(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025059916
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】霧化装置
(51)【国際特許分類】
A61M 11/02 20060101AFI20250403BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20250403BHJP
B05B 1/28 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
A61M11/02 K
B05B7/04
B05B1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170315
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】実藤 佳樋則
(72)【発明者】
【氏名】下山 浩一
(72)【発明者】
【氏名】三原 純一
(72)【発明者】
【氏名】進藤 容
【テーマコード(参考)】
4F033
【Fターム(参考)】
4F033BA02
4F033BA03
4F033DA01
4F033EA01
4F033JA01
4F033JA08
4F033LA11
4F033NA01
4F033QA10
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB17
4F033QC07
4F033QD02
4F033QD07
4F033QD14
4F033QD15
4F033QE09
4F033QF01X
4F033QF07Y
4F033QF13X
4F033QF15Y
(57)【要約】
【課題】液体の残留を抑制することができる霧化装置を提供すること。
【解決手段】霧化装置であるネブライザ10は、圧縮空気を噴出するノズル孔431aを上端面431に有し、ノズル孔431aの出口領域が霧化領域70となる圧縮空気導入管43と、圧縮空気導入管43を囲むように設けられ、液体Wを貯留する液体貯留部42と、圧縮空気導入管43に被せられ、液体Wを液体貯留部42から吸い上げて霧化領域70に供給するキャップと、霧化領域70を覆うカバー50と、を有する。また、カバー50は、エアロゾルASを排出するエアロゾル排出部53と、エアロゾルASをエアロゾル排出部53まで導く流路を形成する流路形成部52と、エアロゾル排出部53に付着した液体Wを液体貯留部42に戻す液体戻し部54と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を噴出するノズル孔を上端面に有し、前記ノズル孔の出口領域がエアロゾルを生成する霧化領域となる圧縮空気導入管と、
前記圧縮空気導入管を囲むように設けられ、液体を貯留する液体貯留部と、
前記圧縮空気導入管に被せられ、前記液体を前記液体貯留部から吸い上げて前記霧化領域に供給するキャップと、
前記霧化領域を覆うカバーと、を有し、
前記カバーは、
前記エアロゾルを排出するエアロゾル排出部と、
前記エアロゾルを前記エアロゾル排出部まで導く流路を形成する流路形成部と、
前記エアロゾルとして前記エアロゾル排出部に導入され、前記エアロゾル排出部に付着した前記液体を前記液体貯留部に戻す液体戻し部と、を有することを特徴とする霧化装置。
【請求項2】
前記エアロゾル排出部は、前記流路形成部から上側に向けて突出する筒状であり、
前記流路形成部は、前記エアロゾル排出部の側壁部を介して前記エアロゾル排出部の内部に連通する第1連通孔を有し、
前記エアロゾルは、前記第1連通孔を介して前記流路形成部から前記エアロゾル排出部に導入される請求項1に記載の霧化装置。
【請求項3】
前記液体戻し部は、前記流路形成部の上側に、前記エアロゾル排出部と接して配置され、前記エアロゾル排出部の前記側壁部を介して前記エアロゾル排出部の内部に連通する第2連通孔を有し、
前記流路形成部は、前記液体戻し部の底部を介して前記液体戻し部の内部に連通する第3連通孔を有し、
前記エアロゾル排出部に付着した前記液体は、前記第2連通孔および前記第3連通孔を介して前記液体貯留部に戻される請求項2に記載の霧化装置。
【請求項4】
前記第1連通孔および前記第2連通孔は、前記エアロゾル排出部の中心軸に対して互いに反対側に位置している請求項3に記載の霧化装置。
【請求項5】
前記エアロゾル排出部内の前記液体を前記第2連通孔に誘導するガイド部を有する請求項3に記載の霧化装置。
【請求項6】
前記液体戻し部は、前記エアロゾルの前記第2連通孔を介した前記エアロゾル排出部への導入を規制する規制部を有する請求項3に記載の霧化装置。
【請求項7】
前記規制部は、前記第3連通孔を介して前記液体戻し部に導入される前記エアロゾルを誘導して前記第3連通孔に向かわせるガイド面を有する請求項6に記載の霧化装置。
【請求項8】
前記流路形成部は、前記エアロゾル排出部の下側開口の少なくとも一部を塞いで設けられ、前記エアロゾルに含まれる前記液体の粒子を選別する選別部を有する請求項3に記載の霧化装置。
【請求項9】
前記流路形成部は、対向配置された第1側壁部および第2側壁部を有し、
前記第1側壁部の内面および前記第2側壁部の内面は、それぞれ、上側に向けて並んで配置され、互いに向きの異なる複数の平坦面を有する請求項1に記載の霧化装置。
【請求項10】
前記エアロゾル排出口に接続され、前記エアロゾル排出口から排出された前記エアロゾルを使用者の体内へ導くマウスピースを有する請求項1に記載の霧化装置。
【請求項11】
前記圧縮空気を前記圧縮空気導入管に導入するコンプレッサを有する請求項1に記載の霧化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、霧化装置として、水、食塩水、気管支等の疾患を治療する薬液等の液体を霧化してエアロゾルを生成するためのネブライザキットが知られている。ネブライザキットによって生成されたエアロゾルは、使用者によって口や鼻から吸引されて体内に取り込まれる。
【0003】
このようなネブライザキットとして、例えば、特許文献1に記載されたネブライザキットが知られている。
図1に示すように、このネブライザキット9は、ケース体91と、霧化部形成体92と、流路形成体93と、キャップ体94と、を有する。
【0004】
ケース体91は、食塩水、気管支等の疾患を治癒させるための薬液、ワクチン等の液体W1を一時的に貯留する液体貯留部912を有する。さらに、ケース体91は、液体貯留部912の中央部を突き抜けて形成された圧縮空気導入管911を有する。圧縮空気導入管911は、上側に向けてテーパ状に縮径する円筒状をなし、上端面にノズル孔911aを有する。圧縮空気導入管911には、図示しないコンプレッサから圧縮空気が導入され、圧縮空気導入管911に導入された圧縮空気がノズル孔911aから噴き出す。また、ケース体91の上端部には、ケース体91内で生成されたエアロゾルを排出するエアロゾル排出口913が設けられており、当該部分に図示しないマウスピースが接続される。
【0005】
霧化部形成体92は、圧縮空気導入管911に覆い被さり、圧縮空気導入管911との間に液体W1の吸上経路99を形成する筒状の吸液管形成部921を有する。吸液管形成部921は、圧縮空気導入管911に倣った形状であり、上側に向けてテーパ状に縮径する円筒状をなす。そして、吸液管形成部921の内周面と圧縮空気導入管911の外周面との隙間によって吸上経路99が形成されている。また、霧化部形成体92は、ノズル孔911aの直上に設けられたバッフル922を有する。そして、
図2に示すように、圧縮空気導入管911とバッフル922との間に霧化部98が形成されている。
【0006】
また、
図1に示すように、流路形成体93は、ケース体91の内部空間を仕切り、外気の流路を形成している。また、キャップ体94は、流路形成体93に嵌め込まれ、流路形成体93との間にケース体91の内外を連通する圧力調整用隙間96が設けられている。
【0007】
