(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025059814
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】熱伝導性ペースト、半導体装置、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/373 20060101AFI20250403BHJP
【FI】
H01L23/36 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170135
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】藤本 佳寿
(72)【発明者】
【氏名】西 孝行
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BC01
5F136DA17
5F136EA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大面積の接合における接着性に優れる熱伝導層を実現する熱伝導性ペースト、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板10、半導体素子20、ヒートスプレッダー30、熱伝導層40、ヒートシンク50及び熱伝導層60を備える半導体装置において、2cm
2以上の大面積における接着に使用される熱伝導性ペーストは、少なくとも表面の一部が金属である粒子、熱硬化性樹脂および溶剤を含み、特定の条件にて測定される密着強度が、310N以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2cm2以上の面積における接着に使用される熱伝導性ペーストであって、
少なくとも表面の一部が金属である粒子、熱硬化性樹脂および溶剤を含み、
以下の条件1にて測定される密着強度が、310N以上である、熱伝導性ペースト。
[条件1]
1.10mm以上×10mm以上の銅板および10mm×10mmの厚さ0.5mmのアルミ板を準備する。
2.2mm3以上5mm3以下の当該熱伝導性ペーストを前記銅板に塗布する。
3.前記アルミ板を、前記銅板の当該熱伝導性ペーストを塗布した領域に配置し、前記アルミ板を50N以上100N以下の圧力で、前記銅板側へ押圧する。
4.加熱温度:200℃、加熱時間:120分の条件で当該熱伝導性ペーストを硬化させる。
5.JIS Z 3198-7に準拠して、ダイシェアテスターを用いて、せん断ジグ移動速度20mm/minの条件で荷重を加え、最大せん断荷重を密着強度とする。
【請求項2】
加熱温度:200℃、加熱時間:120分の条件で当該熱伝導性ペーストを硬化して得られる硬化体の熱伝導率が、12W/m・K以上である、
請求項1に記載の熱伝導性ペースト。
【請求項3】
以下の条件2にて測定される、硬化収縮率が15%以下である、
請求項1又は2に記載の熱伝導性ペースト。
[条件2]
1.7mm×7mmのチップ上に、当該熱伝導性ペーストを塗布する。
2.当該熱伝導性ペーストを塗布した領域に3mm×3mmのチップを搭載し、このときの当該熱伝導性ペーストの厚さT1を測定する。
3.30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間加熱する条件で当該熱伝導性ペーストを硬化させ、硬化後の当該熱伝導性ペーストの厚さT2を測定する。
4.{(T2-T1)/T1}×100の値を硬化収縮率とする。
【請求項4】
前記溶剤の含有量が、当該熱伝導性ペースト全体に対して5質量部以下である、
請求項1又は2に記載の熱伝導性ペースト。
【請求項5】
前記粒子は、樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面を覆う銀を含むコート銀粉を含む、
請求項1又は2に記載の熱伝導性ペースト。
【請求項6】
アリルエステル樹脂をさらに含む、
請求項1又は2に記載の熱伝導性ペースト。
【請求項7】
ヒートスプレッダーとヒートシンクを含み、
請求項1又は2に記載の熱伝導性ペーストによって、前記ヒートスプレッダーと前記ヒートシンクが接着されている、半導体装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の熱伝導性ペーストを用いて、ヒートスプレッダーとヒートシンクを接着する工程を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性ペースト、半導体装置、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導体を備える半導体パッケージにおいて、熱伝導層として、熱処理により金属粒子がシンタリングを起こして形成される粒子連結構造を有するものを用いることが検討されている。特許文献1には、基板、半導体素子、ヒートスプレッダー、ヒートシンクを備え、ヒートスプレッダーとヒートシンクが熱伝導層(熱伝導材料)により接合されている半導体パッケージが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/189446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、より大きい面積の接合面を熱伝導層により接合することが検討されている。このような事情を踏まえて検討したところ、熱伝導層における、大面積の接合における密着性について改善の余地があることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の熱伝導性ペースト、半導体装置、及び半導体装置の製造方法が提供される。
