(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025059821
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】電気装置、空気調和機
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250403BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01L25/04 C
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170144
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】秋田 幸男
(72)【発明者】
【氏名】小山 義次
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA05
5H770CA02
5H770DA03
5H770JA10X
5H770KA01W
5H770PA21
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA08
5H770QA22
5H770QA25
(57)【要約】
【課題】コモンモード電流の電源側への流出をより適切に抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る電力変換装置200は、コモンモードチョークコイル221を含み、一端側及び他端側のうちの他端側がパワーデバイス233PDと電気的に接続されるノイズフィルタ220と、コモンモードチョークコイルの一端側及び他端側に接続される電源線L_R3,L_S3,L_T3及び電源線L_R4,L_S4,L_T4と、電源線L_R4,L_S4,L_T4に対向する内面110Hsを有する導体部260と、導体部260と電源線L_R4,L_S4,L_T4との間に配置される誘電体250と、を備え、誘電体250は、面250s1が、導体部260の内面110Hsと対向し、面250s1の反対側の面250s2が電源線L_R4,L_S4,L_T4の面WPs1,WPs2,WPs3と対向するように配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンモードチョークコイルを含み、一端側及び他端側のうちの他端側がスイッチングデバイスと電気的に接続されるノイズフィルタと、
前記コモンモードチョークコイルの一端側に接続される第1の配線部と、
前記コモンモードチョークコイルの他端側に接続される第2の配線部と、
前記第1の配線部又は第2の配線部に対向する面を有する導体部材と、
前記導体部材と、前記第1の配線部及び前記第2の配線部の何れか一方の配線部との間に配置される誘電体と、を備え、
前記誘電体は、第1の面が、前記導体部材の面と対向し、前記第1の面の反対側の第2の面が前記何れか一方の配線部の面と対向するように配置される、
電気装置。
【請求項2】
前記誘電体は、前記第1の面及び前記導体部材の面、並びに、前記第2の面及び前記何れか一方の配線部の面の双方が接触するように配置される、
請求項1に記載の電気装置。
【請求項3】
前記誘電体は、前記第1の面及び前記導体部材の面、並びに、前記第2の面及び前記何れか一方の配線部の面の何れか一方が接触し他方が近接にあるように配置される、
請求項1に記載の電気装置。
【請求項4】
前記誘電体は、前記第1の面及び前記導体部材の面、並びに、前記第2の面及び前記何れか一方の配線部の面の双方が近接にあるように配置される、
請求項1に記載の電気装置。
【請求項5】
前記誘電体は、前記導体部材と前記第2の配線部との間に配置される、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気装置。
【請求項6】
前記誘電体は、300MHz以下の周波数帯域での比誘電率が5以上である、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気装置。
【請求項7】
前記誘電体の材質は、シリコン樹脂又はウレタンを含む、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気装置。
【請求項8】
前記誘電体は、衝撃吸収性を有する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気装置。
【請求項9】
スイッチングデバイスを備え、
前記第2の配線部は、前記コモンモードチョークコイルの他端側と前記スイッチングデバイスとの間に接続され、
前記導体部材は、前記スイッチングデバイスの近傍に存在すると共に、前記何れか一方の配線部に対向する面を有する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気装置。
【請求項10】
前記導体部材は、前記スイッチングデバイスと熱結合された放熱部材を含む、
請求項9に記載の電気装置。
【請求項11】
前記スイッチングデバイスを含むインバータ又はコンバータを備える、
請求項9に記載の電気装置。
【請求項12】
前記ノイズフィルタが実装される第1の基板と、
前記第1の基板と異なる第2の基板であって、前記スイッチングデバイスが実装される第2の基板と、を備える、
請求項9に記載の電気装置。
【請求項13】
前記スイッチングデバイスは、ワイドバンドギャップ半導体により形成されるスイッチング素子を含む、
請求項9に記載の電気装置。
【請求項14】
前記スイッチングデバイスのスイッチング周波数は20kHz以上である、
請求項9に記載の電気装置。
【請求項15】
前記スイッチングデバイスのスイッチング速度は、10ナノ秒以下である、
請求項9に記載の電気装置。
【請求項16】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気装置を備える、
空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチングデバイスのスイッチング動作に起因するコモンモード電圧によって、コモンモードのノイズ電流(以下、「コモンモード電流」)が筐体等のグランドを通じて電源側に流出し、その結果、放射ノイズが増大する可能性がある。
【0003】
これに対して、例えば、グランド側と電源線や信号線との間を接続するバイパス経路にコンデンサ(対地コンデンサやバイパスコンデンサ)を配置し、グランド側に流出したコモンモード電流をノイズ源に還流させる技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、スイッチングデバイスのスイッチング周波数が高周波の場合、放射ノイズが問題となる高周波帯においてコンデンサのリード線の寄生インダクタンス成分の影響が大きくなり、バイパス経路のインピーダンスが高くなる。そのため、高周波のコモンモード電流がバイパス経路に還流しにくくなり、電源側へのコモンモード電流の流出を十分に抑制できずに放射ノイズが増大する可能性がある。
【0006】
本開示は、コモンモード電流の電源側への流出をより適切に抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様では、
