(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025059788
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】防眩性ガラス板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20250403BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
G02B5/02 C
C03C19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170099
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】木下 沢泉
【テーマコード(参考)】
2H042
4G059
【Fターム(参考)】
2H042BA04
2H042BA20
4G059AA01
4G059AA08
4G059AC02
(57)【要約】
【課題】表示装置に用いたときに、表示面において外光の映り込みの抑制とぎらつきの抑制とを両立することができ、表示面の視認性に優れる、防眩性ガラス板を提供する。
【解決手段】防眩性を有する、ガラス板1であって、ガラス板1の主面1aにおける少なくとも一部に凹凸部2を有し、凹凸部2は、輪郭曲面の算術平均高さSaが、15nm以上、300nm以下であり、かつ、輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdqと、粗さ曲線要素の平均長さRSm1との比(Sdq/RSm1)が、0.05以上である、凹凸を有する、防眩性ガラス板1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防眩性を有する、ガラス板であって、
前記ガラス板の主面における少なくとも一部に凹凸部を有し、
前記凹凸部は、輪郭曲面の算術平均高さSaが、15nm以上、300nm以下であり、かつ、輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdqと、粗さ曲線要素の平均長さRSm1との比(Sdq/RSm1)が、0.05以上である、凹凸を有する、防眩性ガラス板。
【請求項2】
前記凹凸は、輪郭曲面のスキューネスSskが、負の値を有し、かつ輪郭曲面のクルトシスSkuが、3.6以上である、請求項1に記載の防眩性ガラス板。
【請求項3】
前記凹凸は、輪郭曲面の最大山高さSpと、輪郭曲面の最大谷深さSvが、Sp<Svの関係を満たす、請求項1又は2に記載の防眩性ガラス板。
【請求項4】
前記凹凸は、輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdqが、0.25以上である、請求項1又は2に記載の防眩性ガラス板。
【請求項5】
前記凹凸は、粗さ曲線要素の平均長さRSm1が、8.5μm以下である、請求項1又は2に記載の防眩性ガラス板。
【請求項6】
前記凹凸を第1の凹凸としたときに、
前記凹凸部は、前記第1の凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSm1よりも、粗さ曲線要素の平均長さが長い、第2の凹凸をさらに有し、
前記第2の凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSm2が、10μm以上である、請求項1又は2に記載の防眩性ガラス板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性ガラス板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイ等の表示装置においては、表示装置を構成するカバー部材の表面を粗面化し、表示面における背景の映り込みなどを抑制することにより、表示面の視認性を向上させる試みがなされている。もっとも、カバー部材の表面を粗面化すると、色味が白っぽくなったり、スパークルと呼ばれるぎらつきが生じたりすることから、これらの問題を解決する手法が検討されている。
【0003】
下記の特許文献1には、少なくとも1つの防眩表面を有する透明ガラス板が開示されている。特許文献1には、上記防眩表面が、40μmから640μmの横方向の空間的周期の範囲で測定された300nmまでの第1のRMS表面粗さR長、20μm未満の横方向の空間的周期で測定された第2のRMS表面粗さR短、及び表面波長フィルタリングなしに測定された60nmから600nmの範囲の第3のRMS表面粗さR全を有し、比(R長/R短)が3.9未満であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表示装置が高精細なものであるほど、カバー部材の表示面を粗面化することにより生じるスパークルが目立ち易く、表示面の視認性が低下し易くなる。もっとも、カバー部材の表示面における粗面化の程度を小さくすると、スパークルの抑制には効果的である一方、表示面における外光の映り込みが生じ易く、防眩性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、表示装置に用いたときに、表示面において外光の映り込みの抑制とぎらつきの抑制とを両立することができ、表示面の視認性に優れる、防眩性ガラス板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する防眩性ガラス板の各態様について説明する。
【0008】
本発明の態様1に係る防眩性ガラス板は、防眩性を有する、ガラス板であって、前記ガラス板の主面における少なくとも一部に凹凸部を有し、前記凹凸部は、輪郭曲面の算術平均高さSaが、15nm以上、300nm以下であり、かつ、輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdqと、粗さ曲線要素の平均長さRSm1との比(Sdq/RSm1)が、0.05以上である、凹凸を有することを特徴としている。
【0009】
態様2の防眩性ガラス板は、態様1において、前記凹凸は、輪郭曲面のスキューネスSskが、負の値を有し、かつ輪郭曲面のクルトシスSkuが、3.6以上であることが好ましい。
【0010】