[1]
2cm2以上の面積における接着に使用される熱伝導性ペーストであって、
少なくとも表面の一部が金属である粒子、熱硬化性樹脂および溶剤を含み、
以下の条件1にて測定される密着強度が、310N以上である、熱伝導性ペースト。
[条件1]
1.10mm以上×10mm以上の銅板および10mm×10mmの厚さ0.5mmのアルミ板を準備する。
2.2mm3以上5mm3以下の当該熱伝導性ペーストを前記銅板に塗布する。
3.前記アルミ板を、前記銅板の当該熱伝導性ペーストを塗布した領域に配置し、前記アルミ板を50N以上100N以下の圧力で、前記銅板側へ押圧する。
4.加熱温度:200℃、加熱時間:120分の条件で当該熱伝導性ペーストを硬化させる。
5.JIS Z 3198-7に準拠して、ダイシェアテスターを用いて、せん断ジグ移動速度20mm/minの条件で荷重を加え、最大せん断荷重を密着強度とする。
[2]
加熱温度:200℃、加熱時間:120分の条件で当該熱伝導性ペーストを硬化して得られる硬化体の熱伝導率が、12W/m・K以上である、
[1]に記載の熱伝導性ペースト。
[3]
以下の条件2にて測定される、硬化収縮率が15%以下である、
[1]又は[2]に記載の熱伝導性ペースト。
[条件2]
1.7mm×7mmのチップ上に、当該熱伝導性ペーストを塗布する。
2.当該熱伝導性ペーストを塗布した領域に3mm×3mmのチップを搭載し、このときの当該熱伝導性ペーストの厚さT1を測定する。
3.30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間加熱する条件で当該熱伝導性ペーストを硬化させ、硬化後の当該熱伝導性ペーストの厚さT2を測定する。
4.{(T2-T1)/T1}×100の値を硬化収縮率とする。
[4]
前記溶剤の含有量が、当該熱伝導性ペースト全体に対して5質量部以下である、
[1]乃至[3]のいずれかに記載の熱伝導性ペースト。
[5]
前記粒子は、樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面を覆う銀を含むコート銀粉を含む、
[1]乃至[4]のいずれかに記載の熱伝導性ペースト。
[6]
アリルエステル樹脂をさらに含む、
[1]乃至[5]のいずれかに記載の熱伝導性ペースト。
[7]
ヒートスプレッダーとヒートシンクを含み、
[1]乃至[6]のいずれかに記載の熱伝導性ペーストによって、前記ヒートスプレッダーと前記ヒートシンクが接着されている、半導体装置。
[8]
[1]乃至[6]のいずれかにに記載の熱伝導性ペーストを用いて、ヒートスプレッダーとヒートシンクを接着する工程を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、大面積の接合における接着性に優れる熱伝導層を実現する熱伝導性ペーストが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0008】
【
図1】本実施形態に係る半導体装置の一例の概要図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0010】
図1に、本実施形態に係る半導体装置の一例の概要図を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置は、基板10、半導体素子20、ヒートスプレッダー30、熱伝導層40、ヒートシンク50および熱伝導層60を備える。半導体素子20は、基板10上に設けられており、ヒートスプレッダー30は、半導体素子20の周囲を囲み、熱伝導層40は、半導体素子20とヒートスプレッダー30とを接合している。また熱伝導層60は、ヒートスプレッダー30とヒートシンク50を接着している。
【0011】
半導体素子20は、例えば、ロジックチップやメモリチップでもよく、メモリ回路とロジック回路が混成されたLSIチップでもよい。半導体素子20は、BGA型パッケージで構成されてもよい。
【0012】
半導体素子20は、基板10の上に実装され、基板10と電気的に接続される。半導体素子20は、基板10にフリップチップ接続されていてもよい。この場合、半導体素子20は、半田ボール60を介して基板10と半田接続する。半導体素子20と基板10との間隙にはアンダーフィル材70が充填されていてもよい。アンダーフィル材70としては、公知のものが使用できるが、封止材でもよくダイアタッチ材でもよい。
【0013】
基板10としては、例えば、プリント回路基板等が用いられる。基板10の一面に、1または2以上の半導体素子20が実装されてもよい。また、基板10の一面に、半導体素子20以外の電子部品や、熱源体が実装されてもよい。一方、基板10の他面(一面とは反対側の面)は、その他の基板に接続可能な接続構造を有していてもよい。接続構造とは、例えば、半田ボール、ピンコネクタなどである。
【0014】
ヒートスプレッダー30は、半導体素子20などの発熱体から熱を放熱する部材で構成されていればよく、例えば、金属材料で構成される。金属材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス等から選択される1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。ヒートスプレッダー30は、金属材料以外の高熱伝導材料を有してもよく、例えば、グラファイト等を内部に含んでもよい。
【0015】