コモンモードチョークコイルを含み、一端側及び他端側のうちの他端側がスイッチングデバイスと電気的に接続されるノイズフィルタと、
前記コモンモードチョークコイルの一端側に接続される第1の配線部と、
前記コモンモードチョークコイルの他端側に接続される第2の配線部と、
前記第1の配線部又は第2の配線部に対向する面を有する導体部材と、
前記導体部材と、前記第1の配線部及び前記第2の配線部の何れか一方の配線部との間に配置される誘電体と、を備え、
前記誘電体は、第1の面が前記導体部材の面と対向し、前記第1の面の反対側の第2の面が前記何れか一方の配線部の面と対向するように配置される、
電気装置が提供される。
【0008】
本態様によれば、第1の配線部及び第2の配線部の何れか一方の配線部と導体部材との間の浮遊容量を増加させることができる。そのため、電気装置は、スイッチングデバイスのスイッチング動作に起因するコモンモード電圧によって導体部材に流出したコモンモード電流を、浮遊容量を介してノイズ源であるスイッチングデバイスに還流させることができる。また、浮遊容量には、リード線等のインダクタンス成分が含まれないことから、高周波の場合であってもインピーダンスの増加がなく、電気装置は、浮遊容量を介して高周波のコモンモード電流をスイッチングデバイスに十分に還流させることができる。そのため、電気装置は、コモンモード電流の電源側への流出をより適切に抑制することができる。
【0009】
また、本開示の第2の態様では、上述の第1の態様を前提として、
前記誘電体は、前記第1の面及び前記導体部材の面、並びに、前記第2の面及び前記何れか一方の配線部の面の双方が接触するように配置されてもよい。
【0010】
また、本開示の第3の態様では、上述の第1の態様を前提として、
前記誘電体は、前記第1の面及び前記導体部材の面、並びに、前記第2の面及び前記何れか一方の配線部の面の何れか一方が接触し他方が近接にあるように配置されてもよい。
【0011】
また、本開示の第4の態様では、上述の第1の態様を前提として、
前記誘電体は、前記第1の面及び前記導体部材の面、並びに、前記第2の面及び前記何れか一方の配線部の面の双方が近接にあるように配置されてもよい。
【0012】
また、本開示の第5の態様では、上述の第1乃至第4の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記誘電体は、前記導体部材と前記第2の配線部との間に配置されてもよい。
【0013】
また、本開示の第6の態様では、上述の第1乃至第5の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記誘電体は、300MHz以下の周波数帯域での比誘電率が5以上であってもよい。
【0014】
また、本開示の第7の態様では、上述の第1乃至第6の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記誘電体の材質は、シリコン樹脂又はウレタンを含んでもよい。
【0015】
また、本開示の第8の態様では、上述の第1乃至第7の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記誘電体は、衝撃吸収性を有していてもよい。
【0016】
また、本開示の第9の態様では、上述の第1乃至第8の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記スイッチングデバイスを備え、
前記第2の配線部は、前記コモンモードチョークコイルの他端側と前記スイッチングデバイスとの間に接続され、
前記導体部材は、前記スイッチングデバイスの近傍に存在すると共に、前記何れか一方の配線部に対向する面を有していてもよい。
【0017】
また、本開示の第10の態様では、上述の第9の態様を前提として、
前記導体部材は、前記スイッチングデバイスと熱結合された放熱部材を含んでもよい。
【0018】
また、本開示の第11の態様では、上述の第9又は第10の態様を前提として、
前記スイッチングデバイスを含むインバータ又はコンバータを備えてもよい。
【0019】
また、本開示の第12の態様では、上述の第9乃至第11の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記ノイズフィルタが実装される第1の基板と、
前記第1の基板と異なる第2の基板であって、前記スイッチングデバイスが実装される第2の基板と、を備えてもよい。
【0020】
また、本開示の第13の態様では、上述の第9乃至第12の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記スイッチングデバイスは、ワイドバンドギャップ半導体により形成されるスイッチング素子を含んでもよい。
【0021】
また、本開示の第14の態様では、上述の第9乃至第13の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記スイッチングデバイスのスイッチング周波数は20kHz以上であってもよい。
【0022】
また、本開示の第15の態様では、上述の第9乃至第14の態様の何れか1つの態様を前提として、
前記スイッチングデバイスのスイッチング速度は、10ナノ秒以下であってもよい。
【0023】
また、本開示の第16の態様では、
上述の第1乃至第15の態様の何れか1つの態様の電気装置を備える、
空気調和機が提供される。
【発明の効果】
【0024】
上述の実施形態によれば、コモンモード電流の電源側への流出をより適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】空気調和機の冷媒回路の一例を示す図である。
【
図4】比較例に係る電力変換装置をコモンモードで表現した等価回路を示す図である。
【
図5】浮遊容量及び寄生インダクタンスの周波数とインピーダンスとの関係の一例を示す図である。
【
図6】電力変換装置の一例をコモンモードで表現した等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0027】
[空気調和機の概要]
図1を参照して、本実施形態に係る空気調和機100の概要について説明する。
【0028】
図1は、空気調和機100の冷媒回路の一例を示す図である。
【0029】
図1に示すように、空気調和機100は、室外機110と、室内機120と、冷媒経路130,140とを含む。空気調和機100は、室外機110、室内機120、冷媒経路130,140等で構成される冷凍サイクルを動作させ、室内機120が設置される室内の温度や湿度等を調整する。
【0030】
室外機110は、温度等の調整対象の建物の室外に配置される。室外機110は、冷媒経路130,140のそれぞれの一端に接続され、冷媒経路130,140の何れか一方から冷媒を吸入し、何れか他方に冷媒を排出する。
【0031】
室内機120は、温度等の調整対象の建物の室内に配置される。室内機120は、冷媒経路130,140のそれぞれの他端に接続され、冷媒経路130,140の何れか一方から冷媒を吸入し、何れか他方に冷媒を排出する。
【0032】
