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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025059997
(43)【公開日】2025-04-10
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20250403BHJP
   G06F 1/26 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
H05K1/02 N
G06F1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170456
(22)【出願日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 裕史
【テーマコード(参考)】
5B011
5E338
【Fターム(参考)】
5B011DA01
5B011DB02
5B011DB21
5B011EA02
5B011GG03
5B011JA21
5E338AA03
5E338BB02
5E338BB12
5E338BB75
5E338CC04
5E338CD02
5E338EE13
(57)【要約】
【課題】電源回路のノイズ抑制効果の悪化を防ぐ。
【解決手段】電源装置1は、電源回路1a、負荷回路1bおよびコンデンサ群Cg10を備える。電源回路1aは、負荷回路1bに電源電圧の供給を行い、負荷回路1bの動作により生じる電圧変動を監視し、監視結果に応じて電圧変動の周波数帯のうちの第1の周波数帯の第1のノイズを抑制する電流I1を負荷回路1bに出力する。コンデンサ群Cg10は、コンデンサC11、C12、C13、C14を含み、電源回路1aから負荷回路1bへ出力される電流I1の伝搬経路L10から離隔した離隔領域r0に搭載されて、第1の周波数帯と、第1の周波数帯よりも周波数域の高い第3の周波数帯との境界範囲にある第2の周波数帯の第2のノイズを抑制する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷回路と、
前記負荷回路に電源電圧の供給を行い、前記負荷回路の動作により生じる電圧変動を監視し、監視結果に応じて前記電圧変動の周波数帯のうちの第1の周波数帯の第1のノイズを抑制する電流を前記負荷回路に出力する電源回路と、
前記電源回路から前記負荷回路への前記電流の伝搬経路から離隔した離隔領域に搭載されて、前記第1の周波数帯と、前記第1の周波数帯よりも周波数域の高い第3の周波数帯との境界範囲にある第2の周波数帯の第2のノイズを抑制する一または複数の第1のコンデンサと、
を有する電源装置。
【請求項2】
前記第1のノイズの抑制に要する前記電流が前記負荷回路によって消費される際に、前記負荷回路による電流消費の妨げにならない前記離隔領域に前記第1のコンデンサが搭載される、請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記第1のコンデンサは、前記電源回路と前記負荷回路との間の回路間領域に前記電流の伝搬経路がある場合、前記負荷回路を挟んで前記回路間領域とは反対側に位置する前記離隔領域に搭載される、請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
前記第3の周波数帯の第3のノイズを抑制する一または複数の第2のコンデンサをさらに備え、前記第2のコンデンサは、前記電源回路、前記負荷回路および前記第1のコンデンサが搭載される基板に対し、前記負荷回路の搭載位置の下側裏面に搭載される、請求項1記載の電源装置。
【請求項5】
負荷回路と、
前記負荷回路に電源電圧の供給を行い、前記負荷回路の動作により生じる電圧変動を監視し、監視結果に応じて前記電圧変動の周波数帯のうちの第1の周波数帯の第1のノイズを抑制する電流を前記負荷回路に出力する電源回路と、
前記第1の周波数帯と、前記第1の周波数帯よりも周波数域の高い第3の周波数帯との境界範囲にある第2の周波数帯の第2のノイズを抑制する一または複数の第1のコンデンサと、
前記負荷回路、前記電源回路および前記第1のコンデンサが搭載される基板に設けられている電源層と、
前記電源層に対して、前記電源回路から前記負荷回路への前記電流の伝搬経路から前記第1のコンデンサを分離させる位置に形成されたスリットと、
を有する電源装置。
【請求項6】
前記スリットは、前記電源層の領域のうち、前記電源回路と前記負荷回路が配置された第1の領域と、前記第1のコンデンサが配置された第2の領域との間に形成される、請求項5記載の電源装置。
【請求項7】
前記第3の周波数帯の第3のノイズを抑制する一または複数の第2のコンデンサをさらに備え、前記第2のコンデンサは、前記基板に対し、前記負荷回路の搭載位置の下側裏面に搭載される、請求項5記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源電圧の低電圧化による、IT機器の消費電力の低減化が行われている。一方、低電圧で安定した回路動作を実現するためには、回路動作により発生する電圧変動(ノイズ)を抑制することが重要であり、低電圧でかつノイズ抑制の要件を満たす電源電圧供給の設計が求められている。
【0003】