このようなネブライザキット9では、コンプレッサから圧縮空気導入管911に導入された圧縮空気がノズル孔911aから噴き出し、その直上に位置するバッフル922に噴き付けられる。すると、霧化部98が負圧(周囲よりも圧力が低い状態)となる。そのため、液体貯留部912に貯留された液体W1が吸上経路99から吸い上げられ、圧縮空気と共にバッフル922に噴き付けられる。液体W1は、バッフル922に衝突することで微細な液滴(霧状粒子)となる。さらに、この微細な液滴に圧力調整用隙間96からケース体91内に導入された外気が付与され、微細な液滴が外気内に分散することでエアロゾルが生成される。そして、生成されたエアロゾルは、エアロゾル排出口913を介してケース体91外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のネブライザキット9では、エアロゾル排出口913の手前に段差95が形成されている。そのため、例えば、
図3に示すように、エアロゾルに含まれる液体W1がエアロゾル排出口913から排出される手前で流路形成体93の内面に付着し、付着した液体W1が垂下して段差95に溜まってしまう場合がある。段差95に液体W1が溜まってしまうと、その分、使用者の体内に供給される液体W1の量が減り、適切な吸引、治療を行うことができない。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、液体の残留を抑制することができる霧化装置、特にネブライザキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、以下の(1)の本発明により達成される。
【0012】
(1) 圧縮空気を噴出するノズル孔を上端面に有し、前記ノズル孔の出口領域がエアロゾルを生成する霧化領域となる圧縮空気導入管と、
前記圧縮空気導入管を囲むように設けられ、液体を貯留する液体貯留部と、
前記圧縮空気導入管に被せられ、前記液体を前記液体貯留部から吸い上げて前記霧化領域に供給するキャップと、
前記霧化領域を覆うカバーと、を有し、
前記カバーは、
前記エアロゾルを排出するエアロゾル排出部と、
前記エアロゾルを前記エアロゾル排出部まで導く流路を形成する流路形成部と、
前記エアロゾルとして前記エアロゾル排出部に導入され、前記エアロゾル排出部に付着した前記液体を前記液体貯留部に戻す液体戻し部と、を有することを特徴とする霧化装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の霧化装置では、カバーが、エアロゾルを排出するエアロゾル排出部と、エアロゾルをエアロゾル排出部まで導く流路を形成する流路形成部と、エアロゾル排出部に付着した液体を液体貯留部に戻す液体戻し部と、を有する。このように、液体戻し部を介してエアロゾル排出部に付着した液体を液体貯留部に戻すことで、装置内での液体の残留を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】従来のネブライザキットの一例を示す断面図である。
【
図2】
図1のネブライザキットの霧化部およびその周辺を示す拡大断面図である。
【
図3】
図1のネブライザキットの課題を説明するための断面図である。
【
図4】第1実施形態にかかる霧化装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図5】ネブライザキットをY軸方向マイナス側から見た断面図である。
【
図6】ネブライザキットをX軸方向プラス側から見た断面図である。
【
図8】圧縮空気導入管の上端部の拡大断面図である。
【
図9】圧縮空気導入管を上側から見た平面図である。
【
図11】キャップをY軸方向マイナス側から見た断面図である。
【
図12】キャップをX軸方向プラス側から見た断面図である。
【
図14】エアロゾル形成突起をY軸方向マイナス側から見た断面図である。
【
図15】エアロゾル形成突起の変形例をY軸方向マイナス側から見た断面図である。
【
図16】エアロゾル形成突起の変形例をY軸方向マイナス側から見た断面図である。
【
図17】エアロゾル形成突起を上側から見た平面図である。
【
図18】エアロゾル形成突起の変形例を上側から見た平面図である。
【
図19】エアロゾル形成突起をX軸方向プラス側から見た平面図である。
【
図21】ネブライザキットの動作を説明するための断面図である。
【
図22】ネブライザキットの動作を説明するための断面図である。
【
図23】ネブライザキットの動作を説明するための断面図である。
【
図24】ネブライザキットの動作を説明するための断面図である。
【
図25】ネブライザキットの動作を説明するための断面図である。
【
図26】ネブライザキットの動作を説明するための断面図である。
【
図27】第2実施形態にかかるネブライザが備えるエアロゾル形成突起をX軸方向プラス側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の霧化装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図4は、第1実施形態にかかる霧化装置の全体構成を示す斜視図である。
図5は、ネブライザキットをY軸方向マイナス側から見た断面図である。
図6は、ネブライザキットをX軸方向プラス側から見た断面図である。
図7は、圧縮空気導入管の拡大断面図である。
図8は、圧縮空気導入管の上端部の拡大断面図である。
図9は、圧縮空気導入管を上側から見た平面図である。
図10は、キャップの斜視図である。
図11は、キャップをY軸方向マイナス側から見た断面図である。
図12は、キャップをX軸方向プラス側から見た断面図である。
図13は、キャップを下側から見た平面図である。
図14は、エアロゾル形成突起をY軸方向マイナス側から見た断面図である。
図15は、エアロゾル形成突起の変形例をY軸方向マイナス側から見た断面図である。
図16は、エアロゾル形成突起の変形例をY軸方向マイナス側から見た断面図である。
図17は、エアロゾル形成突起を上側から見た平面図である。
図18は、エアロゾル形成突起の変形例を上側から見た平面図である。
図19は、エアロゾル形成突起をX軸方向プラス側から見た平面図である。
図20は、カバーの断面斜視図である。
図21ないし
図26は、それぞれ、ネブライザキットの動作を説明するための断面図である。
【0017】
なお、説明の便宜上、各図に、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸を図示している。また、以下では、X軸に沿う方向を「X軸方向」、Y軸に沿う方向を「Y軸方向」、Z軸に沿う方向を「Z軸方向」とも言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」、反対側を「マイナス側」とも言う。特に、Z軸は、鉛直方向に沿っており、Z軸方向のプラス側を「上」、マイナス側を「下」とも言う。
【0018】
図4に示すように、本実施形態の霧化装置は、水、食塩水、気管支等の疾患を治療する薬液等の液体を霧化してエアロゾルASを生成するネブライザ10に適用されている。ネブライザ10によって生成されたエアロゾルASは、使用者によって口や鼻から吸引されて体内に取り込まれる。
【0019】
霧化装置としてのネブライザ10は、本体11と、ネブライザキット20と、本体11とネブライザキット20とを接続する圧縮空気管であるチューブ13と、ネブライザキット20に接続されるマウスピース15と、を有する。
【0020】
本体11は、圧縮空気を送り出すコンプレッサ111と、コンプレッサ111の駆動を制御する制御部112と、を有する。また、本体11は、コンプレッサ111から送り出された圧縮空気を排出する排出口113を有する。コンプレッサ111から送り出す圧縮空気の圧力としては、特に限定されないが、例えば、50KPa~70KPa程度とすることができる。また、コンプレッサ111から送り出す圧縮空気の流量としては、特に限定されないが、例えば、1.0L~2.0L/min程度とすることができる。
【0021】
チューブ13は、可撓性を有し、その一端が排出口113に接続され、他端がネブライザキット20に接続される。コンプレッサ111から送り出された圧縮空気は、チューブ13を通ってネブライザキット20に導入される。
【0022】
マウスピース15は、ネブライザキット20の上端部に接続して用いられ、使用者による吸引に供される。マウスピース15は、ネブライザキット20に対して着脱自在であり、洗浄して繰り返し使用するものでも、使用後に破棄するものでも、どちらでもよい。本実施形態では、マウスピース15は、途中で屈曲したL字管状であるが、マウスピース15の形状は、特に限定されず、用途によって適宜変更することができる。
【0023】