冷媒経路130,140は、例えば、管路により構成され、冷媒が室外機110及び室内機120の間で循環可能なように、室外機110及び室内機120との間を接続する。
【0033】
室外機110は、冷媒経路L1~L6と、油経路L7,L8と、四方切換弁111と、アキュムレータ112と、圧縮機113と、油分離器114と、室外熱交換器115と、室外膨張弁116と、ファン117とを含む。
【0034】
冷媒経路L1~L6は、例えば、管路として構成される。
【0035】
冷媒経路L1は、室外機110の外部の冷媒経路130の一端と四方切換弁111との間を接続する。
【0036】
冷媒経路L2は、四方切換弁111と圧縮機113の入口との間を接続する。冷媒経路L2は、冷媒経路L21,L22を含む。
【0037】
冷媒経路L21は、四方切換弁111とアキュムレータ112との間を接続する。冷媒経路L22は、アキュムレータ112と圧縮機113の入口との間を接続する。
【0038】
冷媒経路L3は、四方切換弁111と圧縮機113の出口との間を接続する。冷媒経路L3は、冷媒経路L31,L32を含む。
【0039】
冷媒経路L31は、圧縮機113の出口と油分離器114との間を接続する。冷媒経路L32は、四方切換弁111と油分離器114との間を接続する。
【0040】
冷媒経路L4は、四方切換弁111と室外熱交換器115との間を接続する。
【0041】
冷媒経路L5は、室外熱交換器115と室外膨張弁116との間を接続する。
【0042】
冷媒経路L6は、室外機110の外部の冷媒経路140の一端と室外膨張弁116との間を接続する。
【0043】
油経路L7は、例えば、管路として構成され、油分離器114により分離された油を冷媒経路L22に流入させ、冷媒経路L22を通じて圧縮機113に戻すために用いられる。
【0044】
尚、油経路L7を通過する油には、例えば、液相の冷媒(以下、「液冷媒」)が溶け込んでいる場合がある。つまり、油経路L7には、油だけでなく、液冷媒も通流する。
【0045】
油経路L8は、例えば、管路として構成され、アキュムレータ112により分離された液冷媒を含む油を冷媒経路L22に流入させ、冷媒経路L22を通じて圧縮機113に戻すために用いられる。
【0046】
四方切換弁111は、空気調和機100の冷房運転の場合と暖房運転の場合とで冷媒が循環する流れを逆転させる。
【0047】
空気調和機100の冷房運転時に、四方切換弁111は、
図1中の実線の経路を接続する。具体的には、空気調和機100の冷房運転時に、四方切換弁111は、冷媒経路L1と冷媒経路L2との間、及び冷媒経路L3と冷媒経路L4との間を接続させる。
【0048】
一方、空気調和機100の暖房運転の場合、四方切換弁111は、
図1中の点線の経路を接続する。具体的には、空気調和機100の暖房運転時に、四方切換弁111は、冷媒経路L4と冷媒経路L2との間、及び冷媒経路L1と冷媒経路L3との間を接続させる。
【0049】
アキュムレータ112は、冷媒経路L21から吸入される冷媒に含まれる液冷媒を分離し、冷媒経路L22に液冷媒の一部又は全部が除去された冷媒を吐出する。アキュムレータ112で分離される液冷媒には油が含まれる。アキュムレータ112には、油経路L8と接続される油排出口が設けられ、分離された冷媒を含む油は、油排出口を通じて油経路L8に流出し、油経路L8及び冷媒経路L22を通じて圧縮機113に戻される。
【0050】
圧縮機113は、冷媒経路L22から冷媒を吸入し、高圧に圧縮して冷媒経路L31に吐出する。
【0051】
空気調和機100の冷房運転時において、圧縮機113により圧縮された高温高圧の冷媒は、冷媒経路L3及び冷媒経路L4を通じて、室外熱交換器115に流入する。
【0052】
一方、空気調和機100の暖房運転時において、圧縮機113により圧縮された高温高圧の冷媒は、冷媒経路L3及び冷媒経路L1を通じて、室外機110の外部の冷媒経路130に流出する。そして、高温高圧の冷媒は、冷媒経路130を通じて、室内機120に流入する。
【0053】
油分離器114は、冷媒経路L31から流入する冷媒から油を分離し、油の一部又は全部が分離され除去された後の冷媒を冷媒経路L32に流出させる。また、油分離器114には、油経路L7と接続される油排出口が設けられ、冷媒から分離された油は、油排出口を通じて油経路L7に流出し、油経路L7及び冷媒経路L22を通じて圧縮機113に戻される。
【0054】
室外熱交換器115は、外気と内部を通過する冷媒との間で熱交換を行う。具体的には、室外熱交換器115には、ファン117が併設され、室外熱交換器115は、ファン117により送風される外気と内部を通流する冷媒との間で熱交換を行う。
【0055】
空気調和機100の冷房運転時において、室外熱交換器115は、冷媒経路L4から流入する、圧縮機113で圧縮された高温高圧の冷媒に外気への放熱を行わせ、凝縮・液化した冷媒(液冷媒)を冷媒経路L5に流出させる。
【0056】
また、空気調和機100の暖房運転時において、室外熱交換器115は、冷媒経路L5から流入する低温低圧の液冷媒に外気から吸熱を行わせ、蒸発した冷媒を冷媒経路L4に流出させる。
【0057】
室外膨張弁116は、空気調和機100の暖房運転時において、所定の開度に閉じられ、冷媒経路L6から流入する冷媒(液冷媒)を所定の圧力に減圧させる。一方、室外膨張弁116は、空気調和機100の冷房運転時において、全開状態にされ、冷媒経路L5から冷媒経路L6に冷媒(液冷媒)を通過させる。室外膨張弁116は、例えば、電磁弁である。
【0058】
室内機120は、室内膨張弁121と、室内熱交換器122と、ファン123とを含む。
【0059】
室内膨張弁121は、空気調和機100の冷房運転時において、所定の開度に閉じられ、冷媒経路140から流入する、過冷却状態の液冷媒を所定の圧力に減圧させる。一方、室内膨張弁121は、空気調和機100の暖房運転時において、全開状態にされ、室内熱交換器122から流出する冷媒(液冷媒)を冷媒経路140に向かって通過させる。室内膨張弁121は、例えば、電磁弁である。
【0060】
室内熱交換器122は、室内空気と内部を通過する冷媒との間で熱交換を行う。具体的には、室内機120に搭載されるファン123の作用で、室内熱交換器122の周囲に室内空気が通過し、室内熱交換器122の内部の冷媒との間で熱交換が促進される。そして、ファン123の作用で、室内熱交換器122の内部との冷媒との間の熱交換が行われた室内空気が室内機120の外部に送り出されることにより、室内の冷房或いは暖房が実現される。
【0061】
空気調和機100の冷房運転時において、室内熱交換器122は、室内膨張弁121により減圧された低温低圧の液冷媒に室内空気から吸熱させ、室内空気の温度を下げる。
【0062】
一方、空気調和機100の暖房運転時において、室内熱交換器122は、冷媒経路130を通じて室外機110から流入する高温高圧の冷媒に室内空気への放熱を行わせ、室内空気の温度を上げる。
【0063】
[電力変換装置の構成]
次に、
図2、
図3を参照して、本実施形態に係る空気調和機100に搭載される電力変換装置200の構成について説明する。
【0064】
図2は、電力変換装置200の一例の構成を示す図である。
図3は、電力変換装置200の構造の一例を示す図である。