関連技術としては、例えば、グランドパターンのプリント配線基板の裏面にメイン電源から分離されたICの電源パターンを形成する技術が提案されている。また、電源用の第1導電層と、第1導電層から隔てられる島状電源用第2導電層とを第1導電片で接続し、グラウンド用の第3導電層と、第3導電層から隔てられる島状のグラウンド用第4導電層とを第2導電片で接続して、第1、第2導電片にコンデンサを接続する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-223997号公報
【特許文献2】特開2007-173665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
負荷回路の動作によって生じるノイズは、電源回路およびコンデンサ(バイパスコンデンサ)によって抑制が行われる。電源回路では、電源電圧の供給先である負荷回路が動作しているときの電圧変動を監視して、監視結果にもとづき負荷回路に対してノイズを打ち消す電流を流すことで、ノイズの抑制(電圧変動の一定)を行っている。しかし、電流が伝搬する経路上にコンデンサが接続されていると、その電流は負荷回路まで伝わり難くなり、電源回路が備えているノイズ抑制効果が悪化するという問題がある。
【0006】
1つの側面では、本発明は、電源回路のノイズ抑制効果の悪化を防ぐことを可能にした電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、電源装置が提供される。電源装置は、負荷回路と、負荷回路に電源電圧の供給を行い、負荷回路の動作により生じる電圧変動を監視し、監視結果に応じて電圧変動の周波数帯のうちの第1の周波数帯の第1のノイズを抑制する電流を負荷回路に出力する電源回路と、電源回路から負荷回路への電流の伝搬経路から離隔した離隔領域に搭載されて、第1の周波数帯と、第1の周波数帯よりも周波数域の高い第3の周波数帯との境界範囲にある第2の周波数帯の第2のノイズを抑制する一または複数の第1のコンデンサと、を有する。
【0008】
また、上記課題を解決するために、電源装置が提供される。電源装置は、負荷回路と、負荷回路に電源電圧の供給を行い、負荷回路の動作により生じる電圧変動を監視し、監視結果に応じて電圧変動の周波数帯のうちの第1の周波数帯の第1のノイズを抑制する電流を負荷回路に出力する電源回路と、第1の周波数帯と、第1の周波数帯よりも周波数域の高い第3の周波数帯との境界範囲にある第2の周波数帯の第2のノイズを抑制する一または複数の第1のコンデンサと、負荷回路、電源回路および第1のコンデンサが搭載される基板に設けられている電源層と、電源層に対して、電源回路から負荷回路への電流の伝搬経路から第1のコンデンサを分離させる位置に形成されたスリットと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
1側面によれば、電源回路のノイズ抑制効果の悪化を防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電源装置の一例を説明するための図である。
図2】電源装置の第1の比較例を示す図である。
図3】電源装置の第1の比較例における構成の一例を示す図である。
図4】電源回路およびコンデンサがノイズ抑制に寄与している周波数帯の一例を示す図である。
図5】電源装置の第2の比較例を示す図である。
図6】コンデンサの配置例を説明するための図である。
図7】コンデンサ特性の一例を示す図である。
図8】電源装置の第2の比較例における構成の一例を示す図である。
図9】コンデンサの搭載数とノイズ抑制効果との関係の一例を示す図である。
図10】電源装置の構成の一例を示す図である。
図11】電源装置の構成の一例を示す図である。
図12】電源装置の断面の第1の構成例を示す図である。
図13】電源装置の断面の第2の構成例を示す図である。
図14】電源装置の構成の一例を示す図である。(a)は電源層にスリットが設けられている構成を示す図であり、(b)はLSIを省いて電源層に対するスリットの形成状態を示す図である。
図15】電源装置の断面の一例を示す図である。
図16】サーバ装置の構成の一例を示す図である。
図17】シミュレーション結果の一例を示す図である。
図18】シミュレーション結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は電源装置の一例を説明するための図である。電源装置1は、電源回路1a、負荷回路1bおよびコンデンサ群Cg10(第1のコンデンサ)を備える。電源回路1a、負荷回路1bおよびコンデンサ群Cg10は、基板ptに搭載されている。
【0012】
負荷回路1bは、例えば、LSI(Large Scale Integration)、またはCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。コンデンサ群Cg10は、コンデンサC11、C12、C13、C14を含む。コンデンサ群Cg10は、4つのコンデンサとしたが任意の複数個でよい。また複数個でなく1つのコンデンサであってもよい。
【0013】
電源回路1aは、負荷回路1bに電源電圧の供給を行い、負荷回路1bの動作により生じる電圧変動を監視し、監視結果に応じて電圧変動の周波数帯のうちの第1の周波数帯の第1のノイズを抑制する電流I1を負荷回路1bに出力する。
【0014】