以上、ネブライザ10のうち、ネブライザキット20以外の各部について簡単に説明した。次に、ネブライザキット20について詳細に説明する。
【0024】
図5および
図6に示すように、ネブライザキット20は、その中心軸JがZ軸(鉛直方向)に沿う姿勢、具体的には、Z軸に対する中心軸Jの傾きが15°以下となる姿勢での使用を推奨している。ただし、ネブライザキット20の使用時の姿勢は、特に限定されない。
【0025】
また、ネブライザキット20は、ケース本体30と、ケース本体30内に設けられたキャップ60と、を有する。また、ケース本体30は、ケース本体30の下端側を構成するボトル40と、ケース本体30の上端側を構成するカバー50と、を有する。
【0026】
ネブライザキット20は、分解可能である。そのため、個々の部品を容易に洗浄することができる。したがって、ネブライザキット20の衛生を容易に保つことができる。なお、後述するように、比較的小さい部品であるキャップ60をカバー50に固定できる構成としているため、分解時の部品の紛失を抑制することもできる。以下、ボトル40、カバー50およびキャップ60について順に説明する。
【0027】
≪ボトル40≫
図5および
図6に示すように、ボトル40は、円筒状の筒部41と、筒部41内に設けられた圧縮空気導入管43および圧縮空気導入管43の周囲を囲むようにして設けられた液体貯留部42と、を有する。筒部41は、上側に向かって拡径するテーパ状であり、上下両端にそれぞれ開口を有する。また、筒部41の上端部には、図示しない嵌合孔が形成され、この嵌合孔にカバー50が有する図示しない嵌合突起が嵌合することで、ボトル40にカバー50が装着される。ただし、カバー50の装着方法は、特に限定されず、例えば、螺合、圧入等により装着される構成であってもよい。
【0028】
液体貯留部42は、水、食塩水、気管支等の疾患を治癒させるための薬液、または、ワクチンといった液体Wを一時的に貯留する。液体貯留部42は、筒部41内に設けられており、筒部41の内部空間を上下に分割する。また、液体貯留部42は、上側を向く椀状であり、中央部(圧縮空気導入管43の周辺)に液体Wが集まるように、外縁側から中央側に向かって傾斜している。このような構成とすることで、液体貯留部42に貯留された液体Wの水かさを高く維持することができ、液体Wの噴霧量の低下を抑制することができる。
【0029】
特に、本実施形態では、外縁部の傾斜よりも中央部の傾斜が強く、上述の効果がより顕著となる。なお、本実施形態では、X-Y平面に対する外縁部の傾斜角が20°程度、中央部の傾斜角が60°程度となっている。これにより、推奨範囲内で中心軸Jが傾いても、液体Wを液体貯留部42の中央部に集めることができる。
【0030】
図7に示すように、圧縮空気導入管43は、中心軸Jに沿い、液体貯留部42の中央部を貫通して延びている。また、圧縮空気導入管43の液体貯留部42から突出する部分である突出部430は、上側に向けてテーパ状に縮径する円筒状をなしている。また、突出部430の上端面431は、中心軸Jに直交している。また、上端面431には、中心軸Jに沿い、圧縮空気導入管43の内外を連通するノズル孔431aが形成されている。そして、ノズル孔431aの直上の領域(空間)、つまり、ノズル孔431aの出口領域がエアロゾルASを生成する霧化領域70となる。
【0031】
また、上端面431と外周面432との間が面取りされ、これらの間に傾斜面433が形成されている。そのため、傾斜面433を介して上端面431と外周面432とがなだらかに接続されている。
【0032】
ここで、後述するように、ネブライザ10の動作を開始する際、上端面431および傾斜面433に液体Wを保持させる。そこで、本実施形態では、上端面431および傾斜面433の表面粗さを外周面432の表面粗さよりも大きくし、液体Wを保持する力を高めている。具体的には、
図8に示すように、上端面431および傾斜面433の表面に、例えば、シボ加工、エンボス加工等によって微細な凹凸を形成し、液体Wを保持する力を高めている。
【0033】
そのため、上端面431および傾斜面433により多くの液体Wを保持することができ、エアロゾルASを安定して生成することができる。なお、例えば、研磨によって上端面431および傾斜面433の表面を荒らすことでも、同様の効果を発揮することができる。ただし、上端面431および傾斜面433の構成は、特に限定されず、凹凸が実質的に形成されていない平坦面であってもよい。
【0034】
図7に示すように、圧縮空気導入管43の下端部には、チューブ13が接続される。そして、チューブ13を介してコンプレッサ111から圧縮空気導入管43内に導入された圧縮空気は、ノズル孔431aから圧縮空気導入管43外に勢いよく噴き出す。
【0035】
また、
図9に示すように、ノズル孔431aは、オーバル形状(小判状)であり、X軸方向に沿って延在している。なお、オーバル形状は、2つの半円弧の両端同士を直線で繋いだ形状またはこれに類似する形状を言う。このように、ノズル孔431aをX軸方向に延在する長尺形状とすることで、ネブライザキット20の各部の製造誤差(個体差)に起因するノズル孔431aに対するキャップ60の位置ずれ(特にX軸方向の位置ずれ)を許容し易くなる。そのため、製造誤差の影響を受け難く、安定してエアロゾルASを生成することができる。
【0036】
ただし、ノズル孔431aの形状は、特に限定されず、例えば、X軸方向に沿って延在する長円、楕円、長方形等であってもよい。また、円形状、四角形等、X軸方向およびY軸方向の長さが等しい形状、つまり、長尺形状でない形状であってもよい。
【0037】
このようなボトル40は、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PC(ポリカーボネート)、PPA(ポリフタルアミド)、POM(ポリオキシメチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の各種樹脂材料で各部が一体成型された樹脂成型品である。ただし、ボトル40の構成材料は、特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属材料、アルミナ、チタニア等の各種セラミックスで構成されていてもよい。
【0038】
また、ボトル40は、光透過性を有し、ボトル40外から液体貯留部42に貯留された液体Wを視認することができる。このような構成によれば、使用者は、液体貯留部42に貯留された液体Wの残量を容易に確認することができ、吸引の終了を適切に判断することができる。ただし、これに限定されず、ボトル40は、光透過性を有していなくてもよい。また、例えば、液体貯留部42に貯留された液体Wの残量を確認できるように、一部だけが光透過性を有する構成であってもよい。
【0039】
≪キャップ60≫
図10に示すように、キャップ60は、筒部61と、筒部61の上端部から上側に膨出する膨出部62と、膨出部62の端面620から突出するエアロゾル形成突起63と、筒部61から延出する一対の脚部641、642と、液体貯留部42の液体Wを上端面431までに吸い上げる吸上流路69と、を有する。
【0040】
図11および
図12に示すように、筒部61は、上側に向かってテーパ状に縮径する円筒状であり、圧縮空気導入管43の突出部430に覆い被さっている。筒部61の内周面は、突出部430の外周面432に倣った形状である。また、筒部61の内周面には段差619が形成されており、段差619よりも上側の部分が突出部430の外周面に当接することにより、キャップ60が突出部430に対して同軸的に位置決めされる。また、筒部61は、突出部430よりも短く、筒部61の上側開口から突出部430の上端部が突出している。
【0041】
また、
図13に示すように、筒部61の下端部には、内周面から中心に向けて突出する6つの突起68が等間隔に設けられている。そして、
図11に示すように、これら各突起68が突出部430の外周面432に当接することで、突出部430に対するキャップ60の傾きが抑えられる。
【0042】
図11および
図12に示すように、膨出部62は、筒部61の上端部から上側へ膨出し、上端面431に載置されている。このように、膨出部62が上端面431に載置されることで、圧縮空気導入管43に対してキャップ60が位置決めされる。膨出部62は、半割の円錐台状、つまり、円錐台を縦半分に割ったような形状であり、中心軸Jに対してX軸方向マイナス側に設けられている。そのため、膨出部62は、X軸方向プラス側、つまり、ノズル孔431a側を向く端面620を有する。