【0065】
尚、
図3では、筐体110Hのみが便宜的に断面図として描画されている。
【0066】
図2に示すように、室外機110は、自身の構成要素を収容する筐体110Hを有し、筐体110Hに収容される電力変換装置200を含む。
【0067】
電力変換装置200は、室外機110の外部から供給される、商用電源PSの3相交流の電力を用いて、圧縮機113の電動機113Mを駆動する。
【0068】
電力変換装置200は、端子T_FGと、電源線L_Rと、電源線L_Sと、電源線L_Tと、電源端子台210と、ノイズフィルタ220と、インバータ230と、放熱部240と、誘電体250とを含む。
【0069】
端子T_FGは、筐体110Hに設けられ、筐体110Hの外部において、接地される。これにより、筐体110Hは、グランドに相当する基準電位部とみなされる。
【0070】
電源線L_R,L_S,L_Tは、商用電源PSの3相交流をインバータ230に供給する。
【0071】
電源線L_Rは、商用電源PSのR相の交流をインバータ230に供給する。電源線L_Rは、電源線L_R1~L_R5を含む。
【0072】
電源線L_Sは、商用電源PSのS相の交流をインバータ230に供給する。電源線L_Sは、電源線L_S1~L_S5を含む。
【0073】
電源線L_Tは、商用電源PSのT相の交流をインバータ230に供給する。電源線L_Tは、電源線L_T1~L_T5を含む。
【0074】
電源線L_R1,L_S1,L_T1は、それぞれ、商用電源PSと電源端子台210との間を接続する。電源線L_R2,L_S2,L_T2は、それぞれ、電源端子台210とノイズフィルタ220の電源線L_R3,L_S3,L_T3の一端との間を接続する。電源線L_R3,L_S3,L_T3、及び電源線L_R4,L_S4,L_T4は、ノイズフィルタ220の内部の電源線に相当する。例えば、
図3に示すように、電源線L_R3,L_S3,L_T3、及び電源線L_R4,L_S4,L_T4は、基板220PBの配線パターンとして実装される。電源線L_R5,L_S5,L_T5は、それぞれ、ノイズフィルタ220の電源線L_R4,L_S4,L_T4の他端とインバータ230との間を接続する。
【0075】
電源端子台210は、電源線L_R1,L_S1,L_T1により供給される3相交流を各種機器に中継したり分岐させたりする。
【0076】
電源端子台210には、電源線L_R1の一端が接続されると共に、電源線L_R2の一端が接続され、電源線L_R1と電源線L_R2との間を電気的に接続する。同様に、電源端子台210には、電源線L_S1の一端が接続されると共に、電源線L_S2の一端が接続され、電源線L_S1と電源線L_S2との間を電気的に接続する。同様に、電源端子台210には、電源線L_T1の一端が接続されると共に、電源線L_T2の一端が接続され、電源線L_T1と電源線L_T2との間を電気的に接続する。
【0077】
ノイズフィルタ220は、電力変換装置200の電流のノイズを抑制する。例えば、
図2、
図3に示すように、ノイズフィルタ220は、コモンモードチョークコイル221と、Yコンデンサ222とを含み、基板220PBに実装される。
【0078】
コモンモードチョークコイル221は、電源線L_R3,L_S3,L_T3、及び電源線L_R4,L_S4,L_T4に流れるコモンモードのノイズ電流に対してインダクタとして作用しノイズ電流を抑制する。
【0079】
Yコンデンサ222は、グランドに流出したコモンモード電流をノイズ源(インバータ230)に戻す働きを有する。Yコンデンサ222は、Yコンデンサ222R,222S,222Tを含む。
【0080】
Yコンデンサ222Rは、電源線L_R4とグランドに相当する筐体110Hとの間を接続するバイパス経路に設けられる。Yコンデンサ222Sは、電源線L_S4とグランドに相当する筐体110Hとの間を接続するバイパス経路に設けられる。Yコンデンサ222Tは、電源線L_T4とグランドに相当する筐体110Hとの間を接続するバイパス経路に設けられる。例えば、
図3に示すように、Yコンデンサ222と筐体110Hとの間は、リード線225によって接続される。
【0081】
インバータ230は、電源線L_R,L_S,L_Tを通じて供給される3相交流を用いて、所定の電圧及び周波数の3相交流を生成し電動機113Mに出力する。これにより、電力変換装置200は、圧縮機113を駆動することができる。例えば、
図3に示すように、インバータ230は、ノイズフィルタ220が実装される基板220PBとは別の基板230PBに実装される。インバータ230は、整流回路231と、平滑回路232と、インバータ回路233とを含む。
【0082】
整流回路231は、電源線L_R5,L_S5,L_T5の3相交流を直流に変換し、電源線L_P1,L_N1に出力する。例えば、
図2に示すように、整流回路231は、パワーデバイス231PDを含む。パワーデバイス231PDは、半導体による整流ダイオードである。
【0083】
平滑回路232は、電源線L_P1,L_N1の直流を平滑化する。例えば、平滑回路232は、平滑コンデンサ232Cと、リアクトル232Lとを含む。
【0084】
平滑コンデンサ232Cは、電源線L_P1,L_N1の間を接続する経路に設けられる。平滑コンデンサ232Cは、適宜、充放電を繰り返しながら、整流回路231から出力される直流やインバータ回路233から出力(回生)される直流を平滑化する。
【0085】
リアクトル232Lは、電源線L_P1に設けられる。例えば、リアクトル232Lは、整流回路231と平滑コンデンサ232Cとの間の電源線L_P1に設けられる。リアクトル232Lは、適宜、電流の変化を妨げるように電圧を発生させながら、整流回路231から出力される直流やインバータ回路233から出力(回生)される直流を平滑化する。
【0086】
インバータ回路233は、電源線L_P1,L_N1の他端に接続される。インバータ回路233は、パワーデバイス233PDを含む。パワーデバイス233PDは、例えば、半導体スイッチである。半導体スイッチは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やHEMT(High Electron Mobility Transistor)等である。半導体スイッチは、例えば、ケイ素(シリコン:Si)を主材料として構成される。また、半導体スイッチは、ワイドバンドギャップ半導体材料を主材料として構成されてもよい。また、パワーデバイス233PDは、半導体スイッチに加えて、半導体スイッチと並列に接続される半導体によるフリーホイルダイオードを含んでもよい。
【0087】
インバータ回路233は、パワーデバイス233PDのスイッチ動作により、平滑回路232から出力される直流を所定の周波数や所定の電圧を有する3相交流(即ち、U相、V相、及びW相の交流)に変換し電動機113Mに出力する。パワーデバイス233PDは、比較的高いスイッチング速度を有してよい。例えば、パワーデバイス233PDのスイッチング速度(即ち、スイッチングに要する時間)は、10ナノ秒以下である。パワーデバイス233PDのスイッチング周波数は、例えば、20kHz(キロヘルツ)以上に設定される。これにより、パワーデバイス233PDのスイッチング動作に起因するノイズ音の周波数を人間の可聴域から外すことができる。