態様3の防眩性ガラス板は、態様1又は態様2において、前記凹凸は、輪郭曲面の最大山高さSpと、輪郭曲面の最大谷深さSvが、Sp<Svの関係を満たすことが好ましい。
【0011】
態様4の防眩性ガラス板は、態様1~態様3のいずれか1つの態様において、前記凹凸は、輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdqが、0.25以上であることが好ましい。
【0012】
態様5の防眩性ガラス板は、態様1~態様4のいずれか1つの態様において、前記凹凸は、粗さ曲線要素の平均長さRSm1が、8.5μm以下であることが好ましい。
【0013】
態様6の防眩性ガラス板は、態様1~態様5のいずれか1つの態様において、前記凹凸を第1の凹凸としたときに、前記凹凸部は、前記第1の凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSm1よりも、粗さ曲線要素の平均長さが長い、第2の凹凸をさらに有し、前記第2の凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSm2が、10μm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表示装置に用いたときに、表示面において外光の映り込みの抑制とぎらつきの抑制とを両立することができ、表示面の視認性に優れる、防眩性ガラス板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る防眩性ガラス板を示す模式的断面図である。
【
図2】変形例の防眩性ガラス板を示す模式的断面図である。
【
図3】凹凸部の変形例における測定断面曲線を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0017】
(防眩性ガラス板)
図1は、本発明の一実施形態に係る防眩性ガラス板を示す模式的断面図である。
【0018】
防眩性ガラス板1は、外光の映り込み等を抑制する、いわゆる防眩性の付与されたガラス板である、本実施形態において、防眩性ガラス板1は、平板状の形状かつ矩形の形状を有する。もっとも、防眩性ガラス板1の形状は、特に限定されず、円形又は多角形の輪郭からなる平板状や、平板状のものを全体的に湾曲させた形状、あるいは球面、非球面のレンズ形状等であってもよい。なお、防眩性ガラス板1の厚みは均一であることが望ましいが、防眩性ガラス板1は、場所によって厚みが変化した形状を有していてもよい。
【0019】
防眩性ガラス板1の材質は、特に限定されないが、例えば、アルミノシリケートガラス、アルカリ含有アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、リチウムシリケートガラス、ソーダライムシリケートガラス等のシリケート系ガラス等が挙げられる。ここで、シリケート系ガラスとは、ガラス組成としてSiO2を10質量%以上含有するガラスのことである。
【0020】
防眩性ガラス板1は、対向している第1の主面1a及び第2の主面1bを有する。第1の主面1a及び第2の主面1bは、防眩性ガラス板1の表面である。本実施形態では、防眩性ガラス板1の第1の主面1aにおける一部に、凹凸部2が設けられている。凹凸部2は、例えば、ディスプレイ等の表示装置における表示面である。
【0021】
防眩性ガラス板1の第1の主面1aには、凹凸部2を設けるための加工がなされていない非加工部3も設けられている。なお、本実施形態では、防眩性ガラス板1の第2の主面1b全体も、凹凸部2を設けるための加工がなされていない非加工部3である。もっとも、本発明においては、防眩性ガラス板1の第2の主面1bにも凹凸部2が設けられていてもよい。すなわち、防眩性ガラス板1の両側の主面1a、1bに凹凸部2が設けられていてもよい。
【0022】
本発明においては、防眩性ガラス板1の第1の主面1aにおける少なくとも一部に凹凸部2が設けられていればよい。凹凸部2は、防眩性ガラス板1の第1の主面1aにおける1%以上の領域に設けられていることが好ましく、30%以上の領域に設けられていることがより好ましく、50%以上の領域に設けられていることがさらに好ましい。
【0023】
図2は、変形例の防眩性ガラス板を示す模式的断面図である。
図2に示す防眩性ガラス板10のように、凹凸部2は、防眩性ガラス板10の第1の主面1aにおける全面に設けられていてもよい。以下、変形例の防眩性ガラス板10も総称して、防眩性ガラス板1と称することとする。
【0024】
防眩性ガラス板1の厚みは、特に限定されず、例えば、30μm以上、5mm以下とすることができる。
【0025】
本実施形態において、防眩性ガラス板1の凹凸部2は、輪郭曲面の算術平均高さSaが、15nm以上、300nm以下であり、かつ、輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdqと、粗さ曲線要素の平均長さRSm1との比(Sdq/RSm1)が、0.05以上である、凹凸を有している。
【0026】
なお、「輪郭曲面の算術平均高さSa」は、ISO 25178によって規定されるパラメータであって、凹凸の断面形状を示す測定断面曲線を面に拡張したパラメータである。具体的には、輪郭曲面の算術平均高さSaは、所定の三次元領域における表面の平均面に対する各点の高さZnの絶対値の平均(Sa=(Σ|Zn|)/n)から求めることができる。なお、以下、「輪郭曲面の算術平均高さSa」を、単に「算術平均高さSa」と称する場合があるものとする。
【0027】
「輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdq」は、ISO 25178によって規定されるパラメータであって、凹凸の断面形状を示す測定断面曲線を面に拡張したパラメータである。具体的には、輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdqは、定義領域のすべての点における傾斜の二乗平均平方根により算出されるパラメータである。なお、以下、「輪郭曲面の二乗平均平方根勾配Sdq」を、単に「二乗平均平方根勾配Sdq」と称する場合があるものとする。
【0028】