ヒートスプレッダー30は、上記金属材料からなる金属層を用い、その単層で構成されてもよく、あるいは複数層が積層した積層構造で構成されてもよい。また、ヒートスプレッダー30の表面のうち少なくとも熱伝導層40と接合する面は、熱伝導性の観点から、上記金属材料が露出していることが好ましいが、その他の金属でメッキ処理されてもよい。例えば、ニッケル、金、これらを主成分とする合金、あるいはこれらの積層皮膜によりメッキ膜が構成できる。これにより、ヒートスプレッダー30の防錆性を高められる。
【0016】
ヒートスプレッダー30の形状は、半導体素子20を覆うような蓋構造であれば特に限定されない。例えば、ヒートスプレッダー30は、半導体素子20と対向する面が開口した筐体で構成されてもよい。言い換えると、半導体素子20とヒートスプレッダー30との積層方向の断面視で見たとき、略コの字形状に構成されてもよい。
【0017】
ヒートスプレッダー30の一部は、接着剤を介して基板10と接着してもよい。例えば、ヒートスプレッダー30の側壁部の先端は、接着剤で基板10の一面と接着してもよい。接着剤は公知のものが使用できる。
【0018】
熱伝導層40は、半導体素子20の一面と、その一面と対向するヒートスプレッダー30の他面との間に介在し、これらを接合する。また、熱伝導層40の熱伝導率の下限は、例えば、10W/m・K以上、好ましくは15W/m・K以上、より好ましくは20W/m・K以上である。これにより、半導体パッケージ100の放熱特性を向上できる。一方、熱伝導層40の熱伝導率の上限は、例えば、200W/m・K以下でもよく、150W/m・K以下でもよい。熱伝導率は、レーザーフラッシュ法を用いて、25℃、厚み方向に測定することで得られる。
【0019】
ヒートシンク50は、放熱性に優れた部材で構成されればよく、例えば、ヒートスプレッダー30で使用した材料を用いてもよい。ヒートシンク50は、複数のフィンを有してもよい。
【0020】
また、熱伝導層60は、ヒートスプレッダー30の一面と、その一面と対向するヒートシンク50の面との間に介在し、これらを接合する。また、熱伝導層60の熱伝導率の下限は、例えば、10W/m・K以上、好ましくは15W/m・K以上、より好ましくは20W/m・K以上である。これにより、半導体パッケージ100の放熱特性を向上できる。一方、熱伝導層60の熱伝導率の上限は、例えば、200W/m・K以下でもよく、150W/m・K以下でもよい。なお、熱伝導率は、上述した方法と同様にして得られる。
【0021】
また、半導体素子20の上面および下面それぞれに電極が設けられている場合、半導体素子20の上面および下面それぞれにリードフレームなどの導通部材が接続されることがある。この場合、ヒートシンク50および熱伝導層60は、半導体素子20の上面側および下面側それぞれに設けられてもよい。
【0022】
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、一例として、上記熱伝導層40,60の少なくとも一方を形成するために用いることができる。具体的には、熱伝導性ペーストを塗布した後に、加熱して硬化させることで、熱伝導層40,60の少なくとも一方を形成することができる。本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、接着面の面積が2cm2以上の場合に好適に用いられる。この熱伝導性ペーストは、特に、接着面の面積が10cm2以上の場合に、さらには接着面の面積が36cm2以上の場合に、好適に用いられる。
【0023】
熱伝導性ペーストは、熱硬化性樹脂と少なくとも表面の一部が金属に被膜されているフィラーを含む。以下、熱伝導性ペーストの各構成について説明する。
【0024】
[熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ビスマレイミド化合物等のマレイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ジアリルフタレート樹脂;シリコーン系樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のシアネート樹脂等のシアネートエステル樹脂等から選択される、1種又は2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0025】
エポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロベンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、m,p-クレジルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等のエポキシモノマー等から選択される、1種又は2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0026】
熱伝導性ペースト全体を100質量部とした場合に、熱硬化性樹脂の含有量の下限値は、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。また、熱硬化性樹脂の含有量の上限値は、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。熱硬化性樹脂の含有量を上記範囲内にすることで、熱伝導性ペーストの硬化性等が良くなる。
【0027】
[フィラー]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストに含まれるフィラーは、熱伝導性ペーストに対して熱処理することによりシンタリングを起こして、粒子連結構造を形成する。すなわち、熱伝導性ペーストを加熱して得られる接着層において、隣接するフィラー同士は互いに融着して存在することとなる。これにより、熱伝導性ペーストを加熱して得られる接着層について、その熱伝導性、基材や半導体素子、放熱板等への密着性を向上させることができる。