【0088】
放熱部240は、パワーデバイス233PDの熱をパワーデバイス233PDの外部に放熱させる。
【0089】
例えば、
図3に示すように、放熱部240は、ヒートシンクであり、筐体110Hの外面に連結される。筐体110Hのパワーデバイス233PDと対向する箇所には、貫通孔110Haが設けられ、パワーデバイス233PDと放熱部240(ヒートシンク)とは、貫通孔110Haを通じて熱伝導が可能なように熱結合される。
【0090】
パワーデバイス233PDと放熱部240(ヒートシンク)とは、例えば、絶縁体である放熱促進部材を介して熱伝導が可能なように間接的に接触する。放熱促進部材は、例えば、熱伝導フィラを含む熱伝導シートや熱伝導グリス等である。また、パワーデバイス233PDと放熱部240(ヒートシンク)とは、熱伝導が可能なように、直接接触していてもよい。
【0091】
また、放熱部240は、内部に冷媒が通流するウォータジャケット等であってもよい。
【0092】
以下、筐体110H及び放熱部240を一体的に「導体部260」と称する場合がある。
【0093】
誘電体250は、筐体110Hと電源線L_R4,L_S4,L_T4のそれぞれとが対向する箇所において、筐体110Hと電源線L_R4,L_S4,L_T4のそれぞれとの間に配置される。例えば、誘電体250は、1つ設けられ、筐体110Hと電源線L_R4,L_S4,L_T4のそれぞれとが対向している範囲に跨るように配置される。また、誘電体250は、3つ設けられ、筐体110Hと、電源線L_R4,L_S4,L_T4とが対向している箇所ごとに配置されてもよい。
【0094】
具体的には、
図3に示すように、誘電体250は、面250s1が筐体110Hの内面110Hsと対向し、面250s2が電源線L_R4,L_S4,L_T4に相当する配線パターンの面WPs1,WPs2,WPs3と対向するように配置される。これにより、
図2に示すように、誘電体250は、対向するように配置される、筐体110Hと電源線L_R4,L_S4,L_T4のそれぞれとの間の浮遊容量Cs_R,Cs_S,Cs_Tを増加させることができる。以下、浮遊容量Cs_R,Cs_S,Cs_Tの合成容量を「浮遊容量Cs0」と称する。
【0095】
誘電体250と筐体110Hとの間の対向する方向での位置関係は、浮遊容量Cs0を適切なレベルまで増加させることが可能である限り任意であってよい。例えば、
図3に示すように、誘電体250は、面250s1が筐体110Hの内面110Hsに直接接触し、面250s1側の一端が筐体110Hに支持される。また、誘電体250は、面250s1と筐体110Hの内面110Hsとの間に微小な隙間が存在する形で、面250s1と筐体110Hの内面110Hsとが近接にあるように配置されてもよい。微小な隙間とは、例えば、1mm以下の隙間である。
【0096】
同様に、誘電体250と電源線L_R4,L_S4,L_T4との間の対向する方向での位置関係は、浮遊容量Cs0を適切なレベルまで増加させることが可能である限り任意であってよい。例えば、
図3に示すように、筐体110Hの内面110Hsから見て、基板220PBの裏面に電源線L_R4,L_S4,L_T4に相当する配線パターンが実装される場合、誘電体250は、面250s2が基板220PBの表面に当接する。これにより、誘電体250は、面250s2側の他端が基板220PBに支持され、面250s2が基板220PBを介して電源線L_R4,L_S4,L_T4に相当する配線パターンの面WPs1,WPs2,WPs3と対向することができる。また、この場合、誘電体250の面250s2と基板220PBとの間に微小な隙間が存在する形で、面250s2と基板220PBとが近接にあるように配置されてもよい。また、筐体110Hの内面110Hsから見て、基板220PBの表面に電源線L_R4,L_S4,L_T4に相当する配線パターンが実装される場合、誘電体250の面250s2は、配線パターンの面WPs1,WPs2,WPs3に直接接触してもよい。また、この場合、誘電体250は、面250s2と配線パターンの面WPs1,WPs2,WPs3のそれぞれとの間に微小な隙間が存在する形で、面250s2と配線パターンの面WPs1,WPs2,WPs3のそれぞれとが近接にあるように配置されてもよい。
【0097】
尚、誘電体250と、筐体110H及び電源線L_R4,L_S4,L_T4を含む基板220PBの何れか一方との間に微小な隙間が存在する場合、誘電体250は、他の支持部材により支持されてよい。例えば、基板220PBと筐体110Hの内面110Hsとが対向する方向と直交する方向から誘電体250を支持する支持部材が設けられる。
【0098】
誘電体250は、例えば、300MHz(メガヘルツ)以下の周波数帯域での比誘電率が5以上である。これにより、例えば、EMI(Electromagnetic Interference)に関する各種の規格で放射ノイズが問題となる周波数帯域(30MHz~300MHz)において、浮遊容量Cs0を十分に増加させることができる。具体的には、誘電体250は、例えば、シリコン樹脂やウレタンを含む。これにより、誘電体250は、所望の周波数帯域で比較的高い浮遊容量Cs0を実現することができるのに加えて、比較的高い衝撃吸収性を実現することができる。そのため、例えば、製造工程での誘電体250の取付作業性を向上させることができる。また、基板220PBや筐体110Hに比較的高い衝撃が加わった場合であっても、誘電体250や誘電体250を支持する他の部品等に問題が生じるような事態を抑制することができる。
【0099】
[電力変換装置に生じるコモンモード電流]
次に、
図4~
図6を参照して、本実施形態に係る電力変換装置200に生じるコモンモード電流について説明する。
【0100】
図4は、比較例に係る電力変換装置200comをコモンモードで表現した等価回路を示す図である。
図5は、浮遊容量及び寄生インダクタンスのそれぞれの周波数とインピーダンスとの関係の一例を示す図である。
図6は、電力変換装置200の一例をコモンモードで表現した等価回路を示す図である。
【0101】
図5では、周波数を表す横軸として対数軸が採用されている。
【0102】
<比較例に係る電力変換装置のコモンモード電流>
図4に示すように、比較例に係る電力変換装置200comは、誘電体250が設けられない点で、上述の一例(
図2)の電力変換装置200と異なり、他の点で上述の一例の電力変換装置200と同じである。
【0103】
インバータ230のパワーデバイス233PDと放熱部240との間には、浮遊容量Cs1が存在する。そのため、パワーデバイス233PDのスイッチング動作に起因してパワーデバイス233PDと放熱部240との間にコモンモード電圧が発生し、浮遊容量Cs1を通じてコモンモード電流Icが導体部260に流出する場合がある。
【0104】
電力変換装置200comは、導体部260に流出したコモンモード電流Icの少なくとも一部に相当するコモンモード電流Ic_ref1を、Yコンデンサ222が設けられるバイパス経路を通じて、インバータ230に還流させることができる。
【0105】