「粗さ曲線要素の平均長さRSm1」は、JISB0601:2013によって規定される「粗さ曲線要素の平均長さRSm」のことであり、後述の第2の凹凸の「粗さ曲線要素の平均長さRSm2」と区別するために、「粗さ曲線要素の平均長さRSm1」と称している。従って、「粗さ曲線要素の平均長さRSm1」は、凹凸の断面形状を示す輪郭曲線において、互いに隣り合う凹部と凸部との平均ピッチを表すパラメータである。なお、以下、「粗さ曲線要素の平均長さRSm1」を、単に「平均長さRSm1」と称する場合があるものとする。
【0029】
本実施形態の防眩性ガラス板1は、上記の構成を備えるので、ディスプレイ等の表示装置に用いたときに、表示面において外光の映り込みの抑制とぎらつきの抑制とを両立することができ、表示面の視認性を向上させることができる。
【0030】
従来、表示装置が高精細なものであるほど、カバー部材であるガラス板の表示面を粗面化することにより生じるスパークルが目立ち易く、表示面の視認性が低下し易くなるという問題があった。もっとも、カバー部材であるガラス板の表示面における粗面化の程度を小さくすると、スパークルの抑制には効果的である一方、表示面における外光の映り込みが生じ易く、防眩性が低下するという問題があった。
【0031】
これに対して、本発明者らは、表示装置のカバー部材に用いられるガラス板の凹凸部における算術平均高さSaと、上述した比(Sdq/RSm1)に着目し、ガラス板の凹凸部における算術平均高さSa及び上記比(Sdq/RSm1)を特定の範囲とすることにより、表示面において外光の映り込みの抑制とぎらつきの抑制とを両立することができ、表示面の視認性を向上させることができることを見出した。
【0032】
より具体的には、本実施形態の防眩性ガラス板1は、凹凸部2を構成する凹凸において、算術平均高さSaを、15nm以上とし、かつ、上述した比(Sdq/RSm1)を0.05以上とすることにより、凹凸のピッチが細かく、かつ凹凸の勾配が大きい形状とすることができる。そのため、本実施形態の防眩性ガラス板1は、表示装置に用いたときに、表示面において外光の映り込みの抑制とぎらつきの抑制とを両立することができ、表示面の視認性を向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態の防眩性ガラス板1は、凹凸部2を構成する凹凸において、算術平均高さSaを、300nm以下とすることにより、ヘイズを小さくすることができる。従って、本実施形態の防眩性ガラス板1では、この点からも、表示面の視認性を向上させることができる。
【0034】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の算術平均高さSaは、15nm以上、好ましくは18nm以上、より好ましくは22nm以上であり、300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。
【0035】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の算術平均高さSaが上記下限値以上である場合、防眩性ガラス板1を表示装置に用いたときに、表示面において外光の映り込みをより一層抑制することができ、表示面の視認性をより一層向上させることができる。また、防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の算術平均高さSaが上記上限値以下である場合、防眩性ガラス板1のヘイズをより小さくすることができ、防眩性ガラス板1を表示装置に用いたときに、表示面の視認性をより一層向上させることができる。
【0036】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の二乗平均平方根勾配Sdqと平均長さRSm1との比(Sdq/RSm1)は、0.05以上、好ましくは0.07以上、より好ましくは0.08以上であり、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.40以下、さらに好ましくは0.30以下である。
【0037】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の上記比(Sdq/RSm1)が上記下限値以上である場合、防眩性ガラス板1を表示装置に用いたときに、表示面において外光の映り込みの抑制とぎらつきの抑制とをより高いレベルで両立することができ、表示面の視認性をより一層向上させることができる。また、防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の上記比(Sdq/RSm1)の上限値は、特に限定されないが、防眩性ガラス板1の凹凸部2における摩耗や汚れの付着をより生じ難くしたり、防眩性ガラス板1をより一層製造し易くしたりする観点からは、上記上限値以下であることが望ましい。
【0038】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の二乗平均平方根勾配Sdqは、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.28以上、さらに好ましくは0.30以上であり、好ましくは1.00以下である。
【0039】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の二乗平均平方根勾配Sdqが上記下限値以上である場合、防眩性ガラス板1を表示装置に用いたときに、表示面において外光の映り込みの抑制とぎらつきの抑制とをより高いレベルで両立することができ、表示面の視認性をより一層向上させることができる。防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の二乗平均平方根勾配Sdqの上限値は、特に限定されないが、防眩性ガラス板1の凹凸部2における摩耗や汚れの付着をより生じ難くしたり、防眩性ガラス板1をより一層製造し易くしたりする観点からは、上記上限値以下であることが望ましい。
【0040】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の平均長さRSm1は、好ましくは1.0以上、より好ましくは、2.0μm以上、好ましくは8.5μm以下、より好ましくは8.0μm以下であり、さらに好ましくは7.0μm以下である。