【0028】
本実施形態に係るフィラーは、表面全体が金属により構成されている粒子と、表面の少なくとも一部が金属に被膜されている粒子の両方を含む。表面全体が金属に被膜されている粒子とは、例えば、シリコーン樹脂粒子等の樹脂粒子と樹脂粒子の表面を覆う銀を含む、コート銀粉である。
【0029】
上記した、コート銀粉は、例えば、メチルクロロシラン、トリメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のオルガノクロロシランを重合させることにより得られるオルガノポリシロキサンにより構成されている粒子(シリコーン樹脂粒子)を銀で被覆したものである。または、上記のオルガノポリシロキサンをさらに三次元架橋した構造を基本骨格としたシリコーン樹脂により構成されるシリコーン樹脂粒子の表面を銀で被覆したものである。
【0030】
フィラーの形状は、特に限定されないが、例えば、球状、樹状、紐状、フレーク状、凝集状、および多面体形状等である。フィラーの焼結性を向上させる観点、およびシンタリングの均一性を向上させる観点から、球状のフィラーが含まれることが好ましい。また、コストを低減させる観点からは、フレーク状のフィラーが含まれることが好ましい。
【0031】
フィラーは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50が、0.1μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、2.0μm以上であることがさらにより好ましい。また、フィラーは、粒子径D50が、10μm以下であることが好ましく、9.0μm以下であることがより好ましく、8.0μm以下であることがさらにより好ましく、7.0μm以下であることが特により好ましく、6.0μm以下であることが最もより好ましい。
【0032】
熱伝導性ペースト全体を100質量部とした場合に、フィラーの含有量の下限値は、80質量部以上であることが好ましく、82質量部以上であることがより好ましい。また、フィラーの含有量の上限値は、95質量部以下であることが好ましく、92質量部以下であることがより好ましい。
【0033】
[硬化剤]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、硬化剤をさらに含んでもよい。硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂硬化剤を用いることができる。フェノール樹脂硬化剤としては、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF(ジヒドロキシジフェニルメタン)等のビスフェノール化合物;未変性のレゾールフェノール樹脂;桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂等から選択される、1種又は2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0034】
熱伝導性ペースト全体を100質量部とした場合に、硬化剤の含有量の下限値は、0.5質量部以上であることが好ましく、0.7質量部以上であることがより好ましい。また、硬化剤の含有量の上限値は、2.0質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましい。硬化剤の含有量を上記範囲内にすることで、熱伝導性ペーストの硬化性等が良くなる。
【0035】
[硬化促進剤]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、熱硬化性樹脂の反応基と硬化剤の反応基との反応を促進するための、硬化促進剤をさらに含んでもよい。硬化促進剤としては、イミダゾール系硬化促進剤;有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン等のアミジンや3級アミン;上記アミジンまたは上記3級アミンの4級アンモニウム塩等の窒素原子含有化合物等から選択される1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0036】
熱伝導性ペースト全体を100質量部とした場合に、硬化促進剤の含有量の下限値は、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また、硬化促進剤の含有量の上限値は、0.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましい。硬化促進剤の含有量を上記範囲内にすることで、熱伝導性ペーストの硬化性等が良くなる。
【0037】
[アクリルモノマー]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、耐熱性や耐衝撃性を向上するための、アクリルモノマーをさらに含んでもよい。アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル基を1つのみ有する単官能アクリルモノマー、または(メタ)アクリル基を2つ以上有する多官能アクリルモノマーを用いることができる。または、東亞合成社製のUG-4035のような、アクリル酸系重合物を用いてもよい。
【0038】