Yコンデンサ222を含むバイパス経路には、リード線225の寄生インダクタンス成分と、基板220PB上の配線パターン222WPの寄生インダクタンス成分とが存在する。
【0106】
ここで、
図5に示すように、寄生インダクタンス成分は、電流の周波数が高くなるにつれてインピーダンスが増加する。そのため、例えば、パワーデバイス233PDが20kHz以上の比較的高い周波数で駆動される場合、高周波のコモンモード電流Icが流出し、インピーダンスが高いバイパス経路にコモンモード電流Ic_ref1を十分に引き込めない可能性がある。
【0107】
また、上述の如く、筐体110Hと電源線L_R4,L_S4,L_T4との間には、浮遊容量Cs0が存在し、浮遊容量Cs0を通じてインバータ230にコモンモード電流Icを還流させる経路が存在する。しかし、
図5に示すように、誘電体250が存在しない場合、浮遊容量Cs0のインピーダンスは、比較的高い。そのため、浮遊容量Cs0のインピーダンスが周波数の上昇に応じて低下するとは言え、電力変換装置200comは、浮遊容量Cs0を通じてインバータ230にコモンモード電流Icを還流させることができない可能性が高い。
【0108】
よって、
図4に示すように、比較例に係る電力変換装置200comは、コモンモード電流Ic_outの商用電源PS側への流出を適切に抑制することができない可能性がある。
【0109】
<実施形態に係る電力変換装置のコモンモード電流>
本実施形態に係る電力変換装置200では、上述の如く、筐体110Hと、電源線L_R4,L_S4,L_T4のそれぞれとの間に誘電体250が配置される。
【0110】
これにより、浮遊容量Cs0を増加させることができる。そのため、
図5に示すように、浮遊容量Cs0のインピーダンスを低下させることができる。また、浮遊容量Cs0を通じたバイパス経路には、配線パターンやリード線等が存在しないことから、寄生インダクタンスによるインピーダンスの増加分もない。その結果、電力変換装置200は、Yコンデンサ222を含むバイパス経路に加えて、浮遊容量Cs0を通じてインバータ230にコモンモード電流Ic_ref2を還流させることができる。特に、浮遊容量Cs0を通じたバイパス経路では、浮遊容量Cs0のインピーダンスが周波数の上昇に応じて低下し、且つ、寄生インダンクタンス成分による周波数の上昇に応じたインピーダンスの増加がない。そのため、電力変換装置200は、高周波のコモンモード電流Icが導体部260に流出する場合でも、浮遊容量Cs0を通じて高周波のコモンモード電流Ic_ref2をインバータ230に十分に還流させることができる。
【0111】
よって、
図6に示すように、電力変換装置200は、コモンモード電流Ic_outの商用電源PS側への流出をより適切に抑制することができる。
【0112】
[他の実施形態]
次に、他の実施形態について説明する。
【0113】
上述の実施形態は、適宜、変形や変更が加えられてもよい。
【0114】
例えば、上述の実施形態では、誘電体250は、筐体110Hの内面110Hsと電源線L_R4,L_S4,L_T4との間に代えて、筐体110Hの内面110Hsと電源線L_R3,L_S3,L_T3との間に設けられてもよい。
【0115】
また、上述の実施形態では、誘電体250は、面250s2が配線パターンの面WPs1,WPs2,WPs3に代えて、基板230PBに実装される電源線L_P1,L_N1の配線パターンの面と対向するように配置されてもよい。この場合、誘電体250の面250s2は、電源線L_P1,L_N1の対向する面と直接接触していてもよいし、電源線L_P1,L_N1の対向する面と微小な隙間を有する態様で近接に配置されてもよい。これにより、電力変換装置200は、ノイズ源であるパワーデバイス233PDにより近い箇所でコモンモード電流をバイパスさせることができる。そのため、電力変換装置200は、コモンモード電流に起因する放射ノイズをより適切に抑制することができる。
【0116】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、誘電体250は、面250s1が筐体110Hの内面110Hsに代えて、放熱部240の面と対向するように配置されてもよい。この場合、誘電体250の面250s1は、放熱部240の対向する面と直接接触していてもよいし、放熱部240の対向する面と微小な隙間を有する態様で近接に配置されてもよい。これにより、電力変換装置200は、ノイズ源であるパワーデバイス233PDにより近い箇所でコモンモード電流をバイパスさせることができる。そのため、コモンモード電流に起因する放射ノイズをより適切に抑制することができる。
【0117】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、筐体110Hとパワーデバイス233PDとは、放熱部240を介さずにコモンモード電流が流出しうる配置構造になっていてもよい。具体的には、筐体110Hは、パワーデバイス233PDに対して、浮遊容量を通じてコモンモード電流が流出可能な程度の近傍に存在していればよい。パワーデバイス233PDの近傍とは、例えば、パワーデバイス233PDと放熱部240とが放熱促進部材(例えば、放熱シート)を介して間接的に接触する際の放熱促進部材の厚みに相当する程度の距離である。
【0118】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、電力変換装置200は、圧縮機113の電動機113Mに代えて、或いは、加えて、ファン117の電動機に電力を供給し駆動してもよい。
【0119】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、ノイズフィルタ220とインバータ230とは同じ基板に実装されてもよい。
【0120】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、平滑コンデンサ232C及びリアクトル232Lの少なくとも一方が省略されてもよいし、平滑回路232自体が省略されてもよい。
【0121】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、商用電源PSは三相交流ではなく、単相交流を電力変換装置200に供給してもよい。この場合、電源線L_R,L_S,L_Tは、2本の電源線に置換される。また、この場合、コモンモードチョークコイル221は、単相のコモンモードチョークコイルに置換され、Yコンデンサ222は、2本の電源線のそれぞれと筐体110Hをバイパスする2個のYコンデンサに置換される。また、この場合、誘電体250は、筐体110Hの内面110Hsと、単相のコモンモードチョークコイルの前段側の2本の電源線或いは後段側の2本の電源線との間に設置される。
【0122】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、整流回路231のパワーデバイス231PDは、半導体スイッチであってもよい。この場合、パワーデバイス231PDのスイッチング動作により、パワーデバイス231PDと筐体110Hとの間の浮遊容量を通じて筐体110Hにコモンモード電流が流出する。例えば、パワーデバイス233PDに対する放熱部240と同様に、パワーデバイス231PDと熱結合される放熱部が設けられ、その放熱部は、筐体110Hに直接接触する態様で連結される。これにより、パワーデバイス231PDと放熱部との間の浮遊容量にコモンモード電圧が印加され、放熱部を通じて筐体110Hにコモンモード電流が流出する。そのため、電力変換装置200は、誘電体250の作用によって、整流回路231のパワーデバイス231PDをノイズ源とするコモンモード電流をより適切に抑制することができる。