【0041】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の平均長さRSm1が上記上限値以下である場合、防眩性ガラス板1を表示装置に用いたときに、表示面においてぎらつきをより一層抑制することができ、表示面の視認性をより一層向上させることができる。防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の平均長さRSm1の下限値は、特に限定されないが、防眩性ガラス板1をより一層製造し易くする観点からは、上記下限値以上であることが望ましい。
【0042】
本実施形態においては、防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の輪郭曲面のスキューネスSsk(以下、単に「スキューネスSsk」と称する場合がある)が、負の値を有し、かつ輪郭曲面のクルトシスSku(以下、単に「クルトシスSku」と称する場合がある)が、3.6以上であることが好ましい。この場合、防眩性ガラス板1を表示装置に用いたときに、表示面において外光の映り込みの抑制とぎらつきの抑制とをより高いレベルで両立することができ、表示面の視認性をより一層向上させることができる。
【0043】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸のスキューネスSskは、好ましくは-10以上、より好ましくは-5以上であり、好ましくは0未満、より好ましくは-0.1以下である。また、防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸のクルトシスSkuは、好ましくは3.6以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは25以下、より好ましくは20以下である。
【0044】
本実施形態においては、防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の輪郭曲面の最大山高さSp(以下、単に「最大山高さSp」と称する場合がある)と、輪郭曲面の最大谷深さSv(以下、単に「最大谷深さSv」と称する場合がある)とが、Sp<Svの関係を満たしていることが好ましい。この場合、防眩性ガラス板1を表示装置に用いたときに、表示面において外光の映り込みの抑制とぎらつきの抑制とをより高いレベルで両立することができ、表示面の視認性をより一層向上させることができる。
【0045】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の最大山高さSpは、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、好ましくは1500nm以下、より好ましくは1000nm以下である。また、防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の最大谷深さSvは、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上であり、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1500nm以下である。
【0046】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の輪郭曲面の最大高さSz(以下、単に「最大高さSz」と称する場合がある)は、好ましくは150nm以上、より好ましくは250nm以上、さらに好ましくは400nm以上、さらにより好ましくは1000nm以上であり、好ましくは3500nm以下、より好ましくは2500nm以下である。この場合、防眩性ガラス板1を表示装置に用いたときに、表示面において外光の映り込みの抑制とぎらつきの抑制とをより高いレベルで両立することができ、表示面の視認性をより一層向上させることができる。
【0047】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸のスキューネスSsk、クルトシスSku、最大山高さSp、最大谷深さSv、及び最大高さSzは、ISO 25178に準拠して測定することができる。
【0048】
なお、防眩性ガラス板1の凹凸部2は、上述した平均長さRSm1を有する凹凸を第1の凹凸としたときに、第1の凹凸より粗さ曲線要素の平均長さRSmの大きい、第2の凹凸をさらに有していてもよい。より具体的には、
図3に示すように、凹凸部2の測定断面曲線において、微小凹凸である第1の凹凸と、大きな凹凸である第2の凹凸を有していてもよい。この場合、防眩性ガラス板1の凹凸部2の触り心地や、防眩性ガラス板1を後述するペン入力装置に用いた場合のペンによる書き心地をより一層向上させることができる。
【0049】
第2の凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSm2は、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上、さらにより好ましくは300μm以上であり、好ましくは3000μm以下、より好ましくは2000μm以下、さらに好ましくは1000μm以下である。
【0050】
「粗さ曲線要素の平均長さRSm2」は、凹凸部2の断面形状を示す輪郭曲線から長波長成分を遮断するための高域フィルタλcのカットオフ値を第1の凹凸の平均長さRSm1の5倍の値に設定し、かつ凹凸部2の断面形状を示す輪郭曲線から短波長成分を遮断するための低域フィルタλsのカットオフ値を27μmに設定した場合に得られる値である。なお、第2の凹凸の高域フィルタλcのカットオフ値は、凹凸部2をフィルタ無しで仮測定したときに得られる仮の粗さ曲線要素の平均長さRSmの値を5倍にした値を採用することができる。「粗さ曲線要素の平均長さRSm2」は、第1の凹凸の平均長さRSm1と同様にJISB0601:2013に準拠して測定することができる。なお、以下、「粗さ曲線要素の平均長さRSm2」を、単に「平均長さRSm2」と称する場合があるものとする。
【0051】
第2の凹凸の最大高さ粗さRzは、好ましくは5nm以上、より好ましくは15nm以上、好ましくは1500nm以下、より好ましくは1000nm以下である。なお、第2の凹凸の最大高さ粗さRzは、平均長さRSm2と同じ条件で、JISB0601:2013に準拠して測定することができる。
【0052】