単官能アクリルモノマーとしては、例えば、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングルコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、グリシジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、および2-(メタ)アクロイロキシエチルアシッドホスフェート等から選択される1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0039】
単官能アクリルモノマーとしては、上記具体例のうち、2-フェノキシエチルメタクリレートを用いることが好ましい。これにより、熱伝導性ペーストの密着性を向上することができる。
【0040】
多官能アクリルモノマーとしては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アタクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヘキサン-1,6-ジオールビス(2-メチル(メタ)アクリレート)、4,4'-イソプロピリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、1,4-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ブタン、1,6-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサン、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、N,N'-ジ(メタ)アクリロイルエチレンジアミン、N,N'-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド、又は1,4-ビス((メタ)アクリロイル)ピペラジン等から選択される1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0041】
熱伝導性ペースト全体を100質量部とした場合に、アクリルモノマーの含有量の下限値は、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、アクリルモノマーの含有量の上限値は、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。アクリルモノマーの含有量を上記範囲内にすることで、熱伝導性ペーストの耐熱性や耐衝撃性が良くなる。
【0042】
[カップリング剤]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、カップリング剤をさらい含んでもよい。これにより、熱伝導性ペーストの流動性を高めることができる。カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニア系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を用いることができる。
【0043】
熱伝導性ペースト全体を100質量部とした場合に、カップリング剤の含有量の下限値は、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また、カップリング剤の含有量の上限値は、1.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。カップリング剤の含有量を上記範囲内にすることで、熱伝導性ペーストの硬化性等が良くなる。
【0044】
[密着助剤]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、密着助剤を含んでもよい。密着助剤としては、例えば、ADEKA株式会社製のEH3636ASを用いることができる。
【0045】
熱伝導性ペースト全体を100質量部とした場合に、密着助剤の含有量の下限値は、0.005質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましい。また、密着助剤の含有量の上限値は、0.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましい。密着助剤の含有量を上記範囲内にすることで、熱伝導性ペーストの硬化性等が良くなる。
【0046】
[可塑剤]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、可塑剤を含んでもよい。可塑剤としては、例えば、アリル樹脂を用いることができる。より具体的には、ジカルボン酸と、アリルアルコールと、アリル基を備える化合物とを反応することで得られるアリルエステル樹脂等のアリルポリマーを用いることができる。ジカルボン酸としては、具体的には、しゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等を用いることができる。また、上記アリル基を備える化合物としては、具体的には、アリル基を備えるポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体等を用いることができる。
【0047】
熱伝導性ペースト全体を100質量部とした場合に、可塑剤の含有量の下限値は、0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましい。また、可塑剤の含有量の上限値は、8.0質量部以下であることが好ましく、6.0質量部以下であることがより好ましい。
【0048】