コンデンサ群Cg10は、バイパスコンデンサであって、第1の周波数帯と、第1の周波数帯よりも周波数域の高い第3の周波数帯との境界範囲にある第2の周波数帯の第2のノイズの抑制を図る。また、コンデンサ群Cg10は、電源回路1aから負荷回路1bへの電流I1の伝搬経路L10から離隔した離隔領域r0に搭載される。
【0015】
例えば、第1のノイズの抑制に要する電流I1が負荷回路1bによって消費される際に、負荷回路1bによる電流消費の妨げにならない領域を離隔領域とし、この離隔領域にコンデンサ群Cg10が搭載される。このような、負荷回路1bによる消費電流の低下を及ぼさない領域、すなわち、電流I1の伝搬経路L10から離隔した離隔領域r0にコンデンサ群Cg10が搭載されることで、負荷回路1bによる電流I1の消費がコンデンサ群Cg10によって妨げられることはない。
【0016】
このように、電源装置1では、電源回路1aが第1周波数帯のノイズを抑制する電流I1を負荷回路1bに出力する。また、第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯のノイズを抑制するコンデンサ群Cg10は、電流I1の伝搬経路L10から離隔した離隔領域に搭載される。これにより、電源回路1aのノイズ抑制効果の悪化を防ぐことが可能になる。すなわち、電流I1の電源回路1aから負荷回路1bへの伝搬が、コンデンサ群Cg10によって阻害されることがないので、電源回路1aによる第1周波数帯のノイズの抑制効果の悪化を防ぐことができる。
【0017】
次に負荷回路の動作時に発生するノイズの抑制制御について説明する。電源装置では、負荷回路の電源電圧を供給する電源回路と、コンデンサとによってノイズ要件を満たすように電源電圧供給の設計が行われる。また、電源回路では、負荷回路に電源電圧の供給を行っている場合に、所定のポイント(例えば、負荷回路の電源入力端子やその近傍点)における電圧を監視(センス)し、そのポイントにおいてセンスした電圧を一定に保つような機能を備えている。なお、以降では、負荷回路をLSIと呼ぶ場合がある。また、電源回路がセンスした電圧変動にもとづいてノイズ抑制を行う制御をセンス電圧一定制御と呼ぶ場合がある。
【0018】
センス電圧一定制御では、LSIの動作によってノイズが発生した場合であっても、センスされた電圧を一定に保つような所定の電流が電源回路からLSIに向けて出力されるため、LSIの動作中に発生したノイズを抑制することができる。
【0019】
ただし、電源回路が備えるセンス電圧一定制御によるノイズ抑制機能は、低周波数帯のノイズには有効であるが、周波数域が高くなるにつれてノイズ抑制効果が弱まる傾向がある。このため、センス電圧一定制御で抑制しきれない高周波数帯のノイズに対しては、高周波数帯のノイズの抑制を図るためのコンデンサを搭載して、そのコンデンサによって高周波数帯のノイズの除去が行われる。
【0020】
図2は電源装置の第1の比較例を示す図である。電源回路とLSIとの間のコンデンサの配置例を模式図で示している。電源装置10aは、電源回路11、LSI12およびコンデンサ群Cg20を備える。コンデンサ群Cg20は、コンデンサC21、・・・、C25を含む。電源回路11は、経路L1を通じて、LSI12へ電源電圧を供給する。
【0021】
コンデンサC21の一端は経路L1に接続され、コンデンサC21の他端はグランド(以下、GNDと表記)に接続される。同様に、コンデンサC22の一端は経路L1に接続され、コンデンサC22の他端はGNDに接続され、コンデンサC23の一端は経路L1に接続され、コンデンサC23の他端はGNDに接続される。また、コンデンサC24の一端は経路L1に接続され、コンデンサC24の他端はGNDに接続され、コンデンサC25の一端は経路L1に接続され、コンデンサC25の他端はGNDに接続される。
【0022】
ここで、電源回路11は、LSI12に電源電圧の供給を行っている場合に、ポイントp1における電圧をリモートセンスして、ポイントp1においてリモートセンスした電圧を一定に保つようなセンス電圧一定制御を行う。このようなセンス電圧一定制御が行われることで、低周波数帯のノイズが抑制される。一方、センス電圧一定制御で抑制しきれない高周波数帯のノイズは、コンデンサC21、・・・、C25によって抑制されることになる。
【0023】
図3は電源装置の第1の比較例における構成の一例を示す図である。図2に示した模式図の構成を実現した場合の電源装置の平面視の図を示している。電源装置10aは、電源回路11、LSI12およびコンデンサ群Cg20を備え、電源回路11とLSI12は、基板ptのおもて面側に搭載されている。
【0024】
コンデンサ群Cg20は、複数のコンデンサを含み、LSI12が搭載される基板ptの下側裏面に搭載される。コンデンサ群Cg20に含まれる複数のコンデンサは、例えば、チップコンデンサやフィルムコンデンサである。また、経路L1は、基板ptに敷設されている電源層に該当する。
【0025】
図4は電源回路およびコンデンサがノイズ抑制に寄与している周波数帯の一例を示す図である。縦軸は電源電圧の供給経路のインピーダンスであり、横軸は周波数である。供給経路に発生するノイズ量は、供給経路のインピーダンスと、供給経路に流れる電流変動との積算値となり(ノイズ量=インピーダンス×電流変動)、ノイズ量を見積もる指標となる。
【0026】