防眩性ガラス板1のヘイズは、380nm~780nmの波長域において、好ましくは3%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは15%以上であり、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。この場合、防眩性ガラス板1を表示装置に用いたときに、表示面の視認性をより一層向上させることができる。
【0053】
(防眩性ガラス板の製造方法)
次に、防眩性ガラス板1の製造方法の一例について説明する。
【0054】
防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸(第1の凹凸)は、例えば、ウェットブラスト処理等の表面処理を施すことにより形成することができる。
【0055】
ウェットブラスト処理は、アルミナなどの固体粒子にて構成される砥粒と、水などの液体とを均一に撹拌してスラリーとしたものを、圧縮エアを用いて噴射ノズル(丸ノズル等のノズル)からワーク(元ガラス板等)に対して高速で噴射することにより、ワークに微細な凹凸を形成する処理である。
【0056】
ウェットブラスト処理においては、高速に噴射されたスラリーがワークに衝突した際に、スラリー内の砥粒がワークの表面を削ったり、叩いたり、こすったりすることにより、ワークの表面に微細な凹凸が形成されることとなる。
【0057】
この場合、ワークに噴射された砥粒や、砥粒により削られたワークの破片は、ワークに噴射された液体によって洗い流されるため、ワークに残留する粒子が少なくなる。
【0058】
なお、ウェットブラスト処理においては、スラリーをワークに噴射した場合、液体が砥粒をワークまで運ぶため、乾式サンドブラスト処理に比べて微細な砥粒を使用しやすくなるとともに、砥粒がワークに衝突する際の衝撃が小さくなり、精密な加工を行うことが可能である。また、ウェットブラスト処理においては、最大山高さSp<最大谷深さSvとなるような凹凸を形成し易いという特徴もある。
【0059】
ウェットブラスト処理において、砥粒の粒度は、例えば、平均粒径0.5μm以上、50μm以下とすることができる。ノズルの走査ピッチ(走査間隔)は、例えば、10μm以上、3000μm以下とすることができる。ノズルの走査回数(同一箇所を走査する回数)は、例えば、1回以上、5回以下とすることができる。スラリーの噴出圧力(処理圧力)は、例えば、0.1MPa以上、0.35MPa以下とすることができる。また、ノズルの走査速度(移動速度)は、例えば、0.1mm/s以上、80mm/s以下とすることができる。
【0060】
なお、ウェットブラスト処理における砥粒の粒度を大きくしたり、処理圧力を大きくしたり、ノズルの走査速度を遅くしたり、ノズルの走査回数を増やしたりすることにより、防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の算術平均高さSa、最大山高さSp、最大谷深さSv、最大高さSzを大きくすることができる。凹凸の二乗平均平方根勾配Sdq(比(Sdq/RSm1))については、凹凸の二乗平均平方根勾配Sdqと凹凸の平均長さRSm1の挙動が砥粒の粒度、処理圧力、ノズルの走査速度、ノズルの走査回数に対してトレードオフの関係がある。従って、それぞれのバランスを図ることにより、凹凸の二乗平均平方根勾配Sdq(比(Sdq/RSm1))の大きさを調整することができる。
【0061】
また、ウェットブラスト処理における砥粒の粒度を小さくしたり、処理圧力を小さくしたり、ノズルの走査速度を速くしたりすることにより、防眩性ガラス板1の凹凸部2における凹凸の平均長さRSm1、凹凸の二乗平均平方根勾配Sdqを小さくすることができる。
【0062】
また、ウェットブラスト処理における処理圧力を大きくしつつ、砥粒の粒度を小さくしたり、砥粒の粒度を大きくしつつ、ノズルの走査速度を速くしたりすることにより、比(Sdq/RSm1)を大きくすることができる。
【0063】
なお、凹凸部2に上述した第2の凹凸を設ける場合、第2の凹凸は、例えば、第1の凹凸を形成するためのウェットブラスト処理において、丸ノズルのようなノズルの走査ピッチ(走査間隔)を大きくすることにより形成することができる。この場合、ノズルによる加工痕が干渉しない領域ができるため、微小な第1の凹凸に加えて、ノズルの走査間隔に一致する間隔の大きな第2の凹凸が形成される。
【0064】
凹凸部2に第1の凹凸及び第2の凹凸の双方を形成する場合、ノズルの走査間隔は、例えば、10μm以上、3000μm以下とすることができる。他方、第1の凹凸のみを形成する場合、ノズルの走査間隔は、例えば、1μm以上、300μm以下としたり、ノズルの口径を1mm以上に大きくしたり、ノズルの噴射間隔を3mm以上と広くしたりすることができる。
【0065】
なお、ウェットブラスト処理における処理圧力を大きくしたり、砥粒の粒度を大きくしたりすることにより、第2の凹凸における最大高さ粗さRzを大きくすることができる。
【0066】
また、ウェットブラスト処理におけるノズルの走査間隔を大きくすることにより、粗さ曲線要素の平均長さRSm2を大きくすることができる。
【0067】
(他の実施形態)
防眩性ガラス板1の第1の主面1a上には、反射防止膜が設けられていてもよい。反射防止膜は、防眩性ガラス板1の第2の主面1b上に設けられていてもよいし、防眩性ガラス板1の第1の主面1a及び第2の主面1bの双方の上に設けられていてもよい。
【0068】
反射防止膜は、誘電体多層膜であることが好ましい。この場合、防眩性ガラス板1を表示装置に用いたときに、表示面において画像鮮明度をより一層向上させることができる。誘電体多層膜としては、例えば、相対的に屈折率が高い高屈折率膜と、相対的に屈折率が低い低屈折率膜とを含む、多層膜を用いることができる。誘電体多層膜は、相対的に屈折率が高い高屈折率膜と、相対的に屈折率が低い低屈折率膜とが、交互に積層された多層膜であることが好ましい。
【0069】
高屈折率膜の材料としては、例えば、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等が挙げられる。
【0070】
低屈折率膜の材料としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、フッ化マグネシウム等が挙げられる。
【0071】