[開始剤]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、開始剤を含んでもよい。開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物などを用いることができる。過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタールなどの有機過酸化物を用いることができ、より具体的には、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール;p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-へキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-へキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート等のパーオキシエステル等から選択される1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0049】
熱伝導性ペースト全体を100質量部とした場合に、開始剤の含有量の下限値は、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また、開始剤の含有量の上限値は、1.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。
【0050】
[溶剤]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、溶剤を含んでもよい。溶剤としては、例えば、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アノン、ジアセトンアルコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α-ターピネオール、β-ターピネオール、γ-ターピネオール、ターピネオール(α、β、γの混合物)、ジヒドロターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはグリセリン等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、2-オクタノン、イソホロン(3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン)もしくはジイソブチルケトン(2,6-ジメチル-4-ヘプタノン)等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2-ジアセトキシエタン、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジルもしくはリン酸トリペンチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2-ビス(2-ジエトキシ)エタンもしくは1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン等のエーテル類;酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;2-(2-メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類、トルエン、キシレン、n-パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシンもしくは軽油等の炭化水素類;アセトニトリルもしくはプロピオニトリル等のニトリル類;アセトアミドもしくはN,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;低分子量の揮発性シリコンオイル、または揮発性有機変成シリコンオイル等から選択される1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0051】
熱伝導性ペースト全体を100質量部とした場合に、溶剤の含有量の下限値は、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、溶剤の含有量の上限値は、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。溶剤の含有量が上記上限値以下であることにより、熱伝導性ペーストの硬化収縮率が小さくなり、接着性が向上する。
【0052】
次に、本実施形態に係る熱伝導性ペーストの物性について説明する。
【0053】
[密着強度]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、以下の条件にて測定される密着強度が、310N以上であることが好ましく、330N以上であることがより好ましく、350N以上であることがさらに好ましく、370N以上であることがさらに好ましい。これにより、接着面の面積が2cm2以上の場合の接着において、十分な接着性が得られる。
[条件]
1.10mm以上×10mm以上の銅板および10mm×10mmの厚さ0.5mmのアルミ板を準備する。
2.2mm3以上5mm3以下の当該熱伝導性ペーストを前記銅板に塗布する。
3.前記アルミ板を、前記銅板の当該熱伝導性ペーストを塗布した領域に配置し、前記アルミ板を50N以上100N以下の圧力で、前記銅板側へ押圧する。
4.加熱温度:200℃、加熱時間:120分の条件で当該熱伝導性ペーストを硬化させる。
5.JIS Z 3198-7に準拠して、ダイシェアテスターを用いて、せん断ジグ移動速度20mm/minの条件で荷重を加え、最大せん断荷重を密着強度とする。