【0043】
また、膨出部62は、ノズル孔431aと重ならないように設けられている。そのため、膨出部62によってノズル孔431aが塞がれることがなく、所定量の圧縮空気がノズル孔431aから安定して噴出する。ただし、これに限定されず、例えば、膨出部62がノズル孔431aの一部を塞いでいてもよい。
【0044】
また、エアロゾル形成突起63は、膨出部62の端面620の中央部からX軸方向プラス側、つまり、ノズル孔431a側に突出する。エアロゾル形成突起63のサイズとしては、特に限定されないが、例えば、高さ(Z軸方向の長さ)を0.1mm~2mm程度、幅(Y軸方向の長さ)を1mm~5mm程度、長さ(X軸方向の長さ)を0.3mm~0.5mm程度とすることができる。
【0045】
図14に示すように、エアロゾル形成突起63は、霧化領域70内に侵入して設けられ、Z軸方向からの平面視で、ノズル孔431aの半分程度と重なっている。また、エアロゾル形成突起63は、厚さ(Z軸方向の長さ)が基端側から先端側に向けて漸減するテーパ状をなし、先端面631と、先端面631の下側に接続された下側傾斜面632と、先端面631の上側に接続された上側傾斜面633と、を有する。
【0046】
先端面631は、若干上側を向くようにY-Z平面をY軸まわりに傾斜させた平坦面で構成されている。つまり、先端面631は、上側に向かうにしたがって端面620側に向かう平坦な傾斜面である。ただし、先端面631の構成は、特に限定されず、例えば、真横を向いてもよいし、下側を向いてもよい。また、先端面631は、湾曲面であってもよい。また、先端面631を省略してもよい。
【0047】
下側傾斜面632は、下側(ノズル孔431a側)を向くように、Y-Z平面をY軸まわりに傾斜させた平坦面で構成されている。つまり、下側傾斜面632は、下側に向かうにしたがって端面620側に向かう平坦な傾斜面である。なお、下側傾斜面632のX軸に対する傾斜角としては、特に限定されないが、例えば、29°~50°であることが好ましい。これにより、後述するように、上端面431上の液体Wが下側傾斜面632を伝って上側傾斜面633まで移動し易くなる。ただし、下側傾斜面632の構成は、特に限定されず、例えば、
図15に示すように、互いに向きの異なる複数の平坦面が接続された構成であってもよい。
【0048】
これに対して、上側傾斜面633は、上側を向くように、Y-Z平面をY軸まわりに傾斜させた平坦面をさらに凹ませた凹面状である。つまり、上側傾斜面633は、上側に向かうにしたがって端面620側に向かう凹面状の傾斜面である。特に、本実施形態の上側傾斜面633は、その全体が円弧状に湾曲した凹面である。円弧状とすることで、上側傾斜面633の構成が簡単となる。ただし、上側傾斜面633の構成は、これに限定されず、例えば、
図16に示すように、互いに向きの異なる複数の平坦面を接続してなる凹面であってもよい。また、上側傾斜面633は、平坦面であってもよい。
【0049】
また、
図17に示すように、Z軸方向からの平面視で、エアロゾル形成突起63の先端630は、円弧状に湾曲している。ただし、これに限定されず、例えば、エアロゾル形成突起63の先端630は、
図18に示すように、まっすぐであってもよい。
【0050】
図11および
図13に示すように、吸上流路69は、筒部61に形成された第1吸上流路691と、膨出部62に形成された第2吸上流路692と、を有する。筒部61の内周面には、下端から上端まで延びる溝612が設けられており、この溝612と圧縮空気導入管43の外周面432との隙間から第1吸上流路691が形成される。同様に、膨出部62の内面には、第1吸上流路691の上端から端面620まで延びる溝622が設けられており、この溝622と圧縮空気導入管43の外周面432との隙間から第2吸上流路692が形成される。
【0051】
さらに、
図13に示すように、第2吸上流路692は、第1吸上流路691の上端から端面620に向かう途中で二股に分岐している。そして、分岐したそれぞれが膨出部62の端面620に開口することで、端面620に一対の吐出口671、672が形成されている。そのため、液体貯留部42から吸上流路69を通って吸い上げられた液体Wは、吐出口671、672のそれぞれから吐出されて霧化領域70に供給される。
【0052】
なお、吸上流路69の体積としては、特に限定されず、キャップ60の材質や溝612、622の表面粗さ等によっても異なるが、例えば、50mm3~200mm3程度とすることができる。吸上流路69の体積が大きい程、エアロゾルASの噴霧量(生成量)が多くなると共に、エアロゾルASに含まれる液体Wの粒径が大きくなる傾向にある。反対に、吸上流路69の体積が小さい程、エアロゾルASの噴霧量(生成量)が少なくなると共に、エアロゾルASに含まれる液体Wの粒径が小さくなる傾向にある。そのため、使用目的に応じて吸上流路69の体積を調整することで、適切な量および粒径のエアロゾルASを生成することができる。
【0053】
図19に示すように、一対の吐出口671、672は、エアロゾル形成突起63の両側に位置している。また、吐出口671、672は、それぞれ、X軸からの平面視で、先端面631および下側傾斜面632と並ぶ下端部671a、672aと、上側傾斜面633と並ぶ上端部671b、672bと、を有する。
【0054】
X軸方向からの平面視で、下端部671a、672aは、幅(Y軸方向の長さ)が一定であり、まっすぐ上下に伸びている。これに対して、上端部671b、672bは、下端部671a、672aに対して上側傾斜面633側に拡幅し、上側傾斜面633上にも開口している。つまり、上端部671b、672bは、端面620と上側傾斜面633とに跨って形成されている。また、上端部671b、672bは、X軸方向からの平面視で、各角部が丸み付けされた直角台形状をなしている。
【0055】
このようなキャップ60では、吸上流路69によって液体貯留部42から吸い上げられた液体Wが一対の吐出口671、672から霧化領域70に供給される。そして、霧化領域70に供給された液体Wがノズル孔431aから噴き出した圧縮空気と衝突することで吹き飛ばされてエアロゾルASが生成される。
【0056】
また、キャップ60は、端面620からX軸方向プラス側に突出して設けられ、エアロゾル形成突起63の両側に位置する一対のガイド部661、662を有する。ガイド部661は、エアロゾル形成突起63との間に吐出口671を挟むように設けられ、ガイド部662は、エアロゾル形成突起63との間に吐出口672を挟むように設けられている。また、ガイド部661は、エアロゾル形成突起63側を向くガイド面661aを有し、ガイド部662は、エアロゾル形成突起63側を向くガイド面662aを有する。そして、これらガイド面661a、662aは、端面620から離れるにしたがって互いの離間距離が大きくなるテーパ状となるように傾斜して設けられている。
【0057】
このような構成のガイド面661a、662aによって、吐出口671、672から吐出された液体Wを上端面431に誘導することができる。そのため、上端面431に安定して液体Wを供給することができる。さらに、ガイド面661a、662aによって、ノズル孔431aから噴き出す圧縮空気を整流することができる。そのため、エアロゾルASをさらに安定して生成することができる。
【0058】
このようなキャップ60は、ボトル40と同様に、例えば、ABS、PC、PPA、POM、PMMA、PP、PBT等の各種樹脂材料で各部が一体成型された樹脂成型品である。ただし、キャップ60の構成材料は、特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属材料、アルミナ、チタニア等の各種セラミックスで構成されていてもよい。
【0059】
≪カバー50≫
カバー50は、霧化領域70を覆うようにボトル40に装着される。
図5および
図6に示すように、カバー50は、ボトル40に装着されるベース51と、ベース51を貫通して上下に延びる流路形成部52と、流路形成部52から上側へ突出するエアロゾル排出部53および液体戻し部54と、を有する。そして、エアロゾル排出部53にマウスピース15が接続される。
【0060】