上述したように、低周波数帯fLのノイズ(第1の周波数帯のノイズ)は、電源回路11によるセンス電圧一定制御でノイズ抑制が図られる。また、高周波数帯fHのノイズ(第3の周波数帯のノイズ)は、センス電圧一定制御ではノイズ抑制が困難であるため、供給経路に接続されたコンデンサ(コンデンサ群Cg20)によってノイズ抑制が図られる。
【0027】
一方、低周波数帯fLと高周波数帯fHの間の境界範囲に位置する周波数帯fMは、電源回路11によるセンス電圧一定制御によるノイズ抑制効果は完全には失ってはいないが十分な効果が得られない周波数帯である。このような周波数帯fMのノイズ(第2の周波数帯のノイズ)についても、それを抑えるためにコンデンサ(コンデンサ群Cg10)が搭載される。なお、以降では、低周波数帯と高周波数帯の間の境界範囲に位置する周波数帯を境界周波数帯と呼ぶ場合がある。
【0028】
ここで、低周波数帯、境界周波数帯、高周波数帯の数値の一例としては、低周波数帯はおよそ50kHz未満の周波数帯である。境界周波数帯は、およそ50kHz以上500kHz以下の周波数帯である。高周波数帯は、500kHzを越える周波数帯である。
【0029】
図5は電源装置の第2の比較例を示す図である。電源回路11とLSI12との間のコンデンサの配置例を模式図で示している。電源装置10bは、電源回路11、LSI12、コンデンサ群Cg10およびコンデンサ群Cg20を備える。
【0030】
電源装置10bは、境界周波数帯のノイズ抑制を行うために、図2に示した電源装置10aに対して、さらにコンデンサC11、C12を含むコンデンサ群Cg10を搭載したものである。コンデンサC11の一端は経路L1に接続され、コンデンサC11の他端はGNDに接続され、コンデンサC12の一端は経路L1に接続され、コンデンサC12の他端はGNDに接続される。
【0031】
図6はコンデンサの配置例を説明するための図である。コンデンサC21、・・・、C25によるノイズ抑制の働きは、高周波数帯で経路L1上に発生するノイズの周波数のインピーダンスを下げてノイズを抑制するものである。したがって、ターゲットとする高周波数帯において、コンデンサのインピーダンス(以下、コンデンサ・インピーダンス)が低くなるようなコンデンサが選定される。このコンデンサ・インピーダンスが低くなる周波数は、自己共振周波数と呼ばれる。
【0032】
なお、コンデンサは、抵抗成分R、インダクタンス成分L、容量成分Cを持ち、コンデンサ・インピーダンスZは以下の式(1)から求められる。
Z=|R+jωL+1/(jωC)|・・・(1)
ここで例えば、コンデンサの選定として、高周波数帯として550kHzのノイズ周波数を抑制する場合、550kHz近傍に自己共振周波数を持つコンデンサを選定することになる。このようにして選定されたコンデンサC21、・・・、C25によって経路L1上に発生する高周波数帯のノイズのインピーダンスを低減させることで、ノイズ振幅が低減して、高周波数帯のノイズの電流がGNDにバイパスしてノイズが除去されることになる。
【0033】
同様に、コンデンサC11、C12は、境界周波数帯で発生するノイズの周波数のインピーダンスを下げてノイズを抑制するので、コンデンサC11、C12の選定としては、境界周波数帯に自己共振周波数を持つコンデンサが選定される。
【0034】
例えば、境界周波数帯として100kHzのノイズ周波数を抑制する場合、100kHz近傍に自己共振周波数を持つコンデンサを選定することになる。このようにして選定されたコンデンサC11、C12によって、境界周波数帯のノイズのインピーダンスを低減させることで、ノイズ振幅が低減して、境界周波数帯のノイズの電流をGNDにバイパスしてノイズが除去されることになる。
【0035】
なお、ターゲットとする周波数帯が広ければ複数種類のコンデンサを用いてその帯域全体のノイズ抑制を図ることを行うが、その場合、自己共振周波数が高いコンデンサから、ノイズ発生源に近い位置に配置される。そして、ノイズ発生源から離れるにしたがって、自己共振周波数が低いコンデンサが配置される。
【0036】
図6の例では、高周波数帯のノイズ抑制目的のコンデンサC21、・・・、C25の自己共振周波数をfc21、・・・、fc25として、fc21>fc22>fc23>fc24>fc25であるとする。
【0037】
この場合、最も高い自己共振周波数を持つコンデンサC21が、経路L1上でノイズ発生源(ここではLSI12の回路が動作し電圧が変動することがノイズとなる)に最も近い位置に配置される。そして、LSI12の近傍から電源回路11に向かって自己共振周波数が徐々に低くなるように、コンデンサC22、C23、C24、C25がこの順に配置される。
【0038】
また、境界周波数帯のノイズ抑制目的のコンデンサC11、C12の自己共振周波数をそれぞれfc11、fc12とし、fc11>fc12であるとする。この場合、自己共振周波数fc11を持つコンデンサC11からLSI12に近い位置の経路L1上に配置されるが、境界周波数帯が高周波数帯より低い周波数でありfc25>fc11であることも考慮すると、この例では、コンデンサC25と電源回路11との間に配置されることになる。そして、コンデンサC11と電源回路11との間に、自己共振周波数fc12を持つコンデンサC12が配置される。
【0039】
なお、上記の例では、500kHzを越える高周波数帯ノイズに対応するコンデンサC21、・・・、C25は、例えば、容量成分Cが47μF以上、インダクタンス成分Lが300pH以上の範囲でコンデンサが選定される。また、50kHz以上500kHz以下の境界周波数帯のノイズに対応するコンデンサC11、C12では、例えば、容量成分Cが47μF未満、インダクタンス成分Lが300pH未満の範囲でコンデンサが選定される。
