からL2まで上昇させるのに用いた微粉燃料の供給量を減らして、設定された混焼率とするためである。
【0077】
本実施形態のボイラ10によれば、ボイラ10の負荷を上昇させる負荷上昇動作を実行する際に、負荷上昇動作の開始から完了に至るまでの時刻t1から時刻t4の動作期間において、微粉燃料の供給量Qc1が一定となるため、アンモニア燃料のみでボイラ10の負荷を上昇させることとなる。そのため、微粉燃料の供給量を増加させる場合に比べ、ボイラ10への入熱量の変動を抑制してボイラ10の負荷の変化への追従性を高めることができる。
【0078】
以上において、制御部60がボイラ10の負荷をL1からL2まで上昇させる負荷上昇動作(負荷変化動作)を実行する例について説明したが、制御部60は、ボイラ10の負荷をL2からL1まで降下させる負荷降下動作(負荷変化動作)を実行することも可能である。制御部60が負荷降下動作を実行する場合、ステップS202およびステップS214の「アンモニア燃料の供給量を規定変化率で増加」させる処理は、「アンモニア燃料の供給量を規定変化率で減少」させる処理となる。また、ステップS210およびステップS207の「微粉燃料の供給量を規定変化率で増加」させる処理は、「微粉燃料の供給量を規定変化率で減少」させる処理となる。
【0079】
また、ステップS206の「アンモニア燃料の供給量を規定変化率で減少」させる処理は、「アンモニア燃料の供給量を規定変化率で増加」させる処理となる。また、ステップS215の「微粉燃料の供給量を規定変化率で減少」させる処理は、「微粉燃料の供給量を規定変化率で増加」させる処理となる。
【0080】
以上説明した各実施形態に記載のボイラ、発電設備、およびボイラの制御方法は、例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係るボイラは、火炉(11)へ固体燃料を噴射して燃焼させる固体燃料バーナ(120)と、前記固体燃料バーナに供給される前記固体燃料の供給量を調整する固体燃料調整部(31a~35a)と、前記火炉(11)へアンモニア燃料を噴射して燃焼させるアンモニア燃料バーナ(110)と、前記アンモニア燃料バーナに供給される前記アンモニア燃料の供給量を調整するアンモニア燃料調整部(51a~55a)と、前記固体燃料調整部および前記アンモニア燃料調整部を制御する制御部と、を備えるボイラであって、前記制御部は、前記ボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、前記負荷変化動作の開始から完了に至るまでの動作期間において、前記アンモニア燃料バーナへ供給される前記アンモニア燃料の供給量を変化させるよう前記アンモニア燃料調整部を制御する。
【0081】
本開示の第1態様に係るボイラによれば、ボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、負荷変化動作の開始から完了に至るまでの動作期間において、アンモニア燃料バーナへ供給されるアンモニア燃料の供給量が増加する。アンモニア燃料と固体燃料とを比較すると、アンモニア燃料(特に液体アンモニア)の方が入熱量を増加させやすい特性がある。そのため、アンモニア燃料バーナへ供給されるアンモニア燃料の供給量を変化させることにより、固体燃料の供給量のみを変化させる場合に比べ、ボイラの負荷変化速度を高めることができる。
【0082】
本開示の第2態様に係るボイラは、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記制御部は、前記ボイラの負荷を変化させる際に、前記固体燃料バーナへ供給される前記固体燃料の供給量を変化させるよう前記固体燃料調整部を制御する。
本開示の第2態様に係るボイラによれば、ボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、負荷変化動作の開始から完了に至るまでの動作期間において、固体燃料バーナへ供給される固体燃料の供給量が増加する。アンモニア燃料と固体燃料の双方の供給量を変化させるため、固体燃料の供給量のみを変化させる場合に比べ、ボイラの負荷変化速度を高めることができる。
【0083】
本開示の第3態様に係るボイラは、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記制御部は、前記ボイラの負荷を変化させる際に、前記固体燃料バーナへ供給される前記固体燃料の供給量が一定となるように前記固体燃料調整部を制御する。
本開示の第3態様に係るボイラによれば、ボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、負荷変化動作の開始から完了に至るまでの動作期間において、固体燃料の供給量が一定となるため、アンモニア燃料のみでボイラの負荷を変化させることとなる。そのため、固体燃料の供給量を変化させる場合に比べ、ボイラの負荷変化速度を高めることができる。
【0084】