反射防止膜を構成する各層の膜厚は、例えば、1nm以上、500nm以下とすることができ、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。
【0072】
反射防止膜を構成する層の総数は、特に限定されない。反射防止膜を構成する層の総数は、好ましくは2層以上、好ましくは8層以下である。このような範囲内にすることにより、効果的で、かつ簡易に形成可能な膜にすることができる。
【0073】
反射防止膜の全体の膜厚は、特に限定されないが、例えば、50nm以上、1000nm以下とすることができ、好ましくは75nm以上、より好ましくは100nm以上であり、好ましくは750nm以下、より好ましくは500nm以下である。
【0074】
反射防止膜は、例えば、スパッタリング法、CVD法、又は真空蒸着法等により形成することができる。
【0075】
防眩性ガラス板1の第1の主面1a上には、防汚膜、加飾フィルム、あるいは加飾コーティング等の他の膜が設けられていてもよい。他の膜は、防眩性ガラス板1の第2の主面1b上に設けられていてもよいし、防眩性ガラス板1の第1の主面1a及び第2の主面1bの双方の上に設けられていてもよい。
【0076】
防汚膜は、指紋の付着を防止し、撥水性、撥油性を付与するための膜である。防汚膜は、主鎖中にケイ素を含む含フッ素重合体を含むことが好ましい。含フッ素重合体としては、例えば、主鎖中に、-Si-O-Si-ユニットを有し、かつ、フッ素を含む撥水性の官能基を側鎖に有する重合体を用いることができる。含フッ素重合体は、例えば、シラノールの脱水縮合することにより合成することができる。
【0077】
加飾フィルムや加飾コーティングとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ウレタン、フッ素系樹脂などの樹脂や、金属箔、又はこれらの積層体等が挙げられる。
【0078】
本実施形態の防眩性ガラス板1は、電子機器のディスプレイ等の表示装置の前面に設けられるカバー部材に好適に用いることができる。この場合、防眩性ガラス板1は、入力ペンや指先などの入力手段を用いて文字及び図形等の入力操作(ポインティング操作)を行うことができるペン入力装置に用いてもよい。あるいは、防眩性ガラス板1は、医療用ディスプレイ、ゲーム機器用ディスプレイ、デジタルサイネージ、照明等に用いてもよい。
【0079】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0080】
(実施例1~8)
まず、ガラス板として、厚さが0.55mmのアルカリ含有アルミノシリケートガラス板を用意した。次に、用意したガラス板の一方側主面に、ウェットブラスト処理を施すことにより、凹凸を形成し、防眩性ガラス板(ガラス板)を得た。
【0081】
なお、ウェットブラスト処理に際しては、まず、粒度が♯4000~♯8000のアルミナからなる砥粒3wt%と水96.8wt%と分散剤0.2wt%とを均一に撹拌することにより、スラリーを調整した。次に、ガラス板を略垂直姿勢の状態で配置し、ガラス板の一方側主面全体に対して、丸ノズルを走査速度0.5mm/s~30.0mm/sにて移動させながら走査させ、処理圧力0.20MPa~0.35MPaのエアを用いて、当該丸ノズルから調製したスラリーを噴射することにより、ガラス板にウェットブラスト処理を施した。なお、丸ノズルは、スラリーの噴射口の断面積をガラス板の表面の面積に対して小さく絞り、スラリーをガラス板の表面に対して部分的に噴射するノズルである。また、実施例1~5では、丸ノズルの走査間隔を350μmとしたため、加工領域の重なりが大きくなることから、第2の凹凸は形成されなかった。一方、実施例6~8では、丸ノズルの走査間隔を500μm~2000μmとし、第1の凹凸及び第2の凹凸を形成した。実施例1~8におけるウェットブラスト(WB)処理の条件は下記の表1に示す通りである。
【0082】
【0083】
(比較例1~7)
まず、粒度が♯320~♯8000のアルミナからなる砥粒10vol%~13vol%と、純水とを均一に撹拌することにより、スラリーを調製した。次に、ガラス板(厚さが0.55mmのアルカリ含有アルミノシリケートガラス板)の一方側主面全体に対して、走査速度5.0mm/s~50.0mm/sにてノズルを移動させながら走査させ、処理圧力0.10MPa~0.32MPaのエアを用いて、当該ノズルから調製したスラリーを噴射することにより、ガラス板の一方側主面にウェットブラスト処理を施した。これにより、ガラス板の一方側主面に予備凹凸を形成した。
【0084】
ガラス板の一方側主面に予備凹凸が形成されたガラス板を、2.0wt%のフッ化水素酸(フッ酸)、0wt%~50.0wt%の硫酸、及び48.0wt%~98.0wt%の純水からなるエッチング液に浸漬させ、液温30℃で10分間~30分間放置することにより、エッチング処理を行った。これにより、予備凹凸から最終的な凹凸を形成し、ガラス板を得た。比較例1~7におけるウェットブラスト(WB)処理及びエッチング処理の条件は下記の表2に示す通りである。
【0085】
【0086】
(比較例8)
厚さが0.55mmのアルカリ含有アルミノシリケートガラス板に処理を施さずに、そのままガラス板として用いた。
【0087】
[評価方法]
(表面粗さの評価)
実施例1~8及び比較例1~7で得られたガラス板について、各処理を施した一方側主面における表面粗さのパラメータを測定した。また、比較例8のガラス板について、一方側主面(未処理)における表面粗さのパラメータを測定した。
【0088】
実施例1~8及び比較例1~8の凹凸(第1の凹凸)に関しては、測定対象とする表面粗さのパラメータとして、算術平均高さSa、最大高さSz、スキューネスSsk、クルトシスSku、最大山高さSp、最大谷深さSv、二乗平均平方根勾配Sdq、平均長さRSm1を、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、「VK-X250」)を用いて測定した。平均長さRSm1は、JISB0601:2013に準拠して測定した。それ以外の表面粗さのパラメータは、ISO 25178に準拠して測定した。また、各表面粗さのパラメータの測定は、測定エリア32μm×24μmの領域に対して行い、取得データ数を1024×768ピクセルとし、基準長さが測定エリアの1/5となるように実施した。
【0089】