【0040】
次に図7を用いて、複数のコンデンサを配置する場合に、自己共振周波数が高いコンデンサをノイズ発生源に近い位置に配置する理由について説明する。
図7はコンデンサ特性の一例を示す図である。縦軸は電源電圧の供給経路のインピーダンスであり、横軸は周波数である。4つのコンデンサCa、Cb、Cc、Cdがあり、コンデンサCa、Cb、Cc、Cdの順に容量成分Cが小さくなるとする。また、コンデンサCa、Cb、Cc、Cdそれぞれの自己共振周波数をfCa、fCb、fCc、fCdとする。ノイズ抑制のターゲットとする周波数帯において、自己共振周波数はfCa<fCb<fCc<fCdの関係となる。
【0041】
ここで、電源電圧の供給経路に複数のコンデンサとしてコンデンサCa、Cb、Cc、Cdを配置するような場合、負荷回路の近くから、コンデンサCd、Cc、Cb、Caの順に配置することが一般的に行われる(自己共振周波数の高い順に配置される)。
【0042】
ノイズ発生源となる負荷回路に複数種類のコンデンサを置くのは、広い周波数帯でインピーダンスを下げることを目的としている。上述のように、ノイズ量=インピーダンス×電流変動であり、電流変動が持つ周波数成分に対してどの周波数でもノイズが抑えられるように、色々な周波数に適した複数種のコンデンサを配置する。この場合、コンデンサ種類の配置順を決めるのは、コンデンサの持つ特性が経路の影響を受けやすいか否かが重要になる。
【0043】
負荷回路から見た、経路とコンデンサの両方を考慮したインピーダンスの近似式は、以下の式(2)となる。
インピーダンス=R1+jωL1+1/(jωC1)+R2+jωL2・・・(2)
R1、L1およびC1はそれぞれ、コンデンサの抵抗成分、インダクタンス成分および容量成分を示すパラメータであり、R2およびL2はそれぞれ、コンデンサから負荷回路までの経路の抵抗成分およびインダクタンス成分を示すパラメータである。式(2)に示されるように、ノイズ発生源(負荷回路)でのコンデンサのノイズ抑制効果は、経路まで含めたインピーダンスを考慮することが重要である。
【0044】
ここでコンデンサのL1成分と、経路のL2成分との比率を考えると、L1が小さなコンデンサの方がL2の影響(経路の影響)を受けやすく、L1が大きなコンデンサの方がL2の影響を受けにくいことになる。さらに、コンデンサの位置が負荷回路から遠くなる(経路が長くなる)ほどL2は大きくなり、経路の影響が大きく見えることになる。一方、コンデンサは物理サイズが小さいほどL1とC1は小さくなり、自己共振周波数は高くなる。つまりは自己共振周波数が高いコンデンサの方が経路の影響を受けやすい。
【0045】
以上のようなことが、ノイズ対策のバイパスコンデンサ配置のセオリーとして、負荷回路の近くに、容量成分もしくは物理サイズが小さいコンデンサから置くのがよいとされている理由である。
【0046】
図8は電源装置の第2の比較例における構成の一例を示す図である。図5に示した模式図の構成を実現した場合の電源装置の平面視の図を示している。電源装置10bは、電源回路11、LSI12およびコンデンサ群Cg10、Cg20を備え、電源回路11とLSI12は、基板ptのおもて面に搭載されている。高周波数帯ノイズ対応のコンデンサ群Cg20は、基板ptに対して、LSI12が配置される位置の下側裏面に搭載される。また、境界周波数帯ノイズ対応のコンデンサ群Cg10は、電源回路11とLSI12との間の領域に搭載されている。しかし、このようなコンデンサ群Cg10の配置では、電源回路11によるセンス電圧一定制御にもとづくノイズ抑制効果が悪化してしまう。
【0047】
次にノイズ抑制効果が悪化する理由について説明する。電源回路11では、センス電圧一定制御によって、電源供給先のLSI12の電圧変動を検出した場合、電源電圧の供給経路を通じてLSI12に電流を流して、電圧変動を一定にしてノイズを抑制する。
【0048】
ただし、電源回路11によるセンス電圧一定制御は、高周波数帯ノイズの振幅変動の速さに応答することが難しいため、高周波数帯ノイズの抑制効果は低い。したがって、センス電圧一定制御では、ノイズの振幅変動の速さに電源回路11が応答することが可能な低周波数帯ノイズに対して抑制効果を有している。
【0049】
一方、境界周波数帯ノイズに関しては、電源回路11のみでは十分にノイズを抑えられないため、境界周波数帯ノイズ対応のコンデンサの搭載を要することになる。ただし、境界周波数帯ノイズ対応のコンデンサが電源回路11とLSI12との間の領域に配置された場合、電源回路11のセンス電圧一定制御によるノイズ抑制の効果を悪化させてしまう可能性がある。
【0050】
なぜなら、電源回路11とLSI12との間の領域に配置したコンデンサによって、低周波数帯ノイズを打ち消すために電源回路11から出力された電流がLSI12まで伝わり難くなりノイズ抑制が遅れてしまうからである。また、その結果として、電源回路11が十分にノイズを抑えられる周波数はさらに低周波側にシフトしてしまい、ノイズを抑える効果が悪化してしまうことになる。
【0051】
図9はコンデンサの搭載数とノイズ抑制効果との関係の一例を示す図である。なお、テーブルT1における、境界周波数帯ノイズ対応のコンデンサの搭載数とは、電源回路11とLSI12との間の領域に搭載されるコンデンサの数のことである。