【0054】
[熱伝導率]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、加熱温度:200℃、加熱時間:120分の条件で硬化して得られる硬化体の熱伝導率が、12W/m・K以上であることが好ましく、15W/m・K以上であることがより好ましい。これにより、熱伝導性ペーストは、放熱性が向上する。
【0055】
[硬化収縮率]
JIS K 6941に準拠する、以下の条件にて測定される、硬化収縮率が15%以下であることが好ましく、11%以下であることがより好ましい。これにより、半導体装置を製造する際の、各部品の位置のずれを抑制できる。
[条件]
[条件2]
1.7mm×7mmのチップ上に、当該熱伝導性ペーストを塗布する。
2.当該熱伝導性ペーストを塗布した領域に3mm×3mmのチップを搭載し、このときの当該熱伝導性ペーストの厚さT1を測定する。
3.30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間加熱する条件で当該熱伝導性ペーストを硬化させ、硬化後の当該熱伝導性ペーストの厚さT2を測定する。
4.{(T2-T1)/T1}×100の値を硬化収縮率とする。
【0056】
[硬化温度]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、例えば、硬化温度が220℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらにより好ましい。硬化温度が上記上限値以下であることにより、製造工程における半導体素子等への熱による影響を抑制できる。
【0057】
[熱伝導性ペーストの製造方法]
本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、例えば、上述した原料成分を混合する方法が用いられる。混合は、公知の方法を用いることができるが、例えば、3本ロール、ミキサーなどを用いることができる。なお、得られた混合物について、さらに脱泡を行ってもよい。脱泡は、例えば、混合物を真空下に静置してもよい。
【0058】
[半導体装置の製造方法]
本実施形態に係る半導体装置は、上述の熱伝導性ペーストを用いて製造できる。半導体装置の製造方法は、例えば基板10の一面上に、他面が対向するように半導体素子20を設置する工程と、半導体素子20の一面側(他面とは反対側)の表面に、熱伝導性ペーストを塗布する工程と、熱伝導性ペーストに接するとともに、半導体素子20の少なくとも一面を覆うようにヒートスプレッダー30を配置する工程と、ヒートスプレッダー30のヒートシンク50と対向する一面に熱伝導性ペーストを塗布する工程と、ヒートスプレッダー30の一面にヒートシンク50を配置する工程と、基板10、半導体素子20、熱伝導性ペースト、ヒートスプレッダー30およびヒートシンク50を含む構造体を加熱処理し、熱伝導性ペーストを硬化させ、ヒートスプレッダー30とヒートシンク50を接着する工程と、を含んでもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0060】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0061】
[熱伝導性ペースト]
下記の表1に示す配合量に従って、第1原料の各原料成分を混合し、ワニスを得た。得られたワニスに第2原料を下記の表1に示す配合量に従って配合し、常温で、3本ロールミルで混練して、ペースト状の熱伝導性ペーストを作製した。
【0062】
【0063】
以下、表1の原料成分の詳細を示す。なお、比較例のみに用いている原料成分については、記載を省略する。
(第1原料)
・熱硬化性樹脂:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、RE-303S)
・硬化剤:ビフェノール(本州化学工業社製、SBM-3901)
・アクリルモノマー:エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、ライトエステルEG)
・可塑剤:アリルポリマー(関東化学株式会社製、SBM-8C03)
・密着助剤:ジシアンジアミド(ADEKA株式会社製、EH3636AS)
・カップリング剤1:3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-503P)
・カップリング剤2:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-403E)
・硬化促進剤:2-フェニル-1H-イミダゾール4、5-ジメタノール(四国化成社製、2PHZ-PW)
・開始剤:ジクミルパーオキサイド(化薬ヌーリオン株式会社製、パーカドックスBC)
・溶剤1:トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、BFTG)
(第2原料)
・銀粉:フレーク状銀粉、メジアン径D50:6.0μm(福田金属社製、HKD-13A)
・コート銀粉:(三菱マテリアル社製、SC1050-SSB)
・カップリング剤4:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBE-403)
・溶剤2:エチレングリコールモノn―ブチルエーテルアセテート(東京化成工業社製、SBM-8N01)
・溶剤3:トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、BFTG)
【0064】
[測定]