ベース51は、円盤状をなしている。ベース51の側面には、図示しない嵌合突起が設けられ、この嵌合突起をボトル40が有する図示しない嵌合孔に嵌合することで、カバー50がボトル40に装着される。また、ベース51は、上面に開口する凹部511を有する。また、凹部511には、カバー50の内外を連通する外気導入孔511aが形成されている。そして、外気導入孔511aを介してケース本体30内に外気が導入される。ここで、本実施形態では、凹部511の中央部を貫通して流路形成部52が設けられている。そのため、外気導入孔511aは、流路形成部52のY軸方向両側に分かれて一対設けられている。そのため、流路形成部52の両側からケース本体30内に外気をバランスよく導入することができる。
【0061】
流路形成部52は、凹部511の中央部を上下に貫通して設けられている。また、流路形成部52は、上端部が閉じた有底筒状であり、その下側開口が霧化領域70の直上に位置している。つまり、Z軸方向からの平面視で、流路形成部52の下側開口は、霧化領域70と重なっている。流路形成部52は、その直下に位置する霧化領域70で生成されたエアロゾルASを上側に位置するエアロゾル排出部53に導く流路を形成する。
【0062】
流路形成部52の内部空間は、Z軸方向からの横断面視で、X軸方向に延びた長方形である。また、内部空間は、上側に向けて横断面積が漸減するテーパ状である。具体的には、
図6に示すように、流路形成部52の内部空間のY軸方向の幅Dyは、上側に向かって僅かに漸減する。また、
図5に示すように、流路形成部52の内部空間のX軸方向の幅Dxは、上側に向かって幅Dyよりも大きい変化率で漸減する。このように、流路形成部52をテーパ状とすることで、霧化領域70で生成されたエアロゾルASをエアロゾル排出部53にスムーズに導くことができる。
【0063】
また、流路形成部52は、その天井部を構成する天井部522と、側壁部を構成する第1側壁部523、第2側壁部524、第3側壁部525および第4側壁部526と、を有する。第1側壁部523は、天井部522のX軸方向プラス側に位置し、第2側壁部524は、天井部522のX軸方向マイナス側に位置し、第3側壁部525は、天井部522のY軸方向プラス側に位置し、第4側壁部526は、天井部522のY軸方向マイナス側に位置している。
【0064】
天井部522の内面522aは、X-Y平面に沿う1つの平坦面で構成されている。また、第3、第4側壁部525、526の内面525a、526aは、それぞれ、X-Z平面がX軸まわりに僅かに傾斜した1つの平坦面で構成されている。
【0065】
また、
図6に示すように、第3、第4側壁部525、526の下端部には、キャップ60が装着される装着部591、592が設けられている。そして、装着部591、592にキャップ60の脚部641、642の先端部に設けられた係合突起641a、642aを係合させることで、キャップ60がカバー50に装着される。
【0066】
このように、キャップ60をカバー50に装着することで、キャップ60およびカバー50を一括してボトル40に装着することができる。そのため、ネブライザキット20の組み立てが容易となる。また、キャップ60を所定の向きでしか圧縮空気導入管43に被せることができなくなるため、キャップ60の誤装着を防止することができる。なお、
図10に示すように、脚部641、642の先端部に設けられた係合突起641a、642aは、互いに異なる形状となっている。そして、それに合わせて、装着部591を係合突起641aだけが係合可能な形状とし、装着部592を係合突起642aだけが係合可能な形状としている。したがって、キャップ60がカバー50に対して反対向きで装着されるのを確実に防止することができる。
【0067】
図5および
図20に示すように、第1側壁部523の内面は、互いに向きが異なる複数の平坦面を有する。第1側壁部523の内面は、5つの平坦面、具体的には、最も下側に位置する第1平坦面523aと、第1平坦面523aの上端部に接続された第2平坦面523bと、第2平坦面523bの上端部に接続された第3平坦面523cと、第3平坦面523cの上端部に接続された第4平坦面523dと、第4平坦面523dの上端部に接続された第5平坦面523eと、を有する。
【0068】
第1~第5平坦面523a~523eは、いずれも、Y-Z平面をY軸まわりに傾斜させた平坦面であり、下側を向いている。また、第1平坦面523aから第4平坦面523dまでは、Z軸に対する傾斜角(以下、単に「傾斜角θ1」とも言う。)が順に増加する。つまり、第2平坦面523bの傾斜角θ1は、第1平坦面523aの傾斜角θ1よりも大きく、第3平坦面523cの傾斜角θ1は、第2平坦面523bの傾斜角θ1よりも大きく、第4平坦面523dの傾斜角θ1は、第3平坦面523cの傾斜角θ1よりも大きい。これに対して、第5平坦面523eの傾斜角θ1は、第4平坦面523dの傾斜角θ1よりも小さい。特に、実施形態では、第5平坦面523eの傾斜角θ1は、第1平坦面523aの傾斜角θ1と同程度であり、第2、第3、第4平坦面523b、523c、523dの傾斜角θ1より小さい。
【0069】
第1~第5平坦面523a~523eの傾斜角θ1は、霧化領域70で生成されたエアロゾルASをエアロゾル排出部53まで効率的に搬送できるように適宜設定される。具体的には、エアロゾルASが第1~第5平坦面523a~523eに沿ってエアロゾル排出部53に向かってスムーズに流動するように、或いは、第1~第5平坦面523a~523eに衝突したエアロゾルASがエアロゾル排出部53に向かって跳ね返るように、適宜設定される。本実施形態では、第1平坦面523aの傾斜角θ1が10°程度、第2平坦面523bの傾斜角θ1が30°程度、第3平坦面523cの傾斜角θ1が45°程度、第4平坦面523dの傾斜角θ1が60°程度、第5平坦面523eの傾斜角θ1が10°程度に設定されている。
【0070】
このように、第1側壁部523の内面が姿勢の異なる複数の平坦面(第1~第5平坦面523a~523e)を有することで、例えば、エアロゾル排出部53への流動を阻害しない程度に、エアロゾルASを第1側壁部523の内面に適度に衝突させることができる。そして、当該衝突により、エアロゾルASに含まれる比較的大きな粒径の液体Wが第1側壁部523の内面に付着し、エアロゾルASから取り除かれる。そのため、平均粒径の小さい良質なエアロゾルASを生成することができる。
【0071】
また、第2側壁部524の内面も、第1側壁部523と同様、互いに向きが異なる複数の平坦面を有する。第2側壁部524は、3つの平坦面、具体的には、最も下側に位置する第1平坦面524aと、第1平坦面524aの上端部に接続された第2平坦面524bと、第2平坦面524bの上端部に接続された第3平坦面524cと、を有する。
【0072】
第1平坦面524aは、Y-Z平面に沿う平坦面である。また、第2、第3平坦面524b、524cは、それぞれ、Y-Z平面をY軸まわりに傾斜させた平坦面であり、下側を向いている。また、第1平坦面524aから第3平坦面524cまで、Z軸に対する傾斜角(以下、単に「傾斜角θ2」とも言う。)が順に増大する。つまり、第2平坦面524bの傾斜角θ2は、第1平坦面524aの傾斜角θ2よりも大きく、第3平坦面524cの傾斜角θ2は、第2平坦面524bの傾斜角θ2よりも大きい。
【0073】
第1~第3平坦面524a~524cの傾斜角θ2は、霧化領域70で生成されたエアロゾルASをエアロゾル排出部53まで効率的に搬送できるように適宜設定される。具体的には、エアロゾルASが第1~第3平坦面524a~524cに沿ってエアロゾル排出部53に向かってスムーズに流動するように、或いは、第1~第3平坦面524a~524cに衝突したエアロゾルASがエアロゾル排出部53に向かって跳ね返るように、適宜設定される。本実施形態では、第1平坦面524aの傾斜角θ2が0°程度、第2平坦面524bの傾斜角θ2が10°程度、第3平坦面524cの傾斜角θ2が45°程度に設定されている。
【0074】
このように、第2側壁部524の内面が姿勢の異なる複数の平坦面(第1~第3平坦面524a~524c)を有することで、例えば、エアロゾル排出部53への流動を阻害しない程度に、エアロゾルASを第1側壁部523の内面に適度に衝突させることができる。そして、当該衝突により、エアロゾルASに含まれる比較的大きな粒径の液体Wが第1側壁部523の内面に付着し、エアロゾルASから取り除かれる。そのため、平均粒径の小さい良質なエアロゾルASを生成することができる。