【0052】
テーブルT1において、境界周波数帯ノイズに対応するコンデンサ(以下、境界コンデンサと呼ぶ場合がある)の搭載数が少ない場合、境界コンデンサによる境界周波数帯ノイズの抑制効果は小さくなるが、センス電圧一定制御で行われる低周波数帯ノイズ抑制の効果は大きくなる。
【0053】
また、境界コンデンサの搭載数が多い場合、境界コンデンサによる境界周波数帯ノイズの抑制効果は大きくなるが、センス電圧一定制御で行われる低周波数帯ノイズ抑制の効果は小さくなる。
【0054】
このように、境界周波数帯ノイズは、電源回路11のみでは十分にノイズを抑えられないため境界コンデンサの搭載を要するが、境界コンデンサの搭載によって電源回路11側の低周波数ノイズ抑制の効果を悪化させてしまう。
【0055】
また、低周波数ノイズの抑制が悪化する分、低周波数ノイズ抑制に対応したコンデンサをさらに搭載すると、部品搭載面積が大きくなってしまう。また、電源回路11が抑えられるノイズは低周波側にシフトするため、そのノイズに対応させるコンデンサの容量は大きくなる。このため、よりサイズが大きなコンデンサを搭載することになり、搭載面積が大きくなってしまう。
【0056】
次にノイズ抑制効果の悪化の防止を図った電源装置について詳しく説明する。図10は電源装置の構成の一例を示す図である。電源回路11とLSI12との間のコンデンサの配置例の模式図で示している。電源装置10-1は、電源回路11、LSI12およびコンデンサ群Cg10、Cg20を備える。
【0057】
図5に示した電源装置10bの構成と異なる箇所は、コンデンサC11、C12を含むコンデンサ群Cg10が経路L1とは異なる経路L2に接続されているものである。コンデンサC11の一端は経路L2に接続され、コンデンサC11の他端はGNDに接続され、コンデンサC12の一端は経路L2に接続され、コンデンサC12の他端はGNDに接続される。
【0058】
境界周波数帯ノイズの対策でコンデンサ群Cg10を搭載する場合、電源回路11のノイズ抑制効果の悪化を抑えるため、電源回路11と電源電圧供給先のLSI12との間に電流I1が流れる経路L1から離れた位置(図10では模式的に経路L2としている)に搭載するものである。
【0059】
なお、経路L1は、LSI12の電源端子に接続され、電源回路11から供給される電源電圧と、電源回路11でセンス電圧一定制御が行われるときに電源回路11から出力される電流I1とが伝搬する経路である。また、経路L2は、LSI12の電源端子に接続されている。
【0060】
図11は電源装置の構成の一例を示す図である。図10に示した模式図の構成を実現した場合の電源装置の平面視の図を示している。電源装置10-1は、電源回路11、LSI12およびコンデンサ群Cg10、Cg20を備え、電源回路11とLSI12は、多層基板13-1のおもて面に搭載されている(基板ptとして多層基板13-1を使用した例を示している)。なお、コンデンサ群Cg10の図11中の右端に位置するコンデンサをコンデンサCa1とし、コンデンサ群Cg20の図11中の下側右端に位置するコンデンサをコンデンサCb1とする。
【0061】
また、高周波数帯ノイズ対応のコンデンサ群Cg20は、多層基板13-1の裏面に搭載される。また、境界周波数帯ノイズ対応のコンデンサ群Cg10は、電源回路11とLSI12との間に流れる電流I1の経路から離れた位置に搭載される。
【0062】
この場合、バイパスコンデンサはなるべく対象回路の近くに置くのが望ましいため、具体的には、電源回路11とLSI12との間の領域r1(回路間領域)に電流I1の伝搬経路があるので、LSI12を挟んで領域r1とは反対側に位置する領域r0(離隔領域)に搭載される。すなわち、電源電圧供給先のLSI12から見て電源回路11が搭載されている位置とは反対側の位置にコンデンサ群Cg10が搭載される。
【0063】
ここで、電源回路11によるセンス電圧一定制御による電流I1が出力された場合、領域r1にはコンデンサ群は配置されていないので、電流I1は電源層を通じてLSI12まで流れてLSI12によって消費される。したがって、センス電圧一定制御によって出力された電流I1は、コンデンサ群によって電流伝搬が阻害されることはなく、LSI12による電流消費が妨げられることはないので、電源回路11のノイズ抑制効果の悪化を防ぐことができる。
【0064】
図12は電源装置の断面の第1の構成例を示す図である。図11のX1-X1による断面図を示している。多層基板13-1のおもて面側に対して、電源回路11、LSI12、コンデンサCa1が搭載され、多層基板13-1の裏面側に対して、コンデンサCb1が搭載されている。
【0065】
コンデンサCa1は、境界周波数帯ノイズに対応して搭載されたコンデンサ群Cg10に含まれる1つのコンデンサであり、コンデンサCb1は、高周波数帯ノイズに対応して搭載されたコンデンサ群Cg20に含まれる1つのコンデンサである。
【0066】
多層基板13-1は、絶縁層13a、電源層13bおよびGND層13cを含む。電源層13bは、電源パターン13b1、13b2を含み、絶縁層13aの下面に接合されている。また、GND層13cは、GNDパターン13c1、13c2、13c3、13c4を含み、絶縁層13aの上面に接合されている。
【0067】