各実施例、比較例の熱電導性ペーストを用いて、下記の物性を測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0065】
<粘度η5、チキソ性η0.5/η5>
25℃において、B型粘度計を用いて、回転数5rpmにて粘度η5を測定し、回転数0.5rpmにて粘度η0.5を測定した。そして、η0.5/η5の値を算出した。なお、粘度計としては、BF粘度計(ブルックフィールド社製、DV3T)を用いた。
【0066】
<密着強度>
以下の条件によって密着強度を測定した。
[条件]
1.10mm×10mmの銅板および10mm×10mmの厚さ0.5mmのアルミ板を準備した。
2.2mm3の熱伝導性ペーストを銅板に塗布した。
3.アルミ板を、銅板の熱伝導性ペーストを塗布した領域に配置し、アルミ板を圧力100Nで、銅板側へ押圧した。
4.加熱温度:200℃、加熱時間:120分の条件で熱伝導性ペーストを硬化させた。
5.JIS Z 3198-7に準拠して、ダイシェアテスターを用いて、せん断ジグ移動速度20mm/minの条件で荷重を加え、最大せん断荷重を密着強度とした。
【0067】
<弾性率>
熱電導性ペーストを、4mm×20mm×0.3mmの型に塗布し、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間加熱することで試験片を得た。この試験片を用いて、JIS K 6911に準拠して25℃における貯蔵弾性率(E')を、DMA(動的粘弾性測定、SII Nanotechnology社製 DMS6100、引張モード)により昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で測定した。
【0068】
<ガラス転移温度(Tg)及び線膨張係数>
熱電導性ペーストを、4mm×10mm×0.15mmの型に塗布し、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間加熱することで試験片を得た。次に、熱機械的分析装置(セイコーインスツルメンツ社製TMA/SS6100)を用い、試験片を、一定荷重(10mN)で引っ張りながら-65℃から昇温速度5℃/分で温度を上昇させた際の試験片の温度に対する試験片の膨張量を差動トランスで電気的出力として検出し、試験片の温度に対する試験片の膨張量を示すグラフを作成した。そして、上記グラフの変曲点よりガラス転移温度(Tg)を求め、さらに算出したガラス転移温度(Tg)以下の温度における線膨張係数α1と、ガラス転移温度(Tg)以上の温度における線膨張係数α2を求めた。その後、α1/α2の値を算出した。
【0069】
<硬化収縮率>
JIS K 6941に準拠する、以下の条件により硬化収縮率を測定した。
[条件]
1.7mm×7mmのチップ上に、当該熱伝導性ペーストを塗布する。
2.当該熱伝導性ペーストを塗布した領域に3mm×3mmのチップを搭載し、このときの当該熱伝導性ペーストの厚さT1を測定する。
3.30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間加熱する条件で当該熱伝導性ペーストを硬化させ、硬化後の当該熱伝導性ペーストの厚さT2を測定する。
4.{(T2-T1)/T1}×100の値を硬化収縮率とする。
【0070】
<熱伝導率>
熱電導性ペーストを、10mm×10mm×1.0mmの型に塗布し、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間加熱することで試験片を得た。次に、ULVAC社製のXeフラッシュアナライザーTD-1RTVを用いて、レーザーフラッシュ法により板状の試験片の長さ方向の熱拡散係数(α)の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。得られた熱拡散係数(α)、比熱(Cp)、比重(SP)の測定値から、下記式に基づいて熱伝導率を算出した。
(式):熱伝導率[W/m・K]=α[m2/s]×Cp[J/kg・K]×Sp[g/cm3]
【0071】
<体積抵抗率>
熱電導性ペーストを、10mm×10mm×1.0mmの型に塗布し、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間加熱することで試験片を得た。ミリオームメータ(HIOKI社製)による直流四電極法により、電極間隔が40mmの電極を用い、得られた硬化物表面の体積抵抗率を測定した。
【0072】
[評価]
得られた熱電導性ペーストを用いて、下記の測定方法により、熱電導性ペーストの密着性を評価した。
[測定方法]
1.10mm×10mmの銅板および10mm×10mmの厚さ0.5mmのアルミ板を準備した。
2.2mm3の熱伝導性ペーストを銅板に塗布した。
3.アルミ板を、銅板の熱伝導性ペーストを塗布した領域に配置し、アルミ板を圧力100Nで、銅板側へ押圧した。
4.加熱温度:200℃、加熱時間:120分の条件で熱伝導性ペーストを硬化させた。
5.硬化させた熱伝導性ペーストを、150℃に加熱し30分間維持し、その後-40℃に冷却した状態を30分間維持することを1サイクルとして、接着が剥がれるまでのサイクル数を測定した。
【0073】
それぞれの測定結果を表1に示す。表1に示すように、比較例2に係る熱伝導性ペーストは約500サイクルしか耐えられず、比較例3に係る熱伝導性ペーストは約100サイクルしか耐えられなかったのに対して、本実施形態に係る熱伝導性ペーストは、1000サイクル以上耐えており、密着性に優れることが確認できた。なお、比較例1については、十分に密着しなかったため、測定を行うことができなかった。