【0075】
エアロゾル排出部53は、流路形成部52から上側に突出して設けられている。エアロゾル排出部53は、Z軸方向に延びる円筒形状であり、その上端部にエアロゾルASをケース本体30外に排出するエアロゾル排出口530を有する。
【0076】
また、エアロゾル排出部53の下端部は、天井部522の内面522a、第5平坦面523eおよび第4平坦面523dと重なっている。このうち、内面522aおよび第5平坦面523eは、エアロゾル排出部53の側壁部と交わるように設けられ、第4平坦面523dは、エアロゾル排出部53の下側開口と交わるように設けられている。そして、流路形成部52は、内面522aおよび第5平坦面523eに跨って形成され、エアロゾル排出部53の側壁部を介してエアロゾル排出部53の内部に連通する第1連通孔59を有する。したがって、霧化領域70で生成されたエアロゾルASは、流路形成部52から第1連通孔59を通過してエアロゾル排出部53に導入され、さらに、エアロゾル排出口530からケース本体30外に排出される。このような構成によれば、エアロゾルASをエアロゾル排出部53にスムーズに導くことができる。そのため、カバー50内でのエアロゾルASの滞留を抑制することができる。
【0077】
ここで、第4平坦面523dには、第1連通孔59が形成されていない。また、第4平坦面523dは、エアロゾル排出部53の下側開口の少なくとも一部を塞いでいる。なお、本実施形態では、下側開口の全部を塞いでいる。また、第4平坦面523dは、霧化領域70の上側に位置し、霧化領域70と対向するように設けられており、エアロゾルASと接触し易くなっている。このような第4平坦面523dは、エアロゾルASに含まれる液体Wの粒子(以下、単に「粒子」とも言う。)を選別する選別部500として機能する。具体的には、比較的大きい粒子(例えば、粒径が10μm以上の粒子)を第4平坦面523dに付着させ、エアロゾルASから取り除く。これにより、平均粒子径が小さい良質なエアロゾルASを使用者に供給することができる。
【0078】
なお、第4平坦面523dに付着した液体Wは、周囲の液体Wと合体を繰り返して次第に大きな液滴となって液体貯留部42に落下して戻され、再び霧化領域70でエアロゾルASとなる。特に、第4平坦面523dが傾斜面であるため、液体Wが自重によって自然と第4平坦面523dの下端部に集合し、当該部分において速やかに大きな液滴となって液体貯留部42に自然落下する。そのため、第4平坦面523dに付着した液体Wを効率的に回収することができる。言い換えると、第4平坦面523dに付着したまま吸引の用に供されずに残存する液体Wを少なく抑えることができる。そのため、適切な量の液体Wを吸引することができる。
【0079】
ただし、第4平坦面523dの構成は、特に限定されない。例えば、前述した圧縮空気導入管43の上端面431と同様に、シボ加工、エンボス加工等によって微細な凹凸を形成してもよい。つまり、流路形成部52が有する他の内面よりも表面粗さを大きくしてもよい。このような構成によれば、第4平坦面523dに付着させる粒径を調整することができ、選別機能がより高まる。また、例えば、第1連通孔59が第4平坦面523dの一部に広がって形成されていてもよい。
【0080】
液体戻し部54は、エアロゾル排出部53に付着した液体Wを液体貯留部42に戻す機能を有する。このような液体戻し部54を設けることにより、ネブライザキット20内に液体Wが残存し難くなり、使用者は、適切な量の液体Wを吸引することができる。
【0081】
図5および
図20に示すように、液体戻し部54は、流路形成部52から上側に突出して設けられている。また、液体戻し部54は、エアロゾル排出部53とX軸方向に並んで配置され、エアロゾル排出部53の側壁部と接して設けられている。そして、液体戻し部54は、エアロゾル排出部53の側壁部を介してエアロゾル排出部53の内部に連通する第2連通孔57を有する。また、液体戻し部54は、流路形成部52の第3平坦面523cと重なって設けられている。そして、流路形成部52は、第3平坦面523cに液体戻し部54の底部を介して液体戻し部54の内部に連通する第3連通孔56を有する。そのため、エアロゾル排出部53内の液体Wは、第2連通孔57および第3連通孔56を介して液体貯留部42に戻される。このような構成によれば、エアロゾル排出部53に付着した液体Wを、容易に液体貯留部42に戻すことができる。
【0082】
特に、エアロゾルASを排出する排出ルートR1(流路形成部52から第1連通孔59を通過してエアロゾル排出部53に向かうルート)とは異なる回収ルートR2(エアロゾル排出部53から第2連通孔57および第3連通孔56を通過して液体貯留部42に戻るルート)で液体Wを液体貯留部42に戻すことができる。そのため、エアロゾル排出部53に向かうエアロゾルASと液体貯留部42に戻る液体Wとが衝突、干渉し難い。したがって、エアロゾル排出口530からのエアロゾルASのスムーズな排出および液体貯留部42への液体Wのスムーズな回収が可能となる。
【0083】
特に、本実施形態では、第1連通孔59および第2連通孔57がエアロゾル排出部53の中心に対して互いに反対側に位置している。具体的には、中心に対してX軸方向マイナス側に第1連通孔59が位置し、X軸方向プラス側に第2連通孔57が位置している。そのため、排出ルートR1と回収ルートR2とを互いに反対側に形成することができる。したがって、前述の効果がより顕著となり、エアロゾル排出口530からのエアロゾルASのよりスムーズな排出および液体貯留部42への液体Wのよりスムーズな回収が可能となる。
【0084】
また、エアロゾル排出部53は、エアロゾル排出部53内の液体Wを第2連通孔57に誘導するガイド部532を有する。ガイド部532は、第2連通孔57に向けて傾斜するガイド面532aを有する。そのため、エアロゾル排出部53の内面に付着して垂下した液体Wをガイド面532aで受け止め、さらに、ガイド面532aによって第2連通孔57に導くことができる。このようなガイド部532を有することで、簡単な構成で、エアロゾル排出部53内のより多くの液体Wを液体貯留部42に戻すことができる。
【0085】
特に、本実施形態では、ガイド部532と選別部500とを供用しており、その上面がガイド面532aとなり、下面が第4平坦面523dとなっている。このような構成とすることで、カバー50の構成が簡単となり、かつ、カバー50の小型化を図ることもできる。
【0086】
なお、液体戻し部54は、第3連通孔56を介して流路形成部52と連通しているため、流路形成部52内のエアロゾルASが第3連通孔56を介して液体戻し部54に導入され、さらには、第2連通孔57を介してエアロゾル排出部53に導入されるおそれがある。そこで、液体戻し部54は、エアロゾルASが第2連通孔57を介してエアロゾル排出部53に導入されるのを規制する規制部541を有する。このような規制部541を設けることで、エアロゾルASが回収ルートR2を逆流してエアロゾル排出部53に導入されるのを効果的に抑制することができる。そのため、良質なエアロゾルASを排出することができる。また、回収ルートR2を移動する液体Wとの干渉が抑制され、液体Wを液体貯留部42にスムーズに戻すことができる。
【0087】
このような規制部541は、液体戻し部54の天井に設けられ、第3連通孔56を介して液体戻し部54に導入されたエアロゾルASを第3連通孔56に誘導するガイド面541aを有する。ガイド面541aは、Y軸方向からの断面視で上側に凹む凹面で構成され、半円弧状に湾曲している。このようなガイド面541aによれば、簡単な構成で、かつ、より確実に、第3連通孔56を介して液体戻し部54に導入されたエアロゾルASをUターンさせて第3連通孔56に向かわせることができる。そのため、エアロゾルASが回収ルートR2を逆流してエアロゾル排出部53に導入されるのをより効果的に抑制することができる。さらに、ガイド面541aでUターンして第2連通孔57付近を通って流路形成部52に戻るエアロゾルASにより生じる気流に引き付けられるようにして、エアロゾル排出部53内の液体Wの移動が促進される。そのため、液体Wを液体貯留部42にスムーズに戻すことができる。
【0088】