【0123】
また、上述の実施形態の電力変換装置200は、空気調和機100とは異なる冷凍機に搭載されてもよい。つまり、上述の実施形態の電力変換装置200は、冷凍サイクルを有する任意の機器に搭載されてよい。
【0124】
また、上述の実施形態の電力変換装置200は、冷凍機とは異なる機器に搭載され、その機器に搭載される電動機等を駆動してもよい。例えば、上述の実施形態の電力変換装置200は、車両に搭載され、車両の電動機等を駆動してもよい。
【0125】
[作用]
次に、本実施形態に係る電気装置及び空気調和機の作用について説明する。
【0126】
本実施形態では、電気装置は、ノイズフィルタと、第1の配線部と、第2の配線部と、導体部材と、誘電体と、を備える。電気装置は、例えば、上述の電力変換装置200である。ノイズフィルタは、例えば、上述のノイズフィルタ220である。第1の配線部は、例えば、上述の電源線L_R3,L_S3,L_T3である。第2の配線部は、例えば、上述の電源線L_R4,L_S4,L_T4である。導体部材は、例えば、上述の導体部260である。誘電体は、例えば、上述の誘電体250である。具体的には、ノイズフィルタは、コモンモードチョークコイルを含み、一端側及び他端側のうちの他端側がスイッチングデバイスと電気的に接続される。コモンモードチョークコイルは、例えば、上述のコモンモードチョークコイル221である。スイッチングデバイスは、例えば、上述のパワーデバイス233PDである。また、第1の配線部は、コモンモードチョークコイルの一端側に接続される。また、第2の配線部は、コモンモードチョークコイルの他端側に接続される。また、導体部材は、第1の配線部又は第2の配線部に対向する面を有する。また、誘電体は、導体部材と、第1の配線部及び第2の配線部の何れか一方の配線部との間に配置される。そして、誘電体は、第1の面が導体部材の面と対向し、第1の面の反対側の第2の面が第1の配線部及び第2の配線部の何れか一方の配線部の面と対向するように配置される。誘電体の第1の面及び第2の面は、例えば、上述の面250s1及び面250s2である。導体部材の面は、例えば、上述の内面110Hsである。第1の配線部及び第2の配線部の何れか一方の配線部の面は、例えば、上述の面WPs1,WPs2,WPs3である。
【0127】
これにより、第1の配線部及び第2の配線部の何れか一方の配線部と導体部材との間の浮遊容量を増加させることができる。そのため、電気装置は、スイッチングデバイスのスイッチング動作に起因するコモンモード電圧によって導体部材に流出したコモンモード電流を、浮遊容量を介してノイズ源であるスイッチングデバイスに還流させることができる。また、浮遊容量には、リード線等のインダクタンス成分が含まれないことから、高周波の場合であってもインピーダンスが増加することがなく、電気装置は、浮遊容量を介して高周波のコモンモード電流をスイッチングデバイスに十分に還流させることができる。そのため、電気装置は、コモンモード電流の電源側への流出をより適切に抑制することができる。
【0128】
また、本実施形態では、誘電体は、第1の面及び導体部材の面、並びに、第2の面及び何れか一方の配線部の面の双方が接触するように配置されてもよい。
【0129】
これにより、誘電体によって、第1の配線部及び第2の配線部の何れか一方の配線部と導体部材との間の浮遊容量を増加させることができる。
【0130】
また、本実施形態では、誘電体は、第1の面及び導体部材の面、並びに、第2の面及び何れか一方の配線部の面の何れか一方が接触し他方が近接にあるように配置されてもよい。
【0131】
これにより、第1の配線部及び第2の配線部の何れか一方の配線部と導体部材との間の浮遊容量を増加させることができる。
【0132】
また、本実施形態では、誘電体は、第1の面及び導体部材の面、並びに、第2の面及び何れか一方の配線部の面の双方が近接にあるように配置されてもよい。
【0133】
これにより、第1の配線部及び第2の配線部の何れか一方の配線部と導体部材との間の浮遊容量を増加させることができる。
【0134】
また、本実施形態では、誘電体は、導体部材と第2の配線部との間に配置されてもよい。
【0135】
これにより、第1の配線部及び第2の配線部のうち、ノイズ源であるスイッチングデバイスに近い第2の配線部にコモンモード電流をバイパスさせることができる。そのため、コモンモード電流に起因する放射ノイズをより適切に抑制することができる。
【0136】
また、本実施形態では、誘電体は、300MHz以下の周波数帯域での比誘電率が5以上であってもよい。
【0137】
これにより、例えば、EMIに関する各種の規格で放射ノイズが問題となる周波数帯域(30MHz~300MHz)において、第1の配線部及び第2の配線部の何れか一方の配線部と導体部材との間の浮遊容量を十分に増加させることができる。そのため、電気装置は、導体部材に流出したコモンモード電流を、浮遊容量を介してノイズ源であるスイッチングデバイスより適切に還流させることができる。
【0138】
また、本実施形態では、誘電体の材質は、シリコン樹脂又はウレタンを含んでもよい。
【0139】
これにより、誘電体の誘電率を比較的大きく設定し、第1の配線部及び第2の配線部の何れか一方の配線部と導体部材との間の浮遊容量を十分に増加させることができる。
【0140】
また、本実施形態では、誘電体は、衝撃吸収性を有していてもよい。
【0141】
これにより、例えば、製造工程での誘電体の取付作業性を向上させることができる。また、電気装置は、例えば、第1の配線部及び第2の配線部が実装される基板や導体部材に衝撃が加わった場合であっても、誘電体や誘電体と連結される他の部品に問題が生じるような事態を抑制することができる。
【0142】
また、本実施形態では、電気装置は、上述のスイッチングデバイスを備えてもよい。また、第2の配線部は、コモンモードチョークコイルの他端側とスイッチングデバイスとの間に接続されてもよい。そして、導体部材は、スイッチングデバイスの近傍に存在すると共に、第1の配線部及び第2の配線部の何れか一方の配線部に対向する面を有していてもよい。
【0143】
これにより、電気装置は、スイッチングデバイスのスイッチング動作に起因するコモンモード電圧によって導体部材に流出したコモンモード電流の電源側への流出をより適切に抑制することができる。
【0144】
また、本実施形態では、導体部材は、スイッチングデバイスと熱結合された放熱部材を含んでもよい。放熱部材は、例えば、上述の放熱部240である。
【0145】
これにより、電気装置は、放熱部材を介して導体部材に流出したコモンモード電流の電源側への流出をより適切に抑制することができる。
【0146】
また、本実施形態では、スイッチングデバイスを含むインバータ又はコンバータを備えてもよい。インバータは、例えば、上述のインバータ回路233である。コンバータは、例えば、上述の整流回路231である。