実施例6~8の第2の凹凸に関しては、測定対象とする表面粗さのパラメータとして、平均長さRSm2及び最大高さ粗さRzを、白色干渉顕微鏡(Zygo社製、「New View 7300」)を用いて測定した。平均長さRSm2及び最大高さ粗さRzは、JISB0601:2013に準拠して測定した。また、第2の凹凸における各表面粗さのパラメータの測定は、対物レンズ2.5倍、ズームレンズ0.5倍を使用し、測定エリア5664μm×4248μmの領域に対して行い、カメラ画素数が640×480、積算回数が1回となるように実施した。また、第2の凹凸における各表面粗さのパラメータの測定に際し、高域フィルタλcのカットオフ値λc1は、平均長さRSm1の間隔の5倍に設定し、低域フィルタλsのカットオフ値λs1は、27μmに設定した。
【0090】
(ヘイズの評価)
実施例1~8及び比較例1~8のガラス板について、ヘイズの評価を行った。ヘイズの測定は、380nm~780nmの波長域において行った。ヘイズの測定は、紫外可視近赤外分析光度計(島津製作所社製、品番「UV-3100PC」)を用い、JIS K7361-1-1997に準拠して測定した。
【0091】
(反射率の評価)
実施例1~8及び比較例1~8のガラス板について、反射率の評価を行った。反射率の評価に際し、実施例1~8及び比較例1~7のガラス板では、各処理を施した一方側主面とは反対側の主面に、メンディングテープ(スリーエムジャパン社製、品番「810-3-24」)を気泡が入らないように貼り付け、メンディングテープが貼り付けられていない主面(各処理を施した一方側主面)の反射率を測定した。なお、比較例8のガラス板では、一方側主面にメンディングテープ(スリーエムジャパン社製、品番「810-3-24」)を気泡が入らないように貼り付け、メンディングテープが貼り付けられていない主面(他方側主面)の反射率を測定した。なお、反射率は、380nm~780nmの波長域の平均から算出した。また、反射率は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、品番「V-780」)を用いて測定した。
【0092】
(ぎらつきの評価)
実施例1~8及び比較例1~8のガラス板について、ぎらつき(スパークル)の評価を行った。ぎらつきの評価は、スマートフォン(Apple社製、iPhone(登録商標)13)上に、実施例1~8及び比較例1~8のガラス板を載置し、スマートフォンに全面緑色の映像を表示した際のガラス板におけるぎらつきを目視で確認し、下記評価基準で評価することにより行った。なお、実施例1~8及び比較例1~7のガラス板は、各処理を施した一方側主面が表側になるように載置した。一方、比較例8のガラス板は、一方側主面(未処理)が表側になるように載置した。なお、ぎらつきの評価基準の数値が小さいほど、結果が良好であることを示している。
【0093】
<ぎらつきの評価基準>
1:ぎらつきを確認できない
2:ぎらつきをわずかに確認できる
3:ぎらつきをやや確認できる
4:ぎらつきをある程度確認できる
5:ぎらつきをしっかりと確認できる
【0094】
(視認性の評価)
実施例1~8及び比較例1~8のガラス板について、視認性の評価を行った。視認性の評価は、スマートフォン(Apple社製、iPhone(登録商標)13)上に、実施例1~8及び比較例1~8のガラス板を載置し、スマートフォンの画面にテキストを表示した際に、ぎらつき、映り込み等の程度に基づき視認性に優れるかを下記評価基準で評価することにより行った。なお、視認性の評価基準の数値が小さいほど、結果が良好であることを示している。
【0095】
<視認性の評価基準>
1:画面に表示されたテキストをはっきり確認できるほど視認性に優れている
2:ぎらつき、映り込み等を僅かに感じるものの、視認性はやや良好である
3:ぎらつき、映り込み等がやや気になり、視認性がやや十分でない
4:ぎらつき、映り込み等が映像を見る上で妨げとなり、視認性が十分でない
5:映像を見る上でぎらつき、映り込み等の影響が大きいため、視認性が悪い
【0096】
[評価結果]
評価結果を下記の表3及び表4に示した。
【0097】
【0098】
【0099】
(表面粗さの評価結果)
表3及び表4に示すように、実施例1~8において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の算術平均高さSaは、18.5nm~110.4nmの範囲内であった。これに対し、比較例1~7において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の算術平均高さSaは51.1nm~540.9nmの範囲内であり、比較例8のガラス板の一方側主面(未処理面)の算術平均高さSaは、3.4nmと小さかった。
【0100】
また、実施例1~8において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の最大高さSzは、1039.0nm~2392.9nmの範囲内であった。これに対し、比較例1~7において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の最大高さSzは、403.4nm~3961.1nmの範囲内であり、比較例8のガラス板の一方側主面(未処理面)の最大高さSzは、34.5nmと小さかった。
【0101】
また、実施例1~8において、ガラス板の一方側の主面(処理面)のスキューネスSskは、-2.0~-0.1の範囲内であった。これに対し、比較例1~7において、ガラス板の一方側の主面(処理面)のスキューネスSskは、-0.8~0.3の範囲内であり、また、比較例8のガラス板の一方側主面(未処理面)のスキューネスSskは0であり、負の値ではなかった。
【0102】
また、実施例1~8において、ガラス板の一方側の主面(処理面)のクルトシスSkuは、5.9~19.8の範囲内であった。これに対し、比較例1~7において、ガラス板の一方側の主面(処理面)のクルトシスSkuは、2.6~3.5の範囲内であり、比較例8のガラス板の一方側主面(未処理面)のクルトシスSkuは、2.7と小さかった。
【0103】