また、規制部541は、前述した選別部500と同様、エアロゾルASに含まれる粒子を選別する選別部としても機能する。具体的には、比較的大きい粒子(例えば、粒径が10μm以上の粒子)をガイド面541aに付着させて、エアロゾルASから取り除く。そのため、エアロゾルASの一部が回収ルートR2を逆流してエアロゾル排出部53に導入されたとしても、それによるエアロゾルの品質低下を抑制することができる。なお、ガイド面541aに付着した液体Wは、周囲の液体Wと合体を繰り返して次第に大きな液滴となって液体貯留部42に落下して戻され、再び、霧化領域70でエアロゾルASとなる。
【0089】
このようなカバー50は、ボトル40およびキャップ60と同様に、例えば、ABS、PC、PPA、POM、PMMA、PP、PBT等の各種樹脂材料で各部が一体成型された樹脂成型品である。ただし、カバー50の構成材料は、特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属材料、アルミナ、チタニア等の各種セラミックスで構成されていてもよい。
【0090】
以上、ネブライザキット20の構成について説明した。次に、ネブライザキット20の動作について説明する。
【0091】
まず、カバー50を外し、液体Wを液体貯留部42に供給する。この際、液体Wが圧縮空気導入管43の上端面431に触れるように供給するのが好ましい。これにより、
図21に示すように、上端面431および傾斜面433に液体Wの一部が保持された状態となる。
【0092】
次に、キャップ60が装着されたカバー50をボトル40に装着する。これにより、キャップ60が圧縮空気導入管43に覆い被さり、上端面431および傾斜面433に保持されていた液体Wの一部が吸上流路69内に回り込んで液体貯留部42に到達し、毛細管現象により液体Wが上端面431に到達する。その結果、
図22に示すように、ノズル孔431aから圧縮空気を噴出する前に、予め、液体貯留部42に貯留された液体Wを霧化領域70まで吸い上げた状態としておくことができる。
【0093】
次に、コンプレッサ111から圧縮空気導入管43に圧縮空気を導入する。すると、
図23に示すように、圧縮空気が圧縮空気導入管43のノズル孔431aから霧化領域70に向けて噴き出す。そして、圧縮空気がノズル孔431aから噴き出すことで、
図24に示すように、上端面431に保持されている液体Wがエアロゾル形成突起63の表面、つまり、下側傾斜面632および先端面631を伝って上側傾斜面633に到達し、上側傾斜面633上で薄い膜状に広がって保持される。特に、エアロゾル形成突起63が下側傾斜面632を有するため、下側傾斜面632と上端面431との間に液溜まりW0が形成され、液体Wが上側傾斜面633に移動し易くなる。また、圧縮空気がエアロゾル形成突起63の先端部に衝突することで、エアロゾル形成突起63と上端面431との間の空間が負圧となり、この負圧の効果によっても液体Wが上側傾斜面633に移動し易くなる。
【0094】
さらに、
図25に示すように、上側傾斜面633に保持された膜状の液体Wが圧縮空気との衝突によって吹き飛ばされることで粉砕し、微細な液滴(霧状粒子)となる。そして、この微細な液滴に外気導入孔511aからケース本体30内に導入された外気が付与されてエアロゾルASが生成される。特に、上側傾斜面633が凹面状であるため、上側傾斜面633に適切な量の液体Wを安定して保持することができる。また、エアロゾル形成突起63がノズル孔431aの一部と重なっているため、ノズル孔431aから噴出した圧縮空気をより確実に上側傾斜面633に保持された液体Wに衝突させることができる。そのため、エアロゾルASを安定して生成することができる。
【0095】
なお、エアロゾルASの生成中、前述した負圧および毛細管現象によって、吸上流路69は、液体貯留部42内の液体Wを吸い上げ続ける。そして、吸い上げられた液体Wの一部は、吐出口671、672の下端部671a、672aから上端面431に供給された後、エアロゾル形成突起63の表面を伝って上側傾斜面633に到達する。特に、吐出口671、672がエアロゾル形成突起63の両側に設けられているため、液体Wがエアロゾル形成突起63の周囲に過不足なくバランスよく供給され、上側傾斜面633に移動し易くなる。また、残りの一部は、吐出口671、672の上端部671b、672bから上側傾斜面633に直接供給される。このように、上側傾斜面633に液体Wを供給するためのルートを複数設けることで、上側傾斜面633に液体Wを安定して供給し続けることができる。したがって、エアロゾルASを安定して生成し続けることができる。
【0096】
また、前述したように、エアロゾル形成突起63の先端630が円弧状に湾曲している。そのため、先端630に沿うようにして圧縮空気が放射状に拡散し、それに伴ってエアロゾルASも拡散する。そのため、エアロゾルASに含まれる粒子同士の凝集を抑制することができる。
【0097】
このようにして生成されたエアロゾルASは、
図26に示すように、ノズル孔431aから噴き出す圧縮空気や使用者の呼気動作等に基づいて形成される気流に乗り、流路形成部52を通ってエアロゾル排出部53に導入され、エアロゾル排出口530から排出される。そして、エアロゾル排出口530から排出されたエアロゾルASは、マウスピース15を介して使用者の体内へ供給される。この際、流路形成部52の内面にそってスムーズにエアロゾル排出口530に向かって流動し、その途中において選別部500や規制部541によってエアロゾルAS中の粒子が選別され、平均粒径の小さい良質なエアロゾルASがエアロゾル排出口530から排出される。
【0098】
以上、ネブライザキット20の動作について説明した。このようなネブライザキット20によれば、従来から知られるバッフル方式の霧化装置のように、バッフルに圧縮空気を衝突させる必要がない。そのため、バッフル方式の霧化装置と比べて動作音を低減することができる。また、バッフル方式の霧化装置と比べて圧縮空気の圧力を下げることができ、その分、出力の低い、小さなコンプレッサ111を用いることができる。そのため、本体11の小型化および静音化を図ることができ、それに伴って、ネブライザ10全体としても小型化および静音化を図ることができる。
【0099】
以上、ネブライザ10について説明した。このようなネブライザ10は、前述したように、圧縮空気を噴出するノズル孔431aを上端面431に有し、ノズル孔431aの出口領域がエアロゾルASを生成する霧化領域70となる圧縮空気導入管43と、圧縮空気導入管43を囲むように設けられ、液体Wを貯留する液体貯留部42と、圧縮空気導入管43に被せられ、液体Wを液体貯留部42から吸い上げて霧化領域70に供給するキャップ60と、霧化領域70を覆うカバー50と、を有する。そして、カバー50は、エアロゾルASを排出するエアロゾル排出口530を有するエアロゾル排出部53と、エアロゾルASをエアロゾル排出部53まで導く流路を形成する流路形成部52と、エアロゾルASとしてエアロゾル排出部53に導入され、エアロゾル排出部53に付着した液体Wを液体貯留部42に戻す液体戻し部54と、を有する。このような構成によれば、液体戻し部54を介してエアロゾル排出部53内の液体Wが液体貯留部42に回収される。そのため、ネブライザキット20内に液体Wが残存し難く、適切な量の液体Wを吸引することができる。
【0100】
また、前述したように、エアロゾル排出部53は、流路形成部52から上側に向けて突出する筒状であり、流路形成部52は、エアロゾル排出部53の側壁部を介してエアロゾル排出部53の内部に連通する第1連通孔59を有する。そして、エアロゾルASは、第1連通孔59を介して流路形成部52からエアロゾル排出部53に導入される。このような構成によれば、霧化領域70で生成されたエアロゾルASを、流路形成部52から第1連通孔59を介してエアロゾル排出部53にスムーズに導くことができる。そのため、カバー内でのエアロゾルASの滞留を抑制することができる。
【0101】
また、前述したように、液体戻し部54は、流路形成部52の上側に、エアロゾル排出部53と接して配置され、エアロゾル排出部53の側壁部を介してエアロゾル排出部53の内部に連通する第2連通孔57を有する。また、流路形成部52は、液体戻し部54の底部を介して液体戻し部54の内部に連通する第3連通孔56を有する。そして、エアロゾル排出部53に付着した液体Wは、第2連通孔57および第3連通孔56を介して液体貯留部42に戻される。このような構成によれば、エアロゾル排出部53に付着した液体Wを、容易に液体貯留部42に戻すことができる。特に、エアロゾルASを排出する排出ルートとは異なる回収ルートで液体Wを液体貯留部42に戻すことができるため、エアロゾル排出口530に向かうエアロゾルASと液体貯留部42に向かう液体Wとが衝突、干渉し難い。したがって、エアロゾル排出口530からのエアロゾルASのスムーズな排出および液体貯留部42への液体Wのスムーズな回収が可能となる。