なお、電源パターン13b1、13b2は、絶縁層13aにおける図示しない接続箇所によって互いに接続されており、GNDパターン13c1、13c2、13c3、13c4は、絶縁層13aにおける図示しない接続箇所によって互いに接続されている。
【0068】
コンデンサCa1のGND端子は、GNDパターン13c1に接続され、コンデンサCa1の電源端子は、電源パターン13b1に接続される。コンデンサCb1のGND端子は、GNDパターン13c2に接続され、コンデンサCb1の電源端子は、電源パターン13b2に接続される。
【0069】
LSI12のGND端子は、GNDパターン13c2に接続され、LSI12の電源端子は、電源パターン13b2に接続される。電源回路11のGND端子は、GNDパターン13c3に接続され、電源回路11の電源端子は、電源パターン13b2に接続される。
【0070】
図13は電源装置の断面の第2の構成例を示す図である。コンデンサCa1、Cb1が共に多層基板の裏面側に搭載されている場合の断面図を示している。多層基板13-2のおもて面側に対して、電源回路11、LSI12が搭載され、多層基板13-2の裏面側に対して、コンデンサCa1、Cb1が搭載されている。多層基板13-2は、絶縁層13a、電源層13b10およびGND層13dを含む。
【0071】
電源層13b10は、電源パターン13b11、13b12、13b13を含み、絶縁層13aの下面に接合されている。GND層13dは、GNDパターン13d1、13d2、13d3を含み、絶縁層13aの上面に接合されている。なお、電源パターン13b11、13b12、13b13は、絶縁層13aにおける図示しない接続箇所によって互いに接続されている。また、GNDパターン13d1、13d2、13d3は、絶縁層13aにおける図示しない接続箇所によって互いに接続されている。
【0072】
コンデンサCa1のGND端子は、GNDパターン13d1に接続され、コンデンサCa1の電源端子は、電源パターン13b11に接続される。コンデンサCb1のGND端子は、GNDパターン13d1に接続され、コンデンサCb1の電源端子は、電源パターン13b13に接続される。
【0073】
LSI12のGND端子は、GNDパターン13d1に接続され、LSI12の電源端子は、電源パターン13b13に接続される。電源回路11のGND端子は、GNDパターン13d2に接続され、電源回路11の電源端子は、電源パターン13b3に接続される。このように、境界周波数帯ノイズ対応のコンデンサ群Cg10を、LSI12から見て電源回路11が搭載されている位置とは反対側の位置に搭載する場合、多層基板の裏面側に搭載してもよい。
【0074】
図14は電源装置の構成の一例を示す図である。(a)は電源層にスリットが設けられている構成を示す図であり、(b)はLSIを省いて電源層に対するスリットの形成状態を示す図である。
【0075】
電源装置10-2では、電源層13eにスリットst1、st2が形成されている。スリットst1、st2は、電源回路11から出力される電流I1が流れる伝搬経路から、コンデンサ群Cg10を分離させる場所に形成される。すなわち、電源層13eの領域のうち、電源回路11とLSI12が搭載された第1の領域r11と、コンデンサ群Cg10が搭載された第2の領域r12との間に形成される。
【0076】
例えば、LSI12から見て電源回路11が搭載されている位置とは反対側の位置(図11に示した領域r0)にコンデンサ群Cg10が搭載可能な場所が確保できないような場合、電源層13eに対して、図14に示すような位置にスリットst1、st2を形成する。これにより、電流伝搬経路と、コンデンサ群Cg10とを分離した状態とすることができる。
【0077】
このように、電源回路11とLSI12との間の電流伝搬経路に近い位置に、境界周波数帯ノイズの抑制を図るためのコンデンサ群を搭載する場合は、電源層にスリットを形成して電流伝搬経路と、当該コンデンサ群とを分離させる。これにより、コンデンサ群によって電流伝搬が阻害されることがなくノイズ抑制効果の悪化を防ぐことができる。
【0078】
図15は電源装置の断面の一例を示す図である。図14(a)のX2-X2による断面図を示している。多層基板13-3のおもて面側に対して、電源回路11、LSI12、コンデンサCa1が搭載され、多層基板13-3の裏面側に対して、コンデンサCb1が搭載されている。多層基板13-3は、絶縁層13a、電源層13eおよびGND層13fを含む。電源層13eは、電源パターン13e1、13e2を含み、絶縁層13aの下面に接合されている。
【0079】
また、電源パターン13e1にはスリットst2が設けられて、スリットst2を挟んで電源パターン13e1-1と電源パターン13e1-2が形成されている。電源パターン13e1-1は、電源回路11から出力される電流が流れる電流伝搬経路から分離しており、電源パターン13e1-1に接続されているコンデンサCa1を電流伝搬経路から分離させている。
【0080】
GND層13fは、GNDパターン13f1、13f2、13f3、13f4を含み、絶縁層13aの上面に接合されている。なお、電源パターン13e1、13e2は、絶縁層13aにおける図示しない接続箇所によって互いに接続されており、GNDパターン13f1、13f2、13f3、13f4は、絶縁層13aにおける図示しない接続箇所によって互いに接続されている。
【0081】