また、実施例1~8において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の最大山高さSpは、403.9nm~1083.2nmの範囲内であった。これに対し、比較例1~7において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の最大山高さSpは、166.8nm~2341.4nmの範囲内であり、比較例8のガラス板の一方側主面(未処理面)の最大山高さSpは、18.1nmと小さかった。
【0104】
また、実施例1~8において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の最大谷深さSvは、635.1nm~1309.7nmの範囲内であった。これに対し、比較例1~7において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の最大谷深さSvは、236.5nm~2144.1nmの範囲内であり、比較例8のガラス板の一方側主面(未処理面)の最大谷深さSvは、16.6nmと小さかった。
【0105】
なお、実施例1~8において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の最大山高さSpと最大谷深さSvとは、いずれもSp<Svの関係であった。これに対して、比較例1~3、5のガラス板は、Sp<Svの関係であったが、比較例4、6、7のガラス板は、Sp>Svの関係であった。また、比較例8のガラス板は、Sp>Svの関係であった。
【0106】
また、実施例1~8において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の二乗平均平方根勾配Sdqは、0.26~0.91の範囲内であった。これに対し、比較例1~7において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の二乗平均平方根勾配Sdqは、0.05~0.24の範囲内であり、比較例8のガラス板の一方側主面(未処理面)の二乗平均平方根勾配Sdqは、0.03と小さかった。
【0107】
また、実施例1~8において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の平均長さRSm1は、3.2μm~6.3μmの範囲内であった。これに対し、比較例1~7において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の平均長さRSm1は、8.9μm~24.1μmの範囲内であり、比較例8のガラス板の一方側主面(未処理面)の平均長さRSm1は、3.1μmであった。
【0108】
さらに、実施例1~8において、ガラス板の一方側の主面(処理面)の二乗平均平方根勾配Sdqと平均長さRSm1とから求められる比Sdq/RSm1は、0.081~0.243の範囲内であった。これに対して、比較例1~7のガラス板は、比Sdq/RSm1が、0.003~0.018範囲内であり、比較例8のガラス板は、比Sdq/RSm1が、0.008であった。
【0109】
実施例1~5及び比較例1~7において、ガラス板の一方側の主面(処理面)に、第2の凹凸は形成されていなかった。また、比較例8のガラス板の一方側主面(未処理面)にも第2の凹凸は形成されていなかった。一方、実施例6~8において、ガラス板の一方側の主面(処理面)には、第2の凹凸が形成されていた。実施例6~8のガラス板の一方側の主面(処理面)における第2の凹凸の最大高さRzは、15nm~1000nmの範囲内であった。また、実施例6~8のガラス板の一方側の主面(処理面)における第2の凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSm2は、500μm~2000μmの範囲内であった。
【0110】
(ヘイズの測定結果)
表3及び表4に示すように、実施例1~8のガラス板のヘイズは、3.2%~28.5%の範囲内であった。これに対し、比較例1~7のガラス板のヘイズは、3.5%~87.2%の範囲内であった。また、比較例8のガラス板(未処理)のヘイズはかなり低く、0.1%であった。
【0111】
(反射率の測定結果)
表3及び表4に示すように、実施例1~8のガラス板の反射率は、0.60%~2.80%の範囲内であった。これに対し、比較例1~7のガラス板の反射率は、0.16%~3.94%の範囲内であった。また、比較例8のガラス板(未処理)の反射率は、4.30%であった。
【0112】
(ぎらつきの評価結果)
表3及び表4に示すように、実施例1~8のガラス板において、ぎらつきの評価結果は、1~2の範囲内で良好であった。これに対し、比較例1~4、6のガラス板において、ぎらつきの評価結果は、3~5の範囲内であり、比較例5、7のガラス板において、ぎらつきの評価結果は、2であった。また、比較例8のガラス板(未処理)において、ぎらつきの評価結果は、1であった。
【0113】
(視認性の評価結果)
表3及び表4に示すように、実施例1~8のガラス板において、視認性の評価結果は、1~2の範囲内で良好であった。これに対し、比較例1~3のガラス板において、視認性の評価結果は、4~5の範囲内であった。また、比較例4~7のガラス板において、視認性の評価結果は、3であり、実施例1~8と比べて劣っていた。また、比較例8のガラス板(未処理)において、視認性の評価結果は、3であった。
【0114】
(総合評価)
以上の結果から、実施例1~8については、ガラス板の一方側の主面上に形成された好適な凹凸形状により、ヘイズの増加を抑制しつつ、ぎらつきの影響を低く抑えることが可能であり、映像を視認した際も不快さを感じにくいという、良好な結果を得られることが確認できた。
【0115】
一方、比較例1~4、6については、ガラス板の一方側の主面上にエッチングにより形成された凹凸形状において、比Sdq/RSm1の値が小さいことから、ぎらつきの影響が大きく、映像を視認した際に不快さを感じやすくなった。
【0116】
比較例5、7については、ガラス板の一方側の主面上にエッチングにより形成された凹凸形状において、算術平均高さSaの値が大きく、非常に高いヘイズにより、ぎらつきの影響が小さくなったが、ヘイズが高すぎることにより、映像の視認性が低下し、不快さを感じやすくなった。
【0117】
比較例8については、ガラス板に処理をしていないため、ぎらつきは良好であったが、反射率が高く、防眩性能、視認性が十分ではなかった。
【符号の説明】
【0118】
1,10…防眩性ガラス板
1a…第1の主面
1b…第2の主面
2…凹凸部
3…非加工部