本開示の第4態様に係るボイラは、第1態様から第3態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記制御部は、前記ボイラが運転状態となる所定の運転期間中に、前記固体燃料の入熱量と前記アンモニア燃料の入熱量の合計した総入熱量に対する前記アンモニア燃料の入熱量の割合が20%以上かつ80%以下となるように前記固体燃料調整部および前記アンモニア燃料調整部を制御する。
本開示の第4態様に係るボイラによれば、アンモニア燃料の混焼率を20%以上かつ80%以下とすることにより、アンモニア燃料の混焼率を20%未満とする場合に比べ、二酸化炭素の生成量を抑制することができる。また、アンモニア燃料の混焼率が比較的高いため、ボイラの負荷を上昇させる負荷上昇動作を実行する際にアンモニア燃料を用いても、アンモニア燃料の混焼率を20%以上かつ80%以下の適切な範囲に維持することができる。
【0085】
本開示の第5態様に係るボイラは、第3態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記制御部は、前記ボイラが運転状態となる所定の運転期間中に、前記固体燃料の入熱量と前記アンモニア燃料の入熱量の合計した総入熱量に対する前記アンモニア燃料の入熱量の割合が20%以上かつ50%以下となるように前記固体燃料調整部および前記アンモニア燃料調整部を制御する。
本開示の第5態様に係るボイラによれば、アンモニア燃料の混焼率を20%以上かつ50%以下とすることにより、アンモニア燃料の混焼率を20%未満とする場合に比べ、二酸化炭素の生成量を抑制することができる。また、アンモニア燃料の混焼率が比較的高いため、ボイラの負荷を上昇させる負荷上昇動作を実行する際にアンモニア燃料を用いても、アンモニア燃料の混焼率を20%以上かつ50%以下の適切な範囲に維持することができる。
【0086】
本開示の第6態様に係るボイラは、第1態様から3態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記負荷変化動作は、前記ボイラの起動後の運転状態において実行される動作である。
本開示の第6態様に係るボイラによれば、ボイラの起動後の運転状態において、ボイラの負荷変化速度を高めることができる。
【0087】
本開示の第7態様に係る発電設備は、第1態様から第3態様のいずれかのボイラと、前記ボイラで生成された蒸気により駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンに連結される発電機と、を備える。
本開示の第7態様に係る発電設備によれば、アンモニア燃料バーナへ供給されるアンモニア燃料の供給量を変化させることにより、固体燃料の供給量のみを変化させる場合に比べ、ボイラの負荷変化速度を高めることができる。
【0088】
本開示の第8態様に係るボイラの制御方法において、前記ボイラは、火炉内に固体燃料を用いて火炎を形成する固体燃料バーナと、前記固体燃料バーナに供給される前記固体燃料の供給量を調整する固体燃料調整部と、前記火炉内にアンモニア燃料を用いて火炎を形成するアンモニア燃料バーナと、前記アンモニア燃料バーナに供給される前記アンモニア燃料の供給量を調整するアンモニア燃料調整部と、を有し、前記固体燃料調整部および前記アンモニア燃料調整部を制御する制御工程を備え、前記制御工程は、前記ボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、前記負荷変化動作の開始から完了に至るまでの動作期間において、前記アンモニア燃料バーナへ供給される前記アンモニア燃料の供給量を変化させるよう前記アンモニア燃料調整部を制御する。
【0089】
本開示の第8態様に係るボイラの制御方法によれば、ボイラの負荷を変化させる負荷変化動作を実行する際に、負荷変化動作の開始から完了に至るまでの動作期間において、アンモニア燃料バーナへ供給されるアンモニア燃料の供給量が変化する。アンモニア燃料と固体燃料とを比較すると、アンモニア燃料(特に液体アンモニア)の方が入熱量を変化させやすい特性がある。そのため、アンモニア燃料バーナへ供給されるアンモニア燃料の供給量を変化させることにより、固体燃料の供給量のみを変化させる場合に比べ、ボイラの負荷変化速度を高めることができる。
【符号の説明】
【0090】
10 ボイラ
11 火炉
12 燃焼装置
13 煙道
26 微粉燃料供給管
31,32,33,34,35 粉砕機
31a,32a,33a,34a,35a 流量調整部(固体燃料調整部)
50 アンモニア燃料供給部
51,52,53,54,55 アンモニア燃料供給管
51a,52a,53a,54a,55a 流量調整部(アンモニア燃料調整部)
60 制御部
100A,100B,100C,100D,100E 燃焼バーナ
110 アンモニア燃料バーナ
120 微粉燃料バーナ
130 空気ノズル
Lt 指令値
L2 目標値
La 実測値
Lpr 所定値
VD 鉛直方向
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