【0102】
また、前述したように、第1連通孔59および第2連通孔57は、エアロゾル排出部53の中心軸に対して互いに反対側に位置している。本実施形態では、中心に対してX軸方向マイナス側に第1連通孔59が位置し、X軸方向プラス側に第2連通孔57が位置している。これにより、エアロゾルASを排出する排出ルートと、液体を回収する回収ルートと、をより大きく離間させることができる。そのため、エアロゾル排出口530からのエアロゾルASのよりスムーズな排出および液体貯留部42への液体Wのよりスムーズな回収が可能となる。
【0103】
また、前述したように、ネブライザキット20は、エアロゾル排出部53内の液体Wを第2連通孔57に誘導するガイド部532を有する。そのため、エアロゾル排出部53内のより多くの液体Wを液体貯留部42に戻すことができる。
【0104】
また、前述したように、液体戻し部54は、エアロゾルASの第2連通孔57を介したエアロゾル排出部53への導入を規制する規制部を有する。これにより、エアロゾルASが回収ルートを逆流してエアロゾル排出部53に導入され難くなる。そのため、回収ルートを通って移動する液体Wとの干渉が抑制され、液体Wを液体貯留部42にスムーズに回収することができる。
【0105】
また、前述したように、規制部は、第3連通孔56を介して液体戻し部54に導入されるエアロゾルASを誘導して第3連通孔56に向かわせるガイド面541aを有する。これにより、簡単な構成で、エアロゾルASの第2連通孔57を介したエアロゾル排出部53への導入を規制することができる。また、ガイド面541aでUターンし、第2連通孔57付近を通って下側(流路形成部52側)へ向かうエアロゾルASに引き付けられるようにして、エアロゾル排出部53内の液体Wの移動が促進される。そのため、液体Wを液体貯留部42にスムーズに回収することができる。
【0106】
また、前述したように、流路形成部52は、エアロゾル排出部53の下側開口の少なくとも一部を塞いで設けられ、エアロゾルASに含まれる液体Wの粒子を選別する選別部を有する。これにより、平均粒径の小さい良質なエアロゾルASを生成することができる。
【0107】
また、前述したように、流路形成部52は、対向配置された第1側壁部523および第2側壁部524を有する。また、第1側壁部523の内面は、上側に向けて並んで配置され、互いに向きの異なる複数の平坦面(第1~第5平坦面523a~523e)を有する。同様に、第2側壁部524の内面は、上側に向けて並んで配置され、互いに向きの異なる複数の平坦面(第1~第3平坦面524a~524c)を有する。そして、第1側壁部523と第2側壁部524との離間距離である幅Dxは、上側に向かって漸減している。このような構成によれば、エアロゾルASをエアロゾル排出部53までスムーズに導くことができる。さらに、エアロゾル排出部53への流動を阻害しない程度に、エアロゾルASを第1、第2側壁部523、524の内面に適度に衝突させることができる。そして、当該衝突により、エアロゾルASに含まれる比較的大きな粒径の液体W1が第1、第2側壁部523、524の内面に付着し、エアロゾルASから取り除かれる。そのため、平均粒径の小さい良質なエアロゾルASを生成することができる。
【0108】
また、前述したように、ネブライザ10は、エアロゾル排出口530に接続され、エアロゾル排出口530から排出されたエアロゾルASを使用者の体内へ導くマウスピース15を有する。このような構成によれば、エアロゾルASを、マウスピース15を介して使用者の体内へ効率的に供給することができる。
【0109】
また、前述したように、圧縮空気を圧縮空気導入管43に導入するコンプレッサ111を有する。このような構成によれば、コンプレッサ111によって圧縮空気導入管43に導入する圧縮空気を容易に生成することができる。
【0110】
<第2実施形態>
図27は、第2実施形態にかかるネブライザが備えるエアロゾル形成突起をX軸方向プラス側から見た平面図である。
【0111】
本実施形態のネブライザ10は、キャップ60の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態のネブライザ10と同様である。そのため、以下の説明では、本実施形態に関して、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関しては、その説明を省略する。また、本実施形態の図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0112】
図27に示すように、本実施形態のキャップ60では、吸上流路69は、膨出部62の端面620に開口する3つの吐出口671、672、673を有する。このうち、吐出口671、672は、エアロゾル形成突起63の両側に設けられている。吐出口671、672から吐出された液体Wは、上端面431に供給された後、上側傾斜面633まで移動する。これら吐出口671、672に対して、吐出口673は、上側傾斜面633の上側に開口している。吐出口673から吐出された液体Wは、上側傾斜面633に直接供給される。
【0113】
例えば、前述した第1実施形態では、吐出口671、672が上側傾斜面633にも開口することにより、上側傾斜面633の面積が減少してしまう。これに対して、本実施形態の構成によれば、上側傾斜面633の面積が減少せず、上側傾斜面633を広く確保することができる。そのため、上側傾斜面633が保持できる液体Wの量が増え、エアロゾルASをより安定して生成することができる。
【0114】
以上のような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0115】
以上、本発明の霧化装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0116】
10…ネブライザ 11…本体 111…コンプレッサ 112…制御部 113…排出口 13…チューブ 15…マウスピース 20…ネブライザキット 30…ケース本体 40…ボトル 41…筒部 42…液体貯留部 43…圧縮空気導入管 430…突出部 431…上端面 431a…ノズル孔 432…外周面 433…傾斜面 50…カバー 500…選別部 51…ベース 511…凹部 511a…外気導入孔 52…流路形成部 522…天井部 522a…内面 523…第1側壁部 523a…第1平坦面 523b…第2平坦面 523c…第3平坦面 523d…第4平坦面 523e…第5平坦面 524…第2側壁部 524a…第1平坦面 524b…第2平坦面 524c…第3平坦面 525…第3側壁部 525a…内面 526…第4側壁部 526a…内面 53…エアロゾル排出部 530…エアロゾル排出口 532…ガイド部 532a…ガイド面 54…液体戻し部 541…規制部 541a…ガイド面 56…第3連通孔 57…第2連通孔 59…第1連通孔 591…装着部 592…装着部 60…キャップ 61…筒部 612…溝 619…段差 62…膨出部 620…端面 622…溝 63…エアロゾル形成突起 630…先端 631…先端面 632…下側傾斜面 633…上側傾斜面 641…脚部 641a…係合突起 642…脚部 642a…係合突起 661…ガイド部 661a…ガイド面 662…ガイド部 662a…ガイド面 671…吐出口 671a…下端部 671b…上端部 672…吐出口 672a…下端部 672b…上端部 673…吐出口 68…突起 69…吸上流路 691…第1吸上流路 692…第2吸上流路 70…霧化領域 9…ネブライザキット 91…ケース体 911…圧縮空気導入管 911a…ノズル孔 912…液体貯留部 913…エアロゾル排出口 92…霧化部形成体 921…吸液管形成部 922…バッフル 93…流路形成体 94…キャップ体 95…段差 96…圧力調整用隙間 98…霧化部 99…吸上経路 AS…エアロゾル J…中心軸 R1…排出ルート R2…回収ルート W…液体 W0…液溜まり W1…液体 W2…液体 θ1…傾斜角 θ2…傾斜角