【0147】
これにより、電気装置は、インバータ或いはコンバータのスイッチングデバイスのスイッチング動作に起因するコモンモード電圧によって導体部材に流出したコモンモード電流の電源側への流出をより適切に抑制することができる。
【0148】
また、本実施形態では、電気装置は、ノイズフィルタが実装される第1の基板と、第1の基板と異なる第2の基板であって、スイッチングデバイスが実装される第2の基板と、を備えてもよい。
【0149】
これにより、電気装置は、第2の基板のスイッチングデバイスから導体部材に流出したコモンモード電流を、浮遊容量によって第1の基板の第1の配線部或いは第2の配線部にバイパスさせることができる。
【0150】
また、本実施形態では、スイッチングデバイスは、ワイドバンドギャップ半導体により形成されるスイッチング素子を含んでもよい。
【0151】
これにより、電気装置は、ワイドバンドギャップ半導体により形成されるスイッチング素子を含むスイッチングデバイスから導体部材に流出したコモンモード電流の電源側への流出をより適切に抑制することができる。
【0152】
また、本実施形態では、スイッチングデバイスのスイッチング周波数は20kHz以上であってもよい。
【0153】
これにより、電気装置は、スイッチングデバイスのスイッチング周波数が20kHzと比較的高く、高周波のコモンモード電流が導体部材に流出する場合でも、コモンモード電流の電源側への流出をより適切に抑制することができる。
【0154】
また、本実施形態では、スイッチングデバイスのスイッチング速度は、10ナノ秒以下であってもよい。
【0155】
これにより、電気装置は、スイッチングデバイスのスイッチング速度が10ナノ秒以下と比較的高く、高周波のコモンモード電流が導体部材に流出する場合でも、コモンモード電流の電源側への流出をより適切に抑制することができる。
【0156】
また、本実施形態では、空気調和機は、上記の電気装置を備えてもよい。空気調和機は、例えば、上述の空気調和機100である。
【0157】
これにより、電気装置は、空気調和機の外部への放射ノイズを抑制することができる。
【0158】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0159】
100 空気調和機
110 室外機
110H 筐体
110Hs 内面
113 圧縮機
113M 電動機
120 室内機
130 冷媒経路
140 冷媒経路
200 電力変換装置
210 電源端子台
220 ノイズフィルタ
220PB 基板
221 コモンモードチョークコイル
222 Yコンデンサ
222R,222S,222T Yコンデンサ
222WP 配線パターン
225 リード線
230 インバータ
230PB 基板
231 整流回路
232 平滑回路
233 インバータ回路
233PD パワーデバイス
240 放熱部
250 誘電体
250s1,250s2 面
260 導体部
Cs_R,Cs_S,Cs_T 浮遊容量
Cs0,Cs1 浮遊容量
L_N1 電源線
L_P1 電源線
L_R 電源線
L_R1~L_R5 電源線
L_S 電源線
L_S1~L_S5 電源線
L_T 電源線
L_T1~L_T5 電源線
PS 商用電源
WPs1,WPs2,WPs3 面
【手続補正書】
【提出日】2025-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンモードチョークコイルを含み、一端側及び他端側のうちの他端側がスイッチングデバイスと電気的に接続されるノイズフィルタと、
前記コモンモードチョークコイルの一端側に接続される第1の配線部と、
前記コモンモードチョークコイルの他端側に接続される第2の配線部と、
前記第1の配線部又は第2の配線部に対向する面を有する導体部材と、
前記第2の配線部と前記導体部材との間を電気的に接続する経路に設けられるYコンデンサと、
前記Yコンデンサとは別に設けられ、前記導体部材と、前記第1の配線部及び前記第2の配線部の何れか一方の配線部との間に配置される誘電体と、を備え、
前記誘電体は、第1の面が、前記導体部材の面と対向し、前記第1の面の反対側の第2の面が前記何れか一方の配線部の面と対向するように配置される、
電気装置。
【請求項2】
前記誘電体は、前記第1の面及び前記導体部材の面、並びに、前記第2の面及び前記何れか一方の配線部の面の双方が接触するように配置される、
請求項1に記載の電気装置。
【請求項3】
前記誘電体は、前記第1の面及び前記導体部材の面、並びに、前記第2の面及び前記何れか一方の配線部の面の何れか一方が接触し他方が近接にあるように配置される、
請求項1に記載の電気装置。
【請求項4】
前記誘電体は、前記第1の面及び前記導体部材の面、並びに、前記第2の面及び前記何れか一方の配線部の面の双方が近接にあるように配置される、
請求項1に記載の電気装置。
【請求項5】
前記誘電体は、前記導体部材と前記第2の配線部との間に配置される、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気装置。
【請求項6】
前記誘電体は、300MHz以下の周波数帯域での比誘電率が5以上である、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気装置。
【請求項7】
前記誘電体の材質は、シリコン樹脂又はウレタンを含む、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気装置。
【請求項8】
前記誘電体は、衝撃吸収性を有する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気装置。
【請求項9】
スイッチングデバイスを備え、
前記第2の配線部は、前記コモンモードチョークコイルの他端側と前記スイッチングデバイスとの間に接続され、
前記導体部材は、前記スイッチングデバイスの近傍に存在すると共に、前記何れか一方の配線部に対向する面を有する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気装置。
【請求項10】
前記導体部材は、前記スイッチングデバイスと熱結合された放熱部材を含む、
請求項9に記載の電気装置。
【請求項11】
前記スイッチングデバイスを含むインバータ又はコンバータを備える、
請求項9に記載の電気装置。
【請求項12】
前記ノイズフィルタが実装される第1の基板と、
前記第1の基板と異なる第2の基板であって、前記スイッチングデバイスが実装される第2の基板と、を備える、
請求項9に記載の電気装置。
【請求項13】
前記スイッチングデバイスは、ワイドバンドギャップ半導体により形成されるスイッチング素子を含む、
請求項9に記載の電気装置。
【請求項14】
前記スイッチングデバイスのスイッチング周波数は20kHz以上である、
請求項9に記載の電気装置。
【請求項15】
前記スイッチングデバイスのスイッチング速度は、10ナノ秒以下である、
請求項9に記載の電気装置。
【請求項16】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気装置を備える、
空気調和機。