コンデンサCa1のGND端子は、GNDパターン13f1に接続され、コンデンサCa1の電源端子は、電源パターン13e1-1に接続される。コンデンサCb1のGND端子は、GNDパターン13f2に接続され、コンデンサCb1の電源端子は、電源パターン13e1-2に接続される。
【0082】
LSI12のGND端子は、GNDパターン13f1に接続され、LSI12の電源端子は、電源パターン13e2に接続される。電源回路11のGND端子は、GNDパターン13f3に接続され、電源回路11の電源端子は、電源パターン13e2に接続される。
【0083】
次に上記の電源装置1、10-1、10-2の機能を備えたサーバ装置について説明する。図16はサーバ装置の構成の一例を示す図である。サーバ装置20は、電源装置100を備える。電源装置100は、電源回路11、プロセッサ12a、コンデンサ群Cg10、Cg20を含む。サーバ装置20に備えらえた電源装置100は、電源回路11からプロセッサ12aへの給電を行う給電部に該当する。
【0084】
サーバ装置20は、プロセッサ12aによって装置全体が制御されている。プロセッサ12aは、CPU、MPU(Micro Processing Unit)、またはDSP(Digital Signal Processor)である。プロセッサ12aには、バスを介してメモリ群21、記憶装置22およびIOインタフェース群23が接続されている。
【0085】
メモリ群21は、サーバ装置20の主記憶装置として使用される。メモリ群21に含まれるメモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)である。メモリ群21には、プロセッサ12aに実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、メモリ群21には、プロセッサ12aによる処理に利用する各種データが格納される。
【0086】
記憶装置22は、サーバ装置20の補助記憶装置として使用され、OSのプログラム、アプリケーションプログラム、および各種データが格納される。記憶装置22は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)である。
【0087】
IOインタフェース群23は、装置外部との入出力インタフェースを行う。例えば、ユーザ端末に接続されて、ユーザ端末とプロセッサ12aとの間で信号の送受信を行う。また、IOインタフェース群23は、ネットワークに接続してネットワークを介して、他のコンピュータまたは通信機器との間で信号の送受信を行う。
【0088】
電源ユニット(PSU:Power Supply Unit)24は、交流電源電圧を直流の電源電圧に変換してサーバ装置20内の各構成要素に電力供給を行う。電源回路11は、POL(Point of Load)レギュレータであって、電源ユニット24で生成された電圧にもとづいて、プロセッサ12aが要するレベルの電源電圧を生成し、生成した電源電圧をプロセッサ12aに供給する。
【0089】
図17はシミュレーション結果の一例を示す図である。電源供給先のLSI12から見て電源回路11の搭載位置とは反対側にコンデンサ群Cg10を搭載した場合のノイズ抑制効果のシミュレーション結果を示している。横軸は周波数、縦軸は電源電圧および電流が供給される経路のインピーダンスである。
【0090】
波形k1(実線)は、電源回路11とLSI12との間にコンデンサを搭載する配置の場合、波形k2(破線)は、波形k1で配置した同数のコンデンサをLSI12から見て電源回路11とは反対側に搭載した場合である。また、波形k3(一点鎖線)は、電源回路11とLSI12との間にコンデンサを搭載する際に、波形k1で配置した個数の倍の数のコンデンサを搭載した場合である。
【0091】
図17に示すシミュレーション結果では、波形k1と波形k2を比較した場合、同数のコンデンサの搭載では、コンデンサをLSI12から見て電源回路11とは反対側に搭載した場合の方が、インピーダンスが低く抑えられている。また、波形k1と波形k3を比較した場合、電源回路11とLSI12との間におけるコンデンサの搭載では、コンデンサを倍の数にして配置してもインピーダンスの改善はわずかになっている。したがって、LSI12から見て電源回路11とは反対側にコンデンサを配置することの優位性がみられる。
【0092】
図18はシミュレーション結果の一例を示す図である。電源回路11とLSI12との間の電源層にスリットを入れて、電流経路と対象となるコンデンサが離れるようにした場合のノイズ抑制効果のシミュレーション結果を示している。横軸は周波数、縦軸は電源電圧および電流が供給される経路のインピーダンスである。
【0093】
波形k11は、電源層にスリットがない場合、波形k12は電源層にスリットがある場合を示す。スリットを入れることによって、インピーダンスカーブのピークが低く抑えられている。このように、電源層にスリットを設けた場合、コンデンサをLSI12から見て電源回路11とは反対側に搭載した場合と同様にして、ノイズ抑制効果を高めることができる。
【0094】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 電源装置
1a 電源回路
1b 負荷回路
pt 基板
Cg10 コンデンサ群
C11、C12、C13、C14 コンデンサ
I1 電流
L10 伝搬経路
r0 離隔領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18